人間の体は、60%の水分と40%の細胞で形成されている。

皮膚も、骨も、筋肉も、内臓も、神経も、脳も、全て細胞から形成されている。

そして大抵の細胞には核があり、その核の中にはDNAが存在する。

 

 

 

僕は僕で僕

(56)

 

 

 


 

<ネルフ本部、中央作戦司令室>

 

「赤木博士は何処に行かれたんですか?」

マヤがキーボードを叩きながら、側にいるリツコに訊ねた。

 

ちなみに、今日はMAGI の定期検診の日だった。

MAGI はスーパーコンピューターとはいえ、所詮は機械である。

メンテナンスには人の手が必要であった。

 

「母さん?母さんなら第二の方に行ったわ」

手元のチェック用紙を見ながら、マヤの言葉にリツコが答えた。

ちなみに、リツコの言った`第二´とは、第二新東京市のことであり、ネルフ日本第二支部のことでもある。

「松代に……いよいよなんですか?」

リツコの言葉を聞き、マヤが訊ねた。

「そうよ。でも今週は、MAGI Ⅱの起動テストだけみたいだけど…」

そう言ってリツコは顔を上げ、マヤが入力してるディスプレイを見た。

そして、言葉をつなぐ。

「あ、待って、そこはA-8のほうが速いわ。…ちょっと貸して」

そう言って、リツコは手元のキーボードを叩き始めた。

 

マヤが打ち込んでいた速度とは、比べ物にならない程の速度で、リツコはキーボードを叩く。

「!は、速い……。さすが、先輩ですね」

その様子を見て、マヤは感嘆の表情で呟いた。

 

「それって…年の功ってことかしら?」

マヤの呟きを聞き、リツコはジト目でマヤを見た。

「ち、違います。先輩の気にしすぎです」

マヤは少し困った表情で、リツコに答えた。

 

マヤの表情を見ながら、リツコは微笑んで口を開く。

「冗談よ♪」

 

 

<ネルフ、喫茶室>

 

定期検診も一段楽すると、リツコは一息つこうと喫茶室に来ていた。

日頃あまり吸わないタバコを、リツコはテーブルに着き、ただ何となく吸っていた。

 

「よ、赤木博士。休憩かい?」

そこへ、加持が顔を見せた。

「加持君、その言い方止めてくれる?……いつも通りでいいわ」

加持の顔を見て、リツコは苦笑しながら話した。

「そうか、そいつは悪かった」

頭を掻き微笑みながら、加持はリツコの向かい側に座った。

 

「で、何の用?」

リツコはタバコの灰を灰皿に落とすと、加持に訊ねた。

「山岸マユミ……知ってるよな?」

真剣な表情でリツコを見ながら、加持は話した。

「ええ。……ペンダントの調子が悪くなったの?」

加持の言葉に頷くと、リツコはペンダントの事を口にした。

 

なぜ、リツコがペンダントの事を知っているのか?

それは、ペンダントに`ある細工´を施したのは、リツコ自身だったからである。

無論、加持及び司令部の依頼によって。

 

「いや、そうじゃない。むしろペンダントは好調だよ」

リツコの言葉に、加持は首を横に振った。

「それじゃあ、何?」

リツコはタバコを揉み消すと、加持に訊ねた。

 

加持は少しの間沈黙すると、重たげに口を開く。

「きな臭い噂を耳にしたんだ。……アメリカ支部が造反を謀っている、っていう噂をな」

「!!…………」

加持の言葉に、リツコは驚きの表情を隠せなかった。

 

しばしの間、重たげな雰囲気で沈黙する二人。

 

四分後。

その沈黙を破り、リツコが口を開く。

「……司令は…知ってるの?」

リツコの言葉を聞き、加持は思い出すように話す。

「ああ。…でも一蹴されたよ」

 

「……今の我々には関係無い」

ネルフの総司令、碇ゲンドウの言葉だった。

 

「当然ね。関係無い……無視するのが妥当だわ」

リツコは真剣な表情で呟いた。

「ああ、そうだな。……俺もそう思う」

リツコに話す加持の表情は真剣だった。

「そのことで、加持君が責を問われることは無いでしょ?」

リツコの意見は、至極最もと思われた。

「無い。…十四歳の少女を送った人間に……責任は無い。………情けない話だよな」

加持は露骨に自分を嫌悪する表情をみせた。

 

(……そういうこと。)

リツコの頭の中で、加持の言葉の意味がつながった。

山岸マユミとアメリカ・ネルフ支部の意味を、リツコは理解した。

 

そして、リツコは口を開く。

「で、私に何をして欲しいの?」

加持を見ながら、リツコは単刀直入に切り出した。

「さすが、リッちゃん。話が早い」

リツコの言葉に、加持は微笑んで答えた。

 

微笑んだ後、加持は上着のポケットから、小型のモニターのようなものを取り出した。

「私用で松代に行くんでね。これを預かってもらおうと思ってさ」

「これって……山岸さ…いえ…チルドレン監視用の……」

そこまでリツコが言うと、加持が遮るように口を開く。

「そう、監視用モニター。俺が持ってるよりも、リッちゃんが持っていた方が有効だと思ってな」

そう言って、加持はテーブルの上にモニターを置いた。

 

リツコは小型モニターを手に取った。

モニターは文庫本程の大きさだった。

 

モニターを手に持ちながら、リツコが口を開く。

「まぁ、いいけど。……一つだけ注文があるわ」

「注文?土産(みやげ)なら喜んで買ってくる」

加持は冗談混じりに微笑みながら言った。

「お土産は猫関係……じゃなくて」

加持の言葉に乗せられた事に気づき、リツコは頭を振った。

気を取り直し、リツコは真剣な表情で言葉をつなぐ。

「私の注文は一つだけ。ホントの言葉で話して頂戴。……京都に行くんでしょ?」

 

「!」

加持は驚いた表情を見せた。

その表情をリツコは見逃していなかった。

加持はリツコの視線に気づき、直ぐに表情を隠そうとしたが、時既に遅かった。

そして苦笑しながら口を開く。

「機密保持が……まったく…甘ちゃんだな」

「甘くないわよ。ネルフが凄すぎるだけ」

そう言って、リツコは笑った。

 

リツコの笑いにつられるように、加持も笑いながら口を開く。

「まったくだ。こっちの気苦労も水の泡だよ」

 

 

<数日後、ネルフ>

 

シンジは実験の為、とある施設にいた。

シンジだけでなく、他のチルドレン達の姿もあった。

チルドレン達は裸の姿だった。

その為、チルドレン達はシャワールームのような場所で、別々に隔離されていた。

ちなみに、今日は直接ハーモニクステストの日だった。

 

-次は、そのままエントリープラグに入って頂戴。-

何処(どこ)からか、リツコの声が聞こえてきた。

「えぇぇぇ!!」

アスカが顔を赤くしながら、リツコの言葉に驚声を上げた。

直接ハーモニクステストとは、裸でエヴァの模擬体からエヴァにシンクロさせる、といった内容だった。

 

「シンジ君、見たい?」

壁越しに、マナの楽しそうな声がシンジに届いた。

「い、いいよ!」

顔を真っ赤にしながら、マナの言葉を遠慮するシンジだった。

 

-映像モニターは切ってあるから。-

再び、室内にリツコの声が響いた。

「そういう問題じゃないでしょ!」

顔を赤くして、リツコの言葉に抵抗するアスカだった。

-アスカ、これは命令です。-

命令という言葉で、リツコはアスカの言葉を返した。

 

「……命令ね。ハイハイ、了解です」

リツコの言葉に、アスカは悪態で返した。

命令という言葉に対しての、アスカなりの精一杯の抵抗だった。

 

カチャリ。

シンジの隣のドアが開いた。

何の音かとシンジが気にしていると、目の前をレイが裸で歩いていた。

「のぉぉ!」

レイの裸に驚いて、妙な驚声を上げるシンジだった。

 

「シンジ、見るんじゃないわよ!!」

「そうそう、見るんなら私のを……」

「バカッ!何言ってんのよ!!」

シンジが目を逸らすと、アスカとマナの声が聞こえてきた。

 

アスカ達の声を聞きながら、シンジは顔を赤くしながら思う。

(綾波……恥ずかしくないのかな。

人って…裸を恥ずかしいって思うのに………。)

 

 

<ネルフ、実験室>

 

実験室では、チルドレンたちの状況が事細かに映し出されていた。

勿論、映像モニターは切ってある。

 

「シンジ君の心拍数が上がっています」

マヤが真剣な顔で、リツコに報告した。

「問題無いわ。少し興奮してるだけだから」

マヤの言葉に、リツコは笑って答えた。

「興奮……ですか?」

理由が解らず、リツコにマヤは訊ねた。

「マヤが男の人の裸を見たら興奮するでしょ?それと同じよ」

リツコはマヤを例(たと)えにして、問いに答えた。

リツコの言葉に、マヤは表情を曇らせながら口を開く。

「その例(たと)え……ちょっと抵抗があります」

 

マヤの言葉に、リツコは思う。

(…それ以前の問題みたいね。)

 

「リツコ、お邪魔するわね」

そこへ、ミサトが顔を見せた。

どうやら、実験の様子を覗きに来たようだった。

「何しに来たの?作戦部長さん。もしかして暇なのかしら?」

唐突に顔を見せたミサトに、リツコは冗談混じりに話し掛けた。

「あ、痛いなぁ、その言葉。私のガラスの心が欠けちゃうわ♪」

リツコの冗談に、ミサトも冗談で返した。

「何言ってんの。心臓に毛が生えてるくせに」

ミサトの言葉に、リツコは手厳しい言葉で答えた。

「あ、酷(ひど)~い。か弱い乙女に向かって」

ミサトは自分のことを`か弱い乙女´と言った。

「誰が乙女?何処かしら?マヤ知ってる?」

ミサトの言葉を聞き、リツコはマヤにふった。

 

「えぇぇぇっ?」

リツコの言葉に、マヤは`どうして私に……´という表情を見せた。

「知ってるわよねぇ。何処にいるか?」

マヤに私だと言わんばかりに、ミサトは顔を近づけた。

「せ、せんぱ~い」

困った表情で、リツコに助け舟を求めるマヤであった。

 

マヤの表情と言葉に、リツコは笑いながらミサトに話し掛ける。

「ミサト、見学なら自由にしていって。その代わり邪魔しないでね」

「了解、了解。邪魔なんかしたことも無い」

そう言って、ミサトは実験室の隅に向かった。

リツコは苦笑しながら、ミサトの後姿を見守った。

 

そして、リツコは実験の時間が来たことに気づき、マヤに話し掛ける。

「マヤ、プラグ挿入準備。テストを開始するわよ」

「了解です」

リツコの指示どおり、マヤは機敏に行動を開始した。

 

「テスト、スタート」

 

 

 

つづく


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あとがき

最初の三行は奇妙かもしれません。
有効になるか、無効になるかは、展開次第です。

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