青葉とレイは屋台で人が来るのを待っていた。

その人の名は伊吹マヤ。

青葉はマヤに渡したいものがあった。

 

 

 

僕は僕で僕

(21)

 

 

 


 

<屋台>

 

どこにでもあるような屋台で青葉とレイが椅子に座っている。

二人は中華ソバを注文し出来上がるのを待っていた。

 

「はい、お待ち」

屋台の主人が中華ソバを二人前作り上げ二人の前に置いた。

 

「じゃあ、食べて待ってよっか?」

青葉がレイに訊ねる。

コクリと頷くレイ。

 

二人は中華ソバを食べはじめた。

 

 

<屋台の近所>

 

もうすぐ屋台に着くという所で、マヤと日向がもめていた。

 

「ね~、日向君本当に付いて来るきなの?」

困った顔をしているマヤ。

「当然だ。青葉には貸しがある」

マヤの言葉に動じることなく、堂々としている日向。

「私が立て替えておくから……ダメ?」

青葉が日向から借りた二万円を立て替えると言うマヤ。

だが、日向の意志は固かった。

「それはダメだ。金は青葉に貸したんでマヤからは貸りてないからな」

日向の言うことに一理ある。

「はぁ~」

日向の言葉に諦めたように、ため息をつくマヤ。

 

マヤは思う。

(青葉君、電話の様子がいつもと違ったのが気になるんだけど…仕方ないわね。)

 

「わかった。じゃあ行きましょ」

マヤは不安を隠すように微笑み、日向に言った。

「そうそう、最初っからそう言ってくれれば良かったんだよ」

マヤに微笑んで返事をした日向は思う。

(待ってろ青葉!金に汚い男がどうなるかを教えてやる!)

どっちが汚いんだか…。

ま、とりあえず二人は青葉のもとに向かった。

 

 

<屋台>

 

青葉とレイが中華ソバを食べている。

「……!」

レイはソバを食べながら一つのことに気づいた。

驚いたような表情でソバの中を見つめるレイ。

「どうしたのレイちゃん?」

急に動きの止まったレイを見て話しかける青葉。

「これ…あげる」

レイはソバの中からチャーシューを箸でつまんで、青葉のソバの中にいれた。

「ウッ……ありがとう」

それを見ていた青葉は、言葉に詰りながらも礼を言った。

 

青葉は思う。

(レイちゃん…肉嫌いだったんだよな。俺としたことが失念だったな。)

青葉は、そう思った後レイを見る。

黙々と中華ソバを食べているレイ。

 

(どっから見ても普通の女の子だよな…。多少、感情表現が下手なだけで…。)

レイを見ながら、そんなことを思う青葉。

 

しばらくレイを見つめる青葉。

 

中華ソバを黙々と食べていたレイは、青葉の視線に気づいた。

「…………」

レイはソバを食べるのを止めて青葉を見つめる。

「ど、どうしたのレイちゃん?」

レイに見つめられて焦る青葉。

「………嫌いなのね」

寂しそうに話しかけるレイ。

「嫌いなもんか、誰もレイちゃんのことを嫌ってないよ!」

レイの言葉を聞いて、力強く答える青葉。

「私じゃない…それ」

レイは青葉の間違いを正すようにチャーシューを指差す。

「へ?…あ、ああチャーシューのこと?好きさ大好きだよ。俺はチャーシューを愛してるんだ!」

青葉は自分の間違いを気づき、照れ隠しにとんでもない事を言いながら、レイがくれたチャーシューを食べようとした。

 

「こんばんわ~。チャーシューを愛してる青葉君♪」

「異常な愛情だぞ青葉」

そんなときにマヤと日向が屋台に到着した。

 

 

<何処かの部屋>

 

加持は一人、応接室のような部屋でソファーに腰を下ろしていた。

誰かを待っている素振りを見せながら監視カメラを探そうとする加持。

 

(どうやらカメラは無いようだな…しかし遅い。……ま、あの内容じゃ当然だけどな)

 

加持が懐から煙草を取り出そうとした時、一人の男が入ってきた。

「待たせたね」

男は年の頃は六十を過ぎた辺りだろうか、顔に深いしわが刻まれている。

「非常に興味深い内容だった」

男はそう言って加持に向き合う形でソファーに腰を下ろした。

「それで返答は頂けますか?」

加持が男に問う。

「……ネルフ日本支部という組織…信ずるに値するかな?」

加持の問いを無視し男が逆に問う。

「碇司令は信じろと言っているのでは無く、日本支部の行動を支援して欲しいと言うことだと思いますが」

加持は男に返答した。

「そうだったな……だがリスクが大きすぎる。我が日本国は国連を敵に回すことになる」

男は眉間に深いしわを寄せながら言った。

「……総理。これは日本国だけの問題ではありません。全人類の問題です」

加持は男に総理と言った。

そう、この男は日本の総理大臣だった。

「全人類の問題を極秘裏に日本だけで片付ける…か」

総理と呼ばれた男は短く笑って言った。

「総理、返事は頂けますか?」

加持が総理に詰め寄る。

 

二人の間に沈黙が流れる。

 

総理はソファーから立ち上がり、加持を見つめ言った。

「この問題は、しばらくの間凍結する。君は今までどおり、アメリカ政府へチルドレンの派遣を担当すればいい」

そう言い残し、総理と呼ばれた男は部屋を去った。

 

一人残った加持は、やるせない気持ちになっていた。

(総理はゼーレの存在を無視しようって腹か…そして俺には派遣か…クソッ、ただの誘拐じゃないか!)

そう思い加持は言葉を吐いた。

 

「クソッ、これだから政治家って奴は!」

 

 

<屋台>

 

左から日向、青葉、レイ、マヤの順に座って会話している。

  

「ったく聞いてないぞ!お前まで来るなんて」

日向をにらみながら話しかける青葉。

「そんなことを言うか青葉?人の貸した金を忘れておきながら。あ、オジさん、焼酎おかわりね」

ジト目で青葉を見ながら話す日向。

「しっかり元を取ろうとしてるじゃないか!オジさん、俺も!」

青葉は手もとの焼酎を一気に飲んで日向に言った。

「お、いいね青葉君の飲みっぷり。流石だよな。そう思うだろマヤ?」

青葉が飲みだし怒りっぽくなってきたのでマヤに振る日向。

流石に作戦部長を補佐するだけの男である。

 

屋台の親父が、ソバに指を突っ込んで出したことを気にしていたマヤは、二人の話を全然聞いていなかった。

「え、私?うん、そう思うわよ」

でも、とりあえず返事をしなければマズイと思い返事をした。

「そ、そうかぁ~」

マヤに誉められ、少し照れる青葉。

「イヨッ、憎いねッ、この」

日向は、ここぞとばかりに青葉をおだてた。

「ハハハッ、いや~そんなこと無いんだけどな」

青葉は完全に日向にのせられていた。

「どんどんいけ青葉、男らしいところを見せてくれ」

さらに、おだてる日向。

「よし、ガンガンいくぜ!」

そう言って、再び親父が注いだ焼酎を飲み干す青葉。

 

そんな青葉を見て、日向はニヤリと誰にも気づかれずに笑った。

日向は思う。

(フッ…『バックレー作戦』成功だ。あとは俺が飲み食いしてばっくれるだけだな。)

 

 

一方レイは、青葉が飲む焼酎を奇妙に思いながら見つめていた。

「どうしたのレイちゃん?」

マヤが青葉を見つめるレイに話しかけた。

「あれ…何?……楽しそう」

レイがマヤに訊ねる。

「ああ、あれは焼酎っていってお酒の一種よ。」

マヤはレイに、そう答えた。

「お酒は楽しくなるもの……」

レイは呟く。

「ま、人それぞれだけどね。あの二人の場合は親友だからかもしれないし」

ピクリと`親友´と言う言葉に反応したレイは呟く。

「親友……親しい友」

「そう、心を許せる友人ね。レイちゃんにもいるでしょ親友と呼べる人は?」

マヤはレイに訊ねた。

 

マヤの言葉にレイは思う。

(親友…心を許せる人。私の心を許せる人………。…私と同じ感じがする人……でも、あの人は違う。

私の心を許せる人……碇君?)

 

「………碇君」

レイはマヤの問いに小さく答えた。

「へ~、そうなの。レイちゃんの親友は碇君ね。碇君って、とっても素直そうな子だもんね」

そう言ってマヤは微笑んだ。

 

レイはマヤの声が聞こえていないのか、一人呟く。

「心を許せる人…碇君」

レイの呟く表情は、まるで微笑んでいるようだった。

 

 

<二時間後、青葉達の帰り道>

 

青葉とレイとマヤが歩いて会話をしている。

 

「いいの青葉君、日向君置いてきて?」

マヤが不安そうに訊ねる。

「大丈夫だよ、アイツも給料日だから」

そう言って青葉は微笑んだ。

 

なぜ、日向ではなく青葉がココにいるかと言うと、理由はただ一つ日向は青葉よりも酒が弱かったからだった。

なぜ、日向が飲み出したかと言うと、青葉のたった一言だった。

「最近、葛城さんとは、どうなんだ?」

『バックレー作戦』は、青葉の一言によって阻まれた。と後日の日向の弁。

 

「あ、そうそうマヤ。後でコレ見てくれよ」

青葉がマヤに一センチぐらいの箱を渡した。

「何これ?」

マヤは不思議に思い青葉に訊ねた。

「秘密だな」

そう言って青葉は微笑む。

「ふ~ん、秘密ね。なんか面白そうね♪」

マヤは、そう言って楽しそうに微笑んだ。

 

(……面白そう…か。…見た後でも言ってくれるかな?)

青葉は、そう思った後、何気にレイを見た。

レイは夜空を見ていた。

 

「レイちゃん、何か見える?」

青葉がレイに訊ねる。

レイは青葉の問いに静かに答える。

 

「………夜が見える」

そして、言葉をつなぐレイ。

 

「………夜だと碇君には…会えない」

 

 

 

つづく


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あとがき

ども、MASAKIです。これで話のスジが少し見えてきたと思います。ホントに少しですけどね。(笑)

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