コーヒー味の唇



 
 夕方も過ぎた、とあるビルのとある事務所。
 外はもう日も暮れ、帰り道を急ぐサラリーマンの群れも少し勢いが収まろうかという時間だった。
 俺は今、デスクに向かって打ち込み作業中の、部下兼同僚兼友人兼元アイドルを待っている所だ。
 塞翁が馬とはよくいったものだ。
 新人のアイドルプロデューサーだったかと思えば、765プロの子会社とはいえ社長になってしまった。
 しかも俺の担当していたアイドルは現在プロデューサーとして活動中。本当に人生は何が起こるか分からない。
 「そろそろかな」
 だいたい彼女の仕事のペースを把握している俺は、こっそり自販機へと走り、ブラックとカフェオレを一缶ずつ買ってきた。
 一日の締めくくりにコーヒーを飲むのが、何時の間にか二人の間での通例になっていた。
 「お疲れ様、律子」
 「あ、今丁度終わりました。あ、コーヒーありがとうございます」
 『電源を切っています』と映し出すディスプレイの傍らに律子の分のカフェオレを置き、俺はブラックのプルタブを引いた。
 「ふふ、今日も一日、お疲れ様でした!」
 コイン、と缶の音が響き、その間抜けな音に二人で顔を見合わせて笑った。
 「あの二人、どうだ? もうそろそろライブで一緒に出してサプライズ、ってのもいけるんじゃないか?」
 「うーん、まだですかねぇ。息はぴったりなんですけど、実力の底上げが先決かなぁ」
 あの二人、というのは、腕白真っ盛りの小学生、双海亜美と真美の双子の姉妹だ。
 律子がプロデュースしているアイドルだが、やはり色々と手を焼いているようだ。
 俺も時々自分の仕事の合間を縫って様子を見に行っている。
 かつて……765プロの高木社長がそうしていたように。
 「まぁ今は人気も上り調子ではありますし、まだ二人で一役って方針で行くつもりです」
 「そうだな、それがいいだろう」
 ふと、事務所にかかった時計を見やった。まだ今日は終電までかなり時間がある。
 ちらりと律子の顔を見てから、こう切り出した。
 「ところで律子。今日はまだ時間、早いから、その……なんだ」
 ダイレクトに口に出すのは流石にはばかられたので言わずにいたが、何を言わんとしていたかは律子も理解したようで、
 「え、ええ〜っ? そ、そんないきなり言われても……」
 と、困った顔をした。

 「……ダメか?」
 「……もっとこう、ムードとかさぁ」
 「ムードか」
 「そうよ、雰囲気は大事なんだから。……ダメとは言わないからさ、私をその気にさせてみて」
 律子はそう言うと、眼鏡をクイッと上げて、ほんのりと頬を染めた。
 真面目で勝気で辛口な部下兼同僚兼友人兼元アイドルは、今ではもう一つ、恋人という肩書きを持っている。
 とはいえ、けじめのきっちりついた俺たちが男女の関係になるのは、もっぱら仕事を終えてからだ。
 「ははっ、難しい注文だな」
 俺はそう言いながら律子の手を取り、指を絡めてギュッと握り締めた。
 律子は余裕の表情で唇の端を吊り上げた。それはそうだろう。これはまだジャブに過ぎないのだから。
 握り締めた手はそのままに、空いた方の手で頬を撫で、顎のラインをなぞると、律子はくすぐったそうに目を細めた。
 「この程度じゃ、まだまだ」
 細い肩を抱き寄せ、顎の頂点を掴んでこっちを向かせ、じっとレンズの向こうの瞳を覗き込んだ。
 十秒程そうして見つめていると、律子がゆっくりと目を閉じた。キスしてもいいよ、という合図だ。
 そのまま、柔らかい唇を目掛けてキス。
 さて、どうだろうと唇を離してみた所、律子はしかめっ面になっていた。
 「苦い」
 一言だけ言って、頬を膨らませた。ああ、こんな表情も可愛い。
 「悪い悪い、ブラックは好きじゃなかったよな」
 俺はカフェオレの缶の中身がまだ少し残っていることを確かめると、口の中に少し流し込み、そのまま律子に口づけた。
 そっと舌に乗せて唇の向こう岸へカフェオレを送ると、こくんと細い喉が鳴ったのが分かった。
 「今度は甘いだろ?」
 「え、ええ……」
 瞳が潤んできている。もう一押しか。
 「……律子が欲しくてたまらないんだ。……いいかな?」
 耳元でそっと囁くと、
 「……うん、合格……いいわよ」
 向こうからキスのお返しが来た。



 人員の少ないこの事務所でも、キッチンや仮眠室など、一通りの設備は整っている。
 765プロの高層ビルの設備に比べれば大した事は無いが、なに、これからたっぷり稼げばいいのだ。
 俺と律子は、設置はされていても実質二人だけしか利用しない仮眠室へと入った。
 部屋に入るなり律子は、「服がシワになるからあっちを向いていろ」と言い、おもむろに服を脱ぎ始めた。
 一旦スイッチを切り替えてしまえば結構こういった事にも乗り気な律子なのだが、中々俺に服を脱がさせてはくれない。
 向こうが裸なのにこちらだけというのも何なので、俺も服を脱ぐ。
 ひとしきり身辺整理が終わった所で律子に向き合う。
 やはり胸元のご立派なものにどうしても目が行ってしまう。
 「まーた胸ばっか見ちゃって……って、あ! 履いてる!」
 俺がトランクスを履いているのを目ざとく見つけた律子は、眉をひそめて半ば強引に最後の砦をひっぺがしにかかった。
 こんな時でも律子は律子なのだ。
 「あっ……もう……」
 「……分かりやすいからな、男は」
 俺はもう既に臨戦態勢が整っていた。律子は天を向いてそそり立つ赤黒い塊をちらりと見て、顔を赤くした。
 「今日は……私からしよっか」
 いくら真面目な律子とは言えど、年相応に性行為に関する知識はある程度持ち合わせている。
 全くされるがままでなく、たまには自分からアクションを起こしてくれることもあるのだ。
 恥じらいを所々にのぞかせながらもエッチに積極的なその姿がどうしようもなく俺をそそる。
 「ね、どこがいい? ここ?」
 両手が俺の手を包み、
 「ここ?」
 ぺロっと赤い舌を出し、
 「それとも……ここ?」
 包んだ俺の手を豊満なバストに添えた。
 「ま、迷うなぁ……」
 手でしてもらうのも、口でしてもらうのも、胸でしてもらうのもどれも気持ちよくて、順位はつけられない。
 どうしようかと考えていると、俺の頭のあるアイデアが浮かんだ。
 いつものようにするのもいいけれど、今日はちょっと刺激的な事をしてみたい。
 そう思って、俺は仮眠室をぐるりと見渡してみた。
 ……あった。手近かつおあつらえ向きの道具が。
 「えっと、律子。今日はちょっと違うことをやってみないか?」
 「え? い、痛くしないんだったらいいけど……何するの?」
 「痛くはしないよ、んー、眼鏡は外した方がいいか。ちょっと取ってくれるか?」
 俺が言うままに律子が眼鏡を外した。
 「ちょっと目、閉じて」
 「え、ええ」
 長い睫毛を伏せて、瞼が閉じられた。眼鏡を外した律子は、俺の贔屓目を差し引いても美人だ。
 アイドル時代にこれをやっていれば、効果絶大なイメージ戦略になりえただろうに。
 もっとも、それを本人に話したら何故か嫌がられてしまったのだが。
 眼鏡をつけていても勿論律子は可愛い。しかし、外した時も、それはそれでいい。
 それが俺の中で出た結論だった。
 「ねぇ、まだ開けちゃダメなの?」
 (はっ、ついつい見惚れてしまった)
 俺はいそいそと安眠用のアイマスクを手に取り、律子の背後へ回った。
 剥き出しのうなじに軽くキスをして、一気にそれを律子に被せた。
 「わっ、何? 何したの?」
 何をされたかもよく分からずにいる律子の、しっとりした唇をキスで塞いでひとまず落ち着かせる。
 「ふ……んっ……な、何をするの?」
 「何って、その……ナニだよ」
 「えっ?」
 ソフトSMを知らないのだろうか。だとしたらちょっと意外だ。
 律子の両腕を絡めとって後ろ手にし、手近にあったタオルで両手首を縛った。
 ちょっと頑張れば振りほどける強さにしておくが、そのことは敢えて律子には告げない。
 「ちょ、ちょっと、どうして手を縛るの?」
 「だから言ったじゃないか、ちょっと違うことをするって」
 「これって痛い奴なんじゃないの? そういうのは嫌だってば……」
 あからさまに動揺する律子を後ろからそっと抱きしめた。
 「そういうのはもっともっとエクストリームな奴だ。これは痛くないから大丈夫」
 そう言いながら、すべすべした肌を撫で回した。
 肩から腰へ、腰から膝へ、膝からふくらはぎへ。
 顔を首筋に埋めて、女の匂いを胸いっぱいに吸い込む。
 「ん〜、いい匂いだなぁ律子は」
 「なっ、何を……」
 鎖骨のラインを指でなぞり、唇で触れるだけの軽いキスを首筋から背中へと降らせていくと、律子の体がビクッと反応した。
 まだ刺激の強い部分は避け、そうやってソフトな愛撫を繰り返していった。
 律子の体がうっすらと汗ばんできた頃を見計らい、顎を掴んで唇の中へ舌をねじ込み、熱くなった口内の粘膜を蹂躙した。
 「ん、く、ふあ、あ、あっ……」
 やや律子からの反応が大きい。次にどこから刺激が来るか分からない状況がそうさせているのか。
 それとも、両手の自由を奪われてされるがままという屈辱的とも言える状態か、あるいはその両方か。
 「は、あ……ん、んんっ!」
 一度唇を離し、舌先にかかったアーチを鑑賞しようと思ったが、ポカンと開いたままで隙だらけの唇を再び貪った。
 ぬめった舌同士を絡め合わせ、端からこぼれた唾液はわざと音を立てて啜った。
 味は無い。が、互いの体液を交換するという行為が胸を熱くする。
 唇を離し、息をする度に上下するその豊かな胸へと手を這わせていった。
 「あぁっ、あ、や……」
 さするつもりで触れただけで、律子の背筋にピンと緊張が走った。
 どうやら、先ほどからの緩い刺激で焦れてしまっていたようだ。
 「はぁっ……あ、っく……あァッ! あ……」
 やや手に余るサイズの、柔らかなカタマリをぐにぐにと弄ぶと、たちまち律子の息が荒くなってきた。
 「大きいよな、律子のおっぱい。モチみたいに柔らかくてあったかくて、いつまでも触っていたいぐらいだよ」
 「や、だ……い、言わないで……は、ふぅん……」
 わざと律子の羞恥心を煽るように、なるべく低い声で耳打ちするように囁いた。
 あまりにも俺の本音過ぎて、言葉責めをしたいのか感想を述べたいのかやや不明瞭ではあるが。
 「いつもあんなに厳しい律子が、こんなにエッチな身体をしてるなんてなぁ……たまらないよ」
 言いながら、乳房を揉みしだく手と指の動きを、少しだけ強く激しくした。

 「うっ、う……ス、スケベ……! ああ、あ、あ……」
 「律子が魅力的なのが悪いんだよ。ほらほら、おっぱい気持ちいいの?」
 「しっ、知らない、そんなの……あ、はぁ……」
 「そっか……じゃあもっと気持ちよくしてあげないとな」
 さっきから敢えて手を触れずに焦らし続けてきた、大きな膨らみの頂点に指を添えた。
 「はうぅん! あぁっ……! はあぁ……」
 触れた瞬間、律子の声のトーンと音量が上がった。
 桜色のそこはもう血液が張り詰めて固くなりきっていて、頂点の周囲の乳輪までもが勃起していた。
 「ここいじられるの好きだろ? こんなにコリコリになるまで焦らして申し訳ない、ホント」
 「別に、好き……じゃ……なぃ……あ、やだっ! あ、あっ! ふああん!」
 汗ばんだ律子の肌から指で汗をすくいあげ、皮膚の奥へ浸透させるように丹念に乳首を揉みほぐす。
 それにしても、外に誰かいたら間違いなく聞えてしまうような音量の喘ぎ声だ。
 こんな間近でとろとろした声を聞く方はたまったもんじゃない。
 今すぐにでもこの欲情を律子の中に洗いざらいぶちまけてしまいたいぐらいだ。
 が、ここはじっとガマンの子だ。焦りは禁物である。
 「気持ちよくないのか? いいならいいって言っちゃえばいいのに……意地っぱりだなぁ」
 「こ、こんな事されたって、き、きぃ……気持ちよく……なんかぁ……あ、あ……」
 むっちりした太腿をモジモジとすり合わせながらも、律子は口答えする。
 今日はいつも以上に強情だ。それとも……楽しんでいるのだろうか。
 ぴったり閉じられた太腿の奥が今頃どうなっているか気にかかって、乳首を捏ね回すのを止めてみた。
 「ふぇ……?」
 先ほどからずっと刺激し続けてきたから、数秒程触れずにポーズを置いてみることにした。
 案の定、アイマスクで周りが見えないのに首を僅かに動かして周囲の様子を窺おうとしている。
 「ね、ねぇ。どうしたの……?」
 少し股が開いた所を見計らって、右手をその間に突っ込んだ。
 「ふああんっ!」
 「わ……すご……」
 思わず声が漏れてしまうほどの大洪水。内股や陰毛までべとべとに濡れてしまっている。
 「ううっ……だ、だめ……」
 力なく呻きながら、太腿でギュッと俺の右手を挟み込んだ。が、残念ながら律子の秘密の場所はもう射程圏内だ。
 自由になっている指先で裂け目をこじ開け、ヌルヌルの湧き出る泉へと指を沈めていった。
 「い……あぁんっ! は、あ、あ、あ……」
 大洪水の内側は、熱くとろけきってドロドロ。指を往復させる度に、中に収まりきらない愛液が外へと流れ出た。
 それでいて、中を掻き回す動きを更に促すようにうねっている。
 「律子のここ、凄いぞ……トロトロになってて俺の指まで溶けそうだ」
 「ふぁぁ……うぅ……は、はっ……! ハァ……」
 それからしばらくの間、部屋には俺の吐息と、律子の嬌声と、穴をかき回す水音だけが淫らに響いていた。
 「ハァ……ハァ……ねぇ、もう、もう、これほどいてよ……」
 俺が二本目の指を挿入しようとした所で、律子が切なそうに言った。
 「どうした律子。もうガマン出来なくなっちゃったか?」
 「う、うん……私、これ以上ガマンできない……見えなくて手も縛られてて……切ないのよぉ……」
 涙声で訴えかけてくる律子の声に俺はハッとして、緩く縛ったスポーツタオルを解いて、目隠しも外してあげた。
 「ふぅ………ふぅ……」
 「う、うわっ! 律子!?」
 手の自由を取り戻した途端、律子は俺を勢いよく突き飛ばし、俺はベッドに押し倒された。
 「はー、はー……も、もうガマンできない……って、言ったでしょ……」
 眼の端に涙を浮かべてはいるが、ギラギラした視線で律子は俺を見下ろした。
 呆気に取られていると瞬く間に両手首を抑えつけられ、今度は俺が凄い力で拘束されてしまった。
 「あ、あ……これ……欲しいの……」
 張り詰めた股間の怒張が、ぬるりとした物に撫で付けられた。
 「あ、入る、は、はぁ、あ! あ、あああぁぁぁんっ!」
 位置を合わせたと思った瞬間に、一気に温かくぬめった蜜壺にペニス全体が飲み込まれた。
 「すご……大きくて、かた……いっ……あ」
 「うっ、く……!」
 入った物の大きさを確かめるように、律子がクネクネと腰を回した。
 締め付けが強いのは元からだが、それにも増して吸い付くように膣壁が蠢いている。
 俺もずっとガマンしていた事もあって、早くもぶるぶると腰の奥が震えるのを感じていた。
 「あ、あっ……ん、は、んふぅ……」
 ひとしきり腰を回して輪郭を確かめたかと思うと、上になったまま律子が腰を上下に激しく、荒々しくグラインドさせた。
 俺が下になっているこの体勢といい、両手首を抑えつけられている状況といい、まるで男に組み敷かれている女の子のようだ。
 俺を見下ろす律子が、発情期を迎えた猛獣のように見えた。
 滑りの良い襞に粘膜を舐め取られ、ゴシゴシと絞り上げられる。
 頭が真っ白になってしまいそうな、圧倒的な快感が背筋を猛スピードで駆けのぼる。
 「はっ、は、うっ……き、気持ち……気持ちいい……!」
 恍惚とした甘い声を上げながらも、律子は腰を休めない。それどころか、スピードが上がっている。
 目の前で惜しげもなくぶるんぶるんと上下に揺れる二つの果実。
 口の端からだらしなく涎を垂らして快楽を貪る律子の表情。視覚的な刺激が強すぎる。
 「んぁ、ん、んっ……ふ、ふうぅぅ……すごいよぉ……!」
 こんなに乱れて快楽にどっぷり浸かった律子は初めてだ。ネチネチ愛撫していたのが相当効いたのだろうか。
 溢れるほどの愛液のおかげで痛みは無いが、手で握ってしごかれるよりも強い圧力があらゆる方向から俺を締め付けていた。
 直に神経を舐められているかのような快感が脊髄から脳いっぱいに広がって意識を塗りつぶしていく。
 「あ、あ……い、い、イキそ……ひ、イ、イク……ひあっ、あうぅぅぅぅぅぅっ!」
 律子が顎を天に向けて仰け反り、俺の手首を掴む両手と、ペニスを締め付ける膣の力が急激に強まった。
 ぐねぐね蠢いて搾り取ろうとしてくるその動きに、腰の根元から精液が無理矢理引きずり出され、何の抵抗を受けることも無く
 劣情を律子の胎内に吐き出した。
 「ううっっ! くおぉ……」
 腰が砕けてしまいそうな快感が頭の中を乱暴に打ち叩いた。
 射精の真っ最中だというのに、もっと出せと言わんばかりに律子は乱暴に締め上げ、ぐいぐいと奥へ引き込んでくる。
 その勢いで、ロクに動いても居ない内から強制的にもう一度射精へと押し上げられ、続けざまに搾り取られた。
 長い長い射精が済んだかという所で、ぷっつり糸が切れたように律子の体から力が抜け、俺の上に倒れこんできた。
 「ハァ……! ハァ……!」
 荒い息で呼吸を繰り返すその背中は、汗にじっとり濡れていた。
 俺の手首には、律子が押さえつけていた痕が、くっきりと赤く残っていた。
 力の抜けきった唇にキスをすると、
 「……ダーリンのバカ……」
 とだけ律子は呟いた。



 激しかった情事が済んで、ヨロヨロと服を着始めた律子はなぜか悔しそうな表情を浮かべていた。
 「律子、どうだった?」
 「ど、どうだったって……言えないわよ、そんなの」
 「いやあ、あんなに乱れてる律子は初めてだったなぁ……なんだかレイプみたいにされちゃったし大胆な……いでっ」
 先ほど手首を縛ったタオルで頭をはたかれてしまった。
 「そりゃあ……い、痛くは無かったけど……でも! 目には目を! 歯には歯を! 次はそっちの番ですからね!」
 「ええっ! そ、そりゃ無いぜとっつぁん」
 「だーれがとっつぁんよ! もう! ダーリンのスケベ!」
 帰ったら早速リサーチしなきゃ、と呟く律子に、次にこの仮眠室に入った時どうなってしまうのだろうと俺は戦慄を覚えていた。

 終わり



―後書き―

律子はムッツリ派と無知派に分かれそうですが、俺はムッツリ派です

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