ジェットアーロン、通称JA。
民間企業、日本重化学工業が開発した使徒迎撃専用機。
EVAに変わる新兵器として、JAは極秘裏に完成しつつあった。
(7)
<JA開発部>
慌ただしく、JAの各種のモニターを設定調整している開発部員たち。
そんな中、一人の男が不愉快な顔をしている。
不愉快な顔をしたJA開発責任者、時田シロウは思考の只中にいた。
(ついに完成か…なぜこんなモノを…。
私の設計したJAとは似ても似つかないな…。
これではEVAじゃないか!)
時田がモニターを見ている、そこにはEVA零号機とそっくりな機体があった。
違うのは色ぐらいなものだろう。
EVAとそっくりなJAは迷彩色に塗られていた。
時田シロウ。十年前に初期JAの設計に携わる。が突然1人の人物の出現により計画変更を余儀なくされた。
仕事に対しては実直で真面目な人物である。
<ネルフ、司令室>
ゲンドウが電話で話をしている。
「そうか、完成するか」
ーどうしますか?碇司令、よろしければ私の方で処理しますがー
「かまわん、好きにさせておく」
ーこのまま、完成させてもネルフの味方につくとは考えられませんが?ー
「戦自が介入しているとの話だ、君には荷が重い」
ーお心遣い、感謝しますー
「君には生きてやってもらわねば、ならない事がある、それだけだ」
ーわかりました、ではー
電話を切るゲンドウ。
「赤木ナオコ…しつこい女だ…」
そう言ってゲンドウは眉間にしわを寄せた。
<再びJA開発部>
開発部員達はシンクロテストへチェックの段階に入っていた。
「ネルフのEVAっての見たか?」
「ああ、そっくりだよな」
「所詮は類似品って奴さ」
開発部員達のぼやきにも似た声が聞こえてくる。
三日間、まる徹夜の働きづめ、ぼやかないのが不思議と言うものだ。
「無駄口を叩く暇が有ったら手を動かしてくれ!」
時田が叱咤する。
そこへ1人の女性が1人の少女を連れて入ってきた。
「赤木博士!」
時田が女性のほうへ振り向き声を掛ける。
「パイロットを連れてきたわ」
赤木ナオコ。元ネルフEVA開発責任者。スーパーコンピュータMAGIの基礎設計を立てたまでの女性。
赤木リツコの母でもあり、教師でもあった女性。なぜネルフを辞めたかは不明。
赤木と呼ばれた女性は1人の女の子を紹介する。
「戦自ご推薦のJAパイロット、霧島マナよ」
「霧島マナです」
霧島マナは少し脅えた感じの声で自己紹介をする。
霧島マナ。戦略自衛隊から選出されたJAパイロット。14歳。両親は最近死亡している。
「若いですね」
時田は率直な意見をナオコにぶつける。
「ネルフのEVAも同じ年のパイロットと聞いているでしょ、心配いらないわ」
「しかし、本当に起動するのでしょうか?」
「現にネルフは動かしている、それが答よ」
「は、はあ」
時田は合点がいかない。
これまで起動した事など只の一度もなかったからだった。
「早速、起動実験を始めましょう」
ナオコは、そういうとマナに簡単な注意事項だけを伝え、パイロット更衣室へ向かわせた。
「時田さん」
ナオコが時田に声を掛ける。
「はい、なんでしょう」
「今日までありがとう」
そう言って時田に頭を垂れるナオコ。
「そんな、頭を上げてください博士」
この十年、赤木ナオコとJAの製造に関わって初めて聞く感謝の言葉に時田は戸惑った。
「起動実験成功させましょうね」
そう言って頭を上げるナオコは微笑を浮かべていた。
「はい」
時田は不愉快さを忘れ微笑んでいた。
十年目にして初めて聞いた言葉で、これまでの事を帳消しにしてしまった様だった。
<パイロット更衣室>
マナは迷彩色のプラグスーツに袖を通している。
(私、どうなるんだろう…。
JAっていうのに乗るっていってたけど、説明簡単だったしね。
肩の力抜いて集中していればいいって言ってもね…。
でも、戦自に居るよりはよっぽどマシかも知れない…)
(とにかく、今はやるだけね……)
プラグスーツに着替え終わるマナ。
そして、更衣室の鏡を見る。
「…やるだけやってみる」
そういって、マナは笑顔を浮かべ更衣室を出ていった。
<起動実験室>
ナオコはJAを見ながら考え事をしている。
その顔は氷の様に冷たい顔をしている。
(碇ゲンドウ、私は許さない!
私を侮辱し、娘を奪った男!
このJAで、あなたを私の前に引きずり下ろしてあげる!
もっとも無様な形で!)
「赤木博士?」
ナオコの顔を見て時田が声を掛ける。
「はい、なんでしょう」
ナオコは時田のほうに振り向き返事をする。
「そんな、心配な顔をなさらずとも成功しますよ」
時田は、ナオコの冷たい顔を不安な顔と誤解している様だ。
「ええ、成功してくれれば…」
「エントリープラグ挿入します!」
実験室に響き渡るアナウンス。
つづく
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