マグマの中へ深く静かに潜行をはじめたエヴァ二号機。

二号機は第八使徒を使徒捕獲柵で捕らえた。

アスカは満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

僕は僕で僕

(25)

 

 

 


 

<仮設ネルフ本部>

 

「やりましたね、葛城一尉」

日向が安堵に満ちた表情でミサトに話しかける。

「そうね」

そう言って、日向に微笑んだミサトはアスカへと話し掛ける。

「アスカ、今から引上げ作業を開始します。使徒を落さないようにね♪」

冗談まじりにミサトは微笑んだ。

 

「そんなドジする訳無いでしょ」

そう言ってアスカは笑顔を見せた。

 

アスカの笑顔に緊張のとける仮設本部。

だが、次の瞬間に状況は一変した。

 

「なにっ?動いてる……?!」

仮設本部にアスカの焦り声が響く。

 

第八使徒は急激に羽化をはじめた。

ネルフの予想を遥かに上回る速度で。

 

仮設本部内に映し出される使徒の姿。

「まずいわ!羽化をはじめてしまった!」

リツコが声を上げる。

リツコの表情を見ながら、ミサトは決断した。

「作戦変更!使徒殲滅を最優先!アスカは撤退作業をしつつ戦闘準備!」

 

「了解!」

二号機の中でアスカは笑って返事をした。

まるで、使徒との戦闘を待っていたかのように。

 

使徒捕獲柵が第八使徒の手に砕かれる。

第八使徒の羽化した姿は、カレイに手の生えた形をしていた。

 

二号機は、ゆっくりと地上へと撤退作業をはじめている。

「襲いかかって来るのも時間の問題ね…戦闘準備と」

モニターに映る使徒を見つめながら、足元に装備されてあるプログ・ナイフを取ろうとした。

だが、D型装備の手はハサミ型の為、プログ・ナイフを取り損ねてしまった。

「…あ!しまった!」

落ちていくプログ・ナイフを見ながら、アスカが口惜しそうに舌打ちした。

 

「シンジ君!二号機に初号機のプログ・ナイフを!」

ミサトが二号機の状態を察し、地上で待機していたシンジに命令した。

 

「はい!」

ミサトの言葉と同時に初号機はプログ・ナイフをマグマの中へ投げ込んだ。

投げ込んだ後、シンジは熱くたぎるマグマを見て思う。

(アスカ…僕は…待ってる。………だから。)

 

 

<二号機と第八使徒の戦闘>

 

二号機は浮上しながら逃げることで精一杯だった。

アスカの戦闘力が、どうのとかいう問題ではない。

マグマの中という非常に特殊な戦場では、本来の力も充分に発揮出来無いというもの。

そんな状況の中でアスカは焦っていた。

 

二号機のモニターにミサトの顔が映し出される。

「アスカ、初号機がプログ・ナイフを投下したわ。……なんとか出来るわね?」

ミサトはアスカをこのピンチで挑発した。

 

ミサトの挑発に、ニヤリと笑うアスカ。

「やってやろうじゃない!」

アスカの表情から焦りが消えた。

 

 

<二号機と第八使徒>

 

第八使徒は浮上する二号機のまわりを旋回活動している。

そこへ、プログ・ナイフが落下してくる。

初号機が投げ込んだプログ・ナイフを掴み取る二号機。

その姿は隙だらけだった。

第八使徒は、その隙を見逃さなかった。

 

「!…しまった!」

アスカは声を上げた。

 

二号機は第八使徒の攻撃を受け、左脚部分の冷却パイプを砕かれてしまった。

アスカは冷静に、その事態に対処し左脚部分を切り離し、冷却処理を施した。

 

「凄い…この状況で口を開けるなんて」

マヤは素直に驚いた。

「…信じられない構造ね。捕獲できてれば」

リツコも素直に第八使徒の凄さを認め、捕獲できなかったことを悔やんだ。

 

リツコとマヤの会話を無視して、ミサトは冷静にモニターを見て声を上げる。

「アスカ、今よ!」

 

「こんちくしょおぉぉぉ!!」

ミサトの声を聞きながら、二号機は第八使徒へプログ・ナイフを突き立てた。

だが、マグマの中をも耐える第八使徒には、プログ・ナイフでは歯が立たなかった。

 

「固いのよ!このバカ使徒!!」

アスカは使徒に怒鳴った。

しかし、使徒に怒鳴ってもどうとなるものでもない。

 

その時、リツコがモニターを見て声を上げる。

「高温・高圧、これだけの状況の中を耐えているのよ。プログ・ナイフではダメだわ!」

 

地上にいる、初号機の中でシンジはリツコの言葉を聞いて思い出した。

搭乗前にアスカに教えてもらったことを。

そして、シンジは声を上げる。

「そうだ!」

 

同じ頃、アスカもリツコの言葉を聞いて思い出していた。

搭乗前にシンジに教えたことを。

そして、アスカも声を上げる。

「さっきのやつっ!」

 

二号機は突然奇妙な動きを見せ、左腕部の冷却パイプを切り離した。

そして接近してくる第八使徒へ狙いをすまし、パイプで口を塞いだ。

使徒の体内にパイプから冷却液が流し込まれる。

 

「熱膨張ね!」

リツコは気づき声を上げた。

 

リツコの声と同時に仮設本部内にアスカの声が響く。

「冷却液の圧力を三番にまわして、早く!」

 

「マヤ!」

リツコが指示する。

「はい!」

マヤが慌ただしくも正確にキーボードを叩く。

 

第八使徒へD型装備を維持する為の冷却液が流し込まれる。

第八使徒は苦しみもがきながら、D型装備につながっているパイプにしがみつく。

 

「このおぉぉぉ!!」

アスカは第八使徒のコアと見られる部分へ…冷却液を流し込んだ部分へとプラグ・ナイフを突き立てた。

次第に動きが鈍っていく第八使徒は、二号機へつながっているパイプを切り裂きながら沈み始めた。

 

「あ………」

アスカはホトンド切り裂かれたパイプを見て、それから使徒を見た。

使徒は生体反応を無くし沈んでいく。

そして、最後に残った一本のパイプはD型装備の重みに耐えきれずに……切れた。

 

ボコッ。

D型装備がマグマの圧力耐え切れずにへこむ。

静かに落下をはじめる二号機。

アスカは落ちていく二号機の中で呟く。

「せっかく倒したのに……ここまでなの?」

そして、寂しそうな表情を見せながら言葉をつなぐ。

「シンジ……上に戻れなかった…」

 

ガクン。

突然、二号機の落下が止まった。

 

何事かと上を見上げるアスカは気づいた。

初号機がD型装備無しでマグマの中に跳び込んでいることを。

D型装備をしっかりと掴まえる初号機を見るアスカ。

 

(シンジの……バカ。上で待ってるって言ったくせに……ホントにバカね。)

そう思って微笑みながら初号機へと回線を開くアスカ。

 

「シンジ……聞こえてる?」

初号機のモニターにアスカの微笑んだ表情が映る。

「うん、聞こえてる。…ごめん、待ちきれなかった」

そして、シンジも熱さを堪えてアスカに微笑み返して言った。

だが見た目にも、それが強がりであることが解る。

 

アスカは、そんなシンジに優しい微笑みを見せながら言った。

「アンタは臆病者じゃない……少なくとも私には臆病者じゃないわ…」

 

 

<ネルフ本部>

 

その頃、ネルフでは大変な事態が起きていた。

 

「あ、あの私は代理で…そこまで出来るかどうか自信が…」

女性オペレータが、うろたえて赤木ナオコに説明している。

「もう、いいわ!私がやります!」

ナオコは、いらついた感じで女性オペレータの席を奪う。

カタカタと、尋常じゃない速度でキーボードを叩くナオコ。

 

「メルキオール!ハッキングが始まりました!」

青葉が座っている席で、代理職員が声を上げた。

 

いつものメンバーは浅間山に向かっている為、代理職員が担当をしていた。

ハッキングという事態にリツコ・マヤ・青葉・日向の正常なメンバーがいないのは、正直ナオコには辛かった。

 

職員の声を聞き、ナオコは驚きと焦りの混じった声を上げる。

「!……はやい!」

 

そして、忙しげに近くに立っている女性オペレーターに声をかける。

「あなた、逆ハックぐらい出来るでしょう?!」

女性オペレーターは戸惑いの表情を見せて答える。

「でも…自信が…」

その言葉を聞き、ナオコは微笑んで言った。

「自信なんて後から付いて来るものよ。お願いするわ!」

そう言って席を立ったナオコは、少し右往左往しながら考える仕草を見せた。

 

(一体…誰が?何故?

 …そんなことよりも、今はハッキングを食い止めること。)

 

ある程度の結論をみいだしたナオコは口を開く。

「ロジック・モードを変更!シンクロ単位を十五秒単位で保つようにしてみて!」

 

驚きの表情でMAGI のモニターを見る職員。

「…と、止まった。ハッキング止まりました!」

 

職員の言葉を聞きナオコは口を開く。

「……ハッキングの速度が遅くなっただけよ。まだハッキングは続いてます。気を抜かないように」

ナオコにとってハッキングを止めることは容易だった。

なにしろ、彼女が基礎設計を立てたのだから。

 

ハッキングの速度に、ある程度の目途を見たナオコは職員に言った。

「……司令室に行って来ます」

 

 

 

つづく


(24)に戻る

(26)に戻る

 

あとがき

ホトンド、二号機の戦闘は本編と一緒なんですが、正直書きにくかったです。
自由に書けないので、ホント書きにくかったですね。三月中には第拾壱話に入りたいです。でも、無理かな。(苦笑)

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル