ある意味、待ちに待たれていた事象。


 それは違う形で叶えられたとはいえ、理由を知らぬ者達にとっては迷惑千万である。



 ───其の事象の名は第壱拾壱使徒襲来・・・・・・・・・・・・・・・。



 そして、その事象が与えた弊害は色々あった。



 ゼーレ───

 裏死海文書の解釈の再検討を本気で考え出す。

 事実、来襲したイロウルは記載と全く別物だったからだ。

 知恵者・・・・・・知賢者の戦い方ではない。

 言うなれば身を分けたゴリ押し。


 しかし、その様な記載は存在しない・・・・・・・・・。



 NERV総司令───

 決め手を欠いたまま進むシナリオ。

 頼みの綱のアダムがもはや地球上にない事を知らぬまま、それを探し求め続ける。

 最後の手段を胸に秘め、今日も別案を模索する・・・・・・・・・。

 己が真の願い・・・・・・。


 思い人に再会せんが為に・・・・・・・・・・・・・・・。



 そして、第壱中学───

 ある意味、ここが一番弊害が大きかった。


 文化発表会の中止である。


 考えてみれば、この厳戒態勢の中、悠長にそんなことやってる方がどうかとも言える。

 しかし、それでも楽しみにしていた生徒が多かったのだ。


 例えば赤みがかった金髪の少女。

 「無精ひげの甲斐性無し男に言い寄られてグラついてるアタシを、パシッと叩いて目を覚まさせてくれる
  の。

  『バカっ!! 君には僕がいるじゃないか!! 忘れたの?! あの日の事を?!』って♪

  それで“愛”を取り戻したアタシはシンジの胸にダイブするの♪」


 “前”の妄想寸劇の真逆の位置配置である。

 更に加持の扱いが酷いし・・・・・・。

 こんな少女に溜息仕切りの二馬鹿+シンジであった・・・・・・。


 例えば蒼みがかった銀髪の少女。

 「髭メガネに蹂躙されかかったわたしを間一髪で救い出し、その王子は汚らわしい髭魔王の胸に赤い槍を
  突き刺して殲滅するの・・・・・・。

  『大丈夫だった? ゴメンね遅れて・・・・・・・・・もう離さないよ・・・・・・・・・』

  王子は嫌がるフリをするわたしをベッドに鎖で枷をして自由を奪うの・・・・・・・・・。

  そして・・・・・・・・・・・・」

 淡々と自作のファンタジー18禁小説を委員長に説明する。

 もちろん、一般女子中学生にとって耳慣れないよーな単語や行為がてんこ盛りだ。

 だが、その委員長は腐っても・・・・・・いや、腐ったから腐女子というアンデッドモンスターになっているの
で、そのよーな“専門用語”はバッチリ学習済みである。


 『ああ、そんな事まで・・・・・・やっぱりアスカとレイは・・・・・・・・・。

  そんな酷い♪ もう、碇君のお嫁さんになる以外行く道は残されてないのね?

  ああ、首輪をつけたウェディングドレス姿の二人は、碇君に鎖で牽かれてバージンロードを歩くのね。

  ・・・・・・歩く権利あるのかしら・・・・・・・・・なんて♪』


 ・・・・・・・・・等と腐り方に磨きが掛かっていた・・・・・・・・・。


 上演不可能だろ?! 等というツッコミも忘れていたりする。


 そんな少女達の想いを踏みにじるかのように中止される発表会。

 ある者は安堵し、ある者は悲観した。

 とゆーか、倫理的に学校側が一番安堵していたり・・・・・・・・・。



 そして、黒ジャージ少年は・・・・・・・・・。



 「うう・・・・・・」

 腹を押さえて机に突っ伏していた。


 『今度の文化発表会な、シンジがお前誘って来い言うとったで? 案内してくれるんとちゃうか?』

 『ホンマ?! 兄ちゃん、ありがとう!!』

 『はっはっはっ・・・・・・任せんかい!!』


 取り消しにされた少女の落胆は計り知れなかった。

 そして兄に襲い掛かる八つ当たり。

 朝食、タクアン。

 弁当、無し。

 夕食、キュウリ。


 食べ盛り、育ち盛りの少年にとって、悪夢と絶望の食事時間となっていたりする・・・・・・。


 ───ああ、イインチョ・・・・・・ワイにとってイインチョは女神様や・・・・・・・・・。


 益々ジャージ少年のヒカリ依存率が上がり、なんだか腰が引けている。



 第壱中学最大の弊害は、



 一人の漢気硬派少年が、委員長少女の弁当従属者となりつつある事であったのかもしれない・・・・・・・・・。




───────────────────────────────────────────────────────────── 

    For “EVA” Shinji 

        フェード:参拾

─────────────────────────────────────────────────────────────




 文化発表会が中止になろうと延期になろうと襲来する使徒が気を使ってくれる訳もない。

 今日も今日とて訓練とシンクロテストに勤しむ三人。


 そして、それを見つめる大人達。


 「あの侵入者、戸籍の残りカスがあったって?」

 「ん〜〜・・・・・・そーなのよね〜〜」

 金髪ポニーの問い掛けに、紫黒のロングが答える。

 シンジ達のシンクロテストを覗きに来た序でに、前回の戦闘報告を聞いているのだ。


 「政府の狗・・・・・・まぁ、侵入捜査専門の輩ね。

  表向きは二年前に死亡した事になってるけど、ずっと活動を続けてるわ。

  “ココ”を調査する為に第二新東京市からなんらかのルートで入った途端、行方不明。

  “向こう”でも騒ぎになってるみたいよ?」


 恐らく、使徒の侵入ルートにぶつかって、その時にコアを移されたのだろう。

 非常に運が悪いといえる。

 ま、移された相手が相手だから胸も痛まないし、処分もできて一石二鳥だと言えなくもない。

 「それにしても・・・・・・段々と使徒の手が込んできたな・・・・・・人間まで使うか・・・・・・・・・」

 溜息をつくような声で、戦闘教官をやっている若い男が呟いた。

 「相手もある意味“人間”だしね・・・・・・・・・遺伝子上なら99.89%人間よ」

 金髪に染めている学者はそういいつつも三人のバイオリズムとシンクロのゲージから眼を離さない。

 テストであろうと実戦であろうと、子供達ばかりに負担を掛けられないからだ。

 「そっか・・・・・・・・・使徒と人間の差って、構成物質とデカさ以外は単体と群体だけなのかもね〜〜」

 軽くのたまい一人頷くエクセレンだが、リツコはその言葉に硬直していた。



 ・・・・・・・・・本質を見事に突いているからである。



 気を取り直してモノグラフを操る。

 データロガーから絶え間なく送られてくる情報に心を戻し、虹色に彩られてゆくシンクロゲージをチェッ
ク。

 心理的圧力を変えても不変のゲージ。

 モニターに映る00、01、02のコードが浮かぶ子供達三人が、途轍もなく高い数値を維持していた。


 「・・・・・・・・・凄いです・・・・・・」

 思わず言葉を漏らす黒髪童顔の女性。

 マヤにしても、こんな数値を診る事になるとは思ってもいなかった。


 ただ単に高いシンクロゲージなら戦闘中に何度も見ている。

 しかし、高い数値であればあるほど高い戦闘力は維持できるが、高すぎるとフィードバックによる死の危険
が付きまとう。

 特に初号機はやたら左腕を犠牲にしている為、本人の左腕が白くなっている程である。

 だからシンクロ値が高い事で感心したりするマヤ達ではない。


 彼女達が驚いている数値はシンクロ率ではないのだ。


 ハーモニクスである。


 誤差0.0000まで安定しているのだ。

 三人ともEVAとの精神的な融合を果たしているかのように、ノイズが全く走らない。

 それでいてシンクロ率が高すぎることが無い。


 言うなれば、『一体化』である。


 先にも述べたがシンクロ率は高いに越したことは無いが、高すぎると弊害が多い。


 EVAのシンクロ率の理論限界値は100%に達しない。

 区別がなくなるからだ。


 だが、隠されている“裏”の理論限界は400%。この数値に達するとEVAに取り込まれてしまう。

 そしてその事は、“上”人間全員が知っている。



 目の前でそれを見てしまったからだ。



 先ずはユイの時、次がキョウコの時。

 ユイは固体情報全てをコアに吸収され、キョウコは心の一部を食い千切られている。


 もっとも、なるべくしてなった事であるのは三人の子供達は知っている。


 コアに残ってもらわないと、子供達がシンクロできないからである。


 シンジによってトラウマを“あの海”に残した形でサルベージされた“今”のアスカは、冷静な頭で考え
る事が出来ている。


 ───“あの”ママの自殺・・・・・・実はゼーレに始末されたのではないか?───


 と・・・・・・・・・。


 実際、錯乱した患者の部屋にロープ等といったものを置く馬鹿はいない。

 それに、自分が見たキョウコの足の位置が高すぎる。

 自分で首を吊ったにしても、あの病室にある足場からいって、不自然に高い。

 首を吊るにしても、ロープを掛けるにしてもだ。


 恐らく、アスカの首を絞めた事によって危険性を察知した委員会が、キョウコの必要性はアスカに与える
トラウマだけと認識して始末したのだろう。

 真偽ともかく、アスカはそう推察している。



 いきなりグラフが乱れた。



 プラグ内でアスカがその事を思い出し、怒りに囚われたからだ。




 反対にレイはというとトラウマが無い。


 ───いや、『無い』と思っていた。


 事実、“前”の彼女はいつも“無”に還る時を待っているような存在だった。

 絆と言えばEVAに乗る事と司令だけ。

 自分に笑顔を向けてくれた彼だけである。


 だが、碇シンジという人間に会って、彼女の心に別のモノが生まれた。


 “絆”を“求める”という“欲求”である。


 今までただ睡眠をするだけだった眠りに彼が現れ始めた。

 教室にいる時、戦っている時、ふと視線を感じ始めた。

 彼に話し掛けられたら、返事をし始めた。


 そして、


 自分は笑う事ができた・・・・・・・・・。



 しかしそれは二人目まで。


 三人目はシンジの絶望の声で目覚め、感情はリセットがかかっていた。


 だが、それでも彼の心を追っている。


 二人目までにあった司令への絆は、もうほとんど無かったからだ。

 だから最終局面、シンジの救いの声にリリスと同化して彼の元へやってきたのだ。



 シンジの精神が崩壊すると理解できず・・・・・・・・・・・・。



 いきなりグラフが乱れた。


 その事をプラグ内で思い出し、レイは悲観にくれたからだ。


 リリスと同化してシンジの元へ駆けつけた自分を激しく拒絶するシンジ。


 その事がレイの心にロンギヌスの槍のように打ち込まれていた・・・・・・・・・。





 「ちょっと、いきなり乱れたわよ?」

 「心理的な重圧・・・・・・ううんストレスね・・・・・・・・・」


 コンポのゲージよろしく細かく上下するゲージ。


 「パルスで送ったプレシャーが、トラウマに引っ掛かったのね」

 二人の少女の眉が顰められ、赤みがかった金髪の少女は怒りの、

 青みがかった銀髪の少女は悲しみの色を浮かべた。


 しかし、その間に挟まれた形で安定しているゲージもある。


 「シンちゃんは変わらないわね」

 「うん・・・・・・? あ・・・・」

 ミサトがそう言った途端、シンジのグラフが細かく動き出した。

 リツコの前で上下するゲージ。

 だが、モニター内のシンジに変化は無かった。


 しかし、こうなると続けても仕方が無い。

 テストを中断すべくパルスを弱めようとした矢先、その指が止まった。


 「これは・・・・・・まさか・・・・・・・・・」

 思わず口に手を当てるリツコ。

 測定機外の変化に戸惑っているのではなく、自分の出した論理飛躍に呆れただけだ。


 「ハーモニクスに変化は・・・・・・・・・あ、あれ?」

 「どうしたの?!」

 「え、えと・・・・・・ハーモニクス値が・・・・・・平均になってます」

 「はぁ?!」

 マヤの説明にミサトが抜けた声を上げてしまった。




 たちまち安定し直すグラフ。

 シンジのゲージに引っ張られる形でゆっくりと乱れが治まって行く。


 まるで諭すように、まるで語りかけるように・・・・・・・・・。


 シンジのグラフの振れはそれほどゆったりとしたものだった。



 ───隣に彼がいる・・・・・・・・・───



 その事を思い出したかのように穏やかな顔に戻ってゆく二人。

 気のせいかもしれないが、二人の意識は少年の方へ向いているようにも見える。


 「な〜〜んか、ヤケちゃうわね〜〜」

 そう言ったエクセレンだが、顔は微笑を浮かべていた。

 「ホントよね〜〜。シンちゃんてばテレパシーでもあるんじゃない?」

 ホッとしたミサトもおどけて言った。


 少年から伝わってくるイメージは、優しく二人を抱きしめているビジョン。


 大丈夫。

 僕はココにいる。

 ここにいる全員が、そう言い聞かせている風に感じていた。


 「ふふ・・・・・・そうね。調べてみようかしら?」

 冗談とも本気とも取れるセリフを口にし、リツコは煙草に手を伸ばす。

 あ、ここは禁煙だったわねと、取り出した一本を箱に戻す。

 ジロリと睨むマヤの眼も戻った。

 潔癖な彼女は喫煙まで気に入らないのだろう。


 そうこうしている間にハーモニクス値は元のように安定した。


 アスカとレイの表情は、安心しきっているかのように穏やかだ。


 やはりすぐ傍にシンジがいてくれるからだと大人の女性陣は得心していた。



 事実、シンジからは微弱ではあったが“念”が放たれていた。

 アスカとレイの感情の波を察知したシンジが無意識に放っていたのである。


 少年は、無意識下であろうと絆を手放さないのだろう。



 「・・・・・・・・・危険だな・・・・・・」

 緩んだ空気をぶち壊すようにキョウスケが漏らした。

 「何が?」

 横から合いの手を入れる様なタイミングでパートナーが突っ込んだ。

 「あの娘達だ。
  シンジを心の拠り所にしているのはいいが、依存心が強すぎる」


 事実、先だっての二体の使徒殲滅は怒り狂ったアスカとレイによるものだ。

 二人とも冷静さを欠き、武器庫ビルを破壊して武器を奪い取るように攻撃していた。

 ビルの被害はこの二体のEVAによるものなのだ。


 ではシンジはそんなことはやらないのか?


 というと、多分するだろう。

 彼の方がもっと無茶を・・・・・・・・・。


 三人とも、お互いを守る為には我を失うのだ。


 攻撃力云々はともかく、一人でも欠いた場合の弊害は計り知れない。


 「そうねぇ〜〜・・・・・・シンちゃんてば、アスカたんとレイたんの為だったらトコトコ無茶するし・・・・・・」

 「この場合、“とことん”だと言い直しておく」

 律儀にエクセレンに突っ込んだ後、前に向き直ってシンジ達に眼を戻す。


 特に、三人の真ん中に位置する少年、シンジ・・・・・・・・・。


 14歳。


 それもついこの間までただの中学生であった少年にはとても見えない。

 静かに眼を瞑っているその顔は、間違いなく戦士の顔だ。


 只の戦士ではない。


 アスカやレイは勿論、友人知人、この町の人間を守る為にEVA越しとはいえ腕や足を平気で犠牲にし、
敵を打ち倒してゆく。


 その姿、それは“サムライ”。


 セカンドインパクト前、第二次世界大戦期までは日本に残っていたサムライ魂をこの少年は持っていると
でもいうのか?


 だが、単なるカミカゼ意識ではない。


 決して己の死をもっての勝利を、真の意味での“勝利”とは思っていないのだ。


 自分が“死”ぬ事によって発生する弊害を、悲しむ者達の事も考えている。

 だから彼は“死なない”。



 “生きて”皆に微笑んでくれるのだ。



 だからいつもキョウスケは思う。


 ───本当に14歳の少年なのか?


 と・・・・・・。


 「お疲れ様。もう上がっていいわよ」

 リツコの声と共に眼を開ける三人。


 “あの”自分が出した作戦案、“ランページゴースト”というユニゾンアタック攻撃作戦の後、三人の結束
はより一層強まっている。

 多少の揉め事はあったものの、同級生の少女の働きによってそれもステップとなっている。

 結局は子供達が自分の力だけで壁をこじ開けて行くのだ。


 大人という位置にいる自分達・・・・・・・・・。

 しかし、手をこまねいているだけ。

 不甲斐無いとはこの事である。




 今、キョウスケらはある戦いを行っている。

 間に合うかどうかは開発陣の努力によるが、この計画が実行されたなら、子供達にかかる負担も軽くなる
だろう。

 戦自にも同種の計画があったらしいが、使徒の戦闘能力とATフィールドの強度を知ると計画が根本から
頓挫したらしい。


 部隊員全員がかりのバンザイ突撃でもダメージ係数が上がらなければそうするだろう。


 解散した部隊の人間の何人かはNERVが引き取ったそうだ。

 肉体改造していたらしいからだと聞いた気がする。


 少年兵だと言うことだが・・・・・・・・・大人達はどこまで行っても馬鹿ばかりだということか・・・・・・。


 シンジ達がテストプラグから出てくるのを見届けると、キョウスケは部屋を退出した。


 己のやるべき事をする為に・・・・・・・・・。





 「はれ? 南部君ドコ行ったの?」

 「キョウちゃん? 多分、シュミレーションルームよ」

 「熱心ね〜」

 そんなミサトのセリフに肩をすくめ、エクセレンもドアへ向かう。


 「熱心なんじゃないわよ。

  あいつ、まだ怒ってるのよ」


 彼女はそう言い残して部屋を後にした。


 彼を追って、


 自分も訓練をする為に・・・・・・・・・。






 「怒ってる?」

 彼女がいなくなった後も理解できていなかったミサトであったが、なんだか仲良くシャワールームへ向か
う三人を見た時、はたとそれに気がついた。


 「あ、トライデント計画か・・・・・・」


 機体性能はさほど悪くない。

 武装もまぁ、特殊車両といえば良い方だろう。

 で、戦闘に向くか・・・? という話になると、“不向き”の一言で終わってしまう。


 広視界を得る為にコクピットが前面に出、更に被弾率を下げる為に小さい。


 この時点で子供じゃないと乗れない。


 それだけでも問題が多いのに、ショックアブソーバーが殆ど考えられていない。

 一戦闘はおろか、戦闘中に内蔵ショックで死亡しかねない。

 高機動モードのようなものもあるが、これまた直線的な移動だけの上、人間の対G効果を考えていない。


 ここまででも問題だらけだというのに、最大の欠点がある。


 ───ATフィールドの事を全く考慮していない───


 クジラに100円ショップで売ってる水鉄砲で戦いを挑む気らしい。


 そう言われた方がいくらかマシだ。

 なにせ、普通の人間は扱えないから、扱える人間を“作る”ところまで行っていたのだ。

 当然、“扱える”というだけで“戦える”という訳ではないし、勝つことなぞ不可能。


 この機体で勝利する為には無敵モードでもなければ夢で終わるだろう。


 ぶっちゃけた話、地雷一発の衝撃で機体は兎も角、パイロットは死亡するなんてマシンは大問題なのだ。


 計画の頓挫に他使用不能の少年兵達の扱いに困った戦自は、なんとNERVに押し付けてきた。

 表向きは本部のガードと戦略実習であるが、その実は只の厄介払い。

 なにせ子供達に肉体改造を施して前線に立たせようとしていたのだ。

 事が公になれば、上層部の首が飛ぶ。

 内々に処理しようとしていたのであるが、いつの間にかNERV調査部に調べ上げられており、ヘタをす
るとこっちの首を絞めかねない。


 よって、“押し付け”という手段に出たのだ。


 もっとも、NERVも馬鹿ではない。

 ちゃんとメンタル調査を最深度度で行っており、戦自のスパイでないことは確認済みだ。


 人件費・・・・・・つまり支払う手当が増えたものの、実戦実働人員が増えたことには素直に喜んでいたミサト
であったが・・・・・・・・・。


 『子供を前に出して戦わせるって事に変わりはないわよね・・・・・・・・・』


 今更ながら自分の浅慮に溜息をつく作戦課長。


 そして、その事で落ち込む親友に苦笑しつつも、技術部主任はこれからの事を考える。


 使徒戦はこの間の壱拾壱使徒で折り返しに入った。

 “第壱拾八使徒”を含め、残り七戦・・・・・・・・・。


 最後の使徒たる“ニンゲン”がどう動くか・・・・・・・・・・・・その事が最大の難所である事を、胸の中で自覚す
るリツコであった・・・・・・・・・。





                *   *   *   *   *   *   *   *   *



 「怖い?」

 「うん・・・・・・」

 いつになく元気の無い少年に、アスカは問い掛けた。

 意外なほどあっさりと答えるシンジ。

 「バッテリーゲージは無くなっていくし、LCLが劣化してくるし・・・・・・・・・。
  ずっと使徒と戦ってきたけど、あの時初めて自分の死っていうのをすぐ近くに感じたんだ・・・・・・・・・」

 真綿で首を絞められるみたいな感じだったとシンジは続けた。

 確かに漆黒の闇の中ではそうだろう。

 正式なパイロットではないシンジが無感覚トレーニング等やっているはずも無いのだ。

 それに、あの使徒、


 第壱拾弐使徒レリエル───


 その闇の中は正に別空間。

 宇宙空間といっても差し障りが無い。

 上も下も無い闇の中、あんな長時間よく正気を保てたものだ。


 もっとも、意識が死に掛かった為に“ユイ”に救われたのであるが・・・・・・・・・。

 シンジが精神的に成長している今、 “ユイ”はまだ眠りについている・・・・・・・・・。


 アスカとレイはコアにいる母親や“一人目”との結びつきで機体を動かしているのだが、シンジの場合は
違う。


 極端に肥大化した魂を使ってコアに直結しているのだ。

 だから理論上の活動時間はずっと長い。


 S2機関・・・・・・すなわち人工的に“作り出された”“魂”の代わりにはなれないものの、代用くらいにはな
る。


 流石に機体が大きい為か、使徒のコアを吸収(“魂”を完全なものにする)しない限り、活動時間無限は無
理であるが・・・・・・。




 そんな彼を慰めるような形でアスカが腕を絡めてきた。

 反対側で黙って聞いていたレイも。


 一瞬驚いた顔をしたシンジであるが、二人の心遣いを理解し、そのまま歩き出した。


 正に両手に華状態の少年。

 歩いてゆく三人の姿を眺めつつ、職員達は微笑ましい光景に笑みを投げかけていた。


 「今日の晩御飯、タンタン麺にするよ」

 「何それ? 中華料理?」

 「違うよ。名前の元はそうだけど、日本に来て別物に変わったラーメンなんだ」

 「へぇ〜〜」

 「わたし、肉・・・・・・」

 「解かってるよ。大豆肉で作るから」

 「ファーストばっか気ぃ使ってぇ〜〜」

 「碇君はわたしを大事にしてくれるの・・・・・・(ぽっ)」

 「ファ〜ストぉ〜〜〜・・・・・・」


 他愛無い口喧嘩をする二人に挟まれたまま、シンジは本部を後にする。


 傍目にはFBIに掴まった宇宙人という構図にも見えなくも無い。


 しかし、その実は少年に心を鷲掴みにされて身動きがとれなくなっている少女達。


 “今”という平和な瞬間を噛み締めながら、三人は夕食へと想いを馳せていた。







 闇を司る第壱拾弐使徒レリエル・・・・・・・・・・・・。




 その“影”は刻一刻と第三新東京市に迫りつつあった・・・・・・・・・・・・・・・・・・。










                                           TURN IN THE NEXT...












 ──あ(と)がき──


 困ってます・・・・・・・・・。

 何にって?

 『はっぴぃ・・・』終わらせたから次はどーしよーかってコトですよ(^^;)。


 ちょっと遊びでプロット組んでみたらなんかヘンな話になっちゃって、気が付いたらココには送れないモ
ノが出来上がって・・・・・・・・・。

 ヤレヤレ・・・・・・。


 ラブコメもいいなぁなんて思い直してみたけど、どーも原作(EOE)引き摺ってて上手くいかない。


 『はっぴぃ・・・・・』が特殊だったからかなぁ・・・・・・。




 何とか秋の気配が迫ってくれたお陰て打つ速度が上がってるから、もっと考えてみます。



 ではでは・・・・・・・・。


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
boh3@mwc.biglobe.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
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