僕は碇シンジ。
父さんに呼ばれて、第三新東京市に来た。
僕は少しだけ嬉しかった。
僕は僕で僕
(0)
<第三使徒襲来、三ヶ月前>
僕は父さんを待っている。
ここは、第三新東京駅。
ここで待っておくようにと言われたけど…来ないな父さん。
それから少し待っていると、遠くから人が近づいて来た。
あれ、あれは…父さん。
僕の側へ来た父さんの最初の一言は「久し振りだな、シンジ」だった。
「そ、そうだね」
僕は少し微笑んで父さんに返事をした。
僕は父さんに聞きたいことが沢山ある。
でも聞けない。
十年振りの会った父さんに、何から聞けばいいのか…。
誰か教えて欲しい。
それから僕は父さんに、これから一緒に暮らすことになるマンションに案内された。
第三新東京市の一画にあるマンション。
そこで僕は…父さんと一緒に暮らすことになる。
いまだに信じられない…けど夢じゃないんだ。
現実なんだ。
「ここで僕は一緒に暮らすの?」
僕は部屋の中を色々と物色しながら父さんに訊ねた。
「その予定だ」
父さんは、表情も変えずに僕に返事をした。
僕は返事をする父さんの表情を見た。
父さん、僕と暮らすのが嫌なのかもしれない…。
そんなことを考えながら、僕は食器棚に目をやった。
そこには食器が綺麗に並んでいた。
なぜか三人分だけ。
僕と父さん、暮らすのは二人のはずだ。
三人分?数が合わない。
「何で食器が三人分あるの?」
僕は不思議に思い、父さんに訊ねた。
僕の質問に父さんは少し黙って、こう言った。
「わからないのか?」
「何が?」
「いや、わからないなら別に構わない」
そう言って父さんはダイニングの椅子に腰を下ろした。
それから、父さんは僕を見つめた。
そして僕にある条件を出した。
「シンジ…。ここで私と暮らすには条件がある」
「条件って?」
「お前に…戦ってもらう」
戦う?
僕には父さんが何を言っているのか理解できない。
「戦うって?」
「これを読め」
そう言って父さんは、一冊の「極秘」と書かれたファイルを、僕に渡した。
僕は一応目を通したが、良く理解できない。
父さんが、なぜ僕を戦わせるのか。
それに、ネルフって何だ。
「答えは三ヶ月待つ。それまでに答えを出せ」
そう言って父さんは仕事に戻った。
僕は、ただ黙って父さんの後ろ姿を見送るしか出来なかった。
それから僕は一人で少し考えた。
条件の答えを。
でも…答は出なかった。
<第三使徒襲来、一ヶ月前>
僕は答えを出せないまま、父さんと二ヶ月を過ごした。
二ヶ月の間に色々あった。
まず、僕はネルフに招待された。
父さんの息子として。
僕を出迎えてくれたのは、マヤさんという人だった。
マヤさんは、笑って僕に言った。
「ようこそネルフへ。碇シンジ君」
マヤさんに案内されて、僕はネルフがどんな所か少し理解できた。
使徒と呼ばれる未知の生命体と戦うということ。
使徒は人類の脅威的な存在ということ。
戦うには「エヴァ」という人型の兵器に乗るということ。
そのパイロットは選ばれた人ということ。
ネルフはそのバックアップをするということ。
案内も終りに近づいたとき、僕はマヤさんに訊ねた。
「もし、僕がエヴァってのに乗らなかったら…どうなるんですか?」
「……わからない。でも私はシンジ君を責めないわ」
そう言って、マヤさんは微笑む。
「だから、乗りたくなかったら乗りたくないって、素直に言わなくちゃダメよ」
「…わかりました」
僕は返事をしつつ思った。
いっそ責められたほうが楽かもしれないと。
結局、僕はネルフでは答えを出せなかった。
それから、僕に友人が二人出来た。
友人になるキッカケは、大したことなかった。
ただ僕の隣に友人がいて、友人の隣りに僕がいる。
それが、とても居心地の良いものだったから。
その友人に質問をしたことがある。
「何の為に生きてるの?」って。
変な奴と思われたかもしれないけど、友人は笑って答えてくれた。
「生きてるから生きてるんや」
「死にたくないからな」
僕は思った。
友人と、また笑いたい。
友人の答えと笑顔が僕にとって、とても大きな存在になりつつあった。
<第三使徒襲来、一週間前>
僕はネルフにいる。
正確に言うとエントリープラグの中にいる。
僕が決めたから、ここにいる。
僕が戦うから、ここにいる。
僕が…僕が…僕が。
友人の笑顔を見たい。
もう一度みたいから。
人類を守りたい。
そんなに悪いものじゃないと思うから。
そして…父さんと暮らしたい。
だって僕の父さんだから。
そう…僕が決めたから。
僕は僕で僕だ。
つづく
無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!