2-56氏

56 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 16:43:36 ID:jo02xKWd


前スレからミリアのエロは想像できないと言われ続けてるから、ちょっと試してみたぜ!
というわけでアイザックとミリアを投下


「ねーアイザック、私達に子供が出来ないのってどうしてかなぁ?」
「んー? なんだい、ミリア?」

 ぷわわわわわわ。
 勢い良く飛び出した小さなシャボン玉の群れは湯気が作る上昇気流で天井まで駆け上り、
音もなくぷつぷつと割れていく。連射機能付属の複雑な形をしたシャボン玉のためだけのストローを
バスタブの中に沈めて、アイザックは自分に背を預けているミリアを見下ろした。長い髪はタオルの
中に纏められて、嵩張ったそれが二人の密着を僅かに邪魔している。
 とは言えその隙間は僅かなものだ。ミリアはアイザックの胸に背を凭れさせ、アイザックは脚の間に
ミリアの身体を置いている。そうしてぴったりと重なりながら、二人はバスタブの中で脚を伸ばしていた。

 通常欧米では浴槽にお湯を溜める習慣はあまり浸透しておらず、シャワーブースとバスルームの
使用頻度は前者に大きく偏るものなのだが、アイザックとミリアのカップルが根城にしているアパート
ではそれが逆だった。ジャポニズムに奇妙な憧憬を持つアイザックは風呂という文化をいたく気に入り、
バスタブを可能な限りに有効活用する。ミリアもそれに追従するので水道代やガス代は嵩むのだが、
二人はこのバスタイムをいたく気に入っていた。ぴったりと吸い付くように相性の良い二人は、
ぴったりとくっ付いている空間もこよなく愛する。

 もこもことした泡を浴槽から零しながら、アイザックは少し首を伸ばした。そうして、ミリアの顔を
覗き込む。普段は髪に隠れて見えないうなじまでの肌が見えて、それが単純に綺麗だと感じ、
アイザックは自然に頬を緩ませた。
 ミリアはアイザックの手からストローを受取り、やはりぷわわわわっとシャボン玉を天井まで飛ばす。
時間は真昼、採光用の窓から降り注ぐ柔らかな陽光が虹色をきらきらと弾かせた。アイザックは
やはり単純に、綺麗だ、と思う。

「愛し合っている二人には、自然に赤ちゃんが出来るって言うじゃない? でもでも私達のところには
全然出来ないの、これってどうしてかなぁ?」
「あー、そう言えばそうだな……俺も日曜学校の先生にはそう教わった気がするぞ」
「私達、本当に愛し合ってないってことなのかなぁ……」

 ふっと沈むミリアの声に、アイザックはざばりとお湯の中から腕を出して振り上げる。

「いやミリア、そんなはずはないぞ! 俺達はいつだって百パーセントに愛し合ってる! 愛して愛されてぐるぐるスパイラルだっ!」
「アイザックが好きなミリアまで愛しちゃう勢いだねっ! それからミリアの好きなアイザックをもう一回好きになっちゃうんだねっ!」
「そうさ、ずっとずっと続いて行く永久機関みたいんもんだ! その気になったら地球だって回せるぞ!」
「すっごーいアイザックぅ! 宇宙規模だね、ビッグバンだね!」
「でもなぁミリア……俺達のそんな深い深い深い愛のスパイラルの中には、実は足りないものがあるんだ……」
「えええええっ!? ぶ、ブラックホールだね!?」
「ああそうだ、こればっかりは埋められない『黒い穴』<ブラックホール>だ」
「そ、それってそれって、なぁに……?」

57 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/04/02(水) 16:44:56 ID:jo02xKWd


 アイザックはほろりと涙を零す。
 ミリアは十字架を握りしめるシスターのように、ストローを握りしめた。

「俺達には……」
「私達には……?」
「俺達の愛の中には、神様がいないんだ!」

 ざばああああ、感極まって立ちあがったアイザックは天を見上げて号泣した。

「神父様は言ってただろ、愛し合う男女のところには神様が赤ちゃんを送り届けてくれるんだ。
でも俺達はあんまり教会に行ったりしないし、聖書も持ってないし、神様をそんなにたくさん
愛してもないっ! だからきっと神様は拗ねちまって、俺達に赤ちゃんを送り届けてくれないんだぁぁあ!!」
「そ、そんなぁあああ!! あ、アイザックぅぅぅぅぅ!!」
「ミリアぁぁああああ!!」

 ざばああああ。
 同じように感極まって立ち上がったミリアを、アイザックはたくましい腕で抱き締める。
ミリアも腕を広げてそれに応えた。がしっと音が鳴るほどにしっかりと互いの背を抱きあい、
二人はさめざめと涙を流す。真っ赤になった鼻をぐずぐずと鳴らし、身体中泡まみれのまま。
 浴槽では子供と連なったアヒルの玩具がぷかぷかと泳いでいる。

「それに俺達泥棒してるから、きっと神様の心証が悪いんだ! 神父の格好して逃げたりしたことも
あるから怒ってるんだ! ああなんてこった、ミリアぁぁぁぁ!!」
「アイザックぅぅぅぅ!! 私もシスターの格好して逃げたりしたことあるし、泥棒もしちゃってるよ!!
 二人分合わせて四倍だよ! 人より四倍神様を愛さなくちゃ、赤ちゃんが貰えないよぅ!!」
「だ、大丈夫だミリア、世の中には神様なんてたくさんいるさ! きっと泥棒の神様だっているに
違いない、二人でその神様にお願いすれば、きっと半分ぐらいになるさ!!」
「毎日お祈りだね、お供えだねっ! そしたらきっと赤ちゃんが貰えるねっ!」
「ああもちろんさ! そうと決まったら、出掛けるぞミリア!!」
「出掛けるってどこに? アイザック」
「泥棒の神様を愛するためには、泥棒するのを休んじゃダメだ! よーし、今日はベビー服を盗む!」
「なるほどだねっ! でもどうしてベビー服なの?」
「ふっふっふ……良いかいミリア、赤ちゃんはすぐに大きくなっちゃうから、服だってすぐに入らなく
なっちゃうんだ。そこに目を付けた奴らが、ベビー服の値段をどんどん吊り上げている!」
「悪徳商法だねっ! ベビーブームだねっ!」
「このままだといつかベビー服一着を買うために両親は子供の世話も出来ないぐらいあくせく
働かなくちゃならなくなるのさ! そうして買ったベビー服もすぐに入らなくなって、
また次の一着のために両親は子供と離れ離れになって、子供はその間一人悲しく過ごすことになる!」
「そんなぁ! それじゃあ赤ちゃんが可哀想だよぅ……」
「そう、だからそんなことにならないために、俺達がガツンと鉄槌を下すのさ! そうすれば泥棒の
神様にも胸を張れる! それに、そのベビー服は俺達の赤ちゃん用にとっておける! 一石三鳥、
いーや救われる世界中の子どもや親のことを考えたら、一石六十億鳥だな!」
「すっごーいアイザックぅ! じゃあ、すぐに着替えて準備しなくちゃ!」
「ああそうさミリア! さあ行くぞ、赤ちゃんのために!」
「楽しみだねっ!」

 二人はくるくると踊るようにお互いの身体をバスタオルで拭きあい、てきぱきと着替えて
あっと言う間に部屋を出て行った。
 バスルームにはアヒルの親子だけが残され、落ちる水滴に額を叩かれている。
 天井に貼り付いていた小さなシャボン玉が、呆れるようにぱちりと爆ぜた。

 後日、大量のベビー服を抱えた二人の姿を見たマルティージョ・ファミリーの面々が、『お前らはまだか』と言う眼差しで最年少の幹部を追い詰めた……とは、また別の話。


終わり。
やっぱり無理だった







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