それは、突然の雨だった。











通り雨






空気が湿ってきたことに気づけば、みるみるうちに空には暗雲が立ち込め、矢のような雨が激しく地面にたたきつけられる。



「こりゃー多分夕立じゃが、こうひどい雨じゃと傘さしとっても、あんまり役に立ちそうもないのぅ。雨が止むまで、待っとった方が良さそうじゃな」


「そうですね……」


二人並んで窓の外を見上げながら、勇音は頷いた。



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勇音の差し入れのきっかけは、ふとした事から、射場がいつも酒ばかり飲んで、ほとんどまともな食事をしていないと知ったことだった。



こんなことして差し出がましくないかな。

迷惑だと思われないかな。



最初は本当に恐る恐るではあったが、勇気をだして渡したところ、幸いにして射場はそれを快く受け取ってくれた。


そして後日、持っていった料理を射場が大絶賛したこともあって、勇音はすっかり気を良くし、今ではそれがすっかり習慣化している。


そんな様子を見た周囲のほとんどは、どちらかというと、勇音が射場の世話を焼いていると解釈しているのだが、実ははどちらかというと射場の方が勇音に夢中なのは案外知られていない。



顔を合わせれば清音にキツいイヤミを言われたり、やちるや乱菊や一角にしょっちゅうネタにされて、からかわれるのはさすがに閉口してしまうが、それでも、勇音がそばにいてくれることに比べれば何でもないと射場は思うのだ。



もしかしたら、こういうのを"幸せ"っていうんじゃろうか……?



射場は机を挟んだ向かい側で、お茶をすすっている勇音をちらりと盗み見る。


涼やかなで優しげな目元、すっと通った鼻筋、吸えばほんのり甘い唇。


あの時出会わなければ、おそらく二人とも"ただの同僚"どころか、ろくろく口も聞くこともなかっただろう。


そう思うと、人の縁というものは不思議なものだと思う。


知り合うまではずっと遠いところに佇んでいた女が、今、こんなにも近くにいる。








「…射場さん?あの…私、顔に何かついてますか?」


不思議そうに問い掛ける勇音に、射場はハッとなって顔をあげる。



「あ?ああ、別に何でもないけぇ。にしても、ちーとも止みそうにないのう、この雨は」


まさか、勇音に見とれていたなどと言えるわけもなく、気恥ずかしい気持ちを悟られないよう、別の方へ話しを振る。



「そうですね……あ、今何か光りませんでした?」



「ん?そうか?気がつかんかったが」



気のせいじゃろ―――と射場が言いかけたとき、ドーンと大きな何かが落ちるような音が響き渡った。


間髪いれず、ゴロゴロという音とともに、空が光る。



「こりゃー、どっかに落ちたかもしれんな……勇音?どうした?」


「あ、あの、大丈夫、です……」


手のひらをそれぞれの両耳に当て、顔を真っ青にして勇音はガタガタ震えている。


「…雷、怖いんか?」


「あ、あの、実は、あんまり得意な方じゃ……っ!!!」

キラッと稲光が光り、勇音がギュッと目をつぶって、身体を縮こませるのと同時に。


突然、肩を抱かれて引き寄せられた。



「射場さん……」


「ここは安普請じゃが、一応避雷針もついとる。多分落ちることはないじゃろ。

それに、わしもおる。安心せぇ」


「はい……」



おずおずと勇音は射場の背中に手を回し、身体を射場の胸に摺り寄せ、目を閉じた。


自分の心臓の鼓動が早鐘を打つかのごとく、早くなっていくのがわかる。


そしてもう一つ。


触れ合ったところから聞こえるのは、射場の心臓の鼓動。



……ものすごく、どきどきしてる。



そっか。射場さんも、どきどきしてるんだ。



そっと上目遣いで射場を見上げるが、やはり表情は読み取れない。





けど、なんか、嬉しいかも…………。



ざぁぁ…と雨の音が響き、雷の轟く音は相変わらずだったけれど。


射場のぬくもりに包まれながら。


勇音はもう怖いとは感じなかった。





凪:しっかり恋人設定で書いてます☆
勇:一応、料理上手という設定なんでしょうか?私…?
凪:お姉さんキャラですから、それはモエ的に必須です!!!
勇:…(呆)それより、この話、甘甘で、なんか恥ずかしいんですけど…///
凪:別に甘甘にしようと思ってるワケじゃないんだけど、こーなってしまうのッ///

20070214up

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