第八使徒を倒した後。
葛城ミサトはアスカと約束を守る為に、温泉宿に来ていた。
勿論、シンジも一緒に。
僕は僕で僕
(27)
<温泉宿。ネルフ御一行様と書かれた部屋>
カタカタカタ…カタ。
だだっ広い部屋でシンジが一人、学校で使用する端末を使っていた。
ミサトの出した宿題を済ませるために、シンジは温泉に入らずに部屋で宿題をやっていた。
カタ……カタ。
シンジのキーボードを叩く音が止んだ。
「…出来た」
シンジは微笑みながら呟いた。
(宿題も終ったし…これで、やっと。)
シンジは、いそいそと端末を自分のリュックサックに直すと温泉に入る準備をはじめた。
宿題が終ったことが嬉しいのか、温泉に入れることが嬉しいのか、どちらにしろシンジの顔は笑顔でほころんでいた。
「シンジ君、宿題終った?」
シンジが温泉の準備をしているとミサトが部屋の中に入ってきた。
ミサトは、まだ温泉に入っていないのか普段着の姿だった。
「あ、はい、何とか終りました」
シンジはミサトに宿題を終らせたことを笑顔で報告した。
「へ~、思ったよりも早く出来たのね。結構、シンジ君って勉強出来るんだ。」
ミサトはシンジに答えるように笑顔で言葉を返した。
「僕だけの力じゃないです。アスカにも手伝って貰いましたから」
シンジは少し申し訳無さそうな顔をしながら、ミサトに言った。
「ふ~ん、アスカがね。もしかしたらシンジ君に、気があったりして♪」
ミサトが冗談混じりにシンジをからかった。
シンジはミサトの言葉に思う。
(……アスカが僕を……まさかね。)
そう思って、シンジは少しでも期待した自分を自嘲する。
そして、シンジは少し寂しそうに笑いながら言った。
「そんな筈無いですよ。アスカは僕のこと嫌ってますから」
「は~。そんなんじゃ、何時まで経っても彼女が出来無いわよ?」
シンジの言葉を聞き、ミサトはため息混じりに言った。
「別にいいですよ。彼女なんか出来無くても。僕、なに不自由して無いですから」
シンジは自分の思っていることを素直に言った。
そして、言葉をつなぐ。
「僕は…父さんと一緒に暮らせるだけで満足です。……彼女まで望んだら罰が当たります」
ミサトはシンジの言葉を聞いて、少し寂しそうな顔をして思う。
(……父さんと暮らせるだけで満足…ね。そうね。シンジ君のお父さんは生きてるもんね……。)
ミサトの表情を見たシンジは、自分が何かいけないことを言ったのかと思い話しかけた。
「すみません、ミサトさん。生意気なこと言っちゃって」
シンジの言葉に気づくミサト。
「え、あ、別にシンジ君は生意気なこと言ってないわよ」
そして、ミサトは話を切り替える。
「それよりもシンジ君にも、気になる女の子って一人ぐらい居るでしょ?」
ミサトはシンジに`からかい´半分に訊ねた。
シンジは少し考えた。
(………僕が気になる女の子?…赤い瞳…青い髪…綾波…。
綾波が…気になる。
好きとか、そんなんじゃなくて………ただ、気になる。)
だが、シンジは自分の思いと裏腹の言葉を口にした。
「………いないと思います」
ミサトに話すシンジ。
シンジは自分の思いを口にしなかった。
シンジが、綾波を気になっていることは事実だった。
だが、それが綾波を女の子として気になっている事とは、少し違うと思ったからだった。
「嘘ね。お姉さんには白状しなさい♪」
ミサトはシンジの嘘を見破っていた。
その理由は女の勘……というのでは無く。ただ、シンジを`からかう´ことが目的だったから。
ミサトはシンジを素早く押さえ込むと、「コラッ白状しろ♪」と言いながら`くすぐり´始めた。
シンジはミサトの、くすぐり攻撃に苦しむ。
勿論、笑顔で。
「あはは、いませんったらいません。本当ですっ!あははは、止めて、あはは、下さいってば」
「素直に白状したら、許してあ~げる♪」
ミサトはシンジの笑顔を快く思った。
いつも戦闘などで見るシンジの表情と違い、ただの十四歳の少年の表情だったから。
「そ、そんな~」
シンジは懇願するような目でミサトを見た。
シンジの懇願する目に、ホンの少しイタズラ心が芽生えたミサトは口を開く。
「それとも……私のことが気になってるのかしら?」
「え?……えぇ~!!」
本気で驚くシンジ。
「私が教えてあげても良いのよ。女の子のことを訓練形式で♪」
ミサトがシンジの耳元で甘くささやいた。
シンジはミサトの言葉に、顔を真っ赤にした。
ミサトは、顔を真っ赤にするシンジを見ながら思う。
(ウブね~♪ホントに教えちゃおっかな♪)
「うわっ、ミサトさん!」
シンジはミサトに押し倒された。
勿論、ミサトは冗談半分である。
ガラッ。
突然、ふすまが開いた。
「ミサト、何やってんの!?」
浴衣姿のアスカだった。
アスカは、宿題をするシンジやネルフに連絡をいれるミサトを尻目に、露天風呂に入って来たところだった。
「あ、あら、アスカ?もう、温泉から上がったの?」
シンジの服を途中まで脱がしかけた手を止める。
そして、少し焦った表情でアスカに返事をした。
「先に訊ねたのは私よ」
アスカは青筋をピクつかせていた。
「あ、あはは、はは、誤解は禁物よ。何にもしてないんだから」
ミサトはアスカに焦りながらも説明しようとした。
だが、アスカの表情を変えることなく口を開く。
「………その状態で言えるの、ミサト?」
ミサトの状態は、仰向けのシンジへ馬乗りの態勢だった。
しかも、シンジの服を脱がそうとしている状態の`おまけ´つき。
自分の状態を悟ったミサトは、とりあえず笑った。
「なはは。じゃあ、シンジ君。後、よろしく♪」
冷めた笑いと共に、その場を去るミサトであった。
アスカと二人きりになったシンジは、アスカをチラッと見ながら思う。
(後、よろしくって…ミサトさん。あ~、完全に誤解されてるよ。)
アスカの激怒した表情に、逃げ出したくなるシンジであった。
シンジは取りあえず、衣服を正すことにした。
その様子を見つめるアスカは、不機嫌な表情で話しかけた。
「何やってたのよ。ミサトと?」
シンジはアスカの表情を見ながら呟く。
(アスカの表情……こ、怖い。…逃げちゃダメ…だよな。……やっぱり。)と思いながら。
「ミサトさんに強引に……」
「襲われたの?!ミサトの奴(殺す)!」
間髪入れずにアスカが声を上げた。
シンジはアスカの勘違いに、思わず笑って答えた。
「あはは、違う、違う。強引に好きな人が居るのか?って聞かれてたんだ」
「へ~、それで何て答えたの?」
アスかはミサトの質問に興味を持った。
「いないって答えたら、押し倒された」
シンジは事実を答えた。
実際、押し倒されたことは本当だったから。
アスカは、先程とは比べ物にならないぐらいに青筋をピクつかせて思う。
(……ミサト!………やっぱり殺すわ!)
シンジは、そんなアスカをよそに温泉に入る準備をしている。
そして、不意にアスカに話しかけた。
「アスカには好きな人っている?」
「へ?」
突然の質問に、アスカは素っ頓狂な声を上げた。
アスカはシンジの質問を聞き、顔を真っ赤にしていた。
少しの間だが、沈黙するアスカ。
シンジはアスカが黙っているので、申し訳無さそうに話しかけた。
「あ、いいや。ゴメン、こういうのって他人には言えないもんね」
そう言って、温泉に入る準備を終えたシンジは立ち上がる。
「じゃあ、僕も温泉に入ってくるね」
そう言い残し、シンジは部屋を出ていった。
一人、部屋に残ったアスカは、シンジの座っていた畳を`さすり´ながら思う。
(私の好きな人は…バカで臆病で…私のことを他人という人。
……でも………多分、私は好きみたい。悔しいけど……好きみたい。)
そして、シンジが出ていった方を見ながら思う。
(……そっか…あいつ……まだ好きな人いないんだ。)
<玄関の外>
玄関の近所で、真剣な表情のミサトが携帯で電話をしていた。
「それで、ハッキングの件はどうなったの?」
-ハッキングの事実は無かった…が事実になるみたいね-
電話の相手は、リツコだった。
ネルフの浅間山への派遣部隊は急遽日本支部に呼び戻された。
ハッキングの事件の事後処理をかねてだった。
「それにしても、一体誰が?」
少しの沈黙の後。
-知りたい?-
リツコの声は、どことなく楽しそうだった。
もしかしたら、母親のナオコに会えたのかもしれない。
「当然じゃない。ネルフに喧嘩売ってきたのよ。買ってやるのがスジってもんでしょ」
-怖いお姉さんね。でも残念ながら、私が帰った頃には解らなかったわ-
リツコは笑い声混じりにミサトに言った。
「ふ~ん、まあいいわ。リツコに解らないんじゃ、しょうがないしね。」
-あら、ミサトに、そう言って貰えるなんて光栄ね。それよりも、温泉楽しんでる?-
「あはは。シンジ君があんまり可愛い目で見るもんだから、つい押し倒しちゃった♪」
笑顔で頭を撫でながら話すミサト。
-ちょっと、ミサト!あなた三十にもなって-
プツ。
ミサトは電話を一方的に切った。
そして、不機嫌な表情で呟く。
「まだ三十前よ、リツコ……」
どうやらミサトには、三十という言葉がいけなかった様だった。
つづく
あとがき
ミサトに始まりミサトに終ってしまった。(笑)
しかし、今回は危ない展開だったかもしれませんね。う~ん、ミサトさんの訓練形式っていったい何?
作者にも解らないのが本音です。(笑)
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