第三使徒との戦闘から七日間が過ぎた。
平和過ぎるぐらい平和な七日間。
そして八日目が始まった。
僕は僕で僕
(3)
<ネルフの病院施設、碇シンジの病室>
シンジと少年と少女がいる。
少年はシンジに頭を下げている。
「すまんかったシンジ!」
「トウジ、もう大丈夫だからさ頭を上げてよ」
鈴原トウジ、碇シンジの同級生。碇シンジが友人と呼べる数少ない人物の一人。
「ほんとにスマンかったシンジ!」
「もういいって」
これで五日目かな。なとど考えるシンジであった。
「本当にありがとう、お兄ちゃん」
この少女はトウジの妹。第三使徒の時にシンジが発見した少女。
「退院できて良かったね」
優しい笑みで少女に語り掛けるシンジ。
「うん!」
「しかし、ほんま驚いたでシンジがロボットのパイロットやったとわ」
どうやらトウジは謝るのを止めたようだ。
「ロボットじゃないよEVAって言うんだ」
トウジの言葉を訂正するシンジは微笑んでいる。
「エヴァ?」
「そう、人造人間エヴァンゲリオン」
「おっきかったんだよ、お兄ちゃん」
そう言って、両腕で大きさを表現するトウジの妹。
「そうかぁ、でかかったか。大きい事わええ事や。わしの弁当箱も大きい!」
「プッ、何それトウジ」
笑い出すシンジ。それにつられ少女も笑い出す。
「なんや知らんが、わしも笑っとくかい」
訳のわからないまま笑い出す鈴原トウジ。
シンジの病室は笑いにつつまれた。
<赤木博士の研究室>
研究室には二人。リツコとミサトがコーヒーを飲んでいる。
「リツコどう思う?」
「相変わらずマズイわよミサトのいれたコーヒー」
本当にまずそうに飲むリツコ。
「そうじゃなくて!綾波レイよ!」
私の炒れたコーヒーは美味しいと言わんばかりに訂正するミサト。
「綾波レイがどうかしたの?」
「謎が多すぎるのよ綾波レイって子に」
ミサトは、そう言ってコーヒーを机に置く。
「謎ね…確かに謎だらけね」
「でしょ、経歴不明、生年月日不明、感情の欠落、おまけに青い髪に赤い瞳、そして使徒まで倒しちゃうんだから」
指でレイの謎を数えながら話すミサト。
「それも驚異的なシンクロ率でね」
「それでねリツコ♪」
「無理よ」
間髪入れずに返答するリツコ。
「まだ何も言って無いじゃない」
「どうせミサトのことだからMAGIで調べて欲しいって事でしょう」
「さっすがリツコ、ご名答。だけど、なんで無理なの?」
「第三使徒との戦闘後すぐにMAGIで調べたのよ。…結果は該当する情報無し」
リツコは真剣な表情でミサトに答える。
「情報が無い?」
「そう、無いものは調べられないわ」
少しの間沈黙する二人。
「じゃあ、なぜMAGIが情報の無いようなレイを、青葉君が保護観察する事になったの?」
「青葉君の情報分析能力は一流よ、。つまり綾波レイの行動の分析に最適だから。それ以外には無いわ」
「へ、じゃあ信頼性とか?保護監察に適しているとか?関係無いの?」
呆気にとられ訊ねるミサト。
「何それ、全然関係無いわよ」
少し微笑みながら答えるリツコ。
「マヤめ~とっちめてやる」
いきり立ち出て行くミサト。
一人になった赤木リツコは使徒と綾波レイの遺伝子データを見比べる。
「綾波レイ…綾波レイ、使徒に限りなく近い人間…人類の敵か味方か…味方であって欲しいわね…」
そう言い終わり、コーヒーを一口飲む。
「まずいわ、やっぱり」
<オペレーター室>
青葉シゲルと日向マコトが話をしている。
「報告書進んでるか青葉」
「ああ、しかし嫌なもんだよ保護と称した監視だからな」
「ぼやくなよ、それも仕事だろ」
「仕方ないか」
そう言って青葉は肩をすくめた。
「しかし青葉、だいぶ腫れがひいたな」
青葉の顔には殴られたあとがある。
「ぶん殴った張本人が良く言うよ、まったく」
「あれは、悪かったって謝っただろ」
「ったく」
<一週間前、歓迎会での出来事>
青葉のマンションの居間。
葛城ミサト、赤木リツコ、日向マコト、伊吹マヤが来ていた。
裸のレイに青葉。
一同、声を失っていた。
「ま、待ってくれみんな、ご、誤解だ!」
「レ、レイちゃんも何か言ってくれ!」
「…何を言うの」
青葉は、弁解の余地を無くした。
「き、貴様という奴は見損なったぞ青葉!」
青筋を立てて殴りかかる日向マコト。
「青葉君って、ロリだったんだ」
とは、葛城ミサトの弁。
「MAGIのテスト早急に実施しなきゃいけないわね」
赤木リツコは本気で考えていた。
「…不潔」
軽蔑の眼差しで見下す伊吹マヤ。
「みんな~!誤解だ~!」
こうして、歓迎会は進んでいった。
<再び、オペレーター室>
「しかし、誤解が解けて良かったよな本当」
笑顔で話し掛ける日向。
「まったくだよ」
「で、レイちゃんとは、その後どうなんだ」
「相変わらずだよ、感情を表に出さない」
「…つらいな」
表情が真剣になる日向。
「あぁ…でもな最近学校に通い出しただろ」
「何かあったのか?」
「いや何にも、只なんていうのかな親の気持ちがわかるんだよな」
「どんな?」
「怪我をしないか心配になる」
「プッ、ハハハハハハ」
突然、笑い出す日向。
「笑うこと無いだろうマコト!」
ムッとした顔の青葉。
「これがハハ、笑わずにハハハ」
日向は腹を抱えて笑っている。
「もういい!赤木博士の所に行ってくる!」
そう言い残し出て行く青葉の手には、綾波レイに関する報告書が握られていた。
<シンジの病室>
鈴原兄妹はどうやら帰るようだ。
「じゃあな、シンジ」
「バイバイ、お兄ちゃん」
笑顔で手を振るシンジ。
「あっ、そう言えばなシンジ、転校生が来たで」
思い出したように足を止めシンジに話し掛けるトウジ。
「転校生?」
「そや、風変わりなやっちゃでほんまに、綾波レイっていうんやけどな、無口で無表情なんや」
「綾波レイ…」
考え込むシンジ。
「なんや、知っとるんか?」
「うん、名前だけは知ってる」
「そうか、ほなわしら帰るよって早う元気になれや」
「うん」
そう言って鈴原兄妹は病室をあとにした。
<病室廊下>
鈴原兄妹が出てくる。
「お兄ちゃん…」
「なんや?」
「碇のお兄ちゃん元気になるよね?」
不安そうな表情で兄に話し掛ける妹。
「なるにきまっとる!なってもらわんと貸しを返せへん!」
「そだね…」
「そや、すぐ元気になるて…」
シンジの友人はそういって妹と手を繋いだ。
<司令室>
ゲンドウと冬月が話をしている。
「碇、老人達に会いに行くのか?」
冬月がゲンドウに訊ねる。
「ああ、招待されたのだ断るわけにもいくまい」
「碇、わかっていると思うが」
「わかっている冬月、シナリオどうりだ」
ニヤリと笑うゲンドウ。
つづく
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