「こ、……な………か?」
「あー……、………い…ね。」
聞いた事が有るようなそんな声が響いた気もする…
ああ、俺は気を失ってしまったのか…?
全身が重い、ただ刺された脇腹の痛みはどうやら引いている様だ。
良かった。…不幸な事が有った後は少しだけでも良い事が起こるようになっているんだろうか。
そういえば…何処まで歩いたのだろう。
気怠い気持ちを振り切り、薄らと瞼を持ち上げた。
見えたのは俺と同じ銀髪
「………っ…な?!…っ痛…」
理解出来ない人物が俺を覗き込んでいた為、反射的に起き上がろうと動いたが、力が篭り、刺された腹部の痛みがよみがえってきた様だ。
腹に手を当てればどうやら包帯が巻かれているようで、ざらりとした感触が伝わってきた。
俺の声に反応して目の前の人物の口元が緩く弧を描く。
「……あんまり動かない方が良いよ。結構深いとこまで刺さってたみたいだから。
…此処は俺の家。安全だから、そんなに緊張する必要も無いよ。」
さらりと言ってのけると、腕を軽く取られ身体の横に下ろされ、布団を胸許まで掛け、額にひやり、とした布の様なものがのせられた。
状況が分からず、ただされるがままに受け入れるしかなかった。
「……赤木…か?……何でだ…?」
この場所が今この男が暮らしている場所だという所までは、気が動転している俺でも分かったが
本当にこの男が赤木なのかが分からなかった。その上に、俺を助けた理由も。
「………。…この痣は古そうだね。……これはどうしたの?」
一つ目の問い掛けにはゆっくりとした瞬きで肯定され、2つ目の返答は返って来なかった。
赤木の指先が二の腕に触れ、逆に問い掛けられる。
横目でその場所を見ると薄らと青痣が見えた。
きっと数日前に安岡さんが荒れた時のものが残っていたのだろう。
原因に気づけば、何故か苛立ってしまい、目線を赤木が居ない方向へ流す。
間を置いて指先が其処を撫でた。
慰める様な優しい手付きが妙に心地好く感じ、目頭が熱くなりかけるが、誤摩化す様に目を閉じた。
「………──あ。」
何か思い出したのだろうか、赤木は一言だけ声に出し、くくく。と喉を鳴らして笑い出した。
暫くそうして笑っているものだから、気になってきて横目で赤木を見れば目が合った。
目が合うと笑いを止めて、じ、と真面目な顔で見つめられ
目線が反らせなくなってしまった。
数秒程のことだろうが、何分にも感じる程長い時間だったような気がする。
見返していると急に赤木は再び笑い、
「アンタ…名前、何だったっけ?」
先程までの張りつめた空気は全く無く、溜息混じりの笑いを名前と共に吐き出した。
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アトガキ
アカ平です。しげるの口調ってこんな感じでいいのかが難しい。
安岡さんとの関係は『理不尽が染み付く身体』みたいな暴力的な関係の設定。