ミサトは困っていた。

「う~ん、チョッチ手駒が少ないわね……」

ドッキリの作戦を思案した結果、ミサトは持ち駒が足りないことに気が付いた。

 

 

 

僕は僕で僕

(53)

 

 

 


 

「あ、そうそう。彼がいたわね」

ミサトは何かを思い出し、懐から携帯電話を取り出した。

ミサトは手帳を見ながら、電話番号を押した。

 

その様子を、少年達は興味深げに見ていた。

「なぁ、ワシらホンマにやるんかいな?」

トウジは情けない顔で、シンジ達に話し掛けた。

「仕方ないだろ、ミサトさんが決めたんだ。それとも、何か代案でもあるのか?」

トウジの言葉を聞き、ケンスケが言葉を返した。

「ミサトさんって、一回決めたら後に引かないからね」

シンジが微笑みながら話した。

「うっ……しゃあないな」

二人の言葉を聞き、トウジは諦めに近い表情で話した。

 

 

<赤木家台所>

 

会話する少年たちを尻目に、少女達は台所にいた。

「すっご~い。これ、ホントにマナが作ったの?」

マナの作った料理を見て、アスカは驚きの声を上げた。

 

台所のテーブルには、マナの作った料理が並んでいた。

品数、見栄えと共に、出来栄えは見事なものだった。

 

「う~ん、出来る」

テーブルの料理を一口つまみ、ヒカリが呟いた。

「流石のヒカリも降参?」

アスカが楽しそうに、ヒカリに訊ねた。

「降参してもいいけど……。…味付けが少し過剰かな」

ヒカリが微笑みながら話した。

「えっ、そんなこと無いと思うんだけど」

ヒカリの言葉を聞き、マナは自分の作った料理を一口食べた。

そして味を確認した後、言葉をつなぐ。

「美味しいと思うけど……」

 

マナの様子を見て、ヒカリが楽しそうに口を開く。

「愛情が過剰ってことなの♪」

「あ、なるほど」

ヒカリの言葉に、アスカは微笑みながら頷いた。

「それなら問題無いね」

マナも安心したのか、楽しそうに微笑んだ。

 

穏やかな雰囲気の中、ヒカリは時計を見て、あることを思い出した。

そして口を開く。

「綾波さん…遅いね」

 

「…来るわよ」

「必ずね……」

ヒカリの言葉に、優しい笑顔で答える二人だった。

 

 

<青葉のマンション>

 

「あの…出掛けても構いませんか?」

頭を抱え唸り声を上げる青葉に、レイが話し掛けた。

「えっ?あ、あぁ、行ってもいいよ……」

力無くレイに答える、青葉であった。

先程のことが、余りにショックだったのだろう。

 

「行ってきます…」

玄関のドアを閉め、レイは外に出て行った。

 

一人部屋に残った青葉は呟く。

「一体誰が…レイちゃんを……。……やっぱり、シンジ君なのか?」

とんでもない事を青葉が呟いていると、手持ちの携帯が鳴った。

 

電話を取り、青葉が口を開く。

「はい、青葉です」

-もしもし、青葉君?葛城だけど-

電話の声はミサトだった。

「あ、葛城三佐。……何か御用ですか?」

日頃、ミサトから電話など無いため、少々緊張する青葉であった。

-御用って、まぁ、用があるから電話したんだけどね。-

ミサトは苦笑混じりに、青葉に答えた。

そして言葉をつなぐ。

-ギター持ってリツコん家に来てくれる?妊娠パーティーするから♪-

ミサトは楽しげに、青葉をパーティーに誘った。

 

「!」

ミサトの言葉に青葉は思う。

(赤木家=レイちゃん=妊娠=パーティー=レイちゃん妊娠確定パーティー。)

 

そして、青葉は口を開く。

「め、めでたい事なんですか?!」

ミサトの言葉を、多少焦りながら訊ねる青葉であった。

-妊娠のことをオメデタって言うでしょ?めでたいに決まってるわよ。-

「はぁ……」

力無く返事を返す青葉だった。

-シンジ君達も来てるから、急いで来てねん♪-

プツ。

そう言い残し、ミサトからの電話は切れた。

 

携帯を手に持ちながら、青葉は呟く。

「シンジ君も来てるのか……。決定的だな……」

 

呟いた後、青葉は決めた。

とりあえずギターを持って、赤木家に向かうことを決めたのであった。

 

 

<赤木家>

 

「さてと…後はリツコの方ね」

忙しげに、ミサとは手帳をめくった。

そして景気良く番号を押した。

 

「あ、もしもし日向君?葛城だけど」

どうやら、電話の相手は日向のようだった。

-葛城三佐?!何か御用ですか?-

電話の主がミサトということもあり、日向の声はどことなく楽しげだった。

「まぁね。……悪いんだけど、リツコを尾行してくれないかしら?」

日向に答えると、ミサトは自分の用件を伝えた。

-は?赤木博士を…ですか?……何かあったんですか?-

ミサトの言葉を聞き、日向は正直納得がいかなかった。

「リツコの妊娠パーティーをするのに…チョットね」

ミサトはサクッと重大なことを告げた。

 

-妊娠!?……事実なんですか?-

日向の声は驚きを含んでいた。

「事実でしょ。自分の口から言ってたんだから」

アスカから聞いた言葉を、ミサトは日向に話した。

-はぁ……。-

だが、日向は気合の入らない言葉を返すだけだった。

どうにも実感が湧かないのかもしれない。

 

「で、駄目かしら?」

頼みを受けてくれるのかを、ミサトは訊ねた。

-はい、まぁ…葛城さんの頼みとあれば…。-

日向は、ミサトの頼みを受諾した。

 

日向の言葉を聞き、ミサトは嬉しそうに話す。

「ありがと。一時間おきに定時連絡ヨロシク。あ、あとリツコには内密にね♪」

プツ。

そう言って、ミサトは携帯を切った。

 

そして、側にいた少年達を見て声を上げる。

「ほらほら、男子から練習はじめるわよ。まずは発声練習から!」

 

 

<ネルフ本部、オペレーター室>

 

「尾行かぁ……。何で俺が……」

日向は身の回りを片付けながら呟いた。

ミサトの頼みとはいえ、なぜ自分が?という思いを感じていた。

 

「あれ?帰るの?」

帰り支度をする日向を見て、マヤが話し掛けた。

「あぁ、ちょっと用事が出来たからな」

身の回りを片付けると、日向は立ち上がりながら話した。

「ふ~ん、…もしかして彼女でも出来たの?」

マヤが含み笑いをしながら、日向に訊ねた。

「だと、いいんだけどな」

マヤの言葉に、日向は苦笑いで答えた。

そして思い出したかのように言葉をつなぐ。

「あ、そういえばさ、赤木博士が何処に行ったか知らないか?」

 

「先輩?先輩なら、赤木(ナオコ)博士に会いに行ったけど…。先輩がどうかしたの?」

日向の言葉に答えながら、疑問に思ったことをマヤは訊ねた。

「うん、まぁ、ここだけの話なんだけどな…赤木博士が妊娠したらしい」

マヤにとって重大な言葉を、日向は話した。

 

「!」

日向の言葉を聞き、マヤは目を大きく見開き口をパクパクさせた。

そして声を上げる。

「嘘……嘘…嘘よ~~!!」

突然、マヤは大声を上げオペレーター室から走り去った。

 

「お、おい、マヤ!?」

マヤの行動に、日向は慌てて声をかけた。

だが、日向の声は届かず、マヤの姿は消えた。

 

一人残った日向は呟く。

「どうなってんだ?一体?」

 

 

<ネルフ内、女子化粧室>

 

リツコは女子化粧室で顔を洗っていた。

バシャッ、バシャッ。

顔を力強く洗うと、リツコは目の前の鏡を見た。

そして、あることに気づき、苦虫を潰したような顔で口を開く。

「……小じわが増えてる」

目の横の小じわが増えていることに気づく、リツコであった。

 

そこへ、誰かが化粧室に駆け込んできた。

「先輩!」

リツコが声に振り返った。声の主はマヤだった。

「マヤ?どうしたの?そんなに慌てて」

息を切らしているマヤを見て、リツコが話し掛けた。

「………先輩が…先輩が、そんな人だなんて!……最低です!」

マヤは言うだけ言うと、リツコの側から駆け去った。

 

マヤが去った後、リツコは何が何だかといった様子で呟く。

「小じわが、そんなに最低なことなの?……」

 

呟いた後、リツコは鏡を見ながら呟く。

「年よりは嫌いって事かしら……」

 

呟いた後、自分の言葉にムカつくリツコであった。

 

 

<赤木家のマンション>

 

「「「あ~あ~あぁ~あ~あぁ~♪」」」

ミサトの指揮のもと、少年達は発声練習を行っていた。

(何でこんな目に……)と思いながら。

 

ピンポーン。

そこへ玄関のチャイムが鳴った。

 

「はーい、開いてるわよ。勝手に開けて頂戴」

まるで自分の家のように振舞う、ミサトであった。

 

ガチャリ。

玄関のドアが開いた。

「失礼します………」

中へ入ってきたのはレイだった。

 

「遅かったね。何かあったの?」

「遅いわよ、レイ。皆、待ってたんだから」

「こんにちは、綾波さん」

少女達が台所から顔を出し、レイの来訪を確認した。

「出掛けることを、伝えたかったから……」

自分が遅れた理由を告げると、発声練習をする少年達を、レイは興味深げに見た。

そして、アスカ達に訊ねる。

「………何やってるの?」

 

「あぁ、あれ、ミサトの作戦よ」

アスカは楽しげに微笑んだ。

「…作戦?」

アスカの言葉を、レイは理解できなかった。

「そ、次は私達が練習するんだって」

マナも楽しそうに頷いた。

「私、人前で歌うのって苦手なんだけどな……」

ヒカリが恥ずかしそうに話した。

「ヒカリの場合は、`人´の前に`好きな´ってのが入るんでしょ」

アスカは微笑みながら、ヒカリに話し掛けた。

「ア、アスカ!言わないって約束でしょ!」

ヒカリが顔を真っ赤にしながら、アスカに抗議した。

 

「え?!誰?誰?興味あるな、その話」

マナが興味本位まるだしで、アスカに訊ねた。

「言っちゃ駄目よ、絶対!」

ヒカリは物凄い剣幕で、アスカに注意した。

「じゃあ、クイズ形式なら問題ないわね」

アスカは楽しげに、ヒカリ達に話した。

「意義な~し♪」

マナも楽しげに、アスカの言葉に賛成した。

「大有りよ!!」

ヒカリは焦り混じりに言葉を放つ。

だがアスカはヒカリの言葉を聞き流し、アスカは問題を出す。

「さて候補は三人。シンジ、鈴原、相田、正解は誰でしょう~?」

 

「私達は碇君が好き………」

頬を桜色に染めながら、レイが唐突に口を開いた。

 

レイの言葉に、固まる三人であった。

そして、アスカとマナが顔を赤くしながら口を開く。

「な、何言ってるのよ……」

「そ、それは反則だよ…」

 

「なるほどねぇ~♪」

シメタとばかりに、ヒカリはニヤリと笑った。

 

「ひ、ヒカリ!言っちゃ駄目よ!」

「ぜ~ったい駄目だからね!」

先程と立場が逆転する少女達であった。

 

「ミャ~」

そこへ猫の声が聞こえてきた。

台所の片隅にいたチクワだった。

猫のチクワに気づき、アスカとマナはチクワにも話し掛ける。

「アンタも内緒よ!」

「絶対にね!」

 

 

 

つづく


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あとがき

僕は、こんな感じが大好きなのかもしれません。(笑)
「僕は僕で僕」って、最初はシリアスからスタートした筈なんですけどね。(苦笑)

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