第九使徒との戦闘から一夜明け、進路相談当日の午後。

第三新東京市に一校だけ存在する中学校。

シンジ達は教室で、冬月達が来るのを待っていた。

 

 

 

僕は僕で僕

(38)

 

 

 


 

シンジは、トウジとケンスケと一緒に窓の外を見ていた。

どうやら保護者達は、まだ到着していないようだ。

ちなみに、今は休み時間。

 

「なあ、シンジ。お前、将来っての考えてるか?」

ケンスケが窓の外を見ながら、ポツリと訊ねた。

「何や、いきなり妙な話持ち出してからに」

トウジがケンスケに訊ねた。

「だってさ、知りたいだろ。エヴァのパイロットの進路って」

ケンスケは、自分の思ったことを素直に伝えた。

そしてシンジの方を向いて、ケンスケが訊ねる。

「な、シンジ。どうなんだよ?やっぱり、将来もネルフに残るのか?」

 

「え…急にそんなこと言われても、解んないよ」

シンジはケンスケの問いに、戸惑いを憶えつつ返事をした。

実際、シンジにも先のことは解らなかったから。

 

シンジはケンスケの言葉に、うつむいて考える。

(将来……平和になっても…ネルフにいるのかな………僕は。

使徒が出なくなっても……エヴァに乗るのかな………僕は。)

 

「ケンスケのアホな質問に、そんな真剣に悩まんでもええ」

トウジが、シンジの様子を見て声をかけた。

「アホとは何だよ、アホとは。アホにアホって言われたくないな」

ケンスケが、トウジの言葉に反論した。

「ケンスケ…お前……」

ケンスケの言葉に、トウジが青筋をヒクヒクさせた。

「あ、やばっ」

ケンスケはトウジに言ってはいけないことを、言ってしまったことに気がついた。

そして、慌ててトウジのもとから逃げ出した。

「こらッ、待たんかい!」

トウジはケンスケを追いかけ始めた。

 

残り時間も少ない休み時間に、急に慌ただしくなる教室。

 

「二人とも、静かにしなさいよ!」

委員長のヒカリが、トウジとケンスケに怒鳴る。

委員長として、二人の行動が目に余ったらしい。

 

「シンジ、ちょっと顔かして」

トウジとケンスケの喧騒をよそに、アスカがシンジに話しかけた。

「え、あ、いいけど」

シンジは返事をしながら、トウジとケンスケに`チョット出てくる´と話しかけようとした。

「トウ…痛ッ!」

 

ムギュッ。

シンジはアスカに脇腹をつねられていた。

「ア、アスカ、痛いよ」

シンジが痛みに、アスカに話しかけた。

 

「ニブイ奴には、これぐらいで丁度良いのよ」

そう言ってアスカは、つまんだ手を離し教室の出口に向かって歩き出した。

「……ニブイって…痛いって言ったじゃないか」

ブツブツと愚痴をこぼしながら、シンジはアスカの後に付いて行った。

 

 

<教室の外・廊下>

 

(女心ってのが、全然解ってないんだから!)

アスカは不愉快な顔をしながら、廊下を歩いていた。

 

「ねぇ、どこに行くの?」

アスカの後ろを歩いていたシンジが声を掛けた。

「男だったら、黙って付いて来なさいよ」

アスカは苛立たしげに答えた。

「う、うん、わかった」

シンジは言葉に詰まりながら、アスカに返事をした。

どこに連れて行かれるのか、不安に思いながら。

 

 

<体育館裏>

 

シンジはアスカに体育館裏に連れ出されていた。

体育館裏につき、アスカは腕組みしてシンジを見た。

 

シンジは辺りを見まわしながら思う。

(何で、こんな人気の無いところに……。

まさか……。)

シンジには一つ心当たりがあった。

 

「あ、あのさ、あれはケンスケが写真撮るのが好きだって言うから…」

シンジはアスカへ話し始めた。

トウジとケンスケが、アスカの写真を勝手に撮り、販売していることを。

 

ケンスケ曰く。

「アスカは被写体としても、販売実績としてもベストだよ。…………あの性格を除けば、だけどな」

 

「はぁ?」

シンジが何を言っているのか、アスカには理解出来なかった。

「え、違うの?!」

写真の販売をしていることで、アスカに呼び出されたと思っていたシンジは声を上げた。

「違うわよ。私がシンジを呼んだのは……」

アスカは、シンジへ呼び出した理由を話し始めた。

 

 

<教室>

 

トウジとケンスケは、先程座っていた席に大人しく着いていた。

二人の頭には、黒板消しの白い粉がついている。

どうやら、委員長のヒカリに説教されたようだった。

 

「トウジ、決着は今度にしよう」

ケンスケはトウジに微笑みながら話しかけた。

「ええで、また今度な」

トウジもケンスケに答えるように、微笑みながら返答した。

なんだかんだ言っても、二人は親友であった。

 

そこへシンジとアスカが帰ってきた。

アスカはシンジを先に教室へ入らせて、自分は後から教室に入っていった。

一緒に教室に入ると余計な説明がいるから、だそうだ。

 

先に教室に入ったシンジは、トウジとケンスケを見ると笑いながら話しかけた。

「どうしたの?頭、白くして」

「見てわかんないか」

不機嫌そうな表情で答えるケンスケ。

「趣味や」

トウジは、ケンスケの言葉を継ぎ足した。

 

「しゅ、趣味?!」

シンジは二人の言葉に驚いた。

 

「んなことあるかーい」

ケンスケがトウジにツッコミを入れた。

「「ども、ありがとうございました~」」

トウジとケンスケは息の合った漫才を、シンジに見せたのだった。

 

シンジは呆気に取られて、二人を見つめた。

 

「なんや、イマイチやったかな?」

「いや、今のはベストだろう」

二人は冷静に、今の漫才の出来を評価していた。

 

「プッ、ハハハハ」

シンジが二人を見て、急に笑い出した。

冷静に評価する二人の姿が、妙にツボだったらしい。

 

「な、言っただろう」

「ホンマやな」

そう言って二人は、シンジの笑顔を優しそうに見つめた。

 

 

<教室・アスカの席>

 

アスカが戻って席につくと、マナが駆け寄ってきた。

アスカは思わず、ゲッという表情をしてしまった。

 

「な、何か用?」

アスカは言葉を詰まらせながら、駆け寄ってきたマナに訊ねた。

「`何か用?´じゃなーい!何処行ってたの?!」

マナが大声を上げながら、アスカに詰め寄る。

アスカとシンジの姿が、一時的に見えなかった為だった。

 

(やっぱり、そう来た………。)

アスカはマナの言葉に気まずそうな顔をした。

 

「チョット、耳かして」

気まずそうな顔をしながら、アスカはマナに話しかけた。

マナは少し怒ったような表情をしながらも、アスカに耳をかした。

「今日、あの日なの」

アスカはマナの耳元で、そう囁いた。

 

マナは、ゆっくりとアスカから顔を離した。

そして、仕方ないといった表情を見せながら訊ねた。

「ん~、本当なの?」

「……うん、チョットね」

アスカは恥ずかしそうに頷き、微笑んだ。

 

「それにしては、戻って来たときのアスカって、嬉しそうだったような……」

マナが怪訝の表情でアスカを見た。

 

「知ってる?疑うのも疑われるのも、気分は良くないって」

アスカがマナに向かって言った。

「……わかった。今回は、そう言う事にしとく」

マナは微笑みながら言い残し、自分の席に戻った。

 

アスカは、マナの後姿を見ながら思う。

(ゴメンね。……マナ。)

 

 

<中学校前>

 

リツコは徒歩で校門前に到着していた。

ちなみに、リツコはマナの進路相談の為に来たのだった。

いつもきている白衣とは違い、今日は保護者らしい落ち着いた服を着ていた。

 

リツコが校門を通ろうとすると、一台のスクーターに追い抜かれた。

銀色のベスパ(イタリアン・スクーター)だった。

ベスパは校門近くにある駐車場で止まった。

 

リツコは、少し足早にベスパに近づくと微笑んで言った。

「お若いですね。副司令」

ベスパに乗っていたのは冬月だった。

冬月はリツコの声に気づき、メットを取りながら微笑んだ。

「赤木君か。久しぶりに乗ってみたくなってな」

そう言って、冬月はベスパから降りた。

 

「年代物ですね。手入れが良い証拠ですよ」

リツコはベスパを眺めながら言った。

そして冬月の服装を見ながら、微笑み言葉をつなぐ。

「それにしても、決まってますね」

 

冬月の服装は茶のスーツにボタン・ダウン・シャツとネクタイ。

それにイタリアン・スタイルの靴で決めていた。

 

「いや、なに。進路相談なんて初めてだからな」

冬月は照れ臭そうに笑った。

「私もです、副司令」

冬月に合わせるように、リツコも微笑んだ。

「ここでは、副司令はマズイ。冬月さんで通してくれるかな」

リツコの言葉に、冬月は微笑みながら言った。

「冬月さん…ですか?何か、変な感じですね♪」

リツコは、そう言って微笑んだ。

 

キキッ。

リツコと冬月が会話をしている所へ、一台の単車(バイク)が到着した。

「おはようございます、副司令!」

フルフェィスのメットのまま、敬礼する人物。

その人物は青葉だった。

 

青葉の`副司令´という言葉に、冬月は苦笑するだけだった。

 

 

<教室>

 

「おい、シンジ見てみろよ。あれ、リツコさんじゃないか?」

窓の外を見ていたケンスケが、シンジに訊ねた。

ケンスケはリツコを知っていた。

第四使徒のときに一度、ケンスケはリツコの顔を見ていた。

 

「あ、ホントだ。多分、マナの進路相談だよ」

そう言って、シンジも窓の外を見た。

 

「あ、副司令に……あれは青葉さんかな」

シンジが窓の外を見ながら、来ている人物を確認していた。

「ネルフの偉い衆って奴か?」

トウジがシンジに訊ねる。

「うん、まあ偉いと思うよ。…多分だけどね」

シンジは青葉が偉いかどうか知らないので、多分と答えたのだった。

 

「なぁ、シンジ。ミサトさんも来るんだろ?」

ケンスケが、ウキウキとした表情でシンジに訊ねた。

ちなみに、ミサトの顔もケンスケは知っていた。

 

「うん、来るって言ってた」

ケンスケの言葉に、シンジは微笑みながら答えた。

「誰や?ミサトさんって」

トウジがケンスケに訊ねる。

「ネルフの作戦部長。その上、美人でプロポーション抜群!」

ケンスケは、少し興奮気味に説明した。

「なにッ!ホンマかッ!あ、あの、リツコさんって人よりもか!」

トウジはリツコを指差しながら、ケンスケに訊ねる。

「う~ん、これは趣味の問題だな。俺はミサトさんのグルーヴィーな感じが…いいなぁ、ミサトさ~ん!」

ケンスケは自分の世界に入ってしまった。

「そ、そんなにか!なら、こうしちゃおれん!」

ケンスケの言葉に、トウジはヘア・スタイルを整え始めた。

 

シンジは、そんな二人を見て呆気に取られるだけだった。

 

キーン、コーン、カーン、コーン。

休み時間の終わりを告げる鐘が鳴った。

急々と自分の席に戻る生徒達。

 

どうやら進路相談が始まるようだ。

 

ガラッ

教室へ担任が入って来た。

「え~、進路相談を…相談室で始めたいと思います」

担任の話は、出席番号順に相談室に入って来いとの事だった。

 

「え~と、相田君…君からだね。…一緒に来たまえ」

 

ゲッ俺からかよ、という顔を露骨に出しながら、ケンスケは担任の後に付いて行った。

とにもかくにも進路相談は始まった。

 

 

つづく


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あとがき

本編では無かった進路相談編です。
あまり設定に縛られないので、多少は書き易いです。多少ですけどね。(笑)

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