意識を無くす瞬間にマナが思い出したもの。
それは、いつか見たシンジの悲しい微笑。
そして、マナは気を失った。
僕は僕で僕
(17)
<ネルフ作戦本部>
「霧島さん!」
ミサトが叫んだ。
ミサトは誤算をした。
JAの耐久性、戦闘力を高く見積もりすぎていた事。
そして、零号機・二号機と距離を取り過ぎた事。
「マヤ、JAの神経接続を解除!」
無意識下でのダメージを減らそうと、リツコが的確に処置を下す。
リツコの命令と同時にキーボードを叩くマヤ。
「ダメです!信号、受けつけません!」
「そんな筈ないわ、もう一度やってみて!」
もう一度信号を送るマヤ。
「ダメです!まったく信号を受けつけません!」
マヤの報告を聞いたリツコは一度モニターを見る。
モニターに映し出されるJA。
JAは使徒に痛めつけられている。
そして、JAの胸部にあるコアが剥き出しになろうとしていた。
「JA胸部損壊!」
「パルス逆流しています!」
刻々と報告される被害状況。
「霧島さん……」
リツコがJAを見ながら呟き思う。
(このままでは…目覚めてしまう。)
<パイロット待機室>
「俺の頼みって言うのは」
加持がシンジに頼み事を伝えようとしていた。
そこへドアが開く。
「加持リョウジだな」
黒服の男二人が加持とシンジを見据え入室してきた。
「そうだが、君たちは?」
加持は、あくまでも冷静に答える。
薄笑いを浮かべながら。
「諜報部のものだ。同行してもらう」
黒服の男の言葉は拒否権すら与えない威圧的なものに聞こえた。
「男と付き合う趣味は無いんだが…仕方ないな」
そう言って加持は男たちに背中を向けシンジの方を向く。
そして、シンジの耳元に顔を寄せ囁く。
「頼みは、また今度な」
そう言って顔を離した後、加持はシンジに微笑む。
そして、男たちの方へ振り向き言い放つ。
「同行してやるよ」
黒服の男たちは何も言わずに加持の両脇につく。
そして、加持を連れ待機室から出ていった。
一人待機室に残されたシンジは訳が解らないと言った顔で呟く。
「…なんだったんだ」
<二号機と零号機の戦闘>
JAのもとに駆けつけた二号機と零号機は見た。
使徒に痛めつけられるJAを。
JAが痛めつけられる様を見たアスカは激怒した。
「このッ!よくも!よくもマナを!」
二号機が使徒(甲)(乙)に向かい走りながらパレットガンを連射する。
二号機の行動を見て零号機は走る速度を緩める。
「作戦無視……」
アスカの行動を見て呟くレイ。
使徒はパレットガンを避ける。
パレットガンの弾はJAに直撃する。
「しまった!マナ!」
アスカはJAに気を取られた。
二号機の背後に回り込む使徒(甲)(乙)。
使徒(甲)が二号機に攻激をかけようとした瞬間、零号機のパレットガンが火を吹く。
虚をつかれ背中にパレットガンの直撃を受ける使徒(甲)。
「作戦開始準備……」
アスカのモニターにレイの顔が映る。
アスカは使徒から距離を取る。
そしてJAを一瞥した後、話す。
「OK、レイ!作戦開始!」
<ネルフ作戦本部>
冬月は浮かない顔していた。
使徒との戦闘に苦戦してることも原因の一つだが、それだけではない。
ある男が気になっていた。
(ゲンドウの奴、私一人に彼のことを面倒見させる気か?)
冬月が考えていると内線が入る。
「冬月だ」
「うむ、彼を案内してくれ」
「そこではマズイ、地下エレベータ前でいい」
「私が直接話をする」
そう言って内線を切る冬月。
辺りを見まわした冬月は近くの者に声をかける。
「少し留守にする」
そう言って冬月は作戦司令部から去った。
<使徒との戦闘>
使徒(甲)(乙)に向き合う二号機と零号機。
「三、ニ、一!発射!」
アスカが掛け声を上げる。
パレットガンを同時に連射するエヴァニ体。
同時に避ける使徒(甲)(乙)。
パレットガンを投げ捨て使徒を追うエヴァニ体。
二号機は(甲)。
零号機は(乙)を追っている。
使徒に追いつき同時に蹴りをいれるエヴァニ体。
少し零号機の蹴りが遅れた。
だが、ほぼ同時に仰向けに倒れる使徒(甲)(乙)。
仰向けになった使徒に馬乗りになるエヴァニ体。
そして、プラグナイフを使徒のコアめがけて突き立てようとした瞬間。
二号機の腕が背後から掴まれた。
「ナッ!?」
アスカが驚声を上げた瞬間には二号機は宙を舞っていた。
地面に叩きつけられる二号機。
零号機はプラグナイフを突き立てた。
だが、様子がおかしい。
「……再生してる」
使徒の細胞は再生を始めようとしていた。
何故かと二号機を見るレイ。
答えはそこにあった。
二号機の代わりにJAがいた。
目を光らせながら。
<ネルフ作戦本部>
「何!何が起こってるのリツコ!?」
ミサトはJAの行動に驚いていた。
マナは気絶している筈なのに動いているJA。
驚かないほうが不自然だろう。
「暴走!間違いないわ!」
リツコは驚きながらモニターでJAを確認している。
「暴走!?」
ミサトは驚きモニターでもう一度JAを見る。
モニターではJAが使徒(甲)のコアを叩き潰そうとしている。
「エントリープラグ内の霧島さんの容態は!?」
リツコが問う。
「ダメです!モニターできません!」
マヤは悲痛と緊張の入り混じった顔で報告する。
そしてリツコは気づく。
もう、やれるべき事は一つしか残っていないことを。
マナの無事を祈るしかないことを。
そして呟くリツコ。
「……霧島さん」
その間、モニターを見ていたミサトは気づく。
(JAを利用して…二点同時攻撃を仕掛ければ……いける!)
そして、ミサトは叫ぶ。
「レイ!今よ!」
<使徒とエヴァ>
「了解」
零号機が使徒(乙)のコアへプログナイフを突き立てる。
ほぼ同時にJAの使徒(甲)への攻撃が重なる。
一瞬、使徒が光った後、爆風が舞いあがる。
弾き飛ばされる零号機とJA。
使徒は跡形も無く消滅した。
「クッ……使徒」
弾き飛ばされた後、零号機の中でレイが状況を確認している。
使徒は殲滅したようだと確認する。
そして、肩の荷が降りたかのように安堵の息を吐くレイ。
そして、もう一つのことに気づく。
エヴァの足音が聞こえる。
「!……」
JAがゆっくりと歩き零号機へと向かっていた。
<地下エレベータ前>
加持が一人、エレベータ前にいる。
諜報部員達は姿を消していた。
そこへ一人の男が近づいてくる。
「随分早かったですね。使徒はいいんですか?」
加持が男へ話しかける。
「我々は今だけを考えているのではない」
「では、私は先のことですか?」
「そういうことだ」
男はそう言うとエレベータの扉を、ネルフマークの付いた真っ赤なカードで開けた。
「乗りたまえ」
男は加持にエレベータへ乗るように促す。
加持は男の顔を見て話しかける。
「その前に一つ伺ってもいいですか?」
加持の言葉に頷く男。
「なぜ、私を」
男は短く微笑み答えた。
「君が利用できるからだ」
男の言葉に少し沈黙した後、加持は話す。
「……了解です。副司令」
そして、二人はエレベータの中に消えた。
つづく
あとがき
次回は、もっとシンジを出します。
主人公ですから、一応。(笑)
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