第八使徒は浅間山の火口の中で発見された。
だが、使徒は羽化を始めておらず対処法が求められた。
そしてネルフは決断した。使徒の捕獲作戦を開始すると。
僕は僕で僕
(24)
<浅間山、パイロット待機室>
今回の作戦は初号機と二号機だけの参加となった。
シンジとアスカはプラグスーツに着替え終わり、次の命令を待っていた。
次の命令とはエヴァへの搭乗の他に無い。
ちなみに、レイとマナはエヴァの改造と修復の為、第三新東京市での待機任務となった。
「シンジ、アンタさっきから何やってんのよ?」
シンジが学校で使っている端末とニラメッコをしていると、アスカが声を掛けた。
「え?ああ、ミサトさんの出した宿題」
アスカに気づき、シンジが答える。
チルドレン達は同級生達が修学旅行に行っている間に、ミサトから宿題を出された。
日頃、シンクロテストなどで遅れている学力を、少しでも取り戻す為だそうだ。
「アンタ、まだやってたの?あんな簡単な宿題」
少し呆れ顔でシンジに話すアスカは端末を覗きこむ。
「ああ、ここね。ここの熱膨張の問題は……と、これが答えよ」
アスカはシンジの端末に触れ、簡単そうに答えを打ち込んだ。
その様子を呆気に取られて見るシンジ。
「どう?簡単でしょ?」
シンジに微笑みながら話すアスカ。
「………アスカって僕なんかより、ずっと頭いいんだ」
シンジはアスカの学力が、自分とはレベルが違うことを知り呟いた。
シンジの言葉に少し寂しそうな顔をするアスカ。
「その`僕なんかより´って言葉…嫌い」
そう言って、近くの椅子に腰をかけたアスカは、シンジと向き合う形になった。
「どうして?」
シンジはアスカの言葉に訊ねる。
少しシンジの顔を見て、何かを考えたアスカは呟く。
「だって……別にいいわ」
アスカは何かを言おうとして、何気に止めた。
「そう」
シンジはアスカの言葉に一言返しただけだった。
「それよりも、シンジって随分余裕じゃない?作戦前に宿題なんて」
そう言って、アスカは微笑んだ。
「ハハ…逆だよ。余裕…無いんだ。余裕無いから、宿題…してるんだ」
そう言って、シンジは寂しそうに微笑んだ。
「………臆病なのね」
シンジの表情を見ていたアスカが、真剣な表情で呟いた。
シンジはアスカの言葉を聞いて呟く。
「……そうかもしれない」
<ネルフ本部>
マナとレイはネルフ内のプールにいた。
リツコもミサトも不在の為、マナの発案で暇つぶしに泳ぐことにしたのだった。
マナはボーっとレイの泳ぐ姿を見ていた。
(……綺麗…。綾波さんの泳ぐ姿って……。)
そう思って、レイの泳ぐ姿を目で追うマナ。
マナはレイの泳ぎを見て思う。
(……泳ぐっていうよりも…水に溶け込んでるみたい。)
マナがレイを見ていると、後ろから突然声をかけられた。
「霧島さん、お久し振りね」
誰?と思って振り向くマナは驚いた。
「ヤシマ作戦以来かしら?」
マナが振り向くと、そこには微笑みを浮かべた赤木ナオコが立っていた。
「赤木博士!どうしてここに?!」
マナは一瞬、戦自に戻されるのではないか?という不安が頭によぎった。
不安げな表情でナオコを見つめるマナ。
「どうしたの、そんな顔して?私の顔に何かついてる?」
ナオコはマナの表情を見て話しかけた。
「あの…私を戦自に呼び戻しに来たんですか?」
マナは辛そうな表情でナオコに問う。
「え…?」
マナが何を言ってるのか解らないナオコは少し考えた。
そしてマナが何を言っているのか気づいたナオコは、笑いながら言った。
「ピンポーン、只今から霧島マナさんは戦自に復帰することと相成りました♪」
「やっぱり…」
悪い予感が当ったとばかりに気落ちするマナ。
「ウソよ、霧島さん♪」
マナの様子を見ていたナオコは笑いながら言った。
「はい、ウソ……!…ウ、ウソなんですか~!!」
マナは、驚いた表情を見せる。
「ごめんなさいね、霧島さん。あんまり霧島さんが勘違いしてるもんだから…ついね♪」
そう言って、ナオコはイタズラっ子の様な微笑みを浮かべた。
「ヒドイです、赤木博士」
怒ったふりをしながらも微笑むマナ。
「……明るくなったわね、霧島さん」
マナの表情を見て、ナオコが優しい微笑みを浮かべながら言った。
「赤木博士も、何か前より優しくなった気がします」
そう言って、マナは微笑んだ。
バシャ。
二人が楽しげに話をしているとレイがプールから出て来た。
レイまで二人からは少し距離がある。
「彼女が…綾波レイさんね」
綾波レイを見つめながら、ゆっくりとナオコが呟く。
「はい、そうです。もしかして、赤木博士もネルフに入るんですか?」
マナがナオコに訊ねた。
「今日付けでね。これからもヨロシクね、霧島さん」
マナに微笑んで答えながらも、ナオコは思う。
(綾波レイ……ユイさん。……似すぎてるわ。)
<司令室>
ゲンドウと冬月が話をしている。
「碇。ナオコ君に召集命令でも出したのか?」
冬月がゲンドウに問う。
どうやら、ゲンドウと冬月の二人は赤木ナオコのことについて話しているようだ。
「ああ、メールを出した」
ゲンドウが答える。
「それでか……」
冬月はゲンドウの言葉に納得するかのように呟く。
ゲンドウは、ゆっくりと口を開く。
「だが…私が出したのは召集命令ではない」
ゲンドウの言葉に少し考える冬月。
「……では、なぜナオコ君が?」
冬月はゲンドウに訊ねる。
「…私の知る所ではないということだ」
そう言って、白い手袋を軽く触りながら言葉をつなぐ。
「…とにかく、彼女の好きにさせればいい。私に彼女を拒否する理由は無いからな」
そう言い終わった後、ゲンドウはニヤリと笑った。
<浅間山、ネルフ仮設本部>
二号機のD型装備の点検作業も終わり、一段楽しているネルフの面々。
初号機は角が邪魔だったので、D型装備を装備できず、陸上で二号機の支援となった。
「それにしても、ミサト。何でシンジ君達に宿題出したの?」
「そうですよ。少しぐらいレイちゃん達を休ませても支障無いんじゃないんですか?」
リツコと青葉がミサトに訊ねる。
「……う~ん、チョッチね。私なりの思いやりかな」
ミサトは気まずそうに答えた。
「葛城一尉の思いやりって変わってますね」
マヤが会話に入ってくる。
「そうかしら?」
ミサトは、そう言って言葉をつなぐ。
「私ね。シンジ君やアスカに…もちろん、本部に残った二人にも、戦闘だけじゃ無いって教えたかったのよ」
ミサトは優しそうに微笑みながら言った。
「つまり、戦闘だけを考えるなってこと?」
リツコは、ミサトへ少し考える仕草をしながら問う。
「そうね、それもある。でも、その後のこともよ」
そう言って、少し遠くを見るミサト。
「その後のことって何ですか?」
青葉は話のスジが見えず、ミサトに問う。
「にぶいわね、青葉君。シンジ君達は、これからも生きていくのよ。使徒を全て倒した後も」
ミサトは、微笑みながら青葉へ説明した。
「そうですね。使徒を倒したら…自分の道を自分の足で歩いて行くんですから…」
マヤはミサトの言葉に感慨深げに話す。
「そういうこと。その為には…」
ミサトはシンジ達のこれからを考えながら、ゆっくりと口を開く。
「まず、勉強ってことね」
リツコはミサトの言葉を微笑みながら、つないだ。
「ビンゴ!さっすが親友ね♪」
そう言ってミサトは楽しげに微笑んだ。
戦闘前のひととき、ネルフ仮設本部は穏かな空気に包まれた。
ちなみに、ミサト達の会話に日向は入ってこれなかった。
日向は感動しっぱなしだったから。
そして、日向は思う。
(葛城さん。貴方は、やっぱり最高だ!)
<戦闘前、浅間山>
二号機が下降準備をしていると、上空を国連の戦闘機が旋回行動をしていた。
初号機の中のシンジが戦闘機の存在に気づき、ミサトに訊ねる。
「ミサトさん、あの戦闘機なんですか?」
「ああ、アレね。作戦失敗のとき、ココを爆撃するのよ」
ミサトは簡潔に伝えた。
「……父さん…父さんが言ったんですか?」
シンジは真剣な表情で訊ねた。
「いいえ、要請したのは私。でも、私はシンジ君達を信じてる。この意味わかるわね?」
ミサトはシンジへ問う。
「はい…作戦、必ず成功します」
シンジは自分に言い聞かせるように言った。
シンジは思う。
(必ず…必ず、生きて帰る。)
「ミサト、準備OKよ」
アスカの顔が初号機のモニターにも映し出された。
「了解。アスカ、ココいい温泉があるんだって。戦闘後に一っ風呂浴びて帰るわよ♪」
「了~解。楽しみにしてるわミサト」
アスカはミサトの言葉を心得ていた。
`必ず生きて帰って来るように´と言っていることを。
「アスカ…頑張って」
シンジはアスカへモニター越しに言った。
「臆病者に励まされちゃ、私も終わりね」
そう言って、アスカは微笑んだ。
短い間だが沈黙する二人。
「…上で待ってる」
シンジは真剣な表情でアスカに言った。
「わかった…じゃ、またね」
そう言って、優しく微笑みながらモニターを切るアスカ。
「OKミサト、はじめていいわ」
アスカが元気良く声を上げた。
「使徒捕獲作戦開始!」
つづく
あとがき
第拾話は、この二人ですね。他の組み合わせは、設定を考えると間に合わないです。
JAは大破させましたし、零号機も改造したいですから(笑)。
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