2-157氏

247 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(0/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:20:34 ID:Xr8Ooa1H

はぁはぁの流れをぶった切ってなんですが、投下行きます。
>>201-213の続きになります。
エロカップリングは「新羅×セルティ」
諸注意などは>>162に。
 
のっけから謝罪というのもなんですが、
前回、近日中といいながら、今日までかかってしまって待ってた方には申し訳ない。
もう一つ、このSSの下敷きになった『デュラんぷ!』とはラストに相違がでてしまったのもごめんなさい。

248 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(1/22) [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:21:43 ID:Xr8Ooa1H

「じゃ、どうぞ、新羅……」
「……うん、お邪魔します」
軽く部屋を片付け、ちょっとした身支度を整えてから、私は新羅を自室に招き入れた。
 
――数分前の浴室での自分の返事を思い出す。
 “だったら、続きは私のベッドで……な?”
数瞬、見つめあい、受諾と誘いの言葉がするりと私の口から出ていた。
自分の部屋の方がいくらか安心できるし……それに、新羅の部屋は色々とヒくので。
 
新羅はバスタオルを巻きつけただけの簡素な姿で、
私もまた同じような格好なもんだから、これから『する』んだって事を
否応無しに意識させられてしまい、新羅の姿をどうにも直視できない。
「久しぶりに入ったけど……相変わらずだね、この部屋は」
新羅もまた、私のほうも見ないで落ち着き無さげにきょろきょろとしてそんな事を言う。
たぶん、私と同じで不安なんだろう。
 
「あんまり人の部屋を覗きまわるような真似をするなよ……だいたい私だってこれでも」
“一応女なんだぞ”と、言おうとして言葉に詰まる。
ココがあまりにも一般的な『女性の部屋』から、かけ離れているからだ。
部屋に入ってまず目に入るのが、馬鹿でかいビデオラック。
20年間取り貯めた『鑑定団』だの『ふしぎ発見』だののビデオが山ほど詰まってる。
他にもマンガ本だのゲームソフトだのがぎっちり納められた本棚が
ずらりと並んでいて、まるで頭のわるい文系男子学生の部屋のようだ。 
「……セルティはじゅうぶん女の子らしいと思うよ」
「ひ、人のセリフを先読みするなよ、ばかぁ……」
長年の付き合いから、新羅はどうも私の考えている事が大体わかってしまうらしい。
私のことを深く理解してくれてると言うのが嬉しい反面……
隠し事が出来なくてちょっと困ったりもする。
 
その書架の群れを眺めていた新羅が一冊の本を引っ張り出して手にとる。
「あ、この本、セルティ、まだ持っててくれたんだ」
「捨てるわけ無いだろ……だって、これはお前がはじめて……」
 
“アイルランドのむかしばなし”
 
池袋に住み着き始めてすぐの頃、日本語がまだまだ不自由だった私の為に
新羅が『教科書』として買ってくれたのがこの本だった。
「ぼろぼろだね」
「そりゃもう随分読み込んだからな」
私の故郷の知識にある伝説伝承が下敷きになっていた為、
すぐにその本は読み下せるようになっていった。
部屋に溢れるビデオや漫画の類もこの手の『教材』として集めるうちに、
集めて楽しむ事そのものが趣味になってしまった感がある。
「正直、あの時の子供とこんな風に……なるとはなあ」
「俺の方はあの頃から、君とこうなることだけをずっと夢見て来てたんだけどね」
「……まったく、ませた子供だったよ、お前は」
そして私にとって最も身近な『日本語教師』が――新羅だった。
そうやって、言葉を学び、言葉を交わすたびに、
私もまた利発で聡明だったあの少年に徐々に惹かれていったんだと思う。

249 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(2/22) [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:23:55 ID:Xr8Ooa1H

……って、私ってばいわゆるショタコンだったりするんだろうか? 
いやでも、今は普通に大人の新羅のことが……

「セルティ?」
「わ、わわっ!」

ガキの時分の新羅に思いをはせていると『大人の新羅』の顔が間近にあって思わず取り乱す。
格好が格好だけに肌が近いと恥ずかしい。

「いきなり近づくな馬鹿……心臓が止まるかと思っただろ」
「セルティ無いだろ。心臓」
「お前はそーゆーのもハッキリ言うよなあ……」

新羅は私のことを堂々と人外扱いする。
でもそっちのほうが逆に嬉しい。人間じゃない私を受け入れてくれる、
好きでいてくれる存在がいると言うのはとても幸せな事だと思う。
 
「そして今夜、この本に新たな一ページが付け加えられるわけだよ、セルティ」
「ん?」
……いきなり何を言い出すつもりだ、コイツは?
新羅は大仰に本を手に掲げ、手を広げると芝居がかった口調で朗々と謳い上げた。
 
「池袋に降臨せしアイルランドの妖精、セルティ! 首無し騎士の妖精――
デュラハンの一人であるセルティは、盗まれた自分の首と記憶を求めて池袋に乗り込んだ! 
だが、そこで彼女は新羅と言う青年と恋に落ち、自らの首を捜すと称して
今日も人間との愛欲の日々へと溺れるのであった……ってのはどう?」
 
「……誘ってるのか、それは?」
「あー、うん、一応……そのつもりなんだけど」
「そんなんでノって来る人間がいるってんなら、いっぺんお目にかかりたいもんだな……」
 
その誘いに乗ってやれる『人間』じゃなくて『デュラハン』なら、ココに約一名いるけどな。
 
「……ま、いっか。来てよ新羅。溺れさせてくれるんだろう? 愛欲に……」

250 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(3/22) [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:24:47 ID:Xr8Ooa1H

ベッドに並んで腰掛けあい、互いの体に手を回し、抱きしめあった。
 
「ん……んぁっ、くふ…うぅん……」
 
そして、どちらからとも無く、応じあうようにして唇を重ねた。
今日何度目のキスになるんだろうか。
ともかくも、一番激しいものだったに違いない。
互いの舌を互いの唇に差し入れ、互いの口内をたっぷりと味わう。
漏れ出す吐息と唾液を互いの唇で感じあい、互いの舌先でたっぷりと混ぜ合わせて一つにした。
貪りあうたびに、新羅のメガネがコツコツ当る感触すら心地いい。
ふと、見やれば、新羅の顔が随分と上気している。
私の顔も朱色に染まってるんだろうな、と思うと、あたまの奥がじぃんと痺れた。
 
「ゃ…ぁ、コラぁっ……!」
 
いつの間にか新羅の手が私の胸にのびて、タオルの上から添えられていた
条件反射で思わずゲンコツを飛ばしそうになるが、意志の力でどうにかガマンする。
新羅も一瞬、殴られる覚悟はしたんだろう、
ぎゅっとつぶっていた目を開けると、ややおびえた表情でこう続けた。
 
「ご、ごめん……ダメだった?」
「ダメじゃない……けど、ひとこと先に断われよ……」
「その……じゃ、さわるよ……?」
「勝手にしろ……」
 
そのままゆるゆると新羅の手は私の胸を撫ではじめたが、
何らかの違和感を感じ取ったのだろう、すぐにその動きが止まった。
「セルティ、これって……」
……あ、そっか。今、私のバスタオルの中は。
「タオル……とっていいぞ」
新羅はひとくち息を呑むと、胸に触れてた指でそのままタオルを摘み、
腫れ物の湿布を引き剥がすように、ゆっくりゆっくりと取り外す。
ああもう、男だったら一気にやってくれ。そんな、丁寧にされたら、かえって恥ずかしいのに……
そして、厚い一枚布の下から現れたのは私の裸身……ではなく、下着姿。
ピンク地に手の込んだ黒レースをあしらった物で、いかにも『ザ・勝負下着』って感じの一品だ。
 
「俺が贈ったのを着てくれたんだ……」
 
感慨深げに新羅がつぶやく。
新羅から服は山ほどプレゼントされていたけど、メイド服だのセーラー服だの
『プレイ用』としか思えないのばっかりで、中でも下着はきわどいのしか贈って来ないから、
今夜みたいな時だけしか使いどころが無い。
こんなのどこで買ったんだとか、どうして私のサイズを知ってるんだとか、
何でお前の趣味はこんなマニアックなんだとか色々と突っ込みどころはあるけど、
そこをグッと我慢した上で新羅に問いかける。
 
「……新羅は私が、いきなり、裸だった方がよかった?」
「いや、想像以上に綺麗で……驚いた。それに、下着着てると脱がす楽しみが増えるよね」
「そのセリフは予測できてたけど……ホントに言われると“この助平野郎”とか思っちゃうよな」
 
なんだか可笑しくなって、抱き合ったまま二人でくすくすと笑いあう。
 
「さぁて、助平野郎としては、どんどんセルティのえっちなお願いに応えていかないとね」
「わ、私はえっちなお願いなんかしてないだろ!」
「……ふぅん、そうかなー、セルティ? それ、乳首、浮いてるよ」
「え、ええええっ?!」

251 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(4/22) [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:26:01 ID:Xr8Ooa1H

言われて見やれば、確かに胸の先端が布地を中から突き上げていてっ……!
「違っ…………! これ……そのっ……!」
自分で言っててなんだが、違うもへったくれもない。
それは間違いなく私が興奮し始めているしるしなワケで……
「そんな風になっちゃってたら、触ってあげない方がかえって可哀想だと思うんだけど?」
「……うー」
気づいてしまったがゆえに意識する。
尖った乳首が下着に押さえつけられている感触が、なんだか……切なくて。
 
「……と言うわけで、審念熟慮した結果、僕としては
君の肉体の欲求を満たしてあげたいなーとか思うわけだ」
新羅の一人称が『僕』になってるし、会話に格言が混ざり始めてる。
私はどんどんいっぱいいっぱいになってきたのに、コイツ、ちょっと余裕がでてきやがったな。
むー、新羅のクセに生意気だ。
「そんな事言って……新羅だってもう、そんなじゃないか……」
反撃とばかりに、新羅の腰の辺りを指差す。
そこはもうバスタオルを突き破らんばかりに、新羅のモノが自己主張している。
 
「いや、これはセルティがあんまりにも可愛いからさ」
「可愛い?!」
「もっともっと可愛くなってよ、セルティ」
「も、もっと可愛くって……」
「早い話が……下着も、脱がしていい?」
 
まずい、仕返しのつもりが完全に裏目だ。そこで“可愛い”は反則だってば……
「……お前が先に脱げ」
せめてもの抵抗。恥ずかしいものはちょっとでも先送りにしたい。
「いいけど、いいの?」
「何がだ……?」
「こっちゃタオルの下、何もはいてないよ」
「うっ……お、お前の裸なんてさっき見飽きるほど見たんだから、イチイチ気にするか!」
言われて新羅はあっさりとタオルを外す。
あんまり鍛えていない細い体とは対照的に、恥骨のあたりのモノは雄雄しく勃って、いて……
「元気だな……」
横目でチラチラ見つつ、それだけ言うのが精一杯だ。
さっきはいたずら心や好奇心も半分あって、見たり触ったり……舐めたり出来たけど、
あんなのが、これから自分の体の中に入ってくるとなったら話が違う。
 
「さて、セルティ。今度は俺に脱がす楽しみを堪能させてくれないかい?」
新羅の手がゆっくりと近づいてくる。
そこで私はもう、相当にテンパっていたのだろう。むしりとるかのように
ブラを自分の体から引き剥がすと、新羅の顔に向かって思いっきり投げつけていた。
 
「ふん、ばーか! 何が脱がす楽しみだ! 
お前の思い通りになんかなってたまるか私が先に自分で脱いでやったぞざまあみろ!」
 
“見るなら見ろ”と言わんばかりに胸を突き出すと、外気に触れた乳房がふるりと揺れ、
「……ぁ、やっぱダメ……無理、こんなの無理……」
そこで恥ずかしさが臨界点に達して、結局、晒していた胸を手で覆い隠してしまった。
ああもう、カッコ悪いなあ、私……。
「セルティ」
新羅は顔に絡まったブラジャーを外すと、肩に手を回して私の体を引き寄せてくる。
「あ……」
一糸纏わぬ肌と肌が触れ合う。少し汗の浮いた皮膚がぴっとりとくっついてくる。
新羅の鼓動を感じる。あたたかい。それだけでもう……結構きもちいい。
 
「硬くなる気持ちもわかるけど、安心して。俺は君に酷い事なんてしないから」
「……ごめん、さっきは何か、カーッとなっちゃって」
「俺の方こそ。意地悪言っちゃって、ごめんね」

252 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(5/22) [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:27:58 ID:Xr8Ooa1H

私が目を細めてそれとなくキスを促すと、新羅の指が私の顎先を軽く捕らえて唇をあわせてくる。
ついばむような口付けを交し合い、頬に、耳に、首筋に、ふたりがキスの雨を降らせあう。
「……ん」
背中に回した手を軸に新羅が軽く体重をかけてきて、
いつのまにか私はベッドの上に仰向けにころんと転がされていた。
……あ、私、新羅に押し倒されちゃったんだ。
どきどきする。
私に脈打つ心臓はないけれど、この気持ちはもう、そうとしか言い表せない。

「じゃ、セルティ。そろそろ本格的にはじめようか」
「……新羅、その」
しかし、その高揚も打ち消すほどの大きな不安が胸に沸き起こる。
「何?」
「さっきみたいになっちゃったらどうしよう……」
 
情交の果てに新羅の『精』を、また本能のままに貪ってしまうかもしれない。
その懸念はどうしても心を離れなかった。
しかし新羅はそんな私を安心させるかのように軽く抱きしめてくる。
 
「心配しないでセルティ。策はあるよ」
「……策?」
「医心方って知ってる?」
首を横に振る。知らない単語だった。
「平安に記された本邦初の医学書でね、親父にいわれて読まされたんだけど、こんな所で役に立つとはね」
「森巌の奴の入れ知恵って時点でかなり怪しいんだけど……で、その医心方がどうしたって?」
「二十八巻がいわゆる房中術に関わる書なんだけど」
「……ぼーちゅーじゅつと来たか。それって“接して漏らさず”とか、
交合中の“気”を循環させてどーのこーのとか、滅茶苦茶インチキ臭い奴だろう?」
「池袋で二番目にインチキ臭い生き物がそれを言うかな……まあ、ともかく
その二十八巻にこういう記述がある“黄帝、素女ニ問フ、曰ク、吾、気衰ヘテ和セズ心内楽シカラズ、
身ハ常ニ恐危ル将ニ如之何セントス、素女曰ク凡ソ人ノ衰微フル所以……”」
「分かった分かった、もういいからとっとと要点を言え……!」

新羅はこーゆートコ鈍いから困る。そんなご立派なご高説最後まで賜ってたら
せっかくその気になってるのに醒めちゃうじゃないか……。
 
すると新羅はいたずらっ子のように微笑んで、
「要するに今からセルティは恥ずかしがらずに、いっぱい気持ちよくなってくれればいいってこと」
なかなかシャレにならないことを言う。どこのエロゲーの設定だ、それは。
 
「い、いっぱい…気持ちよくなれって……そんな」
「平たく言えば僕が“精”を与えるばかりじゃなくて、君からも貰えば帳尻が合うわけでさ。
だったら君がきもちよくなっちゃうのが一番な訳でね。
どの道、今から君と愛し合うってのには代わりないんだし、
セルティだって痛いよりは気持ちいい方が良いだろ?」
「それはそうなんだけど……」
「まー、ぶっつけ本番になっちゃうからちょっと不安はあるけれど、
セルティは難しい事考えないで素直に感じてくれればいい」
 
なんか、無理矢理丸め込まれてる気がする。

253 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(6/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:29:12 ID:Xr8Ooa1H

「じゃ、せめて……やさしくして。はじめて、のはず……だから」
 
『首』をなくす前の記憶は茫洋として定かじゃないけど、少なくとも過去に
新羅以外の男と寝たというような思い出はない。……だから、今夜が私のはじめてだ。
 
「努力はするよ。もっとも……かく言う俺もはじめてなんだけどね」
「まったくお互い……いい年こいてはじめて同士とかなあ……」
「いいじゃない。俺のはじめてをセルティにあげるから、セルティのはじめてを俺がもらうって事で」
「恥ずかしい奴……」
 
本当は新羅とはじめて同士を交換できてすっごく嬉しい。
そんな小娘みたいな事言ったら新羅が調子に乗るから言わないけど。
 
「じゃ、いくよ?」
「任せる……」
新羅じゃないけど“まな板の上の鯉”ってのはまさに今の気持ちか。
「手、どかしていい?」
胸を隠したままの私の腕に、新羅は指を絡めてきてゆっくり引き剥がす。
見られることへの羞恥はまだある。けれど今はこれから起こることへの期待も大きい。
「セルティの……きれいな桜色だね」
「どこ見て言ってんだよ、ばかぁ……」
……だから新羅、そんな恥ずかしさを煽らないで。せっかく我慢してんだからさ。
 
「んっ……」
そのままいきなり胸を触られるかと思ったが、新羅はまず私のヘソのあたりに掌を置いて撫で回す。
頭に“闇”がつくとはいえ、流石は医者だ。“触診”の手つきや態度が堂に入ってる。
正直、私の体が開発されて無いせいか、くすぐったいけど……
「痛かったら言ってね」
「うん……」
手は、臍から脇腹へ、脇腹から季肋へ、そしてまた臍に戻る。乳房には触れそうでなかなか触れない。
皮膚をなで、時には押し込んで筋肉の弾力を調べ、骨や内臓を肉の上から指がなぞり、かたどる。
何かを確かめるかのような、触診とも愛撫ともつかない行為が、
いつのまにか単なるくすぐったさだけではなく、私の体にかすかな性感を呼び起こし始めていた。
「何でそんなところばっかり触るんだよぉ……」
「君の体が人間のそれと同じとは限らないけど、子宮、というか“胎”の具合を診ておこうと思って」
「いいよそんなの……」
「何言ってんだい。女の子の一番大事なところだよ。それに今から使うんだから」
 
“胎を使う”などと言われて、どきりとし、自分の性別を今更のように自覚する。
だけど新羅に愛してもらえる女という性でよかったと、本当に思う。
首さえ取り戻せれば、自分が男だろうと女だろうとどうでも良いだなんて思ってたあの頃が嘘みたいだ。
 
「うん、たぶん異常はないね。……じゃ、次はセルティもお待ちかねの胸に行こうか」
「誰がお待ちかねだよ……」
「さっきから自分の乳首を物欲しげにちらちら見てたじゃない」
「アレは……な、なんか気になっただけで……もう、好きにしろ!」
 
押し倒されたこの姿勢から新羅を見てると、嫌でも自分の胸が目に入るんだから仕方ない。
仕方ないったら仕方ない。私がいやらしい訳じゃない。うん。
……だけど、触って欲しくないといったら嘘になる。
胸の疼きを自覚してから随分とじらされたし、けっこう我慢の限界かもしれない。
大きさは並……だと思うけど、形はけっこう悪くないと自分でも思ってる。
人様と見比べた事があるわけじゃないけどさ。

254 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(7/22) [sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:30:45 ID:Xr8Ooa1H

そして“胎”を診終えた新羅の手が、じわじわと上昇してきてとうとう乳房にたどり着く。
 
「……あ」
 
思わず、吐息交じりの喘ぎが口から漏れる。
新羅の手のひらが私の乳房全体を包み込むように覆いかぶさり、ゆっくりと揉みしだきはじめた。
くすぐったさも性感も、臍や脇腹とは比較にならない。
声がでるのが恥ずかしすぎて、唇を引き結んで歯を食いしばり、こらえる。
新羅をとり殺したりしない為に“いっぱいきもちよくなる”のが大事なのは分かるんだけど……
「セルティ、声……聞かせて」
だけど新羅はそんな私を許さない。
新羅の唇が私の唇に合わせられ、舌が唇をなぞって優しくこじ開けようとしてくる。
私の体はすっかりキスの味を覚えていて、素直に新羅の舌を受け入れてようとしてしまう。
「や、あ、あぁぁ……」
唇が開いてしまうともう我慢ができず、嬌声がこぼれでた。
ずるい。卑怯だ。私はこんなに恥ずかしいのに。
「ダメ……新羅、こんなのダメぇ……」
「ダメなんかじゃないよ、セルティ。こんなに可愛いのに」
声がでればでるほど、くすぐったさともむず痒さとも判別つかなかった感触が明確に“きもちいい”になって来た。
声が快感を増幅し、高まった快感が声のトーンを高める。終わり無き連鎖にどんどん私は翻弄されていった。
 
「ひゃっ……!」
尖った痛みの混じった刺激に、思わず鋭い声がでた。けれど不快ではない。
いつの間にか新羅の責めは面から点へ。
乳房全体を揉んでいた新羅の手が、今は先端の突起をつまんでいた。
「……ん、乳首コリコリしてきた。ほら、こんなに勃って」
「んぅ…そんなんイチイチ報告しなくっていいって……!」
とは言え、指摘されてしまえば、当然意識する。
確かに、見慣れた自分の乳首はいつもに倍するほどに膨れ上がって自己主張していた。
心なしか、乳房自体も普段より大きくなってる気さえする。
 
「あっ…、だめ……やっ、あああっ!」
その膨れ上がった性感帯に新羅が唇を寄せていく。敏感になった肌に感じる吐息。次いで舐められる感触。
「うん、おいしい」
「おいしいわけないだろ、そんなのっ……」
「えー、だって、セルティもさっき風呂場で俺のをおいしい、おいしいって」
「言うな……! わかったからもう、言うなぁっ!!」
確かにさっき浴室で見た風景。だけど立場は逆。愛してくれてるのが新羅で、きもちいいのが私。
「だめ……だめだってば……ひっ、ああっ!」
だめと言いつつ、胸を新羅に突き出して、より強い快感を求め始めている自分の身体に軽く愕然とする。
ああ、これが『体は正直』って奴か……
 
「やぁっ……あ、あああぁぁぁぁぁっ!!」
強い刺激を欲しがる私に気づいたか、新羅は唇全体で乳首に食らいつき、吸い上げる。
胸からの刺激に耐え切れず、開ききった唇からあふれだす声はもはや悲鳴だ。
「セルティ、痛かった?」
今の“悲鳴”を気づかってか、新羅の唇が乳首から離れ、短い問いをつむぎだす。
刺激の途絶えた胸の先端がじんじんする。もの足りない。さみしい。
―――だから
 
「もっとして……」
 
喉の奥から続きを求める応えがするりと出て、思わず理性は困惑する。

255 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(8/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:31:58 ID:Xr8Ooa1H

「……ぇ、いや、今の違うっ……新羅、その」
「ふふ、ちょっと本音が出ちゃったんだね。可愛いよ」
「だから違うんだって……ひぁっ、あ、や、ああぁ……」
 
まだ言い訳を続ける私の言など関係ないとばかりに、新羅の責めが再開される。
さっきまで新羅に食らいつかれていた右の乳首は唾液で濡れて、愛撫してくる手指の動きもなめらかだ。
反面、乾いたままの左の乳首はまだ完全には出来上がっておらず、触られる事で軽い痛みすら覚える。
 
「ああ、そっか、こっちも濡らしてあげないと、かわいそうだよね」
「そんなヘンな気づかいはしなくっていい…の、にいっ……!」
私の視線に気づいたか、新羅は胸に顔をうずめると、左の乳房に口付ける。
今度はいきなり乳首をなめるような真似はせず、乳輪やその周辺に
舌を軟体動物のように這わせて、唾液で乳房を汚していく。
新羅の体液でてらりと光った自分の乳房が、視覚的にも私を興奮させる。
直接的な快感には乏しいものの口付けられた肌は熱く火照り、
疼きを生みだして“胎”へと送り込んでいった。
「は、はふぁ……」
たまらず大きな吐息が漏れる。柔い刺激では疼きはちっとも揮発せず、もどかしくって。
疼く乳首に私自身の指がおもわず伸びそうになるが、微かに残った恥じらいがそれをおしとどめた。
 
―――私、もっとしてほしいんだ。
 
そこまで高められて、今更のように自覚する。
触りたい。いや、触ってほしい。
自分の手指などではなく、愛しい恋人の手と舌で。
敏感な胸の先端を、すっていじってなぶってほしい。
「新羅ぁ……」
疼きに耐え切れず、恋人を呼びかける私の声は、自分のものとは思えないほど甘くとろけていた。
けれど新羅は“何?”と目線だけで答え、乳房への口付けを続行する。
「そこじゃなくて……もっと……」
きもちいいところ。
だけど羞恥と理性がその言葉を言わせてくれない。
「もっと、何?」
新羅は一言だけ口を開くと“今、喋る機能に口を使うのはもったいない”
とばかりに、唇と舌での責めを休めない。
それでいて目だけはにやりとした笑いを浮かべたまま、私の顔から外さずにいた。
……うー、私から言うまでこの疼きから解放するつもりは無いって事か。いじわる。
「して。ちくび……」
かすれて消え入りそうな声。緊張の余り息は声帯を通らず、ほとんど唇の動きだけで新羅に伝えた。
「ん、セルティえらいえらい。じゃあ、きちんと言えたご褒美あげなきゃね」
「……なにがごほうび…やっ、あぁ、いあぁああああっ!!」
 
いきなり吸われた。
 
焦らしに焦らされた乳首から生み出される快感が、眼前が白くなるほど意識を焼き焦がしていく。
身体はびくびくと痙攣して動作は乱れ、指の一本でさえも思うがままには動かせない。
「ばかぁ……心の準備ぐらいさせろよぉ……」
新羅に抗議の視線を向け、息つきながらも文句をいう。
「ごめんね。セルティがあんまり可愛いから、つい意地悪しちゃった」
「……いつか、いじめかえしてやるから覚えてろ」
「怖い怖い。じゃあ、次はいじめるんじゃなくて可愛がってあげないとね」
この場合“いじめる”も“可愛がる”も意味はおんなじだろうなどとは思ったけれど、
新羅の舌の動きは今度はゆるやかで、ついでに反対側も指でもかすめる程度にこすってくる。
「ん……あぁ……」
強烈な刺激を癒すかのような優しい愛撫に、とろけそうになる。
「きもちいい、セルティ?」
「うん……きもちいいよ、新羅」
変に意地を張ったりせず“きもちいい”と、ハッキリ言えた。
好きな男に身体をかわいがってもらってると言う実感が今はただただ嬉しい。

256 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(9/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:35:04 ID:Xr8Ooa1H

けれど、体と言うのは欲張りで、柔く優しい愛され方ではだんだんともの足りなくなってくる。
そんな私の意を汲んだのか、新羅の責めが徐々に大胆になってきた。
「やだって……そんな引っ張ったりしちゃいやぁ……」
新羅の指が物欲しげに震えていた私の乳首を摘み、きゅうと引っ張り、伸ばす。
「そんな嬉しそうな顔して『嫌』って言われても」
「はぁっ……う、嬉しそうな顔なんかしてない…ん、んぅ……!」
そんなにエロティカルな顔をしてるんだろうか……ってか、エロティカルなんて単語あったっけ?
「あっ、やぁ、くぅん……!」
激しさを増した性感が、単語の存在有無に悩む私を現実へと引き戻す。
私の乳房はいまやすっかり蹂躙されていた。
唾液に濡れ、揉まれ抓まれ押しつぶされる様は、見てるだけでもどうにかなってしまいそうだ。
「新羅……お前、手つきエロい……」
「そりゃもう、誰がどう見たっていやらしいことしてんだから、お上品になんて出来ないよ」
新羅は苦笑しながらも、それはそれは下品にずずっと音を立てて乳首を吸いたて、
「やぁああああっ、あぁぁ、もうダメ……だめぇ……」
たまらず、私の口からは泣き言がこぼれ出す。
 
……ああ、だけど、どうしよう、刺激はずいぶん強くなったのに、これでもなんだか物足ない。
乳房やその周辺から生み出された性感は体全体を駆け巡ったあと“胎”へと至って蓄積され、
早い話がおなかの中がむずむずして、すっごく熱い。
“胎”の熱と疼きに耐えかねて太腿をもじもじとこすり合わせると
 
くちゅ
 
―――濡れていた。
 
「―――濡れてるね」
 
新羅の声で追認する。
たぶん、それに気付いたのは同時だった。
濡れた下着と肌が擦れ合う音と、私の動きから察知したのだろう、
新羅の視線が既に私のショーツに向けられていた。
ヤバイまずい新羅見ないでお願い恥ずかしくって死んじゃいそう。

「ヒトと違って濡れないとかだったらローション使おうとか思ってたからよかったよ」 
「ぁ……ゃ……」
 
……なんて事言いやがる。まさに恥辱の極みだった。
胸のうちに様々と湧き上がる想いはあるのに、緊張しすぎて一言もまともな言葉にならない。
 
「……ま、セルティがちゃんと感じてくれてるようで何より」
「違うぅ……」
ようやくの思いで搾り出せた自分の声は、なぜか否定の言葉。
「ううん、違わないよ、だって、ほら……」
「えぇ、や、や、やぁっ……やぁぁぁあああああああぁっ!!」
 
濡れた股間を撫でられたのだ、と気付いたのは、嬌声をすっかり吐き出し終わった後の事。
喘ぎと共に粘液のひとかたまりが、こぽりと胎からおりてきて、ますます下着を汚していくのを感じた。
「ね? こんなに……」
新羅が私の股座から手を引き抜き、すくい取った愛液をねっとりと指にからめて見せ付ける。
……指であれなら“源泉”はもっとすごい事になってるに違いない。
 
「だって……だって新羅が…新羅のせいだからな……こんな風になっちゃったのは」
「そうだとしたら身に余る光栄だね」
「え?」
「俺以外の男だったら“こんな風”にならないってことだろ? 嬉しいよ、セルティ」
「……新羅」

257 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(10/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:36:39 ID:Xr8Ooa1H

―――そうだ、いい加減に覚悟決めろよ、セルティ・ストゥルルソン。
 惚れた男といっぱいキスして、体中いじくり回されて、こんなにびちょびちょに濡れさせられて。
だったらもう、後は抱いてもらうしかないじゃないか。
ふと、私たちは見つめあう。
 
「しようか、セルティ」「……うん、しよっか」
 
思い、通じ合った。繋がりたい、一つになりたい。
私はそんな気持ちでいっぱいで、新羅のほうも同じ気持ちなんだろうと確信できた。
 
「最後の一枚、脱がすよ?」
恥ずかしすぎて、声で返事なんて出来ない。
ほんの少しだけこっくりと首を傾かせて肯定の意思を表すと、
新羅はショーツに手をかけゆっくりと引き下ろしてくる。
はじめのうちこそ見ていたが、粘液で肌と布が密着した“源泉”部分を
引き剥がす段になると、つうっと濡れた金糸が引き、羞恥で思わず目を逸らした。
新羅が息と唾液を飲み込むごくりと言う音を耳がとらえる。
……ああ、見てる。新羅に見られちゃってる。
もう何一つ着ていない私のその姿を、そして“胎”の入口であり出口でもあるその部分を。
「これで本当に一糸纏わぬ……というか、まさに仙姿玉質、明眸皓歯とはこのことか……
天香国色のたえなる香りが僕の鼻腔をくすぐって、炉火純青の思いに達してしまいそうだよ。
いやしかし、セルティ、君の妖姿媚態のその姿に、僕はすっかり―――」
 
興奮のあまりか、新羅は語彙の限りをつくして私の体への賛辞をずらずらと並びたてていく。
……でも今は、そんな風に褒められても、なんだか空虚でせつなくて。
「新羅、落ち着け」
「ああ、ごめん……綺麗だ。本当に綺麗だよ、セルティ」
「……ま、ありがとな」
うん、どんな美辞麗句よりも、新羅の魂からそのまま湧き出た単純なその言葉の方が千倍嬉しい。
 
「さてセルティ……ちょっと足広げて」
この先の事を覚悟してるとはいえ、そんな事を言われて流石に緊張する。
キスも、フェラチオも、夢魔の力を借りてこそできる事だったけど……ここから先は、全部自前の体でやる事だ。
「その…今から挿れるのか……?」
「はじめてだし、“きもちよくなって”もらわないといけないから指でいじる事になるけど……嫌?」
「……と、ゆーかさ、新羅。お前もはじめてのわりに、さっきからずいぶん手馴れてないか?」
ふとした疑念が頭をよぎる。
つまらないことだと感じたが、思いついた以上は聞かずにはいられなかった。
「え? 待ってセルティ」
「まさか、じ、自分も初めてとか言っといて……私の知らないところで、どっか他の、女と……」
くだらない思いつきが更なる妄念を呼び起こしてしまい、見も知らぬどこぞの女に嫉妬心が沸き起こる。
「誤解だよ! 間違いなく俺はセルティ一筋だって!」
「じゃあ、なんでっ……!」
 
すると新羅は、悪戯を母親に見咎められた少年のような顔をして、少々バツが悪そうにこう応えた。
「俺は……君とこんな風になることだけを20年間望み続けてきた男だよ?
君がベッドの上でどう感じ、どう応え、どう求めるか、そして僕がどう返せばいいか、
幾百通り、幾千通りもの愛のシミュレーションを既に脳内で完了している。
例えばさっき乳首回りだけを責めてあげたら焦れて自分からおねだりしちゃったのも、想定のうちさ」
 
もってまわった新羅の言い分を頭の中で噛み砕き、自分なりに解釈できたのがその5秒後。
 
「……要するに、毎晩私のことをズリネタにしてました、って事だよな?」
「セルティ……そんな下品な言葉どこで覚えたんだい?」
「10年程前にお前が貸してくれた漫画かなんかだ文句あるか。……それより、最初の質問に答えろ」
「それはもう、精通が始まる前後からは、ずっと……」
「……変態」
 
一言で言ってそれに尽きる。
まあでも、見方によっちゃ、そこまで深く思われてる私も結構な果報者だったりするのかもしれない。

258 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(11/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:38:18 ID:Xr8Ooa1H

「……でもごめん、新羅、疑っちゃったりして」
今日まで思い込みの激しい焼き餅妬きの女なんて最低だと思ってたけど、
まさか自分もそのクチだったとは……『恋は盲目』って本当なんだなあ……
「いいよ、気にしないでセルティ」
気にしないでと言われても、立場が逆なら私は許さないだろう。
そんな思いが、私にとんでもない事を口走らせてしまっていた。
 
「お詫びにさ…お前のやらしー妄想……一個だけ何でもかなえてやろうか?」
 
口にした後、物凄くロクでも無いことを頼まれる予感がしたが、時既に遅し。
「……なんでもって、本当になんでも?」
新羅。目ぇ怖い。目が。
「出来れば、一般常識の範囲内だと助かる……それと一個だけだぞ」
「だいじょぶだいじょぶ。人間だったらみんなやってる事しか頼まないから」
「それならまあいいけど……」
ほんの一息分だけ安堵した時、
「じゃあ俺、セルティが自分の指でいじって気持ちよくなってるのが見たいな♪」
「……はい?」
やっぱり自分の予感が正しかった事を確信した。
 
「あ、ごめん、分かりにくかった? 平たく言うとセルティがオナニーしてるとこが見たい」
「平たく言わんでいいっ!」
「実に普通の行為だよ。男性でほぼ100%女性でも88%以上が定期的に行ってると言うデータがだね……」
「だからって、フツー他人に見せるもんじゃないだろ!」
「他人じゃないよ、恋人だし」
「……恋人と来たか」
 
その恋人に、そんな事をお願いするというのはどうなんだ。
……ああ、畜生、私は何でこんな奴の事がこんなにも好きなんだろう。
 
「でも……私やり方わかんないし」
「自分で触ったこと無いんだ」
「……少なくとも今日までは、な」
 
嘘はついてない。
2時間ほど前に他人の情交うっかり見ちゃって、軽く撫でちゃったりしたけどアレだって“今日”だ。
 
「まあ、セルティがわかんないなら仕方ないかな……」
軽くガッカリしてる新羅を見てると
“これでやらずにすむ”という安心感と“約束なんだから一応守らなきゃ”と言う気持ちが拮抗して、
「うぅ…やってやるよ、やりゃぁいいんだろっ……!」
かなりの僅差で後者が勝利した。
「……え、ホントに? セルティ」
「言っとくけどお前がやれっつったからでやるんであって私はそんないやらしいこと
全然したくないけど約束は約束だから一応守ってやろうと思ってるだけだし
体がすっごいうずうずしてるのにお前がヘンに焦らしてばっかりだから
自分で触らないともうどうにかなっちゃいそうなんてことも無いしでも見られながら
したりしたら興奮できもちよくなれちゃうかもなんて期待も全然して無いったら無いんだからなっ!」
 
……一気にまくし立てたが、もう自分でも何言ってんだかサッパリわからない。
 
「ああ、うん……俺が悪い。俺が悪いんだよね」
 
言いつつ、新羅は私の足を割り開き、その間にうつぶせになって寝っ転がり、
いまや下着を脱いで露出した私の性器の真ん前に、顔面を置いて目を据えた。
 
「特等席」
「……変態」
 
一言で言ってそれに尽きた。

259 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(12/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:39:17 ID:Xr8Ooa1H

 
              ♂♀
 
こんな間近で見られちゃってる。
まだ何もしていないってのに、もうそれだけでホント文字通り
“視線が突き刺さってる”んじゃないかってぐらい刺激を感じる。
 
「……すごい、あふれてきたよ、セルティ」
「だからそーゆーのをイチイチ報告すんなよぉ……」
 
さっきまで下着に吸収されていた愛液は、今や私のあそこから直にたっぷりと零れているらしい。
確かに割れ目のあたりやその下の尻のあたりを、粘性のしずくが這い伝う感触がし、むずがゆい。
 
「でさ……こっからどうやったら良いんだ?」
こんな事聞くだなんて、カマトトぶってるみたいでヤだけど、わかんないものはわかんない。
「じゃあまずは自分の局部を触る事そのものに、慣れていこうか」
「……うん」
「手の平全体を使う感じであそこに手を置いて、軽く撫でてみて」
「えと、こんな感じか…んっ……んんっ」
ぬかるんでる。
まだ手は添えただけで動かしてないのに、触ってる箇所全体からぴりりと電気が流れたような感じがする。
手の平は愛液でべっとりと汚れ、私がしっかり欲情している事を教えてくれた。
「ぁ……はぁ…すっごい……ぬるぬるしてる、ん、んぅ……」
動かし始めると、手とあそこが触れ合って、いやらしい水音がする。
「そうそう、そのまま、局部全体を揉みほぐすような感じでくちゅくちゅしてごらん」
「わかった……うぁ…、く、 あぁ 」
 
腹が据わったせいか、至近で見られてるというのに手が止まる事は無かった。
もちろん、恥ずかしくないわけじゃない。
―――むしろ“もっと恥ずかしくなってみたい”と言う気持ちさえあって、
もはや私にとって羞恥でさえも行為の原動力になりつつあった。
「慣れてきた、セルティ?」
「……かも」
最初のうちは手が刺激を送り込むたびに怖くて文字通り“腰が引けて”いたけれど、
徐々に身体は刺激を受け入れ、電撃じみた感覚を“快感”として享受し始めていた。
 
「じゃ、次は割れ目にいこっか。指先つかって、下から上へなぞる感じで」
「ゃ… ぁあ… 、こ、こんな感じ……だよな」 
刺激のタイプは面から線へ。
ぬかるみに指をうずめ、蜜の源泉から愛液をすくい取って、クレバス全体へ縦方向へ塗り広げていく。
いじくるほどに、あふれる。あふれるほどに、指のうごきはなめらかに。
新羅に見られている事も半ば忘れて、いつのまにか私は行為に没頭していった。
 
「や、やぁっ、ん、んんっ!!」
 
クレバスの上のほうを触っていたとき、
突然、思いもしなかった程の強い刺激があり、思わず大きく叫んでしまう。
「あ、クリトリス擦っちゃったんだね。いきなり触ると痛いかもだけど、もうそろそろ大丈夫かな?」
「……くり…とりす」
知識としては知ってた。女の子の外側で一番きもちいいところ。さっきのが、そうか。
―――触ってみたい。
 
「あ! あぁああっ! やばッ、 あ、あ、ああぁ……」
気付けば指は勝手に伸びて、女の芯をこりこりといじり、新たな快感を味わっていた。
「どんどんえっちになってきちゃったね、セルティ。まだ『触って』って言ってないのに」
「だって……だってぇ…やっ、  あぁっ!」
「大丈夫だよ。俺、えっちなセルティ大好きだし。
それに“きもちよくなった”方がこのあと具合もいいしね」

260 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(13/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:40:28 ID:Xr8Ooa1H

大好きとか言われてしまった……新羅はえっちな私が好きなんだ……
それと、新羅と一つになる為に、私自身がいっぱいきもちよくなる必要もある。
もっと新羅に好きになって欲しくて、もっと自分も気持ちよくなりたくて、指の動きを早め、強める。
線の刺激が点の刺激へ。硬く勃起しているクリトリスを、指先だけで撫で、つまみ、押し込む。
「新羅…しんらぁ…やぁっ…、 あ、 ぁぁああっ……あぁあっ!」
動かすほどに高圧の電流が流れるかのような感覚がし、
最初は腰が、ついで身体全体が、びくびくと跳ねた。
「どう? クリトリスのお味は」
「しびれそう…スタンガンぶち込まれた時よりキく……」
「あー、うん……セルティらしい回答である意味安心したよ」
流石に色気のなさ過ぎる返事だったかもとちょっと反省。
 
「……さて、そろそろメインに行こうか、膣口ってわかる?」
「一応……」
芯をいじっていた指をつつっと下へと動かし、いまだ蜜を吐き出し続ける孔へ向け、あてがう。
その孔はひくひくと震えていて、今や私はすっかり欲情してしまってることを理解した。
「……ここだよな?」
「うん、何するところかは知ってる?」
……聞くなよ。知ってるって知ってるくせに。
だけど、口に出して確認しておきたい気持ちもあった。
 
「繋がるところ。私と新羅が」
 
自分でいっておきながら、その言葉にどきりとする。
行為に夢中になりすぎて今やってるのが“本番前の準備運動”だって事を忘れかけていた。
「そうだ。そこが充分ほぐれたら……挿れるからね?」
……そうだよな、私、もうじき新羅に挿れられちゃうんだ。
そう自覚すると興奮は高まり、あふれた蜜がそのまま孔をおさえる指を濡らした。
「その指。入れてごらん」
たぶん、身体はその指示を待ち焦がれていて、言われると同時に指は潜り込んだ。
「うぅ、 あ、 指ぃ……はいっちゃった、 よぉ……ん、んぅ……」
いきなり全部入れるのは怖くて、指の第一関節ぐらいまでを差し込んだだけなのに、
もう濡れた肉壁がきゅうきゅうと指を締め上げてきた。
指一本でもこんなにしんどいのに……本当に、新羅のなんて挿れられるのかな……?
「キツい……よぉ……」
「いきなり全部はしなくていいから、入り口のところ慣らそうか。入れたり出したりしてごらん」
言われるままに浅く出し入れすると、潤滑液が掻き出されるぐち、ぐち、とやらしい音がする。
「やっ、あっ、 はっ……、 い、いりぐち、こすれて……」
「きもちいい?」
「わかんない……ぴりぴりする…んっ、 でも、嫌じゃない……から」
続けたい。続けて、そして、最後には――

261 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(14/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:42:19 ID:Xr8Ooa1H

「そろそろ一本は慣れたかな。じゃ、二本目入れよっか。手伝うよ」
「……え! やだ、ダメぇ! 新羅、そんなのダメ…んぅ、 んんっ……!!」
 
いつのまにか新羅も私の孔に手を伸ばしていて、その細い指を差し込んできた。
新羅の指と私の指。
ふたりの指が私の濡れた孔の中でこすれあい、孔そのものもふたりの指でほぐされちゃう。
すっごく恥ずかしいのに、私の指はもう止まらなくて。腰もびくびく跳ねちゃって。
 
「ふたりの共同作業だね」
「ばか……ばかぁ…、新羅のへんたい……」
 
その変態に女の一番大事なところをかき回されて、
その変態のモノを受け入れる準備が整っていくのを感じる。

「新羅ぁ……」
性感はヤバイ位に与えられてるのに、器の底が抜けてしまったかのように満たされない。
「指、もう、いや……」
どうしてもらえば満たされるのかは本能的にすぐわかった。
新羅のモノを孔に差し込んでもらって、ナカをいっぱいこすって欲しい。
おなかの一番奥――胎に新羅のモノで突付いて直接刺激を与えて欲しい。
「……ん? 我慢できなくなっちゃった?」
「うん……もう、もう……私のあそこ……こんなぐちゃぐちゃになっちゃって……」
 
指を孔から引き抜くと新羅も同じく指を抜き、
完全に出来上がった“孔”だけが新羅の目の前に晒された。
触らずともそこが、興奮にひくつき、あふれんばかりにやらしい体液を流しているのを感じた。
 
「うん、ぐちゃぐちゃだ。セルティの下のお口、こんなに真っ赤になって、
よだれもいっぱいこぼして、おちんちん食べたい食べたいって言ってる」
「……うん、新羅のがいい……新羅の挿れて欲しい」
欲望がダイレクトに口から出た。……なんかもう、理性がマトモに働いてないっぽい。
「……俺も、もう限界。セルティに挿れたい」
新羅は膝で立った後、私の腰を支えて軽く浮かす。
ねっころがったこの姿勢から見れば、新羅のモノは怖いぐらいに膨れ上がって、
鈴口周辺には、たっぷりと先走りの液がこびりついていた。
その鈴口が、私の“孔”へと徐々に近づき、そしてあてがわれる。
「ん……」
熱い。
ほんの少しの接触なのに、そう感じるのは体の一番弱いところだからか。
さらに新羅は空いた手で私の性器を割り開き、愛液と先走りをたっぷり混ぜ合わせると、
ふたりのいやらしい混合液をペニスの先端に絡めつけた。
これで準備は整った。あとは。
 
「いいね?」「いいよ」
 
最後の合意は速やかに終わった。そして―――
 
              ♂♀


262 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(15/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:43:34 ID:Xr8Ooa1H

  
―――はいってきた。
 
私の孔が新羅のペニスに押し広げられ、ゆっくりと押し込まれていく。
肉と肉とがこすれ合う、ぎちぎちとした感触に私の心は囚われる。
「あ……、ああ、 う、 ううッ……」
粘膜同士の触れ合いにわずかばかりの性感は覚えるものの、快感と呼ぶにはまだ程遠い。
「痛ッ……ああぁっ! いた、痛いっ……!」
ペニスが入り口をくぐりぬけ、中ほどにまで挿れられたとき、明確なまでの痛覚が私を襲った。
ここまで痛いのは森厳の奴に生体解剖された時以来だ。
新羅の動きは既に止まり、こっちを覗き込むその顔も軽く動揺している。
「……あ、あ、セルティ?!」
「ごめん新羅……ちょっとだけ待っ……て、ごめん……」
ヤバい。声も手もすっごい震えてる。
視界がぼやけ、歪む。一瞬意味がわからない。
『首』があったら“視覚”のシステムまでもがいつもと違うのか。
……そうか、わかった。泣いちゃってるのか、私は。
「こっちこそごめん…痛くしちゃって……大丈夫、セルティ?」
「全然大丈夫じゃないけど……ココで止めたりしたら一生許さない」
「……了解。ま、ともかくゆっくりやろうよ」
 
新羅が私に覆いかぶさり背に手を回して抱きしめてくる。あったかい。
あと、ついでに重い。だけど今は幸せの重みだ。
「キスして……」
ねだると、新羅は情熱的に口付けてくる。上と下とで繋がって身体はじいんと熱くなる。
キスするうちに身体も慣れたか、痛みも若干やわらいできた。
「新羅、そろそろ全部挿れちゃっていいよ……」
「……痛かったら言ってね?」
「だいじょうぶ、平気」
気づかうようにじっくり、じっくりとペニスは突き進み、
「……んっ、 やぁ…ん、はいって、来てる……よぉ……」
そして、新羅のモノが私のナカを完全に満たした。
 
―――繋がった。新羅と一つになったんだ。
 
すごく痛くて少しきもちよくてちょっぴり物悲しくてあふれるほどに嬉しくて。
そんな様々な感情と感覚が繚乱となった混沌のスープから、ただ一滴の純粋な言葉が零れ落ちる。
 
「すき」
 
言えた。
今夜、喋れる口のあるうちに、液晶画面の無機質なデジタル文字ではなく、
体温を孕んだ声として伝えておきたかった短く鋭いその言葉。
「俺も。好きだよセルティ」
「新羅ぁ…すき…すきぃ……」
「愛してるよ」
「うん、あいしてる…すき、だいすき……」
止まらない。声に出すほどに新羅のことが好きになっていく。
 
愛の言葉を確かめ合ったせいか、緊張でキツキツになっていた私の孔はほころびていって、
痛みと恐れで乾きかけていたのが、再びじっとりと潤み始めた。

263 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(16/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:44:41 ID:Xr8Ooa1H

「……動いていいよ、新羅」
「じゃ、お言葉に甘えて」
 
新羅の腰が引かれ、ペニスは来た道を引き返して抜けそうにまでなって、
「うぁ…ん、 ぅん……」
そして今度はずん、と突きこまれる。
「んぅっ!」
正直、まだ痛い。
だけど今なら痛みの中に散らばった性感を拾い集める事が出来そうな気がした。
そう、私も最後の最後に気持ちよくなってないと、また、新羅を“喰って”しまうかもしれない。
そうならない為にも、今は情交を味わい尽くす必要があった。
 
「や、ぁんっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んんっ!」
 
やがて新羅のモノの出入りの動きは一定のリズムを保ちはじめ、
新羅が腰を動かすほどに、私はいつのまにか艶っぽくなってきた吐息を規則的に漏らし、
繋がった部分からじゅぷじゅぷ恥ずかしい水音がしていた。
 
「……んんっ、ねぇ…新羅、きもちいい?」
「うん……セルティがえっちすぎて気ィ抜くとすぐ出ちゃいそうなぐらい」
「や……あんっ、わ、私がえっちなせいにするなぁ……お前が助平のクセにぃ……」
「ふぅん? じゃあ、さっきココを一生懸命触ってたのはどこのえっちな子だったかなぁ?」
「あぁんっ! ダメぇっ…そこダメぇ、や……ああぁぁあああんっ!」
 
新羅のいじわる。挿入しながらクリトリス触ってくるなんて反則だ。
 
「ダメなんだ、じゃあ止める」
「やめちゃだめっ!」
 
言ってからしまったと思うが、もう遅い。
新羅は腰の動きも止めて、私のうろたえる様を観察してきやがる。新羅のクセに生意気な。
 
「ぁ、違う……違うんだ……、ちがうのがちがうっていうか……あれ? とにかく違うのぉ……」
「ふふ、どっちなのかなー? セルティのしたいようにしてあげるけど?」
目の前のド助平が、優しい目をして私を官能へと誘惑してくる。
これは勝ち負けで言うならもう……私の負けだった。
「さわって……そこ、好き……」
「ふふん、やっぱりセルティはえっちな子だ」
「……う、うぅー」
「でもほら、これで二人できもちよくなれるよ、ほぉら、ね?」
「あ、あ、やあぁぁあっ! 新羅、新羅ぁっ!」
 
腰が動き抽迭が再開され、つづけて私の陰核が新羅の指に刺激されていく。
……あ、今のでどっかスイッチ入っちゃったかも。
快感が他の感覚を圧倒して、痛みもまた駆逐されはじめてる。
今まで痛みしかもたらさなかった、ペニスが肉壁の内側をこする動きも、
徐々に不快感が薄れてせて快感へと変換されていく。

264 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(17/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:45:57 ID:Xr8Ooa1H

「新羅ぁ…あぁんっ、なんかヘン、や、あぁ…あそこがヘン……だよおっ!」
 
でもこの感じ、単に“きもちいい”っていうより、どっか覚えのある感覚のような―――
―――ああ、コレは『おいしい』だ。私は今、新羅のペニスを美味と感じてしまっている。
 
「あのね……新羅、おいしいの……新羅のおちんちんすっごくおいしいよぉ……」
「……っく、は、セルティのあそこは食いしん坊なんだね」
「うん……もっとたべさせてぇ……」
「で…うぅ、悪いんだけどさ“食べさせる”んじゃなくて“飲ませる”になっちゃいそうだけど良い?」
「……んぅ?」
「早い話が……ぅう…っ、もう、そろそろ限界、出ちゃいそう」
 
それを聞いた時、私の体の奥の奥、
新羅のペニスに突かれるその先の臓器がずぐりと疼き蠢いた気がした。
人間だったら子宮に相当するその器官が、子を成す機能を持ってるかどうかはわからない。
だけど牝としての本能も、妖精としての本性も、その“使い方”だけはよく知っていた。
すなわち『眼前の愛しい雄の“精”を、たっぷりと“胎”に注ぎ込んで欲しい!』と。
 
「あ、ぁ、あ、新羅、出ちゃいそうなんだ、せーし、でちゃうんだ」
「っ……ごめん、ホントもう、そろそろ…っ、我慢できない……!」
「だして……っ! 私のおなかに新羅のせーしだしてっ!」
 
心の片隅にほんのわずかだけ残った理性が
“馬鹿! 子供できちゃったり、風呂場のときみたいに『喰って』しまったりしたらどーすんだ”と、
自分自身のその声に突っ込んだが、残念ながら理性にはもう、身体を動かすほどの主導権は無かった。
……そして“新羅の子供だったら生んであげてもいいかも”と、考えてる自分をも発見して驚いた。
「ほんとうに……っ、ナカで…いいんだね? ナカでだすよ! セルティ……!」
「ナカがいいの! 新羅の、ナカに欲しいのっ!」
もはや私の身体は“決して逃すまい”とばかりに、新羅の身体を強く抱きしめ、
新羅もまた外に漏らすまいと最奥にまでペニスを突きこみ鈴口と子宮口を口付けさせてきて――
―――そして大きく弾け、震えた。
 
「セルティっ……受けとめてっ!!」
「ひぁっ……あぁぁぁあああっ! でてるうっ! 新羅の熱いのでてるっ!」
 
強烈だった。
私の開発されてない未熟な粘膜で受け止める男の“精”は劇薬も同然で。
その刺激のあまりの強さに、心と体は不連続となり、私の身体はただただ膣や胎を収縮させて
男の“精”を飲み込み搾り取ろうとするだけの哀れな道具に成り果てていた。
 
「セルティっ、セルティっ……!」
「新羅っ、新羅ぁ……!」
 
新羅が呼びかける私の名も、私自身が新羅を呼ぶ声も、全てが遠く感じる。
視界や意識は急速に白く染まっていき、あと数秒で果ててしまうだろうと気がついた。
 
―――夢が終わる。終わってしまう。
 
だから。果てる前に。意思の限りを振り絞って。
 
 
ちゅ
 
 
新羅と唇だけをもう一度あわせあった。
それがたぶん、今宵今夜の最後の記憶―――

265 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(18/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:47:21 ID:Xr8Ooa1H


              ♂♀
 
こんこん
 
 
―――なんか、ノックみたいな音がする。
 
音を感じて目を覚まし、ベッドから身を起こすと、
カーテンの隙間からでも分かるほどの強烈な日差しがそこにあった。
気温も高い。もう朝というより昼に近い時間なんだろう。
まいった、すっかり寝過ごしちゃったかもしれない。
いい加減にメシを作ってやらないと新羅がかわいそうだな、などと思っていたとき、
「うぅん、セルティ……」
「!!」
その愛しい恋人が裸で傍らに寝転がっていて、私は飛び上がらんばかりに驚いた。
そればかりかシーツは乱れに乱れ、なんだかよくわからない液体でぐっしょりと濡れていて、
オマケに辺りには下着だのバスタオルだのが散らかされている。
 
そうだった、思い出した。私は、とうとう、新羅と……
 
新羅は見た感じでは呼吸は正常だし、脈拍にも乱れは感じない。
……どうにか私は新羅のことを、とり殺したりしないですんだらしい。
まあ、昨晩は二人でずいぶんとがんばったから疲れて寝こけているのだろう…………って
 
「―――――――――!!」
 
途端に、昨晩の自分の痴態といやらしいセリフの数々をうっかり思い出してしまい、転げ回る。
そして恥ずかしさのあまり自分の『頭』を抱え込みそうになり――
――既にそれが“存在していない”事に気が付いた。
 
終わってしまえばまさに一夜の夢。
 
私はベッドの周りに『視線』を飛ばし、ベッドの脇に転がった一つのスイカを見つけ出した。
無惨にもばっくりと割れ、赤い中身をさらけ出したソレが昨晩、私の“頭の代わりだったモノ”だ。
『触覚』というのは夢魔の力をもってしても、ごまかしにくいものらしく、
キスをするためには幻覚の『核』として何らかの『実体』を必要とした。
そこで私は近所の八百屋で小ぶりのスイカを買って、切込みを入れて適当に目鼻をつけた後、
首の上に乗っけて、頭の代わりにしたというわけだ。いつものヘルムじゃデカすぎるしね。
 
……ああ、それにしても食べ物をずいぶん粗末に扱ってしまった。
ベッドから落ちた衝撃で崩れてしまってるし……そもそも、いろんな体液で中身を汚してしまってるはずだ。
八百屋さんとかお百姓さんとか、なんだかごめんなさい。本当にごめんなさい。
 
 
こんこん
 
 
私が見知らぬ農家の方々に届かぬ謝罪を捧げていると、またもやノック音。
この部屋のドアでもないし、玄関の方向でもない……これ、方向は、テラス?
 
体がベタベタして気持ち悪いが、とりあえず『影』を身にまとっていつものライダースーツを形成し、
自室から出てテラスの方を見やれば――羽のはえた異形がガラスの向こうから手をふっていた。
緑色のメイド服に身を包んだその姿は、朝チュンのスズメにしちゃあデカすぎる。
昨晩の騒ぎの元凶にして、ある意味で新羅と私にとっては恩人である存在。
夢魔の、レルードだった。
 

266 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(19/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:49:25 ID:Xr8Ooa1H

               ♂♀
「おはようございます。……首尾は、いかがでした?」
挨拶と共にレルードはうやうやしく一礼し、こちらへと微笑みかけた。
私もテラスに歩み寄り、自室から持ち出したPDAをガラス越しに差し出した。
『礼を言う。お前のおかげで私の望みは充分に叶えられた』
「それはなによりで」
『……で、わざわざ家にまで来たって事は“喰い”に来たわけか? 私の“欲望”を』
「いいえ、助けていただいた義理もございますし今回は結構です、それに……」
レルードの口元に浮かんだ清楚な笑みが、いたずらっぽい笑いへと移り変わり、
 
「……昨晩は別の意味で『ごちそうさま』でしたし」
 
とんでもない事を口にした。
 
意味が一瞬わからなかったが、言葉をゆっくりと噛み砕いて、一つの結論に至る。
『―――まままままままままっ、まてっ! おおおお前ええ、まっさああああか』
怒りか。羞恥か。指先が震えて上手くPDAのキーを叩けない。
『……みみみててたのか? 見てたのかっ?!』
羽のついてる奴だけに窓の外から見てた可能性も……いや、カーテンは閉めてた、間違いないっ!
レルードの笑みが若干勝ち誇りの色を帯び始める。
「……くす。私は貴女と違ってそんな出刃亀みたいな真似はいたしませんけど」
『じゃあなんでっ?!』
「あら、申しておきませんでしたっけ? 口を持たない貴女の代わりに
私が“幻覚”を通じて頭の中の声を貴女の恋人に“通訳”して差し上げます、と」
『そんなん言ってなかっただろっ!!』
 
……ちょっと待て。と、言う事は、
 
『……全部“聞いて”いたのか?』
「ええ、一部始終を」
くらくらして、手元のPDAを思わず取り落としてしまう。
「不可抗力です。不可抗力。説明不足もあったかもしれませんけど」
眼前の“夢魔”はニヤリと笑ってそんなことを言いやがる。
コイツ、絶対わかってやってんな、畜生……
「うふふふ。おかげさまで、デュラハンが人間の手によって褥で処女を散らすシーンだなんて
非常に珍しいのに立ち会うことが出来ました。ええ、本当に“ごちそうさま”でした」
「………………」
羞恥よりも先に怒りがふつふつと込み上げてきて、PDAを拾い上げて何か言おうと言う気にすらならない。
「初めてのわりには随分とおねだりもお上手でしたこと。大変に甘やかで可愛らしくて。
ええと、“しんらの、おいしいよぉ、もっとたべさせてぇ……エグムガ…ムガッ……ガガガッ!!」
 
―――黙れ。
 
沸き立っていたのは怒りだけじゃない。昨夜、新羅と愛し合った時に手に入れた『力』と『影』と。
かつて無いほどのスピードでガラス戸の隙間から『影』を染み込ませ、
帯状に形成したそれを素早くあやつり、一瞬のうちに硝子の向こうの“夢魔”を十重に二十重に緊縛する。
「……んーっー! んんーっ!!」
口を『影』で塞がれ、身動き一つ取れない“夢魔”に向かって殺気全開。
たちまちのうちに“夢魔”の端正な顔は青ざめ、目は後悔の涙に潤み始める。
殺気の余波で、そこいらの電柱なんかに止まっていたハトやらスズメまでもがバタバタと逃げ出す。
ガラス戸をあけて、テラスから室内に引きずり込み『影』の無数の刃をつきつける。
そして密かに立ち上げておいたリビングのノートパソコンに
特大のフォントで、ただ5文字だけをつづる。
『死 に た い ?』
返事を聞くために“夢魔”の口の拘束だけを外してやると、
「すっすみませんでしたちょっと調子に乗りすぎてましたもうさからいませんし脅したりしませんから
どうか命ばかりは助けてくださいお願いしますお願いしますお願いします……」
途端に機関銃のように謝罪の言葉があふれ出る。
 
……うんうん。これでこそ小物。実にコントロールしやすくて助かる。

267 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(20/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:53:21 ID:Xr8Ooa1H

「ひどいです……ほんの冗談でしたのに」
『アレが冗談で済むか、馬鹿』
「あは……その、ごめんなさい。……ところで、ですね」
 
緊縛をといてやったのに逃げ出さないところを見ると、まだ何か私に用事があるらしい。
……と、言うか、話の流れからいってコイツの言いたい事は大体わかる。
とりあえず、ノートPCに予測を書き込み指し示す。
『要するに、お前は“私の恥ずかしい姿を黙っておいてやるから、
私もお前の恥ずかしい姿をベラベラ喋るな”と、言う形に最終的に持ってきたかったんだろ?』
「あ、お察しの通りで。でも不可抗力ってのは本当ですよ。
“キスがしたい”って望みだったのに、あんなおクチで……とか、思ってもみませんでしたから」
『……うるさいだまれ』
 
さっきの爆発で怒りはすっかり揮発し、今は純度の高い羞恥だけが残されてる。
私は今はもうない『顔』に、かあっと血が登るかのような錯覚を覚えた。
 
「……それと、まだお話があるんですが」
『何だ?』
「コレは嘲りや挑発のつもりで言うんじゃないんですが……」
『妙に勿体つけるな。どうしたんだ』
「男の“精”に“味”を感じたんですか?」
「……」
どーゆー目的の質問だ、コレは? 少し悩んでから、文字を打ち込む。
『まあ、おいしかったよ……』
「やっぱり……」
何がやっぱりなんだ。
レルードは、ふむふむ、とか、ああそうか、とか自分ひとりで納得して一向に要領を得ない。
そうかと思うと突然口を開いた。
 
「スイカです」
『……は?』
 
何が、スイカなんだ?
 
「結論から言いますと、昨晩、貴女の頭に載せたスイカは
貴女の肉体の一部……いえ、それ以上のものとなって一体化していました」
『どういう意味だ……?』
「実在しないはずの部分で、味を感じたでしょう? 色々と気持ちよかったでしょう?」
『アレはお前の力じゃなかったのか?』
「私の力だけではあそこまで五感を再現できません。
ですが、残りは貴女自身の力と、スイカの持つ霊性ゆえに、です」
私自身の力でもある……だと?
「こんな話を聞いた事はありませんか“スイカは吸血鬼に転じやすい植物だ”と。
まあ、私の身内にもスイカ吸血鬼がひとり……というか一体いるんですけど」
 
―――あ!
 
『知ってる。なるほど。私とお前、つまり、夢魔とデュラハン二体分の力を受けた
スイカがある種の魔物になっていた、と……こういう話か』
「そうですね、貴女に寄生し、貴女の行動の一部を支配していた可能性すらあります。
もう、割れちゃってるみたいですから、検証はできませんけど」
『はぁ……そう言うことか、そうだよな、私、自分からねだるようなやらしい女じゃないもんな……』
「……まあ、言いたいこともなくもないですが、黙っておきます」

失礼な奴だ。

268 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(21/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:55:41 ID:Xr8Ooa1H

「いっときますけど、コレも不可抗力です。
私もこういう事例は初めてですし、そもそも『核』にスイカを選んだのは貴女ですから」
『わかってるって……』
「まあ、事故みたいなモンですんで、今後の貴女の性生活で精気を際限なく吸っちゃうようなことは起きないかと」
『……性生活とか言うな』
 
……恥ずかしいけど、コレはコレでちょっと一安心。
新羅とああいうことをする度に、房中術だの何だのと持ち出されちゃ困るし。
 
「まあ、どっちにしても男の“精”って、妖魔の類にとっては“ごちそう”なんで、
飲んだり膣内に出してもらったりしたら、程度の差こそあれ、それなりに元気になれるんですけど」
『あーもー、うるさい、私をお前ら夢魔とかと一緒にするな』
「ブリテンの騎士王様だってやってることなんですから、
アイルランドの妖精騎士がやってたっておかしくは無いと思いますけどねー」
『何の話だよ、それ……』
 
レルードは、すっきりした風情で立ち上がると、うやうやしく一礼する。
「さて、お世話になりましたし、お世話もしました。昨晩の件、これでチャラってことでよろしいですね?」
『ま、色々助かったのは確かだし。礼は言っとく。……それと、もうこの辺で悪さすんなよ』
「……色々と思い知りました。もー、大きな街には来ません。こりごりです。“島”に帰ります」
 
“島”って言うのがどこなのか分からないけど、さっきの話し振りからすると
化け物の身内がいるみたいだし、そう言うのと一緒に暮らすのがベストだろうと思う。
 
「では、私はそろそろ失礼しますが、昨晩の件……もし、口外なさったら……」
『お前の方こそそんなことしたら地の果てまでも追い詰めてひどい目にあわせてやるから覚悟しろ』
「う……、肝に銘じておきます。ああ、それと、最後にもう一つ」
 
……まだあるのか。話の長い奴だ。
 
「……幸せに、ね」
 
それだけ言い残して小さく笑うと、レルードは大きく羽を広げ、テラスから飛び去っていった。
……まさか、祝福されてしまうとは。
私は呆然と、夢魔が飛んでいく方向を見送った。
 
そして軽い放心状態にある私の背後から、愛しい男の声がする。
 
「おはようセルティ」

269 名前:なつのおわりのよるのゆめ【後編】(22/22)[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 22:58:47 ID:Xr8Ooa1H

「おはようセルティ」
『もう、とっくに昼だぞ』
 
後ろは向かず“視線”だけを回して新羅を確認し、入力済みのPDAをみせる。
流石に昨日の今日だから、面と向かい合うのは恥ずかしい。
「……さっきのが?」
新羅はテラスの方を指差し、そう言う。
『なんだ、見てたのか……うん、あれが“夢魔”だ』
「いやはや彼女は僕たちの中を取り持ってくれたも同然だし感恩戴徳の念を禁じえないね。
まさに昨晩、あの夢魔が池袋にやってきたのは天理人道とでも呼ぶべき運命の導きを
感じてしまいそうだよ。と、言うわけでだね……その運命の絆を無駄にしない為に、
セルティ、これからもう一回……ちょっ、セルティ、刃物はヤバイ、刃物はっ!」
 
そんなことを言いつつ、いきなり抱き寄せようとして来たので『影』で牽制しておく。
……ったく、男ってのは、コレだから。もうちょっと雰囲気とか誘い方が……あるだろ。
『一回や二回、ちょっとした勢いで寝ちまったくらいのことで調子のんな!』
だいたいお前、思いっきり遠慮なくナカでだしてくれやがって!』
「ちょッ……セルティ、あの時は君だって中に出し……げふあっ!」
 
とりあえず、腹にパンチ入れて黙らせる。うん、まあ私が悪いんだけどな。
あの時“嫌”って言ったら多分新羅は気づかってナカには出さなかったろうし。
『新羅のクセに口答えすんな! こういうときリスクあんのは女のほうなんだからな!
男の方がもっと気ィつけるべきだろ! 子供とか出来たらどーするつもりだ!』
自分でも無茶苦茶言ってると思う。思うけど、こういう場合は押し切ったほうが勝ちだし。
 
だけど、そんな新羅の返答は、ある意味予想外、ある意味すごくコイツらしいモノだった。
 
「どうするって、もちろん責任は取るけど……っていうか、
俺はあの時、子供を授かるぐらいのつもりで、君を抱いたけど?」
迷い無くそんなことを言う。
『なっ……!』
ハナッから子供を作るつもりだったといわれれば、流石に動揺する。
私もあの時一瞬“新羅だったらいいか”なんて思ったりもしたけど、さすがに覚悟の質と量が違う。
ヒトとデュラハンの間に、どのぐらいの確立で子供ができるかなんてわからないけど、
作るつもりだったら、一回一回が全力投球というわけか……
「そもそも、セルティさえよければ、いつだって俺の子を産んでもらうつもりだし、
セルティだってできれば、NHK教育の『すくすく子育て』とか見て赤ちゃんについて勉強して欲しいな」
あー、昨日のラマーズ法とかのあの番組か。
次からは絶対避妊させよう……本気すぎてちょっと怖い。
……と、言うか私は、昨晩『した』ばっかりなのに、さっそく『次』のことなんて考えてるんだ!
――あああ、もうっ!! 新羅がヘンな事いうから意識してきちゃったじゃないか!
 
『五月蝿い五月蝿い五月蝿ーーいっ!!』
うっかりキレかけて、振りかぶったゲンコツとノートPCのビープ音で新羅を黙らせる。
『とにかく風呂はいるぞ、風呂。いろんな汁でベタベタにしてくれやがって。気持ち悪い』
「……ああ、うん、それはごめん」
『お前が私を汚したんだからな、責任とってお前が私を洗え』
「……え、セルティ、今なんて?」
『読み返せ。ログ残ってんだろ』
「えーと、つまり……今からセルティと一緒にお風呂に入って、セルティの身体を洗え、と?」
『勘違いすんなよな! あくまでも洗うだけだぞ洗うだけ! 
私のヘンなところ触って、ヘンな気持ちになって、ヘンな事してきたりしたら承知しないからな!』
「……あー、うん、洗うだけだね。わかったわかった、はいはい」
 
そして私たちは浴室に向かった。
もちろん、えっちの味を覚えたばかりの健康な男女二人が、
そんな状況で我慢が利くはずもなく、私たち二人は、互いの体を多いに楽しみあった。
今度こそ、何の力も借りず、誰にも邪魔をされず。ただただ二人で、二人きりで。

<了>

270 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2008/06/15(日) 23:00:53 ID:Xr8Ooa1H

投下終了です。
まさかトータルで130k超えるとか思ってませんでしたが、
ここまでおつきあいいただいた方々、ありがとうございました。







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