マナのセリフの後、ケンスケのナレーション。

-マナとトウジの変装は見事なもので、ヴェニス大公以外は完全に騙されてしまいました。
それもその筈でしょう。まさかマユミの妻であるマナが、シンジの窮地を救う為にヴェニスに来るなど、夢にも思わぬことですから。-

 

 

 

僕は僕で僕

(107)

 

 

 


 

「訴えの方を聞かせて頂こう」

ナレーションが終ると、マナがアスカに向かって口を開いた。

アスカは面倒臭そうに立ち上がると、ベラリオと名乗った裁判官(マナ)に話し始める。

「私がヴェニスで商売を営んで、かれこれ数十年。…ま、こうして長いこと商売をやっていると色々ありましてね。
不義理なもの、金払いの悪いもの、公然と嘘をつくもの、色々なものに出会う訳です」

そこまで話すと、アスカは後ろ髪を軽く撫でながら言葉をつなぐ。

「かくて私の人格は淘汰された。…とまでは言いませんが、商売上の問題を抱える度に、私の心は良心と呼ばれるもの無くしていくのです。
騙され、裏切られ、公然と侮辱される度にね。……それゆえ、騙さない、裏切らない、侮辱を拭えるものが欲しいのです」

そう話した後、アスカは真摯な瞳でシンジを見つめた。

アスカの瞳に見据えられたシンジは、小さく驚いた表情を見せていた。

裁判が始まってからのセリフ、アスカのセリフが全て即興になっていることに。

アスカのセリフを聞き、マナは机に片肘をつきながら呟く。

「それでシンジ殿の心臓を、担保として要求したという訳か…」

コクリ。

マナの方に向き直ると、アスカは頷いて答えた。

アスカの頷きを見た後、マナは目を閉じ、一呼吸分の息を吸い込んだ。

そして、息を吐き出しながら口を開く。

「…アスカ殿の要求していることは、ヴェニスの法律に叶っている」

「それでは?!」

若い裁判官(マナ)の言葉に、アスカは嬉々とした表情で声を上げた。

その声に、マナは手で静粛にするように促し、ゆっくりと話し始める。

「叶っている。…が、慈悲というものが君にも存在するだろう。…どうだろう?それをシンジ殿に与えてやっては?」

「また、それですか?…もう聞き飽きましたがね」

アスカは露骨に嫌気のさした表情で話した。

マナは机の上の台本を覗き見た後、アスカに向き直って話す。

「慈悲というものは、無理強いするべきものではない。慈悲は、天から地に降りそそぐ慈雨のようなものだ。
まず与えるものを祝福し、そして受けるものを祝福する。二重の祝福なのだ」

そう言って一息ついた後、マナは言葉をつなぐ。

「これこそ大きなものであって、神の力に近づける方法なのだ。……我々は窮地に立たされると、思わず神に祈る。
それは同時に、他人に慈悲を与えることを教えているのではないか?…アスカ殿には、シンジ殿に慈悲をかけてやる気は無いか?」

マナの言葉は、周囲の人々を沈黙させ、感服させ、静かな感動を与えた。

アスカはマナの言葉を聞き、顔を俯(うつむ)かせ、何かを考える仕草を見せていた。

その様子に、マナは不思議そうな表情で思考する。

(…あれ?……アスカ、セリフを忘れちゃったの?)

マナの思考も当然であろう。

次のセリフは、アスカが慈悲を拒絶する運びになっていたのだから。

周囲が奇妙な沈黙で様子を見守ると、アスカは`ゆっくり´と顔を上げる。

そして、不敵な微笑みを見せながら口を開く。

「分りました。訴訟を取り下げましょう」

 

その言葉に、客席よりも驚いた表情を見せる、舞台上の面々であった。

 

 

<客席>

 

客席では、芝居の内容を知るリツコが驚きの表情を見せていた。

あまりにも予想外な芝居の展開に。

 

「何?そんなに驚くようなことなの?」

リツコの表情に、ミサトが怪訝な表情で訊ねた。

その言葉を聞き、リツコは冷静さを取り戻しながら答える。

「え、ええ。こんな展開じゃないから、本当の話は……」

「ホントなら、どんな展開になんの?」

リツコの言葉に、ミサトは訊ねた。

リツコは舞台に視線をやりながら話す。

「アスカが裁判官の提案を突っぱねるのよ。それで話が展開していくんだけど…」

そう言って、リツコは自分の頬に指で触れた。

リツコの話を聞いたミサトは、納得がいったという表情で話す。

「ふ〜ん、…ってことは、アスカの独断先行ってこと?」

「シンジ君達の表情を見てると、それが妥当な線ね」

舞台を見つめながら、冷静な分析を下すリツコであった。

そんな二人の背後から、女性の楽しげな声が聞こえてくる。

「赤木技術部長」

その声に、リツコは舞台を見つめている為、声だけで答える。

「何かしら、洞木さん?」

そう言った後、自分の言葉に気づいたリツコは、小さく驚いた表情を見せて振り向く。

「…洞木さん?!」

リツコが振り向くと、そこには青葉の隣に座っている、コダマの姿があった。

申し訳無さそうに書類を差し出しながら、コダマは口を開く。

「すみません。どうしても、この書類のサインを頂きたかったものですから…」

「え、ええ。…それにしても良く分ったわね。私達がここに居ること」

コダマから書類とペンを受け取ると、リツコは書類にサインしながら訊ねた。

リツコの言葉を聞き、コダマは苦笑しながら話す。

「妹から文化発表会の話を聞いてましたから」

「…洞木さんの妹って、山岸さんの隣に座ってる娘(こ)でしょ?」

二人の会話を聞き、ミサトが微笑みながら訊ねた。

コダマは少し驚いた表情を見せて答える。

「は、はい。そうですけど、どうして解ったんですか?」

「媒酌人としては当然よん♪」

コダマの驚いた表情に、ミサトは楽しげな笑顔を見せて笑った。

そんなミサトの言葉に、リツコはコダマに書類を返しながら、サクッと一言。

「一人身の媒酌人って、どんな気分?」

ピタッ。

リツコの言葉に、ミサトは笑顔を凍らせた。

そして、背中に暗い影を落としながら呟く。

「…諸行無常の気分」

「何の話ですか?」

二人の会話の意味が解らないコダマは、微笑みながらミサトに訊ねた。

コダマの無邪気な冒険者的発言に、コダマの隣で撮影していた青葉が、焦り混じりに口を開く。

「あ、あ、芝居に進展があるみたいッすよ!」

その言葉に、一同は舞台に視線を移した。

青葉の機転により、コダマの身の危険は寸前の所で回避された。

 

 

<再び、舞台>

 

「ね、念の為、もう一度聞かせて頂けるかな?」

マナが驚きの表情を見せながらも、アスカに訊ねた。

一同の驚きぶりに苦笑すると、アスカは答える。

「はい。何度でも言いましょう。私の訴状を取り下げます。…この場、この時、この瞬間に」

アスカの言葉に、マナは戸惑いの表情で思考する。

(…アスカ、何考えてるの?)

そんな思考をしながらも、マナはアスカの真意を探ろうと口を開く。

「では、その理由をお聞かせ願いたい」

「歳若い裁判官様の御言葉、心に染み入りました。……それが理由では不服ですかな?」

含み笑いのような笑顔を浮かべると、アスカはマナに訊ね返した。

アスカの問いに、マナは思わず素で答える。

「不服じゃないけど…」

「ならば御承認くださいませ。私の訴訟を取り下げる願いを」

だが、そんなことは気にせず、アスカは即興の芝居を続けた。

その言葉に、マナは怪訝な表情で思考する。

(絶〜対ッ何か企んでる。怪しい、怪しすぎる!)

そう思考した後、マナは力強く口を開く。

「却下します。心無い訴訟の取り下げなど認められません!」

「はぁッ?!アンタ何言ってんの?私が訴訟を取り下げてやるって言ってんのよ!」

マナの言動に訳が判らないといった表情を見せ、アスカは素の話し方で声を上げた。

その言葉を聞き、マナも声を上げる。

「善意が認められません。悪意の彩りが感じられます!」

「悪意って何よ!悪意って!」

思いっきりムッとした表情を見せるアスカであった。

だが、そんな表情に意に介した所を見せず、マナは感情のままに話す。

「訴訟を取り下げた後、何を望んでいるのか?事実を述べなさい。さもなければ、即刻死刑です」

「死、死刑ってアンタ、無茶苦茶じゃないッ!私が訴えてんのよ!」

その言葉に驚きながらも、アスカは抵抗を試みた。

マナは話す。

「問答無用です。私は裁判官です」

「ちょ、ちょっとぉ〜。司令…じゃなかった。大公様、こんなことが認められるんですか?!」

アスカは困った表情を見せると、側で静観しているゲンドウに、これからどうするべきかを訊ねた。

ゲンドウは短く沈黙した後、静かに答える。

「…狂人と恋人、そして詩人は、全ての想像力の塊と称すべきもの」

「?」

その言葉に、アスカは意味が判らないといった表情を見せた。

ゲンドウはシンジを見つめて話す。

「シンジ。お前が決めろ。……自分の言葉で、自分の想ったことを話せ」

「ぼ、僕が?」

突然、自分に振られたことに対して、シンジは困惑の表情を見せた。

「後は任せる」

シンジの表情を見ると、ゲンドウは一言発して舞台を後にした。

一同は沈黙してゲンドウの退場を見送るだけだった。

 

しばらくの静寂の後、マユミが小声でシンジに話しかける。

「…碇君のお父さん、素敵ですね」

「え、何で?」

マユミの言葉に、シンジは小さく驚いた表情で訊ね返した。

マユミは微笑みながら話す。

「一つ前の言葉。シェイクスピアの別な話からなんです」

「そうなんだ……」

意外な父の側面に、シンジは呟くだけだった。

 

 

<舞台裏>

 

「私の出番は、これで終わりだ」

舞台裏に来ると、ゲンドウは大公の衣装を脱ぎ、ケンスケに手渡しながら話した。

衣装を受けとると、ケンスケは戸惑いの表情で訊ねる。

「は、はい。…でも、いいんですか?シンジの写真?」

その言葉に短く微笑むと、ゲンドウは客席に向かって歩き出しながら話す。

「…シンジは気づかせてくれた。私が何の為に、何を取り戻すべきかを」

「?」

ゲンドウの言葉に、ケンスケは意味が判らないといった表情を見せた。

そして客席に戻るゲンドウの背中を見て、ケンスケは思い出したように口を開く。

「あっ…。出演、ありがとうございました!」

「……」

ケンスケの感謝の言葉に沈黙で答えると、ゲンドウは自嘲するような微笑を浮かべて思考する。

(私がシェイクスピアを…。……笑われるな。)

 

 

<舞台>

 

ゲンドウの去った舞台では、マナがシンジへ問いかけていた。

無論、大公役のゲンドウが、シンジの決定に全てを委ねたことを含めて。

 

「では、シンジ殿に問います。アスカ殿の訴訟取り下げ願い、受理しても宜しいかな?無論、拒否すると思うが」

「余計なことは言わなくていいの!シンジ、アンタはどうなの?!」

マナの余計な言葉に注意した後、アスカはムッとした表情でシンジに訊ねた。

シンジは席を立ち、こめ髪を掻き俯(うつむ)きながら口を開く。

「え、あ、うん……」

そう呟いた後、シンジは戸惑いの表情で思考する。

(芝居なら拒否すれば……。…でも父さんは、自分の言葉って。……僕は…僕は。)

「碇君…自分の思ったことを」

複雑な表情で思考するシンジに、レイが静かに話しかけた。

「…うん」

その言葉に頷いて答えると、シンジは意が決したのか、顔を上げてマナ達を見つめながら話す。

「僕は裁判を続けたい…と思う。せっかくの文化発表会だから…。だから…駄目かな?」

シンジの言葉は、舞台上のシンジの言葉ではなく、自分自身の胸のうちの言葉だった。

その言葉を聞き、アスカは頭をポリポリと掻きながら、仕方無いといった身振りで口を開く。

「ま、大公様の御墨付きでは、反論の余地も無いようですな。宜しい。では、私の話を聞いた後で、却下して頂くことにしましょう」

シンジの言葉に共感したのか、アスカは自分の役の言葉遣いで話した。

そして舞台中央に歩み寄ると、客席に向かって口を開く。

「私が訴訟を取り下げるといった理由は只一つ。
……シンジ殿が私を受け入れると言ったからだ。あれは口約束だったが、誓ってくれた筈だ。…そうだな、シンジ殿?」

「その言葉に偽りは無い?」

アスカの発言を聞き、マナは頬を指で触りながらシンジに訊ねた。

シンジは戸惑いつつも答える。

「…あ、はい。誓いました。…アスカ殿を受け入れると」

その言葉を聞き、アスカはシンジの瞳を見つめ、寂しげな微笑を浮かべながら話す。

「正直に言おう。私はそれだけで充分だった。担保など飾りに過ぎなかった。……ただ受け入れてさえくれれば」

シンジが俯(うつむ)いて思考する仕草を見せたのを確認すると、アスカは言葉をつなぐ。

「だが、彼女は私を心には受け入れてくれなかった。上面だけの、まるで飾りのように私を受け入れたのだ。
借金の期限が近づく度に、彼女は私のもとに訪れた。…ただの詫び程度の挨拶の為だけにね」

そして、アスカは自分の両肩を抱きしめながら話す。

「……孤独、孤独、酷く孤独だった。
受け入れると言っておきながら、私と上面で会話する彼女の言葉を聞く度に、私の心は閉ざされてしまった。…この痛みが分るかね?」

「口に出さねば、分る道理も無いと思うが?」

アスカの言動を見定めたマユミは、静かな微笑を湛えながら話した。

その言葉を聞き、アスカは声を上げる。

「黙れ!偽善者!そもそもは貴様が元凶ではないか!愛だ恋だの為に、自分を装って出かけた偽善者めがッ!!」

「何をッ!!」

売り言葉に買い言葉、二人はいきり立ち睨(にら)み合った。

そして、少しの間を置くと、アスカは落ち着いたのか、侮蔑するような笑みを浮かべて口を開く。

「図星を言われて動揺したと見える。……愚かだな、激情に身を委ねた人間は」

「このッ!」

アスカの言葉に、マユミは拳(こぶし)を握り締めて歩み寄ろうとした。

カンカンッ。

険悪な雰囲気を察し、マナが木槌を打ちつけ場を収拾した。

そして、二人に話しかける。

「静粛に!静粛に!二人とも口を慎み、席に戻りたまえ。落ち着いて話を整理しようではないか」

 

 

<舞台裏>

 

舞台裏では、ケンスケが芝居の成り行きを見守っていた。

手には純白の衣装のようなものを手にして。

ケンスケは舞台袖から覗きながら思考する。

(収拾できそうだ…。……それに越したこと無いしな。)

 

 

<客席>

 

「あの…リツコ?」

アスカ達の芝居を見ていたミサトは、考える仕草を見せながらリツコに訊ねた。

リツコは淡々と訊ね返す。

「何?」

「アスカの役って、ホントは善玉なの?」

ミサトはアスカのセリフを聞き、どうにも善人か悪人かの判断が難しかったようだった。

リツコは答える。

「まさか。最初の紹介通り、非道な商人だった筈よ。本来の話から言えば、だけど」

「そんじゃ、こっからはオリジナルってことか……」

納得がいったという表情で頷くミサトであった。

その頷きに、リツコは苦笑しながら話す。

「そういうことかもね」

二人の会話が一段落すると、背後に座っているコダマが話しかける。

「あの…そろそろ、私はネルフに戻ろうと思います。…妹のセリフまでと思ったんですけど」

「完全に喰われちゃってるもんね。他の子達に」

コダマの言葉を聞き、ミサトは苦笑いを見せた。

「あら、待ってればセリフが有ると思うわよ。…司令、構いませんか?」

リツコはコダマの方を向いて話すと、ゲンドウに訊ねた。

舞台から目を逸らさず、ゲンドウは一言。

「…好きにすればいい」

その言葉を聞き、ミサトは楽しそうに話しかける。

「ラッキーね。碇司令の御墨付きよ♪」

「そういうことでしたら」

ネルフの総司令の許可を貰い、コダマは安心した表情で話した。

そんな穏やかな会話の中、青葉が口を開く。

「あの…話の腰を折って悪いんですけど、俺、大切なことに一つ気づきました」

「え、何?芝居のこと?それとも別な」

ミサトが訊ねようとすると、青葉は頬の筋肉が緩みきった表情で話す。

「レイちゃんって、何着ても似合うんじゃないかと…」

青葉の言葉に、ミサトは眉をヒクつかせた。

チョットでも真剣な思考した自分への腹立ちも含めて。

そしてミサトは、そのままの表情でリツコに訊ねる。

「……ねぇ、リツコ。青葉君、埋めてもいい?」

ミサトの言葉を聞くと、リツコは親指を倒しながら周囲を見回した。ゲンドウは芝居を見つめ、コダマは引きつった表情で固まっている。

二人の姿を見て、リツコは人差し指と中指を倒し、ミサトへと口を開く。

「…賛成1、条件付賛成2で可決されました。どうぞ、ミサトの御自由に」

 

 

<舞台>

 

「では話の続きを聞こうか、アスカ殿」

場が落ち着きを取り戻すと、マナがアスカに向かって口を開いた。

アスカは椅子に座った状態で訊ねる。

「…どこまで話しましたかな?」

「姉様に訊ねた所まで。…痛みが分るのか?と訊ねた所」

アスカの問いに、レイが答えた。

レイの言葉を聞き、アスカは思い出したように口を開く。

「そうそう、そうだった」

そして席を立ち上がると、舞台中央に向かって言葉をつなぐ。

「…多重なる孤独感というものが、私を支配した時、私はもう一つの約束を思い出したんだ。体の一部分という担保をね。
正直、小躍りしたよ。まだ彼女との関わりが持てる。……まだ望みは残っていると」

「それが姉様を訴えた理由ですか?」

アスカの言葉を聞き、レイが訊ねた。

アスカは目を閉じて静かに答える。

「…それだけだ。それ以上でも、それ以下でもない」

「だが納得がいかないな。なぜ、それが訴状を取り下げる理由になるのだね?」

話を聞き終えたマナは、机に片肘をつきながら訊ねた。

アスカは微笑を浮かべながら答える。

「気づいたのですよ。裁判官殿の御言葉でね。『慈悲はまず与えるものを祝福し、そして受けるものを祝福する』でしたかな?
…だから、私は彼女に慈悲を与えます。二重の祝福になることを祈って」

アスカの言葉には、聞いた者に、正論であり正しきことに思わせるだけの説得力を持っていた。

マナは少し困った表情を見せると、隣に座るトウジに訊ねる。

「どう思う?鈴原君」

「ワシに聞くなや。難しい話は、ワシ判らん」

確かにトウジに分る筈の無い問いだった。

そのことに気づき、マナは引きつった表情で思考する。

(…聞く相手が悪かった。)

そう思考した後、マナは周囲を見回し、アスカの真意が判りそうな人物を探した。

そして、ヒカリを瞳に映すと口を開く。

「ヒカリ殿、こちらへ」

急にマナから名前を呼ばれ、ヒカリは小さく驚いた表情を見せた。

そして表情を消すと、マナのもとへと歩み寄り小声で訊ねる。

「…どうしたの?」

「あのね。どう思う?アスカの言葉」

マナは単刀直入に訊ねた。

ヒカリは少し考える仕草を見せながら話す。

「ある意味、真実。ある意味、虚栄。…そんな気がするけど」

ヒカリの言葉は、配役上でのアスカの思考みたいなものだった。

その言葉を聞き、マナは話す。

「そう言うことじゃなくて、素のアスカが何を考えて、今みたいな言葉を口にしたのか知りたいの」

「……難しいよね。そういったことって、アスカにしか分らないと思うし」

少し沈黙すると、ヒカリは正直自分には理解できないことを話した。

ヒカリの言葉を聞き、マナは落胆した表情でセリフを口にする。

「だよね。…分りました。下がってください」

 

ヒカリが席に戻る中、マナはアスカの思惑を計ることを諦めた。

そして、ヒカリが席に着くのを確認すると、アスカに向かって口を開く。

「アスカ殿の訴状取り下げ願い、受理しましょう。その上で、新たなる問題を片付ける事にします」

「英断で御座いますな」

アスカはニヤリと笑いながら、マナの言葉に答えた。

その表情を無視すると、マナはアスカに訊ねる。

「…アスカ殿に訊ねたい。訴状を取り下げた今、シンジ殿に何を望む?」

「今一度、私を受け入れる意志があるか、問い正すことを」

アスカは席に着いた状態で、シンジを見つめながら話した。

その言葉を聞き、マナは話す。

「その権利は充分にある。シンジ殿、お答えを」

「は、はい…」

マナの言葉に、シンジは戸惑いつつも席を立たった。

そして、アスカに一礼して言葉をつなぐ。

「…えっと、とりあえず慈悲をありがとうございます」

手でシンジの礼を制止させると、アスカは口を開く。

「礼には及ばない。それよりも返答を」

その言葉に、シンジは短い間だが沈黙した。

そして、ゆっくり口を開く。

「……答える前に、一つ質問しても宜しいでしょうか?」

「私にか?」

シンジの問いに、アスカは自分のことかを訊ねた。

コクリ。

シンジは頷いて答えた。

二人の会話を聞き、マナは話す。

「シンジ殿の発言を認めよう。どうぞ質問を述べて下さい」

「…私がアスカを受け入れるということは、愛するということなのでしょうか?」

少し俯(うつむ)き加減にしながら、シンジはアスカに訊ねた。

アスカは不敵な表情で微笑むと、頬杖をつきながら話す。

「同義のものだと思ってくれて構わない。…あ、あと付け加えて言わせて貰えば、君にその意志が無ければ、私は一生罵るだろう。
君を契約不履行の不義の人物として、ヴェニスの街中にね」

『!』

アスカの言葉に、一同は驚きの表情を見せた。

マナはシマッタ!という表情で思考する。

(それが魂胆だったんだぁ!…そういう手で来るなんて。……こうなったら、計画変更!)

そう思考したマナは、机の上にあるセリフを一ページ破きだした。

ビリビリ。

そして破いた紙を更に破くと、そこに何やら書き始めた。

 

「………」

一方、返答を迫られたシンジは沈黙し、どう答えるべきかを思考していた。

そんなシンジに、マユミとヒカリが話しかける。

「君が罵られることになっても、僕は君の味方だ。たとえ世界中が敵に回ったとしても、僕が味方しよう」

「シンジ様。心無き愛など、この世には存在しません。どうか勇気ある拒絶を」

二人の言葉の後、レイがシンジを見つめながら口を開く。

「…姉様の好きにするといい。……アスカのことを受け入れるのも、拒絶するのも、姉様の自由」

「!」

レイの言葉を聞き、シンジは何か気づいたような表情を見せた。

そして優しげな表情で口を開く。

「ありがとう。…僕の自由にしてみる」

「………別に」

シンジの謝礼の言葉に、レイは頬を桜色にしながら目を逸らした。

そして、シンジはマナの方に顔を向け、力強く話しかける。

「裁判長様、私の気持ちは決しました。発言の許可を」

「え、あ、どうぞ」

破いた紙に書き終えた所に話しかけられた為、マナは少し焦り混じりに答えた。

マナの返事を聞くと、シンジは話す。

「アスカを受け入れることは、私には出来ません」

『!』

シンジの言葉に、一同は驚きの表情を見せた。

その中でも一番驚いたアスカが、シンジにツカツカと歩み寄りながら声を上げる。

「シンジ!自分が何言ってるか分ってんの?!」

「分ってる。私は人の風聞で君を傷つけた愚か者ってことが…。……こんな私に貴方を受け入れる資格が無いことも。
アスカ…どうか、私の心臓を1ポンド切り取ってください」

アスカの問いに、シンジは俯(うつむ)き加減に話した。

自虐的な発言に、アスカは堪らず声を上げる。

「バカッ!なに自己悲観的になってんのよ!
私がアンタを必要としてんのよ!ここまで私に言わせといて、自分を傷つける必要なんて無いじゃない!」

「それは無理です。…必要とされても、必要とされる資格が無いから」

アスカの声に、シンジは俯(うつむ)いたまま静かに話した。

パンッ。

「最低ッ!そこまで性根が腐ってるとは思わなかったわ!!」

シンジの言葉に堪りかね、アスカは言葉よりも手を先に出した。

叩かれた頬を触りながら、シンジは声を上げる。

「な、何すんだよ!芝居なのに本気で打(ぶ)つことないだろッ!」

「は?」

その言葉に、アスカは呆けた顔を見せた。

シンジは話す。

「芝居に決まってるじゃないか!僕なりに解決法を考えて言ってみたんだよ!」

「な、何で、そんな紛らわしいことすんのよ?!」

シンジの意が判らず、アスカは焦り混じりに訊ねた。

シンジはムッとした表情で話す。

「アスカが最初に即興で始めたんじゃないか!」

「う゛……」

シンジの正論に、アスカは低い呻き声を発するだけだった。

 

カン、カン。

「はい、静粛に。裁判が荒れ気味のようなので、私から一つ提案を出したいと思います」

アスカとシンジの会話がある程度終わると、マナが木槌を打ちつけて注目を集めた。

そして先程作った紙を手に、楽しげに言葉をつなぐ。

「シンジ殿は一体誰を受け入れるべきなのか?この紙の中から引いて貰いたいと思いま〜す♪」

「く、クジ引きぃ〜?!」

マナの提案に、アスカは驚きの表情を見せた。

そんなアスカを他所に、マナは楽しげに話す。

「もしもアスカ殿の名前を引いたら、アスカ殿を受け入れる。それ以外でしたら、その名前が書かれている人を受け入れる。
そんな感じでやってみたいと思います」

「そんな話、誰も認めないわよ!」

マナの言葉に、アスカは腕組みして断固拒否の姿勢を見せた。

「僕、それでいいよ。このままじゃ芝居にならないし」

シンジは進まない芝居を考慮してか、賛成の意思を口にした。

その言葉に続き、他の子供達も賛成の意思を示す。

「シンジがええっちゅうんならワシも」

「私も」

「それでいいです」

「…別に構わないわ」

賛成の意思が多数を占めると、マナは満面の笑みを浮かべて用紙をシンジに差し出す。

「はい、民主的に結論に達しました。シンジ殿、どうぞ引いてください」

「う、うん……!」

マナの手元から紙を一枚取ったシンジは、そこに書かれている文字に驚きの表情を見せた。

そんなシンジの表情を楽しむように、マナは笑顔で訊ねる。

「何て書いてますか?」

シンジは引きつった表情で口を開く。

「……マ、マナ」

『!』

一同が驚きの表情を見せると、アスカがムッとした表情で声を上げる。

「そんなの道理が合わないじゃない!マナはマユミと結婚したんでしょ?!」

アスカの言葉に、マナはニヤリと不敵な笑みを見せた。

そして、ゆっくりと口を開く。

「……甘いわね、アスカ。…結婚したなら、離婚できるのよ」

そう話した後、マナは声を上げて言葉をつなぐ。

「マユミ殿の婚約者のマナ殿は、昨日離婚しています!!」

マナの突拍子な発言に、マユミは乾いた笑い声を立てる。

「はは…そうなんですか」

「もう支離滅裂ね」

マナの言葉に、ヒカリは肩をすくめて呆れた表情を見せた。

そんな中、マナと書かれた紙を手に、どうするべきかを思考していたシンジはポツリと呟く。

「あのさ…僕、女役じゃないの?」

「ナイスよ、シンジ!」

シンジの呟きに、アスカは声を上げた。

だが、マナには通用しなかった。

「この際、細かいことは気にしな〜い♪」

 

マナの突発的な暴走が進む中、トウジは机の上に置かれた紙を一枚手に取った。

そして、驚きの表情で思考する。

(…ゲッ!全部、霧島の名前になっとる。)

 

 

<客席>

 

「生々しい芝居ですね…」

予想のつかない芝居の展開に、コダマが呟いた。

その呟きに青葉が答える。

「うん、リアルな展開だよな。妙に現実的で」

二人の会話を聞き、ミサトが楽しげに話す。

「修羅場って奴よ」

ミサトの言葉を聞き流しながら、リツコは舞台を見つめて呟く。

「それは別としても、これって終るのかしら?」

「………」

そんな周囲の会話を他所に、ゲンドウは舞台を見つめている。

そして舞台で変化が起こる。

コダマは舞台を見つめながら口を開く。

「あ、誰か出てきました」

 

 

<舞台>

 

ザワザワ。

客席からはザワつきに似た声があがっていた。

それもその筈である。

今まで出番の無かったケンスケが、純白の衣装を着て舞台に登場したのだから。

 

「何よ、相田?芝居中よ」

ケンスケの姿を見て、アスカがムッとした表情で話しかけた。

「黙らっしゃい。私は相田などでは無い。私は神様じゃ」

そう話したケンスケの姿は、神様らしき身なりをしていた。

ケンスケの言葉に、マナは不思議そうな表情で訊ねる。

「神様?そんな配役有ったっけ?」

「数々の不埒な言動、見るに耐えぬ行為じゃ」

だが、ケンスケはマナの問いを無視し、勝手に芝居を進めた。

その行動に、アスカは呆れ顔で一言。

「何言ってんの?バカじゃないの」

「うんにゃ。私は神様じゃよ」

アスカの言葉に、ケンスケは`と呆けた´返事をした。

その言葉に、アスカはムッとした表情で声を上げる。

「神様じゃなくて、私はバカじゃないのって言ったのッ!」

「そうじゃ、私は神様じゃよ」

だが、ケンスケは`と呆けた´返事を返すだけだった。

そんなケンスケに、マナもムッとした表情を見せて訊ねる。

「相田君、聞こえてるんでしょ?」

「勿論、私は神様じゃよ」

だが、やっぱりケンスケは`と呆けた´返事を返しただけだった。

そんなコントのような芝居が続く中、ケンスケのセリフに気づいたトウジが、誰にも聞こえない声で呟く。

「ドリフ…」

徹底的にマナ達を無視したケンスケは、舞台中央に立って口を開く。

「では、裁きを行う」

そして、シンジを指差しながら言葉をつなぐ。

「碇シンジ、姦淫罪にて島流し」

「島?…どこ?バリ島?」

サッパリ意味の判らないシンジは、素っ頓狂な言葉を口にした。

次にケンスケはアスカを指差して話す。

「惣流・アスカ・ラングレー、強制猥褻罪にて市中轢き回し」

「!!あ、あ、あ」

ケンスケの口から発した罪状を聞き、アスカは怒りのあまり言葉が喉から出てこなかった。

そんなアスカを尻目に、ケンスケはマナを指差す。

「霧島マナ、結婚詐欺にて無期懲役」

「さ、詐欺ぃ?!私が?!」

マナは驚きと困惑の表情で声を上げた。

舞台を混乱させた三人に罪状を言い渡すと、ケンスケは他の者達に向き直り、微笑みながら話しかける。

「その他諸々の人物は被害者に過ぎぬ。今日の所は無罪放免じゃ、喜ぶがよい」

ガコン!

そんな微笑を見せたケンスケの後頭部に、アスカが木槌を打ちつけた。

そして、舞台に突っ伏したケンスケに、怒りの表情で声を上げる。

「誰が猥褻(わいせつ)罪よ!誰が!」

ケンスケは後頭部を抑え、立ち上がる仕草を見せながら声を上げる。

「痛ぅ……。おのれ!神をも恐れぬ不届き者め!そんなお馬鹿な奴には暴行罪を+(ぷらす)じゃ。
市中轢き回しの上、獄門磔!ありがたく頂戴せい!」

プチッ。

ケンスケの言葉を聞き、アスカの理性の箍(たが)が外れた。

アスカはドイツ語の怒声と共に柔道チョップを叩き込む。

「Vielen Dank!!」

「ばびゅッ!」

チョップを喉もとに喰らったケンスケは、奇声を発して床に倒れた。

その光景を見ていたレイは、ポツリと一言。

「…もう終わりね。…もとには戻れないわ」

レイの呟きを聞き、芝居の緊急事態に気づいたマユミは声を上げる。

「あ!幕を」

「う、うん!」

マユミの声に、ヒカリが頷きながら席を立った。

こうして裁判は、どうにか幕が引けたのであった。

 

 

<舞台裏>

 

舞台裏では、芝居をどう収拾すべきかの話し合いが始まろうとしていた。

ケンスケが咳き込み、喉もとを抑えながら、アスカに話しかける。

「ゲホッゲホッ!……痛ぅ。手加減してくれよ、全く」

「アンタが無茶苦茶なこと言うからでしょ」

アスカは、いかにも当然といった表情で話した。

ケンスケは話す。

「でもさ、考えても見ろよ。ああでもしなきゃ、収拾つかなかっただろ?」

「そんなこと無…」

その言葉にマナが話そうとすると、マユミが頷きながら会話に入った。

「ですね。アドリブじゃ修正できない範囲になってましたし」

「あぅ…」

マユミの言葉に、マナは小さく押し黙るだけだった。

マナ的には、シンジとハッピーエンドを迎える思惑だったのだが。

そんなマナを他所に、ヒカリが口を開く。

「とりあえず幕は引けたけど…。でも、これからどうするの?」

「それなんだけど…実際、全然考えてないんだ。……誰かいい案持ってないか?」

そう言って、ケンスケは頭を掻いた。

ケンスケの言葉を聞き、トウジが呆れた表情で話す。

「誰も分る筈無いやんか。即興の嵐やったんやで。修正せいちゅうほうが無茶や」

「それもそだよね…」

トウジの言葉に、シンジは頷いた。

「……!」

そんなトウジのシンジの会話を聞き、マユミが何かに気づいた表情を見せた。

そして、嬉々とした表情で口を開く。

「もしかしたら、修正は可能かもしれません」

「嘘?どうやって?!」

マユミの言葉に、アスカが驚いた表情で訊ねた。

マユミは楽しそうに答える。

「セリフの最後に`あらし´を使えば、たぶん」

 

 

<舞台>

 

真っ暗な舞台の中、シンジの姿が浮かび上がる。

シンジは淡々と客席に向かって話す。

「結局、あのまま裁判はウヤムヤになってしまいました。
誰が本当に悪人で、誰が本当の善人なのか、ついに判らずじまいでした」

シンジの呟きが終ると、次にレイの姿が浮かび上がる。

レイはシンジの横に歩み寄りながら話す。

「でも、それでいいのかもしれない。本当の悪人や善人なんて、誰も知る筈がない。…もしも、あるとするならば人の心の形だけ。
……ただ、それだけ」

シンジとレイが見つめ合うと、アスカが舞台に姿を現す。

アスカは話す。

「だが、物事は真実を欲している」

アスカが話した後、マナの姿が舞台に現れる。

マナは舞台中央に進みながら話す。

「真実というものは、所詮は水のようなもの。受け止める器(うつわ)によって形を変える多種多様なもの。……それでも欲しいの?」

マナの言葉が終えると同時に、マユミが舞台袖から登場する。

そして口を開く。

「そうだ。真実が判らねば、私達は苦しむことになる。…一生罪の意識に苛(さいな)まされながら」

マユミが話し終わると、トウジの姿が舞台に浮かび上がる。

トウジは真剣な表情で話す。

「なら話そう。誰が罪人かを…」

その言葉の後、マナが虚空を見つめながら話す。

「生きとし活けるもの、全てが罪人であり全てが善人である。善悪、人はどちらにでもなれる資質を持っている。
悲しいかも知れないが、これが真実であり事実…」

マナが話した後、舞台袖からヒカリが現れる。

ヒカリはトウジのもとに歩み寄りながら話す。

「……全てが罪人。…ある意味正しいのかも」

ヒカリの言葉を聞き、マユミは神妙な面持ちで口を開く。

「ならば我々は許しを請わなければならない。生きとし活ける全てのものに」

「許してくれるだろうか?」

マユミの言葉に、アスカは怪訝な表情で訊ねた。

その問いに、レイが静かに話す。

「思い悩む前に、まず行動するべきだと思うわ」

「そうね。それが一番の近道だと思う」

レイの言葉に、ヒカリが優しげな表情で話した。

その言葉を最後に舞台上の全員が押し黙ると、シンジが口を開く。

「では…」

そして一斉に声を合わせ、客席に向かって声を上げる。

『もし、皆様が罪を許されたいと御望みならば、何とぞ皆様の御許しによって、私達を自由にして下さいますよう』

その言葉を口にした後、全員で深々と頭を下げた。

そして、ケンスケのナレーション。

-これにて、『ヴェニスの商人』の上演を終了いたします。
皆様の御気持ちが許すならば、この芝居に関わった全ての人に、どうか盛大な拍手を。-

 

…パチ…パチ、パチ。

最初は戸惑い気味の拍手喝采だったが、次第に拍手も喝采も、その勢いを増した。

数秒後には、体育館は盛大な拍手喝采で埋め尽くされた。

 

 

<上演後、体育館>

 

『ヴェニスの商人』終了後。

ミサト達はネルフに戻り、生徒達の姿もまばらになった体育館。

シンジ達はケンスケの発案で記念写真を撮ることになった。

カメラの三脚の前で、ケンスケが被写体に注文をつけている。

「シンジはチョイ頭下げ、委員長はもっと鈴原に寄って。…うん、こんな感じだな」

独り言のように頷くと、ケンスケは被写体の中に加わる為、シンジ達のもとに走った。

そして、ケンスケが被写体に加わると、シャッターがおりる。

カシャ。

 

その写真に写ったものは、これから始まるであろう戦いを知らない、無邪気な微笑が写っていた。

何の恐怖も、何の不安も無い、心からの微笑が…。

 

 

 

つづく


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あとがき

これで第二部と呼ぶべきものは終了です。
実の所、『僕は…』って話は、三部構成+αだったりします。知ってました?(笑)

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