-これより尾行を開始します。-

「りょ~かい。見つかったら素直に逃げてね♪」

ミサトは楽しそうに微笑んでいた。

 

 

 

僕は僕で僕

(54)

 

 

 


 

プツ。

ミサトは携帯をきると、子供達に声を上げる。

「皆、`お待ちかね´がネルフを出たわよ♪」

 

「よっしゃあ~!」

「待ちかねたわよ!」

「やっと開放される……」

口々に喜びの声を上げる子供たちであった。

 

ピンポーン。

そこへ玄関のチャイムが鳴った。

「はーい?」

マナが玄関に小走りで向かった。

そして、ドアを開ける。

ガチャリ。

 

「こんばんわ……」

妙に`どす黒い影´を引きずりながら、青葉が顔を見せた。

どうやら、レイのことを引きずっているらしい。

「こ、こんばんわ」

青葉の表情に、多少動揺しながらもマナは答えた。

「遅かったじゃない。ギター持ってきた?」

ミサトが青葉の到着を確認して話し掛けた。

「はい……」

ミサトの言葉に、青葉は返事をしながら思う。

(レイちゃんが妊娠したってのに、急いで来れるわけ…。)

 

クラッ。

部屋の中に入ろうとした青葉は、突然立ち眩(くら)みを起こした。

 

「だ、大丈夫ですか?青葉さん?」

青葉の体を支えながら、マナが話しかけた。

「あ、あれ……」

マナに体を支えてもらいながら、青葉は一つの方向を指差した。

青葉の指差した先には、垂れ幕が掛かっていた。

 

『妊娠おめでとう!!
(題字、惣流・アスカ・ラングレー)』

とても上手いとは言えない、書き殴ったような筆跡の垂れ幕が。

 

「私の字を見て、立ち眩(くら)みしたって理由!?」

青葉の言動を見て、アスカは青筋を立てた。

「まぁ、立ち眩(くら)みするような字よね」

垂れ幕を見ながら、ミサトが苦笑しながら話した。

「何よ!ミサトまで!」

ミサトの言葉に、アスカは声を上げた。

 

怒るアスカを見ながら、ミサトは優しく微笑みながら口を開く。

「でもね、心が詰まってると思うわよ。どんなに綺麗な字よりもね」

ミサトの言葉を聞き、アスカは多少照れながら口を開く。

「……あ、ありがと」

 

「あの…シンジ君を借りてもいいですか?」

居間にギターを置いた青葉が、多少青ざめた顔でミサトに訊ねた。

「え?ええ、別に構わないけど、ここじゃ駄目なの?」

青葉の言葉を聞き、ミサトが訊ね返した。

「はい。二人きりで話したいことが……」

そう言って、青葉はシンジを見た。

シンジはキョトンとした表情で、青葉の言葉を聞いていた。

「シンジ君、いい?」

ミサトがシンジに訊ねた。

「はい、別に構いません」

(何の話だろう)と思いながら、シンジは承諾した。

 

「じゃ、行こうか……」

青葉は真剣な表情で、シンジをベランダに連れ出した。

 

 

<赤木家、ベランダ>

 

「その、まぁ…シンジ君も男なんだな……」

青葉は夜空に浮かぶ星を見ながら、しみじみと語りだした。

そして言葉をつなぐ。

「……やったのかい?」

 

「はぁ?!」

青葉の言葉に、シンジは理由が解らず声を上げた。

だが、シンジの言葉を遮るように、青葉が口を開く。

「いや、解ってるんだ。やったから…出来たんだよな……」

 

(何を言ってるんだろう……。やったって?……理解できないよ。)

青葉の言葉を聞き、シンジは理解に苦しんでいた。

 

「まぁ、その、これからはシンジ君もシッカリしなきゃな」

そう言って、青葉は精一杯の微笑を見せた。

「はい…シッカリ……」

意味が解らず、シンジは言葉を復唱するだけだった。

 

シンジの顔を見ながら、青葉はポケットから何かを取り出した。

「これ、プレゼントだ」

包装紙に包まれた箱のようなものを、青葉はシンジに手渡した。

「あ、ありがとうございます」

なぜプレゼントを貰えるのか疑問に思いながらも、シンジはプレゼントを貰った。

プレゼントを見つめるシンジを見ながら、青葉は口を開く。

「明るい家庭になるといいな」

「はぁ……」

シンジは理由が解らず、力無く返事するだけだった。

 

「じゃ、戻ろうか?」

青葉は微笑みながら、シンジに話し掛けた。

「は、はい」

青葉と一緒に部屋に戻りながら、シンジは思う。

 

(今日の青葉さん……何かチョット変だ。)

 

 

<マンション内>

 

青葉達が中に戻ると、子供達はミサトの指揮のもと歌の練習をしていた。

戻ってきた青葉を見て、ミサトが練習を止めた。

そして、青葉へ話し掛ける。

「青葉君、ギターの準備をお願い♪」

「は、はぁ…。でも、何で歌の練習やってるんですか?」

ミサトの言動が理解できず、青葉は訊ねた。

「何でって…。言わなかったけ?リツコの妊娠パーティーだって……」

青葉の言葉を聞き、ミサトは歌の練習をしている理由を話した。

 

「え、それじゃあ……妊娠って赤木博士だったんですか?!」

理由を聞き、青葉は驚きの声を上げた。

「そうよ。誰だと思ってたの?」

困惑する青葉を見ながら、ミサトは話した。

「あ、いや、別に……」

青葉は赤面しながら、ミサトの言葉に答えるのであった。

 

一方、シンジの方はというと……。

 

「ねぇ、その紙包み、何?」

シンジの持っている紙包みを見て、マナが訊ねていた。

「さぁ?青葉さんが、僕にプレゼントだって」

シンジは紙包みをマナに見せた。

「開けてもいい?」

マナが興味心ワクワクといった感じで、シンジに訊ねた。

「青葉さんに聞いてみないとね」

マナの言葉に、シンジは微笑んで答えた。

「プレゼントでしょ。貰ったら自分のものなんだから、開けていいに決まってるじゃない」

バリバリッ。

シンジの手から紙包みを奪い取り、アスカは紙の部分を破りだした。

「なッ……」

紙包みを破り終えたところで、アスカは驚きの表情を見せた。

そして、シンジの方を向いた。

 

バシーン。

突然、シンジの頬を引っぱたきながら、アスカは顔を赤くして叫ぶ。

「このエッチ!チカン!変態!!」

「な、何するんだよ!アスカ!」

突然、アスカの張り手攻撃を喰らい、シンジが声を上げた。

「こんなもの貰ってんじゃないわよ!」

そう言って、シンジに箱のようなものを投げつけ、アスカはシンジの側から離れた。

 

「こんなものって……。あっ…」

シンジは箱を手に取り、顔を真っ赤にして硬直した。

「何?何?………ウッ」

シンジが手に持つ箱を見て、マナも顔を真っ赤にして硬直してしまった。

 

「何や、何や?」

「どうしたんだよ。一体?」

「アスカ怒ってるけど……」

子供達がシンジの周りに集まってきた。

そして、シンジの手の中にある物を見て、過敏に反応するのであった。

「嫌~!碇君の変態!!」

「ようやった、シンジ!!」

「明るい家族計画かぁ。平和だねぇ~」

口々に思ったことを話す、子供達であった。

 

そして最後にレイが、シンジの側に来た。

「あ、綾波……」

顔を真っ赤にしながらも、何とかシンジは呟いた。

シンジを見ながら、レイは呟く。

「碇君……鼻血が出てる…」

 

 

<ネルフ内、ナオコの研究室>

 

「ウッ、ウッ……」

ナオコの研究室に来て、マヤは泣いていた。

「だから、泣いてばかりじゃ理由が解らないでしょ?」

泣きじゃくるマヤを見て、ナオコは諭(さと)すような口振りで訊ねた。

訊ねながらナオコは思う。

(さっきから小一時間……。……もう帰りたいわね。)

帰宅する途中でマヤに泣きつかれ、ナオコは帰りそびれていた。

 

「先輩が……。先輩が……」

少し落ち着いたのか、マヤが泣いてる理由を説明しようとした。

「リッちゃんが?伊吹さんに何かしたって言うのね?!」

この変化を見逃さず、ナオコはマヤに訊ねた。

「違うんです。先輩……先輩……ウッ、ウッ」

リツコのことを思い出したのか、またマヤは泣き出してしまった。

 

「一体どうしたっていうの?…そこまで、泣く理由のあることなの?」

あまりに埒(らち)が開かない為、ナオコは少々ムッとした顔をして訊ねた。

ナオコの問いに、マヤはコクリと頷いて答えた。

そして少々むせびながら、マヤは口を開く。

「先輩……先輩……私に内緒で妊娠してたんです!!」

 

「!」

マヤの言葉を聞き、ナオコは驚きのあまり、ポカーンと口を開けてしまった。

 

「私、どうしたらいいんでしょう!」

驚くナオコを尻目に、マヤは泣きついた。

マヤに泣きつかれながら、ナオコは呆けた顔で呟く。

 

「私…お婆ちゃんになっちゃうのかしら……」

 

 

<赤木家>

 

「すまなかった!シンジ君!!」

青葉はシンジに謝っていた。

「い、いえ、もういいですから……」

シンジは鼻にティッシュを詰めた格好で、青葉の言葉に答えた。

「ホントに悪かった!!」

まるで、拝み倒すように謝罪する青葉であった。

 

「でも笑えるわねぇ。いくら何でも、レイが妊娠する訳無いでしょうに」

ミサトは笑いを堪(こら)えながら、青葉に話し掛けた。

「葛城三佐~。もう勘弁してください」

青葉は顔を赤くし、頭を掻きながら話した。

 

「でも、誤解って解ったから一安心じゃない」

青葉を見ながら、アスカは笑いながら話した。

「ホントだね。……でも、もしホントに妊娠してたら…どうなってたと思う?」

隣にいたマナが、アスカに訊ねた。

「考えたくも無いわ。そんなこと」

アスカは苦笑しながら、マナの問いに答えた。

 

「シンジ、これどうすんのや?」

トウジが明るい家族計画を手に持ち、笑いながらシンジに訊ねた。

「あ、あげるよ。そ、そんなもの!」

シンジは顔を真っ赤にしながら、トウジに答えた。

「いいのかぁ~。俺達が貰っても?」

シンジを見ながら、ケンスケは不敵に笑った。

 

ケンスケの表情を見て、シンジが口を開く。

「やっぱり…あげない。どうせ変なことに使いそうだし……」

「ワシらが、そげなことをすると思うんか?!」

「そうだ、そうだ、俺達は科学的に研究対象として…」

トウジとケンスケは、いかにも自分達で変なことに使おうと、企んでいる口振りだった。

 

そんな二人の言葉を聞き、シンジは声を上げる。

「絶対にヤダ!」

 

 

そんな穏やかな雰囲気の中で、レイはシンジを見つめながら思う。

(私が……碇君の子供を………。

産むことが出来るなら………。

私に産みだすことが出来るなら………。)

 

そう思った後、レイは頬を桜色に染めた。

 

 

 

つづく


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あとがき

十万ヒットということもありまして、何とか公開にまで持っていきました。
楽しんで頂ければ幸いです(笑)。それでは、十万ヒットありがとうございました。m(_ _)m

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