ルージュの跡は
私は季節はずれの転校生・加地くんと付き合っていた。
加地くんは何をするにもスマートで本当、彼氏として何の不満も…不満もないハズなんだけど…。
「はーーーーっやっぱり有り得ないよね」
私は屋上で盛大な溜息をついていた。もちろん誰もいないからなんだけど。
私が思う有り得ないこと…それは加地くんが付き合って何カ月にもなるのに未だに手を出してこないことだ。
何かくっつこうとすると避けられるっていうか…加地くんって私のこと好きなんだよね?なのに何で?
もちろん、考えても私に答えが出てくるハズなんてない。
「あ~ぁ魅力ないのかな…」
悲しいけどこういう結論になっちゃうんだよね…なんていうか要は…
「その気にさせられないんじゃないの?」
「わぁって柚木先輩!?」
振り返ると私の心の中のことを反映したかのような柚木先輩が立っていた。
「加地をその気にさせられてないんじゃないの?」
柚木先輩は当然とでもいいたそうに私のことをじっと見る。
「な…柚木先輩に何でわかるんですかっ!」
いくら柚木先輩だって私のこれまでの数々の努力を知らないくせに…
さも私の全てが悪いと言っているのがムッとくる。
「わかるよ。だって俺も男だし?日野じゃその気にさせられないよね」
「うっ」
そう言われると弱い…男心は男にしかわからないのかもしれない…
って私じゃその気にさせられないって…私じゃって…
「どうして私じゃダメなんですか?」
「だってお前に女を感じる?おしとやかなんて形容詞、お前は全く持って似合わないだろう?」
「そっそれはそうかもしれないですけど…
加地くんはそういうのも含めて私のこと好きになってくれたんですよっ」
私がそう言うと柚木先輩の視線が少し厳しくなった。
「……人間の感情なんて一時のもんだろ?その時は良くても段々と心変わりしたとかは思わないわけ?」
柚木先輩の言葉にちょっと詰まる。
加地くんはどこか私を踏み込ませてくれない所がある…
私に全て見せてくれないとでもいうのかな…だから正直、不安にも思っていた。
「まぁ、お前がその気にさせたいって言うなら聞いてやらないでもないよ?男心の掴み方とか…ね」
私は先輩の申し出に食いついた。
「本当ですか!?ゼヒ!ゼヒ教えてください!」
「俺に教えてもらうなんて高くつくよ?わかって言ってるよね?」
柚木先輩が意地悪く微笑みながら私の顎をあげる。
「私に払える範囲なら…」
この意地悪な人に払える範囲…どのぐらいだろう…ちょっと怖いけど。
「そう。その答えを聞いて安心したな。大丈夫、日野さんが払える範囲だから」
その時の柚木先輩はとても優雅に微笑んでいた。
次の休日
柚木先輩の車に乗せられてどこかのリゾート地に連れて行かれる。
日本なのにプライベートビーチなんてあるんだって感じさせられるぐらい、
そこには誰もいなくてすごくロマンチックだった。
春先の陽射はそれほど強くなくて、私はポカポカするような気温がとても気持ち良かった。
「気持ちいい~~っ」
私は砂浜にレジャーシートを引くと思いっきり寝そべった。
「やれやれ…そんなんじゃ色気の欠片もないね」
柚木先輩が皮肉げに上から私を見下ろして言う。
「こんな状態でどうやって色気を出せって言うんですか?もうキャミワンピ着てるし十分だと思います」
私は率直な感想を言った。
それにただ寝っ転がってるだけで色気を出せなんて、先輩はどうしろって言うのか。
「そうだなぁ…そこの浮き輪でも頭の下に敷いてごらん?」
私は先輩の言われるがままに行動した。
「それで徐々に膝をすりあわせながら、足を立てていってごらんよ。徐々に…ゆっくりね。」
先輩の言う通りにすると段々、ワンピの中が見えそうで不安になってくる。
「俺を加地だと思って少し口を開いて上目使いで見るんだね。
口を開け過ぎたらダメだよ。そう…ルージュを塗るみたいに開いて」
口紅を塗るみたいに…何だか物欲しげな顔をしているみたいで嫌だった私は起き上がる。
「そんなの…恥ずかしくてできません…」
「加地をその気にさせたいんだろ?」
「だって先輩は加地くんじゃないし…だから…」
「だから?お前が望んで来たことだろ?俺の忙しい時間を割いてるんだからしっかりやれよ」
先輩は不機嫌な顔をすると別荘らしき所へと戻っていく。
確かに私が悪かったかもしれないけど、そんなに怒んなくてもいいのに…。
とにかく先輩の言っていることも事実…望んで来たのは私なので、謝ろうと先輩の後を追った。
「先輩っ」
部屋に駆け込むと先輩は海を見ながら窓に佇んでいた。潮風がいたずらに先輩の長い髪を遊ぶ。
「……何で加地にしたの?」
唐突に先輩からそう聞かれた。
「えっ?」
「何で加地と付き合おうと思ったの?お前に甘いから?お前のファンだから?それとも顔?」
「何でって…加地くんはヴァイオリンも含めて私のこと好きだって言ってくれるし…
そう、私のこと好きだって言ってくれるんです」
我ながらノロケかなと思う言葉を口にしてみたけど…。
「何それ?それだけ?」
先輩は一層不快な表情をすると私を壁に追い詰めた。
「お前の包み込むような音色も…素直な反応も全てがかわいい…お前が好きだよ…香穂子?」
「えっ」
私は驚いて先輩の顔を見た。上を向いたその顎を掴まれて…唇を重ねられる。
「んっ」
私の声にならない声が先輩が口の角度を変える度に吐息のように洩れる。
突然、口の中に先輩の舌が入れられる。
どうしたら良いのかわからない私は縋るように先輩のシャツを握りしめた。
絡めるように、それでいてくすぐるような先輩の舌に踊らされる。最後に唇を優しく舐められた。
「どうだった?加地に自分からこうしてあげたら喜ぶんじゃない?男なら」
先輩は興味がなさそうにソファに座る。
「なっわっ私、加地くんともキスしたことなかったんですよ!何でこんな…」
「…色っぽい顔してる。キスに酔いしれた女の顔になってる」
先輩は頬杖をつくと覗き込むように私の顔を見た。
「ちゃんと実践で使ってよね?僕がここまでして教えたんだから」
「…は……はい」
そう言われると何だか従ってしまうから不思議だ。
好きでもない女の子にここまでして教える先輩の気持ちなんてわからないけれど、
これが先輩が言ってた『俺の授業料は高いよ』ってことなのかもしれない。
そう自己完結させると私は次の日の加地くんとのデートが楽しみで仕方なかった。
「香穂さん、何だか今日は楽しそう。何かあった?」
「何もないよ。加地くんと会えることが嬉しかった…だけだよ?」
まだ手も繋げないけど、私は自分の気持ちを言ってみた。
「えっ…君はどこまで僕を喜ばせるの?僕だって君と出会えるだけで嬉しい…一日も…今流れた一瞬も…」
なんか雰囲気が良くなってきた気がする。幸いにも人気もそんなにないし。
私は加地くんを公園の壁に押し付けてみた。
「か…香穂さん?」
柚木先輩のマネをしてキスをしようと思うけど、私と加地くんとじゃ身長差があってうまくできない。
「ちょっとかがんで…?キス…できないよ?」
何度も背伸びをしながら、やっとしたいことを口にする。
本当はこんなこと言わなくても、もっとスマートにできるのが色気がある女の子なのかもしれないけれど…。
次の瞬間すごい力で加地くんに抱きしめられると唇を重ねられる。
絡められる舌に応えると、加地くんは私を壁に押し付けた。
「香穂さん…」
加地くんの碧色の瞳が憂いを帯びたように私を見つめる。
頬を優しくなぞられて、また口付けされると加地くんの手が胸元に当たる。
下から上に揉みあげる行為に驚いて私は加地くんの唇を避けた。
「やだ……」
力ない声だったのに加地くんはちゃんと聞きとってくれた。
「ごめん…強引なことをしてしまったね…
でもあまりにも君が可愛かったから…僕は理性なんて忘れてしまった。
本当に君は魅力的な女の子だな…どんなに抑えても僕の中の穢れた部分が君の清い部分を求めて止まない」
加地くんが騎士のように私の手の甲に口付ける
「女神を穢したくないよ…まだ今は……だから僕を試さないで…ね?香穂さん」
再び優しく抱きしめられる感触に私は幸せを感じていた。
翌日の月曜日、私は影の功労者(?)とも言うべき柚木先輩に報告に言った。
放課後にやっと見つけた先輩は面倒くさがりながらも、何だか嬉しそうな顔をしている気がした。
「何?俺は忙しいんだけれど」
誰もいない屋上で先輩がそう言い放つ。
「じゃ手短に話します。先輩のお陰で加地くんと一歩進んだ関係になれました。ありがとうございます。」
私はペコリと頭を下げる。
「お前…そんな下らないことを報告しに音楽科まで来たの?」
「だって、先輩のおか…」
顔を上げた時に見た先輩の顔は今まで見たことがないほどに怒っていた。
「だって先輩、協力してくれたし…だから、そのお礼とかしたかったし…」
段々と私の声がしどろもどろになっていく。先輩が…先輩が何だか怖い。
「そんなこと聞いて俺が喜ぶって?へぇ…どういう発想でそうなるんだか…
その無神経さ、見習いたいね」
しばらく無言が続く…私はひたすら先輩の顔色を窺っていた。
「おいでよ。もっと協力してやるから。」
口調は穏やかでも先輩は力強く私を引っ張ると、車に乗せて先輩の家へと連れてきた。
「今日は家族がいないからね…」
先輩はそういうと部屋に着くなり浴衣を渡された。
「お風呂に入ったらこれを着て出ておいで」
先輩の目が何となく怖くて、彼氏でもない人なのに何故か従ってしまう。
優雅で王子様のような外見から放たれる絶対的な支配者のオーラが私を縛る。
見下すような目も高圧的な態度も全てを許されるようなその姿勢が私の内面を突き動かす。
『この人に逆らってはいけない』と…
「着てきました」
私が先輩に浴衣姿を見せる。旅館にあるものよりも高価でかわいらしい生地だった。
「ふーん、わからないで結んだのにこうしたの?頭にくるね…
どうせ加地にも俺が教えたこと以外のこともしたんだろ」
先輩が怒っているのは私が浴衣を前にリボン結びでしたことらしかった。
「間違ってるんならすいません…」
とにかく謝った。先輩を怒らせたくなかったから。
二人きりでいるとあの甘い口付けを思い出す…
先輩が段々と私に近づくにつれて何故か同時に期待もしていた。
「お前は甘い加地くんが好きなんだったね?俺は甘くしてあげないよ?」
前にしてあった結び目を解くと簡単に浴衣は外れた。
「これって脱がせてくださいって言ってるようなもんだよ?
望んでようが天然だろうが俺には関係ないけどな」
「せっ先輩…」
後ろで腕を帯で縛られる。ベッドに私を突き飛ばすと先輩もベッドに乗ってきた。
「男が好きな格好だよ…訂正した方がいいかな?俺が好きな格好だね」
先輩が後ろから下着を持ち上げると胸が先輩の手の中にこぼれおちた。
それを捏ねるように揉みあげる。
「加地くんはこんなことしてくれた?」
先輩が軽く笑いながら私の胸の先端をいじる。
「あっぁっ…ぁん」
今までに感じたことのない快感に変な声が出てしまう…そんな自分が恥ずかしい。
先輩は私を突き飛ばすと後ろから髪の毛を掴んだ。
「加地にもこうやって啼いてみせたのか?」
先輩の怒気を含んだ声にも支配者のように私を扱う態度にも、不思議な事に私は不快にならなかった。
「加地くんには…そこまでされてません」
先輩の問いかけに素直に答えた。
「ふーん」
先輩は私の髪から手を離すと机から紅いルージュを持ってくる。
それを私の唇に雑に塗った。
「今の顔…悪くないね。その少し見えた舌で俺を満足させてごらん。」
先輩は自分も着ていた服を脱ぐと身体に赤のルージュを塗りだした。
「お前が全てにキスをするんだよ。」
私の瞳をまっすぐ見ながら唇をなぞる。
赤という情熱的な色が私をかきたてる。
先輩の支配者の瞳が私を狂わせる。
私は先輩の腕に胸元に…まるでそのルージュは私がつけたかのように跡をたどっていった。
「はぁ…先輩…」
満足してくれているのか、一つキスをする度に先輩の顔色を窺ってしまう。
「お前に拒否権なんてないよ。ここにもキスしてごらん。」
そういうと先輩は下着から自分の楔を取り出す。
「で…でも」
見ることだって初めての私はどうしても後ずさりしてしまう。
「しろよ。全てにキスするんだって言っただろう?」
先輩に顎を持たれて無理やり中に入れられる。
「んっ」
予想以上に大きくて私の口にやっと入る大きさのものを何度も舐めるように口から出し入れした。
その度に先輩が切なそうな顔をする。先輩から興奮したような吐息が聞こえる。
これが私を突き動かしていた。
先輩が突然それを止めさせると私を机の上に座らせる。
「良い眺めだね」
そう言うと躊躇なく楔を私の中へと打ちいれた。
「いたっ…っ先輩っ!」
手が縛られているからどこも掴めない。私は先輩の肩に噛みついた。
「いいよ…許してあげる…その変わり俺を受け入れろ。痛みと共にな…」
「んーっ」
先輩が何回かの楔の出し入れの末、私の中に欲望を放った。
今日も柚木先輩の部屋で繰り返される
「先輩…柚木先輩…」
私はじゃれつく子猫のように首にリボンを巻いて先輩の楔を舐めあげる。
「俺に男心を教わった借りは高くつくよ?俺好みにきっちり教え込んでやるから覚悟するんだな」
私が欲しかったのは甘さじゃない…
情熱的で強引に求めてくるこのルージュのような本能だったのかもしれない
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<あとがき>
鬼畜…鬼畜…?魚月はいつも中途半端なので鬼畜についてすんごい考えましたが、
これが表現できる範囲内。すいません;
そして甘い加地葵は大好きです(笑) 桜藤魚月
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