ここに一つの大国があった─── いや、面積や人口、人種等では相変わらず大国と言って良いのだが、肝心の国を支えるものが無い。 セカンドインパクト時の地殻的ショックで化石燃料は軒並み失われ、軍も派兵中に巻き込まれて消失。 オイルメジャーも崩壊し、インフレと失業者に溢れかえって国家として支える能力が欠損してしまったの だ。 更に、急遽抜擢された大統領が完全に無能のお飾りだった為か、あっさりとゼーレの軒下に落ち着いてし まい、その大国は世界中に食料を配布するだけの農業国家になってしまったのである。 無論、元々が世界に抑止力を持つほどの農業大国であったのであるが、残念ながら現在は各国に尻尾を振 るしか生きる術を持たない国家なのだ。 まさかセカンドインパクト前までせせら笑っていた共産大国の経済状況を下回るとは思いもよらなかった であろう。 だが、当然ながら復権を望む者もいる。 NERVというドイツ産の組織の下部に陥ったとはいえ、権力を失ってまだ十年そこそこ・・・・・・。 巻き返しを企むのも当然である。 参号機、四号機の建造─── それが権威復権の旗印である。 プロダクションモデルの能力をフル活用し、実験機などの失敗を踏まえてハーモニクスの安定化を最重要 課題とし、扱いやすく帰還率の高い機体として計画を進められていた・・・・・・・・・。 特に四号機は実験的ではあるものの、初のS2機関搭載型である。 これが完成したのであれば、本部にも、そして“真”の計画本部であるドイツにもその力を示す事ができ る。 そして、もう一つ・・・・・・・・・。 監視攻撃衛星の打ち上げ計画があった。 使徒はとにかく索敵がしにくい。 突然現れるとしか思えないほどなのだ。 だったら広くカバーをする為、使徒の行動そのものをモニターし、出現パターンデータを得る必要がある。 よってEVA建造と同時進行で作られたのが、監視攻撃衛星DB−1・・・・・・通称“ダモクレス”だ。 攻撃衛星という自衛衛星の触れ込みで許可を貰い、その実は全てを観察する為に作られたものである。 元々、KH(キーホール・・・・・・覗き穴の略)型の衛星は十八番であり、その数は演算機を必要とするほど 打ち上げているのだ。 製作コンセプトは全て揃っていた。 だが、上手くいかない時はあるものだ。 “本当なら”日本のNERV本部に使徒が侵入していたであろうその日。 天候的にも恵まれ、正に打ち上げ日和であった為、国の重鎮はゴーサインに調印した。 発射台から滑るように上ってゆく多段式ロケット。 セカンドインパクトによって経費を削減され、実際はシャトルより経費の掛からない事を恥も外聞もなく 見せ付けつつ、それは上って行く。 打ち上げから軌道に乗せるまで何のトラブルも無い。 当然だ。 我々の技術に失敗は無い。 技術者達は顔を赤く高揚させ、そう胸を張った。 が、現実とは目を背けたくなるほど残酷である。 衛星軌道に固定した直後、その自信に満ちた顔は混乱の青の色に変わった。 唐突にコントロールを失い、搭載してあるN2統一指向性ミサイルが発射準備に入ってしまったのだ。 あわてて自爆コードを打ち込むが受け入れを拒否。 目標は本国の大型リアクター発電システムである。 そんなところを破壊されたら人類生存の危機なのだ。 己の作ったシステムにハッキングするのもマヌケな話であるが、生きるか死ぬかの状況なのでは致し方な い。 なんとかシステムの一部を乗っ取ってミサイルの対象を不可設定にし、宇宙に向けて発射した。 どこまでも突き進んでゆくN2弾頭。 当然ながら宇宙を駆ける事が出来るようなエンジンを積んでいる訳ではないので、殆ど慣性だけで突き進 む。 それでも突拍子も無い速度で宇宙を突き進んでゆく。 星の明かりの無い空間を更に真っ直ぐ進んでゆく。 その国の発令所は、安堵と共に計画の頓挫による絶望感に満たされていた・・・・・・・・・。 残りは四号機のS2機関の実装という成功による名誉の挽回のみ。 それが恥の上塗りになる事は・・・・・・・・・今は知る由もない・・・・・・・・・・・・。 打ち上げ事故によるざわめきを背に、その男は歩き出す。 彼の目的は達せられた。 “あの”ミサイル・・・・・・いや、“棺桶”はドコまでも突き進むだろう。 暗い宇宙を、どこまでも・・・・・・・・・。 人の手から離れ、二度とこの星に戻らないように・・・・・・・・・。 ひょっとしたら“あれ”にはそれが幸せなのかもな・・・・・・─── 誰に言うとも無くそう唇を動かすと、その男は染めた髪の色を落とすべく、隠れ家へと足を進ませた。 髪を染めたのは言うまでも無く変装の為だ。 彼は作業員に化けて“ここ”にいたのである。 やるべき事は全てやった─── 男は日本にいるであろう、忘れえぬ女を思い、煙草の煙をくゆらせた・・・・・・。 ハードボイルドなジタンより、今は安っぽいセブンスターの方を求めている。 戻ったらカートンで買おう。 いや、あいつに昔みたいに言われるかな? “煙草の味がする・・・・・・” 思い出し笑いをする自分に苦笑して、吸い掛けのジタンをもみ消す。 喉に残るほろ苦さをこれっきりに、ドアノブに手をかけて予定されていたものと違った未来へ一歩を踏み 出した。 葛城・・・・・・・・・今度こそ・・・・・・な・・・・・・─── 男の顔は、作り物ではない笑みが柔らかく浮かんでいた・・・・・・・・・。 ───────────────────────────────────────────────────────────── For “EVA” Shinji フェード:弐拾六 ───────────────────────────────────────────────────────────── 「どう言う事かね・・・・・・」 「解からぬ・・・・・・・・・」 「タイムスケジュールから言っても、第壱拾使徒の進行・・・或いは行動があってもおかしくない筈だ」 「だが、何の音沙汰も無い・・・・・・」 「スケジュールから鑑みて、二ヶ月以上の変革がある。いくらなんでもおかし過ぎる・・・・・・」 「第九使徒の行動も記述どおりではない」 「確かに・・・・・・『鉄槌』だった筈が、『楔』になっている・・・・・・」 「第七使徒は三人に分かれた・・・・・・『双子』だった筈だ・・・・・・」 「書き直しの利かない所へ来ているのではないか?」 沈黙というヴェールが老人達を覆う。 狂信者たる彼らにとって、教えられた神の使徒の行動が教えと違う事が不安にさせているのだ。 自分らが信じきっていた“聖書”が、三文の小説に見えてくる。 ぞわぞわと湧き上がってくる疑念が、不安と言うスパイスを伴い、老人達を押し包む。 自分達の行動が正しいのか?─── と・・・・・・。 だが、半ば形骸化した固い頭の老人達はあえてその不安を飲み込む。 自分達が生きてきた事を否定しない為に・・・・・・・・・。 否、自分の存在価値を自分で否定しないように・・・・・・・・・。 「まぁ、良い・・・・・・・・・どちらにせよ切り札はこっちにある・・・・・・・・・最終的な“使者”と最後の使徒たる “群集”はな・・・・・・・・・」 バイザーの老人がそう占める。 自分の不安を握りつぶすかのような自信を持って・・・・・・。 だが、既に方向は狂い始めている。 メンバーが足りないのだ。 二人とも事故で18使徒リリンという儚いその命を散らせている。 視察中に鉄骨が車に突き刺さって潰されたり、 配管のガス爆発によってマンホールの蓋に車の底を突き破られてしまったり・・・・・・。 世界を影で動かす組織の者としての最後とは思えないほど、さりげなく、簡単だった。 無論、今までの記憶や人格は常にモノリスにコピーしてある。 MAGIシステムを更に研ぎ澄ませた人格移植システムをもってすれば簡単なことである。 だが、もう一つ忘れていた事があった。 システムそのものを堅牢にし過ぎた為、データ読み出し用のコマンド・キーが無いとどうしようもな かったのだ。 そしてそのキーが未だに解からないのである。 これにより、“欠員者”となってしまったのだ。 計画にとっては些細なことだが、メンバーの欠損というものはシナリオには無かった事。 それでも彼らはシナリオを進める。 無理にでも。 弊害だらけでも。 自分らが求める人類の未来の為に・・・・・・・・・。 その未来が握るどころか触れる事すら敵わないほど膨らんだレールとなっていることも知らず・・・・・・・・・。 * * * * * * * * * 「う〜〜ん・・・・・・・・・マヤ、このデータ間違いない?」 「はい。誤差±0です。間違いありません。 シンクログラフ、ハーモニクス、共に偏差値0.00000000000で全く動きがありません」 「つまり、全く反応無いって言う事ね? やれやれだわ・・・・・・」 溜息をつきつつ、冷えたマグカップを手に取る。 温かみの無いコーヒーは酸味をきつめに感じるから好きじゃない。 「零号機と初号機はパーソナルパターンも同じな筈なんですが・・・・・・・・・」 「多分、コアのパターンが変動してるのよ。チェックしてみないと詳しいことは解からないけどね・・・・・・」 等と言いつつも、なんとなくホッとした表情のリツコ。 今、リツコ達いるモニタールームの前には初号機があった。 だが、そのエントリープラグ内にいるのは専属パイロットの碇シンジではなく、ファーストチルドレンた る綾波レイである。 現在行われているのはパイロットの交換実験。 無論、本来の目的はダミーシステム使用の可能実験であった。 だが、ヘタをするとパイロットの精神に無意味で甚大な負担を与えてしまうそのダミーシステムは、リツ コの独断で破棄している。 命の・・・・・・・・・いや、自分の“娘”のようなレイの冒涜に他ならないからだ。 昔の自分ならともかく、現在の彼女はレイに対して年上の大人、姉、そして母親として接している。 そして、そのリツコの行動に対してレイが行う一挙一行動が、なんとも心地良かったのだ。 だから、そんなレイを道具として使う事はおろか見ることすら出来なかった。 しかし、委員会からの突き上げは来る。 だったら、しょーもない実験でも執り行い、データの不備を見つけてはその箇所を過大させて提出するつ もりであった。 が、レイと初号機は不備より何より、全くシンクロしないのである。 レイと初号機は同じリリスの細胞で出来ている。 確かに構成はかなり違うが、それでもゼロという事はありえない。 と言う事は初号機の“コア”が拒否・・・・・・いや、全く何の反応も無いのだから、“無視”しているのだろう。 『息子を盗られそうだから拗ねてるのかしら・・・・・・?』 同僚のセカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーとシンジを巡って“女”のバトルを繰り広げるレイ。 どちらに転んだとしても、シンジはこの二人の内のどちらかからパートナーを選ぶだろう。 それは、彼が二人を見つめる眼の優しさを知っているからの考察であった。 つい、そんな事を考えているリツコの脳裏に、膝を抱えて『ぷいっ』と顔を背けてむくれるユイのビジョ ンがかすめた。 くす・・・・・・。 「先輩・・・・・・?」 思わず笑ってしまったリツコを訝しげに見るマヤ。 「ううん・・・・・・何でもないの。それにしても良かったわね、マヤ。ダミーが使えなくなって・・・・・・」 「ハイ!! あ・・・・・・・・・・・・ええ〜〜と・・・・・・・・・」 思いっきり答えてしまったものの、流石にバツが悪いのか慌てるマヤ。 そんなマヤに微笑を投げかけつつ、リツコはレイに問い掛ける。 「どう? レイ。初めて乗った初号機は?」 『碇君の匂いがする・・・・・・』 モニターには、自分を抱きしめて頬を桃色に染めた、 好きな男の子の事を想う、ただの少女が映っていた・・・・・・・・・。 * * * * * * * * * 「どう? シンジ君。零号機のエントリープラグは」 『何だか・・・・・・・・・変な気分です』 当然、次はシンジと零号機のシンクロ実験である。 “前回”、シンジの心はコアに接触され、リツコを殺そうとした。 それがリツコの母親たるナオコに対する恨みなのか、それともコアの中に押し込まれた事による“彼女” の混乱なのかは未だに解からない。 だが、シンジは確信していた。 “今回”も、“来る”ということを・・・・・・・・・。 「違和感があるのかしら?」 マヤもパルスチェックしてみる。 グラフは乱れ、全くシンクロしようとしない。 いや・・・・・・・・・・・・・・・・・・? その波長のパターンはどんどん変質して行き、被験者たる少年に重なってゆく。 「せ、先輩っ!!!」 マヤの悲鳴にも似た声を聞き、リツコも慌ててシンクロモニターを確認する。 「こ、これは・・・・・・・・・・・・勝手にシンクロしてゆく・・・・・・・・・? 搭乗者のパーソナルパターンに零号機が合わせてるって言うの?! そんな馬鹿な・・・・・・・・・・・・」 来た─── 慌てふためく発令所とは逆に、シンジの心は落ち着いていた。 予定調和であったということもある。 しかし、それ以上に会って話がしたかったのだ。 ・・・・・・・・・“彼女”と・・・・・・・・・ 「ま、まさか・・・・・・・・・精神汚染?!」 「そんな・・・・・・・・・シンちゃん??!!!」 流石の作戦課長も、慌てて窓に張り付いた。 見た目何の変化も無い零号機。 そう、身体というパーツには・・・・・・・・・。 水の音がする─── だけど水の中という訳ではない。 “中”ではなく、自分は“水”そのものなのだ。 だから意識が届く。 傍に並んでいるのを知っているから・・・・・・・・・。 『誰・・・・・・?』 『僕?』 『あなた誰・・・・・・?』 『僕は碇シンジだよ・・・・・・・・・』 『イカリ・・・・・・シンジ・・・・・・?』 『うん。そうだよ』 『おじさんの・・・・・・知り合い?』 『うん・・・・・・その子供なんだ』 『そう・・・・・・あたし、なんでここにいるのかな・・・・・・・・・? ここってドコなの・・・・・・?』 『・・・・・・・・・夢だよ。君は夢を見てるんだ・・・・・・・・・』 『ここイヤだよ・・・・・・・・・とても怖いよ・・・・・・・・・』 『大丈夫だよ・・・・・・・・・』 優しいココロの波に安心感を“思い出す”その幼いココロ。 それでも容赦なく記憶がその儚げなココロを蹂躙すべく駆け上がってくる。 『だって、あのおばちゃんが・・・・・・おばちゃんが・・・・・・』 意識が歪む。 『おばちゃんが・・・・・・おばちゃんが・・・・・・』 自分の死を確認するかのように・・・・・・。 『おば・・・・・・ちゃんが・・・・・・・・・・・・っ!!!!!!』 『レイちゃんっ!!!!!!』 びくっ!! 力強い声だった。 どんな悪夢も弾け飛ぶほどに、 どんな恐怖も弾け飛ぶほどに・・・・・・。 そして、久しぶりに聞いた“名前”だった。 『夢だから。全部夢だから・・・・・・・・・もうすぐここから出してあげるから・・・・・・・・・』 『・・・・・・・・・ホント? ホント・・・・・・なの?』 『うん。僕は嘘を言わないよ。絶対に出してあげる。だから、それまではお姉ちゃんの言うことを良く聞 いて寝てるんだ』 『お姉・・・・・・ちゃん・・・・・・? 誰?』 『時々感じるだろ? 君に良く似た女の子だよ』 『え? ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・思い出したよ・・・・・・お兄ちゃんの事が好きなあの女の人?』 『え・・・・・・・・・? う、うん、多分ね・・・・・・・・・』 『そっか・・・・・・・・・あたしも好きになっちゃいそう・・・・・・』 『あはは・・・・・・ありがとう・・・・・・』 照れたような意識。 それでも嘘偽り無く微笑んでくれていることを直接感じる。 幼い子供にとって、本当の優しさは何よりも心を落ち着かせ、安心させる。 『ねぇ・・・・・・』 『なんだい?』 『目が覚めたら・・・・・・・・・・・・・・・・・・抱っこしてくれる?』 『もちろん』 『ホント?』 『言っただろ? 僕は嘘は言わないよ』 『うんっ!!! あたし、待ってる。ず〜〜っと待ってる!!』 『ごめんね・・・・・・。 でも、目が覚めたら皆で暮らそうね。お姉ちゃんも二人できるよ。もちろん、僕も一緒だよ』 『うん!!! 楽しみだなぁ・・・・・・早く目が覚めないかなぁ・・・・・・・・・』 『おやすみ・・・・・・今度会うときはずっと一緒にいるからね・・・・・・・・・ずっと・・・・・・・・・』 『うん・・・・・・・・・約束だよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 「シンクログラフ安定!! 規定剥離値に入りました。意識が分離します!!」 「医療班!! 急いで!!!」 規定値以上、取り込まれるギリギリのラインまで上がったシンクロ率の為、シンジはそのまま入院となっ た。 『なんでシンジにそんな無茶させるのよっ!!!!!!!』 と、赤い戦姫がお怒りになられたが、リツコとて何でこんなことが起こったか解からないのだ。 システム的に言っても、スペック的に言っても、機体が向こうからシンクロしようと積極的に波長を変え てくることはありえないからだ。 まるで、女の子が相手の好みに自分を着飾ったかのような行動と後に彼女は語った。 どちらにせよ、機体交換実験は二度と行われなくなった。 しかし、ある程度真実に近いリツコの最終レポートにはこうある。 ───人は人であるからこそ人・・・・・・・・・。 例え人造人間であろうとも、心を宿すのなら人なのだ・・・・・・・・・。 だから心を宿せば、やはり好みでしか付き合えないのだろう。 初号機はシンジ以外の人間ではピクリとも動かせず、 零号機はレイ以外の人間は取り込もうとする。 NERV本部におけるダミープラグ開発は、これで全て頓挫する事となった・・・・・・・・・。 * * * * * * * * * 『どういう事なのかね?』 「どういう事・・・・・・とは?」 冬月の前に“三人”のメンバーが並ぶ。 ゲンドウの不在中に、直接彼に連絡が入ったのだ。 『君のいるところから送られてきたレポートだよ。 これによると、ダミーが受け入れられないとあるが・・・・・・?』 「ええ。その通りですが?」 『ふざけるな!! 我々の投資で遊んでいるのか?! あの玩具はお前達だけのモノではないのだぞ!!!』 溜息をつきつつも眼を放さず彼らを眺める冬月。 その落ち着いた行動が彼らを益々不快にさせる。 『前述した通り、初号機と零号機は専属パイロット以外を認めておりません。 試しに弐号機パイロットのパーソナルデータを入力しましたが、一瞬で削除されました。 更にテストとして作られたダミーを挿入してみましたが、強制的にエジェクトされてプラグは壁に突き 刺さりました』 『・・・・・・・・・』 「MAGIにデータを入力し、答えを求めましたが結果はいつも同じです」 『・・・・・・・・・なんだね』 「其々にパイロットを入れた時点で、機体が自分に枷をつけた・・・・・・と」 『な・・・・・・・・・?!』 『馬鹿な!!!』 「そう言われましても、私が言っているのではなく、MAGIがそう言っているのです」 冬月は飄々と怒りを避ける。 毒気を抜かれたように動揺を治める一同。 「MAGIが言うには、あの子供達はあの機体を動かす為の“真”のパイロットとして生まれてきたのだ と・・・・・・・・・」 『・・・・・・・・・』 「ですから、あの子供達以外が動かすことはおろか、乗ることも出来ないようになったのだと・・・・・・」 『真の意味で専属パイロットと言うことか・・・・・・・・・』 「はい」 沈黙という錘が全員にのしかかる。 自分達の立てた計画の一部にあいた小さな不安が、メキメキと音をたてて穴を抉り、押し広げてゆく。 まるでその計画と言う堤防を破壊しようとするが如く・・・・・・・・・。 『まぁ、良い・・・・・・今日はここまでだ・・・・・・』 吊り天井の下にいるような重苦しい沈黙の後、議長が場を整えるかのように口を開いた。 『人類補完計画を遅延は一応、不問にしておく・・・・・・』 『だが、場合によっては更迭もありえると碇に言っておけ・・・・・・・・・』 言いたいことを言ってモノリスの気配は去ってゆく。 全ての気配が消えた部屋で、彼らと同じ穴の狢であった男が一人。 「ふ・・・・・・碇よ・・・・・・・・・・・・。 委員会も相当焦っているぞ・・・・・・・・・。 お前の計画も暗礁に乗り上げかかっている・・・・・・・・・・・・。 だが、オレはそれはそれでいいと思う・・・・・・・・・・・・・・・。 あのシンジ君達の心を踏みにじる罪悪感が無いのなら、オレはそっちの未来をとるよ・・・・・・・・・」 負担は増えたというのに肩が軽くなった冬月は、隠逸な部屋を明るい顔で出て行った。 ───人類補完等という世迷言より前に、人類を守るのが先だろう? 彼は当たり前の真実をそのまま受け入れられるようになっているのだから・・・・・・・・・。 発令所ではいつもの騒ぎが起こっている。 『ちょっと、シンジ!!』 『わぁっ!! 違うよ!! そんなんじゃないんだ!!!』 『シンちゃん、やっるぅ〜〜♪』 頬を緩ませ、いくらか足を速める。 『いかんな・・・・・・差し入れを食い損ねるかな・・・・・・?』 子供達の側についた冬月に、 迷いの陰は全く無かった・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ──あ(と)がき── あ、あれ? シンちゃん達が脇役じゃん(^^;)。 “ミサトさん、結婚式に行く”のつもりがこんな話に・・・・・・・・・。 ま、まぁ、ゼーレの事も、変化した冬月さんの事もやっておきたかったから仕方ないかも・・・・・・。 話的には・・・・・・特にEOEの冬月さんは散々抗ってました。 まぁ、ゼーレの策には・・・・・・でありますが。 NERVの全員が真剣にチルドレンの事を考えてたらどんな話になったでしょうね? 多分、僕ら投稿作家達が考えているようなものとは別の方向へと向かっていったでしょう。 それでも、あの終わり方にはならなかったと“信じます”。 希望的観測・・・・・・だなぁ・・・・・・。 では、次はあの方の登場です。 “やっと”です。やれやれ・・・・・・ では、また・・・・・・・・・。 〜〜嘘を忘れた人に幸いあれ〜〜
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