白紙のノート

「兄ちゃん、ふぇらちおって何?」
 事務所の会議室でミーティングをしている真っ最中に突然そんなことを尋ねてきた亜美に、俺は飲みかけて
いたウーロン茶を派手に噴き出してしまった。
「なっ、な、何を言い出すんだ、突然っ!」
「こないだ取材してもらった雑誌に書いてあったんだよ。読者の人がおハナシを投稿するコーナーがあって、
女の子がバナナを食べてる絵が横にあってさ」
 真美が、落ち着き払った様子でそう言った。
 そう言えば、先日取材を受けた雑誌は、若者の間で幅広く読まれている雑誌だった。そういう話題が書かれ
ていたことも、確かにあった。無論、亜美が取材を受けた時は、恋愛、性的な話題は避けるように記者側と話
をつけておいたのだが、あのコーナーは普段からあれぐらいの話題は出てくる所だったし……盲点だった。
「……そのコーナーを見たんなら、分かることなんじゃないか?」
「分かんないよ。小さいコーナーでちょこっと書いてあるだけだったから」
「えーっと、クラスの友達とか、知ってる子もいるんじゃないか?」
「……それがね、誰も教えてくれないんだ」
 亜美が、整った眉毛をハの字に曲げて、頬を膨らませた。
「そうそう、女の子に聞いてもみんな知らないし、男の子も「真美ちゃんにはそんなこと言えない」って、教
えてくれないんだ」
「多分、男の子達は知ってるよね」
 それはそうだろう。テレビの中の有名人であり、クラスどころか学校の中でもアイドルであるらしい亜美真
美からそんな質問をされて正直に答えられる者などいないだろう……特に男子は。
「兄ちゃんは、知ってる?」
「兄ちゃんなら、きっと知ってるよね」
「ねぇ兄ちゃん、ふぇらちおって何のこと?」
「い、いや、それは、だな……」
 二人分の好奇の眼差しが、ビシビシと顔面に突き刺さる。ピュアな表情が、心に痛い。
「ねぇ、教えてよー」
「ママもパパも、『大人になれば分かることだから』って、結局教えてくれなかったんだ」
「うーん、それは正しい、と思うんだけどな」
「……もしかして、エッチなこと?」
 真美が、顔をほんのりと赤らめた。
「う、うん、亜美もそう思う」
「まぁ……そうなんだけどな」
「うわー、そっ、そうなんだ……兄ちゃん、知ってるんだね」
 意味を教えるだけなら構わないだろう。いずれ知るんだ。よくよく考えれば、変な奴に変な教え方をされた
りする可能性も無いとは言い切れない。それなら、いっそのこと俺が二人の好奇心を──あくまでも知識だけ
にしなければならないが──満たしてやってしまった方がいい。そう思った。
「ね、やっぱり兄ちゃんに訊いてみて正解だったっしょ」
「うんうん、やっぱりオトナなんだね」
 会議室のテーブルの上に、どちらからともなく二人は身を乗り出した。肘をついて、文字通り瓜二つの顔が
近づいてくる。澄んだ瞳の奥に、俺の顔が映っていた。
「で、で、ふぇらちおって何なのっ? どんなことなのっ?」
「んっふっふ、真美、男の人とこういう話するの、初めてだよ」
「亜美も亜美も!」
 二人の瞳は、ステージの照明みたいにキラキラだ。男ならそれこそ誰だってそっち方面の知識は持っている
ものだし、野郎同士でなら猥談だって普通にする。ただ、質問に答えるだけとはいえ、まだ中学生にもなって
いない女の子、しかも俺の担当するアイドル二人とこんな会話になるのは、抵抗が無いとはとても言えなかっ
た。興奮気味の二人に、ちょっぴりたじろいでしまう。
「さっき、バナナを食べてるイラストを見たって言ってたよな?」
「うん、女の人がこう、パクッてやってるとこ」
 真美が指で輪っかを作った。
「実はあのバナナは、比喩なんだ」
「ヒユ?」
 平坦なトーンでオウム返しをして、亜美が首を傾げる。
「例え、ってことだよ。バナナは、他の物の代わりに描かれてたんだ」
「何の代わりなの?」
「……男のアレだ」
 突然の代名詞に疑問符を浮かべていた二人の大きな瞳が、数秒して、驚きに大きく見開かれた。
「ええええっ!?」
「そんな、あんなのを口に入れちゃうの!?」
 二人の叫び声が響いた。
「しーっ、声がでかいぞっ」
 指を唇に当てて諫める。しんと静まり返る会議室。外から物音がしないのを確認して、真美が俺と視線を合
わせた。
「お……男の人のアレを口に入れて、どうするの?」
「なんだ、その……舐めたり、しゃぶったりとか」
「そいで、ガブッと食べるの?」
「……いや、そんなことされたら困る。噛み千切られたら男じゃなくなっちまうからな」
「食べるんじゃないんだ……じゃあ、なんでわざわざそんなことするの?」
「そうしてもらうと、男は気持ちよくなるのさ」
「き、気持ちよく……」
「うわ〜、エロエロだね、兄ちゃん……」
 軽い調子で質問していた亜美も、俺の返答にギョッとしていた真美も、揃って耳まで赤くなった。猫を引
っくり返して股を覗き込んだり、リゾート施設で水着姿の女性を眺める俺をスケベだのなんだのとからかっ
ていたが、性的な知識に関しては幼いものしか持ち合わせていないようだ。
 罪悪感の一方で、二人のまっさらなノートへ俺の手で知識を書き込みたい願望が膨らんでいく。
「兄ちゃんは、したことあるの?」
「まさか。特殊な趣味の人は別として、男は基本的にされる側だよ」
「あ、そっか。女の子にはついてないもんね」
「でも、やり方は知ってるんだよね?」
「まぁ、男としてはどうしてもらいたいか、ってのは分かるが」
「じゃあ、亜美達に教えてよ。兄ちゃんで練習するから」
「なん……だと……」
 思わず絶句した。
「ま、待った。今、何て……」
「だからさ、兄ちゃんで練習するから、亜美達に教えて、って言ったんだよ」
 平然と亜美はそう言った。
「やり方だけ聞いても、実際にやってみなきゃ分かんないもんね」
 ちょっとキョーミあるし、と、真美は真美で引く様子も無い。
「いや、そういうことはだな、お互い好きあってる者同士でするのが普通なんであって、思いつきでするよう
なことじゃないんだぞ?」
 動揺を隠せていないとは分かりつつも、弁明する。しかし、こんなのは『大人の言い訳』でしか無く、彼女
達には通用しないであろうことも、何となく見当がついていた。
「亜美達、兄ちゃんのことスキだよ。ねぇ真美?」
「んっふっふ〜、真美達、兄ちゃんにめーっちゃラブなんだよ」
「そ、そうは言ってもなぁ……」
 まるで好きな食べ物を聞かれた時の返答のような、亜美と真美のあまりにもあっさりとした口調。本人達の
意味している所と、一般的に異性に対して抱く『好き』とは、一致しているとは思えない。
「兄ちゃんも、真美達のこと、スキだよね?」
「……」
 上目遣いで真美が俺を見上げた。これはまずい。男のハートを貫き通す視線だ。日頃の表現力レッスンの成
果が存分に発揮されていて、所詮は小学生と高をくくれない。発行された写真集を自分で見た時、同じページ
をめくって特定の写真を何度も見直してしまっていたことを思い出した。
「……もしかして、亜美達のこと、キライ?」
「兄ちゃんがいつも優しいのは、お仕事だからなの?」
 有無を言わさず優しい言葉をかけたくなるこの状況においては、これ以上無いほど凶悪な二人の目つき。
「それは無い。それは無いが……条例的に色々と問題があるだろう」
「そんなの、気にすること無いよ。亜美達、誰にも言わないから」
 条例を引き合いに出すことがおかしい。そう言わんばかりに、亜美が言い切った。しかし、仮に条例を置い
ておくとしても、立場というものがある。
「でも、なぁ……」
 それを盾にするのも、少々心もとない。かといって、あまり拒み続けても、二人からの信頼を損ないそうで
あるし……
「ねぇ亜美、兄ちゃんじゃなくってさ、他の人に頼んでみよっか?」
「そーだね、ファンの兄ちゃんとかどうだろ」
「……!」
 腹の中に氷の塊をぶち込まれたようだった。
「だっっ、ダメだっ! そんなことをしたら大変なことにっ!」
 慌てて返答する俺に、亜美の口元がニヤリと釣りあがった。
「だったらさ、兄ちゃんが教えるしか無いよね〜」
「ぐっ……」
 確かにその通りだ。禁じ続ければ、業を煮やした二人がプライベートでスキャンダルになるようなことをや
らかしてしまうかもしれない。そうなったら、折角伸びてきている二人の人気も、二人をプロデュースする俺
も──勿論、765プロだって──危ないだろう。
「……分かったよ」
 もう、なるようになれ、だ。


 廊下に誰もいないことを確かめて、会議室の鍵を閉める。いきなり立ち入ってくる人間はまずいないだろう
し、そう騒音だって出ないはずだが、念のためだ。
「じゃあ、こっちにおいで」
 指先に自己嫌悪が冷や汗となって吹き出てくるのを感じながら、二人を手招きする。うんと二つ返事で、亜
美が膝立ちになった。真美は、俺と亜美を見下ろす形で、机の上に座った。
 猛烈な躊躇を感じつつ、ファスナーに手をかける。
「な、なんか、めっちゃドキドキしちゃうよ」
 脇で見ている亜美が、緊張の面持ちで俺の手元に視線を注ぐ。
 金具の擦れる音は、やけに大きかった。
「うわー……」
 開いたファスナーから、男のシンボルを露出させる。
 異様な光景だ。担当アイドルに見せるものじゃない。頭が痛くなる。
「なんか、見た感じフニャフニャだね」
「保健の教科書に載ってたのも、こんな感じじゃなかった?」
 思っていたよりも、二人の反応は冷静だ。
「触ってもいい?」
 そう言い終わった頃には、亜美の小さな手がそこに触れていた。
「まだ何も言ってないだろ……全く」
「亜美……どう?」
 真美が体を乗り出し、俺の耳元から声をかけた。背後からでも、真美の視線が股間に集中しているのがなん
となく感じられる。涼しい会議室の空間の中で、この机の周りだけが妙に生暖かい。
「ヘナヘナしてるよ。なんか、イモムシみたい」
「……」
 当然と言えば当然かもしれないが、俺の分身にはまだ血液がロクに集まっていない。この後ろめたさの中で
は、例えスタイル抜群の女が裸で目の前にいたって、立つものも立たない。実際目の前にいる相手が「あの」
亜美真美なのだから、尚更だ。
「そうだ、男の人のアレって、エッチなこと考えると大きくなるんでしょ?」
「兄ちゃん、やってみてよ」
 フェラチオは知らないくせに、そんなことは知っているらしい。
「無茶言うなよ。その気にならなきゃ無理だって、こればっかりは」
 本当はある程度の物理的な刺激があればあまり問題は無いのだが、それは言わずにおいた。もしかしたら、
このまま『その気にならなかった』ということで、この場を切り抜けられるかもしれないと思ったからだ。
「じゃあ、その気にさせればいいんだね」
 亜美がおもむろに立ち上がった。羽織っていたパーカーを脱ぎ、テーブルに座った真美がそれを受け取る。
「お、おい、まさか……」
「んっふっふ、大サービスしちゃうよん」
 剥き出しになった肩から、キャミソールの紐がゆっくりとずり落ちていく。
「よく、マンガ雑誌のグラビアで、こういうのやってるよね。男の人って、こういうの、好きっしょ?」
 パーカーを着ていた時と違い、体のラインがはっきりと見える。大人の女性というにはさすがにふくよかさ
に欠けるが、華奢な体つきや、浮き出た鎖骨、そして、やはり恥ずかしいのか、下がった眉と、染まった頬。
 そういえば、水着を着ての撮影に臨んだ時、意外なほどにスタイルが良かったのに驚いたんだったか。
「よ、よっし、これで最後……」
 キャミソールを脱いだ亜美が、くるりと背中を向けた。器用に手を回して、ブラのホックが外れて、ぱさっ
と落ちる。目の前にあるのは、染み一つ無いまっさらな背中。
 腕で胸元を隠しつつ、トップレスになった亜美がこちらを振り向いた。右腕で横一直線に隠したそこには、
控えめながらも女性特有の谷間が形成されていた。
「……えいやっ!」
 潔く、腕が外された。亜美の上半身が露になる。
「ど、どうだ兄ちゃん、めっちゃセクシーだろうっ!」
 ついつい目が行っていたそこは、背中同様に真っ白で、うっすらと膨らんだ丘の中心部には綺麗な薄ピン
クが息づいている。ウエストも細く引き締まっていて、肉付きは足りないが、均整が取れている。
 真っ白だった肌が、みるみる内に赤く染まっていく。その顔は、言わずもがな、さながらトマトだ。
「……触ってもいいよ、ほら」
 亜美の手が俺の手を掴み、そのまま胸元へと持っていく。ぷにっと柔らかい肌の感触が伝わってくる。
「大きさはイマイチかもだけど……ど、どう?」
 自覚があるのか、自信無さそうに亜美が言った。困ったような視線。滑らかな肌の感触と、小さいながらも
繊細な魅惑の感触が、俺の腰を疼かせた。
「あっ……なんか膨らんできたよ」
 背後から観察していた真美が指摘する通り、縮んでいた逸物が血液を吸って膨張し始めた。徐々に上向きに
なっていく。
「うあ……こんなに大きくなるんだ……」
 勃起してしまった。幼いとすら言える年齢の少女の裸で。そのことに、ショックすら覚える。目を皿のよう
にして、亜美がそそり立ったシャフトに視線を落としている。
「さ、触るね」
「……ああ」
 守らなければならないモラルが崩壊してしまったようで、自分の中でやけくそな気持ちが大きくなっていく。
 ぺたり。亜美の掌が、肉茎に吸い付いた。
「亜美、どんな感じ?」
「なんか、めっちゃ熱くって、ガッチガチだよ」
 そう言いながら、恐る恐る亜美が手を上下に動かした。ぷるん、と胸元が揺れる。知っててやっているのか
知らずにやっているのか、親指の出っ張りが幹の裏にゴリゴリと当たる。
「わわっ、ビクってした!」
 小さな掌に包まれたペニスが跳ねた。
「ここを刺激されると、男は気持ちよくなるんだ」
「そっか……こ、ここを……。ねぇ兄ちゃん、ふぇらちおってどうすればいいの?」
 当初の目的を思い出したか、亜美が俺を見上げて尋ねてきた。
「先端に、キスするような感じで、まずは唇とか舌で……」
「うっ、うん……」
 猪突猛進ともいえる勢いで何事にも突っ込んでいく亜美が、明らかに躊躇していた。それもそうだろう。何
しろ、男が用を足すのにも使っている所に、口をつけるというのだから。
「……ちゅっ」
 何度も何度も俺の顔を見上げてから、遠慮がちに亜美が亀頭に口付けした。その唇は、しっとりと濡れてい
た。そのまま、何回か繰り返し、亜美がそこへキスをする。緩い刺激が、断続的に訪れる。
「ん、いいよ、その調子で……アイスとか舐める時みたいに……」
「舐める……」
 血色の綺麗な唇から、赤い舌が伸びてきて、ぺろんと先端で局所に触れた。
「うあ〜……亜美、ホントに舐めちゃってる……」
 真美が、細い声で言った。
「ねぇ兄ちゃん、先っちょの方だけでいいの?」
 くすぐるように舌で刺激を続けながら、亜美が言った。
「ああ、根元の方はちょっと鈍感なんだ。そのまま先端を……縫い目みたいになってる所とか、傘みたいにな
ってる所のくびれた部分とか……その辺りを頼む」
「う、うん」
 俺の注文を受けて、舌がツボに接触する。ただ触れているだけではまだまだ物足りないが、時々こちらの様
子を窺うように見つめてくる上目遣いの視線が、断続的に電流を走らせる。
「ねぇ、なんかしょっぱいのが出てきてるんだけど……何これ?」
「カウパー氏腺液っていう体液だな」
「かうぱー? 何それ?」
 亜美が目をぱちくりさせた。
「先走りだ。要は、涎みたいなもんだよ」
「っていうことは……」
「ああ、中々気持ちいいぞ」
 いつの間にか、肉の矛はパンパンに血を吸って膨れ上がっている。これでいいんだね、と亜美が目を細めて
笑った時、暗い自虐の気持ちが全身を巡った。あの無邪気で破天荒な亜美が、トップレスになって男に口で奉
仕している。それでもその事実は、悲しくなるぐらいにオスの快楽を呼び起こした。
「そのまま、先っぽを咥えてみてくれないか? 歯を当てないように気をつけてくれ」
「え、えっと……んが、顎が……んむ」
 大きく口を開いて、俺が言った通りに、亜美ががぼっと男を咥え込んだ。歯が当たらないように唇で包むよ
うにしながら、舌がちろりちろりと裏筋の縫い目をくすぐってくる。ねっとりとした口の粘膜が、亀頭のあち
こちに当たって、思わず腰を振りたくなってしまう。
「んっ……んぐ、ぁ、……ふ、んむ……」
 鼻息が下腹部に当たる。ぼんやりとしたどこか抽象的だった刺激が、どんどん確かな快楽に変わっていく。
「いいよ、亜美……そのまま、頭を前後に揺すってみてくれ、そう、そうだ……」
 ごくり、と、隣で真美が喉を鳴らした。いったい彼女は、どんな気持ちで亜美を見ているのだろう。
「ぷはっ……兄ちゃん、どう? 亜美、ちゃんとできてる?」
「ああ、亜美は飲み込みが早いな。上手だよ」
 手を伸ばして、ぷにぷにの頬を包んで、さらさらの髪を撫でた。心地良さそうに、彼女は目を細める。
「ね、ねぇっ、そろそろ真美にもやらしてよ。亜美ばっか、ずるい……」
「真美……」
 首を回してみると、そこにはすっかり唇を尖らせた真美の顔があった。その瞳は、潤んでいる。
「うん、交代しよっか。亜美、顎が疲れちった」
 丁度上顎と下顎の合わせ目になりそうな部分を親指でぐりぐりと押さえつけながら、亜美が膝立ちの状態か
ら立ち上がった。入れ替わりに、真美が俺の前に跪く。
「ま……真美も、脱いだ方がいい?」
 ぽっと頬を染めながら、真美が尋ねてきた。俺としては、亜美の裸も真美の裸も同じのような気がしないで
もないが……。
「いや、別に──」
「脱げ、脱げーっ」
 隣で机に腰掛けた亜美が、真美を促す。
「う〜……」
 上半身を剥き出しにした亜美を見て、真美の指がパーカーのファスナーにかかった。手詰まりせずに服を脱
いでいた亜美とは対照的に、一つ一つの挙動がゆっくりだ。下着を見せる頃には、既に首元まで真っ赤になっ
ていた。
「よ、よーっし、そいじゃ……真美もするね」
 亜美と同じようにトップレスになって、真美が再び俺の前に跪き、舌を伸ばしてちょんと亀頭に触れた。
 輪郭と、感触と、味を確かめるように、性器全体を舌が這い回る。
「うわー、凄い眺め……」
「今さっきまでお前がやってたことだぞ、亜美」
「そ、そっか……」
 緊張の面持ちで、亜美が真美の様子を見守る。
「ん、んっ……」
 先程俺が言ったことを横で聞いていたせいか、真美はすぐに俺のツボを掴んだようだ。亜美よりも少し力の
篭った愛撫に、ぴくりと肉茎が震える。
「兄ちゃん、気持ちいい?」
「……ああ」
 亜美に刺激されていた分の快感が蓄積されているおかげで、亀頭が敏感になってきている。このまま続けら
れたら、達してしまうかもしれない。そうしてはならないと思うが、射精した瞬間に二人がどんな顔をしてど
んなリアクションを取るのかに興味があった。
 真美が唇を開いて、あんぐりと大きく口を開けた。ぱくりと、口内に性器が飲み込まれていく。先端を咥え
ただけだった亜美と違って、真美はペニスを奥へ奥へと送り込んでいく。真美の頭が止まる頃には、幹の中間
部分辺りまでが可愛らしい唇の奥に飲み込まれていた。
「ん……んっ……」
「お、う……っ」
 ぴっとりと、頬の粘膜が張り付いてきた。ぬめった舌が、べたっと裏筋に当たる。
 そのまま、前後に揺すられる。
 ずるり、ずるりと、しがみつく粘膜が敏感な部分を擦り上げる。腰の奥がかっと熱くなる。
「真美……それ、っ……」
「ぷはっ……兄ちゃん、今のどうだった?」
 息継ぎのために唇をちゅぽんと離した時に、傘のくびれが引っかかった。射精感が込み上げて、堪えるのに
一苦労だった。
「……凄くよかった」
 俺が正直な感想を告げると、
「ホントっ? じゃあ、もっかいするねっ!」
 満面の笑みを浮かべて、再び真美が口を開いた。
 そうしていいのだと分かって、遠慮無しに赤らんだ頬が窄む。青い髪飾りで束ねた髪が揺れる。
 ちゅるっ、じゅっ、じゅぽっ……溜まった唾液が唇からあふれ出し、卑猥な音を立てる。
「ふ……っ、く……」
 亜美の緩い刺激から始まった性感がどんどん高まっていき、絶頂を意識する所まで辿り着きそうになってい
た。頭が一往復するごとにもたらされる強い刺激に、相手が自分の担当アイドルだということも忘れて、夢中
になる。
「いいよ、真美、そのまま……続けてくれ……」
「兄ちゃん……」
 隣の亜美の手が、俺の掌に重なった。自分の存在を主張するかのように、指が絡みついてくる。
 吸い付いてくる粘膜の気持ちよさに射精欲はいよいよ高まってきていて、このまま達してしまいたいぐらい
だった。しかし、このまま射精すれば、白濁液が真美の口内へ行くことになってしまう。ここまでやっておい
て今更だろうと分かってはいるが、それは避けたかった。
 しかし、そんな俺の思惑を吹き飛ばすかのように、不意に亀頭が強く吸い上げられた。
「う……っっ!」
 突然スイッチを入れられたかのように、性器が爆ぜる。
「んぐっ!?」
 真美の瞳が驚きに見開かれた。
「えっ、どうしたの?」
 亜美の視線が、俺と真美の間を何往復もした。それもそうだろう。二人の口ぶりからすると、射精という男
のメカニズムはおろか、どんな時に射精が起こるかなんて知らなかっただろうし、フェラチオによる刺激の後
にこんなことがあるなんて、予想もしなかっただろうから。
 腰を引き抜こうとするが、肉壷に包まれて射精する麻薬のような快楽に、力が入らない。
 結局俺は、真美の可愛らしい口の中に、白濁液を一滴残らず注ぎ込んでしまった。
「ごめん真美、口の中のもの、全部ここに吐き出せっ」
 射精の快感を貪欲に堪能してしまった後で、慌ててティッシュを取り出して真美の口元に差し出す。
「えっ? もう飲み込んじゃったよ、全部」
 キョトンとした表情で、真美が言った。口を開いた拍子に、唇の端から白い液体が一筋垂れた。
「なっ、何その、白いのっ!」
「待て、亜美っ……」
 と、俺が言うが、既に遅し。ひょいと指を伸ばして白い液体を掬い上げ、亜美はそれを口の中へ。
「うげっ、何これ、マズ……」
 溜め息が漏れた。
「ん? 別にそうでも……」
 平然とした顔をしていた真美だったが、数秒して一気に強烈なしかめっ面になり……
「う……これ、何……ドロッとしてて、青臭い……」
 低い声でそう呟き、黙ってお茶の入ったペットボトルに手を伸ばした。
「すまん、口の中に出すつもりは無かったんだ……」
「もう、あんなのが出てくるなんて聞いてないよー」
 弁明する俺に、真美はぷうっと頬を膨らませた。
「あの白いのも、しょっぱい奴みたいに、気持ちよくなると出てくるの?」
「……まぁ、そんな所だ。……それより二人とも、疑問が解決してどんな気分だ?」
 頭が冷静になってきて、自分のしでかしたことに恐ろしい寒気を感じつつ、俺は二人に尋ねてみた。
「なんだかよく分かんないけど、楽しかったよ」
「んっふっふ、なんか、兄ちゃんの秘密をまた一つ握っちゃったよね、真美達」
 この後、クビになるかもな……という俺の思いとは裏腹に、二人の表情は明るかった。


 数週間後、音楽番組に出演する真美の出番を、楽屋で見守っていた。すぐ傍には、亜美がいる。
「……そこだ、いいよ、もう少し強くしても……」
「ん……うん……」
 椅子に腰掛けた俺の股の間には、赤い髪飾りの目立つ頭がある。
 手触りのいい髪を撫でながら、俺は亜美の丁寧なフェラチオを愉しんでいる。
 結局、あの時のことはどこにも流れないままに時間が過ぎていった。俺と二人との関係にヒビが入ることも
無く、むしろ、前よりも関係は濃密になった。
 世間的には決して許されない意味で、だが。
「そろそろ出すぞ。いいか?」
 俺の合図に、亜美が頷いた。頭を揺する速度が上がる。
「う、出るっ……!」
 躊躇せずに、少女の口内に精を解き放つ。
 一滴たりともこぼさずに、亜美は荒々しい男の射精を受け止める。
 性器の拍動が治まる頃になると、ごくり、ごくりと、細い喉が脈を打って白濁を飲み下していく。
「ぷはっ……やっぱ、マズい……」
 唇からグロテスクな性器を抜き取り、亜美はげんなりした顔になった。
「吐き出していいって言ってるのに、まったく」
 俺の言葉も聞いているやらいないやら、亜美はペットボトルの中身を飲み干していく。
「兄ちゃん、兄ちゃん」
「なんだい」
「真美とどっちが上手だった?」
「同じぐらい良かった」
「うー、兄ちゃん、いっつもそればっかり」
 亜美が不満そうに眉をひそめが、「まぁ、いっか」と、すぐにくるっといつもの無邪気な顔に戻った。
 テレビモニターを眺める俺の膝の上にひょいと乗っかり、細い体をもたれさせてくる。
「んっふっふ……ねぇ、兄ちゃん」
 甘えた声を出しながら、亜美が俺の手を握る。
「交代だよ。今度は亜美が……」
 その手は、ホットパンツの中へと導かれていく。
 とっくのとうに俺には、世間から後ろ指を指される要因が幾つもある。
 どうせ堕ちるのなら、とことんまで。諦めにも似た投げやりな思いは、日増しに強くなっていく。
「あっ……んぁ、兄ちゃん……」
 その思いを誤魔化すようにして、今日も俺は、白紙のノートを自分の色に汚していくのだ。


 終わり



―後書き―

ネタだけは考えていて、ちょこちょこと書いていたものでした。最初は猥談するだけだったのに……w
亜美真美は、『知識だけは豊富』って捉え方と『ほんの上辺しか知らない』って捉え方に分かれると思うの
ですが、自分の場合は後者の方です。

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