青葉が送ったメール。

青葉が赤木ナオコへメールを送ったのには理由があった。

理由は数日前に戻る。

 

 

 

僕は僕で僕

(23)

 

 

 


 

<数日前、ネルフ>

 

オペレータールームで青葉とマヤの二人が、何やら険悪なムードで話をしていた。

 

「無理よ、私に先輩を裏切るような真似は出来無い…」

マヤは辛そうな表情で青葉に言った。

「何もコードを教えろって言ってるんじゃないんだ。俺に少し協力して欲しいだけなんだ」

そう言ってマヤに詰め寄る青葉。

 

マヤは顔をうつむかせ青葉の顔を見ようとしない。

気まずい沈黙の中、青葉が口を静かに開いた。

 

「……頼む」

 

青葉がMAGI のコードを知りたがっていることを、マヤは箱の中身を見るまで気づかなかった。

なぜ気づいたか?

それは、青葉から貰った箱の中身…マイクロチップの情報だった。

マイクロチップには、独自に青葉が調べ上げた綾波レイに関する情報が詰まっていた。

その情報には欠落している部分が多々あった。

そしてマヤは気づいた。青葉がMAGI へアクセスしたいことを。

 

この二人は、MAGI にすら綾波レイの情報が無いことを…いまだ知らない。

 

マヤはゆっくりと顔を上げ、詰め寄る青葉へ話した。

「無理…無理よ。たとえ私が協力したって先輩には敵わない…」

そう言って、青葉から離れるマヤ。 

青葉には、離れていくマヤを止めることが出来なかった。

「マヤ……」

離れるマヤに、青葉は呟くだけだった。

 

(ゴメン…青葉君。私に先輩を裏切ることなんて……。その前に、私が先輩に敵うはず…!)

マヤは、うつむき思いながら青葉と距離を取ろうとした。

だが、何かを思い出したのか、急に足を止めるマヤ。

 

そして青葉に向かってマヤは口を開く。

「一人いる…。先輩に勝てるかもしれない人が…一人いるわ」

 

これが、青葉が赤木ナオコへメールを出した理由だった。

 

 

<赤木ナオコ宅>

 

ナオコは、娘のリツコへの返信のメールを書き終えるところだった。

「…じゃあ、またねリッちゃん」

そう呟きながら返信するナオコは微笑んでいた。

「さてと…」

そう呟きながら、顔つきが真剣になるナオコ。

ナオコは残り二通のメールを見つめていた。

 

(これは…読まないほうが身のためね。)

ナオコはゲンドウのメールを読まずに削除した。

 

ナオコは、ゲンドウのメールを読むことが正直怖かった。

読んでしまうとリツコの母親に戻れなくなるかもしれない。

そんな不安がナオコにはあったからだった。

 

そして、残り一通のメールを見る。

(一応、読むべきかしら……。)

そう思いながらナオコは青葉のメールを読み始めた。

 

(ふ~ん、ネルフの青年が私に協力を…ね。若いっていいわね。…でも無理…ん、何かしら?)

そう思いながらメールを閉じようとしたナオコは、メールに添付されたファイルがあることに気づいた。

(私に協力を依頼する理由…ってところね。)

ファイルを見つけたナオコは、そう思い不敵な笑みを浮かべた。

 

 

<学校、2-A>

 

学校は、休み時間だった。

何事も無く平和な休み時間、2-Aの生徒達は修学旅行の話に花を咲かせていた。

だが、そんな話に無縁な生徒もいる。

チルドレン達だった。

 

マナはシンジと楽しげに話をしていた。

「ねえ、シンジ君は胸の大きい子の方が好き?」

マナが少し顔を赤くしながらシンジに訊ねる。

「な、何言ってんだよマナ!」

シンジは顔を赤くしながらマナに話す。

 

「わしは胸の大きいほうが好きや」

「俺は大きさよりも形だな」

トウジとケンスケが二人の会話に入ってきた。

「鈴原君と相田君には聞いてないでしょ」

ムッとした顔で、トウジとケンスケに話すマナ。

「なんやい、シンジばっかし。男性全体の評価を基準にせんかい」

「まったく、トウジの言う通りだ。胸に関して俺達はプロだからな」

そう言って胸を張るケンスケ。

「どうせ二人は覗きで磨いたプロでしょ。私、知ってるんだから二人が水泳の時間に女子を覗いてたの」

マナがジト目で二人を見る。

「いかん!トウジ俺達用事があったんだった!」

「そやった!ほんなら、そういうことで!」

そう言って逃げるように立ち去る二人。

「逃げたわね」

マナが二人を見ながらニヤリとした。

 

二人が立ち去った後、マナはシンジの方に顔を近づけて訊ねる。

「ね、シンジ君は胸の大きい子が好きなの?」

マナの顔がアップで近づき、少し緊張しながら考えるシンジ。

 

「う~ん…僕は、どうでもいいかな」

シンジは正直に答えた。

実際、シンジにとって胸で人を好きになるなんて想像できなかった。

 

「ありがとう、シンジ君♪」

シンジの言葉を聞いて、マナがシンジに抱きついた。

 

 

アスカはシンジとマナを見つめていた。

(あの二人…仲いいわね。付き合ってんのかしら?もし…もしも、付き合ってるとしたら…私は)

そんなことを考えながらアスカはシンジの笑顔と言葉をダブらせ思い出す。

 

「少なくとも僕には必要だよ」

 

(………嫌…嫌かもしれない。………私…シンジのこと…。)

アスカは、そこで考えるのを止めた。

好きという言葉を考えることが、とても怖く感じたからだった。

いまだに、アスカは加持のことを引きずっているのかもしれない。

 

(最近、変よね…私。一人でいると…いつもシンジの笑顔と言葉が頭の中を通りすぎていく…。

そう……シンジが気になる。アイツの言葉と笑顔が私の頭の中を通りすぎていく…。

でも、嫌な感覚じゃない。

むしろ…心地いい感覚よね。

アイツの笑顔と言葉が私の中にあるってことは……。)

 

そう思った後、アスカは優しく微笑んだ。

シンジを見つめながら。

 

 

レイは一人で本を読んでいた。

「綾波さん」

突然、声をかけられるレイ。

「何?……」

顔を上げて声をかけた人物を確認するレイ。

声をかけた人物は洞木ヒカリだった。

ヒカリは浮かない顔をしていた。

「綾波さんって、胸…小さいほうよね?」

ヒカリは浮かない顔でレイに訊ねる。

 

ヒカリが、なぜ浮かない顔をしているかというとトウジの言葉を聞いたからだった。

ヒカリはトウジに少なからず好意に近いものを抱いていた。

そのトウジが「胸の大きい子が好きや」などと言ったものだから、ヒカリは浮かない顔をしていた。

ちなみに、ヒカリの胸は大きいほうではない。

ヒカリは胸の大きさが比較的に近いレイになら…と思って話しかけたのだった。

 

「………」

レイはヒカリが何を言っているのかを理解できずに、ただ黙っている。

「ごめんね、変なこと聞いちゃって」

そう言って、ヒカリは`ため息´をつきながら言葉をつなぐ。

「あのね、もし…好きな人が胸の大きい人が好きって言ったら綾波さん、どうする?」

ヒカリはレイに訊ねた。

 

「……人は…胸を好きになるの?」

少し沈黙した後、レイが逆にヒカリに訊ねた。

 

「え?…人は胸を?…」

ヒカリはレイの言葉に戸惑い考える。

 

(…私が鈴原を好きになった理由は…胸なんかじゃなかった。

ただ…鈴原が優しいところを見ただけ…。)

 

そう思った後、ヒカリはレイに言った。

「たぶん…違うと思う」

「……そう。じゃあ、問題無いわ」

レイは、そう言って再び本を読み始めた。

 

「…!」

レイの言葉にヒカリは思う。

 

(綾波さん…私に教えてくれたの?

人を好きになることに胸なんか問題無いって。人が人を好きになる理由は胸なんかじゃないって。

……ありがとう、綾波さん。)

 

「ありがとう」

ヒカリはレイに笑顔で言って、その場を去った。

 

レイは顔を上げ、ヒカリの背を見ながら思う。

(ありがとう…感謝の言葉。私に言ったの?………あの人…不思議な人。)

 

レイはヒカリに何も言っていないのに、「ありがとう」と言われたことを不思議に思った。

 

 

<喫茶店>

 

山岸マユミは加持の伝えた時間どおりに喫茶店に来ていた。

以前、加持と初めて会った場所だった。

 

「待たせたね、山岸さん」

加持がマユミの正面に座った。

「あの、そんなに堂々としてもいいんですか?」

以前の加持と態度が違うことに戸惑うマユミ。

「ああ、もういいんだ。君の退職願は受理されたからね。君は今は一般人だよ」

そんなマユミを見て、微笑みながら話す加持。

加持はマユミにチルドレンの監視の必要がなくなったことを告げた。

 

「え?」

加持の言葉を理解出来ないマユミ。

「君にはネルフを辞めてもらったんだ。俺の権限で」

 

加持の権限には当然バックがあった。

バックとはネルフの総司令と副司令だった。

加持はネルフ日本支部と日本政府との交渉を引き受けることで、マユミの職を解いてもらったのだった。

 

「そんな!」

マユミは席から立ち上がり、声を上げ加持に話す。

「生活費の件は心配要らない。今まで以上にネルフが負担する」

マユミをなだめるように、加持が言った。

「…でも、勝手です!」

マユミは納得がいかない口ぶりだ。

「怒るのも無理はない。だが君には行って欲しい所があるんだ」

加持は冷静にマユミの目を見据えて言った。

 

加持の目を見て席につくマユミ。

 

そして、マユミは静かに口を開く。

「……辞めさせた理由。聞かせてもらえないんですか?」

 

しばらく沈黙した加持は口を開く。

「理由か…。簡単に言えば、君がチルドレンと同じ学校に通っていることだ」

「…わかりません。そんな理由」

マユミは、うつむきながら加持の言葉を拒絶した。

「わからないのも無理はない。いずれ事情は説明する。それじゃダメかな?」

加持は、そう言ってマユミの顔を見つめた。

「行くことを受理したら…ってことですか?」

マユミが加持に問う。

「…そういうことになる」

加持はマユミに、そう答えた。

 

マユミは加持の言葉に思う。

(……受理したら。でも私に拒否する権利は無い。

費用をネルフが負担してくれるって言うんだったら…行くしかない。)

 

「…わかりました。それで、どこに行けば?」

マユミは、真剣な表情で加持に訪ねた。

 

加持は、ゆっくりとマユミへ答える。

「ネルフ…アメリカ支部だ」

 

 

 

つづく


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あとがき

マユミ…何かこうシビアですね。
それにしても、今回シンジは、たったの二言。う~ん、どうにかしないとね。(笑)
本編では第拾話になるんですが、長くなりそうな気がします。でも、もう長いですね。(笑)

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