地上に出た日向を待っていたのは、ネルフの所持しているヘリだった。

武装の類いは一切装備していない。

だがエヴァを指揮するには、これで充分だった。

 

 

 

僕は僕で僕

(35)

 

 

 


 

「直ぐに離陸できるか?」

日向はヘリの中に入り、パイロットに訊ねた。

「いつでもOKです」

パイロットは簡潔に答えた。

 

日向はパイロットの言葉に頷くと、ヘリに搭載している無線機を手に取った。

ちなみに、無線機はエヴァ二機とつながっている。

「あ、あー、テスト、テスト」

日向はつながっているかどうかを確認する為に、無線機に話しかけた。

  

-聞こえてるわ。テストよりも、トットと出撃命令出してくれない?-

アスカの声が聞こえてきた。

-日向さん、ヨロシクお願いします。-

続けて、マナの声も聞こえてくる。

 

二人の声に日向は苦笑いして口を開く。

「もうしばらく待ってくれるかな。シンジ君達を探した後に、君達の発進だから」

-わかってる。その代わり、見つかったら報告してよね。-

-あ、私もお願いします。-

 

日向は二人の言葉に苦笑するだけだった。

 

 

<ネルフ中央司令部>

 

日向が二人に説明している間、MAGI に変化が起きた。

一斉にMAGI のモニターに電源が入っていた。

 

カタカタカタカタカ。

リツコとマヤは尋常でない速度でキーボードを叩いていた。

「マヤ、いる?」

額に汗しながらリツコが訊ねた。

「駄目です!各フロアー・施設には見当たりません!」

マヤは焦りの表情を隠さずに答えた。

 

(……残り二分。発進を考慮すると……一分三十秒。………どこ?…何処にいるのシンジ君。)

リツコは思考の中でも、キーボードを叩く手を休めなかった。

 

「零号機パイロット発見しました!エレベーター内です!あっ!」

マヤが驚きの声を上げた。

「どうしたの?!」

リツコはマヤの驚きの声に訊ねた。

「パイロット両名発見しました!二人ともエレベータ内に閉じ込められてます!」

嬉々とした表情で報告するマヤ。

 

「よくやったわ、マヤ。」

リツコはマヤに微笑みを見せると、青葉の方を向き声を上げる。

「青葉君、第三課と地上に連絡を!」

「了解です!」

 

残り一分四十秒、エヴァを発進させるには充分な時間だった。

 

 

<二号機ケイジ>

 

(ったく、馬鹿シンジのバカ……バカの中のバカ、グレートバカね!)

アスカは二号機の中でムカついていた。

ネルフに着けばシンジに会えると思っていたのだが、会えなかった為だった。

 

-両機同時に発進させる。いいね?-

日向の声が、二号機内に仮設した無線機から聞こえてきた。

「いつでもどーぞ」

アスカは不機嫌な表情のまま答えた。

 

-あ、それからシンジ君は見つかったよ。零号機のパイロットと一緒に見つかったみたいだね。-

日向はサクッと、アスカとマナに重要なことを告げた。

「な、なな!」

日向の言葉に、アスカは驚いた。

 

-じゃ、エヴァ両機発進。-

日向は簡単にエヴァ二機を発進させた。

時間の余裕が無い為、致し方ないことであった。

 

「チョッ、チョット説明、グッ」

発進を開始し加速する二号機の中で、アスカは舌を噛んでいた。

 

 

<地上>

 

上空をネルフのヘリが、使徒から少し距離を取り旋回活動している。

第九使徒は溶解液を出して、ネルフへ侵入しようとしていた。

だが、そこへ変化が起きた。

エヴァ二機が現れたことだった。

 

「痛~いッ。舌噛んだじゃない!発進が急過ぎるっての!」

アスカは無線機に怒鳴った。

舌を噛んでも、普通どうりな発音をしているアスカだった。

どうやら、深くは噛まなかったようだ。

-申し訳ない。あまり時間がなくて…。-

無線機から日向の弁解の声が聞こえてきた。

「ま、いいわ。…で、使徒は?」

アスカは自分の行動目的を理解していた。

とりあえず、全ては使徒を倒してからということを。

 

「アスカ、あれ」

二号機の直ぐ側に射出されたJA(マナ)が第九使徒を見つけた。

第九使徒はエヴァニ体に気づき、距離を取ろうとしていた。

 

「…逃げる?!」

アスカは第九使徒の動きに違和感を覚えた。

これまで、向かってくる使徒とは戦ったことがあるが、向かってこない使徒とは初めてだったから。

 

「逃がさないっ!」

戸惑うアスカを尻目に、マナが第九使徒にしかけた。

パレットガンを連射しながら、第九使徒に接近する。

だが第九使徒は、ATフィールドを展開しながら距離を取っている為、ダメージは無かった。

 

「それならっ!」

JAはジャンプし、使徒の不意をついて接近しようと試みた。

 

プシュッ!

ジャンプして向かってくるJAに、第九使徒が溶解液を吐きかけた。

 

「イヤァァッ!」

JAは顔面に溶解液を浴びてしまった。

苦しむマナの声が、二号機の中にも届く。

 

-しまった!二号機はJAの援護を!-

日向の声も、二号機の中へ届いた。

 

だがアスカは二人の声を聞きながら、少し違ったことを呟いていた。

「この使徒……妙な戦い方をしてる」

 

(……何を言ってるんだ。)

日向はアスカの言葉を不思議に思った。

 

アスカは二号機のモニターに映る使徒を見ながら、日向に訊ねる。

「日向さん、エヴァの残り活動時間は?」

-え、ああ、残り三分四十秒余りと言った所だ。-

冷静なアスカの声に、日向は戸惑いながら答えた。

 

「…やるしかないわね」

アスカは考えるのを中断し、真剣な表情で呟いた。

 

「スゥー………ハーッ」

アスカは大きく深呼吸すると、第九使徒のもとにジャンプした。

JAの取った行動と、同じ行動だった。

 

-それは、駄目だ!-

日向が二号機の行動を見て声を上げた。

 

プシャ!

第九使徒はJAと同じように、二号機にも溶解液を吐きかけた。

 

「…バカ使徒」

アスカは不敵な表情で笑いながら、パレットガンで溶解液をしのいだ。

溶けるパレットガンを投げ捨て、二号機は第九使徒に蹴りを叩きこんだ。

蹴飛ばされる第九使徒。

 

「マナ、大丈夫?!」

第九使徒と距離が出来たので、側で倒れているJAにアスカが声をかけた。

「ゴメン、痛くて目が開けられない」

マナが痛みを堪えながら答えた。

「マナ……」

マナの声を聞き、驚きの表情でアスカは呟いた。

 

「大丈夫、戦うから」

気丈にも、マナはJAの中で微笑んでいた。

「バカ言うんじゃないわよ!目が見えないってのに、戦えるって言うの!」

アスカはマナに怒鳴った。

「戦える…じゃないの。私は使徒と戦う…戦わないといけないの…」

マナの声は力強さを含んでいた。

 

マナは自分自身が戦う理由を見つけていた。

誰が誰の為に何を出来るか?

マナは、その答えを少しだけ理解していた。

 

 

<ヘリの中>

 

このとき、日向は困惑の極みにいた。

(俺には、やっぱり無理だったんだ。エヴァを指揮するなんて…。

俺では使徒に勝てない…。

やっぱり葛城さんじゃないと駄目なのか………。)

 

(葛城さん…貴方なら……どうするんですか?

この状況で…。)

 

「この状況で……」

日向は自然と言葉を口に出していた。

 

(だけど…こんな状況だからって、諦めることは出来無い……。案外、俺って諦めが悪い男だな。)

そう思い、日向は微笑みを浮かべた。

 

「!」

微笑みを浮かべ肩の力が抜けたとき、日向の頭の中で一つの考えが思いついた。

 

 

<地上>

 

二号機はJAを助け起こした。

「マナが戦うって言うんなら止めない。好きにしなさい」

アスカは優しい笑みを浮かべていた。

「…ありがとう」

マナもJAの中で微笑んでいた。

 

そこへ日向からの無線が入る。

-残り時間、ニ分を切った。一時撤退…するかい?-

「冗談!誰が、撤退すんのよ!」

「私も戦います」

アスカとマナは強気な返事を、日向に返した。

-良し、それなら戦おう。負けないように全力で。-

日向の言葉は、二人には心強い言葉だった。

 

-しかし、残念ながら状況は芳しくない。だが君達は、まだ戦える。この意味わかるね?-

日向は二人に訊ねた。

「状況を芳しくしろってことですか?」

「違うわ、勝てってことよ」

マナの言葉をアスカが否定した。

 

-その通り。勝てるチャンスは、まだ残ってる。-

日向の言葉は自信が満ちていた。

「勝つって言っても、使徒は逃げ回ってるだけなのに?」

アスカは日向に訊ねた。

-それさ、そこが盲点だった。-

「盲点…ですか?」

マナには日向の言葉が理解出来なかった。

-そう、盲点。なぜ使徒が距離を取っているか解るかい?-

二人に日向が訊ねる。

「使徒のことが解ったら、苦労しないわよ」

アスカがムッとした表情で答えた。

-だけど、今回は解った。使徒を見てごらん。-

 

第九使徒は、ある一定の距離を保ったまま動こうとしない。

 

「……逃げてる」

マナがポツリと呟いた。

「マナ!見えてるの?」

アスカが驚き、マナに訊ねた。

「うん、一時的なものだったみたい」

いつのまにか、マナの目は見えていた。

 

「心配させるんじゃないわよ。……バカ」

アスカの言葉はキツイが優しい思いが詰まっていた。

「……ごめんね」

マナもアスカの思いに気づき、微笑みを浮かべながら謝った。

 

-話の途中で悪いんだけど…いいかな?-

二人に無視された日向が話に割って入った。

 

そして簡潔に、二人に説明した。

あくまで推測の域を出ないと指摘の上で、使徒の動きの理由と攻略法を。

 

説明を聞き終わった後、アスカは不敵に笑いながら口を開く。

「乗ったわ、その話」

そして、マナも口を開く。

「私も、日向さんの考えが正しいと思います」

 

日向は二人の言葉に微笑むと言った。

-それじゃあ…直ちに作戦開始!-

 

 

 

つづく


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あとがき

MOVE ON UP. (笑)

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