自分がプロデュースしてきたアイドルを抱くという強烈な背徳感すら、最早興奮のスープに注がれるスパイスでしかなかった。 胸元から、キュっと引き締まったウエストと細い腰を通過して、右手を真のスラリとした脚へと這わせた。 地道なトレーニングを積んできただけあって、真の体躯は全体的に引き締められている。 さらさらした皮膚の奥からは筋肉の豊かな弾力が力強く跳ね返ってくる。 砂浜で話している時に目を奪われてしまった真の脚は、特にその弾力が強い。 身体の内側から瑞々しく張った太腿を、荒い鼻息を抑えようともせずにすりすりと撫で回してしまう。 お尻まで掌を這わせてみたが、胸同様にここの肉付きも薄めだった。 「あっ、わ、な、なんか……プロデューサーの触り方、凄くエッチ……」 あからさまに驚く真。 そういえば胸をツンツンした事はあっても尻を撫でるなんてしたことが無かったな、など俺は思い出していた。 「やっ!?」 太腿の外側を撫でていた手で膝を二、三度往復し、内腿へゆっくりと侵入しようとした所、勢いよく両脚を閉じられて、ぱちんと 皮膚同士が衝突する音がした。微かにだが、カタカタと身体が震えているようだった。 「やっぱり、怖いか?」 その問いに真は、黙ってこくこくと頷いた。それもそうだろう。痛みを怖がらない人間などいない。 「大丈夫だ。怖がること無い」 緊張の色を隠せない真を抱き寄せて、あえてキスをせずに頬擦りした。 「ん……んー……」 「スキンシップみたいなもんだよ、こういうのは」 赤ん坊にしてあげるぐらいに優しく、さらりと指が通る髪を撫でて、背中をぽんぽんと叩いた。 と、そこで、俺の左肘を擦る真の左手に気づいた。そういえば、真は脱がしたが俺はまだ全く脱いでいない。 もっと直接肌同士で触れ合いたいとも思ったし、身体を離して俺も服を脱ぐことにした。 「うあ……」 ふとシャツを脱ぎ終えた所で真の方を見ると、両手で顔を覆いながらも指の隙間からこちらの様子を伺っていた。 男が服を脱ぐ所なんて見てもしょうがない気がするけれど、敢えて何も言わないでおいた。 「プロデューサーって……たくましいんですね。カッコいいです……えへへ」 「ん、そうか? ……ほら、おいで。抱っこしてやるから」 はにかむ真を手招きして、お互い背中に手を回して再び抱き合った。 「はぁ〜……落ち着きますね。なんだろう、この気持ち……」 こうして、ただ肌を合わせるだけというのも、これはこれで気持ちがいい。ずっとこうしているのも悪くないかもしれない。 よしよしと背中を擦っていたその時、パンツを押し上げるペニスに柔らかいものが触れて、同時に脊髄を電流が駆け抜けた。 どうやら真の内腿に先端が触れたらしく、激しく自己主張するそれの存在を真も悟ったようで、抱きしめた身体が少し強張った。 「プ、プロデューサー……これって……その、男の人のアレ……ですよね」 「あ、ああ、まあな」 「う……こんなに……大きくなるんですか?」 「……な、なるさ。男はみんなこうなる」 そこまで言うと真は、もじもじしながら俺を見上げた。 「さ……」 「ん?」 「触っても……いいですか?」 「えっ……」 予想しない言葉が真の口から出てきた。上目遣いでそんな事を言われたら、断れようはずも無い。 「……いいぞ」 俺は真の手を取って、テントを張った場所へと導いて重ねさせた。 「わっ! か……硬い……何これ」 一枚の薄い布越しに、真の細い指の輪郭が伝わってくる。探るように指が這うと、鈍い快感が腰の奥でくすぶった。 「まっ……真」 ちょっとタンマ、と一言断って、俺は素早くパンツを脱ぎ捨て、また真の手をペニスに重ねさせた。 「これ……硬いだけじゃなくって、凄く熱い……」 声色に好奇心が窺えた。 「うっ」 「うわ、今、ビクって……」 形を確かめるように細い手が性器を握り締めた瞬間、その柔らかさと少しひんやりした温度に、思わずペニスが跳ねてしまった。 もしもこのまましごかせたら…… 「真、そのまま、手を上下に……」 そう思った瞬間、口から言葉が飛び出していた。 「えっ!? は、はい……えっと……こう、ですか?」 訝しげな動きで、ゆっくりと真の手が幹を上下した。 「そう……もうちょっと強く握って……あ、いたた、それは強すぎ」 「あ、はい……これぐらい……かな」 知ってか知らずかは分からないが、敏感な先端部分に刺激が集中している。 ハジメテの女の子に何をさせているんだ、と思いながらも、ぎこちなさ丸出しの手つきがたまらなく気持ちいい。 顔を真っ赤にして、俺の顔を見ながら時折股間をチラっと見る真の姿も非常に高ポイントだ。 「ハァ……ハァ……」 「わ……凄い……手の中でビクビクって……」 みるみる内に腰の奥から射精感がこみ上げてきた。 こんなに早いのは我ながらちょっと情けないが、ここで出して終わりにしてはマズい。 「もういいよ、ありがとう真。気持ちよかった」 「あ、は、はい……」 「じゃ、次は真の番だな?」 「えぇっ……うわっ!」 真の両肩を掴んで、そっとシーツの海に沈めるように押し倒した。 「真、もう一度訊きたい」 上から真の目を見つめながら、俺は言った。 「俺でいいのか? 本当に」 「プロデューサー……」 真は黙って、しかしハッキリと頷いた。 「あなたがいい。プロデューサーじゃなきゃ……イヤです」 そういって真は左手を差し出すと、そっと俺の頬を撫でた。 「真……」 真はこんなにも、俺を慕い、想ってくれている。 あの日以来とにかくストレートに好意をぶつけてくる真の気持ちは俺もよく分かっているつもりだ。 ならば、今こそ俺は、俺ができる事をして真の気持ちに応えてやらなくては。 「優しくするからな……脱がしてもいいか?」 「……はい」 その言葉とほぼ同時に、さっきまでぴっちりと閉じられていた太股が、少しではあるが開かれた。 あまり後に引っ張らないように、ささっとショーツを脱がせて、足から抜いた。 薄めではあるが、股の中心に茂みがあるのがはっきりと見えた。 「………」 「ど、どうしたんですか、黙っちゃって」 「いや……キレイだな、って思ったから」 「や、やだなぁもぉ……キレイだなんて、そんな……」 生まれたままの真の姿は、全体的に線の細さが目立つ。 だが、くびれたウエストを境目にした曲線的なシルエットはとても女性らしく、すらりと伸びた両脚が美しかった。 同時に、手首のブレスレットと足首のアンクレットが、逃げられないように嵌めた手枷や足枷のように見えた。 愛しい気持ちの中に罪悪感のようなものが込み上げる。 気を取り直して、内股に手を伸ばして、瑞々しい太腿を撫でさすった。 「ふっ……あ」 真がギュッと目を閉じた。もしかしたら、ここが真の感じ易いポイントなのかもしれない。 そう思い内腿からお尻の辺りを集中的に触っていると、真の吐息がどんどん荒くなっていった。 「はぁ……くうぅっ、う……」 太腿をさする手はそのままに、真が気を払っていないであろう胸に顔を近づけ、乳首を口に含んで舌先で転がした。 「ふあぁっ!? あっ、あ、そこぉ……」 もう既に固くなっていたそこは、舌を押し返そうとするほどにピンと張り詰めていた。 股間に向けていた注意も散ってしまったのか、さっきまでは閉じられ気味だった股が開いていて、その中心部が露になっているで あろうことが分かった。 太腿を愛撫するその手を、少しずつその中心部へと近づけていく。 「あぁっ……はぁ……ん、んっ……」 辿り着いたその先には、既に若干の湿り気を帯びていた。もう一押しという所か。 少しだけ滲み出ていた愛液を指先に乗せて、秘裂の外側に塗りつけていった。 「あっ……! プロデューサー……」 頬を真っ赤に上気させて、真が荒い吐息混じりに俺を呼んだ。 口が半開きになった隙を狙って、唇を這わせて舌を捻じ込み、熱くなった舌の粘膜同士を絡み合わせた。 「んむっ……ふ……ん、んっ、あん……」 キスを続けていると、どんどん指先に触れる潤いが増してくるのが分かる。好きなんだな、キスが。 だいぶ辺りがぬるぬるになった辺りで、頃合を見計らって俺は唇を話した。 「はぁっ……はぁっ……」 「……真、そろそろ行くぞ」 愛撫をしている間は気にならなかったが、先ほど絶頂寸前まで昇ったこともあり俺のモノは痛いぐらいに勃起してしまっている。 覆いかぶさるような体勢を取り、手早くコンドームをセットして、身体の下にいる真を見つめた。 「い、いよいよなんですね。ボク、プロデューサーと……」 「ああ、そうだ。リラックスしろよ。固くなっちゃうと苦しいかもしれないから」 言いながら、見当をつけた位置にペニスをあてがって膣口を捜した。 「うっ……」 濡れそぼった粘膜に触れただけで、もうだいぶ危ない。無事に入れた瞬間に射精してしまってはダメだ。 「よし、行くぞ」 膣口にあてがったペニスを奥へと進めていく。 「ふっ……う」 中へ入ろうとしているものを排除しようとでも言うのか、予想以上に締め付けがキツくて中々奥へと進んでいけない。 「くっ……力抜け、真っ」 「あっ……うっく、は、はい……」 メリメリと音がしそうな程に、半ば無理やりに腰を前へ押し出していく。どうにかこうにか、先端部分は埋まったようだった。 あまりにも締め付けが強くて、苦しくなってきた。しかし、真はもっと苦しいはず。 このままここで留まっているのも辛いだろうと思い、少しかわいそうだが一気に貫いてしまうことにした。 「……一瞬で済ませるからな」 勢いをつけてグッと押し込むと、何かを千切るような感触と共に、ズルッと滑り込むように奥に到達した。 「いっ!? うぎぐ……くああぁぁぁっっ!!」 悲痛な声が身体の下から聞えてきた。周りのシーツを強く引っ張るその手を見るだけでも、かなりの激痛に耐えているのだろう。 もし出来ることなら、その痛みを俺が代わりに背負ってやりたい。 「はっ……入ったぞ。大丈夫か?」 「くぅぅ……だ、大丈夫……大丈夫……です……」 真の額に浮かんだ脂汗を、指先で拭ってあげた。 同時に真からも手が伸びてきて、額の汗を拭われた時、俺は自分も汗をかいていたことに気が付いた。 「ふう、しばらくこのままで……どうした?」 「うっ……うぅ……ひっく……」 力なく腕をシーツの上に落すと、真の瞳から大粒の涙がポロポロと零れ出てきた。 「あ、まっ真、ごめんな、やっぱり痛かったよな……よく我慢──」 「ちっ、ちが……うんです、うっく、そ、そうじゃなぐっでぇ……」 ギリギリと強い真の膣内の締め付けをこらえながら、俺は嗚咽混じりに声を絞り出す真の次の言葉を待った。 「ハァ……ハァ……う、嬉しいんです、ボク。父さんには男の子として育てられてきたし、学校でも皆、男の子みたいだって。 アイドルになっても、王子様って言われたりして」 「…………」 「でっでも、今こうして、大好きな人と……女の子として一つになれて、ボク」 「真」 「ボク、本当に、凄く幸せなんです……うぐ、えぅ……」 周りから男の子と間違われてしまうことは、俺が思っていたよりも遥かに、真の心に深い影を落とし続けてきていたようだ。 自尊心が傷ついた場面なんて数え切れないだろう。 泣きじゃくる真をぐっと抱き寄せて、耳元で「可愛いよ、真」と囁いた。 「ん……プロデューサー……好き……」 甘えた声で返事が返ってきた。その言葉の響きが切なくて、少し抱擁を強めた。 そうして、真が泣き止むまで、赤ん坊にしてやるように身体を揺すってあやし続けた。 ふとシーツを見ると、先ほど真が感じたであろう、いや、今でも感じ続けているかもしれない激痛を象徴するような痛々しい血の 赤が転々としていた。 「……まだ痛いか?」 「ん、ちょっと……」 「もし辛いようなら、これ以上は……」 「あ、へ、平気です。その、動いても……」 そう言うと真は自ら、微かにではあるがグリグリと腰を押し付けてきた。 「そうか、じゃあゆっくり動くぞ」 ストロークを大きくしないよう、奥に入ったまま小刻みに腰を前後させ始めると、刺激に反応するかのように肉壁が蠢いた。 「ふ……あ」 それにしても強烈だ。 ゴムごしに伝わってくる温度は温かいが、喰い千切られてしまうのでは無いかというぐらいにギュウギュウに締め上げてくる。 激しく腰を打ちつけたら、決して長持ちしないだろう。 ゆっくりと内部を擦っていてさえ、腰の奥で快感がその重たさを凄いスピードで増していくのだ。 「く……苦しくないか?」 「だっ……あ、大丈夫……っふ、プロデューサーの、熱くって……」 「ああ、真の中も、きつくって……熱い」 お互いがお互いの熱さを感じている。それにも関わらず、もっと熱くなりたいとすら思う。 「真っ、もう少し勢いつけるぞっ」 「はっ、はいぃ……あ、うあ、あぁんっ……」 グラインドの速度を上げると、奥の締め付けが更に強くなった。 しかし、段々と内部が潤ってきているのか、つっかえる感じはしない。 カリの辺りをゴリゴリと擦られて、快楽が腰から脊髄を駆け上り、思わずうめき声が出てしまった。 「あ、はっ、あ、な、なんか変、変ですっ……!」 真も次第に痛みが減ってきたのか、首筋までピンク色に染まって、瞳を潤ませている。 あの真がこんな表情を、こんな声を出して、あの真を、俺が、俺が抱いている。 「うっ!? や、やば……」 何の前触れも無く強烈な射精感が押し寄せてきて、俺は意識を集中させるべく一旦腰を止めた。 が、ぬめった膣内のヒダが、休憩などさせまいとでも言うかのようにペニスを急かした。 くそ、こうなったら突っ走るしかないか。 「ハァ、ハァ、ハァ……」 最早俺は何も言わなかった。腰の奥で疼いているだけだったカタマリが、先端へと駆け上っていく。 俺はその瞬間を一秒でも先に伸ばそうと思いながらも、真の最奥を擦り続けていた。 「う、あぁっ、あ、あ……なんか……頭がボーッと……」 真も快感を感じ始めてきたのだろうか、上ずった声をあげた。ずりっずりっと擦れるような音が、段々水っぽさを増してきた。 「んんっ、はぁ、ぷ、ぷろでゅーさぁ……」 シーツを掴んでいた手が、俺の首筋に回ってきた。と同時に、両膝で腰を捕まえられロックされた。 生でしているならこの状況はマズイだろうが、ゴムをしている今はその事に用心する必要も無い。 とにかく頭の中が真っ白になってしまいそうで、繋ぎとめている理性も崩壊寸前だ。 「んっ……む……く……ふ……」 突然真からキスをされ、思ってもいなかったことに向こうから舌が口内に乱入してきた。 テクなど何も無い、乱暴とすら言える衝動がぶつかってくる。なのに、どうしようも無く気持ちいい。 「うっ……で、でるっ……く、うぁ……」 「んんっ!? う、はぁ、あっ……」 情熱的に俺の唇を貪る真に、俺はとうとう限界を迎えてしまった。 堪えてきた分なのか、激しい勢いで尿道を精液が駆け抜けて行き、先端が爆発しそうだった。 一度の発射の度に、頭の中が白くフラッシュし、腰が痙攣した。 「あ……ビクビクってしてる……」 真は言いながら、俺にしがみつく足の力を少し強めた。 ゴム越しにも伝わってくる熱の中に、このまま溶けていってしまいそうだ。 「はぁ……なんだか凄くあったかいものが、ボクの、ボクの中に……」 「……へ? 中に、って、おかしいな、ちゃんとゴムは……」 「え、な、何がおかしいんですか?」 まるで中に出したかのような真の感想に、俺はまさかと凄まじい悪寒を感じて急いで腰を引き抜いた。 「……無い」 本来出したものが溜まっているべき場所に、僅かな雫が残っているばかりでほぼ何も溜まっていなかった。 自分で裏筋の辺りに指を這わせてみると、人差し指に白いものが付着していた。 これが示すものは一つ。 「あ、穴が空いてたのか……こ、こりゃマズイ」 「ど、どうしたんですか? 顔真っ青になっちゃってますよ?」 「ゴッゴゴゴムに穴が空いてて、お、お前の中に……」 「へ? じゃぁ、あのあったかいのって、プロデューサーの……」 「すまない! ごめん! 真に何かあったら、俺がどうにか責任取るからっ!」 「あっ、そ、そんな、土下座しないで下さいよ!」 「で、でも……」 「えっと……大丈夫だと思います。多分もうそろそろ、次のが来るだろうし」 最悪のそのまた向こうの状況を思い浮かべて魂が抜け出そうになっていると、真が俺の首筋に抱きついてきた。 「プロデューサー、今」 「えっ?」 「責任取ってくれる、って言いましたよね?」 「あ、ああ、言ったような」 「やったぁ!」 「ぐぇっ、く、苦しい、首を絞めるな、真っ」 次の日、いつも通りの姿に戻り、どこか不自然ながに股で後ろについてくる真と一緒に、ホテルを出た。 「夕方までには東京に戻れるだろうから、事務所に行って俺の車で送るよ」 「は、はいい」 「おいおい、大丈夫か? 歩き方が凄く変だぞ」 「だって、なんか股の辺りが……」 「ああそうか、昨日の……」 思い出すと顔が熱く火照ってしまう。それは真も同じようで、赤色の見本のような色になって俯いてしまった。 「ほら、行こう。駅までもう少しだから」 「あっ……は、はい!」 どうせこの際だ。誰かに見られるかもしれないが、このまま手を繋いで駅まで歩くとしよう。 終わり