フィーロ・プロシェンツォの夜の悩み 
62 ◆jXimdT9as2 氏

※この話はフィーロ・プロシェンツォの『夢オチ』です。
  実際のバッカーノ!内の人物、出来事とは一切関係が有りません。

501 名前:フィーロ・プロシェンツォの夜の悩み 1[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 00:56:16 ID:gAC3aLdT


「……うっ……!!」

フィーロがベッドから起きる。
時計を見ると、針は夜中の2時30分を指している。

「はぁ……、またやっちまった……」

フィーロがベッドからそっと降りた。
横で寝ているエニスを起こさないように……。

       *

不死者になっても、フィーロは男の生理現象に悩んでいた。
『夢精』である。
夢精は、自慰行為をしない思春期の男性によく起きる生理現象だが、
何故かフィーロは思春期を過ぎても時々夢精が起きる。
特にエニスと一緒になってから、彼女が夢の中で淫らな姿で迫ってくる夢を多々見るようになった。
夢の中のエニスは、とても優しく、とても美しく、そしてとてもいやらしかった。
無論、フィーロはエニスと一回も交わった事が無い。
だからその反動なのか、妄想の中ではエニスと激しく求め合ってしまうのだ。

「(……まだ俺はガキって事かよ……)」

下着を穿き替え、ベットリと精液で濡れてしまった下着を洗って洗濯カゴの中に放り込む。
原因は不明だが、最近特に夢精の回数が多い。
しかしフィーロは、誰にも相談しなかった。
兄のように慕っているマイザーには、とてもじゃないが恥ずかしくて話せない。
チェスにも言えない。
いくら年上とはいえ、あんな子供には知られたくない。
フィーロにだってプライドはある。
かと言ってエニスには口が裂けても絶対に言えない。
もし彼女に『エニスが出てくるエッチな夢で夢精してる』なんて知れたら、誰かに喰われてもいい。
そんな事すら考えていた。


502 名前:フィーロ・プロシェンツォの夜の悩み 2[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 00:57:08 ID:gAC3aLdT

フィーロはベッドにそっと潜り込むと、目を閉じて眠ろうとする。
しかし眠れない。
夢の中に、またエニスの顔をしたサキュバスが現れるのではないか。
そして自分の性器を舐め上げ、また精を吸い取ろうとするのではないか?
はたまた大鎌を持った首の無い少女?それとも全身が血で構成された吸血鬼?
いいや、また下着を汚して惨めな思いをするぐらいなら、いっそ怖い夢でうなされた方がマシだ。
でも、自分と交わっている夢の中のエニスはとても艶かしかった。
あのエニスを見れるのなら、もう一回ぐらいは・・・。
と、眠りに落ちるフィーロの頭の中では天国と地獄が入り乱れていった・・・。

       *

「……最近寝不足だったりする?」
「ブッ!!」

フィーロが飲みかけのコーヒーを吹き出す。
翌朝、フィーロが朝食を食べているとチェスがやって来て、隣に座るなり言い出したのだ。
幸運な事に、他の誰もフィーロを気にしていないようだ。
顔を赤くしたフィーロが、小声でチェスに囁く。

「……何の話だよ?」
「昨日の夜中さ、一人でごそごそ何やってたの?」

悪戯を仕掛けた子供のような、無邪気かつ意地悪な顔でクスクスと笑う。
フィーロの赤い顔が一気に白くなる。
見られてた?しかもチェスに?
フィーロが口を開こうとすると、チェスが言った。

「ひょっとしてまだ、エニスお姉ちゃんと……」
「……まだ子供には早い」
「これでも200年以上生きてるんだけど?」
「でも子供じゃないか」
「フィーロお兄ちゃんよりは年上だよ」
「……じゃあ聞くけど、チェスは経験有るのか?」

今度はフィーロが意地悪な顔をする。


503 名前:フィーロ・プロシェンツォの夜の悩み 3[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 00:58:00 ID:gAC3aLdT

「そりゃあ経験は無いけど、フィーロお兄ちゃんよりは女の子を喜ばせる手段を知ってるつもりさ」
「……例えば?」
「教えない」

目の前のマセガキの頭を、一発殴ってやりたかったが、そこはぐっと堪えた。

「エニスお姉ちゃんに、寝る前に夢精しないように頼んどけばいいのに」
「頼む?」
「うん、ちゃんとエニスお姉ちゃんに話して、寝る前に『対策』を立てれば大丈夫だと思うよ」
「……もういい」

それが出来れば苦労は無い。
エニスに『寝る前に抱かせてくれ』なんて頼めたら、こんなに悩んだりはしない。
フィーロは溜め息をつくと、冷めかけたコーヒーを飲み干した。

       *

その夜、ベッドに入ったフィーロにエニスが声をかけた。

「最近、お疲れ気味ですか?」
「え?いや……別に……」

気まずい……。
無理もない、今朝チェスとあんな話をしたから……。
いっそ全部正直に……。
いや、まさかエニスにそんな事をさせるわけには……。
ああでも、また今夜も下着を汚すかもしれない……。
そんな葛藤を頭の中で延々と繰り返しつつ、フィーロは無理に笑顔を作る。

「何ともないよ」
「本当に?」
「うん、心配しないで」

布団の中に入り込むと、そのままフィーロは目を閉じる。
それで良いんですよ。
どうせ長い人生、いくらでもチャンスはあります。
さあ、眠りなさい。
だがエニスが心配しているぞ?
エニスはお前の言う事なら何でも聞いてくれるのだぞ?
さあ、エニスを襲うのだ。
脳内でマイザーの顔をした天使と、セラードの顔をした悪魔が口論する。
そんな二人の姿を思いながら、フィーロは夢の中へと落ちていった……。


504 名前:フィーロ・プロシェンツォの夜の悩み 4[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 00:58:47 ID:gAC3aLdT

見慣れない部屋だった。
まずベッドは、いつものベッドよりかなり柔らかい。
フカフカの布団に、部屋の隅には立派な椅子とテーブル。

「……どこだ?ここ……」
「あ、お目覚めですか?」

横を見ると、一気にフィーロの全身がかっと熱くなった。
そこには体にシーツを巻きつけただけの、半裸のエニスが横たわっていたのだ。
おそるおそる自分の姿を確認すると、案の定自分も何も身に付けていなかった。
顔を葡萄酒のように真っ赤にしながら、フィーロが口を開く。

「こ、これは……」
「え?フィーロさん覚えてないんですか?」
「な、なな、な、何…が……?」
「昨夜フィーロさんが、旅に出たマイザーさんの代わりに出納係になったお祝いに…その……」

さすがのエニスも昨夜の情事(無論フィーロの身に覚えは無いが)を思い出したのか、顔をポッと赤らめる。

「このホテルに泊まってセッ…」
「分かった!!分かったからもういい!!」

慌ててフィーロが制止する。
身に覚えが無いのに、いやに恥ずかしい。
すると、フィーロの手を押さえエニスが体を近づける。
彼女の体からシーツが落ち、エニスは完全に全裸になった。
何かを言いかけたフィーロの口を、エニスが唇で塞ぐ。
数秒後、フィーロとの長いキスが終わると、エニスはトロンとした目で言った。

「覚えてないなら……、もう一回しませんか?」


505 名前:フィーロ・プロシェンツォの夜の悩み 5[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 00:59:41 ID:gAC3aLdT

いや待ておかしいってこれ絶対夢だからいやでもエニスとこんな事するなんて滅多に無いっていうか
二度と無いし俺はもう一度ヤっちゃってるわけででも覚えは無いしだいたいこの展開虫が良すぎるし
これ絶対ドッキリだろアイザックかミリアがカメラ持ってどこかで待ち構えてるに決まってるって
……とフィーロの頭が熱暴走を起こしたが、再びエニスが唇を合わした事でその混乱も吹き飛んだ。
エニスの暖かい舌が、フィーロの口内でフィーロの舌と絡み合う。
しばらくして唇を離すと、二人の顔の間で唾液が糸を引いた。

「フィーロさん、もう大きくなってる……」
「えっ!?ああ……」

エニスの白魚のような手がフィーロの股間を撫でる。

「うっ……」

フィーロが思わず呻き声を漏らすと、エニスはそのままフィーロの性器を口に咥えた。
軽く吸い上げながら、ゆっくりと顔を前後に動かす。
口の中でフィーロの陰茎に舌を絡めながら、エニスは上目遣いにフィーロを見た。

「エニス……、もう…出る……!!」
「ぷはっ…、…もうですか?」

早いですね、と遠回しに言われたようで少し心が傷ついたが、そんな事を気にする余裕も無かった。
彼女の絶妙な攻めで、射精感が込み上げてくる。
エニスはクスッと笑みを漏らすと、小さく呟いてまた口に咥えた。

「いいですよ、出しても」
「うぁっ……!!でっ、出るっ……!!」

フィーロの性器がエニスの口内で熱い精液をぶちまける。
そして快感のあまり、フィーロの意識は薄れていった……。


506 名前:フィーロ・プロシェンツォの夜の悩み 6[sage] 投稿日:2009/01/18(日) 01:00:40 ID:gAC3aLdT

「……………」

気が付くとフィーロは、自分の部屋のベッドの中に居た。
もちろん下着の中はベトベトである。

「……俺、本当にどうしよう……」

チラリと横目でエニスを見ると、フィーロはベッドから降りた。
情けない気持ちでいっぱいになりながら、フィーロはいつものごとく脱衣所に向かう。

その様子を扉の影から見守る、小さな影に気付かずに……。



糸冬






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