ピンポーン♪

マナが食事の準備をしていると、玄関のチャイムが鳴った。

チャイムの音に、マナは優しく微笑んだ。

 

 

 

僕は僕で僕

(52)

 

 

 


  

「どちら様ですか?」

マナは微笑みながら玄関のドアの前に立った。

多分、同級生の誰かだろうと思いながら。

 

「……私…はやく……開けて。……ウップ」

ドアの外から、アスカの苦しげな言葉が聞こえてきた。

「アスカ!?」

ガチャリ!

アスカの声の異常に気づき、マナは慌ててドアを開けた。

「ウップ!」

ドアが開いたのと同時に、アスカが部屋の中に飛び込んできた。

そして、アスカはマナに声を上げる

「洗面所どこ?!」

「あ、あっち……」

何が何だかといった表情でアスカを見つめ、マナは洗面所を指差した。

洗面所を確認すると、アスカは目標めがけ駆け出した。

それから数分後、アスカの嘔吐(おうと)する声が聞こえた。

 

アスカの状態に、マナは戸惑いの表情で呟く。

「アスカまで……妊娠?」

 

「違うわよ♪」

玄関の外から、女性の声が聞こえてきた。

聞き覚えのある声に、マナは口を開く。

「ミサトさん!」

「こんばんわ、霧島さん♪」

ミサトが微笑みながら、玄関前に姿をあらわした。

そして、言葉をつなぐ。

「私もパーティーに参加していいかしら?」

「は、はい、勿論です」

マナは微笑んで、ミサトの言葉を承諾した。

 

そこへ、アスカが洗面所から顔を出した。

「う~、最悪」

どうやらアスカは、ミサトの車で`市中轢き回しの刑´にあっていたようだった。

多分、到着して直ぐにミサトの車から降りたため、ミサトが来るまでに間があったのだろう。

 

「……大丈夫?アスカ」

マナが心配そうな表情で、アスカに訊ねた。

「まあ何とかね。…それよりも私達が最初なの?」

自分達の到着が、一番最初かをアスカが訊ねた。

「うん、まだ誰も来てない」

アスカの言葉に、マナが答えた。

「ったく、何やってんのよ」

マナの言葉に、アスカはボヤいた。

 

「ま、じきに来るわよ。……それとも…約束を破るような友達なの?」

ミサトが微笑みながら二人に訊ねた。

「バカ言わないで!」

「そんなこと無いです!」

少しムッとした顔を見せる、アスカとマナだった。

 

二人の顔を見ながら、ミサトは思う。

(友達か………。

いいわね…。お互いを信頼してるって……。)

 

 

<ナオコの研究室>

 

「進んでるの、そっちは?」

ナオコの研究室に、リツコが顔を出していた。 

リツコは研究室の椅子に座って、ナオコと会話を楽しんでいた。

「…あらかたね。MAGI Ⅱも稼動可能な所まで持っていけた筈よ」

リツコの言葉を聞き、ナオコは微笑んで見せた。

そして、手許のキーボードに触れ、モニターに現状でのMAGI Ⅱの構築度を映した。

「どうかしら?結構いい線いってると思うんだけど…」

ナオコは微笑みながら、リツコに訊ねた。

 

リツコはキーボードを拝借し、モニターに映るMAGI Ⅱの内容を見た。

五分間だけ、ナオコの研究室にカタカタとした音が響く。

 

しばらくして、その音が止んだ。

どうやら、リツコのチェックが済んだようだった。

「完璧よ。私が口出しすることなんて何も無いわ」

リツコは微笑んで、ナオコに話し掛けた。

「でしょ♪ チェックにチェックを重ねて、ここまで構築したんだから」

そう言って、ナオコは嬉しそうに微笑んだ。

微笑んだ後、ナオコは自分のテーブルの上を片付け始めた。

今日の作業は、これで終了なのかもしれない。

 

片づけをするナオコの背中を見ながら、リツコは優しげな表情で呟く。

「感謝してるわ……母さん」

 

リツコの呟きが聞こえていないのか、ナオコは片づけをする手を休めない。

そして、しばらくして口を開く。

「リッちゃんが感謝することなんて無いわ。…私が好きでやってることだから」

「母さん……」

ナオコの言葉に、リツコは呟くだけだった。

「むしろ感謝するのは私の方よ。こうして、またリッちゃんと話せるんだから」

リツコの方に振り向き、ナオコは笑顔を見せた。

 

穏やかな雰囲気の中、リツコは微笑みながら口を開く。

「なんだか妙な感じね。ホンの数ヶ月前までは、敵対してた筈なんだけど…」

「それを言ったら、元も子もないわ」

リツコの言葉に、ナオコは楽しそうに笑った。

 

ナオコの笑い声につられ、リツコも笑いだした。

しばしの間、研究室は笑い声に包まれた。

 

 

<数分後、ナオコの研究室前>

 

研究室の扉が開き、リツコが退室してきた。

研究室の扉が閉まると、リツコは軽く`ため息´をついた。

そして思う。

(MAGI Ⅱ……。

正直、脅威に値するわね。

この脅威を、あの人達が知ったら……黙っておかないわね。)

 

ある程度の思考を進めると、リツコは歩き始めた。

リツコは歩きながら思う。

(もし、母さんに手を出すようなら……私は…。

私は…どうするのかしら?)

 

「赤木君」

リツコが歩きながら考えていると、男の人から声を掛けられた。

男の声を聞き、リツコは口を開く。

「碇司令?」

振り返ったリツコの目前に、ゲンドウが立っていた。

ゲンドウの姿を瞳の中に入れ、リツコは優しく微笑んだ。

そして、そのままの表情で言葉をつなぐ。

「ご無事で何よりです」

「あ、ああ…。君も元気そうで……何よりだ」

少し言葉に詰まりながら、ゲンドウは口を開いた。

 

シンジの言葉を聞き、ゲンドウは急ぎネルフにやって来ていた。

「急な用事を思い出した」

と、シンジに言葉を残して。

 

「その…まぁ……何だ」

何を話せばいいのかを、ゲンドウは迷っている様子だった。

普段は冷静沈着な男も、この事態には`ただの人´だった。

「私に何か話でも?」

ゲンドウを見つめ、リツコが話し掛けた。

「うむ……。話といえば、話なのだが…」

リツコから目を逸らすようにして、ゲンドウは答えた。

 

(何か、あったのかしら?)

いつもと様子が違うゲンドウに、リツコは思った。

 

リツコが思っている間に、ゲンドウは意を決したかのような面持ちになっていた。

そしてゲンドウが口を開く。

「一度しか言わない。良く聞いてくれ」

「は、はい」

ゲンドウの言葉に多少慌てながらも、リツコは答えた。

「どんな形にしろ。……ケジメはとるつもりだ」

リツコの顔を見つめ、ゲンドウは自分の思いを口にした。

「は、はぁ…」

だが、ゲンドウが何を言っているのか、リツコにはサッパリ理解出来なかった。

 

「私の話は、それだけだ」

そう言うと、ゲンドウはその場から去った。

ゲンドウの後姿を見ながら、リツコは思う。

(いったい何だったのかしら?……。)

 

 

<リツコのマンション>

 

「それで、何をする気なの?」

リツコの家に集まった顔ぶれを見ながら、ミサトはワクワクした表情で訊ねた。

ミサトの周りには、子供達が顔を揃えていた。

だが、レイの姿がけが見当らなかった。

「何するって、ただパーティーをやって、馬鹿騒ぎするだけでしょ」

ミサトの言葉に、アスカが答えた。

「それだけ?」

子供達に、ミサトが拍子抜けした表情で訊ねた。

「はい、それだけです」

ミサトの言葉に、マナが笑顔で答えた。

 

「つまんな~い」

ミサトは駄々をこねるような口調で話した。

そして言葉をつなぐ。

「こう、もっと奇抜なことしないの?爆破するとか?」

ミサトは何を考えていたのか、とんでもない事を言い出した。

「そんなこと、する訳無いでしょ!」

ミサトの言葉に、アスカが声を上げた。

 

「ミサトさんって、いつもあんな感じなの?」

ヒカリが小声でシンジに訊ねた。

「はは…、時々かな」

冷めた笑いで答えるシンジだった。

 

そして、こちらでも小声で呟く二人がいる。

「爆破……。そうか、その手があったんだ」

「流石、ミサトさんや。考えるレベルが違うわ」

妙にミサトの言葉に感心する、ケンスケとトウジであった。

 

「それじゃあ、ドッキリぐらいならOKでしょ?」

ミサトがアスカに訊ねた。

「それぐらいなら……。どう思う?」

ミサトの言葉を聞き、マナ達の顔を見るアスカであった。

「いいんじゃないかな。それぐらいなら」

「私も霧島さんが、いいって言うなら別に」

「僕も問題ないです」

「ワシも同じや」

「爆破でも良かったのに……。ま、いいや」

子供達は、ミサトの言葉に賛成の意思を示した。

 

子供たちの言葉を聞き、ミサトは楽しそうに口を開く。

「そうと決まれば、作戦開始準備ね♪」

 

 

<青葉のマンション>

 

「ただいまぁ」

いつものように青葉が帰宅した。

そして、靴を脱ぎながら言葉をつなぐ。

「いますぐ食事にするからさ………あれ?どこか出掛けるの」

 

青葉が靴を脱ぎ終わると、レイの姿が現れた。

レイは着替えずに、学生服のままだった。

 

「はい、赤木博士のところに…」

青葉の言葉に、レイが答えた。

「え、どうして赤木博士が?」

レイの言葉を疑問に思い、更に青葉は訊ねた。

「………」

青葉の問いに、レイは沈黙した。

 

そして、レイは顔を少し赤くしながら口を開く。

「妊娠したから……」

 

「な、なっ、なにぃぃぃぃぃぃッ!!」

叫びに近い声を上げる、青葉であった。

青葉はレイを見ながら思う。

(落ち着け!落ち着くんだ、シゲル!!

俺の聞き違いかもしれない!

いや、聞き違いだったんだ!そうだ、レイちゃんは`まだ´十四歳じゃないか!

………俺、どうかしてるよ。)

思考を一段楽させると、青葉は微笑みをみせた。

 

その間、レイはキョトンとした表情で、青葉を見つめていた。

微笑を浮かべ、青葉はレイに訊ねる。

「も、もう、一回言ってくれるかな?」

 

数分後、再び青葉の叫び声が響いた。

 

 

 

つづく


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あとがき

まだ続くみたいです。(苦笑)
どうにも思うのと、書くのとでは違いが出るようです。

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