<ナオコの研究室>
マヤはナオコの研究室で、データを入力していた。
コダマは妹の進路相談の為、マヤに白羽の矢が立ったのだった。
僕は僕で僕
(39)
伊吹マヤの仕事における姿勢は優秀である。
これがネルフ日本支部での彼女の評価だった。
実際、彼女は優秀であった。
リツコの命令を確実に理解し、実行することが出来た。
驚きと緊張と焦りの入り混じった戦闘の中でも、期待を裏切ること無かった。
いつしか、マヤのネルフでの位置付けも重要なものになっていた。
「ふぅ~」
マヤはキーボードを叩く手を休めると、少し軽い`ため息´をついた。
「疲れた?」
隣で書類に目を通していたナオコが、マヤに声をかけた。
「あ、いえ、そこまで疲れていません」
マヤは初めて仕事を一緒にするナオコへ、微笑みながら答えた。
「じゃあ、少し疲れてるのね。いいわ、小休止にしましょう」
ナオコはマヤの言葉を理解し、書類をテーブルに置いた。
そして、お茶を入れようと席を立った。
「あ、私がやります」
マヤがナオコの行動を見て、慌てて席を立った。
「いいのよ、座ってて。今日は私が無理して頼んだんだから」
微笑みながら、ナオコは給湯室に向かった。
給湯室に向かうナオコを見ながら、マヤは思う。
(先輩のお母さんって、普通の人みたいで良かった♪)
一体どんな人と、マヤは思っていたのだろう。
マヤはナオコの姿が消えると、入力していたデータを見た。
(MAGI Ⅱ…ほとんどMAGI と設定は変わらない。
変わっている所って言ったら、どことなく攻撃的な所かな。)
そう思った後、マヤはキーを叩きデータを見はじめた。
(カスパー、バルタザール、メルキオール。
概念は、やっぱりMAGI 。
でも、やっぱり攻撃的なシステム構成になってる。)
「MAGI Ⅱって何?」
つい思ったことを、マヤは口に出してしまった。
「男よ。ちなみにMAGI は女」
マヤが言葉を口にすると、声が聞こえた。
「!」
マヤは声に驚き、振り返った。
振り返った先には、ナオコがお茶と茶菓子を持って来ている姿があった。
ナオコは、ゆっくりお茶と茶菓子をテーブルに置くと、マヤの隣に座った。
そして口を開く。
「伊吹マヤさん」
「は、はい」
マヤは緊張しながら、返事を返した。
「私の質問に、答えてくれたら教えるわ」
ナオコは、そう言って微笑んだ。
「MAGI Ⅱのこと…ですか?」
マヤがナオコに訊ねた。
「ええ。でも、それだけじゃなくて、MAGI Ⅲの説明も、して…欲しいでしょ?」
ナオコが、イタズラッ子のように微笑んだ。
「……はい。でも何を答えれば、いいんですか?」
ナオコの問いに、マヤは頷きながら答えた。
そして逆に訊ね返した。
マヤの問いに、ナオコは簡潔に答える。
「質問は簡単。青葉君のメール……手伝ったの貴方でしょ?」
<司令室>
ゲンドウは司令室で椅子にもたれていた。
目を閉じ、何かを考えていた。
しばらく、このままで時間が過ぎた。
そして口を開く。
「平和……か。堕落と停滞の象徴だな」
ゲンドウは、ゆっくりと呟いた。
「だが、悪くは無い」
そう言った後、ゲンドウは自分の言葉を少しだけ自嘲した。
<再び、ナオコの研究室>
「………」
マヤはナオコの言葉に、真剣な表情で沈黙してしまった。
「別に責めようって訳じゃないの。ただ科学者として、納得がいかなかったのよ」
沈黙するマヤを見て、ナオコは微笑みながら言った。
マヤはナオコの微笑みを見て、少し安心したのか表情を和らげた。
そして口を開く。
「……はい、私が協力しました」
マヤが答えたこと。
それは青葉がナオコにメールを出したとき、ネルフの検閲をノー・チェックで通したことだった。
それだけの技術を、マヤは充分持っていた。
「なるほどね、理解できたわ。さてと…今度は私が答える番ね」
ナオコはお茶を一口すすると、マヤに一枚の書類を手渡した。
そして口を開く。
「これが、草稿案。十年前の資料だけど、これがMAGI Ⅲの始まりになるの」
マヤは手渡された資料を読んでいる。
「これって…MAGI ですよね?」
資料を見ながら、マヤが訊ねた。
「そうね。見た目は、そう見えるわね。でも根本的には違うでしょ?」
ナオコは、微笑んでマヤに訊ね返した。
「……はい。三者による多数決じゃないです」
マヤは資料を読みながら、ナオコへの答えを導き出した。
マヤの答えに、ナオコは満足そうに頷いた。
そして言葉をつなぐ。
「MAGI 一体なら、それでも稼動するのよ。でも三体でしょ」
「調和が…原則になるってことですね」
マヤは、頭の中で言葉を選びながら言った。
「そう調和。多数決なんて、結局は不完全な答えに過ぎないわ」
ナオコはマヤの言葉を肯定すると、自らの主観を付け加えた。
「……でも、システム構成が全て違うMAGI 三体で、調和が可能ですか?」
ナオコの言葉に、マヤが訊ねた。
マヤの言葉を、ナオコは短く返す。
「その為の、MAGI Ⅲよ」
ナオコの言葉の後に、少しの沈黙が流れた。
沈黙の間、マヤはナオコの言葉に理解出来無い、という表情をしていた。
マヤが答えを導くのに苦心してる姿を見て、ナオコが微笑みながら口を開く。
「MAGI それぞれに当てはめると解るでしょ。MAGI は女。MAGI Ⅱは男。そしてMAGI Ⅲは……」
ナオコは`MAGI Ⅲは…´で言葉を濁した。
全てを教えることは、あまり好きではないのかもしれない。
「あっ……解りました。妥協案ですね」
マヤがナオコの助言を受け、自分の思った答えを口にした。
「ま、そんな所かしら」
ナオコはマヤの答えを聞き、及第点の評価を下した。
それからナオコは腕時計を見て、休憩が長引いたことに気がついた。
そして口を開く。
「そろそろ、始めましょうか?」
「はい♪」
ナオコの言葉に、マヤは微笑んで答えた。
まるでリツコに微笑むかのように。
<ネルフ内・自販機前>
加持がコーヒー缶を片手に煙草を吸っていた。
加持は、この場所が気に入っていた。
自分の思考を整理するには、この場所が一番良いと思っていた。
(ネバダは…今だ動きを見せる兆し無し。
ま、動いたら困るんだけどな。)
「さて、どうなることやら……」
加持は思考の整理をつけると、一つ呟いた。
「加持?」
加持が呟くと、何処からか声が聞こえた。
加持は、チラリと声の方を向いた。
「なんだ、葛城か…。か、葛城ぃ?!」
声の主は、加持を驚愕させた。
アスカの進路相談に向かっている筈のミサトが、そこにいたからだった。
「何よ、幽霊でも見たような顔して」
ブスッとしたような顔で、ミサトは加持を見た。
「幽霊よりタチが悪い」
加持はミサトを見て、ボヤいた。
「何ですって!」
加持の言葉に青筋を立て、ミサトが怒鳴った。
ミサトの怒鳴り声を無視して、加持が呟く。
「アスカの進路相談、いいのか?」
「へ、来週でしょ?」
加持の言葉に、ミサトはトボケた言葉を返した。
「今日に変更になったんだ。なんだ聞いてないのか?」
加持は、呆れた表情で話しかけた。
ミサトは加持の言葉に、昨日の記憶を思い出す。
そして帰る間際に、リツコに言われた言葉を思い出した。
「進路相談、明日に変更だそうよ」
「か、加持君。今、何時?」
ミサトは冷や汗を掻きながら、加持に訊ねた。
加持は腕時計を見ながら、ミサトに答える。
「……急げば間に合う時間だな」
「OK じゃあ、加持。そういうことで!」
そう言い残し、ミサトは加持のもとを走り去った。
「何が、そう言うことでだ…」
ミサトが走り去った後、加持はミサトの言葉に呟いた。
そして何かを思い出したように、口を開く。
「ま、約束の時間に、葛城が来た試しは無かったしな」
そう言った後、加持は少しだけ笑った。
つづく
あとがき
MAGI Ⅲに関しては、これが今の段階で書けることです。
多少、説明が難しくなってしまいました。出来るだけ、解り易く書いたつもりなのですが。(苦笑)
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