ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ・・・・・・・・・。


 ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・・。


───耳障りな風の音・・・・・・・・・。

 思い出したくも無い、忘れようとしても忘れられない、忌まわしくも懐かしいあの音・・・・・・・・・。

 熱も何も感じられないのに、拒否してるのに、そんな状況じゃないのに、妙に達観してる自分。

 ズタズタで、それでいてしっかりと私を離さないように抱きしめる強い腕の中、私の意識は戻っていない。


 自分を生かせようとする想いも知らないままの混濁とした私を、

 けっして受け入れたくない現世に呼び戻したもの・・・・・・・・・。


 それは・・・・・・・・・頬にあたった冷たくなり始めた液体。


 場所が場所だったら、もっと生温かいだろうけど、無意味に気温が上がり始めているココでもまだ温度は
低い。


 その液体は・・・・・・・・・いや、そのヒトから流れ出た液体は、その持ち主ごと外気の温度に合わせ始めていた。


 もう、自分に体温が必要ない事を如実に語っている・・・・・・・・・。


 うすらぼんやりとする私が、その人を完璧に形容する言葉をつむぎ出す。



 『お、おとう・・・・・・さん・・・・・・・・・?』



 ・・・・・・・・・・・・父の表情を認識する暇も無く、私の横たわるポッドのハッチをしめた・・・・・・。




 身体の痛みも、鈍痛に変わった腹部の痛みも、感じられないほどの衝撃。





 気が付いた私が見たものは・・・・・・・・・。





 南極大陸という名前を持っていた場所から立ち上がる巨大な・・・・・・・・・。














───また・・・・・・あの夢か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 最近は見なくなっていた“あの時”の夢。

 望むべくもないセカドインパクトの現場に立ち会ってしまった時の記憶。

 父があたしを何の為にあそこへ連れて行ったかは解からない。

 今更知りたいとは思わない。


 ただ、NERVに入ってから知ったものは、

 アレが使徒と呼ばれているモノで、

 その始まりのモノである事・・・・・・・・・。



 父は何の為にあそこに居たんだろう・・・・・・・・・。



 でも、その問いに答えてくれる人は・・・・・・・・・いない・・・・・・・・・。



 ブラのホックを止め、醜く残る白い痕を一瞥し、服を着る。

 いつもはもっと手早く着れるのだけど、今日は少しもたづいてしまう。


 メイクはリツコと違いナチュラル系に押さえ、とっととNERVへと向かいますか。


 ガラ・・・・・・。


 部屋を出るとシンジ君が居た。

 学校帰り・・・・・・もうそんな時間か。

 最近徹夜続きだから時間感覚がおかしいのかしらん?


 「あ、ミサトさん。おはようございます」

 ・・・・・・制服が濡れてる・・・・・・雨が降ってのね・・・・・・。

 頭をタオルで拭きながら、シンジくんが笑顔を向けてくる。


 いつもはドキっとするのに、今日は夢見が悪かったからか戦わせているという罪悪感の方が強い。

 それでも妙に安心してしまう・・・・・・。

 まぁ、彼に心配かけるのもなんだし、笑顔を作って挨拶する。

「あ、おはよう♪」


 我ながら良くできた演技・・・・・・・・・・・・だと思ったんだけど・・・・・・・・・。


 「ミサトさん・・・・・・・・・大丈夫ですか?」

 顔には出さずにいたつもりなのに、ちょっと表情が固くなっているのを見破られた。

 ああ、東郷顧問が言ってた通りだわ・・・・・・・・・勘が鋭すぎるわよ。キミは。

 「んん、なんでもないわよん」

 軽口で話をそらしたつもりだけど、まぁ、無理でしょうね。

 仕方ないから今日の予定を告げてとっとと行きますか。

 「今夜はハーモニクスのテストがあるから遅れないようにね。あ、あとの二人にも言っといて」

 「あ、ハイ」

 水の音が二つする。

 一つは雨の音。

 もう一つはシャワーの音。

 二人で入っているのね。

 今までのレイやアスカからしたら考えられない事。

 ま、いい傾向だから良しとしますか。


 「ミサトさん・・・・・・昇進したんですね」

 「え? あ、ああコレね・・・・・・」

 目ざといわね。シンジ君。

 襟につけてある階級章が一つ上がった事に気付くなんてね。


 葛城一佐だって・・・・・・笑わせるわ。


 生死を賭けて戦ってくれているのはシンジ君達なのに・・・・・・。


 「ミサトさん・・・・・・・・・」

 ん? どうしたの?

 シンジ君は何時に無く・・・・・・ううん。何時もより真面目な顔であたしを見つめていた。

 言いたいことを噛み締めるような眼で・・・・・・・・・。


 「僕にとって、ミサトさんは家族です・・・・・・・・・第三新東京に来て、初めてできた・・・・・・・・・」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?


 「僕は・・・・・・・・・家族を・・・・・・“お姉さん”達を守る為に戦っているんです・・・・・・・・・だから・・・・・・・・・」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・シンジ君・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 何か言おうとしてくれているのは解かる。

 でも、悲しいかな彼のボキャブラリィではコレが限界なんだろう。


 やれやれ・・・・・・・・・この子にかかったら、落ち込む事も許されないのね♪

 ホント、厄介なオトコノコだわ♪

 あたしの目の前でなんとか説明しようと真っ赤になって悩んでるシンジ君。

 あは・・・・・・可愛いわね〜〜♪

 ・・・・・・・・・・・・ま、気持ちはしっかり伝わったわ。


 あたしはニッと笑って、シンジ君の頭を撫でた。


 ホンッッットにイイ子ね。


 あのヒゲの血が混じってるとは思えないくらい・・・・・・・・・お母さんの血かしら?

 「あ、あの・・・・・・?」

 真っ赤になってるシンジ君に投げキッスを送ってから、

 「じゃ、遅れないでね。シンちゃん♪」

 と、部屋を出て行った。


 ──ちょっとシンジ!! ミサトと何してたのよっ!!──

 ──碇君・・・・・・わたしにも・・・・・・・・・──

 ──わ、わぁっ!! 服ぐらい着てよぉ〜〜っ!!──


 部屋の中で起こったいつもの騒ぎ。

 我知らず口元に笑みが浮かんでた。

 アスカ、レイ、

 あなた達の“男”を見る目は正しいわよん♪


 「さてと、今日もガンバリますか!!」


 外は雨・・・・・・・・・。


 だけど、あたしの心にあった曇り空はいつの間にか晴れ渡っていた。



───────────────────────────────────────────────────────────── 

    For “EVA” Shinji 

        フェード:弐拾参

─────────────────────────────────────────────────────────────



 赤いLCLのプールに突き刺さる三本の柱。


 それぞれにナンバーが打たれており、その中には生命反応がある。


 見ようによっては大量の石榴ジュースに刺さる巨人のストローにも見えなくも無いが、実際はそんなのほ
ほんとした物ではない。


 “兵器”である汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオン。

 そのテスト用のエントリープラグである。


 ピーーーー!!

 システムが特定数値を告げるアラームを鳴らす。

 とは言うもののテストルームのモニター前で慌てる者は居ない。

 「零番、弐番・・・・・・共に汚染区域に隣接。ギリギリです」

 「壱番にはまだ余裕があるわね・・・・・・・・・プラス深度、後0.5下げてみて」

 若干の負荷にシンジの眉が顰められる。


 ピーーー!!

 「汚染区域ギリギリです」

 マヤが告げるギリギリの数値。

 とは言うものの、“前回”とは比べ物にならない。

 高いとか低いとかを飛びぬけたもの・・・・・・つまり、安定しているのだ。

 「それでこの数値・・・・・・大したものだわ・・・・・・・・・」

 「ハーモニクス、シンクロ率、共に安定しています。安定値なら他の二人を凌駕してますね」

 溜息のような声で賛辞するリツコ。

 だが、心から喜んでいる訳ではない。

 安定しすぎている数値は、初号機との一体化の確率をも上げているのだ。

 ヘタをすると自分と初号機の区別がつかなくなる可能性をも示唆している。

 「正にEVAに乗る為に生まれてきたような子供ですね」

 男性技師の一人が、賛辞の意味でそう言った。

 しかし、いくらなんでも不用意過ぎる。



 ギンッ!!!!!!!



 リツコ、マヤ、そしてミサトの殺意すら含む眼光を浴びてしまったからだ。

 「ひ・・・・・・」

 肩をすくめ、顔色を青くしながら場を誤魔化すようにモニタリングに集中する。

 リツコ達もどうでもよくなったのか、視線をテストプラグに戻した。

 ただし、終始無言・・・・・・・・・。

 その男性技師は後で胃薬の世話になったという・・・・・・・・・。


 まぁ、仕方が無かろう。


───EVAに乗る為に生まれてきた・・・・・・・・・?
   じゃあ、その為だけに生きろっていうの?!
   そんなの・・・・・・・・・いくらなんでも悲しすぎる・・・・・・・・・。


 元は嫉妬からレイをそのような扱いにしていた筆頭であるリツコも、今は子供達の相談相手だ。

 レイの身元引受人でもある為、家族としても心配している。

 そんな自分の変化に自傷めいた笑みも浮かぶが戸惑いは無い。

 どうせ自分は地獄行き決定なのだから・・・・・・今更どう化けたって差が出る訳が無いのだ。


 パシュウウウウウウウウウウウウウウ・・・・・・ン。


 エジェクトハッチが開き、三人が姿を現す。

 まだ目は閉じられたまま。

 「三人ともお疲れ様」


 リツコの事務的ではない労いの言葉を耳にし、初めてシンジは眼を開いた。



                  *   *   *   *   *   *   *   *   *
 


 「ごめんなさいね。こんな時間まで」

 「そんな事はいいわよ。アタシ達の事なんだしね」

 日はスッカリ暮れているものの、アスカは気にしていない。

 そんな事より気になることがあるのだから。

 「で? リツコ。アタシとファーストのどっちが上だった?」

 「レイと貴女・・・・・・? シンジ君はいいの?」

 リツコのセリフを鼻先で弾き返す、赤みがかった金髪の美少女。

 「シンジがスゴイのは解かってるわよ。どーせハーモニクスシンクロ率もすごく安定してたんでしょ?」

 そのセリフにやはり面食らうリツコ達。

 来日してからそうだが、アスカはアスカの言葉に自分を卑下する色はなかった。

 素直にシンジを頼りにし、受け入れているのだ。

 ドイツ時代の自分至上主義の面影は全く無い。

 「赤木博士・・・・・・わたしと赤毛のどちらが数値高かったのですか・・・・・・?」

 無気力,無神経,無表情の三無主義筆頭であったレイが、ナゼか目を燃やしてリツコに詰め寄る。

 「え? えと・・・・・・?」

 その剣幕に流石の技術部筆頭も言葉が止まる。

 前までのレイではなかった行動なので、脳内データから検索できないのだ。

 「こーなったらマヤでもいいわ!! アタシとファーストのどっちの数値が上だったの?!」

 「え? ええっ?!」

 「何が『ええっ?!』よ!! いい歳して中学生みたいな声出すんじゃないわよ!!」

 「そ、そんな・・・・・・ひどいわアスカちゃん」

 「赤毛にはデリカシーがないわ・・・・・・・・・諦めて・・・・・・」

 「ぬぁんですってぇえええええええええええええ?!」


 その喧騒を見つめながら、シンジとミサトは溜息を漏らした。

 お腹が空いていたので早く帰りたいのだ。



 ようはアスカ達は数値で賭けを行っていたのである・・・・・・・・・勝った方が次の休みにシンジを独占する権利
であった。

 そりゃぁ、必死にもなるだろう。


 シンジの意見は全く入っていなかったのであるが・・・・・・・・・。



                 *   *   *   *   *   *   *   *   *



 「残念・・・・・・・・・同数値なんて・・・・・・・・・」

 わたしはタウン誌を閉じて、組んでいた当日のスケジュールを破棄した。

 数値的には安定し、実戦において足手まといになることは無いだろう。それは嬉しい。

 だけど、実戦じゃないテスト“なんか”の数値より、碇君を独占できないのは痛かった。


 あ・・・・・・・・・わたし、泣いてるの・・・・・・・・・?



 やっぱりサビ抜きにしたら良かった・・・・・・・・・。

 ここのワサビは多すぎる・・・・・・・・・。


 帰るのが遅くなったから深夜営業の回転寿司で買った少量のお寿司が晩御飯。

 流石に物足りないと、碇君がお吸い物を作ってくれたからとても嬉しい・・・・・・。


 “前回”のテストの時は碇君に散々嫌味言った挙句、先に帰ったくせに・・・・・・・・・。

 “今”は彼の数値地が安定している事を心から喜んでいる。

 流石はサルね・・・・・・忘れてるんだわ・・・・・・・・・。


 あ、睨んでる・・・・・・・・・。多分気のせいね・・・・・・・・・。



 ドガッ



 痛い・・・・・・・・・わたし、泣いているの・・・・・・・・・?


 『ア、アスカぁ〜〜・! ダメじゃないか綾波叩いたりしちゃあ・・・・・・』

 『だ、だってぇ〜〜・・・・・・・・・』

 甘えた声のアスカ。

 幼児退行でもしたの? それともネコを被ってる?

 クスクスクス・・・・・・・・・赤木博士の餌食ね・・・・・・・・・。

 サルがネコ被るのね・・・・・・・・・・・・。

 クスクスクス・・・・・・・・・。


 あれ? アスカ、そのロープと袋はなんなの?

 『アンタみたいな歩くデリカシー欠乏症は・・・・・・・・・コロして山に埋めるのよ!!!!!!!』

 『わ、わぁあああっ!! アスカぁああ!!』


 いけない。撤退します・・・・・・・・・。



 ぴゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ









 隣の部屋へ行くと見せかけて、“この”部屋へと潜り込む。

 ここならイロイロな意味で安心できるから・・・・・・・・・。



 でも、予定ならそろそろポイ捨て使徒が出現する頃ね・・・・・・・・・。

 明日は“葛城一佐昇進おめでとうパンパカパ〜〜ン♪ 宴会(エクセレン命名)”が行われるから、ホントに
近いわ。


 “前”はアスカが誘ってくれたけど、行く気がなかった。

 “今回”は当然参加ね・・・・・・・・・碇君の豪華料理が食べられる・・・・・・・・・(ぽっ)。


 でも・・・・・・・・・・・・・・・第壱拾使徒・・・・・・・・・・・・コードネームは・・・・・・・・・サ、サハ・・・・・・・・・?

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、サハクィエルだったわね。

 覚えにくい名前・・・・・・・・・・・・どうでもいいけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 “前回”は碇君が音速で走って一人で受け止め、わたし達が後からフィールドで押し上げて倒した・・・・・・・。

 “今回”は・・・・・・・・・どうなるんだろう・・・・・・・・・・・・・・・・・・?


 使徒は常に一種類で来る。

 それはリリスの生み出した使徒・・・・・・・・・イルカや猿、人間みたいに群体使徒と違って、単一存在の生き物
だから・・・・・・・・・。

 魂が一つしかないから、使徒が死ぬごとに魂が移動して次の器に入るから・・・・・・・・・。

 ガギエルのようなのは例外。

 恐らくイスラフェルの“卵”の近くで死に、魂の尾が切れる寸前に同化し、“身体”の方の生存本能が死ぬ事
を拒否したから・・・・・・・・・だと思う。

 本当のところはイスラフェル“たち”に聞かないと解からないのだけど・・・・・・・・・。


 言うなれば転生を繰り返しているようなもの。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたしと同じね・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



 わたしは一人目から受け継がれた記憶は殆ど無い。

 だけど、使徒達は確実に受け継がれて強くなってゆく。


 まさかマトリエルがあんなに強くなってるとは思わなかったもの・・・・・・・・・。

 じゃあ、サハクィエルは・・・・・・・・・・・・?

 それと、考えたくないけど、いずれやって来る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ゼルエル・・・・・・・・・・・・・・・。


 実は壱拾五使徒からはあまり恐れては居ない。

 理由はあるけど、確証は無いからまだ言えないけど・・・・・・・・・。

 それよりは力押しで来るゼルエルの方が怖い。

 だから単純な力押しで来るサハクィエルも怖い・・・・・・・・・。


 MAGIの落下予想解析とEVAの速度と根性が勝利の鍵・・・・・・・・・。

 情けないけど、それに頼るしかない・・・・・・・・・。


 でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・碇君・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 絶対に守ってあげるわ・・・・・・・・・・・・。


 わたしを想ってくれるように、わたしも・・・・・・・・・アスカもあなたを想ってる。

 全てを守ろうとする碇君の想いは知ってる。

 だけど、わたし達にとっての最大重要保護対象は碇君・・・・・・・・・。


 こんな事を言ったら怒られるでしょうけど、わたしの大事なものの優先順位は『碇君、アスカ、ヒカリさ
ん、わたし・・・・・・・・・』の順に並んでる・・・・・・・・・。


 あなたの居ない世界を生きるつもりが無いから“ここ”へ戻って来たのだから・・・・・・・・・。


 だから、あなたを・・・・・・・・・絶対に死なせないわ・・・・・・・・・。

 絶対に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 絶対に・・・・・・・・・・・・・・・。









 誰かの足音が近寄ってくる・・・・・・・・・。

 来たわね・・・・・・・・・。

 ココに隠れている“甲斐”があるというもの・・・・・・・・・。

 わたしは全裸になって、この押入れのような部屋のベッドの中にモソモソと入り、“彼”を待った。


 ドキドキする。

 “前”ではついに感じられなかったモノ・・・・・・。


 そう、本当の意味での“好き”ということ・・・・・・・・・。


 わたしは“彼”を放すつもりは・・・・・・・・・無い・・・・・・・・・・・・・・・。


 部屋の戸が開き、誰かが近寄ってくる。

 戸惑っているような気配を感じた後、その人はシーツをめくった。


 目標は射程内に入った!


 わたしは使徒戦での絆を強めるべく、初号機パイロットに多い被った。


 ふにゅっ


 ああ・・・・・・・・・碇君・・・・・・ちょっと見ない間に胸が大きくなったのね・・・・・・・・・。

 「・・・・・・・・・なんのつもり?」

 碇君・・・・・・なんでそんなに殺気を向けてくるの?

 わたし、嫌われたの・・・・・・・・・?

 「ちょっと、レイ!! アンタ、シンジの部屋で何やってのよ!!!」

 ああ・・・・・・・・・碇君・・・・・・なんで赤毛みたいな喋り方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アスカ?


 「あなた・・・・・・どうして碇君の部屋にいるの?」

 「それはアタシのセリフでしょーが!!! それに、なんで裸なのよ!!!」

 電気もついてないけど、アスカの顔が真っ赤になっているのは理解できる。

 「関係ないわ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さよなら」

 わたしは碇君の部屋から戦術的撤退を試みた。

 「逃がすかぁああっ!!!!」

 アスカが悪鬼のような顔をして追って来る。

 捕まったら明日の朝日は見られないのね・・・・・・・・・シクシクシク・・・・・・・・・。




 碇君のところへ撤退・・・・・・・・・。




 「碇くぅ〜ん」

 「わ、わぁっ!!! あ、綾波ぃいいっ!! ふ、服着てよぉっ!!!!」

 「くぉおおらぁあっ!! レイぃいいい!!!」

 「ア、アスカまで・・・・・・頼むから二人とも服着てよぉ〜〜〜っ!!!!」


 「ホント、あなた達って見てて飽きないわね〜〜〜」









 碇君・・・・・・アスカ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 わたしも・・・・・・負けないから・・・・・・・・・・・・。

 だから一緒に・・・・・・“未来”へ行きましょう・・・・・・・・・。




 皆で笑っていられる“刻”へ・・・・・・・・・・・・。
























 「二分前に突然現れました!!」

 日向の緊迫した声がミサトに投げられる。

 『第六サーチ。衛星軌道上へ』

 『目標まで、後二分』

 「目標、映像で捕捉」

 いくらか冷静な青葉の言葉の一瞬後、モニターにその全容が映し出される。

 どよめく発令所。

 オレンジ色の不気味な姿。

 あえて言うのなら三分割しかかったアメーバーといったところか。


 「こりゃすごい」

 「常識を疑うわね・・・・・・・・・」



 自分の身体を切り落とし、落下修正を行う第壱拾使徒サハクィエル・・・・・・・・・。

 間違いなくやってくることを確信している本部の面々。

 探査衛星がATフィールドによって破壊された時、さすがにシンジ達の使い方で慣れきっていた為に驚き
は小さかった。


 だが、その衛星の破壊の瞬間が“前回”と違って、

 “ねじり切られた”事に気付いた者は・・・・・・・・・いなかった・・・・・・・・・。






                                           TURN IN THE NEXT...


作者"片山 十三"様へのメール/小説の感想はこちら。
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