<作戦司令部>

使徒が降下を開始する予想時刻まで、三時間を切っていた。

初号機抜きの作戦は、着実に始まろうとしていた。

 

 

 

僕は僕で僕

(48)

 

 

 

 


 

「アスカ、レイ、霧島さん、頼むわよ」

ミサトがエヴァの中にいる子供達に話しかけた。

「了解」

「はい、頑張ります」

ミサトの言葉に、レイとマナが答えた。

 

「この作戦成功したら、ステーキ奢(おご)るわよ♪」

ミサトがモニターに微笑んだ。

「ステーキ……。それよりも中華が食べたい気分です」

マナが微笑みながら、ミサトへ言葉を返した。

「中華ソバ…」

マナの言葉に、レイは一言呟いた。

「はいはい、ソバでも何でも好きなもの頼んで頂戴」

チルドレン達の言葉に、ミサトは苦笑した。

 

チルドレンの二人が、ミサトと会話をしている間、アスカはモニターに映る人影を見ていた。

(……あれ、シンジじゃないの?)

アスカは学生服を着た少年の姿を見ていた。

 

カチッカチッ。

アスカがモニターを操作する。

アスカは人影を確認しようと、映像を拡大しようとしていた。

 

「アスカ、聞いてる?」

モニターにミサトの映像が割り込んできた。

「え、ええ、聞こえてるわよ」

ミサトの映像に少々慌てながら、アスカは返事を返した。

「……しっかりね」

ミサトは真剣な表情でアスカを見つめていた。

「…わかってるわよ」

ミサトに答えるように、アスカの表情も真剣だった。

 

アスカに話した後、ミサトはチルドレン達に話しかける。

「今から五分後に発進させます。発進後は使徒が降下を開始するまで、各自持ち場で待機すること」

 

ミサトとの会話の後、アスカはモニターでシンジを探した。

だが、何処(どこ)にもその姿は無かった。

アスカは苦笑いしながら思う。

 

(………アイツが、いる筈無いのに。

……バカみたい。……私。)

 

 

<初号機ケイジ>

 

初号機の前にナオコとシンジがいた。

二人は堂々と、ここまで歩いて来ていた。

もっとも、ナオコが堂々としていたのだが。

 

「あの…いんですか?こんなに大胆に歩いてきて…」

シンジがナオコに訊ねた。

待避命令が出ているシンジは、ナオコの大胆な行動理由を訊ねた。

「あなた、何か悪い事したの?」

ナオコが微笑みながら訊ね返した。

「…いえ、でも、僕に待避命令が出てるし……」

シンジは不安げな表情でナオコを見た。

 

「そんなこと…。気にしなくてもいいわよ。保安部には、私の名で話が通ってるから」

そう言って、ナオコは少しだけ微笑んだ。

ナオコの言葉に、シンジは思う。

(赤木博士って……ミサトさんより偉いのかもしれない。)

 

実際、シンジの予想は当たっていた。

赤木ナオコのネルフ日本支部に於ける権限は、`ゲンドウ´`冬月´両名の次に並べられている。

このことを知るのは、ネルフ日本支部の司令・副指令と、ごく一部の関係者だけである。

 

「…問題は、射出と葛城さんね」

そう呟くと、ナオコは初号機を見つめ、何かを考えるように沈黙してしまった。

「あの…無理ならいいんです。……僕、誰にも迷惑かけたくないし」

ナオコの表情を見て、シンジが話しかけた。

だが、ナオコは何も言わず、ただLCLに浸かったエヴァを見つめている。

エヴァは出撃中止ということで、エントリープラグを挿入したままになっていた。

 

しばらくして、ナオコが口を開く。

「……シンジ君、あなた泳げるかしら?」

 

「え?」

予想外の質問に驚くシンジであった。

 

 

<作戦司令部>

 

「射出時間です」

日向がミサトに告げた。

 

「エヴァ各機、発進!」

日向の言葉を聞き、ミサトは声を上げた。

 

司令部内のモニターには、エヴァの射出経路が映し出される。

どうやら三機とも、別々の射出口に排出されるようであった。

 

「はじまったわね…」

リツコは、ミサトを見ながら呟いた。

「………」

だが、ミサトは何も言わず、ただモニターを見つめていた。

 

 

<初号機ケイジ>

 

ゴゴゴッ。

初号機ケイジ内にも、エヴァの発進した衝撃音が伝わってきた。

 

「…三機とも出たようね」

ナオコは呟き、シンジを見た。

そして、インターフェイスを渡しながら訊ねる。

「プラグスーツ無しでも大丈夫でしょ?」

「はい、大丈夫だと思います」

自信に満ちた表情で、シンジは返事を返した。

 

「射出の方は私が何とかするから……葛城さんの方、お願いね」

シンジに話しかけながら、ナオコは優しい微笑みを見せた。

「…はい、じゃあ行って来ます」

シンジも微笑みながら、ナオコに答えた。

 

ジャボン。

ナオコと会話した後、シンジは耳に自分の唾を詰め、LCLの中に飛び込んだ。

 

「さてと……」

シンジが初号機に向かったのを見届けると、ナオコは軽くため息をつき携帯電話を手にした。

 

 

<作戦司令部>

 

ミサトが予想した使徒の落下区域近辺に、エヴァ三機は配置された。

まだ落下予想時刻までには、まだ多少の時間的余裕があった。

モニターには使徒との戦闘を控えた子供達の顔が映し出されていた。

 

「…落ち着いてるわね、あの子達」

ミサトがチルドレン達の表情を見て呟いた。

 

「落下予想時刻まで、あと120分です」

青葉がミサトに報告した。

「了解。後は私一人でいいから、あなた達は待避活動を開始して頂戴」

ミサトは微笑みながら、皆に自分だけが残ると告げた。

青葉は微笑みながら、ミサトの言葉に答える。

「これも、仕事ですから」

「子供達だけを、危ない目に合わせられないですよ」

青葉の言葉に、日向も続いた。

 

ミサトは二人の言葉に、優しく微笑み口を開く。

「あの子達は大丈夫。もしエヴァが大破しても、ATフィールドがあの子達を守ってくれるわ」

そして、言葉をつなぐ。

「エヴァの中が一番安全なのよ」

そう言った後、ミサトは優しい表情のままで、子供達の映ったモニターを見つめた。

 

 

「あの…先輩?」

マヤが小さな声でリツコを呼んだ。

「何、どうかしたの?」

リツコがマヤに近づき訊ねた。

「………初号機ケイジに、シンジ君の反応があります」

マヤは戸惑いながら、リツコに報告した。

「嘘?ちょっと見せて…」

リツコはマヤのキーボードを叩いた。

そして口を開く。

「ホント……シンジ君ね。……それに、母さんも」

 

そこへ、リツコの携帯が鳴った。

リツコは白衣のポケットから携帯を取り出し、電話を取った。

そして口を開く。

「もしもし?」

-さて、第一問。私は誰?-

電話口の声は笑っていた。

「解ってるわよ、母さんね。いったい何をするつもりなの?」

リツコは憮然とした表情で話した。

-大正解。ご褒美に初号機を出撃させて頂戴♪-

ナオコは、冗談混じりに自分の行動目的を告げた。

 

ナオコの言葉に、リツコは青筋を立てながら一言。

「か、母さん…話の筋が通ってないわよ」

 

-……シンジ君と約束したのよ。生きて帰ってくる代わりに、出撃させてあげるって。-

ナオコの声は、優しさのこもった声だった。

 

ナオコの言葉に、リツコは少しだけ考えた。

そして口を開く。

「いいわ。でも、ミサトにも話を通してくれるんでしょうね?」

チラリとミサトを見ながら、リツコは話した。

ちなみに会話の内容までは、ミサトは気づいていなかった。

-ええ、シンジ君の口から話してくれると思うわ。-

ナオコの言葉を聞き、リツコが口を開く。

「了解。じゃ、また後で」

そう言って、リツコは電話を切った。

 

「赤木博士から?」

側で様子を見ていたミサトが、微笑みながら訊ねた。

「ええ、初号機を出撃させてって」

ミサトに合わせるかのように、リツコは微笑みながら話した。

 

「な?!」

リツコの言葉に、ミサトは驚き声を上げた。

 

「マヤ、初号機の出撃準備を」

リツコがマヤに命令を下した。

「はい」

マヤは嬉しかった。

その理由は、ただ一つ。

マヤのモニターに、シンジの顔が映し出されていたからだった。

 

「ち、チョット待って、何でシンジ君がいるのよ?!」

初号機の出撃準備に入ろうとする中、ミサトがリツコに訊ねた。

「彼に直接聞いてみたら?彼…自力でエントリープラグに搭乗したみたいよ」

リツコがマヤの方を向きながら、ミサトの問いに答えた。

「マヤ、シンジ君を出して」

リツコの言葉を聞き、ミサトはマヤに話しかけた。

「プラグ挿入後に回線をつなぎます」

マヤの行動は迅速だった。

リツコの言葉と同時に、準備活動に入っていた。

 

「…あのバカ」

モニターに映し出された初号機を見ながら、ミサトは呟いた。

三十秒後。

「三、ニ、一、…回線つながりました。中央モニターに回します」

 

シンジの様子がモニターに映し出された。

シンジは学生服のまま、プラグ内にいた。

 

「シンジ君、説明して。あなたが何故(なぜ)ここにいるの?」

回線が開くなり、ミサトは憮然とした表情で訊ねた。

 

少しの沈黙の後、シンジは答える。

「……生きてるから。……僕は…生きていたいから。……ここに、います」

シンジは真剣な表情で、ミサトに自分の思いを告げた。

 

「……そう。…その言葉に間違い無いわね?」

ミサトは優しい表情で訊ねた。

「はい、約束しましたから。…生きて帰ってくるって」

ナオコとの約束のことを、シンジは口にした。

「なら、何も問題無いわ。直ぐ発進させるわ、いいわね?」

ミサトは微笑みながらシンジに言った。

 

「ありがとうございます…ミサトさん」

ミサトに感謝の言葉を、シンジは口にした。

「いいのよ、私もチョッチ言いすぎたなぁ~、って思ってたから♪」

ミサトは笑顔でシンジに話した。

「ま、思ってるだけなら誰にでも出来るわね」

鋭いツッコミを入れたのはリツコだった。

 

「なはは……」

リツコの言葉に、冷めた笑いを立てるミサトだった。

 

ミサト達の会話の効果か、作戦司令部は穏やかな雰囲気になっていた。

 

「あの、マヤさん…」

モニターのシンジが、マヤに話しかけた。

「何?」

マヤは嬉しそうな表情で訊ねた。

「この前の夜のこと…平和になったら……必ず守りますから」

シンジは真剣な表情で、マヤに話した。

「ええ、平和になったら…ね」

シンジの言葉に、マヤは優しい表情で答えた。

 

「何ぃぃぃ!マヤ、お前もか!」

日向が驚声を上げた。

「あの夜ってなんだよ!あの夜って!」

青葉もマヤに詰め寄る。

二人の剣幕に、マヤはたじろぐだけだった。

 

「はいはい、話しはそこまで。初号機を発進させて頂戴」

ミサトが苦笑いしながら、オペレーターに話しかけた。

 

「は、はい、初号機発進させます」

マヤが助かったとばかりに、発進操作を開始させた。

 

マヤの行動を見て、ミサトが声を上げる。

 

「エヴァンゲリオン初号機発進!」

 

 

 

つづく


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あとがき

こんなので、いいのでしょうか?(笑)
理解出来無い箇所がありましたら、遠慮無く言って下さいね。

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