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オードブルが長い店の葡萄酒……の続き

§

彼が触れたところがどこもかしこも熱を持って、熱い。
キスされた頬や唇も、優しく揉まれていた胸も、ゆっくりと指で撫で上げられる秘所も。
彼が触れる度に体の芯に熱が集まり、それが液体となって流れ出ていく。
声を漏らすまいと唇を軽く噛んでいたが、クレアの唇がそっと寄せられ、力がふっと緩んだ。
「可愛いよシャーネ」
耳元でそっと囁かれる言葉が、体の中から何かをじわじわと溶かしてくる。
快感。言ってしまえばそれだけのことだ。
しかし、愛する人に囁かれるその言葉は、どんな愛撫よりも効果を持っていた。
「………っ…」
指の動きが再開される。
もうすでにほぐれていたそこは、先ほどよりもすんなりとクレアの指を受け入れた。
指が動くのと同時に体が溶けてしまうような、甘い甘い感覚が駆け巡る。
それをわかっているのかいないのか、クレアは絶妙な緩急と強弱を付けてシャーネをかき回した。
「…っ……は、ぁっ……っ…」
不規則に連続して与えられる刺激に、つい声が出てしまう。
いや、声ではなく吐息といった方が正しい。
しかしクレアは聞こえないはずのシャーネの"声"を聞いて、ますます嬉しそうに笑った。
――私の声が聞こえるのは、彼だけ。今この世界は、私と、彼だけ。

またキスをされる。
今度は舌を絡めた、比較的に長いものになった。
「ん…っん………んん……っ…は、んん………」
また吐息が切れ切れに漏れる。
2人の舌が絡みあう音が、やたらと大きく頭の中に響いた。
それを聞く度、ますます深く、舌を絡めようとする。
2人が唇を離すときには、シャーネの腰はくたっと砕けてしまっていた。
全身が幸せで満ちてしまったかのように、体の芯がくにゃりとなってしまう。
クレアは微笑むと、体勢をずらした。
愛する婚約者と愛し合える、クレアもまたそれが嬉しかった。
「シャーネ」
押し当てられたそれは、火で熱しられたように熱かった。
もしくはシャーネの方が、彼に当てられて火のように熱くなっているのか。
「…っ…」
それが押し入ってきた瞬間、息が詰まる。
ゆっくりと止まることなく中へと入ってきた。
息苦しさとは少し違うが、胸が詰まって息がしづらくなった。
腰の周りに鈍い痛みがある。
……初めて。
初めて男性と結ばれたときの痛み。
そうだ、一つになれた。
同じ世界を共有する彼との、形を持った繋がりだ。

潤んだ瞳は、痛みからくるものだけではなかった。

「シャーネ、大丈夫か?」
……大丈夫。
心配してくる彼の顔をぼんやりと見つめながら、言葉を伝える。
彼にしか言わないであろう、彼にしか聞こえないだろう言葉を。
「……ありがとうシャーネ。俺もだよ」
クレアは嘘のない、まっすぐな瞳でシャーネを見つめ返した後、動き始めた。
「…っ…はっ……ふぅ…っ……」
ゆっくりと差し入れされるそれは、シャーネの中を満たしていた。
声にならない声が息となって吐き出される。
そして、それを敏感に察知するクレアはそれに合わせるかのようにペースを変えた。
とろとろになっているそこが擦りあげられる度に、腰が蕩けていくようだ。
「ん………っ…ん…ぅっ…」
顔は真っ赤になっているだろう。
全身ににじむように汗をかいているのがうっすらとわかる。
その姿も含めて見られているというのがわかると、今更恥ずかしさが蘇った。
顔をそらせて、律動と同時にやってくる快感に何とか耐えようとする。
が、どうしても悩ましげな吐息を吐いてしまう。
「はぁ…っ……ん……ふ、ぅ…」
クレアが動きを大きくすると共に、より体を密着させてきた。
手を回した彼の背中は予想よりも広い。
シャーネも彼の首の後ろで手を絡ませると、顔を押しつける。
……密着した格好なのに動くペースがそのまま変わらないのは、彼が彼であるからだろう。

ひとつの振動が体の芯に響く。
芯は熱くなり、直結した脳へとその熱さを感染させる。
クレアが動きを大きくしている事もあり、それはより切羽詰まった物になってきた。
潤んだ目で彼を見ると彼は微笑んで、そっと唇を寄せた。
――口付けしている時間は脳が麻痺してしまうようだ。
繋がったままの筈なのに、二人の唇が重なっている時間の方が多い。
でも、それでいい。
そう思っていると、クレアの動きが更に大きくなった。
それと同時に思考がどこかへ押しやられ、感覚だけが残される。
――――――

動きがもたらす快感が、シャーネの意識を彼方へと飛ばした。

§

気がつけば、そこはベッドの上だった。
ガバッと起き上がると、周りを確認する。
明かりは消されてはいるが、先ほどの部屋と同じだとは判別できた。
部屋の中のもう一つの気配は傍らで寝息を立てていた。
「………」
体の汚れや、汗の不快感は全くない。ただ、ひどく疲れていた。
寝てしまっている間に、彼が何とかしてくれたのだろうか。
考えると恥ずかしくなり、頭まで葡萄酒のように真っ赤になってしまいそうだった。
愛しい婚約者の横で、シャーネは再びまどろみの中に身を窶した。






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