「あ、頭痛い・・・・・・・・・」

 「飲みすぎよ・・・・・・・・・」

 顔色の悪いオペレーターの童顔の女性の呻き。

 だが、彼女を嗜める金髪の美女の声も些か重い。

 現に彼女がマグカップで飲んでいるのは何時ものコーヒーではなく、ウメボシ入りのお茶だったりする。

 因みに作戦行動時にチーフオペレーターを務めている二人は屍となっていてピクリともしない。

 ハエが集っていたらバッチリだ。


 それでも先日の第壱拾参使徒戦のデータと、TG二機との連携攻撃等をレポートとして纏めねばならない。

 EVA二機のパーツ交換や、初号機の装甲交換、及び大破した支援武装機運搬車両の変更など、忙しい仕事は山積
みである。

 「痛つつ・・・・・・」

 まだ酒が残っている為か、目の前に膨らませたビニール袋でも置いているような妙にぽわぽわした意識の繋がり方
をしていて今一つ作業が捗らない。

 こんな時に使徒が来たらどうしてくれるのよ!! 等とこんな目にあわせてくれたボケナス作戦課長に文句の一つ
も言ってやりたくなる。

 と・・・・・・。

 「おっはよ〜〜〜♪」

 件の作戦部長が元気良くおいでになった。

 「「はぅ・・・・・・っ」」

 その声だけでドタマに痛みが響く。

 「あれ? どったの?」

 「アンタねぇ・・・・・・」

 昨日の朝まで続けられたNERV主催の“どんちゃん騒ぎ”で、この作戦課長様はビールだけでなくワインやらボ
トルやらをパカパカ飲んでこっちも飲まされた。

 にも拘らずこの元気だ。

 “前”のミサトは結婚式の二次会等で自棄酒を飲んでグデグデになっていたのだが、喜びの酒はダメージにならな
いのか、全く持って何時ものミサトである。

 「さってと・・・・・・んじゃ、あたしは昨日言ってた通り使徒戦の戦闘レポートと、周辺被害の復興支援申請と、新兵
  装連携作戦のシュミレーションやっとくから、用があったら呼んでね。
  あ、シュミレーションシステム借りるからMAGIのシステムキー使うわよん」

 「解かった解かった・・・・・・」

 ヒラヒラと手を振って元気爆発課長をとっとと追い出す事にする。

 「んじゃ、まったね〜〜」


 プシ・・・・・・シュウン・・・・・・


 『あ、リョウ♪ 今晩早上がりしたら飲みに行かない?』
 『勘弁してくれ・・・・・・・・・』


 ドアの向こうから聞こえてくる声にゲンナリする二人。

 「げ、元気ですねぇ・・・・・・・・・」

 「多分、ミサトの口に火を近づけたら爆発するわよ?
  血中アルコール濃度、70%超えてるんじゃないかしら・・・・・・」

 そんなリツコの皮肉に軽く笑みを浮かべ、やっぱり頭痛を推して仕事に戻るマヤ。


 まぁ、ミサトの元気も理解できる。

 自分だって浮かれて飲んだのだ。


 初号機パイロットが必死になって救おうとした人物。

 ダミーシステムとしてプラグに入れられていた人間を彼らは連携して救い出せたのだ。

 尚且つ、歯噛みしていた大人達の最後の意地が実った事もある。

 プラグ内に入れられていた少年・・・・・・名前は解からないが、建て前上使っている“発見した順番”という“枠組み”
から言えばフォースチルドレン・・・・・・・・・。


 彼を救うことができた時のシンジの喜びようは無かった。

 ICUから出られたら面会させてあげようかな・・・・・・・・・。

 あの少年もシンジに会えば心の枷を取り払えるだろう。

 外見からいってレイと同じ存在であろう・・・・・・しかし、シンジであれば・・・・・・・・・。


 安っぽい妄想に近い考えであるが、彼にはそんな期待を持ってしまう。

 だから自分らは自分らができる事をやるのだ。

 日向達も屍状態であるにも関わらず、指はしっかりとキーを叩きだしたのだから・・・・・・・・・。

 だから、自分たち大人は少年たちが文字通り命懸けで救ったのだから守りぬかなければならない。


 ゼーレのくたばり損ないの老人達から・・・・・・・・・。



 リツコの眼に剣呑な色が浮かぶ。

 この事態に何もしていない“昔の男”に対してか、それとも・・・・・・・・・・・・。



 リツコがキーを叩くとICU内部の画像が入ってくる。

 そこで眠る少年・・・・・・・・・。

 銀髪の少年は穏やかな眠りについていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





───────────────────────────────────────────────────────────── 

    For “EVA” Shinji 

        フェード:参拾六

─────────────────────────────────────────────────────────────




 「・・・・・・・・・」

 「アスカ、起きて」

 「・・・・・・・・・」

 「レイ、起きて」

 し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん・・・・・・・・・。

 「返事は無い。只の屍のようだ」

 「相田君!!」

 ぼ〜〜っとマンガを読みつつもイラン事言って委員長に怒られるケンスケ。

 「そやで? ケンスケ。
  今の言い方はおかしい!! もっと抑揚っつーもの消してやな、こう、なんちゅーか淡々と・・・・・・」

 「す〜ず〜〜は〜〜ら〜〜〜〜〜・・・・・・・・・」

 「のわぁっ!! イインチョ、ちょっタンマ!!!」

 何時もの追いかけっこが始まり、こっちへの被害が無くなったのでホッとして本を閉じるケンスケ。


 因みに麻雀マンガだ。

 『アルプスの雀鬼 牌字』と書いてある。

 親を亡くした牌字がオンジの元で修業を積み、いっぱしの雀師になり上がってゆくサクセスストーリー(?)だ。


 それは兎も角、


 チラリとアスカとレイの方を見てみる。


 「「・・・・・・・・・」」


 二人とも机に突っ伏して眠っているのだ。

 なんかプ〜〜ンとハエが集っていたら間違いなく屍扱いだろう。

 美少女もヘッタクレもない。

 パチリと写真に収めてもよいのであるが、バレたら後が怖すぎるし、何より今の被写体はナニな状態だ。

 現状をどうにかして欲しいものであるが・・・・・・・・・二人の保護者である黒髪の美少年はというと・・・・・・・・・。


 「・・・・・・・・・」


 ・・・・・・・・・やっぱり屍であった。


 ただ、三人とも顔色はよろしくないのに、なんか満足しているようにも見える。


 学校に着いたらとっくに三人とも着ており、机に突っ伏したまま動いてくれない。


───こんな状態で来るなよな〜〜・・・・・・・・・。


 という気がしないでもないが、ケンスケらはシンジ達がどれだけ学校に来るという行為を大切に思っているか知る
由も無いので仕方が無いだろう。


 「授業始まるまで寝かせて・・・・・・」

 と黒板に書いてあったのであるが、揺すっても突いても起きないじゃないか。

 男子どもは一瞬、

 『そっか・・・・・・・ナニやっても起きないのか・・・・・・・・・』

 と美少女二人に忍び寄ったのであるが、女子勇士の殉滅行動より先に、スリーピングビューティー達が無意識に繰
り出した拳によって保健室送りになっている。

 結局、彼女らに触れられるのは件の黒髪の少年だけなのであろう。

 しかし・・・・・・その少年であれば脱がそーがナニしよーが起きないんじゃないか?

 等とかな〜り不埒な事も考えてしまう。

 悲しきかは思春期といったところか。


 兎も角HRとなり、教師が入ってきたのでヒカリが締めなければ話にならない。


 「きり〜〜つ」

 ・・・・・・動かない三人。

 「礼」

 ・・・・・・まだ動かない。

 「着席」

 ・・・・・・微動だにしない。


 ヒカリは何となく渋い顔であるが、物凄い戦いをやっている事も知っているので起こすのも気兼ねがあるのだ。

 そう、ヒカリは思う。

 『ああ、夕べはそんなにスゴかったのね・・・・・・・・・・・・』

 と・・・・・・。

 『物凄い戦い』という言葉を履き違えていたりするのは言うまでもない。


 「ハイ。今日は皆さんに新しい級友を紹介します」


 「「「「「おお〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」」」」」


 途端にざわめく教室。

 女子は女子で男性(注:当然容姿は上級!!)を望み、男子は男子で“美少女”(ココ、重要。アンダーライン必須)
を望む色がそこにはあった。

 そりゃそうだろう。

 レイは一応は最初の転校生であり、最初の頃は兎も角今はかなりくだけているが、今はシンジ限定の少女であるし、

 シンジという第二の転校生はイキナリ女子の心をぶち抜く始末。

 アスカに至っては転校早々にレイとシンジを取り合っている。

 次に期待するのも当然である。


 「君、入りなさい」


 ガラ・・・・・・・・・


 ドアを開けてその転校生が入ってくると教室がざわめいた。

 男子は歓喜に、女子はなぁ〜〜んだというヤツ。

 教師が黒板に名前を書き、前に向き直って紹介に入る。


 「彼女が第二東京市から転校してきた・・・・・・」


 「霧島マナです。よろしくおねがいします」


 「「「「「「おお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」」」」」」

 という男子達の声が上がる前に、


 ガバァッ!!!


 と三人が跳ね起きた。


 「あ、アンタは??!!」

 「え?」

 アスカの驚きは彼女には理解できない。

 そりゃそうだ。彼女はアスカに“初対面”なのだから。

 「マ、マナ・・・・・・?」

 思わず名前を呟いた少年の声に反応し、そっちに眼を向けると、そこには彼女の恩人の姿が・・・・・・。

 よって少女の顔も華が綻ぶように笑顔となった。

「え? あ、シンジ君♪」


 「「「「「「またかっっっ!!!!!!!!」」」」」」


 男子一同の心の叫びも当然であった・・・・・・・・・。




                    *   *   *   *   *   *   *   *   *




 「へぇ・・・・・・じゃあ、前は戦自にいたんだ・・・・・・」

 「うん。そーなの」

 な〜んか白々しいシンジの言葉。

 抑揚が無く、『へ〜へ〜』と言ったところか。

 それでもその少女は彼がアッサリと戦自にいたという過去を受け入れてくれた為にご機嫌だ。


 尤も、そのせいで白と赤の鬼がいたりするが・・・・・・・・・。


 「・・・・・・で? その元戦自のお嬢さんが何の御用かしら?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・スパイ?」

 と、やたらと険悪だ。

 「アスカ・・・・・・綾波・・・・・・」

 だが、少年の咎めるような視線をマトモに受けてしおしおしおと怒りも縮んでゆく。

 マナはマナで二人の言葉なんぞ気にした風もなく、ケラケラと笑っている。

 「いやぁ・・・・・・そんな技術でもあったら良かったんだけどね。
  戦自の新兵器がそのままNERVに移っちゃったもんだから、その兵器用に鍛えられちゃったあたし達ってばお
  払い箱になっちゃったのよね・・・・・・・・・。
  ま、言ってみたら転職したってやつかな?」

 『マ、マナ・・・・・・・・・』


 場所は屋上の日陰。

 時間はお昼休み。

 こんな場所で言うセリフではない。

 尤も、アスカとレイとシンジは最前線で戦う戦士であるし、マナもその組織の一人となっている。
 よって別にかまわないとの意見なのだろう。

 「自分、ごっつ明るいのぉ・・・・・・・・・フツーやったらもっと暗ぅなるやろに・・・・・・」

 ヒカリ手製の弁当を食べつつも気を使ってんだか無神経だかよく解かんないコトほざくトウジ。

 彼にしてみれば戦自の不義理の方がよっぽど許せない事柄であるのだが、彼女に気を使っている為にヒドイ事も言
えない。
 よってそんな言葉になっているのだ。

 気の使い方を履き違えているのは言うまでもないが・・・・・・・・・。


 シンジ達は当然、彼女の明るい理由を知っている。

 以前の作り笑いだったマナにはない本物の笑顔の理由とは、“前”の時に人質に近い形で戦自に残っていたムサシと
ケイタもこっち(第三東京都市)にいるからだろう。

 超機密の塊であったトライデント計画の全容がパイロットごとNERVに知られている為に機体もパイロット候補
も始末出来なかった為、役立たずと化したマナ達をそのままNERVに送ったのである。

 当然、スパイなんかももぐりこませていたのであるが、精神の最深度調査はATフィールドの研究のお陰でお手の
物になっているNERVにアッサリと見破られており、逆に強請られる始末。

 戦自にしたらEVAに対抗する為に作り上げたトライデントのデータがアッサリと奪われた事に憤りはある。

 が、前回と今回の使徒戦での情報を映像と解析ファイル付きで送ってやったところいきなり軟化して来たのだ。

 そりゃそうだろう。

 トライデントは、相手がEVAであれば勝機はある。

 二体一で攻撃をし、ケーブル切って逃げまくればよいのである(切れる切れないは別として)。


 だが、EVAには勝てても使徒には絶対に勝てない。


 戦自の戦闘想定部やシュミレーションシステムをフル稼働させても勝機がゼロなのである。

 そりゃあ、匙も投げるだろう。

 それより“元・戦自のパイロットの手腕で”チルドレンが“守られている”というみみちい名誉の方をとったのだ。


 (元)戦自の少年兵達が同年齢のEVAパイロットを守る為に戦う。


 聞くだけなら成る程お涙頂戴のお話ではないか。

 だが、冷静に考えてみると、

 最前線で戦わせている少年少女を自衛隊がお払い箱にした少年達が守っている───

 という物凄く情け無い構図が出現する。


 大人はドコでナニしよんねんっ!!!


 と関西弁で突っ込まれても仕方が無い事だと言えよう。


 そのアホ大人達の内で使い物にならない戦自側は、先の戦闘で大活躍をした二機の支援兵器・・・・・・TG−T,Uを
知り、かなり度肝を抜かれていた。


 製作した部署は・・・・・・・・・支援兵器開発部・・・・・・・・・前身は・・・・・・・・・日本重化学工業共同体??!!

 ヲイヲイ! オレ達が三下り半つけたトコぢゃねぇか!!


 ローターもジェットも無いのに空中に静止し、超遠方から正確な射撃ができる白い機体。

 加速力と火力に優れ、EVAがフィールドの中和をしないと何もできないという考慮から近接近戦を主眼においた
赤い機体。

 相反する能力を特化させた二機は間違いなく鉄クズたるJAと戦自の次期戦力であったトライデントを凌駕してい
た。

 特に最後に赤い機体の放った一撃は、EVA参号機のあの分厚い装甲をぶち抜いているのだ。


 であるから『破格の待遇にしてあげるから戻ってきてちょ☆』と恥も外聞もなく言ってみたりする。

 尤も、自分の能力を散々ぼろっカスに言われた上に三下り半を叩きつけられている時田主任は『あんたダレ?』と
言うだけだった。

 まぁ、実際には先にレイにもこっぴどく罵られている訳であるが、相手が相手であったし、自分の方がかなり大人
気無かったと思っている為、腹も立たない。

 後日、『いや、あの時は真に大人げない事を・・・・・・』とミサトにはビール券十万円分、リツコには子猫写真集、レイ
(あの時の少女が彼女である事はNERVに参入してから知った)にはラーメンのタダ券100枚つづりを贈ったとこ
ろ、

 『いえいえ。こっちも失礼な事を・・・・・・・・・』

 とアッサリ和解。

 よって良好な関係はずっと続いている。


 閑話休題。


 てな大人達の話はおいてといて、ココは学校の屋上。

 シンジ、アスカ、レイ、トウジ、ケンスケ、イインチョ・・・・・・もといヒカリ、そしてマナは食事を終えてくつろい
でいた。

 当然ながらアスカとレイはシンジお手製のお弁当(別名:幸せの詰め合わせ)、平らげてぽわわんとしてシンジを挟
んで座っている。

 当の少年はもー何て言うか現状をスッカリ諦めきってて二人の抱擁を受け入れてたりする。

 トウジもケンスケもコイツらだからしょーがないと傍観。

 ヒカリは、寛いでいるシンジ達三人・・・・・・特にシンジが二匹の雌犬を鎖でつないで手に握っている王者に見える事
がある為重傷である。

 マナにとっては面白くない。

 どうもアスカ達に『ふふん♪ いいでしょ?』と見せ付けられている気になって来ているからだ(いや実際そーな
のであるが・・・・・・)。

 「ねぇねぇ、シンジ君てさ、惣流さんと綾波さんと、どっちかと付き合ってるの?」


 ビキッッッッッ!!!!


 空気がいきなり凍りついた。


 『い、言うてはならん事を・・・・・・・・・』


 トウジとケンスケは戦々恐々だ。

 そりゃそうだろう。
 普段は兎も角、この二人はシンジを取り合って一階とクラブハウスを半壊させる事なんぞかましているのだ。

 仲が悪い訳では決して無いが、張り合う事に関しては怨敵のようなのである。


 尤も、ヒカリは、

 『違うわ・・・・・・・・・二人は碇君に飼われているのよ・・・・・・・・・はぁ・・・大人よねぇ・・・・・・・・・』

 と別世界の脳になってたりする・・・・・・。


 そして二人は先に言い出す機会を待っていた。


 「「アタシわたしががシンジ碇君のの恋人恋人よなのよ!!!」」


 ほぼ完全にタイミングが合っており、周囲は何を言っているか理解できない。

 当然、鈍感帝王デスキングたるシンジ・碇も同様だ。


 だが、二人のマブダチという位置にいるヒカリだけはちゃんと聞こえていた。

 そう、

 「わたし達はシンジ様の雌犬なのよ!!!」

 と・・・・・・・・・あれ?

 ど、どうやら脳内変換された幻聴のようだ。

 それでも彼女はそう言ったと確信しているから始末が悪い。


 ちなみにトウジとケンスケは何を言っているかは聞こえていなかったが、内容は理解している。

 だから口を挟まないように大人しく菓子を食って茶を啜っていた。


 が・・・・・・・・・。


 「だ、ダメだよ、マナ。二人に悪いじゃないか。
  僕みたいな人間と付き合ってるなんて・・・・・・・・・」


 『『『『『『『『『『ヲイっ!!!!!!!』』』』』』』』』』


 聞き耳を立てていた周囲の人間ごと、アスカやレイやヒカリやトウジやケンスケが心の中で同時にツッコンだ。

 そう、彼は今だに自分がモテないクンだと思い込んでいるのだ。

 “以前”から持っていたコンプレックスもあるが、一度NERV本部に行くと“前”より信頼でき、ミサトの事を
誰よりも愛しいと豪語できる男となった加持や、

 抜群の操縦センスがあり、尚且つ本人の戦闘能力も高く決断力に富んだクールな男前のキョウスケがいるし、オペ
レーターの二人だって決してブサイクではない。

 元々ハンサムだとかカッコイイとか言われた事がなく、情け無い印象から女の子にもてた事がないシンジは、そー
ゆー事に関しては自分は枠外だと思い込んでいるのである。

 当然、今の彼は決断力もあるし努力家だし、優しさの化身だ。

 元々少女のような外見で中性的でもてる要素は満載だったのであるが、今では+αが付いてとってもお得である。


 「そうなの? じゃあ、あたしがツバつけていいかな?」

 「え?」

 その言葉に真っ赤になる件の少年。

 何せ元々マナは初恋の少女であるのだ。
 そんな少女からのアプローチ。満更でもないのが普通である。


 が・・・・・・・・・。


 「ちょっと待ちなさいっっっっっっっ!!!!!!」


 赤みがかった金髪を蛇のように揺らせて立ち上がる少女がいた。


 「碇君は渡さないの・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 絶対零度の殺気を纏った、蒼銀髪の少女が出た。


 「ナニよアンタ達は・・・・・・・・・」


 ゆらり・・・・・・と人間凶器の空気を漂わせて元戦自娘が立ち上がった。


 『『『『ひぃいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・』』』』


 声無き悲鳴を上げつつ後ずさるシンジ達。

 それ程の殺気だったのだ。


 「・・・・・・・・・わたしは碇君に身体を辱められたわ・・・・・・・・・」


 「「何(だって)やてぇ????!!!!」」


 口火を切ったのはレイだった・・・・・・・・・。

 因みにラミエル戦直前の、押し倒し未遂の話である。


 「な・・・・・・・・・っ?!
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふ、ふふん・・・・・・・・・。
  あたしはこの身体を自由にされ(かかったのを助けてもらっ)たわよ」

 「「な・・・・・・・・・??!!」」

 マナの言葉にアスカとレイは硬直する。

 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 トウジとケンスケは裏切り者を睨みつけていた。
 言うまでもないが、一人で大人の階段を登りつめていると思ったからである。

 「ち、違うよ!! 僕はそんな・・・・・・・・・」


 「ふふん・・・・・・・・・。
  アタシなんか口でしてあげてるもんねぇ〜〜」

 「な・・・・・・・・・っ??!!」


 因みにキスの事である。

 アスカとレイは、朝シンジに起こされる時に唇を奪いまくっているのだ。

 言い方が変わるだけでこの有様だ。


 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」


 トウジ達は血の涙を流して悔しがっている。

 一人だけそんなオイシイ事を・・・・・・・・・・・・・・・・・・である。


 「甘いわね・・・・・・・・・わたしは舌の使い方が上手いって誉めてもらってるわよ・・・・・・・・・」

 「(言ってない!!! 言った事ない!!! 何の話だよ!!!)」

 「く・・・・・・・・・じ、じゃあ、あたしはシンジ君に○○○も許しちゃうもんね!!」

 「な・・・・・・・・・っ??!! た、だったらアタシはこの○○で、○○○○を・・・・・・」

 「・・・・・・・・・ならわたしは○○○○○○」

 「なんですってぇ?! だったら○○○○っ!!」

 「○○○・・・○○○」

 「○○」

 「」



 この後、生徒指導室に四人が呼び出された事は言うまでもない・・・・・・・・・。


 え? イインチョさんスか?


 彼女は食後のお茶をのんびりと啜っていた。


 「え? 碇君達? だって飼い主と肉奴隷よ? 学校じゃあ抑えた表現しかできないでしょうけど、本当の三人は
  物凄いのよ?」

 スッカリと妄想の国の住人だったそうな・・・・・・・・・。




                  *   *   *   *   *   *   *   *   *




 「あ、キョウちゃん。どしたのそれ?」

 とてとてと本部の廊下を歩いていたエクセレンは、自分の伴侶を見つけると子犬のように寄って行った。

 そのキョウスケは何やらミカン箱を肩に乗せてミサトの執務室の方に歩いてたのだ。

 「これか? 戦自のタスクからの贈り物だ。
  何でも知り合いの家でとれたリンゴらしい」

 「へ〜〜? ミカン箱にリンゴ?」

 「・・・・・・・・・ああ」


 やがて執務室の前に立ち、インターフォンに語り掛ける。

 「南部キョウスケです。入室許可を」

 『ん? ああ南部クン? OKよん♪』


 プシ・・・・・・・・・シュン・・・・・・・・・


 油圧の音の後、開けられたドアの向こうでうず高く積まれた書類を纏めているミサトの姿があった。

 一通り眼を通してから別件の書類と照らし合わせてサインをし、また積む。

 積み具合から八割がた終わっているようだ。

 本気になったミサトであるからして途轍もなく早い。

 「ん? どうしたの?」

 しばし呆れたいたキョウスケであったが、入室の用件を思い出して、ミカン箱を床に置いた。

 「実は、戦自にいる元部下の男からリンゴが届きまして・・・・・・」

 「へぇ? で、おすそ分けって事?」

 頭を振るキョウスケ。

 「箱に入っていた手紙なんですが、近況報告が色々と書かれておりまして・・・・・・・・・そいつにしてはかなり無意味な
  文体だったのですが・・・・・・・・・」

 懐から封筒を取り出して、手紙ではなく、封筒を広げてミサトに手渡した。

 「その封筒、リンゴの箱に入っていたのに、中が微かにミカンの香りがしたんですよ」

 やや茶色に焦げていた封筒には、くっきりと文字が書かれている。

 「あぶり出しとはね〜〜〜・・・・・・懐かしい事やってくれちゃってまぁ・・・・・・」

 ざっと眼を通してゆくミサト。

 だが、その眼は段々と鋭くなってゆく。

 「・・・・・・・・・これ、ホントの事?」

 「恐らくは・・・・・・・・・」

 何々? とエクセレンがその“あぶり出し”の手紙を覗き込むと・・・・・・・・・。

 「・・・・・・・・・マジ?」

 「ああ・・・・・・・・・どうやら俺達をスケープゴートにするつもりらしいな・・・・・・・・・」



 かつての部下からの漏洩情報・・・・・・・・・。


 戦自の特殊部隊や戦闘部隊が、とある施設に侵攻する訓練を始めたのだそうである。


 その施設の間取りに非常によく似た施設の一室にて、

 キョウスケらはキナ臭くなってゆく状況を感じ取っていた・・・・・・・・・。







 だが、それより先の大問題、次の第壱拾四使徒は襲来日は刻一刻と迫っていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・。








                                          TURN IN THE NEXT...


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
boh3@mwc.biglobe.ne.jp

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