オトナの世界



 亜美と私がアイドル候補生でデビューを待っていた頃、既にアイドルとして活動していた律ちゃんが、芸能事務所を立ち上げた。
 社長になったのは律ちゃんのプロデューサーを務めてた人で、事務所で何度かあった事のある男の人。
 私たちをプロデュースする事は無かったけど、たまに遊んでくれたのを覚えている。
 二人は、765プロダクションを離れていった。
 社長も、ピヨちゃんも、他のみんなも、二人がいなくなるのを寂しがっていた。
 それからしばらく経ったある日、律ちゃんと兄ちゃんが765プロにやってきた。
 「亜美、真美、ウチの事務所でアイドルやらない?」
 私も亜美もビックリだった。だって、律ちゃんがプロデューサーになる、って言うんだから。
 コガイシャ?とかテーケー?とか兄ちゃんが何やら難しい事を言っていたけれど、律ちゃんが分かりやすく説明してくれた。
 別の会社だけど765プロとは繋がっていて、お互い協力して頑張りましょう!っていう事みたい。
 待ちに待ったアイドルデビュー。それも、同じ事務所だった仲間と一緒に。
 私が返事するよりも早く、亜美が諸手を上げて飛び出していた。


 そんなこんなで、私と亜美は仕事帰りの商店街を歩いている。
 空は真っ暗なのに、パチンコ屋さんやコンビニ、怪しいカレー屋さんの明かりが眩しい。
 「いやー、今日のお仕事もめっちゃ楽しかったねー!」
 「今日の亜美すっごい良かったよ!レッスンの時は上手く行かなかったのにダンス大成功だったじゃん!」
 ネオンサインの光に照らされた亜美の表情は、ふわふわと明るい。
 今日は、先日オーディションに合格して出演の決まったテレビ番組…その収録だった。
 司会者が進行する中で出演者はそれぞれ時間を取って、一曲歌を歌ってからトークをする。
 歌いながら踊る…って、物凄い重労働。まだ小学生で体力の無い私たちにとっては、それはめっちゃ大変な事。
 とてもじゃないけど、トークの流れも覚えておいて、歌った後その通りに進行して…というのはツラい。
 かといって収録に時間をかけてしまえば他のタレントさん達に迷惑がかかってしまう。
 こういった番組に出る時は、二人で役割を分担する。それが…秋月律子プロデューサーの指示。
 「亜美と真美が二人で同時に番組に出るのは、とっておきの最終兵器よ」
 と、律ちゃんは言っていた。確かに、今の私たちはまだ二人で一役がやっと…。
 でも、楽しいからそれでいいと思う。難しい事は律ちゃんと兄ちゃんに任せればいいよね、きっと。


 商店街を通り過ぎると、すぐに駅が見える。
 仕事がもっと遅くまでかかった時や、律ちゃんにTV出演の仕事がある時は、兄ちゃんが車で送ってくれる事もある。
 けど、今日はザンギョーって奴で忙しいらしい。なんかプロレスとかちょー強そうだよね、ザンギョーって。
 スーツを着たおじさん達がいっぱい歩いている中を、はぐれないように亜美と手を繋いで歩く。
 「…あ」
 切符を買おうとしてバッグを探した所で、大事なものが無いことに気づいた。
 「おサイフがなーーーい!」
 「えーー!?」
 ケータイはある。手帳もある。でも、使い慣れた財布が見つからない。
 来た時も電車だったし、収録が終わって事務所に戻る途中にジュースも買った。思い当たる節は…
 「楽屋ではバッグの中身いじらなかったし、事務所に置き忘れたのかも〜…」
 「だーいじょぶだよ。今日の電車賃は亜美が払ってあげるね」
 と、亜美はニコニコしながら私の肩をポンポン叩いた。
 そしておもむろに財布を開いて中身を確かめたと思ったら、今度は亜美の顔が青ざめた。
 「…電車賃が亜美の分しか残ってないよ〜…」
 なんて運が悪いんだろう。こういうの、前世紀の言葉でチョベリバって言うんだっけ?それとも、ナンテコッタイ?
 「真美、どうしよ〜…」
 「うーん…多分事務所だと思うから、取りに行ってくんね」
 「でもでも、もう結構遅いよ?早く帰らないとママがドッカンしちゃうかも〜」
 「えーっと、じゃあ亜美は一足先にウチ帰ってママに言っといて。真美もおサイフ見つけたら帰るから!」
 「う、うん!分かった!真美も気を付けてねー!」
 亜美が、改札の向こう側の人混みへ消えていくのを見届けて、私は踵を返して元来た道を引き返す事にした。
 人の流れに逆らうようにして、ちょっと長めの階段を下りていく。
 亜美と歩いていると楽しい夜道でも、一人で歩いていると、ちょっと怖い。
 ピカピカ光っていたネオンのカラフルな光も今はなんだか不安を煽るようで、私は早歩きで事務所に急いだ。
 「えーっと、今日真美が行った所は…」
 途中から駆け足になりながら事務所に辿り着き、私は早速記憶を手繰り寄せてみることにした。
 扉のカギが開いているから誰かいるとは思うのだけど、フロアには誰の姿も見当たらなかった。
 トイレ、更衣室、応接室…と探してきたけれど、見つからない。
 「うー、もしかしてホントに無くしちゃったのかな〜………あ」
 やがて、『仮眠室』というカードが張られたドアの前に辿り着いた。
 そういえば、空き部屋を改装して色々持ち込んで、疲れてたら寝られる場所を作ってくれたんだっけ。
 まだここで寝た事は無いけど、今日、亜美と一緒にマンガを持ち込んだりしたのを思い出した。
 ドアノブを回してみると、引っかかる感触は無く、カギは開いているようだ。
 中に入って明かりを付けてみると、部屋の一角に置かれたテーブルの上に、探し求めていたものがあった。
 「良かったー!ここに来ておきっぱにしてあったんだ!これで安心して帰れ………はっ!」
 財布を握り締めると同時に遠くから足音が聞こえて、慌てて目の前に見えた半開きの扉を目掛けて駆け出した。
 扉を通り抜けると、いきなり視界が真っ暗になって、壁にぶつかってしまう。
 (いたた……あれ、なんで?部屋から出たはずなのに…)
 周囲を見渡してみると、外側から光が差し込んでいるのに気づいた。
 「(あれ、ここ…)」
 どうやら私が駆け込んだのは部屋の入り口のドアでは無く、ロッカーか何かの中だったようだ。
 新たに持ち込んだばかりなのか、中には何も入っていない。少し開いた扉の隙間から部屋の中が見える。
 「あら?今物音がしたような気がしたんだけど…誰もいないわね」
 律ちゃんの声だ。どうやらさっきの足音は、律ちゃんのものだったらしい。
 いきなり出て行ったらビックリするだろうなー、と思いつつも、さっき事務所を出たのにここにいたら怒られそうな気もする。
 律ちゃんがこっちの方に歩いてきた。私に気づいたのかもしれない。
 「うーん、やっぱメイクしなおさくても良かったかも…どうせすっぴんも見られてるし…」
 視線がこっちとは別の方向を見ている。鏡を見ているのかな。
 「それにしても…ここで、かぁ……いくら時間が取れないとはいっても……」
 ここで、って、ここで何かするのかな?
 早く帰らなきゃと思う反面、ここで隠れて見ていたら『何か』が見られそうで、ちょっとワクワクしてしまう。
 もうしばらく、ここで見ていてみよう。

 
 しばらくして、もう一つ足音が聞こえて、部屋の中に誰かが入ってきたような気配がした。
 「悪い悪い、待たせたな」
 兄ちゃんの声だ。ガサガサというビニール袋の音と一緒に、ベッドに腰掛ける律ちゃんの方に近付いてくるのが見えた。
 さっき財布が置いてあったテーブルの真向かいのロッカーからは、部屋の入り口からベッドの辺りまでが見える。
 兄ちゃんが、律ちゃんの隣に座った。右手にビニール袋を提げている。
 私たちのいない所で、律ちゃんと兄ちゃんはどんな話をするんだろう?
 耳をよーく澄ませて、目をよーくこらして、扉の隙間から様子を伺う。
 「……ねぇ、ホントに…ここで?いくらウチら以外誰もいないからって…」
 「嫌か?なんなら別の場所へ行っても…」
 「い、いい!値段見ると結構バカにならないじゃない、ああいうの。それに…」
 「お互い、バレちゃったら困るもんな」
 何の話をしているのか良く分からないけれど、バレたら困るような事らしい。
 「あ、ちゃんと付けてるんだな、それ」
 兄ちゃんが、律ちゃんの首元を覗き込んだ。よく見ると、律ちゃんの首にネックレスが下がっているのが見える。
 普段、襟周りが隠れるような服を着ているから、そんな物を身につけているなんて初めて知った。
 「ビックリしましたよ。いきなりプレゼントだって言うから何かと思ったら、こんな高そうなの…」
 「てっきり値段の事とか聞いてくるんじゃないかと思ったけど、素直に受け取ってくれて良かったよ」
 プレゼント?プレゼントにネックレスなんて兄ちゃん太っ腹……って、どういうプレゼントなんだろう……?
 「……正直、値段は気になりますけど、流石に意図は分かるし、指輪まで貰っちゃったらそんな事聞けませんよ……」
 ここからじゃ見えないけど、兄ちゃんは指輪もプレゼントしたらしい。付けてる所見た事無いけど、ネックレスに通してるのかな。
 「重たいって思ったか?」
 「そんなワケ無いじゃない。飛び上がりたいぐらい…理屈抜きに嬉しいですよ」
 「そうか、安心したよ。まぁ、そいつが俺の気持ちだ。言葉で伝えるだけじゃ、足りないものもあると思うから」
 「うん…」
 兄ちゃんが、律ちゃんの手を重ねて、律ちゃんが応えるようにその手を握る。
 目の前のやりとりに、どんどんどんどん甘くなっていく二人の雰囲気。
 (えー!どどど、どうしよう…こんな所に出て行けないよ〜…)
 マンガでも見ないようないきなりすぎる急展開に混乱しそうだ。二人がそんなカンケーだったなんて…!
 家に帰らなければならないのに、出て行く事も、かといって二人から目を離すこともできず、私は胸がドキドキしっぱなしだ。
 「好きだよ、律子」
 「………うん」
 スキ…そう言いながら、兄ちゃんは律ちゃんの腰に手を回して抱き寄せた。
 思わず私は叫びだしてしまいそうだったが、頑張って我慢する。
 兄ちゃんは律ちゃんが好きなんだ、というのはさっきのやりとりを見れば、子どもの私にだって分かる。
 でも、『好き』というその言葉を聞くと、改めてビックリしてしまう。
 「律子は?」
 「え?」
 「律子はどうなんだ?」
 「い、言わせるんですかっ?」
 「聞きたいなぁ、律子の口から直接」
 「……んもう」
 ぶっちゃけ、真面目でおっかない律ちゃんは、765プロの女の子の中で、男の人との恋愛とは一番遠いと思っていた。
 私たちをプロデュースするようになって律ちゃんといっぱい話すようになったけど、そんな話はしたことも無かった。
 それが、私も亜美も今では仲良しの兄ちゃんとめっちゃラブラブになってる。
 今兄ちゃんが言ったような事を、その律ちゃんも言う。その瞬間を、息を呑んで私は待つ。
 「…………わ、私も」
 「うん」
 「私も…ダーリンが好き…」
 だーりん…って、初めて聞くけど、好きな人に使う言葉なんだな、っていう事はなんとなく分かる。
 顔を真っ赤にしながらそう言った律ちゃんを見ていると、こっちまで顔が火照ってしまう。
 身体が熱くなってカッカしているのに戸惑うヒマも無く、二人の顔がどんどん近付いていって、重なった。
 (わ、ちゅーしてる…)
 兄ちゃんと律ちゃんが付き合ってて、『好き』って言いあって。
 それでもって、マンガやドラマじゃなくて、現実に目の前で、よく知ってる男の人と女の人がキスしてる。
 亜美と駅で別れたのはついさっきなのに、それがまるで大昔の事のように思えてしまう。
 「んっ…ん、あっ…」
 (舌入ってる…ディープキス、って奴だよね……)
 水っぽいような音が聞こえて目を凝らしてみると、赤い舌がねちねち絡み合っているのが見えた。
 こういうの、パパの部屋にあったエッチな本で見た事ある。
 ただチュッってするだけがキスじゃないって知った時は、びっくりだった。
 他の色んなのも亜美と二人で見たけど、所々黒く塗りつぶしてある所を見て文句言ってたっけ。
 何回かキスすると、兄ちゃんの指が律ちゃんのブラウスのボタンを外し始めた。
 律ちゃんは、ちょっと身体をよじったけど、イヤがってる感じはしないように見える。
 まさかまさか、もしかしてもしかしなくても、このまんま…セックス…しちゃうのかな。
 どうしようどうしよう。外には出られないし、かといって音を立ててバレたら超大変なことになっちゃう。
 こんな所見てちゃいけない、と思いながらも、この先の展開が知りたくて、食い入るように二人の挙動を見てしまう。
 あれよあれよと言う間に兄ちゃんはすっかりブラウスを脱がしきってしまい、その下に着ているブラも、背中に手を回して外した。
 (うわ〜、おっきい……)
 『律ちゃんって絶対ダイナマイトだよねー』って亜美とたまに話題にしてたけど、ばっちりその通りだった。
 オトナの体…って感じがする。それに引き換え、自分の胸は…なんだかちょっと空しい。
 けど、亜美も私もまだ子どもだし、大きくなったらきっとあれぐらいになれるよね。
 そんな、カッコよくてオトナなおっぱいを、兄ちゃんは律ちゃんの背中側から手を伸ばしてモミモミしている。
 手をめいっぱい広げて指でもてあそんだり、持ち上げて落としたり、なんだか楽しそう。
 律ちゃんは顔を下に向けてて表情が見えないけど、時々ハァハァ言ってるのがここまで聞こえてくる。
 その息遣いを聞いていると、ドキドキがスピードアップするような感じがした。
 「ん〜、なんだよ。変に声出すの我慢してるような感じだけど…?」
 「だ、だって…ハァ…ここ、職場じゃない…ん」
 「誰もいないんだから気にすること無いだろ?」
 「そうはいっても……」
 「よし、それなら、声出しちゃダメだぞ?」
 そういうと、兄ちゃんは指をおっぱいの先っちょの方に伸ばしていった。
 人差し指でそこをクリクリし始めると、途端に律ちゃんの身体が強張った。
 ハァハァしてる息がさっきよりも荒くなって、その中にちょっとだけ声が混ざり始めた。
 「っ…!ん…ぁ…」
 「ん?ちょっと声出てるぞ?ダメだろ、ガマンしなきゃ」
 「くっ……!…っぅ……」
 律ちゃんは、時折身体をブルッとさせている。先っちょ触られるってどんな感じなんだろう?
 試しにちょこっと自分のも触ってみよう。
 (っっ!?)
 え、何今の!?なんかビリビリって来た。
 お風呂とかで触った時には何とも無かったのし、亜美にコチョコチョされてもくすぐったいだけだったのに、どうして??
 驚いたけど、今の感触をもう一度確かめたくて、また私は自分のそこへと手を伸ばす。
 「………っっ」
 あぁヤバい。声が出ちゃいそう。声出したらここにいるってバレちゃう…!
 上手く言い表せないけど、これってクセになっちゃいそう。律ちゃんは今、こんな感じなんだね…。
 「…ようし、これならどうだっ」
 後ろから律ちゃんのおっぱいをさわさわしていた兄ちゃんが、身体の向きを変えて律ちゃんの前面に回った。
 そして、今さっきまで触っていった先っちょに口を近づけて行って、舌でペロペロ舐め始めた。
 「〜〜〜〜っっ!!」
 うつむいていた律ちゃんの身体がググッとのけぞって、息が詰まったような声を喉から漏らした。
 兄ちゃんは、大きいおっぱいを両手で寄せて、両方の先っちょをいっぺんに舐めている。
 律ちゃんは、頭を横に振りながら両手で口を押さえて、声が出ないように頑張っているみたい。
 チラッと見えたその顔はトマトみたいに真赤で、メガネ越しでよく見えないけど目元がちょっと濡れているように見えた。
 (うぅっ…律ちゃんなんだか苦しそう…)
 でも、きっと律ちゃんは、さっき感じたビリビリのもっと凄い奴に襲われてるんだと思う。
 舌でペロペロされるってどんな感じなんだろう…?それを想像すると、背筋がゾクゾクするのが分かった。
 (すっごくいけないものを見てる気がするけど、やっぱり気になっちゃうよ〜…)
 家に帰る事を一瞬思い出したけど、今はその事よりもこのロッカーの外で起こっている事に夢中だったし、それに…。
 服の上から自分のをくりくりいじっていたら、私までエッチな気分になってきてしまった…ような気がする。
 「うーん、結構頑張るじゃないか。じゃあこっちもするしかないな」
 おっぱいを舐めていた兄ちゃんが口を離し、律ちゃんのスカートに手をかけて、ベルトを外し始めた。
 律ちゃんは肩で大きく息をしながら、その様子を見ようとはしないながらも身を任せていた。
 今兄ちゃんは、どんな気分なんだろう。やっぱりめっちゃ興奮してるのかなぁ…。
 その兄ちゃんは、律ちゃんのスカートを脱がせると、その下のパンツもするすると下ろして、脚を広げさせている。
 「あ、そこ、やだ…」
 「ダメだね」
 そういうと、兄ちゃんはスラッとした両脚の間に頭を潜り込ませる。
 (えっ?まさか、そんな所まで?)
 そのまさかだった。ここからじゃ手前側の脚にかくれちゃってよく見えないけれど、さっきキスしてた時みたいな音がする。
 「ひぃっ!あ、あうぅ…!」
 さっきまで一生懸命声を出すのを我慢してた律ちゃんが、こらえきれずに声を出した。
 それと同時に、ちょっと開いていた両脚が閉じられて、兄ちゃんの頭が挟まれ、律ちゃんの両手が伸びてそれを押さえつけている。
 「んんっ、は…んあぁぁん……」
 (す、すごい声……ホントにそんな所舐めちゃうんだ…)
 いつもキリッとしててカッコよくて、キツイ事もビシバシ言って、時々怖い律ちゃん。
 その口から、こんなに甘くてエッチな声が出て来るなんて。
 まるで全く別の世界に迷い込んでしまったようで…いや、ここと外は全くの別世界。
 私がいるのはコドモの世界で、あっち側はオトナの世界。
 亜美も私もエッチな事は知ってるつもりだったけど、オトナの世界のこと、なんにも知らないんだ。
 「声…出ちゃったな、律子」
 「だ、だって、こんなの、ガマンできるわけない…」
 「なんかいつもより濡れてるぞ?ココ」
 「そんなこ……とぉぉ……な、ぁ、んぅぅ……」
 チュウチュウと吸い付くような音がすると、抗議の口調で喋っていた律ちゃんの声が急激にとろけた。
 「はっ……あ、んん、んっ、ん……」
 (めっちゃえっちぃ声出してるけど、そんなに気持ちいいのかなぁ…)
 今現在律ちゃんがどんな事を感じてるのか、想像している内に段々足の付け根の辺りがムズムズしてきた。
 何かをすする音と、ピンク色のエッチな声と、たまに聞こえる兄ちゃんの息の音に、頭がおかしくなりそう。
 「い、あっ、は、あぁぁあぁぁーーっっ!!」
 と、急激に律ちゃんの声が一際大きくなり、背中がぐーっと反って、そのままぐったりとベッドに倒れこんだ。
 それを見た兄ちゃんの表情は、どこか満足げに見える。
 倒れたままの律ちゃんの横で、兄ちゃんはシャツを脱ぎ始めた。
 (…兄ちゃんって結構筋肉あるんだ)
 クラスの男の子とは違う。兄ちゃんのタクマシイ感じの体に、ちょっとドキっとした。


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