New NERV Commander
Gedou Ⅱ

EPISODE:02
another name





「拘束者146名・・・。予想通りと言うか、何と言うか、やはり反対者は作戦部に多いですね」
地上の陽は既に傾き、集光ライトで集められた夕陽がジオフロントを赤く染め、窓から射し込む光が司令席に座るシンジの長い影を作っていた。
ちなみに、シンジが言う拘束者146名とは、本日お昼前に職員食堂で集会を開き、特別監査部によって捕らえられた者達の人数である。
「まっ、作戦部は使徒が来れば忙しいが、それ以外の時は案外暇だからな。どうしても、ランクは下がるだろう・・・で、どうするんだ?」
「どうするんだと言うと?」
「いや、いつまで拘束するのかなと思って・・・。」
ゲンドウポーズをとるシンジへ問うも反対に問い返され、加持は言葉を補って更に問いかけた。
「おやおや、嫌ですね。お忘れですか?・・・加持さん自身が書いた特別監査法案の中にこう書いてあったでしょ?
 『特別監査法・第87項、特別監査部は完全中立を保つ為、これら全ての法をいかなる身分に対しても効力を発揮、制限されない物とする』
 ・・・と言う事は、それは司令代理である僕とて例外ではありません。つまり、特別監査部に対して僕が口を挟む権利なんて全くないんですよ」
「(良く言うよ・・・。)そう、そうだったな。・・・解った。こちらで処理をしておくよ」
応えてシンジは愉快そうにニヤリと笑い、加持は自分が書いた覚えもない法案の内容に苦笑しつつ、司令公務室を出ようと振り返ろうとする。
「只ね。これはあくまで僕の独り言なんですが・・・。」
「独り言か・・・。それなら、仕方がないな」
だが、それよりも早くシンジに呼び止められ、加持は非公式にシンジが指示を下そうとしている意図を見抜いて振り向き戻った。
「特別監査法は国連上層部もその存在を認めた法案です。なら、一般法案に照らした拘束期間で良いと思いますよ」
「・・・・・・解った」
どんな辛辣な言葉が飛び出すかと思いきや、シンジは良識有る判断を下し、加持が少しの間を空けて拍子抜け気味に頷く。
「但し、解放時期はランク毎に差別意識を刺激させた方がより効果的ですね。
 例えば、Eランク以上は即時解放、Fランクは明日の朝、Gランクは明日の夕方。・・・と言う様にね」
「わ、解った」
ところが、シンジの言葉はまだまだ続き、次第に言葉が辛辣な物へとなってゆき、口の端がニヤリと歪んで吊り上がってゆく。
「そして、解放の際はこう言ってあげるんです。拘束中は仕事をしていないのだから、来週のランクダウンは確実だろうとね」
「・・・わ、解った」
それに比例して、加持の顔が次第に引きつってゆき、加持が汗をダラダラと流し始める。
「でも、その場合だとIランクとJランクの人達は有る意味で開き直るかも知れませんから、それとなくこんな噂を流して下さい。
 今回の事態に対し、加持特別監査部長はJランクの下にKランクを作るらしい。
 そのKの意味は『Kill』・・・。つまり、懲戒免職処分、もしくは左遷対象リストに入れる意味を持っているらしい・・・と言う噂をね」
「・・・・・・わ、解った」
終いに、シンジは邪悪なオーラを全開に纏って禍々しくニヤリと笑い、加持はまた自分の評判が下がるのかと涙をルルルーと流す。
「ところで、さっきから解った、解ったと言っていますが・・・。
 嫌ですねぇぇ~~~・・・。僕はただ単に独り言を言っていたに過ぎません。それをたまたま加持さんが盗み聞きしていただけですよ?」
「そ、そうだったな・・・。じ、実は俺も同じ考えだった物で、ついつい頷いてしまったんだ」
話し終わると、シンジは先ほどから同じ言葉しか繰り返さない加持に苦笑して肩を竦め、加持も違う意味で苦笑を浮かべた。
「なんだ、そうだったんですか?僕達って、気が合いますね」
「そ、そうだな・・・。そ、それじゃあ、俺は仕事があるんで行くよ」
「解りました。お仕事、頑張って下さいね・・・っと、そうそう」
するとシンジは嬉しそうにニッコリと笑い、加持は疲れた様に溜息をついて司令公務室を出ようと振り返るが、またもやシンジに呼び止められる。
「はい、これ・・・。忘れ物ですよ?」
「っ!?」
シンジは懐よりマナから貰ってきた銃を取り出し、加持が見覚えのあり過ぎる銃に驚愕して目を最大に見開いた。
「もう逢えないと思っていた恋人達の再会。だが、そこには思いも寄らぬ悲劇が待っていた・・・・・・か。うんうん、実に悲しい物語だね」
「・・・な、何の事だ?」
銃を加持の方へ差し出して机に置くと、シンジは腕を組んで何やらウンウンと頷き、加持が何故か体をビクビクッと震わせる。
実を言うと、加持は自分が渡した銃をマナが所持している事を本日マナを迎えに行くシンジへ敢えて伝えていなかった。
しかも、シンジが立案したシナリオ『アポイントなし感動の再会劇』で、マナが突然のネルフ襲来に驚き、逃亡の為に銃を撃つと核心的予想済み。
そして、その際に上手く行けばシンジを亡き者に出来るかも知れないと加持は企んでいたのである。
「あれ、違うんですか?マナは加持さんから貰ったと言っていましたけど・・・。マナの勘違いなのかな?」
「た、多分、そうだろ。お、俺はそんな物を渡していないからな」
「そっか、マナの勘違いか。なら、これは僕が預かっていて良いですか?」
「い、良いも何も俺のじゃないから、シンジ君の好きにして構わないよ」
「解りました・・・。あっ!?引き留めちゃって済みません」
銃を受け取ろうとしない加持を不思議そうに首を傾げつつ、シンジはマナとの再会を記念して銃を再び大事そうに懐へしまった。
「い、いや、良いんだ。・・・じゃ、じゃあな」
「そう言えば・・・。」
「な、何だっ!?」
ここから一刻も早く去りたい気分の加持は、足早に部屋を出て行こうとするが、またもやシンジに呼び止められ、今度は何だと勢い良く振り返る。
「山岸二佐の報告書を読みましたか?・・・戦自のGR計画。あれは近い未来の為にも捨てて置けないですね」
「・・・んっ!?ああ、そうだな・・・。確かにあのロボットの存在は危険だと俺も思う」
今度はどんな強請りをするのかと思いきや、シンジは司令代理としての真面目な顔を見せ、加持は呆気に取られるも神妙な顔つきで頷いた途端。
「そうでしょ?そう思いますよね。・・・と言う事で、ちょっと呉の戦自秘密基地に侵入してきてくれませんか?」
「はっ!?」
シンジがニヤリと笑って口を歪め、加持はシンジの指示に思わず茫然と目が点。
「だから、GR計画のデーターを取ってきてくれと言っているんです」
「無茶だっ!?あそこの警備の厳しさを知っているのかっ!!?」
言葉が足りなかったのかと思い、シンジが言葉を補うが、加持は慌てて我を取り戻してシンジの提案を怒鳴って否定する。
「またまた、謙遜しないで下さいよ。だって、そうでしょ?MAGIにも侵入した加持さんですよ。
 ええ、加持さんなら・・・いや、加持さん以外の誰にも出来ません。そう、加持さんだからこそ、こんな無茶が頼めるんです」
「俺を高く評価してくれるのは嬉しいっ!!だが、それは何ヶ月も侵入しての事っ!!!一朝一夕では絶対に無理だっ!!!!」
それでも、シンジは諦めず誉め殺しの言葉で攻めるも、加持はますますエキサイトして必死にシンジの提案の無茶さをアピール。
「そうですか、加持さんでも無理ですか・・・。では、仕方がありませんね」
「力になれなくて済まない。だが、このままにしておけないのも事実だ。・・・チームでも組んで潜入させるか?」
その甲斐あってか、シンジはやや落胆した様に溜息をつくも己の提案を諦め、加持は胸をホッと撫で下ろしながら別提案を勧める。
「大丈夫です。それならそれで、別の手が1つありますから・・・。では、下がって良いですよ」
「解った・・・。」
だが、シンジは加持の提案をあっさりと退け、加持は少し不満に思いつつも退出を命じられて振り返り、不機嫌そうに10歩ほど歩いたその時。
「あっ!?僕だけど・・・。初号機関連のフォルダにあるファイル・AAA-5963の閲覧レベルをEEEに変更し・・・。」
「待て、待て、待て、待て、待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~~~っ!!」
ガチャンッ!!
何処かへ電話するシンジの声が背後から聞こえ、その内容の意味が解った瞬間、加持は即座に駈け戻って話し中の電話をいきなり叩き切った。
「・・・何するんですか?」
「それはこっちのセリフだっ!!そのファイルを一般公開して、どうするつもりだっ!!?」
「あれれ?・・・このファイルの内容を知っているんですか?これは僕と冬月先生・・・。そして、父さんくらいしか読めないファイルですよ?」
「え゛っ!?い、いや・・・。そ、それは・・・。そ、その・・・・・・。」
シンジの一睨みにも屈せず、焦る加持は必死の形相でシンジへ迫るが、返ってきたシンジの素朴な疑問にたちまち勢いを弱めて言葉を失う。
余談だが、初号機関連のフォルダにあるファイル・AAA-5963とは、加持の足枷となっている浮気記録が入っているファイルであった。
また、ナンバー頭のAAAは閲覧レベルを表し、数人しか閲覧出来ない最高ランクのAAAから一般人も閲覧できる最低ランクのEEEまである。
「まあ、どうでも良いですけどね。それより、もう1度だけ聞きますけど・・・。ちょっと呉の戦自秘密基地に侵入してきてくれませんか?」
「・・・わ、解った」
その隙を狙い、シンジは先ほどの提案を再び問いかけ、加持はシンジの言葉の裏にある物を理解して、涙をルルルーと流しながら今度は承諾した。
シンジの言葉の裏にある物、それは加持がシンジの提案をもし断ると、加持の浮気記録がネットを通じて世界へ発信される事を意味している。
「そうですか、解って頂けましたか。あと明日のお昼までにお願いしますね?午後にある戦自との会議で切り札に使いますから」
「あ、ああ・・・。や、やってみる・・・・・・。」
シンジは加持の承諾を満足そうにニヤリと笑い、更に過酷な時間制限まで付け加えるが、加持はシンジの言葉をただただ頷くのみ。
「では、頑張って下さい。こちらで足は用意しますから」
「・・・よ、よろしく頼む」
そして、加持は今度こそシンジに呼び止められず、涙をルルルーと流したまま司令公務室を千鳥足でフラフラと出て行く。
バタンッ・・・。
「・・・僕です。特別監査部の駿河一尉を頼みます」
加持が出て行き、扉が閉まって一拍の間の後、シンジは持っていたままの受話器を一旦置くと、再び何処かへ電話をかけ直した。


「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
ジオフロント宿舎内にある佐官クラス以上しか入居する事が出来ない3LDKの豪華な部屋。
表札には『鈴原』の文字が刻まれ、1人で住むには広すぎるこの部屋にトウジは1人で住んでいた。
そして、2週間前にトウジが入居して以来、初めての訪問者がこの部屋へ今訪れている。
だが、トウジと訪問者であるヒカリの間に会話は全くなく、部屋には痛いほどの沈黙と張りつめたピリピリとした緊張感が漂っていた。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
ヒカリは通されたリビング中央に立って佇み、背を向けているトウジの背中を見つめたまま。
トウジはリビングから通じるベランダへの窓の前に腕を組んで立って佇み、赤く染まるジオフロントの景色を険しい表情で眺めていた。
「・・・ひ、広い部屋ね」
「せやな・・・。」
果てしない長い沈黙の末、ヒカリが精一杯の勇気を振り絞って話しかけるが、トウジは振り向きもせず素っ気ない返事を返す。
「・・・い、いつ退院したの?」
「2週間前にな・・・。」
「・・・あ、足、治ったんだね」
「まあな・・・。」
ヒカリは萎えて消え入りそうな勇気を更に振り絞って尚も話しかけるも、やはりトウジは振り向きもせずジオフロントを眺めたまま。
「・・・ど、どうして、教えてくれなかったの?」
「必要あらへんからな・・・。」
「・・・そ、そう」
それどころか、トウジはヒカリへ痛烈な言葉を浴びせ、ヒカリはわずかに残っていた勇気を完全に消え去り、悲しそうに俯くも束の間。
「イインチョ」
「な、なにっ!?」
初めてトウジから話しかけられ、ヒカリが喜びに顔を勢い良く上げる。
「もう、ここへは来んといてや」
「っ!?・・・ど、どうして?」
「どうしてもや・・・。」
しかし、トウジの口から出てきた絶望の言葉に驚いて目を見開き、ヒカリは再び俯いて問いかけるが、トウジは満足な応えを返してくれない。
「そ、そう、解ったっ!!じゃ、じゃあ、帰るねっ!!!わ、私っ!!!!
 きゅ、急に来て、ごめんねっ!!で、でも、学校へはちゃんと来るのよっ!!!み、みんなも心配しているんだからっ!!!!」
最早、居たたまれなくなったヒカリはこぼれそうになる涙を腕で拭い、矢継ぎ早に言葉を捲し立てて帰ろうと振り返ったその時。
「済まん・・・。」
「・・・ど、どうして、謝るの?」
トウジから謝罪の言葉がかけられ、ヒカリはピタリと動きを止めて振り向き戻り、その謝罪の意味を問いかける。
「済まん・・・。」
「だから、どうして謝るのよっ!?」
だが、トウジは背を向けたまま謝るだけで何も応えず、ヒカリは堪えきれなくなって涙をポロポロとこぼしながら再び怒鳴り問いかけた。
「済まん・・・。」
「どうしてっ!!どうしてよっ!!!迷惑なら迷惑って、そう言えば良いじゃないっ!!!!それなら、もう2度と来ないわよっ!!!!!」
それでも、トウジは同じ言葉だけを繰り返し、遂にヒカリはトウジの背中に縋りついて、その背中を拳で叩いて意気地なしのトウジを責め立てる。
「違うっ!!わしはっ!!!わしはっ!!!!わしは・・・。」
「何よっ!!言ってみなさいよっ!!!ねえっ!!!!ねえ、ねえ、ねえっ!!!!!うっうっうっ・・・・・・。」
するとトウジは怒鳴り返して反論するが、途中で言葉を飲み込んで口ごもり、ヒカリがその場に泣き崩れて嗚咽を立て始めた。
「イインチョの知っとる鈴原トウジは死んだんや・・・。わしの生きとった証を受け取ってくれへんか?」
「な、なによ?」
トウジは思わず振り返りそうになるが、思い止まって組んでいる腕を更に堅く組み、ヒカリが涙声で返事を返す。
「・・・わしはイインチョの事が好きやった」
「えっ!?わ、私も鈴原の事が・・・。」
応えてトウジは目を瞑って己の想いを告白し、ヒカリが喜びあらわに顔を上げ、告白の応えと共に己の想いを告白しようとした次の瞬間。
「あかんっ!!わしにその言葉を聞く権利はあらへんっ!!!あらへんのやっ!!!!」
「ど、どうして・・・。ど、どうして、そんな事を言うのっ!!わ、私も鈴原の事がっ!!!」
「・・・言うたやろ?好きやった・・・やと。もう過去の事なんや・・・・・・。」
トウジはあらん限りの大声を出してヒカリの言葉を遮り、立ち上がって己の正面に回ったヒカリの泣き顔が見れず、顔を背けて言葉を重ねる。
「どうしてっ!!どうしてよっ!!!どうしてなのよっ!!!!」
「済まん・・・。済まん・・・。イインチョ・・・・・・。」
「うっうっ・・・。うっ・・・・・・。うっうっうっ・・・・・・。」
長年の想いがようやく実ったと思ったら、一瞬にして潰えてしまい、ヒカリは再びその場に泣き崩れた。


「それにしても・・・。凄い部屋だな」
必要以上に広く、それでいて調度品が何もない司令公務室をキョロキョロと見渡し、居心地悪そうに柔らかいソファーへ座っているケンスケ。
「まあね。父さんの趣味らしいよ」
「ふぅぅ~~~ん・・・。ところで、さっきから何やってんだ?シンジ」
司令席に座るシンジは書類処理をしながらケンスケの感想に応え、ケンスケは立ち上がって興味津々顔でシンジの側へ寄って行く。
ちなみに、ケンスケはトウジのお見舞いへ行く前に司令公務室へ訪れており、シンジへの謝罪と和解は既に済ませていた。
ならば何故、ケンスケが未だここに滞在しているかと言えば、トウジとヒカリを少しでも2人っきりにさせようと気を利かせているのである。
シンジもまたケンスケの提案を大いに頷き、仕事の邪魔をしなければと言う条件でケンスケの時間潰しにつき合っていた。
「伍号機の譲渡申請。なかなか、ドイツ支部が手放してくれなくてね」
「伍号機っ!?また新しいエヴァが増えるのか・・・って、どうして、お前がそんな申請をしてるんだ?」
シンジは書類へペンを走らせたまま応え、ケンスケはシンジの言葉に驚きながらも、何故シンジがそんな仕事をしているのかと戸惑い問う。
「ああ・・・。僕、今は司令代理をやってるんだ。ちなみに、階級は中将だよ」
「ちゅ、中将ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~~~~っ!!」
応えてシンジが仕方ないなとペンを止めて書類から顔を上げると、ミリタリーマニアのケンスケはシンジの階級の高さにビックリ仰天。
「そう言えば・・・。ケンスケって、こういうのが好きだったよね?・・・これ、あげよっか?」
「おおうっ!!本物の階級章っ!!!凄いっ!!!!凄いっ!!!!!凄すぎるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~~~っ!!!!!!」
するとシンジは机の引出から己の階級章を取り出してケンスケへ差し出し、ケンスケは間近に見る本物の将官の階級章に唾を飛ばして狂喜乱舞。
「ははははは・・・。そんなに喜んで貰えると僕も嬉しいな」
「本当に良いのかっ!?碇っ!!?」
「構わないよ。但し、悪用すると大変な事になるから、見せびらかしたりしない方が無難だよ」
「それくらい、解ってるってっ!!くぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!!!やっぱり、持つべきものは親友って感じだよなっ!!!!」
ケンスケの予想以上の興奮ぶりに、シンジは顔を引きつらせるが、ケンスケはそんなシンジに目もくれず、目を輝かせて階級章を手に取った。
「ところで・・・。ケンスケ」
「なんだ?」
同時にサングラスを押し上げて、シンジは親友の顔から司令代理の顔へと豹変させて呼びかけ、ケンスケが幸せ一杯の顔をシンジへ向ける。
「その階級よりはかなり下がるけど・・・。人に見せられない階級章より、人に見せられるこの階級章を付けてみる気はない?」
「えっ!?そ、それって・・・。ど、どういう意味なんだ?」
シンジは引出から更に取り出した階級章を差し出し、ケンスケはシンジの言葉の意味が解らず問う。
「・・・チルドレンにならないかと聞いているんだよ」
「ほ、本気か?」
「僕はいつでも本気だよ・・・。
 ケンスケにその気があるなら、この書類にサインと拇印を押して、その階級章を手に取るが良い。・・・さあ、ケンスケの夢がこれで叶うんだ」
言葉を溜める様に一拍の間の後、シンジは禍々しいほどにニヤリと笑って応え、驚き戸惑うケンスケへ1枚の書類を机の上に差し出した。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
ケンスケは幾多の規定が小さな文字で書かれた書類を見開いた目で凝視し、シンジはゲンドウポーズをとってケンスケのリアクションを待つ。
そして、司令公務室には静寂だけがただただ流れてゆき、得も言われる緊張感が広がってゆく。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         ゴクッ・・・。
数十秒後、静かな司令公務室にケンスケの生唾を飲み込む音が響き、ケンスケが無言で視線だけを上げてシンジへ問う。
シンジは頷いてケンスケへペンと朱肉を差し出し、ケンスケが魅入られた様に書類へサインを走り書き、右手の親指で拇印を押した途端。
「ケンスケ・・・。いや、相田特務准尉。これより、君をエイトゥスチルドレンとして任命。
 所属は戦術作戦部特務課、直属の上司は葛城三佐。専用機はエバァンゲリオン零号機とする」
「はっ!!有り難く、拝命いたしますっ!!!」
静寂と緊張感は一瞬にして霧散し、シンジは改めてもう1つの階級章を差し出し、ケンスケは階級章を受け取って最敬礼をシンジへ返した。
「よろしい・・・。では、下がって明日の放課後からの訓練に備え、今日は体をゆっくりと休めて下さい」
「了解しましたっ!!では、失礼しますっ!!!」
シンジは満足気に頷いて退出を命じ、ケンスケは再び最敬礼をした後、勢い良く回れ右をして司令公務室を出て行く。
「な、なあ、シンジ・・・。ゆ、夢じゃないよな?」
だが、十数歩ほど歩いて立ち止まり、ケンスケは右手の中の己の階級章を力強く握り締めると、振り返ってシンジへ現実の実感を求めて尋ねた。
「相田特務准尉、僕は忙しいんです。何度も同じ事を言わせないで下さい」
「も、申し訳ありませんっ!!し、失礼しますっ!!!」
既に元の書類処理を再開していたシンジは、書類から煩わし気な視線を上げ、ケンスケはその迫力に慌てて謝って司令公務室を足早に出て行く。
バタンッ・・・。
「くっくっくっくっくっ・・・。なかなか、僕のシナリオ通りに進んでゆくね」
嘘と言われるのを恐れる様に去って行ったケンスケを見送って扉が閉まると、シンジは堪えきれなくなって邪悪そうな含み笑いを漏らし始めた。


ガチャンッ!!ガチャ、ガチャ・・・。
「っ!?」
独房の扉の鍵が外される音を聞きつけ、クッションのない堅いベットに寝そべっていたミサトが、ようやく釈放かと思って上半身を起こす。
ギィィーーー・・・。
「あらぁ~~ん?特別監査部部長の加持リョウジさんがこんな所に何か御用かしらん?」
だが、軋む音を立てながら扉が開いて現れた加持の姿を見るなり、ミサトは言葉に嫌味をたっぷりと大さじ3杯ほど乗せてベットに再び倒れた。
「こりゃまた、ご機嫌斜めだな」
「はんっ!!こんな所に入れられて機嫌が良い奴なんて見た事ないわよっ!!!」
「ま、そりゃそうだ・・・。」
そんなミサトに苦笑すると、ミサトは当てつけの様に加持へ背中を見せて、親父臭くお尻をボリボリと掻きむしり、加持がますます苦笑を深める。
「・・・で、何なのよ。こんな所まで来て」
「なあ、あの日に俺が入れた留守伝を覚えているか?」
一拍の間の後、ミサトが背を向けたまま不機嫌あらわに問いかけると、加持は表情を真剣な物へと変えて反対に問い返した。
「あの日ぃぃ~~~?・・・っ!?し、知らないわよっ!!!わ、私はあの日の事を忘れたのよっ!!!!そ、そう、忘れたのっ!!!!!」
一瞬だけ何の事だか解らず、ミサトは言葉の語尾を半音上げて問い返そうとするが、一瞬後に意味が解るなり顔を真っ赤に染めて捲し立てる。
ちなみに、あの日の留守伝とは、加持がシンジに魂を売り渡した後、葛城邸の電話へ入れたメッセージの事。
「そうか・・・。でも、俺は覚えている。葛城との思い出は全部な・・・・・・。」
「う、うるさいわねっ!!あ、あんたも早く忘れなさいよっ!!!わ、私は忘れたんだからっ!!!!」
しかし、加持は静かに目を瞑って当時を思い出し始め、ミサトはベットから上半身を起こして怒鳴り、加持へ恥ずかしい思い出の忘却を強要する。
「いや、俺は決して忘れない・・・。
 そう、お前と大学も行かず、1日中裸でゴロゴロしたり、下らない事で喧嘩したり・・・。
 お前と出逢って、つき合って、一緒に暮らした2年間・・・。そして、別れて、再び出逢った今・・・。
 俺の人生の中で・・・。別の世界での出来事みたいに輝いているお前との思い出を俺は決して忘れない・・・・・・。」
すると加持はミサトの恥ずかしい思い出を通り越して、思い出がお互いの大学時代へ達すると、目を開けてミサトを真剣な眼差しで見つめた。
「な、なによ。い、いきなり・・・。そ、そんなクサいセリフが良く平気で言えるわね」
その熱い眼差しに照れて加持から視線を逸らし、ミサトは先ほどとは別の意味で顔を真っ赤に染める。
「まあ、良いさ・・・。別に信じてくれなくても・・・・・・。
 ただ、俺はお前との思い出を胸に抱いているからこそ、この先この身に何が起こったとしても悔いなく死ねる・・・。そう思っているだけさ」
「・・・なによ、それ?どういう意味?」
それでも、加持はミサトを見つめたまま言葉を重ね、ミサトは加持の意味深な言葉の中に一抹の不安を感じ、眉間に皺を寄せて視線を戻した。
「別に・・・。しかし、真実は常に1つ・・・・・・。
 そして、情報のベクトルと現状のベクトルを考え、誰が1番得をしているかを考えろ。本当の敵は身近にいる・・・。良いな。葛城?」
加持はミサトの問いに応えて男臭い笑みを向けた後、更に意味深な言葉だけを残しながら独房を出て行く。
「ちょ、ちょっとっ!?か、加持っ!!?」
ギィィーーー・・・。ガッチャァァーーーンッ!!
まるで遺言の様な加持のその言葉に、慌ててミサトはベットから下りて加持を呼び止めるが、その叫び虚しく独房の扉は再び堅く閉ざされた。


「でも、シンジ君・・・。本当にこんな事が出来るの?」
「はい、母さんがそれを望んでいますからね。シンクロの本当の意味を知るリツコさんなら、この意味が解るでしょ?」
「そう・・・。ユイさんがそう望んでいるの」
地上の夕陽は沈みかけ、天井から照らされるライトの光を浴びて表情に陰影をつけて、何やら陰謀を企むシンジとリツコ。
「それにしても、新ダミーシステムと言う名称は少し頂けませんね。以前の事もありますから、名称を変えた方が良いと思いません?」
「例えば、どんな?」
「実はもう考えてあるんです。ヴァーチャルシステムなんてのはどうですか?」
「ヴァーチャルシステム・・・。確かにピッタリの名前ね」
シンジは言葉を重ねる度にニヤリ笑いを深めてゆき、リツコが深い溜息をつきながらある人物の顔を心に思い描いて哀れんだその時。
「*、*****っ!!*、**************、*****っ!!!」
「*************っ!!**、************っ!!!」
司令公務室の重厚な扉の向こうから騒ぎ声が聞こえ、シンジとリツコは何事かと見合わせた後、会話を止めて視線を扉へ移す。
「ヒ、**リっ!!ダメ**て*っ!!!」
「*してっ!!離**、アス*っ!!!**碇君に***くち**けな***ある**っ!!!!」
その騒ぎ声は次第にこちらへ近づき、遂には重厚な扉を持ってしても言葉が途切れ途切れながらも解る様になった次の瞬間。
バタンッ!!
「碇君・・・って、「キャっ!!?」」
突然、ノックもなしに扉が勢い良く開き、まずヒカリが現れたかと思ったら、続いて現れたアスカに腰を掴まれて2人が床へ前倒しに倒れた。
「赤木博士、今日のところはこれで・・・。」
「解りました。では、失礼します」
シンジはサングラスを押し上げて溜息混じりにリツコへ退出を促し、リツコは司令席上の書類を集めて司令公務室を出て行く。
「・・・で、なに?」
「シ、シンジ、ごめんっ!!ど、どうしても、ヒカリがシンジに会いたいって言うからっ!!!」
一拍の間の後、シンジが不機嫌そうな声で尋ねると、アスカは慌てて立ち上がり、酷く焦った口調で訪問理由を述べた。
「アスカ、声が大きいよ・・・。他に迷惑がかかるからドアをまず閉めて」
「う、うんっ!!わ、解ったっ!!!」
するとシンジはアスカの声の大きさにますます不機嫌そうな声を出し、アスカはシンジの指示をすぐさま従って扉を閉めに行く。
バタンッ・・・。
「っ!?っ!!?っ!!!?っ!!!!?っ!!!!?」
一方、ヒカリは一方的にやり込められているアスカらしからぬ態度に驚き、茫然と見開いた目を何度もパチクリと瞬きさせて我が目を疑っていた。
「まあ、丁度良かったよ。今、アスカを呼ぼうと思っていたんだ」
「えっ!?そ、そうなのっ!?・・・あっ!?で、でも、ヒカリがいるし・・・。そ、その・・・。い、今は・・・・・・。」
扉が閉まると、シンジは口調が普通に戻し、アスカはシンジの元へ喜び駈け寄るも、途中で踏み止まって何やら身をモジモジとくねらせ始める。
「違う、違う。そうじゃないよ」
「ち、違うの?そ、そう・・・・・・。」
(ア、アスカ・・・。ど、どうしちゃったの?な、何があったと言うの?)
だが、苦笑するシンジに何やら否定されると、アスカは悲しそうにシュンと俯き、ヒカリは初めて見るアスカの乙女の仕草にビックリ仰天。
「報告で聞いたよ。・・・・・・山岸さんをトイレに閉じ込めて困らせたんだってね?」
「あ、あれは・・・。そ、そう、ファーストがしたのよっ!!」
シンジは一旦言葉を切って溜めてからアスカを睨み付け、アスカは顔を上げてシンジの追求に言葉詰まった後、共謀者のレイへ責任を擦り付けた。
「どっちがしたかは関係ないんだよ。例え、綾波がしたとしても、どうして止めようとしなかったの?・・・朝、僕は仲良くと言ったよね?」
「う、うん・・・。」
しかし、シンジはゲンドウポーズをとると、アスカの責任逃れを一蹴して更に鋭く睨み、アスカはその眼力に怯んで思わず一歩後退。
「もう1度だけ言うけど・・・。山岸さんと仲良く出来るね?」
「・・・・・・わ、解った」
すかさずシンジは畳みかけ、アスカはマユミばかりを気にするシンジを嫉妬して俯き、悔しそうに両拳をギュッと握って震わせながら頷いた。
「アスカ、これは命令じゃないよ。お願いなんだ・・・。チルドレンのリーダーであるアスカへのね?」
「リ、リーダーっ!?あ、あたしがっ!!?」
その途端、シンジは険しい表情を緩め、アスカはシンジの言葉に驚いて顔を勢い良く上げ、目を見開いた顔をシンジへ向けて確かめ問いかける。
「そう、人数も増えたから、誰かまとめ役が必要でしょ?・・・そして、その役はアスカしかいないと僕は考えている」
「シ、シンジ・・・・・・。」
応えてシンジはニッコリと微笑み、アスカは嬉しさのあまりシンジへ抱きつきたくなるが、ヒカリが居る事を思い出して辛うじて踏み止まった。
「だから、明日からチルドレンに加わるケンスケや一週間以内に加わるマナとも仲良くね」
「・・・へっ!?」
そこへ間一髪入れず、シンジはチルドレンの追加人事を明らかにし、アスカは寝耳に水な言葉に思わず茫然と目が点。
「僕の話はこれだけ。それじゃあ、もう下がって良いよ」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよっ!!だ、誰と誰だってぇぇ~~~っ!!!」
そんなアスカに構う事なく、シンジは退出を命ずるが、慌てて我に帰ったアスカが怒鳴ってシンジへ説明を求める。
「ちなみに、マナがセブンスで、ケンスケがエィトスだよ。
 ・・・って、ああ・・・。もしかして、マナの事を忘れたとか?アスカったら、酷いな・・・。ほら、戦自のスパイだった女の子の事だよ」
シンジは追加説明をした後、わざとらしく考えるフリをして左掌を右拳でポンッと叩き、マナの詳しい説明を加えた。
「そんなの解ってるわよっ!!よりにもよって、あの女が何でっ!!!それにバカ相田までっ!!!!」
その態度が癪に触って怒髪天になった上、アスカはマナへマユミ以上の嫉妬の炎をメラメラと燃やして猛烈な勢いで怒鳴りまくる。
「この人事に関しては朝も言った通り。これ以上、惣流特務三尉が知る必要はない」
「な゛っ!?」
「下がるんだ」
「りょ、了解っ!!し、失礼しましたっ!!!」
ならばとシンジは敢えてアスカを階級で呼ぶ事によって反論を封じ、アスカは絶句しながらも、シンジの退出命令に怒り心頭の敬礼を返して従う。
「・・・アスカ」
「なによっ!!」
このままでは反意が育ちかねないと判断して溜息をつき、シンジは怒り肩の大股歩きで遠ざかってゆくアスカの背中へ呼びかけた。
「あとで家へ帰ったら、ちゃんと説明するから・・・。ねっ!?」
「えっ!?あっ!!?う、うん・・・。わ、解った・・・・・・。」
不機嫌そうに振り向いたアスカだったが、ニッコリと微笑むシンジの言葉の裏の意味に気付いて顔を紅く染め、たちまちご機嫌になってゆく。
ちなみに、シンジの言葉の裏にどんな意味があるかは全くの謎だが、取りあえずシンジは本日レイが待つ自宅へは帰るつもりはないらしい。
バタンッ・・・。
「さて、洞木さん・・・って、おや?」
アスカがスキップ混じりに司令公務室を出て行くと、シンジは1人残ったヒカリへ話しかけるが、ヒカリは未だ床に倒れたまま茫然としていた。


「な、なんやてっ!?チ、チルドレンになったやとぉぉぉぉぉ~~~~~~っ!!!」
久々の親友との再会に喜んだのも束の間、ケンスケがチルドレンになったと聞き、トウジは驚愕に目を最大に見開いて吼えた。
「ああ、遂に俺の夢が叶ったんだ・・・って、な、何だよっ!?」
「ケ、ケンスケっ!?お、お前、貯金はどれくらいあるんやっ!!?」
「・・・はぁ?」
ケンスケは尚も喜々と幸せを語ろうとするが、トウジに肩を掴まれて迫られた上、いきなり意味不明な事を尋ねられて思わず間抜け顔。
「幾らあるんやって聞いとんのやっ!!早う、応えっ!!!」
「・・・じゅ、12万くらいはあるかな?」
だが、トウジは更に大声で吼えて迫り、ケンスケはトウジの鬼気迫る迫力に押され、自分の貯金残高をトウジへ教えた。
「よっしゃっ!!その金を持って、今すぐこの街から逃げるんやっ!!!出来るだけ遠くに、1歩でも良いから遠くになっ!!!!」
「な、何を言ってるんだ?・・・ト、トウジ」
するとトウジは今すぐ第三新東京市から逃げろと言い始め、ケンスケはトウジの必死の形相に戸惑いながら、その必死さが全く解らず問い返す。
「せやっ!!お前に餞別をやるっ!!!少しでも資金の足しにしてくれやっ!!!!」
ガシャンッ!!パリィィーーーンッ!!!
「お、おいっ!?」
トウジはそんなケンスケを無視して、TVの上に置いてあったブタさん貯金箱を床へ叩きつけて割り、ケンスケが驚愕に目を見開いたその時。
「ぬおっ!?」
ドスッ・・・。
「ど、どうしたっ!?ト、トウジっ!!?」
突如、トウジが全身の力を脱力させた様にその場へ崩れ落ち、ケンスケが慌ててトウジへ駈け寄ろうとする。
プシューー・・・。タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ!!
「フォースチルドレン、司令代理からの電話だ」
しかし、それよりも早く、玄関より黒服5人が颯爽と駈け現れてケンスケの行く手を阻み、その内の1人がトウジへ携帯電話を近づけ差し出す。
「・・・な、なんや?」
『トウジ・・・。一般市民の洞木さんに最高機密を喋ったでしょ?あれ程、口をすっぱくして言ったのにダメじゃないか』
身動きが全く取れないトウジが、唯一動く首だけを動かして携帯電話へ顔を向けると、シンジのクスクスと笑う声が返って来た。
「す、すまん・・・。つ、つい、うっかりと口を滑らしてしもうたんや・・・・・・。」
『まあ、喋ってしまったものは仕方がないけど・・・。トウジには今後も同じ事がないように再教育を受けて貰うからね』
トウジはその笑い声に怒りを必死に抑えて応え、シンジが声だけでも容易に想像が出来るニヤリ笑いを浮かべた次の瞬間。
「なんやっ!?なんやっ!!?なんやっ!!!?」
『言ったでしょ?再教育を受けて貰うと・・・。』
黒服達に頭と両手両足を持ち上げられ、トウジは体の自由を奪われたまま部屋から拉致連行されて行く。
「ケンスケ、これで解ったやろっ!!もう、シンジはわし等が知っとるシンジやないっ!!!早よう、この街から逃げるんやっ!!!!」
「おい、黙らせろっ!!」
「何すんねんっ!!むぐっ!!!むぐぐぐぐぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!!!」
それでも、トウジは最後に残った自由を使ってケンスケへ叫ぶが、黒服達にそれすらも許されず、口にハンカチを詰め込まれて沈黙。
「・・・な、何なんだ。い、一体・・・・・・。」
そして、1人部屋に取り残されたケンスケは、目まぐるしく変化する目の前の事態に付いてゆけず、しばらく茫然とそこでただただ佇んでいた。


「はっ!?」
アスカが司令公務室を出て行ってから数分後、ようやくヒカリが我に帰って瞳に輝きを取り戻した。
「あっ!?・・・やっと気が付いた?」
「碇君っ!!あなたねっ!!!」
ヒカリを放ったまま書類処理を始めていたシンジが書類から顔を上げると、ヒカリは立ち上がって眉をつり上げながらシンジの元へ駈け寄る。
「言いたい事は解っている。トウジの事だね?」
「解っているなら、どうして鈴原をあんな風にしたのよっ!!酷いじゃないっ!!!」
シンジは右手を突き出すと共に鋭い視線を放ち、ヒカリは思わず司令席前3メートルの位置で立ち竦むも、果敢にシンジを怒鳴りつけた。
「ねえ、洞木さん・・・。僕はね。どうしても、トウジの足を元に戻したかったんだよ」
「だっ・・・。だからってっ!!」
応えてシンジは席を立ち上がると、背を向けて窓辺に立ち、ヒカリはわずかに震えるその背中に悲しみを感じ取り、一瞬だけ言葉を詰まらせる。
「だけどね。今の技術では到底元通りにする事なんて出来やしない・・・。オーバーテクノロジーを使う以外はね」
「・・・オーバーテクノロジー?」
シンジはヒカリの反応にニヤリと笑い、いきなり脈絡もなく話題を変えた。
「そう、本来なら何十年、何百年も先にならないと生み出されない技術の事だよ・・・。洞木さんはトウジを見て、どう思った?」
「えっ!?」
おかげで、ヒカリは最初の勢いを半ば無くした上、問いていたはずが反対に問われて戸惑い、完全に最初の勢いをなくしてしまう。
「言われなければ、トウジがサイボーグだなんて絶対に解らなかっただろう?・・・あんな精巧な物を見た事があるかい?
 TVで見るロボットなんて、トウジに比べたらカラクリ人形、ブリキのオモチャに等しい。それほど凄い技術がトウジには使われ・・・。」
「それがどうだって言うのっ!!鈴原はそんな物になりたくはなかったはずよっ!!!」
だが、殊更トウジの凄さを語るシンジに再び勢いを取り戻し、ヒカリはシンジの言葉を遮って猛烈な勢いで怒鳴りつけるも束の間。
「そうか・・・。洞木さんはトウジに全てを聞かなかったんだね。
 もし、元のままだったらトウジは2度と立ち上がれず、そう遠くない近い未来にトウジは確実に死んでしまっていたところだったんだ」
「・・・う、嘘っ!?」
顔だけを振り向かせたシンジから衝撃の事実を伝えられ、ヒカリは驚愕に目を見開いて数歩後ずさり、腰の力が抜けてその場へ尻餅をついた。
「(ピンクか・・・。洞木さんらしいな・・・・・・。)
 嘘じゃないさ・・・。でも、僕はトウジに生きて欲しかった。例え、それがどんな形だとしてもね?」
尻餅で明らかになったヒカリのスカートの中身を一瞥した後、シンジは再び顔を戻して窓に写るヒカリのスカートの中身を凝視してニヤリと笑う。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
それっきり、シンジとヒカリは黙り込んでしまい、司令公務室に痛いほどの静けさが広がってゆく。
その間、シンジはずっとヒカリのスカートの中身を覗き見ながら、何やら灰色の脳細胞をフル活動させて悪巧みをしていた。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
そして、シンジの策略が頭の中で形を成した頃、ヒカリが緩慢な動作でノロノロと立ち上がって顔を俯かせ、一縷の希望を託してシンジへ問う。
「・・・もう、2度と元に戻す事は出来ないの?」
「戻せない事もない・・・。」
「そ、それならっ!!」
シンジは釣り針に餌を付けないでも食いついてきたヒカリにニヤリと笑い、ヒカリは希望が現実になった事を知って嬉しそうに顔を上げる。
「だが、それは禁忌とされる技術・・・。人が決して手にしてはいけない物なんだよ」
「で、でもっ!!」
しかし、シンジはまだ釣り上げようとはせずに首を力無く左右に振り、ヒカリが一縷の希望に縋ってシンジへ頼み込む。
「それにね。洞木さん・・・。その技術もオーバーテクノロジーだけに復活させる為には莫大な費用がかかるんだ」
「・・・ど、どれくらい?」
更に焦らして司令席へ戻ると、シンジはゲンドウポーズをとって溜息をつき、ヒカリはシンジの言葉に希望がお金で買えるならと金額を尋ねる。
「約300京・・・。」
「・・・け、京?」
ところが、シンジの口から出てきた聞き覚えのない桁数に、ヒカリは金額の想像が出来ずに思わず茫然と目が点。
「そう・・・。兆の上の桁だよ」
「ちょ、兆の上ぇぇ~~~っ!?」
シンジがヒカリの反応に追加解説を加えると、ヒカリは小学校の算数で習って以来聞く桁数にビックリ仰天。
「しかも、その額面はドル」
「ド、ドルぅぅぅぅぅ~~~~~~っ!?」
しかも、シンジから希望の金額が『円』ではなく『ドル』だと知り、ヒカリは2度ビックリ仰天して混乱大パニック。
「日本円に直すと・・・。約4該5000京円」
「ひぃぃぃぃぃ~~~~~~っ!?て、天文学的金額ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!?」
その上、シンジはご丁寧に円換算して具体的な数字を教え、ヒカリは3度ビックリ仰天して希望の金額を絶望の金額へと変えた。
「でも、今の技術に少し手を加えた約50億円くらいで済む方法もなくはない」
「ほ、本当っ!?」
するとシンジはすかさず希望の金額を値引き、庶民ではとても手が出せない金額にも関わらず、ヒカリがその希望の金額に飛びつき食らいつく。
もっとも、直前の金額が常識外れだけに、ヒカリの金銭感覚が麻痺して狂ってしまってもおかしくはない。
「うん、これならネルフの予算で何とか出来るんだけど・・・。」
「だ、だけど、なにっ!?」
シンジは内心でニヤリと笑いながらも、表面上は辛そうに言葉を濁らせ、ヒカリが興奮気味にシンジへ続きの言葉を促す。
「それは・・・。」
「・・・そ、それはっ!?」
「ダメだ・・・。僕にはとても言えないっ!!ましてや、洞木さんになんて、とても言えないよっ!!!言えるはずがないっ!!!!」
「言ってっ!!碇君、言ってっ!!!お願いっ!!!!」
一瞬だけ言葉を出そうとするが、シンジは頭を抱えつつ顔を伏せて言葉を飲み込んでしまい、ヒカリは焦れまくってシンジの肩を掴んで揺する。
「しかし、聞いたが最後・・・。洞木さんは絶対に後悔する。それでも良いの?」
「ええ、構わないわっ!!だから、言ってっ!!!」
「そう、そこまで言うのなら・・・。この書類へその証にサインをしてくれないかな?」
ヒカリが完全に釣り針を飲み込んだ事を確信して顔を伏せたままニヤリと笑った後、シンジは引出から1枚の書類を取り出してヒカリへ差し出す。
「解ったわっ!!これにサインすれば良いのねっ!!!」
「あっ!?拇印もしっかりと押してね?」
こうして、ヒカリは悪魔の契約書にサインすると共に、司令代理であるシンジに絶対服従しなくてはならないナインスチルドレンに任命された。


(・・・ったく、何なのよっ!!あたしが見つかって、次にシンジが見つかるまで10年もかかったってえのにっ!!!
 たった1日で3人も増えるなんて、どう考えても絶対に変じゃないっ!!!変よっ!!!!変っ!!!!!変に決まってるわっ!!!!!!)
30分後に実験を控え、アスカは更衣室でプラグスーツへ着替える為に服を脱ぎながら、相次ぐチルドレンの出現に苛立っていた。
「(しかも、示し合わせた様に知っている奴ばっかりっ!!何なのよ、それっ!!!
 よりにもよって、バカ相田に、スパイ女っ!!そして、この根暗女・・・って)あんた、何やってんの?早く着替えなさいよ」
全てを脱ぎ終えたアスカはふと視線を隣へ向け、真新しい緑のプラグスーツを持って未だ下着姿で佇んでいるマユミに気付いて注意する。
「えっ!?あっ!!?は、はい・・・。す、すいません・・・・・・。」
マユミは驚いて体をビクッと震わした後、堂々と裸体を晒しているアスカへ視線を移して顔を紅く染め、慌ててプラグスーツへ視線を戻す。
「なによ、気持ち悪いわねぇ~~・・・。もしかして、そういう趣味がある訳?」
「ち、違いますっ!!」
アスカはマユミの反応に眉を顰めて尋ね、マユミが今度は少し怒った意味で顔を紅く染めて怒鳴った次の瞬間。
「・・・って、キャっ!?な、何するんですかっ!!?」
「時間がないから手伝ってあげるのよ・・・。ファーストっ!!」
いきなりマユミはアスカに羽交い締められて拘束され、アスカはプラグスーツへ足を通そうとしていたレイへ何やらニヤリと笑って呼びかけた。
「・・・任務了解」
「ちょ、ちょっと・・・。あ、綾波さん?な、何を・・・・・・。」
アスカの意図を正確に読み取ったレイは、ニヤリと笑い返してプラグスーツから足を戻すと、マユミの元へニヤリと笑ったまま歩み寄って行く。
プチッ・・・。
一拍の間の後、レイの右手がマユミの胸元へ伸び、本日マユミが着用している飾り気のない白いブラジャーのフロントホックが外された。
「へぇぇ~~~・・・。なかなか良い物を持ってるじゃない。まあ、あたしには負けるけどね」
(許せない・・・。許せない・・・。許せない・・・。この胸で碇君を誘惑したのね・・・・・・。)
「・・・ひ、酷いです。ふ、2人とも・・・。(うっうっ・・・。や、やっぱり、イジメです・・・。うっうっうっ・・・・・・。)」
ご披露されたマユミの控えめな胸を見て、アスカは勝ち誇り、レイは嫉妬と憎しみを心に渦巻かせ、マユミは2人の仕打ちに心の中で涙する。
「ほら、さっさと次もやっちゃいなさいよ。ファースト」
「・・・そうね」
アスカは再びニヤリと笑って新たな指示を出し、レイもまたアスカの意図を正確に読み取ってニヤリと笑う。
「な、何をっ!?や、止めて下さい・・・って、ああっ!!?」
そのニヤリ笑いの意味を理解したマユミが、即座に足を内股にするも時既に遅く、レイによってマユミの白いショーツが膝まで下げられた。
「「っ!?」」
(うっうっ・・・。ひ、酷すぎます・・・。ど、どうして、こんな事をするんですか・・・。うっうっうっ・・・・・・。)
その瞬間、レイとアスカは驚きに目を見開いてニヤリ笑いを消し、マユミは同性とは言えども己の大事な所を見られて再び心の中で涙する。
(なによっ!!なによっ!!!そんな所だけ勝っているからって舐めないでよねっ!!!それくらい、どうしたって言うのよっ!!!!)
(許せない・・・。許せない・・・。許せない・・・。そう、ここでも碇君を誘惑したのね・・・・・・。)
「あ、あの・・・。ど、どうしたんですか?」
しばらくすると、アスカとレイが何やら対抗意識をメラメラと燃やし始め、マユミが前後で次第に高まってゆく殺気に恐怖したその時。
2人が何に対抗意識を燃やしているかは全くの謎だが、強いて言うならマユミは大人、アスカはちょっと大人、レイはまだまだ子供と言う事。
ブチッ!!
「い゛っ!?」
「キャっ!?」
何かが引きちぎられる音と共にマユミの下腹部で激痛が走り、マユミは痛みに腰を思いっ切り引き、アスカがその衝撃に後ろへ吹き飛ばされる。
「な、何するんですかっ!!あ、綾波さんっ!!!」
「・・・問題ないわ」
「大ありですっ!!」
レイが何をしたかは全くの謎だが、マユミは腰を引いたまま股間を両手で押さえ、涙目で何かの痛みを必死に耐えながらレイへ怒鳴り声をあげた。


ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
シンジとヒカリを乗せ、セントラルドグマを果てしなく降りて行くエレベーター。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
シンジはエレベーターの扉間際に立ち、ヒカリはエレベーターの右奧隅へ追いやられた様に立っていた。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
漂う重苦しい雰囲気に汗を全身にじんわりと滲ませ、ヒカリは救いを求める様に狭いエレベーター内をキョロキョロと見渡す。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
だが、そこにあるのはシンジの背中だけであり、何とか間を持たせようと、ヒカリは先ほどから何度も声をかけようとするも全く声が出てこない。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
いつしか、エレベーターの階数表示メーターは振り切り、数字を刻まなくなっているが、エレベーターは更に下へ下へと目指して進む。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
ウィーーーン・・・。
          ウィーーーン・・・。
そして、遂にヒカリが沈黙と重苦しい雰囲気に耐えきれなくなり、意味を成さない声を出そうと口を半ば開いたその時。
チ~~~ンッ!!ウィィーーーン・・・。
「さあ、着いたよ・・・。ようこそ、ネルフの最深部へ」
エレベーターが到着のチャイムを鳴らして扉が開き、シンジがエレベーターから3歩ほど進んで振り返り、芝居がかった仕草でヒカリへ礼をする。
「・・・う、うん」
ウィィーーーン・・・。
その誘いに十数秒ほど躊躇った後、ヒカリがエレベーターから下りると、それを待っていたかの様に背後でエレベーターの扉が閉まった。


「パイロット、意識を失いましたっ!!」
ブーーー、ブーーー、ブーーーッ!!
「実験中止っ!!プラグを引き戻して、LCL緊急排水っ!!!」
マヤの報告が早いか遅いかで、実験管制室にけたたましい警報が鳴り響き、リツコが声を張り上げて指示を出すが、その声に焦りは全くない。
ウィーーーン・・・。ガッシャンッ!!プシュゥゥーーーッ!!!
実験場ではLCLに半分ほど浸かったエントリープラグが急いで引き戻され、プラグ各所から噴水の様にエントリープラグ内のLCLが噴き出す。
同時に実験場出入口の扉が開き、そのエントリープラグへ医療スタッフ達が駈け向かう。
「これで一安心ね・・・。」
「・・・そうですね」
「しかし、エヴァの研究を長年してきたけど・・・。初めて見たわ」
「・・・ですよね。どうして、LCLで溺れるんでしょうか?」
警報が止まると、リツコは呆れの混じった安堵の溜息をつき、マヤもまた同じ様な溜息をつきながらリツコへ不思議そうに問う。
(シンジ君・・・。この娘、本当に使えるの?
 例え、シンクロが出来たとしても、性格に問題があると思うし・・・。かなり戦闘に向かないんじゃないかしら?)
その問いに応えず、エントリープラグから出されて担架で運ばれて行くマユミの姿を眺め、リツコは更に深い深ぁ~~い溜息をついた。


「・・・・・・。」
5年前に破棄され、今では最高セキュリティーを持つ者のみが立ち入りを許されるネルフ最深部封印区画『人工進化研究所』跡地。
そんな立入厳禁区にある『第13分室』と言う部屋で、ヒカリは顔を俯かせてスプリングの堅いベットに腰かけ、その時を1人静かに待っていた。
部屋は長い間ずっと閉めきられていたのか、空気はよどみまくり、埃が積もって床にヒカリが部屋中央のベットまで歩いた足跡を残している。
その足跡には、部屋の入口で立ち竦んだ形跡があるのだが、恐らく誰もが初めてこの部屋に入れば必ず立ち竦むであろう酷い有り様だった。
コンクリート剥き出しの壁、部屋の各所にある見た事もない用途不明な機械類、無造作に床へ放置された怪し気な錠剤と薬瓶。
ベット脇の机の上にある幾本もの針が錆びた注射器、乾いて赤茶げた血痕らしき床の雫跡、部屋の隅に山積みとなっている血の付着した包帯。
部屋を照らす天井の蛍光灯は幾つかが点かず薄暗く、その内の1つは今のヒカリの心を表すかの様にチカチカと点滅して瞬いている。
「・・・・・・。」
どれくらいの時をそうしていたのか、ヒカリは決意したかの様に小さく頷くと、立ち上がって制服のリボンへ手をかけた。
シュル・・・。シュルシュル・・・。
静かな部屋に布ずれの音だけが響き、ヒカリはリボンを解き、ジャンパースカートを脱ぎ、靴下と靴を脱ぎ、ブラウスのボタンを外してゆく。
「・・・・・・。」
プチッ・・・。
下着姿になったヒカリは数秒ほど躊躇い、背中へ両手を回してピンクのブラジャーのホックを外して、外気に中学生女子平均的な胸を晒す。
「・・・・・・。」
ヒカリは一旦そこで脱いだ衣服を畳んでベット脇の机の上に置いた後、ブラジャーとお揃いのピンクのショーツも脱ごうとウエストへ手をかける。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
だが、ヒカリはショーツを数センチほど下げただけで固まり、ただただ時だけが虚しく過ぎてゆく。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
ヒカリにとって1秒とも、1分とも、1時間とも言える時が過ぎ、ヒカリは意を決すると目をギュッと瞑って、一気にショーツを膝まで下ろした。
「・・・・・・。」
そして、几帳面に洗濯後の様にショーツを丸め畳んで机の上に置き、全裸になったヒカリが両手で胸を隠しながら再びベットへ腰かけた次の瞬間。
ギィィーーー・・・。
「っ!?」
それを待っていたかの様に出入口の扉が錆び付いた音を立てて開き、即座に反応して視線を出入口へ向けたヒカリは、驚愕に目を最大に見開いた。
何故ならば、部屋に入ってきたのは、ヒカリが想像していた見知らぬお医者さんではなく、良く見知ったシンジだったからである。
もっとも、シンジはサングラスはいつも通りとして、白衣を着込んで首から聴診器をかけている為、もしかしたらお医者さんにも見えなくもない。
「やあやあ、お待たせ。洞木さん」
「・・・ど、どうして、碇君がっ!?」
シンジはヒカリの心情など意に介せず笑顔でヒカリの元へ歩み寄り、ヒカリは肌を見られまいと体を丸めながら驚き尋ねる。
「どうしてって・・・。僕が洞木さんを診断するからだけど?」
「えっ!?・・・ええぇぇ~~~っ!!?」
応えてシンジは何を当たり前なと肩を竦め、ヒカリは一瞬だけシンジの言葉が解らなかったが、解るや否やビックリ仰天。
「それとも、洞木さんはこの人の方が良い?
 でも、この人・・・。実はロリコンの疑いがあってね。これは内緒にして欲しいんだけど、綾波もその毒牙にかかりかけたくらいだよ?」
するとシンジは白衣のポケットからサングラスをかけていないゲンドウの写真を取り出してヒカリへ見せた。
「そ、それはちょっと・・・。ほ、他の人はいないの?お、女の人とか・・・・・・。」
さすがのヒカリもお医者さんとは言えどもその人格の危険性に怯みながら、シンジとゲンドウ以外の人物による診断を希望する。
「言っただろ?現代の科学では人間のクローンは禁忌とされているって・・・。
 だから、研究している事自体が少しでも外に漏れない様にする為にも、研究人数は必要最低限にしぼる必要があるんだよ。
 ・・・で、しぼりにしぼって結果、僕とこのおじさんだけと言う事にしたんだけど・・・。やっぱり、止める?トウジの事は諦める?」
「や、止めないけど・・・。で、でも・・・・・・。」
しかし、シンジは首を左右に振って究極の選択をヒカリに迫り、ヒカリはどちらも選べずに言葉を詰まらす。
ちなみに、話は少し遡るが、シンジはヒカリが書類へサインをした後、トウジを格安で元に戻す為にはトウジのクローン体が必要だと説いた。
また、クローン体を作る為には同年代のデーターが必要だとも説き、ヒカリへデーターの採取に協力してくれと頼んだのである。
無論、ヒカリにその提案を断る理由はなく頷くと、シンジにこの部屋へ連れてこられ、トウジの為ならと文字通り一肌を脱いで今に至っていた。
「ああ、そうか・・・。僕の腕を心配しているんだね?
 それなら、大丈夫だよ。この部屋には監視カメラが数台ほど設置されていてね。僕はさっきの人からこれで指示を受けながら診断をするから」
選択を出し渋るヒカリを首を傾げて不思議に思ったフリをした後、シンジは左耳に差しているイアホンを指さして己の診断力を保証する。
「か、監視カメラっ!?・・・ど、何処っ!!?」
監視カメラがあると聞いて驚き、今までの様子も撮られていたのかと、ヒカリが辺りをキョロキョロと見渡して監視カメラを探し始めたその時。
「これで安心しただろ?さあ、ベットに寝て」
「えっ!?」
シンジがヒカリの肩を軽く押し、不意を突かれたヒカリはバランスを崩して後ろへ倒れ、ベットの方向に対して体を横向きに寝そべらした。
「キャっ!?」
おかげで、生まれたままの姿をシンジへ見事に披露してしまい、ヒカリが慌てて右手で胸を、左手で股間を即座に隠す。
「洞木さん、ダメじゃないか・・・。これじゃあ、診断が進められないよ?その意味が解るよね?」
「・・・・・・・わ、解ってる」
シンジは非協力的なヒカリに深い溜息をつき、ヒカリがしばらく躊躇った後、シンジから顔を横へ背け、両手のガードをゆっくりと解いた途端。
カシャンッ!!カシャンッ!!!
「な、何するのっ!?い、碇君っ!!?」
「だって、ほら・・・。今後も洞木さんが診断の邪魔をしたらいけないでしょ?・・・ねっ!?」
素早くヒカリの両手が手錠で拘束されてベット両端のパイプに繋がれ、ヒカリが驚愕顔を勢い良く正面へ向けると、シンジは苦笑して肩を竦めた。
「そ、そんな事しない・・・わよ・・・・・・。」
「・・・って、ほらね?言ったすぐ側から・・・。そんな事をしても無駄なんだってば」
ヒカリは最後の抵抗に両脚を閉じるが、ベット横向きに寝てお尻下がベットから出ている為、シンジに両脚の間に入られて足を易々と開かされる。
「うっうっ・・・。うっ・・・。うっうっうっ・・・。」
「何も泣く事はないじゃない・・・。これは科学、医学なんだよ?ほら、風邪をひいた時にお医者さんへ体を見せるのと一緒だよ」
シンジに乙女の秘密を余す所なく披露してしまい、ヒカリは再びシンジから顔を横へ背け、嗚咽して涙をポロポロと流し始めた。
「うっうっうっ・・・。い、碇君はお医者さんじゃないでしょ・・・。うっうっ・・・。」
「だから、こうして白衣も着て、お医者さん気分を出しているじゃないか・・・って、まあ、良いや。それじゃあ、始めるよ?」
ヒカリのその姿に多少の罪悪感を覚え、シンジは説得を試みるもヒカリの嗚咽は止まる様子はなく、早々に説得を諦めて診断を開始した直後。
「ひゃあっ!?」
「こらっ!!動いちゃダメじゃないかっ!!!」
ヒカリは両脚の間に吹いた熱い息吹に体をビクッと震わせて弓なりに反らし、すかさずシンジがヒカリの両膝を掴んで体を固定した。
「い、碇君っ!!そ、そこは関係ないでしょっ!!!」
「いやいや・・・。ところが、関係あるんだね。これが・・・・・・。」
「ど、どうしてよっ!!す、鈴原は男の子で、そこは女の子だけの・・・。きゃうっ!!?」
ヒカリが言う『そこ』とは何処なのかは全くの謎だが、シンジは興奮した様に目を爛々と輝かして、『そこ』を凝視しまくって触診しまくる。
「知ってるかい?人間の胎児はある一定期まで誰しもが女の子だったと言う事を・・・。
 そして、精子と卵子で結びついた染色体の違いによって、ある時期を境にここが男性のシンボルとも言える物に変化するんだ。
 そう、ここっ!!ここはなんだっ!!!うむぅぅ~~~・・・。正にDNAの神秘っ!!!!!洞木さんもそう思うでしょっ!!!!?」
「あんっ・・・。お、思うっ!!くうっ・・・。お、思うからっ!!!あふっ・・・。や、優しくしてっ!!!んんんっ・・・・・・。」
更にシンジが言う『ここ』も全くの謎だが、『ここ』を触診される度、ヒカリは体をビクッと震わせ、次第に切な気な甘い声を出しまくり始めた。


(ま、短気は損気とも言うしね・・・。これから、ゆっくりと時間をかけて・・・・・・。
 それにしても、良く我慢できた物だよね。うんうん、偉い、偉い・・・。その代わり、今夜は寝かせないよ。アスカ・・・・・・。)
ヒカリの診断も終わり、シンジはズボンのポケットへ両手を入れ、何やらニヤニヤと笑いながらネルフの通路を何故かやや猫背気味に歩いていた。
余談だが、ヒカリはよほどショックな事があったのか、先ほどの診断中に失神してしまい、今はネルフのとある医務室ですやすやとお休み中。
無論、失神しているヒカリを医務室へ運んだのも、全裸だったヒカリへちゃんと服を着させてあげたのも、全てシンジである。
(・・・そうだ。なら、アスカにもお土産を買っていってあげようかな?)
進路前方に自動販売機コーナーが見えると、シンジはアスカの喜ぶ顔を想像してニヤリと笑い、上着の内ポケットを探って財布を取り出す。
(そうそう、やっぱり基本はこれだよね。色々と種類はあるけど・・・。)
そして、ありったけの百円硬貨を手に持ち、シンジが迷う事なく『赤まむし』と言う強壮ドリンクをまず1本買おうとしたその時。
ちなみに、手に持っている金額から推察すると、シンジは『赤まむし』なる強壮ドリンクを11本ほど買う気らしい。
「・・・あれ、山岸さん?」
自動販売機コーナーのベンチに座って俯いているマユミの姿を視界の端に捉え、シンジが思わずマユミを呼んだ。
「シ、シンジくぅぅ~~~んっ!!」
チャリンッ!!チャリ、チャリ、チャリ、チャリィィーーーンッ!!
するとマユミは泣きはらした顔を上げるなり、立ち上がってシンジへ飛び抱きつき、その衝撃にシンジの掌から小銭が全て床へこぼれ落ちる。
「・・・ど、どうしたの?」
「うっうっ・・・。わ、私・・・。わ、私・・・。うっうっうっ・・・。」
さすがのシンジもいきなりの事態に戸惑い、マユミは必死に己の言葉を伝えようするが、嗚咽で言葉が上手く出てこない。
「わ、私・・・。えっ!?」
「んっ!?」
だが、不意にマユミは間抜け声を出して、下腹辺りに感じた不思議な感触に視線を下へ向け、釣られてシンジも視線を下へ向けた次の瞬間。
「キャっ!?」
「おわっ!?」
同時にマユミとシンジは全てを察して、抱きついたままお互いに腰だけを勢い良く引き、通路の真ん中で奇妙なポーズをとった。
「・・・ご、ごめんなさい」
「い、いや・・・。こ、こっちこそ・・・・・・。」
一拍の間の後、マユミは抱擁を解くと俯いて耳まで真っ赤に染めて何故か謝り、シンジはやや顔を紅く染めてバツの悪そうな表情で頭をかく。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
何とも形容しがたい沈黙が続き、2人の間に嫌な雰囲気が広がってゆく。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
それでも、その手の経験がマユミより豊富なシンジがいち早く立ち直って言葉を取り戻した。
「それより、元気がない様だけど・・・。どうしたの?」
「えっ!?あっ!?はい・・・。その・・・・・・。」
マユミはシンジの問いに顔を上げるが、すぐに今度は悲しそうに俯いて再び口ごもる。
「話し難いのなら、ここでは何だし・・・。家、来る?」
「・・・・・・はい」
シンジはマユミの態度に腕を組んで首を傾げた後、これは深い事情がありそうだと察して家へ誘い、マユミは少し躊躇うもシンジの誘いに乗った。


トントントントントン・・・。
部屋に響く不機嫌さを含んだ断続的な音。
トントントントントン・・・。
アスカはテーブルに右手で頬杖をついて、左手の人差し指の爪でテーブル表面を叩き、TV上にある目覚まし時計を眉間に皺を寄せて睨んでいた。
余談だが、ここは葛城邸ではなく、アスカがジオフロント内に借りた部屋であり、部屋は割と広いリビング10畳の1LDKの間取り。
また、この部屋は昨日借りたばかりなので荷物が全くなく、有るのは元々備え付けられていた最低限の家具一式くらい。
それ故、当然の事ながら着替えがあるはずもなく、アスカは第壱中女子制服姿のまま。
トントントントントン・・・。ドンッ!!
「遅いっ!!」
数分間も刻まれていたリズムが不意に止んだと思ったら、アスカは左拳でテーブルを苛立ち気に思いっ切り叩いた。
苛立ちの理由、それは部屋に来ると約束したはずのシンジが一向に部屋へ現れず、目覚まし時計が既に午後9時半を示しているからである。
「全くっ!!何やってんのよっ!!!それりゃあ、忙しいのは知ってるけど、電話の1本くらいくれたって良いじゃないっ!!!!
 わざわざ携帯の電源を切っちゃってさっ!!そんなに仕事が面白いって言うのっ!!!あたしの事はどうだって・・・って、はっ!!!?」
続いて、シンジの悪口を独り言でグチグチとこぼしていたが、突然アスカは目を見開きながら勢い良く立ち上がった。
「ま、まさか・・・。ファ、ファーストの所へ行ったんじゃ・・・・・・。」
ふと頭に浮かんだ最悪の想像に、アスカは瞳をワナワナと震わしつつ瞳の色を次第に虚ろ気味にさせてゆく。
「そ、そんな事あるはずないわよ・・・。シ、シンジはあたしと約束したんだもん・・・・・・。」
だが、アスカは猛烈に首を左右に振ってその想像を振り払うと、その場へ女の子座りで力無く崩れ、俯いて願う様に呟いた。
「・・・でも、シンジは信じられるけど、ファーストは信じられないわっ!!
 もしかしたら、シンジはここへ来る途中で誘惑されて・・・。そうよっ!!そうに違いないわっ!!!あの性悪女のやりそうな事よっ!!!!」
そうかと思ったら、アスカは瞳に闘志を燃やして顔を上げ、再び勢い良く立ち上がって右拳をギュッと握って掲げる。
ちなみに、俯いてから顔をあげるまでの間は、わずかに1秒ともない短い時間なのだが、恐らくアスカの頭の中では何かが色々とあったらしい。
「シンジ、待っててっ!!今すぐ助けに行くからねっ!!!
 ・・・ったく、あの女ぁぁ~~~っ!!シンジが嫌って言えないから、調子に乗ってぇぇぇ~~~~っ!!!」
何やら決断するや否や、玄関へ猛ダッシュを駈け、アスカが玄関に立ち、センサーがアスカの存在を感知して扉が開いた次の瞬間。
プシューーー・・・・。
開いた扉と平行に片膝を付いてしゃがみ、右耳にコップ底を当て、扉へコップ口を当てていたらしきレイが、アスカの目の前に現れた。
「あ、あんた・・・。な、何、やってんの?」
「っ!?・・・も、問題ないわ」
アスカが半ば茫然となりながら呼びかけると、レイは体をビクッと震わした後、頬をポッと紅く染めて何事もなかったかの様に立ち上がる。
「な、何よ・・・。」
「・・・な、何でもない。じゃ、じゃ、さよなら・・・・・・。」
そして、レイはしきりに背伸びをしてアスカの肩越しに部屋の中を伺うが、アスカの視線に気付いて惣流邸前をそそくさと足早に去って行く。
プシューーー・・・・。
「・・・もしかして、ファーストの所にも居ないのかしら?」
一拍の間の後、扉が時間制限で閉まると、レイの様子にシンジが碇邸にも帰っていない事を確信して、アスカは胸をホッと撫で下ろして安堵する。
「なら・・・。シンジは何処に?」
しかし、その代わりに出てきたシンジの行方についての疑問に悩み、アスカは腕を組んで首を傾げた。


「山岸さん、コーヒーのお代わりいる?」
「・・・いえ」
あんパン2つの遅い夕食も済んでシンジが話しかけると、ベット端に座るマユミは顔を俯かせたまま、空になったカップをシンジへ返した。
余談だが、ここは山岸邸でもなければ、レイが待つ碇邸でもない。
ならば、何処かと言えば、ここはシンジが司令代理特権でジオフロント内宿舎に借りた12部屋あるダミー碇邸の1つである。
また、この部屋は玄関とリビングが直結する間取りでリビング6畳の1LKと狭く、家具は備え付けのベットとクーラー、冷蔵庫くらいしかない。
「さてと・・・。それじゃあ、話してくれないかな?」
2つのカップを申し訳程度に小さいキッチンの流しへ入れた後、シンジはマユミの右隣へ座り、優しくマユミへ言葉を促す。
「・・・・・・シンジ君」
「うん、なんだい?」
「やっぱり、私にはチルドレンなんて無理です・・・。辞めさせて下さい・・・・・・。」
一拍の間の後、マユミはやはり俯いたまま、か細い声でシンジへチルドレンを辞退する旨を伝えた。
「・・・どうして?」
「だって・・・。」
「だって、実験に失敗したから?」
「・・・はい」
予想していた通りの展開に、シンジがチルドレンを辞退したい理由の原因について尋ねると、マユミが少し間を置いて頷く。
「そう・・・。でもね。山岸さん・・・。誰もが最初から上手くゆくはずがないんだよ?
 確かに僕は上手くいったみたいだけど、綾波やアスカがどれだけ苦労をしたか知っている?
 4歳だよ?4歳・・・。2人はその頃から10年間も実験と訓練を重ね、ようやくエヴァを起動させる事が出来たんだ」
シンジはマユミを元気付けようとレイとアスカの苦労話を語るが、マユミは俯いたまま全く効果が見られない。
「だからね。いきなり上手くいった僕も最初の頃は2人に良く虐められたものだよ。
 綾波には幾ら喋りかけても、しばらくは無視され続けられたし・・・。アスカなんて、会ったその日に叩かれたしね」
「っ!?シ、シンジ君、もしかして・・・。」
ならばとシンジが自分の体験談に話を変えると、マユミはシンジが何を言わんとするかを察して、驚きに目を見開いた顔をシンジの方へ向けた。
「僕は司令代理だからね。知りたくなくても、話が色々と入ってくるんだ。だから、山岸さんが虐められていた報告も僕の元に届いているよ」
「そう・・・なんですか・・・。」
その視線に頷き、シンジは己の立場を呪うかの様に苦笑を浮かべ、マユミは自分の不甲斐なさを知られている恥ずかしさにシンジから顔を背ける。
「で、話を戻すけど・・・。だからこそ、1回の失敗で諦めちゃいけない。
 それに言い換えれば、たった1回程度の失敗で諦めるなんて、10年間も努力し続けている綾波やアスカへの侮辱にもなるんだよ」
「そ、そんなつもりはっ!!わ、私はただっ!!!」
だが、シンジが言葉を続けた途端、マユミは勢い良く顔を戻して怒鳴り否定した。
「それとも、山岸さんはあの時の約束を忘れたの?」
「・・・あの時?」
マユミの怒鳴り声に怯む事なく、シンジは真剣な眼差しでマユミの瞳を覗き込み、マユミはその熱い眼差しに言葉の勢いを失って俯く。
「ほら、言っただろう?僕達は似ているから、頑張れるかも知れないって・・・。僕に言ったあの時の言葉は嘘だったの?」
「・・・嘘じゃありません(シンジ君、覚えていてくれたんだ・・・・・・。)」
その上、心に滲み入る様なシンジの優しい言葉に、マユミは己が大切にしている思い出をシンジも覚えていてくれた事を知って感動に心を震わす。
ちなみに、あの時の約束とは、マユミが以前に第三新東京市を去る際、シンジへかけた最後の言葉の事である。
「なら、頑張ろうよ。僕も頑張るから・・・。ねっ!?」
「でも、やっぱり私には・・・。」
それでも、シンジにチルドレンの継続を説得されると、マユミの感情は元に戻り、マユミが改めてチルドレンの辞退を告げようとした次の瞬間。
「大丈夫。山岸さんなら絶対に大丈夫だよ」
「っ!?」
シンジは優しく微笑んでマユミの唇へ唇を重ねてマユミの言葉を遮り、マユミは突然のファーストキスに驚愕して目を最大に見開いた。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
驚きのあまりマユミが声も出せずに固まる中、重なりあった唇からシンジの舌が割って入り、縦横無尽にマユミの口内で暴れ始める。
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
         「・・・・・・。」
しかも、シンジはマユミが着る第壱中女子制服のジャンパースカートの吊り部分の内側へ右手を入れ、ブラウスの上からマユミの左胸を触れた。
「っ!?っ!!?っ!!!?・・・シ、シンジ君っ!!!!?な、何をっ!!!!!?」
さすがのマユミもこれには我に帰り、慌ててシンジの両肩を両手で掴んでシンジを突き離す。
「・・・ごめん。嫌だったよね・・・・・・。」
「い、いえ・・・。そ、そうじゃないんですけど・・・。い、いきなりだったもので・・・・・・。」
しかし、マユミの強い拒絶反応に、シンジが心底に寂しそうな表情を浮かべるのを見て胸が痛み、マユミは突き離していた腕の力を緩めてしまう。
「そう・・・。なら、今度はゆっくりとするね」
「えっ!?」
するとシンジはその反応をOKと解釈して、反対にマユミの肩を掴んでマユミと共にベットへと倒れ込み、マユミは予想外の展開にビックリ仰天。
「あ、あの・・・。シ、シンジ君・・・・・・。」
「・・・大丈夫だよ。もっと力を抜いて・・・。さあ・・・・・・。」
「は、はい・・・。(お、お父さん、ごめんなさい・・・。マ、マユミはこれから不良に、大人になります・・・・・・。)」
一体、これから2人が何をしようと言うのかは全くの謎だが、この約30分後にその決意通り、マユミはシンジに導かれて大人の階段を昇った。


タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
何処かの敷地内を正に疾風の如く疾走する1人の男。
結わえられた尻尾の髪は己が繰り出す風に大地と水平線を作ってなびき、手と足は止まる事を知らず超高速に動き続けていた。
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
そして、走る勢いを殺さず、目の前に迫った3メートル強の金網へへばり付いてよじ登り、男が金網頂点に達して跨いだ直後。
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!
カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャン、カシャンッ!!
時刻は既に丑三つ時だと言うのに、男の背後の敷地内でサイレンが鳴り響き、敷地内に設置されている幾多のスポットライトが一斉に輝いた。
・・・タッ!!
その内の1つのスポットライトが男の間近に迫ると、男は即座に決断して3メートルの高さから飛び降り、すかさず大地に伏せて身を隠す。
「ふぅぅ~~~・・・。(だから、言ったんだ。無理だって・・・・・・。)」
一拍の間の後、スポットライトが男のすぐ側をかすめてゆき、男は安堵の溜息を漏らしながら匍匐前進で近くにある森へと逃げ込む。
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
全身が森の影に隠れると、すぐさま男は立ち上がり、森の木々の間を抜け、藪をかき分け、再び疾風の如く疾走して行く。
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
タッタッタッタッ!!
          タッタッタッタッ!!
一体、どれ程の距離を走ったのか、次第に男の息が切れて駈ける速度が落ち、遂に男が立ち止まって木の根元に腰を下ろした次の瞬間。
プシュッ!!ガンッ!!!
「っ!?」
サイレンサー付きの銃声が鳴ると共に、腰を下ろしている男の頭上の木の腹に弾丸が突き刺さり、男が驚愕に目を最大に見開く。
「だから、あれほど煙草は止めなさいって言ったでしょ?リョウジ君」
「やれやれ・・・。こんな事なら君の忠告を守っていれば良かったな」
同時に加持が走ってきた方向からショートヘアーの妙齢の美女が現れ、加持は見開いた目を緩ませて、荒い息を隠して男臭い笑みを浮かべた。
美女の名前は『笛井ヒジリ』、加持が内務省調査部時代に組んでいたパートナーである。
「だったら、その言葉・・・。あの世でも忘れないでね」
「おいおい、久々の再会だろ?そんな物騒な物はしまったらどうだ?」
「何を言うのっ!!私達を裏切った人が良く言うっ!!!」
その笑みが癪に触ったのか、笛井は厳しい顔を更に厳しくさせ、銃口を加持の眉間へ押し付けるが、加持の笑みは消えず激昂した。
「そう、3つの組織を裏切り、自分の心を裏切り、今はシンジ君の犬。
 だが所詮、ここにいるのは生きる屍・・・。笛井、君の手にかかって死ねるなら本望だ。さあ、殺してくれ・・・・・・。」
応えて加持は真剣な眼差しで笛井を見つめた後、その時を待って静かに目を瞑る。
「ずるいわ。リョウジ君・・・。私があなたを殺せない事を知っていながら、そんな事を言うなんて・・・・・・。」
「・・・・・・笛井」
だが、いつまで経ってもその時は訪れず、笛井は涙声で銃を下ろして力無く膝を折り、加持が再び目を開けた。
「リョウジ君、私と逃げましょう・・・。誰も私達を知らない国へ・・・。そして、そこで静かに2人で暮らすの・・・・・・。」
「・・・すまない。俺には取り戻さなくてはならない物があるんだ・・・・・・。」
「酷い人・・・。あの人の事ね・・・・・・。」
「・・・ああ」
いつしか、笛井と加持の距離は近づき、2人の唇が重なり合おうかとしたその時。
「お前等って、そういう仲だったのか?いやいや、知らなかったな」
「誰っ!?」
笛井の背後より野太い声が聞こえ、笛井が素早く振り向きながら銃を向けると、森の中から屈強そうな逞しい体躯をした短髪の男が現れた。
男の名前は『駿河マサムネ』、やはり加持が内務省調査部時代に組んでいたパートナーであり、今も特別監査部で加持の片腕となっている男。
「す、駿河・・・。お、お前、どうしてここに?」
「司令代理の指示でな・・・。ほら」
加持が意外すぎる駿河の登場に驚いていると、駿河がやるせない溜息をつきながら2人へ向かって携帯電話を差し出した。
『やあ、加持さん。やっぱり失敗しちゃったみたいですね』
「シ、シンジ君っ!?・・・・・・って、ちょっと待てっ!!!やっぱりって、どういう意味だっ!!!?」
そのタイミングを見計っていたかの様に聞口からシンジの声が飛び出し、加持は驚愕した後、シンジの言葉に引っかかる物を感じて叫び尋ねる。
『笛井ヒジリさん、初めまして。ネルフ司令代理の碇シンジと言います』
「は、はい・・・。は、初めまして・・・・・・。」
「・・・おい」
しかし、シンジは加持を無視して笛井へ話しかけ、いきなり呼びかけられた笛井は戸惑いながらも返事を返し、加持が顔を引きつらせた。
『さて、自己紹介も済んだところで、ものは相談なんですが・・・。あなた、2重スパイをする気はありませんか?』
「「「・・・へっ!?」」」
するとシンジはいきなり笛井を悪の道へ誘い、これには加持と笛井と駿河が揃って思わず茫然と目が点。
『勿論、それ相応の謝礼は払いますよ。・・・そうですね。一尉待遇と言う事でどうです?
 これなら、今いる内務省の給料と合わせれば、かなりの額になるんじゃないかな?なかなかの好条件だと思いますよ?・・・どうです?」
まるで断るとは思ってもいないのか、シンジはそんな3人を無視して一方的に国を裏切る代償待遇を説明するや否や、笛井へ決断を迫った。
余談だが、茫然とする加持はこの時、シンジの話を聞きながら全てを悟る。
シンジから与えられた無茶難題の指示の本来の目的は、笛井を2重スパイに誘う事であり、自分は笛井を誘い出す為の単なる餌だったと言う事に。
また、笛井が加持の前に現れたと言う事は、未だネルフ内にスパイがいる事を意味した。
何故ならば、加持はゼーレと日本国を裏切っており、有る意味でこの2つの組織にとっては裏切り者の加持は賞金首と言えるからである。
その結果、翌日よりシンジの指示で特別監査部による大がかりなスパイ狩りが始まり、シンジに忠誠を誓う者が続出した事は言うまでもない。
「い、いや・・・。わ、私は・・・。そ、その・・・・・・。」
『そうそう、あなたとの連絡係には加持さんをと思っています。で、連絡時は野暮な事は言いませんが・・・。
 加持さんは色々な所から狙われているから、なかなかジオフロントを出れませんし・・・。恋人達の逢瀬を存分に楽しんできて良いですよ?』
加持と駿河は実体験から何度も首を左右に振り、笛井は2人のアドバイスを尊重して断る旨を伝えようとするも、シンジが追加待遇を出した途端。
「やりますっ!!いえ、やらせて下さいっ!!!」
「「笛井っ!?」」
『ありがとうございます。では、詳細は後ほどと言う事で・・・。じゃ』
笛井は目を輝かしてシンジの誘いに乗り、加持と駿河が驚き声をあげ、シンジはニヤリ笑いを声に含ませて電話を切った。
「お前、絶対に後悔するぞ・・・。」
「あら、リョウジ君は私と会うのが嫌なの?」
今からでも遅くはないと、加持は2重スパイを辞めるように勧めるが、笛井は先ほど中断したキスを加持へした後、嬉しそうにニッコリと微笑む。
ちなみに、笛井が2重スパイをすると言う事は、同時に加持は新たな弱みをシンジに握られたと言う事にもなる。
「しかし・・・。なあ?」
「・・・まあ、自業自得だな」
加持は縋る様な視線を駿河へ向けるが、駿河は苦笑しながら溜息混じりに加持の肩へ手をポムッと置いた。


「順調だね・・・。正にシナリオ通りだよ」
何故か全裸姿でベットに座るシンジはニヤリと笑いながらテーブルへ携帯電話を置いた。
ガチャ・・・。
「ただいまぁ~~」
「あっ!?お帰り、早かったね?」
だが、玄関からマユミの声が聞こえると、シンジはニヤリ笑いをニッコリ笑顔に変え、ジュースの買い出しへ行っていたマユミを出迎える。
ちなみに、マユミは第壱中女子制服姿をしているが、ここはシンジの部屋なのでマユミの着替えがあるはずもなく、それが当たり前。
「シンジ君、コーラーは売り切れていて、代わりに・・・って、キャっ!?」
「・・・どうしたの?」
玄関のドアを開けた途端に見えたシンジの裸に驚き、マユミは手に持っていたジュース2缶を床へ落として、真っ赤に染まった顔を両手で覆った。
「ふ、服くらい着て下さいよっ!!」
「良いじゃない。もう恥ずかしがる様な仲じゃないんだしさ」
そんなマユミに首を傾げた後、シンジはマユミが恥ずかしがっている理由を知って苦笑を浮かべる。
また、裸を見せても恥ずかしくない仲とは、どんな仲なのかは全くの謎だが、取りあえずシンジはマユミに裸を見せても恥ずかしくはないらしい。
「で、でもっ!!」
「でも、ドアは閉めて欲しいな。さすがの僕も山岸さん以外に見られるのは恥ずかしいから」
「ご、ごめんなさいっ!!」
そして、マユミの言葉に続いて、シンジが開けっ放しになっている玄関のドアを指摘し、マユミが慌てて振り返って玄関のドアを閉めた次の瞬間。
バタンッ・・・。
「っ!?・・・シ、シンジ君。ダ、ダメ・・・・・・。」
背後からシンジに抱きしめられて、マユミは驚きに目を見開き、うなじへのキスを受けながら両胸を制服の上から揉まれて何やら拒否を示す。
「・・・どうして?」
「せ、制服が皺になりますし・・・。そ、それにまだ痛いんです・・・・・・。」
「・・・大丈夫。僕がアイロンをかけてあげるし・・・。優しくするから・・・。ねっ!?」
「ダ、ダメ・・・。ダ、ダメ、ダメ、ダメ・・・。ダ、ダメ・・・。あんっ!?」
何を優しくするのかは全くの謎だが、マユミは口で拒否しながら全然嫌そうな素振りを見せず、シンジの成すがまま胸を揉まれ続ける。
「山岸さん、こっちを向いて」
「は、はい・・・・・・。」
それどころか、しゃがんだシンジにスカートの中へ潜られた上、マユミはシンジの言葉に従い、シンジに対して正面を向く。
「・・・・・・ど、どうしたんですか?」
「いや・・・。何か忘れている様な気がするなと思ってね」
だが、不意にシンジがピタリと動きを止め、マユミが切なそうに問うと、シンジはマユミのスカートの中で首を傾げるも束の間。
「・・・ま、良っか」
「あっ!?」
「ところで、さっきから思っているんだけど・・・。」
「んはっ・・・。は、はい・・・。くうっ・・・・・・。」
「どうして、ここだけ生えていないの?」
「そ、それは・・・。きゃんっ!!」
シンジはすぐに考えるのを止め、マユミが拒否しない事を良い事にマユミのショーツを下ろし、目の前に現れた乙女の秘密に改めて首を傾げた。


タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ!!
闇夜を紛れ、葛城邸へ向かって疾走する黒い影。
プシューーー・・・。
「シンジ、ごめんっ!!あたし、勘違いしちゃって、向こうで待って・・・いたん・・・だけ・・・ど・・・・・・。」
焦る気持ちを抑えながらカードキーをスリットに通し、玄関の扉が開くなり、アスカは葛城邸内へ駈け入るが、中は暗く人の気配は全くない。
「クワッ!?」
人の気配はないが、たまたまトイレに起きていたペンペンがアスカに気付き、奥から出てきてアスカを出迎えた。
「・・・って、また、すれ違いなのっ!?それじゃあねっ!!!ペンペンっ!!!!」
プシューーー・・・。
アスカは葛城邸にペンペンしか居ないと知るや否や、玄関を駈け出て再びジオフロント内にある自分の部屋へ引き返す。
タッタッタッタッタッタッタッタッタッタッ!!
シンジを信じ切る美しいアスカのその愛の行為は、ジオフロント内のアスカの部屋と葛城邸を既に3往復半に達していた。


その後、アスカは結局5往復したところでジオフロント内の部屋で力尽き、太陽がてっぺんに昇った頃に目を醒ます事となる。
そして、すぐさま司令公務室に殴り込みをかけるが、シンジに急な出張で電話をする暇もなく家へ帰れなかったと誤魔化されてしまう。
その上、シンジとの愛を熱く確かめ合って怒りの矛を収め、ご機嫌な笑顔とスキップで司令公務室を出てきた事は言うまでもない。




- 次回予告 -

シンジが司令代理に就任して以来、初めての使徒が現れた。    

恐怖と言う名の独裁は、遂に牙を剥いて発令所の面々を恐怖させる。

その時、天空より光が舞い降り、ケンスケは懺悔の叫びをあげる。 

誰もが立ち竦み動けない中、親友の危機にトウジは立ち上がる。  

そして、友情の為、みんなの為、人類の為、彼は翔ぶ。      


次回 ゲドウ2世 第3話

せ めて、基本的人権を

さぁ~て、この次も地球の平和を守る為、僕のしもべ達に命令だっ!!

「「「やぁっ!!」」」

注意:この予告と実際のお話と内容が違う場合があります。



後書き

Aパートで出てきた将棋の1シーンですが・・・。
棋譜は全くのデタラメです(爆)
適当にそれっぽくしているので深く考えない様にお願いします(^^;)
また、今回の話で出てきた『山岸タケシ』、『宮町ユウコ』、『笛井ヒジリ』、『駿河マサムネ』ですが、多分もう出てこないです。
まあ、リクエストが有れば再登場するかも知れませんが、『宮町ユウコ』は確実に2度と登場しないでしょう(笑)
再登場の可能性はやっぱり『笛井ヒジリ』かな?
エヴァGで作ったキャラからの流用なんですが、私的にこのキャラを結構気に入っているんですよね。

(予告はゲドウ2世オリジナルの物です)

感想はこちらAnneまで、、、。


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