「住民の避難状況は??!!」 「八分前に既に終了しています!!」 「第参使徒の時のスカはかましてないわよね?!」 「動体センサーにて確認済みです!!」 移動指揮車両内で童顔のオペレーターから避難終了の報告と共に行き交う状況指示。 NERV本部に状況確認の言を飛ばし、MAGIにて確認するもやはり一般住民は無事に避難が終了している。 作戦部が額付き合わせてウンウン唸って作った『使徒戦被害対策マニュアル(改)』のお陰だろう。 まぁ、こちらはいい。 これで彼らは住民の心配せずに心置きなく戦えるのだから。 問題は・・・・・・・・・。 びゅわあああああんっ 『きゃあっ!!』 『うわっ!!!』 鞭・・・・・・・と言うか蛇だ。 黒い蛇が鞭のようにしなって“こちら側”の機体を襲っているのだ。 地面を這い、時には潜り、歪曲したコースを辿って三機を襲う二匹の黒い蛇。 その忌まわしい蛇の鎌首には変わった頭が付いていた。 “それ”の形容に困る事はない。 はっきり言って誰だって解かる。 何せ、“掌”なのだから・・・・・・・・・。 第壱拾参使徒・・・・・・・・・蝶の羽の様な形となったキャリヤーの翼に、航空力学に関係ないだろうが風きり羽根がつけ て羽ばたかせ、 その巨大な羽には正に蝶の体の様に小さい身体がくっ付かせていた・・・・・・・・・・。 その身体のシルエットは三機のうちの赤い機体とほぼ同型。 “本来の目的”は兎も角、人類防壁の要として建造された人造人間。 そのプロダクションモデルの赤い機体に則って開発されたその黒い機体は、今や人類の敵。 第壱拾参使徒バルディエル・・・・・・・・・。 “前回”、親友を飲み込み、悲劇の引き金となった忌まわしき使徒・・・・・・。 その形状は、もはや使徒等というべき姿ではない。 良く言って“悪魔”、或いは“怪獣”だ。 輸送機の塗料も大半が剥がれ、銀色の羽となったそのウイングから鱗粉が如く塗料と金属の粉を撒き、 蛇か軟体動物のようにくねらせる異様に長く伸びた両の手を持ち、 亀のように首を伸ばし、蛇の鎌首のように上段から三機を見下ろすその姿。 おぞましき存在にして、赤い機体・・・・・・EVA弐号機と同じ細胞構造である元仲間。 オレンジ色の機体である零号機と、弐号機に土を付かせたあの戦いのリターンマッチは、 Garuooooooooooooooooooooooo!!!!! という“怪物”の雄叫びと共に火蓋が切られた。 ───────────────────────────────────────────────────────────── For “EVA” Shinji フェード:参拾四 ───────────────────────────────────────────────────────────── 『ふぅ・・・・・・っ!!』 腹から込める気合声。 腹筋・・・・・・と言うより胆力なのであるが、それをもってしても、 ドギィイン!!! 使徒のフィールドに阻まれる。 『く・・・・・・っ、硬いっ!!』 阻まれたのを確認した瞬間、バッとその位置から飛びずさる。 ザギュッ!! 一瞬後その場には使徒の“口”から放たれた何かが突き刺さる。 血のように赤いそれ・・・・・・・・・使徒・・・いや、“参号機”の舌だ。 手が伸びるように舌まで伸びている。 それも只伸びているのではなく、刃が如く振り回し、斬り回しているのだ。 『こんのぉ・・・・・・グロい事すんじゃないわよっっ!!!』 ダラララララララララララララララララララララララッ!!!!! 数百発の超硬度タングステン弾が弐号機のパレットライフルから放たれる。 UN軍のアホと違って、国内の放射能汚染を考えての弾であるが、防がれたら結果は同じである。 ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギン!!!!! 羽をまるで盾の様に使い、身体を防御されてしまう。 今までの使徒とは違い、防御行動をちゃんと使っているのが腹立たしい事この上もない。 『ちょっと!! 何よこれ?!』 当然、文句を言いつつも発射後には場所を変える。 同じ場所に留まるのは愚考以外の何物でもないからだ。 案の定、蛇のようにくねる手が、その場所の地面を抉り取った。 その腕を切断しようと初号機が剣を振るうが、伸ばされた腕を180度曲げて掌に張られたフィールドに止められ てしまう。 だが、文句が出るのも理解できる。 なぜなら参号機の至近には零号機がおり、その零号機支援の為に初号機が剣を振るっていたのである。 零号機は使徒のATフィールドを中和しており、その最強防壁がないからこそ、残りの二機は攻撃を掛けているの だ。 だが、結果はコレである。 相変わらず使徒はフィールドで防ぎ、攻撃を加えてくるのだ。 モニターで監視を続けるリツコ達も焦っていた。 「フィールドが持ち続ける?! そんなバカなっ!!!」 一瞬、以前の合体使徒の事を考えた。 あれは弐号機運搬時に遭遇し撤退したガギエルと、イスラフェルとが一つになった反則的な相手であった。 だが、コレは間違いなく一体。 パターン青の反応は一つなのだ。 だからフィールドを一種しか張れない筈だ。 にも拘らず、中和したフィールドとは別にフィールドを発生させている。 まさか、二種のフィールドを張れるとでも言うのか? ATフィールドは自分と他を分けるモノである。 それが二種あるという事は、自分の中で自分と同じ思考の別人格が存在する事になる。 同じ思考の別人格など存在できるわけがない。 同じ思考回路ならば区別が出来なくなり一つに解け合うからである。 よって、目の前の使徒のフィールドがリツコには理解できないのだ。 「・・・・・・・・・ねぇ、あの使徒って参号機に取り付いてるのよね?」 「え? あ、うん、そうみたいだけど・・・・・・」 例によってミサトがポツリと呟いた。 こういう時のミサトの勘は凄まじいものがあるのだ。 「じゃあ、フィールド張ってるのって使徒なの? 参号機なの?」 「え・・・・・・・・・?」 リツコの頭の中を閃光が走った。 急いで席に座り、システム用のノートを開く。 オープン起動するようにしてあるタイプなので、一瞬で起ち上がるシステム。 片手でも早いのに、両手であるから途轍もなく早い。 忽ちMAGIと繋ぎ、アメリカ支部のコンピューターに手が掛かる。 搬送データを無理矢理こじ開けて、そのファイルを挽き毟る。 見守るミサトですら乱暴に思うやり方でデータを奪い、その目の前で展開される。 「・・・・・・・・・やっぱり・・・・・・・・・」 溜息をつくようなリツコの声。 二人の見守る搬送データには、 今戦っている参号機の他に、 <ダミーシステムプラグ 1>と、しっかり記入されていたのである。 * * * * * * * * * 「おーい!! どーなってんだょぉっ!! ったくもぉ〜〜っ!!」 眼鏡をかけた少々ヲタクっぽさを感じさせる青年が、何度目かの叫びを上げる。 支援兵装運搬列車でも電車は電車。 送電が止まってしまえば只の箱・・・・・・置いてあるコンテナの様なものだ。 言うまでも無い事であるが、送電線に異常が起こり停車してしまっているのである。 作戦発動地点まで後二キロ・・・・・・EVAの移動距離云々なら兎も角、停車した電車から言えば無限に近い距離だ。 超最新鋭支援兵器、TG−T,TG−Uもこれではただの置物である。 「・・・・・・落ち着け。シゲ」 しぶい初老の男性の声がその青年を止める。 巨大なコンテナの中で、今だ続く再検査と微調整。 システムの凍結解除とやる事は山積みだ。 彼一人遊ばせている訳には行かないのである。 「オレ達にはオレ達のやるべき事はある。 そっちを疎かにしたら馬鹿だろう?」 「でも、オヤっさん・・・・・・・・・」 『オヤっさ――んっ!! 大変です!! 電源がコンデンサーにコンタクトしません!!!』 絶叫のような駆動系係の作業員の声が響く。 その声に他の作業員の動きが止まる。 『た、大変です!! EVAがかなり押されてますっ!!!』 また別の報告が入り、皆の焦りも増大する。 自分らはただ物見遊山に出てきた訳ではない。 最前線で戦うあの子供達に手助けをしに出てきたのだ!! なのに、肝心のTGシリーズは駆動系のソフトに問題があり、コンタクトできない。 つまり、起動してくれないのだ。 こんな所でジタバタしている訳にはいかない。 なぜなら、自分らはプロの整備員・・・・・・メカマンだ。 プライドにかけてコイツを・・・・・・TGを叩き起こす!!!!! オヤっさん事、榊整備班長は立ち上がった。 「おいっ!!! ありったけの絶縁服持って来い!!!!! サイズもクソもねぇ、急げ!!!! グスグスしてやがったらブッ殺すぞっ!!! シゲ、来いっ!!!!!」 「は、はいっ!!! ・・・・・・・・・で、ナニやるんスか・・・・・・・・・?」 恐る恐る問い掛けるシゲに、ゲンドウもかくやというサングラス越しの眼光で睨みつける榊。 「決まってんだろ?」 横たわる新兵器TGを親指で指した。 「寝ぼすけを叩き起こすんだよ!!」 * * * * * * * * * 「ぐ・・・・・・・・・っ」 低く呻く少年。 初号機の専属パイロットたるシンジは、眼前の敵と相対し睨み合いを続けていた。 参号機に恨みは無い。 あるのは悲しみの思い出のみ。 自分の不甲斐無さからダミーシステムを起動させられ、自分の不甲斐無さからプラグを握りつぶさせられた。 ・・・・・・・・・あの時のグシャリとした感触は今も手の中にある・・・・・・・・・ あの時は怖かった。 無論、今も怖い。 生きる為に他を犠牲にするのは当たり前だし、どうやったって避けられる事ではない。 だが、あの時のは只他人を傷つけるのが怖くて逃げ回っていただけである。 結果は・・・・・・・・・あれである。 逃げるのは簡単だ。 だけど、逃げ続けたらそのうち行き止まりに着く。 思えばあそこで戦う事を拒否した事が、袋小路の入り口に踏み込んだ瞬間なのだろう。 だから物凄い強敵ではあるが、逃げる気は毛頭無い。 アスカとレイ・・・・・・そして、ミサト達を見捨てる気など更々無い。 だから少年は・・・・・・シンジは剣を握る。 使徒を倒す為に・・・・・・・・・。 「・・・・・・・・・いくよ。バルディエル・・・・・・・・・」 その因縁の敵に向かって・・・・・・・・・。 その瞬間、弐号機から叫び声が伝わった。 『ダメっ!!! シンジ!!!!』 「え?」 * * * * * * * * * 「シンジ君っ!!!」 小型モニターに映る初号機に思わずマヤは叫んでいた。 つい今しがたまで立っていた場所が吹き飛んだのである。 ギリギリのポイントで回避している初号機。 だが、使徒が何をやったのかは解からない。 あらゆる光学センサーに反応が無いのだ。 少なくとも今までの使徒の使っていた光学兵器ではない。 慌てて観測機のデータロガーから送られた詳細データをMAGIに転送し、再検討させる。 その判断の速度はリツコの支持が飛ぶ前に行われている。 ───最前線の子供達の為・・・・・・・・・。 その想いがマヤを一歩進ませているのだ。 そんな部下の成長を見、僅かに口元を緩めるリツコではあったが、彼女とて気を抜いている訳ではない。 あの使徒は即ち第七使徒イスラフェルの時と似たようなケースだった。 まずは使徒本体、そして参号機、それに・・・・・・キャリアーE−3Cだ。 何だか一昔前の対潜哨戒機をもじった様な名前であるが、只単にEVA参型用輸送機という名前である。 その武装は貧弱極まりないが、装甲が戦車並なのだ。 使徒相手に攻撃は無意味。ならば防御を・・・・・・という事であろう。 尤も、そのEVA並装甲を使徒に使われたらどうなるか・・・・・・等と想定している訳も無いのでこうなった事で文句 を言われる義理はアメリカ支部には無い。 だけど、機体データくらいはよこさんかいっ!!!!!! と文句が出るのは仕方がない。 兎も角、E−3Cの機体スペックを“向こう”のデータバンクから毟り取って、そのファイルを展開し、弱点を探 る。 それしかできる事がないのだ。 ───せめて・・・・・・・・・TGが来ていたら・・・・・・・・・。 そう思わずにはいられないリツコであった。 「データ測定終了!! ・・・・・・って、これは・・・・・・・・・・・・」 「どうしたの?!」 マヤの驚きの声にミサトが反応する。 「は、ハイ!! 第壱拾参使徒の先程の不可視の攻撃は超重低波動です!!」 「え?」 「ですから、極低波の音波砲です!! 一度受けたら衝撃が全身を伝わり機体とパイロットに甚大なダメージが・・・・・・」 超音波と違い、極低波は波が緩やかだ。その分遠くまで伝わる。 特にEVAのプラグ内は液体に満たされているのでプラグ内を乱反射してパイロットの内臓を低振動波がかなり深 刻なダメージを与える事だろう。 「超音波じゃなくて、超重低音波砲かい・・・・・・・・・・・・・。 ジャイアンボイスって訳ね・・・・・・・・・クソオンチ使徒が!!!」 『じゃいあんボイス・・・・・・・・・?』 ジェネレーションギャップでサッパリ解からないマヤは兎も角、正面に立てなくなった三機。 よって攻撃方法の一部変更だ。 「いい? シンちゃんとレイが左右から組み付いてフィールドを中和。 頭が向いたら羽の影に入って!! 次にアスカが三点バーストで射撃し、それに対してフィールドで防御したらレイがそのフィールドに意識を集中 して中和。 そしたらアスカ、使徒の頭部・・・・・・いつもプラグ入れてる頚椎辺りに集中砲火よ!!! 使徒の本体はそこよ!!! がんばって!!!」 『『『了解!!!』』』 力強い返事が返ってくる。 彼らはまだ諦めてはいない。 あれだけ押されているのにも拘らず・・・・・・・・・だ。 だからリツコは黙ってる。 参号機の首元に入っているのはダミーシステムプラグだという事を・・・・・・・・・。 教えなかったのは自分。 だから罪を負うのも自分。 彼らは命がけで戦っているだけ。 悪いのは、罪深い大人である自分だ。 だから罪を犯す。真実を隠蔽するという・・・・・・・・・・・・。 そっとそのリツコの肩に手が置かれた。 ふ・・・・・・と頬を緩ませている大学からの親友ミサトだ。 彼女は全て知っている。 だから同じ罪を被ってくれている。 教えない。真実を伝えない。子供達に恨まれるなら自分も付き合う・・・・・・・・・と。 何時も頼りない相方なのに、こんな時ばっかり支えてくる。 だからなんだろう。 腐れ縁を断ち切れないのは・・・・・・・・・。 「三機、攻撃に・・・・・・・・・・・・・・・え???!!! ああっ!!!!!!!!!」 「何?」 「な・・・・・・・・・っ??!!!」 マヤの驚愕の声に我に返った二人が見たモノ。 使徒の足元に転がる零号機、倒れ附した弐号機、 そして、押さえ込まれ、身動きが取れなくなっている初号機の姿だった。 初号機は、 使徒の“羽に捕まれていた”のである。 * * * * * * * * * 「ぐ・・・・・・わぁ・・・・・・・・・・・っ!!!!!」 ギシギシギシギシギシ・・・・・・・・・ 両翼・・・・・・・・・いや、“両手”に捕まれている初号機の装甲が悲鳴を上げていた。 甘かった。 一瞬で零号機がその“本当の手”に殴り倒され、今まで腕だと思っていた部分に弐号機が殴り倒された。 “コイツ”の手は“四本”・・・・・・・・・翼の風斬り羽根だと思っていたのは“指”だったのだ。 浮遊していたのは“翼”力では無く、足に“見える”部分。足型の重力緩和器官で浮いていたのである。 初号機は今、その翼だと思っていた腕にしっかりと握られ、そのまま握りつぶされようとしていた。 二枚・・・・・・いや、二本の翼状の腕と、鞭のようにしなる二本の腕で攻撃をするという戦法の、“飛行”ではなく“浮 遊”する使徒・・・・・・・・・。 それが“今回”の第壱拾参使徒バルディエルだったのだ。 『シ、シンジ――――っ!!!!!』 『碇君っっ!!!!!』 通信機から飛び込んで来るのは二人の悲痛な声。 自分が捕まってしまったからだ。 これ以上“彼女達”を心配させて苦しめる訳にはいかない。 だけど、巨大な両手の縛めは強くてビクともしない。 ギシギシギシギシギシ・・・・・・・・・・・・メギィイ・・・・・・・・・。 いやな音がした。多分、外部装甲がヤられた。 『『・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!』』 声にならない悲鳴が上がった。 絶叫だ。 目の前で少年が握りつぶされようとしているのだから・・・・・・・・・。 「く、くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!」 内側から手を突っ張って、規定範囲ギリギリまでシンクロを上げる。 瞬間、身体にかかる負担が増大し、痛みが増す。 その代わりに縛めが緩む。初号機の腕で押し返しているからだ。 と・・・・・・・・・その時、 ──・・・・・・・・・── 「・・・・・・・・・え?」 一瞬たりとも気が抜けない戦いの中、シンジは確かに声を聞いた。 いや、気配を“観た”と言った方が良いだろう。 眼前の参号機の部分・・・・・・その首の根本に・・・・・・・・・誰かの意思がある??!! プラグに誰か入ってる??!! GAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!! 使徒が口を開けて初号機に迫った。 頭部を食いちぎるのか、それとも・・・・・・・・・。 『シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジッッッッッッ!!!!!!!!!!!! ちくしょぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!』 弐号機はパレットライフルごと右腕と右足を破壊され、零号機は左腕と左足が無い。 最悪の状況下で、打つ手が全く無い。 ように見えた・・・・・・・・・。 * * * * * * * * * 「くぉらシゲ!!! とっととやれ!! ボウズ達を殺す気か??!!! あいつらに何かあったら、テメェをぶっ殺すぞ!!!!!!!!!」 『そ、そんなのないっスよぉ〜〜』 コンデンサーからの電気がライフリングを入らず、動力に火が入らないTG二機。 このままでは宝の持ち腐れであるし、それ以前に支援と言う意味合いから大いにはずれる。 いや・・・・・・・・・子供らの手助けにもならないお荷物だ。 ここでオヤッさんは決断する。 『直接電源繋いでスターター回せ』 と・・・・・・・・・。 それの行為の供物にされたのが・・・・・・直接の部下たる柴シゲオであった・・・・・・・・・。 幸い身体が小さかったから持ってきた絶縁服のサイズが三つとも使える。 シゲは絶縁服三枚重ね(絶縁グリース込み)で直接でっかいコンセントを突っ込む役を仰せつかったのだ。 『じょ―――だんじゃねぇっスよぉ!!! 人権蹂躙だよコリャ・・・・・・』 「やかましいっ!!! とっととやれ!!!」 どー言っても仕方が無い。 それに、確かに自分が愚図ってるせいで三人を死なせる訳にもいかない。 彼は腹をくくった。 『ええ〜〜いっ!!! “漢”柴シゲオ、ただ今より突貫しま〜すっ!!!』 腹をくくったと言うか・・・・・・やけっぱちでデカイそれを抱え、ヤんなっちゃうくらい怖い送電システムに突っ込む。 「コンタ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ックッッッッ!!!!!!」 がしょんっ バチバチバチバチバチッ!!! どっかぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああんっ!!!!!!! 当たり前ではあるが、余剰電流が迸り他のシステムに逆流して車両ごと爆発した。 直後!!! ゴォオオオオッ!!!! ギシュウウウッ!!!! 何かが二つ、その爆煙の中から飛び出し、目標地点へと駆けて行った。 一つは空、一つは大地を・・・・・・・・・。 「うお〜〜〜〜〜〜っ!!!! やったぁああああああああああっ!!!」 「動いたぁああああああっ!!!!!」 「がんばれよ〜〜〜〜っ!!!!」 あれだけの爆発の中で一人の重傷者も無く、無意味は程元気に見送る作業部隊。 作業帽を振る者もいる。怪我人はいないようだ。 「がんばれよ・・・・・・・・・」 そう感慨深く見送る榊整備班長の足元で、 口から煙を吐き、頭をアフロに変化させたシゲが、 「・・・・・・・・・いっけ〜〜・・・・・・・・・」 と、しっかり生きてて見送っていた・・・・・・・・・。 * * * * * * * * * 「く・・・・・・・・・碇君・・・・・・・・・」 左半身に甚大なダメージを受けつつも、なんとか使徒に這いずってゆく零号機。 ケーブルは切断され、残り時間は後三分。 絶望的な状況である。 だが、諦める訳にはいかない。 彼が・・・・・・・・・・・・。 シンジが戦っているのだ。 見ると弐号機も同様に這って来ている。 彼女とて諦められる訳が無いのだから・・・・・・・・・。 『ぐぅううう・・・・・・・・・・・・・わぁあああああああ・・・・・・・・・っ!!!!』 「碇君!!!!」 悲鳴を上げる自分の左足。 だが、知った事ではない。 そんな事どうでもいい。 今は彼を・・・・・・彼を救うだけ・・・・・・・・・。 彼が焦っている理由も知っている。 あの使徒のプラグに生体反応があるからだ。 だからリツコ達は黙っていたのだ。 自分だって教えるつもりは無かった。 トウジがいないのであれば、シンジにとっての絆ではないからだ。 確かに救いたいとは思う。だが、それはシンジの危機が混じっていなければ・・・・・・の範囲だ。 彼が危機と言うのであれば、彼女にしても、アスカにしても迷わず除外するだろう。 彼女達にとって、シンジより重いものは無いのだから・・・・・・・・・。 だが、当然シンジが誰であろうと救おうとするのは眼に見えている。 彼は助ける為に戻って来ているのだから・・・・・・・・・。 目の前にいるのに助けられない───それは彼の心の傷を押し広げる事に他ならない。 それだけは避けねばならなかった・・・・・・。 だけど、身体が動かないっっっ!!!!!! 「碇君!!!」 がしっ と翼状の腕に掴まった。 だが、当然ビクともしない。 一瞬だけ首を伸ばして参号機の首がこちらを向いた。 だが、無視するかのように初号機に戻す。 まるで、 『今、殺すからそこで見ていろ・・・・・・』 と言わんばかりに・・・・・・・・・。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 レイは、 生まれて初めて、 使徒に対し、 強い殺気をはらんだ憎しみを持った・・・・・・・・・。 * * * * * * * * * ───そこにいるのに!!!!! シンジは心から叫んだ。 目の前にいるのに!!! “前”のトウジ同様、目の前にいるのに何もできない!!! 助けたいのに手が届かない!!!! それ以前に、このままじゃあアスカも綾波も死なせてしまう!!!!! 血を吐く様な心の叫び、そして無力感が全身を襲う。 自分達じゃだめなのか?! これだけ鍛えてもとどかないのか?! 奥歯が軋む。 それだけ悔しいのだ。 参号機の顔が笑っているようだ。 無力な自分を・・・・・・・・・。 「くっそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」 思わず迸る絶叫。 シンジの心の声そのままに・・・・・・・・・。 と・・・・・・・・・? 『は〜〜い、シンちゃん。 そのまま中和しててね〜〜〜〜。 ハイハイ、レイちゃんもね〜〜〜』 いつもの変わらない軽い声が通信機から入ってきた。 「え?! エクセレンさん??!!」 『いいから、とっとと中和するの!! レイちゃんも解かった?』 『り、了解』 訳もわからず返事をするレイ。 危機が迫ってはいたが、言われた通りにフィールドを全開にして中和する二人。 ドガァアアアアアアン!!!! 「え?」 いきなり巨大な使徒の右(翼)腕に風穴が開いた。 慌てて見回すシンジ。 それは、 海上に浮かんでいた。 * * * * * * * * * アスカは一瞬身体が強張った。 空に浮かぶもの。 それは、白い翼を持ち、手には槍の様なものを持っていたからだ。 だが、“アレ”とは決定的に違うものがあった。 確かに白いが青い縁取りがあり、禍々しい白さではない。 意思を感じさせないアレとは違い、確固たる意思で使徒を見つめている。 そして、 ガショッ 『これ、威力あるけど飛ばないのよね〜〜』 呑気に言いながらも、 ドシュウウウウウウウウッ!!! 的確に使徒の右腕の同地点狙い、集合ダメージでその翼を吹き飛ばした。 ブンブンとその槍のように長い得物を回し、成果に満足する白い機体。 『キョウちゃん、カモ〜〜ン♪』 という声からして間違いない。 あの機体に乗っているのは・・・・・・・・・。 「エクセレン??!!」 『さっきからシンちゃんがそう言ってるでしょ〜♪』 その声は、途轍もなく上機嫌だった。 * * * * * * * * * 赤い影が走る。 片腕を吹き飛ばし、落としてしまった初号機に再度攻撃を仕掛けんとする使徒。 蛇のように唸られた腕で初号機に殴りかからんとしていた。 だが、その隙間に無理矢理割って入る。 一瞬の判断ミスがそのまま敗北──死へと繋がる状況で、 タイミングを待たずに強引に突っ込み、両肩のポッドをフルオープンにする。 ガションッ!!!! 『一発一発が特注のチタン製だ。受け取れ』 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!! フィールドを中和されている使徒はその数百発の鉄球をまともに食らい、思わず身体を防いだ両腕を破砕されてし まう。 「・・・・・・・・・な?!」 『シンジ、今だ。 プラグを救い出すにしても、倒すにしてもまず動け!』 「その声・・・・・・キョウスケさん?!」 初号機と使徒との間に割り込んだ赤い機体・・・・・・・・・。 両肩の巨大なポッドが目立つその人型の機体にはキョウスケが乗っているのだ。 時代は動いていた。 対使徒戦用有人支援兵器TG・・・・・・Tactical Gladiator(戦術白兵専用機)として先に開発された機体TG−T。 そして、そのノウハウから生まれた、遠距離支援機TG−U。 TG−T・・・・・・開発コード X−003C TG−U・・・・・・開発コード X−007−03C 通称、古い鉄『アルトアイゼン』、 白騎士『ヴァイスリッター』 子供達に守ってもらう不甲斐無い大人達の最後の意地は、こうして戦線に加わったのである。 TURN IN THE NEXT...
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