刀で切って、ハサミで斬って
62 ◆jXimdT9as2 氏
530 名前:刀で切って、ハサミで斬って 序[sage] 投稿日:2009/02/08(日) 23:00:28 ID:OOWyBhHS
―三男、ラック・ガンドールは語る。
「まず、フィーロに感謝ですね……不死者じゃなかったら確実に死んでましたから」
―次男、ベルガ・ガンドールは語る。
「どこかの組と抗争でもあったかと思ったぜ……実際構成員のほとんどは半殺しだったしな」
―長男、キース・ガンドールは語る。
「………惨かったな………」
531 名前:刀で切って、ハサミで斬って 1[sage] 投稿日:2009/02/08(日) 23:01:00 ID:OOWyBhHS
「……さて、マリアさん?今日私が何を言いたいのか分かりますね?」
「だって」
「だってじゃありません」
いつものごとく、ガンドール・ファミリーではマリアがラックに説教されていた。
しかし、さすがに今日はマリアも頬を膨らませている。
「ねえアミーゴ、言い訳も聞いてくれないの?」
「いいえ、聞かなくても事情は分かってますから」
マリアはその日、いつものごとくカジノの踊り子兼用心棒として働いていた。
それが昨日、酒に酔った男二人がなんとマリアに手を出したのだ。
「いきなりお尻撫でられたり、胸触られたり、びっくりしたよアミーゴ」
「そこで二人を斬らなかった事だけは評価します」
その時は他の人間が必死に止めたおかげで、何とか大事には至らなかった。
しかし、その二人は数十分後にイカサマをしていた所を見つけられ、
結局マリアにやられる羽目になったのだが……。
「追い詰められて切羽詰まった二人が、懲りずにマリアさんを人質にしようとして、
どさくさにまた胸を触った…と、事情はしっかり把握していますよ」
「ひどいと思わない!?もう私お嫁に行けないよアミーゴ!!」
「同情はしますよ、スロット二台とビリヤード台一基、それからバカラ台も一基、
それにカジノの扉と壁の一部とシャンデリアをバラバラにしていなければの話ですが」
幸いその二人はガンドールのシマでイカサマを働く常習犯だったので一応大手柄ではあったのだが、
それを抜きにしても、いくら何でも被害が大きすぎる。
「カジノの被害総額が一体いくらになると思っているんですか?」
「そんなに怒らないでよアミーゴ、私これでも傷ついてるんだよ?」
「その後であれだけ暴れれば少しは気も晴れたでしょう!!」
ラックがテーブルを叩く。
日常茶飯事の光景に、思わず周りの人間達もクスクスと笑い出す。
「何ならカジノの損害はあなたの刀で支払ってもらいましょうか?」
「それはダメだよアミーゴ!!このムラサーミァはとっても大事なんだから!!」
「なら次からもう少し自重して下さい」
「う〜……」
「返事は!?」
どうやらさすがのラックも、今日ばかりは堪忍袋の緒が切れたらしい。
532 名前:刀で切って、ハサミで斬って 2[sage] 投稿日:2009/02/08(日) 23:02:01 ID:OOWyBhHS
「へぇー、大変だったね」
「もう最悪だよ!!腹立つと思わない?チック」
「僕は結構頭に来てるけどねー」
「そう見えなーい」
呑気な会話を交わしてはいるが、今二人はチックの『拷問部屋』に居た。
といっても、今の所拷問は行なっていないため、意外に部屋は綺麗だった。
……壁や椅子に染み付いている赤黒い染みを無視すればの話だが……。
ちなみにチックは現在、お気に入りのハサミでイーディスから貰った花を適当に切っている最中であった。
銀色のハサミが心地良い音を立て、色鮮やかな花の茎を切断していく。
それを見ながら、マリアが思い出したように言った。
「そういえばさ、チック」
「何ー?」
「チックってセックスした事ある?」
チックのハサミが止まった。
手元が狂ったのか、赤い花の頭がぽろりと落ちる。
その花が机に落ちたと同時に、チックの顔が花と同じ色に染まった。
「無いけど…マリアちゃんは?」
「私も無いよ、でも今回の事件で少し汚されちゃった気分」
「ふーん……」
珍しく、チックの顔から笑みが消えた。
その顔を覗き込みながら、マリアが悪戯っぽく笑う。
「しない?」
「え?」
「ここでセックスしない?」
チックが何かを言おうと顔を上げた瞬間、唇に柔らかいものが触れた。
それが彼女の唇だと気付いた時には、チックは驚きの余り椅子から転げ落ちていた。
マリアがその上に乗っかった、必然的にマリアがチックを押し倒した体勢になる。
ようやくチックが口を開く。
533 名前:刀で切って、ハサミで斬って 3[sage] 投稿日:2009/02/08(日) 23:02:53 ID:OOWyBhHS
「……マリアちゃん?」
「チック、大好きだよ」
マリアが、もう一度唇を重ねる。
しかも今度は舌を絡めてきた。
チックの口の中で二人の舌が絡み合い、首に回したマリアの腕にも力が篭もる。
そのまましばらくして、二人が顔を離すと二人共うっとりとした表情を浮かべていた。
ノービオ
「問題無いよね?恋人だもん」
「うん」
「じゃあ服脱いで」
チックが服を脱ごうとすると、口元に微かに笑みを浮かべた。
「マリアちゃん、そのドレス切っちゃダメ?」
「ダメ!!このドレスお気に入りなんだから!!」
しぶしぶチックが、いつの間にか手にしたハサミを机に置く。
そんなチックを尻目に、マリアがドレスに手をかける。
後ろから聞こえてくる衣擦れの音に、思わずチックとマリアが同時に振り向いた。
そして肩越しに目が合った。
お互い背中を向けているため『前』は見えないが、二人共全裸である。
普段の踊りで鍛えられているのか、彼女には無駄な肉が全く無い。
滑らかな褐色の肌に、引き締まった腰、胸とお尻は少し小振りだが、それがかえって発育途中の少女のような印象を与え、
肌の色と相まって妙な色気を発している。
一方のチックも、マリアのように外で動くことは少ないが、それでも年相応の体付きをしている。
適度に付いた筋肉に白い肌、こちらも青年と少年の中間といった印象だ。
チックが眼を逸らすと、マリアも照れ臭そうに笑う。
「恥ずかしいね」
「うん、初めてだから」
「じゃあ来て、チック」
二人で床に寝転がる。
木の板がひんやりと冷たいが、何しろ拷問部屋にベッドやシーツがある筈も無く、仕方が無い。
今度はチックが上になり、もう一度口付けを交わす。
しっかりと口付けを交わしながら、チックの手がマリアの胸に伸びた。
534 名前:刀で切って、ハサミで斬って 4[sage] 投稿日:2009/02/08(日) 23:03:27 ID:OOWyBhHS
「んっ……」
マリアの体がびくっと反応する。
チックが手を引くと、マリアが言った。
「続けて、チック」
「大丈夫?」
「うん、平気だよ」
チックの手が再びマリアの胸に触れる。
柔らかいが、弾力もある。
不思議な感触に、次第に手つきも慣れてきたのか、今度は先端を優しく指で摘んだ。
「あっ……!!」
マリアが一際大きな声を上げる。
今の声を誰かに聞かれたのではないかと、チックは内心ヒヤヒヤしたが、すぐにそんな事は頭から消した。
摘んだ先端を、優しくねじるように動かす。
「んっ…あ…、ひゃ…ぅ…!!」
マリアの目がうっすらと潤んでいる。
当然下も潤んではいるのだが……。
そんな彼女の綺麗な首筋に、チックは舌を這わす。
鎖骨の辺りも優しく舐めると、マリアの一層声が高くなった。
「はぅ…!!チック…くすぐったい……!!」
「とても綺麗だよ、マリアちゃん」
チックの手が、マリアの下腹部へと伸びる。
うっすらと生えた茂みの奥は、すでに熱い液体でトロトロになっていた。
少し悪戯心が芽生え、チックがわざと耳元で言う。
「濡れてるよー?」
「うぅ…恥ずかしいよ、チックぅ…」
マリアは、いつもの明るくノリが良い性格とはうって変わって、随分としおらしい性格になっていた。
そんないつもと違う彼女を見て、チックの興奮も昂る。
「マリアちゃん、行くよ?」
「うん、私の初めてあげるよチック」
「わかった、じゃあ僕の初めても貰って?」
535 名前:刀で切って、ハサミで斬って 5[sage] 投稿日:2009/02/08(日) 23:04:03 ID:OOWyBhHS
扉の向こうでは、ガンドール・ファミリーの構成員達が聞き耳を立てて部屋の中の情事を盗み聞きしていた。
「……おいおい、マジでヤるのか?」
「ちくしょう、俺も混ざりてぇ」
「俺はパス、チックのハサミの錆になりたかねぇ」
「いやマリアを抱けるんなら、俺はあのサムライブレードで斬り殺されても悔いは無ぇよ」
「おい押すなよ、バレちまうだろ」
「我慢しやがれ、よく聞こえねぇんだ」
若干前屈みになってる構成員達の背後のドアが、突如大きな音を立てて開かれた。
「……何遊んでるんですか?」
「ラ、ラックさん……!!」
「な、何か用ですかい?」
「いえ、チックさんに仕事を頼みたいと思いましてね」
構成員達がギクリと体を震わせる。
「チックさんは、部屋の中ですか?」
「ああいや……」
「(……おい、お前言えよ)」
「(馬鹿野郎、言えるかよ!!俺にハサミの錆になれってか!?)」
「(でも今日のラックさん、機嫌悪そうだぜ)」
「(選べよ、ラックさんに撃ち殺されるか、二人に嬲り殺されるか)」
「何をこそこそ話してるんですか!?どきなさい!!」
ラックがつかつかと部屋に歩み寄り、部屋のドアを勢い良く開けた。
「チックさん!!仕事を……」
「「あ……」」
部屋の中は、今まさにチックがマリアに挿入しようとした寸前で時が止まっていた。
チックの反り返ったものが、マリアの秘所に押し当てられている。
ラックの目が丸くなり、思考が停止した。
「…あ…いや……、…そういう事なら別に後ででも……!!」
何事も無かったかのようにドアを閉めようとするラックだが、二人はすでに脱いだ衣服で体を隠しながら、自分の愛用の武器を手に取る。
銀色に光り輝く、日本刀とハサミ。
しかもそれが両手に握られ、ゆっくりとラック達に近づいて来る。
「……ラックさぁーん?」
「部屋に入る時は、ノックぐらいしなよアミーゴ……」
「ふ、二人共…落ち着いて下さい……!!」
「私、もう本当にお嫁に行けないよアミーゴ……!!」
「僕だって、このファミリーでこんな大恥かかされたのは初めてですよー……!!」
「いや…だから…、待っ……!!」
その日、ガンドール・ファミリーの地下アジトで流血事件があった事は、ごく一部だけの秘密であった。
糸冬
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