戦闘報告書───

 ファイルF−1〜10とされたそれには様々な戦いの記録がまとめられていた。

 F−1.第参使徒サキエル戦、F−2.第四使徒シャムシエル戦、F−3.第伍使徒ラミエル戦、
 F−4.第六使徒ガギエル戦、F−5,6.第七使徒イスラフェル戦、F−7.第八使徒サンダルフォン戦、
 F−8.第九使徒マトリエル戦、F−9.第壱拾使徒サハクィエル戦、F−10.第壱拾壱使徒イロウル戦・・・・・・。


 つまりはNERVに置ける使徒戦の戦闘報告書なのである。


 F−1・・・つまり使徒の初襲来たるサキエル戦からF−10の第壱拾壱使徒戦までまとめられている。

 数が合わないのはイスラフェル戦を二回行ったからだ。


 そして先日、NERVは使徒の本部侵入を許していた。

 が、その使徒は弐号機の自律起動という奇跡と、子供達の直接攻撃によって殲滅され、またしても未確認のまま闇
へと消えている。

 よって、第壱拾弐使徒戦報告書たるF−11は存在していない。



 狂いまくるスケジュールにゲンドウも委員会も焦っていた。

 表向きは冷静さを保っていたキールですら、裏死海文書を再検討しているのだから混乱も知れるというものである。


 だが、既にスケジュールは同率でリンクして進んでいる。

 だから参号機も完成しているし、四号機は消滅している。

 全くの事故であったが、四号機はS2機関の暴走によってディラックに消えた・・・・・・。


 大体、S2機関の正体は“魂”である。

 その研究が圧倒的に遅れているアメリカ支部で出来る訳がないのだ。


 しかし、それでもS2機関の失敗作たるものは既にドイツ支部にて完成していた。

 もっとも、今までの蓄積データと業を煮やしたドイツ支部からのデータ譲渡のお陰ではあったが・・・・・・・・・。

 実力ではないものの、他力本願を実力と言い切るのはアメリカの十八番である。


 よって監視衛星の失敗の挽回として起動したフォース(四号機)大失敗に、ついに尻尾をたらしたアメリカ支部は
本部に“自分達が完成させた”参号機を譲り渡したのである。


 昔からではあるが、この国は敗北に弱い。


 一度敗北すると立ち直るのにかなりの時間を要す。

 だからその時間を稼ぐ為に本部へと参号機、そしてS2機関の失敗作であり副産物のダミーをセットで送ることが
決定した。

 ・・・・・・・・・のは良いのだが、それが如何なる結果を生んでしまうか、



 そしてそれがどれだけ国を落ち込ませるか、全く思いもつかないアメリカ支部であった・・・・・・・・・。




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    For “EVA” Shinji 

        フェード:参拾弐

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 「「シンジさ〜ん♪」」

 小学生ズは今日も元気だった。


 そんな愛らしい元気さに、呼ばれたシンジも満面の笑みで手を振った。

 弾かれたように駆けて来る二人。チヨとハルミ。


 焦って走ってる為か二人の肘がゴスゴスと相手に当たってる。

 必死で走っているせいか、なんだか額にも井桁マークが見えてたりする。

 ああ、そんなに急がなくてもどこへも行かないよと、当の本人はこの有様。

 二人の牽制に気がつく様子も無い。


 『『鈍感にも程がある(わい)っ!!』』


 とシンジの親友たるジャージ少年とメガネ少年は思う。


 シンジの心は異世界で共に戦った仲間達の魂の欠片との融合にて成り立っている。

 だが、彼(彼女)らは、どーゆー訳か揃いも揃って鈍感だった。

 よって鈍感さが積み重なって、スカタンなレベルにまで達してしまったのだ。


 ウォッカにトマトジュースを混ぜてブラッディマリィが出来るように、違うものでもバランス良く混ぜればいいも
のになる。


 が、泡盛にウォッカを混ぜても強い酒になるだけだ。飲みたくても一般受けする訳ない。



 「シンジさん、一緒に帰りましょ」

 そうにこやかに微笑むチヨに対し、

 「うん」

 と微笑み返すシンジ。

 その態度に出遅れた事を悔やみつつも、チヨを羨ましげに見つめるハルミ。

 「さ、ハルミちゃんも帰るんでしょ? 一緒に行こう」

 と、その淋しげな雰囲気を感じ取ったシンジが手を差し伸べると、途端にフニャけるハルミ。

 ぶ〜〜っと膨れるチヨ。


 そんな“淋しげ”やいう曖昧なモンに気付くっちゅうのに、なんで恋心がサッパリやねんっ!!


 と叫びたくなるトウジ。

 彼も人の事は言えない。


 「可哀想に・・・・・・」

 と二人の女子小学生を見つめるヒカリが涙する。


 『ああ・・・・・・“使い込まれて”しまってお兄さんすら見えなくなってしまったのね・・・・・・あんなに仲が良かったの
  に・・・・・・。
  やっぱり女はオトコで変わるものなのね・・・・・・・・・』


 と、やはり大誤解の中で溺れていた・・・・・・。


 「と、とにかく久しぶりにドコか行こうぜ。シンジも今日はNERV行かないんだろ?」

 執り成すケンスケの方がずっと大人であったりする。

 「え? う、うん・・・・・・偶には休めって言われちゃって・・・・・・」

 身体を鍛えるのも良いが、鍛えすぎるとイザと言う時に戦えないという事もある。

 だから休める時には・・・・・・気を休められる時には十分に休むのも修行だとリシュウに言い含められたのだ。

 「おお、ええなぁ。皆でなんか食いに行くか? イインチョも奢ったるさかい、行かへんか?」

 「え? ええっ?!」

 唐突に話を振られて意識が飛ぶ。

 買い食いはいいのかという以前に、トウジといっしょ♪ というスタンスが彼女の心を浮かせたのだ。

 「う、うん・・・・・・ちょっとだけなら・・・・・・・・・」

 大体はこのパターンで引っ張って行かれてしまうのであるが・・・・・・。



───下校中に買い食いなんて・・・・・・ああいけないわ・・・・・・ダメよ♪



 等とプチ堕落を楽しんでたりするのは乙女の秘密であった。




               *   *   *   *   *   *   *   *   *



 『・・・・・・なんかシンジが浮気してるような気がする・・・・・・・・・』

 トランス状態で与えられるプレッシャーをものともせず、アスカはテストプラグの中で呟いた。

 目は閉じられ、両の手はグリップから離されてはいない。

 が、心は常にシンジの元に飛ばしている。


 その変わり様に溜息仕切りの戦術作戦課長様は溜息をつかれた。

 「アスカぁ・・・・・・テスト中だってのにシンちゃんの事ばっか考えないの!! ちゃんと集中しなさいよ」

 『解かってるわよ!!』

 とは言うものの、少女のゲージは80〜78%を行ったり来たり。決して悪い数値ではない。

 ただ、傍に少年の気配がないから安定していないだけだ。


 ったく・・・・・・ドイツに居た時はもっとストイックだったわよ?

 等と一人愚痴てはいるものの、その様変わりを喜んでいない訳ではない。

 確かにストイックではあったが、それは他人を拒絶しているからだ。


 自分に近寄る全てを疑い、嫌われたくないのに口が拒絶の言葉を吐き、結局自分の心を傷つけている。

 まるで昔の自分そのままだ。


 シンジにとち狂うのはともかく、加持に対して無理に背伸びをして肩肘張っていた彼女ではなく、一人の女の子と
してシンジに恋焦がれているアスカを見るのは微笑ましくて堪らない。

 だから公私混合させない程度にして見守っている。


 もっとも、あの少年はあらゆる意味で公私混合する方が頼もしいのであるが・・・・・・・・・。



 ピーーーー!!



 いきなりアラームが鳴る。

 ナンバー00のシンクロ率が急降下したのである。

 慌ててデータロガーの情報をMAGIとキャッチボールする技術部主任。

 生理データ、スペックデータ、そして心理データが人工タンパクの脳とリツコの脳とで様々なケースを思考する。


 当然、パイロットとしてではなく、一人の少女として心配しての事だ。


 「!! レイ!! レイ?! どうしたの?!」

 ミサトの持つ通信機にも力が入る。

 『あ・・・・・・・・・葛城一佐・・・・・・』

 「ああ・・・・・・よかった・・・・・・レイ、一体どうし・・・・・・・・・」

 『・・・・・・おはようございます・・・・・・』




 モニタールームの全員がひっくり返った・・・・・・・・・。




                 *   *   *   *   *   *   *   *   *



 「アンタねぇ・・・・・・」

 「ごめんなさいアスカ・・・・・・心配させてしまって・・・・・・」

 散々リツコ達にしぼられてから何とかテストを再開し、つい今しがたシャワーを浴びて落ち着いた所だ。


 『+@*凸#&%!!! $凹△(⊃Д`)っ!!!!!』


 あの時、スピーカーから響いたミサト達の人外の声が自分を心配してくれての事だと頬が緩む。

 要約すると、

 「人が心配しとるっちゅーのに、ただグースカ寝とるだけやっちゅーんは、どーゆー了見じゃゴラァ!!」

 と言ったところか?


 リツコにしてもミサトにしても、一人の女の子として自分を見てくれている。

 それが嬉しくて堪らないのだ。

 「それで? なんで睡眠不足なんかになってるのよ?」

 赤みがかった金髪の同僚が自販機で買ったペットボトルを渡してくれる。


 ラベルには・・・・・・・・・─どろっと茶─・・・・・・・・・とあった・・・・・・。


 書かれた謳い文句によると濃茶ドリンク・・・・・・らしい。青汁エキス入りともあるが、ホンキで飲めるのか?


 ともかく受け取って栓を開けて喉に流し込む。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・味はともかく喉の渇きは癒せたわ」

 という代物らしかったが・・・・・・。



 レイがプラグの中で眠ってしまった理由。


 只単に眠れないからだ。




 幸せすぎて──




 自分を心配してくれる絆があって、

 自分が守りたい絆があって、

 自分の位置に真っ直ぐ見てくれる仲間がいて、


 そして、


 すぐ近くにシンジがいてくれる。


 ここには居ずとも彼は自分らを見てくれている。

 ずっと思ってくれている。

 そして、自分達を支えてくれる。

 それを感じられるから、その事を実感できるから、

 毎晩、彼の気配を感じられるから、

 嬉しくて嬉しくて、幸せで幸せで、胸いっぱいで、眠るのが勿体無くて・・・・・・・・・。


 自分のこの気持ちをアスカは解かってくれないのだろうか?

 と、赤みがかった金髪の少女に眼を向けて見る。


 なんとも眠そうな女の子がそこに・・・・・・。


 「悪い?」

 「ううん・・・・・・」

 名前通りのどろっとした茶を一気に飲み干し、部屋に着くまでの意識を保つ。

 アスカは立ち上がって親友の手を取った。

 「さぁ、とっとと帰るわよ。どーせバカジャージとかに捕まってるだろうから、帰ってくるまで一休みできるわ」

 「そうね・・・・・・」



 どうせ今夜も眠れない。

 朝に起こしに来てくれる愛しい少年の困ったような笑顔がチラつくのだから・・・・・・・・・。





               *   *   *   *   *   *   *   *   *




 「例のブツはどうなった?」

 「・・・・・・・・・今度は何に感化されたんだ?」

 何となく声を落とした金髪の美女を一蹴する青年。

 紙コップのコーヒーは既に空。

 只何となくぼんやりとしている彼は、その女性から言っても珍しい事である。

 「や〜ん・・・・・・ちゃんとノってよ。ノリが悪いと宴会でウケないゾ」

 「そんな宴会芸はいらん」

 キッパリと断るキョウスケ。

 宴は嫌いではないが、見世物を持ってない事が難題だ。尤も、そんなもの欲していないが・・・・・・・・・。

 「もう・・・・・・っ。
  あのね、キョウちゃんの方のじゃじゃ馬、乗りこなせるようになった?」

 「・・・・・・なんとかな・・・・・・後はぶっつけ勝負だ」

 「またそれ〜?」

 長い金髪をポニーにしたエクセレンは溜息をついた。どーして自分の男はこうもギャンブラーなのだろう。


 そんなトコにも魅かれているんでもあるけどね・・・・・・。


 「そう言うお前の方はどうなんだ? かなりの訊かん坊なんだろう?」

 「ま、ね。
  でも、慣れたら可愛いものよん♪ キョウちゃんみたいにね」

 「・・・・・・言ってろ」

 きちんと紙コップをゴミ箱に捨てて、歩み去るキョウスケ。

 照れているのかいないのかは完璧なポーカーフェイスで守られた彼の顔からは解からない。


 しかし、付き合いの長い彼女には通用しない。


 「そんなに照れなくてもいいのに〜〜」

 ポーンと紙コップをゴミ箱に投げ捨て、キョウスケの腕に絡みつく。

 「いいのか? 俺は調整に行くんだぞ?」

 「行くトコ一緒じゃん。んじゃ、ご相伴に預からせてもらうわよん」

 「この場合の使い方ではないぞ」

 ご相伴というのはだな・・・・・・と文句を言いながらも絡みつかせた腕はそのままに、二人は傍目にも仲睦まじく歩い
てゆく。

 人目を気にする訳でなし、何を今更と言う様に・・・・・・・・・。



 自販機前で座っていた青年が、その光景を眼の端に入れながら、

 「ケッ・・・・・・ドイツもコイツも男と女しやがって・・・・・・・・・」

 と、眼鏡を拭きながらいじけてた。


 まだ鬱入ってるオペレーターだったりするのであるが、

 甚だ関係ない話であった・・・・・・・・・。




               *   *   *   *   *   *   *   *   *




 「参号機が来る〜〜? あんなモンどう使えっての? パイロットもいないってのに」

 上からの直接報告を受けていたリツコからの話を聞き、露骨に眉を顰める作戦課長。

 「まぁ、そう言わんでくれるかな? アメリカ支部も苦労しているんだよ」

 「あ、副司令・・・」

 発令所の作戦指示ゾーンに自分から下りて来るのは珍しい。

 呑気に・・・・・・という訳ではないのだが、訳知りな分、部下にも説明してやりたいのだ。

 ・・・・・・・・・言える範囲は・・・・・・の話ではあるが・・・・・・・・・。


 「先の四号機の起動実験の失敗・・・・・・それが響いてるんだよ。
  国のGNPが疲弊しているというのに対使徒戦用攻撃監視衛星なんぞ建造した挙句に打ち上げの失敗・・・・・・。
  その失敗のショックから立ち直っていないのに、その名誉挽回とばかりにS2機関搭載型の四号機の起動実験を
  やったまでは良かったんだが・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・大失敗しちゃったと・・・・・・?」

 「失敗も失敗・・・・・・大失敗さ」

 シュン・・・・・・とドアが開き、リシュウを伴った加持が現れて後を続けた。

 「あ、リョウ・・・・・・じゃなかった加持君」

 最近は睦事が増えた為につい名前で呼んでしまいそうになる。

 そんな可愛い彼女に苦笑しつつも報告を続ける。

 「四号機は起動実験中にS2機関が暴走。
  機体中心に数キロ四方が第二支部ごと消失。見物・・・・・・とと、失礼。披露式典にいらしていた国のお偉いさんも
  巻き込まれて軒並み消失。国家ぐるみでガタガタになっちまったよ。
  国のプライドの立て直しの為に時間がほしいのと、怖いモノが近くにあったら落ち着かないんだろ?
  慌てて押し付けてきたったワケさ」

 やや毒があるセリフではあるが、その言葉でミサトは全て理解した。


 ──使えるんなら使え。だけど爆発させるんだったら遠くでやってくれ──


 という事なんだろう。


 ・・・・・・ったく・・・・・・流石は勇気溢れる大国ですわ、と内心毒つくミサトであった。


 「仕方ないわよ。
  だって、支部ごとディラックの海に沈んだのよ? 爆発・・・・・・というよりは“消滅”ね」

 とコーヒーを含みながら冷静に金髪の科学者が説明する。

 「わしも画像を見せてもらったが・・・・・・・・・なんじゃアレは?
  まるで土地を“おたま”で掬い取ったように消えておる・・・・・・・・・。

  ま、あんなもの見たら恐れもするじゃろうな」


 「あら? リシュウ顧問ともあろうお方が恐れを感じているんですの?」


 悪戯っ子のような声でついからかってしまうリツコ。


 「おお、怖いのう。
  怖いから一番近くで生活しておるんじゃ。遠くで爆発されて巻き込まれるよりマシじゃからの」

 「まぁ・・・・・・」

 ニヤリと笑うリシュウを見て苦笑するリツコ。


 加持とミサトはそんな二人の掛け合いに顔を見合わせるしかない。

 「ところでリシュウ先生。さっきのファイルを赤木博士にお渡しするのでは?」

 「おお、そうじゃったの」

 加持の不粋一歩手前のツッコミでなんとかその事を思い出し、脇に抱えたファイルをリツコに手渡した。

 どうも・・・と笑顔で受け取ってミサトとページをめくって行く。


 そして、溜息。


 「はぁ・・・・・・やっぱダメか〜〜・・・・・・」

 「シンクロは出来ても実戦で使えないじゃあね・・・・・・」

 それはリシュウがリツコに渡されたチルドレン候補者の身体データから鑑みた推定戦闘力である。

 無論、シンジ達への贔屓目もあるだろうが、“今”の使徒戦において、只単にシンクロ出来たとしても実戦で使え
ねば損失にしかならないのだ。

 「可能性としては鈴原君がトップだったんだけどねぇ・・・・・・」

 「ああ、シンジ君の親友ね・・・・・・ああ、確かにシンクロ率はそこそこ行きそうだけど・・・・・・」

 「実戦では全く使えぬな」

 身も蓋もない剣の師。

 「ATフィールドとやらが使えたとしても、以前の第九使徒レベルが来ればそれでオシマイだの。
  もって五分といったところか・・・・・・それに、連携戦闘となると彼を守ろうとするであろうシンジ達の行動で統合
  戦闘力はがた落ちになるな・・・・・・・・・」

 「先生がお鍛えくださったらどうです?」

 加持がそう言うがリシュウは肩を竦めるのみ。

 「ま、二ヶ月で基礎体力を作れたとしても今のシンジ達との連携戦闘レベルにするには少なく見積もっても一年は
  かかるぞ?
  それでも良いのならやってはみるが・・・・・・・・・」

 「げ・・・・・・そんなにかかるの〜?」

 流石にゲンナリする。

 ミサトにしたら戦闘力が上がるに越した事はない。

 が、またしても子供を巻き込む上に、シンジ達の負担になるのでは話にならない。

 「何を言っておる。これでも早い方じゃぞ?
  あやつらを基準に考えん方が良いぞ? シンジ達が強すぎるだけなんじゃからな」

 「はぁ・・・・・・」

 彼らの突拍子もない戦闘能力は理解しているつもりだ。

 それでも中学生・・・・・・14歳という年齢を飛び越えて強すぎる肉体はギャップの大きさから考えるのが難しいのだ。


 しかし、現にシンジは木剣で兜割りができる。


 だから余計に戦闘調整が難しいのであるが・・・・・・。


 「まっさかシンちゃん達が強すぎて援護に困る事になるとはね〜〜・・・・・・・・・」

 ファイルを閉じてコンソールの上に投げ捨てるように置いた。

 精密機械の上に乱暴な事しないでくださいっ!!! とマヤの眼が痛かったりする。

 「結局は例の計画に頼る事になるわね・・・・・・」

 最近置き出したお茶用のポットから静岡産の玉露を煎れたお茶をリシュウと冬月に渡す。

 ほっとする香りが二人の男を和ませていた。


 「うん。やっぱAV計画よね♪」


 ぶふうううううううううううううううううううううううっ!!


 思わずお茶を噴霧する冬月とリシュウ。

 フケツっっ!! とマヤ。

 な、ななな、ナニするつもりなんですか??!! と何故か焦る日向。

 マジっスか??!! と妙に元気になる青葉。


 「貴女ねぇ・・・・・・そのヘンなネーミングどうにかしなさいよ」

 流石に親友期間が長い為にさほどのダメージも無いのが二人。

 まぁ、溜息と苦笑は漏れてはいたが・・・・・・。

 「ええ〜〜? だって解かりやすいでしょ〜? エクセレンだって賛同してくれたのよ?
  『隠語が含まれててナイスだわ』って。」

 「含むんじゃないわよ!! そんなモノ!!」

 「あのなぁ・・・・・・葛城。
  解かりやすいのは結構だが、昔のアメリカの作戦コードじゃないんだから、そーゆーのはやめた方がいいと思う
  ぞ?」

 「特殊爆弾にグラマーガールなんて最低センスの名前つけるよーなヤツラと一緒にしないでよ!!」


 ぎゃあぎゃあぎゃあと言い合いを始める二人を見ながら、以前にキョウスケに言われていた、

 『これで子供大人が二人になりました・・・・・・心中、察します・・・・・・』

 という労わりを今更ながら噛み締めるリツコであった・・・・・・・・・。





                *   *   *   *   *   *   *   *   *




 アメリカ支部のNERVは愚図っていた。


 せっかく機体を造る事が出来たというのに、肝心のパイロットはいないし、S2機関も使用不能。

 自分らはアメリカという世界最強の国に生まれたはずなのだ。

 旧世界にてパックスアメリカーナと呼ばれている民衆に深く根付いているアメリカ至上主義のせいもあり、疲弊し
ているのにも関わらず“訊かん坊”を貫く精神を持っていた為に、失敗するとなかなか立ち直れないのだ。


 曰く、

 『ふん・・・・・・技術大国のジャップどもならどうにかしてくれるだろうさ・・・・・・』

 である。


 見栄っ張りな精神も手伝って、ご立派な大型キャリアーに格納されたソレは、予定より半月も遅れて飛び立つ事に
なった。




 ところで、偏西風というものがこの世にはある。

 中緯度から高緯度にかけて吹く風が地球の自転の影響で東に向きを変えるものであるが、ぶっちゃけ季節が変わる
時に向きまで変えてくる厄介な大気の流れである。

 季節が消失した日本は兎も角、ポールシフトでその大気の流れの変動をモロ受けている大国方面。



 当然ながら風の流れは“雲”を動かす。



 それは、“ある危険”を連れて行っているのだ。



 “実際”の予定より、のべ50日近くも遅れていた参号機の輸送は、その影響をも受けていた。







 大国の意地で広く取りすぎてしまったアメリカの領空を越える直前、その異常は発生した。





 輸送機と連絡が取れなくなったのである。








                                          TURN IN THE NEXT...


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
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