JA起動実験は成功した。

それが、どのような結果を招くかは、まだ誰も知らない。

そして第五使徒ラミエルは現れた。

 

 

 

僕は僕で僕

(8)

 

 

 


 

 

<ネルフ作戦司令本部>

 

モニターに映し出される第五使徒ラミエル。

青く輝く宝石の様な使徒は、第三新東京市を悠然と浮遊している。

人間をあざ笑うかのように。

 

「エヴァの発進準備は出来てるの?」

ミサトがリツコに尋ねる。

「両機ともスタンバイOKよ」

リツコの答に頷くミサト。

「両機別々に発進させます。零号機は使徒に最も近い場所から、初号機は零号機から離して発進!」

ミサトは零号機に接近戦を命じた。

 

何の情報も無く対峙する敵。

第五使徒に対抗するには、第三使徒で驚異的な戦闘能力を見せた零号機が適任と考えたミサト。

 

「ミサト、接近戦は零号機でいいの?」

リツコがミサトに尋ねる。

初号機よりも多少性能の劣る零号機。

リツコの言葉に一理ある。

「リツコ、戦術で一番大切なモノ知ってる?」

「情報かしら?」

「ビンゴよ、リツコ。情報の少ない使徒とレイ。両方同時に情報が得られるわ」

ミサトの答は理にかなっていた。

 

赤木リツコは葛城ミサトを見つめて思った。

(案外ミサトの方が冷酷かもしれない)

 

そしてミサトは第五使徒の動きに警戒していた。

攻撃を開始する訳でも無く、悠然とネルフ本部に向かってくる第五使徒に。

 

「両機発進します!」

エヴァ両機は地上へ使徒へと向かった。

 

 

<第五使徒とエヴァ両機>

 

零号機が使徒の近距離に射出される。

第五使徒は零号機の出現位置を予測していたようだった。

零号機の出現とほぼ同時に、第5使徒は零号機に向けて強力な加粒子砲を発射した。

 

「キャァァァァァー」

 

レイが叫び声を上げる。

第五使徒の加粒子砲に零号機は胸を貫かれようとしていた。

零号機の痛みはレイにシンクロされ、直接激痛が綾波に伝わる。

「綾波!」

シンジは叫んだ。

使徒から離れているとはいえ、零号機が危険な状態であることは確認できる。

初号機はパレットガンを連射したが第5使徒のATフィールドに阻まれる。

しかし、第五使徒の注意を引くには十分だった。

 

ATフィールドを展開した第五使徒は零号機への攻撃を止め、初号機へと目標を移そうとしていた。

 

「マズイわ!零号機と初号機を戻して!早く!」

ミサトの対処は的確だった。

このままにしておけば確実にレイは死んでいた。

そして、次の標的は初号機だったであろう。

 

「目標沈黙!」

零号機と初号機を撤退させた第五使徒は動きを止めた。

 

「レイは!?」

ミサトはパイロットの安否を尋ねる。

「脳波異常!心音微弱、いえ停止しました!」

日向が叫ぶ。

「生命維持システム最大!心臓マッサージをして!」

リツコがパイロットへの応急処置を命令する。

 

エントリープラグ内でレイの体への心臓マッサージが行われる。

2度3度心臓マッサージが行われ、レイの心臓が音を取り戻す。

 

「プラグの強制排除後にLCLの緊急排出!急いで!」

 

レイはエントリープラグから担ぎ出され、緊急処置室へと運ばれた。

そして、シンジは初号機のモニターからレイの行方を追っていた。

 

 

<ネルフ作戦司令本部>

 

モニターに映し出される第五使徒。

第五使徒は行動を再開した。

ネルフ本部の直上に位置した第5使徒は、ドリルの様なものを伸ばして穿孔を開始した。

 

「本部へ直接攻撃を開始する気ね」

リツコは冷静に判断する。

「青葉君、戦自に応援要請を出して」

ミサトは今出来る最大限の事をしていた。

エヴァによる近距離及び遠距離攻撃が失敗した今、出来る事は新たな作戦のための時間稼ぎだけだった。

 

 

<JA格納庫>

 

迷彩色のJAと呼ばれるEVAの前。

ナオコはJAを見上げている。

 

ナオコは思う。

(JA…名前は変わってもEVAはEVAね…この10年復讐のためにつくりあげたもの。

ゲルヒン、ネルフ…全てを裏切って…戦略自衛隊と手を結び。

復讐…そのために私の持てる全てをこのJAにそそぎ込んだ。

全ては…碇ゲンドウのために……。)

 

 

「赤木博士!ここにおられましたか!」

時田が話し掛ける。

「なにか?」

「戦略自衛隊の方がお待ちです」

「わかりました」

 

二人は歩きながら会話を進める。

 

「初陣でしょうか?」

時田は不安な顔をしている。

「たぶんそうでしょう」

簡潔に答えるナオコ。

「ネルフの零号機は大破したと聞きますが、大丈夫でしょうか?」

「零号機・初号機と使徒との戦闘データを見ましたが、勝てない敵では無いです」

「本当ですか!」

嬉々とした顔になる時田。

「ただし、JAが二機以上あればの話ですが」

さすがのナオコも、JA単独での勝利は無いと考えた様だ。

 

ナオコの言葉を聞き肩を落す時田。

そして、二人は戦自の待つ部屋へと向かった。

 

 

<ネルフ作戦局第五使徒対策本部>

 

エヴァの模擬体が第五使徒に破壊される様がモニターに映し出される。

続けて戦自の独12式自走臼砲等、戦自の兵器が大破する様が映し出される。

 

「これまで採取したデータによりますと」

日向が使徒の説明を始める。

「説明はいいわ、戦自の戦闘なら見たから」

ミサトが日向の説明を止める。

「は、しかし」

「話は簡単よ、近距離でのエヴァでの戦闘は不可能に近い。しかも、使徒は強力なATフィールドを展開しているでしょ」

日向は、あらためて思った。

ミサトの戦術眼は一流だと。

 

「攻守共にほぼ完璧、打つ手は…」

ミサトは思考をめぐらす。

そして一つの答を得た。

 

「日向君、レイの容態は?」

「はい、綾波レイの身体に異常はありません。今は薬で眠っています」

「零号機は?」

「3時間後には換装作業が終了するそうです」

「最後に使徒のネルフへの到達時刻は?」

「明日午前0時未明には到達する模様です」

淡々と会話が進む。

こういう時のミサトは頭の中で使徒との戦闘を想定した後によくある。

 

「OKわかった日向君、じゃ戦自に連絡して今から伺いますってね♪」

笑顔で日向に命令するミサト。

「はい、了解しました」

日向は何故、戦自に連絡するのか理解できなかったが、一つの確信があった。

笑顔で使徒に立ち向かう時のミサトは、勝算が出来た時だと。

 

 

<司令室>

 

ゲンドウと冬月が話をしている。

 

「碇、戦自は手の内を見せなかったな」

冬月がゲンドウに話し掛ける。

「たぶん、彼女の思惑だろう」

ゲンドウはナオコの事を口にした。

「ナオコ君か、彼女は頭がいいからな」

「ああ、彼女は優秀だ」

「戦自は今回出してくると思うか、碇?」

 

「…出る」

そう呟くゲンドウはニヤリと笑っていた。

 

 

そして、日本中に放送が流された。

<午後23時30分より明日未明にかけて、大規模な停電が実施されます>

第五使徒との決戦の時が迫る。

 

<戦略自衛隊・大本営>

 

戦自の高官が数名とナオコがいる。

 

「先程ネルフの作戦部長と初号機というのが来た」

高官の一人が口を開く。

「それで?」

ナオコは別に興味が無いような口ぶりだ。

「開発途中の陽電子砲を徴収していった」

眉毛を一度ピクリと動かすとナオコがゆっくりと口を開く。

 

「…JAを出撃させます」

 

 

<ネルフ作戦司令部>

 

ミサトは日向と作戦の最終段階の調整に入っていた。

 

「陽電子砲はいけそう?」

「技術局第三課の報告では、モノにしてみせるとのことです」

「心強いわね♪」

微笑みながら答えるミサト。

「はい、それと盾は完成済みの様です」

「了解♪あとは…エヴァか」

ミサトの顔が真剣になる。

「チルドレン、ですか?」

「ええ、レイの調子で勝敗は決まるから、この作戦」

「青葉が様子を見に行っています」

「青葉君ね、なら心配いらないわね♪」

微笑むミサト。

 

ミサト曰く。

「第五使徒、ケンカの準備は念入りに♪」

 

 

<綾波レイの病室>

 

シンジが病室の前に来て見ると、青葉が頬を紅葉に腫らして立っていた。

 

「青葉さん!?どうしたんですか、その顔」

シンジが青葉の顔を見ながら問う。

「マヤにひっぱたかれたんだ、レイちゃんの裸を見たから」

青葉は微笑みながら答える。

 

シンジは青葉を軽蔑の目で見る。

 

「おいおい、シンジ君誤解しないでくれよ。レイちゃんの様子を見に入ったら、マヤがレイちゃんに服を着せてたんだよ」

慌てて弁解する青葉。

「そうなんですか、だったらいいです」

微笑みながら話すシンジ。

「ちっとも良くないんだシンジ君。また、マヤには誤解されるし最悪だよ」

トホホな顔でシンジに心情を訴える青葉。

「また?またって前も見たんですか?」

妙に鋭いシンジ。

「ウッ、そ、それは」

青葉は自ら墓穴を掘っていた。

 

青葉が答に詰まっていると、病室のドアが開く。

マヤが病室から出てきた。

マヤは青葉を見ると軽蔑の眼差しで見る。

そして、側にいたシンジに気付く。

 

「あら、シンジ君お見舞い。優しいわねシンジ君」

笑顔でシンジに話し掛けるマヤ。

「そ、そんな事無いです」

少し照れながら返事をするシンジ。

「マヤ、話を聞いてくれ」

青葉はマヤに話し掛ける。

 

しかし、マヤは青葉を無視してシンジと会話を進めた。

 

「シンジ君、レイをよろしくね」

シンジと五分ほど話した後、マヤは病室を離れていく。

「お、おいマヤ、話を聞いてくれ!」

マヤに無視され続けた青葉は、マヤを追いかける様に病室を後にした。

 

「大変だな、青葉さん」

シンジは青葉の後ろ姿を見ながら呟くと、病室の中に入った。

 

 

<綾波レイの病室内>

 

病院服のレイは入室してきたシンジを見る。

 

「綾波…」

シンジは静かに語りかける。

「…なに?」

レイも、それに答える様に口調は穏やかだった。

「作戦、聞いた?」

「ええ、今聞いたわ…」

「…そう、出撃するの?」

「それが私の役目だから…」

「そう、役目…」

寂しそうにレイを見るシンジ。

 

沈黙が部屋を支配する。

 

シンジが部屋を見渡すとレイの食事が用意されていた。

「綾波、食事とらないの?」

「…食べたくないから…」

「食べたほうがいいと思うよ、明日に響くから」

「…あした…」

「そう明日」

微笑むシンジ。

 

微笑むシンジを見つめるレイ。

 

「じゃ、僕行くね。食事ちゃんと食べなよ」

シンジの言葉に頷くレイ。

 

 

<綾波レイの病室の前>

 

シンジが退出すると、そこには両方の頬を腫らした青葉がいた。

 

「やあ、シンジ君話は終わったかい?」

青葉がシンジに話し掛ける。

「はい、でもその顔…」

青葉の顔を見るシンジ。

「ああ、これかい。ハハハ、またひっぱたかれた」

頬をなでながら、冷めた笑いで説明する青葉。

そんな青葉を見てシンジは思う。

 

(目が笑ってないよ…青葉さん)

 

「じゃ、僕、待機室に行ってます」

「ああ、わかった」

そういってシンジと別れた青葉は、レイの病室にはいる。

 

 

<再び、病室>

 

青葉は、少し驚いた。

レイが1人で食事を食べている事に。

 

「食事中だったんだ」

「青葉さん…」

食事の手を休め青葉に話し掛けるレイ。

「なんだい?」

青葉は、また驚いた。

レイに話し掛けられた事に。

 

「…明日の意味を教えて…」

青葉の目を見つめて尋ねるレイ。

「明日の意味?…何故、そんな事を聞くんだい?」

「碇君が…」

「シンジ君が?」

 

青葉は、さっぱり理解できなかったが、自分の知り得る明日を教える事にした。

 

「明日の意味か、チョット難しいけど俺はこういう風に考えてるんだ」

 

青葉はレイに説明した。

 

明日は今日という日が存在した証のためにあると。

明日は今日を生き抜くための希望だと。

明日のために人は生きていると。

 

説明が終わると同時にネルフのアナウンスが青葉を呼ぶ。

 

「じゃ、俺行くから、食事の邪魔をしてゴメンな」

微笑みながら出ていく青葉。

 

一人残されたレイは呟く。

 

「………明日」

 

 

<JAパイロット待機室>

 

マナは1人、プラグスーツを着て待機室の椅子に座っている。

 

マナは出撃待機中だった。

出撃が決まった時、零号機・初号機の戦闘を見せられたマナ。

第五使徒に胸を貫かれる零号機の映像は、マナに恐怖を植えつけるには充分だった。

 

待機室に1人、マナは思う。

 

(ハハ、体の震えが止まんない…。

なんでかな、死にたくないのかな私…。

私がミスをすれば、零号機みたいになるかな…。

怖い…怖い…怖い…怖い…怖い…。

死にたくない…死にたくない…死にたくない…。

父さん、母さん…誰か、誰か助けて…)

 

霧島マナは1人で恐怖と戦っていた。

 

 

<ネルフ作戦司令本部>

 

ネルフの面々が顔を揃えている。

 

「全員揃った見たいね」

ミサトが確認する。

「では、詳しく作戦を説明します。まず、本作戦の名称ですが」

ミサトが話はじめる。

 

 

「ヤシマ作戦と命名します」

 

 

つづく


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