「いっぱい出ましたね…………ん、ふっ……」
 圧力が離れていき、トーンを落とした低い声がしたとほぼ同時に、ぺちゃぺちゃと、何かを舐める音がした。
 「律子?」
 「苦い……どろっとしてる」
 俺が出した物を律子が舐めている。啜る音。コク、と、口に含んだものを嚥下する喉の立てる音が部屋に響
いた。唇が、掌か指先か、とにかく何かに吸い付いた。スナック菓子を食べて指先についたカスを残らず舐め
取るかのような意地汚い行為を、聡明な律子が目の前でしている……その光景を真っ暗な部屋の中に思い浮か
べると、絶頂を味わったばかりの性器に熱が戻ってくるのを感じた。
 「っ!?」
 もう一度律子にしてもらうように頼もうと口を開いた瞬間、まだ余韻がほのかに残る亀頭に粘膜の壷が覆い
被さってきた。不意打ちのような刺激に腰が浮いてしまうと、壁に突き当たるような感触がして、ぬるりとし
た感触が離れていった。
 「げほ、げほっ……」
 俺の膝下辺りで律子が咳き込んでいる。今の粘膜の感触……口で咥えられて腰が浮いた拍子に喉の奥を突い
てしまったようだ。
 「だ、大丈夫か?」
 「ごほっ……いきなり動かないでよ、もう」
 「すまん、ビックリしちゃって、つい」
 律子の溜め息が聞こえた。
 「……お、お口で……してあげますから、じっとしててくださいね」
 言葉にするのが恥ずかしいのか、一つ咳払いをしてからたどたどしい口調で律子がそう言った。近付き易い
ように少し脚を開いてやると、茎の根元に律子の指が添えられた。訪れる性感を期待して体温が上がる。
 ぬるり。柔らかな唇を割って入る感触と共に、口の中に男性器が飲み込まれた。肌よりも熱い粘膜がペニス
のあちこちに当たる。幹の裏側にぬめぬめした舌がまとわりついてきて、動きそうになる腰に意識を集中して
押さえつける。律子の頭を手で探り、さらっとした髪を掌に感じて、包み込むようにして頭頂部を撫でた。
 「出したばっかりなのに、凄く硬いですよ。んむ、ちゅっ……」
 出っ張った傘に唇が触れた。絡みついた精液を綺麗にしてくれるつもりなのか、ずるっと啜り立てるような
音も聞こえる。目で物を見ることを放棄したお陰で、唾液に濡れた舌が這い回る音や、苦しそうに呼吸する律
子の息の音が随分と大きく聞こえる。耳まで愛撫されているかのようだった。
 「あ、い……いいよ律子、凄く、気持ちいい……」
 先端だけを咥え込み、律子が俺の亀頭を吸い上げる。カリが唇の内側に引っかかってたまらない快楽を呼び
起こす。狭くてうねった膣内の気持ちよさとはまた別の物があるし、何よりも、毒を含んだ言葉を紡ぎ出し、
辛辣な檄も飛ばし、マグカップからコーヒーを飲んだり、時には甘い口付けを交わしたりもするその唇でこん
な所を……という異常さにも似た状況が、背筋を震わせる程の電流を生み出す。口の中に入ってからどのぐら
い経つのか、時計なんて見えないから分からないが、下半身が熱くなってきた。足指の先端の知覚が希薄にな
っていく。
 「律子、いい? このまま、口に……」
 荒い息を混じらせて言う俺に、律子は「うん」と鼻から声を出して答えた。
 じゅるっ、じゅぽっ、ぐちゅっ、ぐちゅ……。
 粘膜の壁が迫ってきて、ぴったりとペニスが包まれる。上下に揺すられる感覚と、溜まった唾液が立てるい
やらしい音に、高まった興奮が更に高まる。じっとしてて、と言われたことも忘れて、腰が揺れるように動い
てしまっていた。
 「あぁっ、出る、出すよっ、律子……!」
 頭を撫でていた右手のみならず、左手も加勢に入って思わず律子の頭を俺の腰に押し付けた。弾け飛んでし
まいそうな腰を突き出して、体内から吐き出されていくザーメンを一滴残らず愛しい恋人の口に注ぎ込んでい
く。解放感と征服感に頭が熱くなり、声帯を締め付けたような声が俺の喉から漏れた。
 「はっ……お、おぅ……」
 口を犯すかのような動きをしてしまった俺を咎めることも無く、律子は鼻で呼吸しながら黙って喉を鳴らし
ていた。尿道の残りも、ずるずると音を立てて吸い取られる。射精の快楽がフラッシュバックした。
 「ぷはっ…………ん」
 温かい口内からペニスが押し出され、仮眠室の空気に晒された。まだ律子の口の中には精液が残っていたの
か、ごくりと飲み込む音が聞こえた。不味い不味いと言いながら毎回のように飲んでくれる律子に、嬉しさを
感じつつも少々申し訳ない気分だ。
 「……ふぅ。スッキリしたよ。凄くよかった。ありが──」
 「何を勘違いしてるんですか。まだ終了じゃないですよ?」
 体の中のモヤモヤが抜けて爽やかな気分で律子の頭を優しく撫でていると、ぴしゃりと言葉を遮られた。
 「思うんですけど、溜まっててムラムラしちゃうんなら、溜まらなくなっちゃうぐらいのスッカラカンにし
ちゃえば、ムラムラして集中力の低下を招くなんてことも無いわけよね? 今日の仕事、簡単だったのに随分
時間がかかってたようですけど、それが原因だったんでしょ?」
 舌がペニスの裏筋ににじり寄ってきた。リングを作るようにした指が先端と茎の境目を細かく往復する。
 「い、いや、その理屈はおかしいんじゃないか? いいって、疲れるだろ、律子も……ぁ」
 気持ちいいツボを刺激されて、下半身から力が抜けていく。触覚の全てが股間に集中してしまい、またも硬
くなるペニスがビクッと跳ねて膨らんでしまう。
 「ふーん……でも、ココはまだ不満みたいですよ? ほら、もう濡れてる……」
 鈴口をほじくるように指先で刺激されて、水道を緩めたかのように先走りが次から次へと漏れ出てくる。
 幹を這い回る舌の感触に意識が行くのを見越していたかのように、突如睾丸を揉みしだかれた。
 「この中で、作ってるのよね……」
 思わぬ不意打ちに、更なる快感を求めて腰を動かしたい衝動が頭をもたげる。理性で抑えていても、僅かに
揺するのは止められなかった。
 「えっと……次は、っと」
 手が握り締めてくる感触とも、ぬめった口内の感触とも違う、豊かな弾力が左右から襲い掛かってきた。
 「ダーリン、好きでしょ、ここ……。やたらと触りたがるものね」
 真っ暗な部屋の中で自分の姿を見られる心配が無いせいなのか、律子の口調が大胆になってきている。
 根元を僅かに残して、亀頭までぴったりと人肌の空間に閉じ込められるような狭苦しさ。底無しの柔らかさ
が隙間無く俺の肉茎を圧迫してくる。そのまま上下に揺すぶられると、張り出した傘が引っかかって、猛烈な
疼きと痺れが同時に訪れる。腰が勝手に動いてしまう。
 「はっ……ふぅ、ふぅっ……ぁ、気持ちいいっ……」
 「こ、こらっ……もう、やんちゃなんだから……」
 腰から下が、別の生物に支配されたかのようだった。一直線に高まっていく情欲が、もう少し楽しみたい気
持ちを一方的に塗りつぶしていく。そんな俺に、両胸をもっと強く押し付けることで律子は答えてくれた。
 「ハァ、ハァッ……うっ、く……また、出……」
 最後まで言い切れずにまたもや上り詰める。ぴったりと押し包まれて……いや、潰されるような強い圧力の
中に劣情が放たれていった。
 「ほらほら、休んでるヒマなんて無いですよ」
 「あっ……! り、律子、俺まだ、イッたばっかりで……」
 まだ射精が止まっていないのに愛撫が再開された。あまりの気持ちよさに腰が動かせなくなる俺を、律子は
休ませてくれないらしい。俺が腰を振っている間は止まっていた乳房が再び上下に動き、吐き出したばかりの
精液のぬめりを帯びた柔肌がカリを擦りたてた。
 「ん……滑り、良くなりましたね。私も、ちょっと気持ちいいかも……」
 ぬちゃ……ねちょ……にちゃ……。
 精液の青臭い臭いが充満し始めた部屋の中、粘液の絡んだ肌の摩擦が立てる卑猥極まりない音が響く。その
いやらしい音をBGMに、荒くなって艶の混じり始めた律子の息と、俺の情けない声が立つ。
 股間の性感帯への甘い刺激が絶え間無く俺の神経をくすぐり続け、いきり立ったままの肉塊は射精を経ても
鎮まる様子など見せなかった。体の熱は、冷めてはまた熱くなりを繰り返していた。
 「律子……先っぽ、そんなに強く……!」
 「ん〜……そういうこと言うと、もっと強くしちゃいますよ」
 「あっ……よ、よせよ……はぁ、うく……」
 上下に揺すられるばかりだった刺激が複雑に変化して、左の乳房と右の乳房が回るように動いて、一層強く
押さえつけられた亀頭が柔らかな肉に蹂躙される。精液で滑りが良くなっていなければ痛みを感じてしまう程
に強い力で蹂躙されて、また股間に熱が集まってくる。
 「ビクビクしてきましたよ……もう出ちゃいそう?」
 「あ……あぁ」
 俺の返事を聞くや否や、温かくて柔らかい肉に包まれていた空間から亀頭だけがぽっかりと外気に晒された。
と思った瞬間、幹は乳房に包まれたまま、亀頭がぬるりと口に含まれた。
 「く……っ」
 出せ、という合図をするかのように、強く亀頭を吸い上げられて、我慢することもできず半ば強制的に精液
が体外へと引きずり出された。ペニスが跳ねて欲望が迸る間にも、吸い出す力に射精とその快楽を加速させら
れる。尿道から生命力を吸い取られているかのようだった。
 「…………薄くなってきた」
 さっきから変わらず律子は精液の通り道に残った分も綺麗に吸い取り、こくんと音を立てて胃の中に流し込
んでいく。ちゅっと水音がして、ぷにぷにした唇の柔らかさをカリの膨らんだ部分に感じた。
 「り、律子、もういいだろ? もう出ないって……うぅっ」
 乳房の極悪な弾力から解放されたと思いきや、ねっとりした舌が鈴口をくすぐり、ぬめった粘膜が被さって
きた。口に含まれるや否や、起伏の無い平坦な粘膜が左右からきゅっと押し付けられる。そのまま、敏感なく
びれ目を執拗に舌が責立ててくる。
 「ん……何言ってるんですか。本当に出なくなってから言ってください」
 そう言って、律子は俺を責めることをやめようとしない。これだけ熱心にしてくれるのは嬉しいと言えば嬉
しいが、本当に根こそぎ搾り取られてしまうのではないかと少々不安になる。部屋の中の暗さが、尚更その不
安をかき立てる。しかし、どうしてだろう。恐怖ではない感情に背筋がゾクゾクした。
 「ん、んむ……ふ……ほら、まだ元気じゃないですか」
 欲望にまみれて暴走するでも無く、俺を苦しめようとするでも無く、愛情といたわりがどことなく感じられ
る丁寧なフェラチオに、柔らかくなっていた男根が硬さを取り戻す。亀頭の粘膜に密着してくる頬のぬかるみ
と、鈴口から縫い目をざらざらと舐めまわす舌のねっとりした弾力。射精を促すように吸い付かれながら、口
の粘膜で扱き上げられて、高みへと持ち上げられる。
 腰の底で性欲の火が灯り、次第に熱がペニスの先端へと集中していく。
 「うっ……っ」
 溢れ出す、というには少し勢いの弱い、注射器のピストンで内側から押し出されたような射精だった。それ
でも、精液の熱を感じ取った律子が吸い上げてくることで勢いが増して、射精を加速させられた分その快楽も
増大する。
 快楽の余韻が冷めるのも随分早くなってきた。何度も何度も射精の快感を浴びて、頭がぼんやりする。律子
はまだ、舌で俺のペニスを根元まで丹念に掃除している所だ。睾丸の下、蟻の門渡りという呼称で呼ばれる場
所を指でくすぐられ、睾丸を掌で揉みほぐすようにマッサージされる。
 「ダーリン……好き……」
 あぁ、このタイミングでそんなことを言うのか。クラクラする頭が歓喜に打ち震える。律子の愛撫から与え
られる快楽が愛しさに増大し、半分ほどの勃起で留まっていた性器が一気に硬くなった。
 「あ、大きくなってきた……まだして欲しい、ってことよね……」
 「うっ、あ……」

 ──明日の俺、仕事できるのかなぁ……。
 栗の花の臭気漂う真っ暗な仮眠室の中で、豊満な柔らかさに挟み込まれながら、そんなことを思った。
 

 翌朝、出社するなり俺は社長室のデスクに突っ伏していた。全身がだるくて、脚の間がひりひりする。
 昨晩、仮眠室を出る頃には日付が変わる寸前の時間になっていた。いつ入ったのかはよく覚えていないが、
結構な長時間あの真っ暗な空間で律子の熱心過ぎるほど熱心なご奉仕を受けていたのは確かだ。「スッカラカ
ンにする」という律子の言葉は本気のものだったようで、絶頂を迎えても僅かしか出なくなる所まで徹底的に
俺は責め抜かれてしまった。おかげで、『溜まっている』という状態から最も遠い状況に置かれているわけだ
が、この倦怠感はどうしたものか。生気を吸い取られた、という表現がぴったり来るような気がする。
 「おはようございます、社長……」
 ドアをノックしてから、律子が顔を出した。俺の様子を見るなり申し訳無さそうな顔をして、後ろ手にドア
を閉め、俺の机に栄養ドリンクを二、三本まとめて差し出した。
 「おはよう律子。まさにスッカラカンだよ……色んなものが」
 「うーん……ごめんなさい。顔が見えなかったものだから、あの辛そうな声もてっきりフリかと思って。帰
り際にあなたの顔を見たらゲッソリしてたものだから……とりあえず今日の所はこれでどうにか凌いで下さい」
 額に手を当てて数秒考え込んでから、律子は深々と頭を下げた。以前にも似たようなことがあったが、律子
はどうも加減を知らずにやり過ぎてしまうことが時々あるような気がする。
 男性並に論理的な思考をする割には感情的になりやすい辺り、やはり女性なのだと思う。
 「まぁ、あまり気にしないでくれ。気持ちは嬉しかったから」
 律子が差し出してくれた栄養ドリンクを一気に飲み干しながら言った。この手のドリンク特有の、喉がヒリ
つくような甘苦い味が口の中に広がる。
 「すいません、今日は時間空いたらご飯作りに行きますから。スタミナのつく物を考えておきます」
 「お、そいつは有難い。じゃあ、その期待に応えられるように仕事早く終わらせないとな」
 「ええ、そうですね」
 眉を下げたままだった律子が、安堵したように笑った。眺めているだけで元気の出るような笑顔を見ること
ができて、体が軽くなるような気すらした。
 じゃあ行こうか、と律子の肩をポンと叩き、社長室を後にして亜美達との顔合わせに向かう。


 「あ、兄ちゃんおっはよーん」
 朝日の射し込むフロアで最初に声をかけてきたのは亜美だった。なぜか、床に四つん這いになりながら。
 よく見るまでも無く、真美も同じ体勢を取りながらキョロキョロと辺りを見回している。
 「どうしたんだ?」
 「真美が五百円玉落しちゃってさー、どっかにコロコロ転がっちゃって見つからないんだよー!」
 たかが五百円、と言ってはなんだが、それにしても大袈裟なほどの亜美の表情。と、その脇でこちらにお尻
を向けている真美の黒いミニスカートから、明らかに色の違う布地が覗いているのが見えた。男としては美味
しい光景なのだが……ぴくりとも心が動かないのは、やはりスッカラカンにされてしまったからだろうか。
 「律子、律子」
 「何ですか?」
 「真美がな、その……律子から指摘してやってくれないか?」
 見えてるんだよ、と付け足すと、察しのいい律子が呆れたように溜め息をついた。
 「いや、別に何とも思ってないけどさ、俺から言ったらマズいだろ」
 「まぁ、確かにそうですけど……もう、どこ見てるんですか」
 抗議する目で俺を一瞥してから、律子は真美の方へと大股で歩いて行った。お金を探し続ける真美の横にし
ゃがみ込んで律子が耳打ちする。「わぁっ!」と大きな声を出し、慌ててお尻を抑える真美。
 「律ちゃん……真美のお尻見てたの?」
 「なッ……なんで私が同性のお尻に注目するのよ! あそこの社長が言ってたからってだけで……!」
 「んっふっふ、真美のセクシーショットは女の子の視線も釘付けってワケだね〜」
 律子にジトッとした視線を投げつける真美とその正面で目を吊り上げる律子を尻目に、ちゃっかり亜美が右
手をポケットに押し込んでいた。俺の方に目配せして人差し指を唇に当て、「五百円あったのナイショね」と
ウインクする亜美の表情に、今日も一日賑やかになりそうだな、などと、まだだるい頭で思っていた。


 終わり



―後書き―

punishmentの加筆が終わった頃に頂いた「ご奉仕され隊(要約)」とのリクエストを元に書きました。
うまくお望みの物に仕上がったかなぁ……。
それにしても同じ内容で二件リクが来た(多分別の人から)のは笑っちゃいましたw
読む人に想像力をとことん働かせてもらおうと、真っ最中は視覚情報の一切を省いてみました。
書き終えてみて、匂い、触感、味、音、そのどれものボキャブラリーが不足しているなぁと痛感orz
まだまだ修行が足りませんのう。
リクエストありがとうございました。書いてる方も楽しかったです^^



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