「だ、だってぇっ……!」
 ぶるぶると律子が身を震わせた。
「ひょっとして、いじりたくなった?」
「う……」
 首を縦にも横にも振ることなく、律子が黙り込んだ。耳がかぁっと紅に染まる。
「し、仕方ないじゃない……中途半端なままでほっとかれて、なのに、こんな……」
 太腿が擦り合わされた。
「も、もういいでしょ? エッチするならするで……」
「いや、まだだね。もう少し朗読は続けてもらおう。いい所なんだから」
「うぅ……」
 普段なら強気な言葉でまくしたててズケズケと物を言って抗議する律子も、エッチなことをする時は従順だ。
腰に巻かれたベルトを解き、スカートのホックを外す俺の手にも逆らわずに身を任せ、脚を広げるよう言えば、
その通りにおずおずと脚を開いていった。白いショーツの中心部は、お漏らしでもしたみたいに色濃く変色し
てしまっていた。
「律子、濡れてる?」
「み、見れば分かるでしょ……」
 まだ開いたままの本で、律子が顔を隠そうとする。
「脱がすよ」
 ショーツの脇に指を差し入れて、引き下げる。クロッチの裏地が、粘り気のある糸を引いた。
「びしょびしょだな。触ってもいないのに」
「い……言わないで……」
 そう言いつつも、律子がご褒美を待つ時の目で俺を見た。
「ほら、律子。続きを読むんだ」
「え……?」
 してくれないの、という文字数がぴったり収まりそうな沈黙。その後に俺が何も付け足さなかったのを確認
して、釈然としない様子で律子が唇を開いた。
「『「ああっ、やめてください、そんなに乱暴にされたら痛い」律子が抗議した。それでも、男の逞しい指は
内壁を擦り上げる動きを止め……あっ、んあ……」
 そろりそろりと忍び寄らせた指を、雨後の畑のようにぐちゃぐちゃになった秘所へ差し込むと、律子が甘い
声を漏らした。すんなりと俺の指を飲み込み、きゅうきゅうと貪欲に入り口が締め付けてくる。
「んぅ、あ、う……い、あぁっ……」
 指を何往復かさせると、たちまち性器が卑猥な水音を立て始めた。
 ちゅく、ちゅく、ちゅく。掌が粘り気を帯びた液体で濡れていく。
「『あ、愛してもいない上司に……指で恥ずかしい所を犯されている。たまらなく嫌なはずなのに、体の奥か
ら蜜、蜜がっ……溢れて、下半身、が……熱い……』」
 律子の声が途切れ途切れのものになってきた。指を締め付ける肉壺も、それに比例して狭さを増していく。
広げた脚の先では、足の指がきつく握られていた。首筋と胸ばかり刺激されて、じれったいながらも昂ぶって
しまい、早くも達してしまいそう……そんな所だろうか。
「律子、イキそうか?」
 俺の質問に、律子は首を縦に振って答えた。
「まだダメだ。このページを読み終えるまで我慢しろよ」
「そ……そんなぁ、む、無茶、言わないでよぉ……まだ、こんなに」
 今律子が読み上げているのは、見開きページの左側。俺が指したのは、見開きの右側だ。
「『律子は、ぶ、部長、の……巧みな、指使いに、とうとう、耐えられなくなって、きょ、嬌声をあげはじめ
た』あぁっ、ダメ、指、増やさない、でぇっ……!」
「ほらほら、頑張れ頑張れ」
 突き入れた指に増援を出し、脇から頭を潜らせて、ぴんぴんに硬くなったままの乳首にまた吸い付く。空い
た手も遊ばせておくことはせず、もう片方の乳首をきゅっと捻る。こんなことをすればすぐに昇天してしまい
そうだが、分かっていてやっているのだ。
「む、無理ぃっ……ガマンなんて、でき……うぅ……『おとこは、答えない……律子のささやかな、抵抗をあ
ざ笑う、かのようにぃ……弱点を、執拗に、せっ、責める……』」
 我慢なんてできない。そう言いながらも、律子は拙い調子で健気にいやらしい言葉を読み上げていく。体は
汗ばみガクガクと震えて、今にも張り詰めた糸がぷつんと切れてしまいそうだ。絶頂を懸命に堪える律子の姿
は、いじらしいものだった。
「『いやいや、をするように……首、振ってっ……こらえていた、りつこ、も……とうとう、息も、たえだえ
になって……ダメ、もう……』」
「もう少し、あと一行だ。まだイくなよ?」
「はぁっ、はぁ……! 『しろい、のど……のけぞらして、はっ、果てたぁっ……!』」
 ぱたっ。俺の指定した所まで読み終えて、律子は小説本を手から落とした。
「もっ、もう……いっ……いいでしょ? イッ……は、あっ、イッ……てもぉっ!」
 瞳に大粒の涙を浮かべながら、律子が懇願した。
「ああ。よく我慢した。いいぞ、思いっきりイッて」
 目いっぱいの高みまで押し上げてやろうと、裂け目の頂点で腫れ上がった突起を親指でぐりぐりと押し潰し、
内壁を責め続けていた二本の指で、天井を思い切りグイッと押し上げた。
 指を締め付ける圧力が一気に高まった。
「くあぁっ……イクっ、あ、あああああああああっっ!」
 高い声で律子が叫んだ。突き出した腰から熱い飛沫が噴き出し、掌に当たる。
 拳を握って思い切り体を硬直させ、程無くして律子はぐったりと俺にもたれかかってきた。
「はぁっ……はぁっ、あ……」
 火照った体の呼吸は、まだ荒い。指を入れたままの股間は、内腿までぐっしょりと分泌液で濡れていた。
 大きく上下する肩が落ち着くついでにブラウスも脱がせて、律子の体を生まれたままの姿に剥いてしまうと、
汗ばんだ肢体がゆっくりと反転した。
「……ん、っ、ぁ……」
 請う目つきで見つめられて、求められるままに唇を重ねる。絡め合う舌から伝わってくる律子の唾液が少し
甘いように感じた時、俺はズボンの中にある違和感に気が付いた。布地を押し上げるほどに硬くなっていたの
は勿論のことだが、ねばっとした液体の存在がそこにあったのだ。
 ファスナーを下ろして肉の矛を取り出すと、幹には白いものがそこかしこに付着していた。どうやら、律子
を愛撫している内に、俺も射精してしまっていたらしい。絶頂を迎えた時のあの派手な快感が訪れなかったの
を考えると、浅い射精だったようだ。
 このズボンはクリーニングに直行だな。そんなことを思いながら、律子の顎を掴んだ。
「口で、してくれないか」
 唇をなぞりながら俺が出したキューに、律子は一瞬の躊躇の後に、うんと頷いてくれた。手で膝を押しのけ
られて、俯いた頭が割って入ってくる。
「……っっ」
 温かい粘膜がぬるりと包み込んできた。足の指に思わず力が入る。ちゅるっと啜る音が聞こえたのとほぼ同
時に、喉が鳴る。半端に迎えていた絶頂のせいか、早々に亀頭からムズムズするような痺れが腰を伝って上り
始めてきた。先端と幹との境目を、舌が巧妙になぞる。
「……ふ……ん、震えてますよ、ここ……」
 唇が離れれば、指先が裏筋の縫い目をくすぐる。強い刺激の後に緩やかな刺激を受けて、少し頭がクールダ
ウンする。サラサラした髪の毛を撫でると、再び暖かな肉壁がすっぽりと覆い被さってきた。きゅっと頬を窄
めて、上下の動きで律子が俺を追い立てる。
「ん、ぐっ……」
 膨れ上がった風船が、弾けた。肉茎から白濁が放たれていく。その様を俺が目にすることは無く、全てが律
子の口の中で吸い上げられていく。性器の痙攣に合わせて、粘膜の吸い付きが強くなった。
「…………っ」
 眉間に皺を寄せながら、口の中に出された体液を律子が飲み下した。見るからに不味そうなその仕草に罪悪
感がふっと浮かび上がる。
「ちょっと、早く無いですか?」
 まだ苦い顔をしたままの律子が言った。
「さっき、軽くイってたからな。……もっと舐めてたかったか?」
「ばか、そういうのじゃないわよ。むしろ早い方が……」
 律子が、しまったという顔をした。
「ほう、先に進みたかったんだな」
「ちっ、違……!」
「……ソファーに手をついて、お尻をこっちに」
 ひらひらと手を振って否定する律子に構わず、半ば強引に位置を入れ替えた。軽く溜め息をついてから、律
子は俺の言った通りの姿勢になってくれた。胸同様にむっちりと肉付きのいいお尻をぎゅっと掴む。太腿をく
すぐるように爪をそっと這わせると、腰がふるふると揺れた。
「ん、っ……や、焦らさないで、早く……」
 べっとりと濡れた秘穴から、一筋の雫が垂れた。
「ちょっと、白いな」
 下半身の唇を左右に開くと、淫らな音がして洞穴の入り口が露になった。透明な腺液に加えて、奥の奥から
も白く濁った愛液が分泌されているようだった。
「そ、そんなに、見ないで……」
 ひくひくと入り口が蠢いた。
「欲しいか?」
「……うん、欲しい……」
 たらり。また一滴、内腿を愛液が伝っていった。
「よし、いいだろう。俺ももう、辛抱が効かなくなりそうだ」
 小分けの袋を取り出して、情事の身だしなみを整える。膝立ちになって、律子の腰を掴む。
「は……あっ、あ……んあぁ……」
 溜め息のような声を律子が漏らした。
 大きく膨らんだ男性器を、柔軟に広がった入り口は易々と飲み込んでいく。背筋がゾクッとするのを感じな
がら押し入っていくと、根元まで入った所で行き止まりに突き当たった。
「あったかいな」
「熱い、ですよ、私は……」
 華奢な背中越しに律子が言った。
「動くぞ」
「……あっ、あ、あぁぁっ……!」
 ソファーの上に置いたクッションに皺が寄って、歪んだ。
 腰を揺すると、粘膜がぬちゃぬちゃと擦れ合う音が、リビングの一角で淫らに響いた。
「はぁっ、あ、う、んうぅっ……」
 まだ入れたばかりなのに、律子の声のボリュームがやけに大きい。膣の締め付けもきつく、包み込んでくる
優しさも少々陰を潜め気味だ。もしかして、と思い、少しばかりペースを上げてみると、
「あぁぁっ! や、そんな、激しくされたら……わた、し……」
「またイッちゃいそうか?」
 俺が尋ねると、お下げ髪が縦に揺れた。
「じゃ、いいぞ。遠慮なく……」
 奥まで突き入れてストロークを抑え、行き止まりをぐりぐり圧迫すると、律子が仰け反った。
「やっ……いっ……ふあ、あぁぁぁっ……!」
 突っ張らせていた腕が、力無くがくんと折れた。
 締め付けが緩み、ソファーの上に律子が突っ伏す。
「ふふ、今日は早いじゃないか」
「だ、だって、あなたがあんなことさせるから……」
 ゆらゆらと不安定な口調で、律子が抗議した。
「エロ小説読んで興奮したのか。真面目でお堅いイメージなのに、律子もエッチだなぁ」
「うぅ……」
 何も言い返せずに、律子は赤くなった顔を更に色濃く染めて、
「い、いいじゃない。私だって、それなりに……」
 傍にいる俺以外には聞こえないほど小さな声で、そう呟いた。
「別にダメとは言ってないだろう」
「でも、女の子だから、やっぱり──あぅっ!」
 でも、けど、だって。生意気に口応えばかりする律子が喋っている途中で、奥まで入れていた性器を引き抜
き、勢いをつけて押し込んだ。体を半身にしてすらっとした脚を片方担ぎ上げ、床よりも柔らかいソファーの
上に横向きに寝かせた律子に腰を打ち付ける。
「続き、しようぜ。俺はまだなんだから」
「あっ、ず、ずるい……そ、あぁっ、あ……!」
 絶頂を迎えた時に増したぬかるみのおかげで、中の滑りがいい。引っかかる感触が少し弱くなったのが残念
だが、後ろからしていた時とは違って、襞が捻じれている。新鮮な刺激と、快楽に弄ばれて涙目になっている
律子の表情が、俺を昂ぶらせる。
「わ、私……まだ、イッたばっかり、なのに……ひっ、あぁっ……!」
「ほら、見えるか律子。凄いぞ、こんなに広がって、美味しそうに咥えこんでる」
「や、やあぁ……あっ、あ、ふぁあっ……」
「っく、キツっ……」
 恥ずかしさに律子が顔を背けると、内部の圧力が強くなった。温かく俺を包んでいた粘膜が、異物を苦しめ
ようとぐいぐい締め付ける。奥に引きずりこまれるようでもあるし、排除しようと外へ押し出されるようでも
なった。腰の奥で熱の塊が燃え上がり始めるのを感じた。
「はぁっ、はぁっ……あぁ、そ、そこぉ……」
 ツボを突き上げられた律子が、恍惚とした声をあげた。理知的な彼女にはありえない涎が口元からたらりと
流れ出る。
「んふっ、んんっ……!」
 顔を近づけて、その涎を舐め取りながら、舌を絡めあって唾液を交換する。
「ダーリン……私……あっ、ああ……」
 潤んだ瞳が俺を見つめた。
「私、イッちゃ……」
「俺も、もう少しだから……我慢しろ」
 抽送のペースを上げる。
「は……はやくぅ……」
 律子が、体を支えていた肘を倒し、眉間に皺を寄せた。切なそうな表情。射精感が膨らむ。
「く、律子……」
「ねぇ、ま……まだ、なの? がまん、なんて、できないよぅ……」
「そ、そろそろだ……」
 もうどれだけ堪えても間に合わない所まで、欲望を凝縮した体液が上って来た。
 後は、尿道を通して先端から解き放つのみ。無心に腰を振る。
「ごめん……私、ムリ……先にっ、はっ、あああぁぁぁっ!」
「ん、俺もっ……」
 どうやら間に合ってくれたようだ。叫び声をあげて律子が果てるのを眺めながら、爆発的な快楽に腰が動か
せなくなって、断続的に訪れる衝撃を受け止める。視界が何度もフラッシュした。全身から力が抜ける。
 弛緩してしまった体にようやく力が入るようになって、上から律子の顔を見下ろすと、汗に濡れた前髪が額
にぺったりと貼り付いていた。手近にあったタオルを取って、瞳から零れた涙も一緒に拭ってやると、
「ありがとう……」
 と、律子が照れ臭そうにはにかんだ。



 汗を洗い流して気分爽快、浴室から出てリビングに戻ると、パジャマ姿の律子が先程の小説に目を通してい
た。
「なんか、冷静に読んでみると、表現がオッサン臭すぎる気がするんですけど、これ。くどいっていうか」
「ん、そうか?」
「なんでしょうね、こう、『男の欲望丸出し』って感じがします」
 真面目な顔でそう言う律子がなんだか可笑しくて、頬が緩む。
「今ひとつ、って所か?」
「ええ、今ひとつです」
 そう言って、律子は小説を元の通り閉じてテーブルに置いた。
「男の人って、こういうのが好きなんですか?」
「まぁ。人による、だろうな。活字にそういうのを求めない人もいるだろうし」
 冷蔵庫の中から缶ビールを取り出しながら答える。俺がプルタブに指を引っ掛けるのを見て、律子が訝しげ
に目を細めた。飲んでもいいよな、と訊いてみると、律子はずかずかとこちらに歩み寄ってきた。
「私が注いであげますよ。コップ持ってきて下さい」
 俺の手から缶ビールをひったくりながら、眼鏡をの奥で瞳を細めて律子が微笑む。
「今日はダメって言わないんだな」
 いつもだったら、お酒は飲んじゃダメ! としかめっ面になるのに。
「まぁ、健康でいて欲しいのは確かなんですけど、たまにはいいかな、って。あ、私もジュース飲みますから、
それぞれもう一つずつ持ってきて下さいね」
「おやおや、明日は雨かな」
「何か言いました?」
「いや、何にも」
 コップも携えて、テレビの前に腰を下ろす。ブラウン管では、俺達の事務所に所属するアイドルがトーク番
組で喋っている所だった。
「おや、亜美が映ってるじゃないか」
「ええ、この間収録に行った番組のオンエアが今日なんですよ」
 しゅわしゅわと音を立てて、律子の手に持った缶からビールが注がれていく。亜美の明るい笑い声が響いた。
「ツマミ、何か持ってきましょうか?」
「いや、いいよ。この番組がいい肴になるし、それに」
「それに、何です?」
「敏腕の美人プロデューサーが横で晩酌してくれるからな」
 少々気障だとは自覚しつつも、わざとそう口に出してみた。テレビに注いでいた視線を、隣の律子へ移す。
「またそんなこと言って。わざとらしいお世辞を言われたって、嬉しくないですよ」
 そんな棘の付いた言葉を吐きながらも、目元は柔らかく笑っていた。
 今宵は、美味い酒が飲めそうだ。



 終わり



―後書き―

えー、このSS、元ネタがあります。僕がやったことのある数少ないエロゲー「つよきす」から
シチュエーションをパク……お借りしました。知ってる人ならピンと来るかも?
今回はちょっとだけ三人称での視点を盛り込んでみました。思ったよりも書けたんで、いずれ
三人称でも書くかもしれませんね。


PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル