New NERV Commander
Gedou Ⅱ
EPISODE:01
Engage
プシューー・・・。
「・・・君か?」
「ご無沙汰です・・・。外の見張りにはしばらく眠って貰いました」
背後の扉が開く音に冬月は振り向き、暗闇の部屋に射し込む光を眩しそうに目を細め、逆光を受けて立つ男が加持だと解った。
「この行動は君の命取りになるぞ」
「真実に近づきたいだけなんです。僕の中のね・・・。」
カチャ・・・。カチャリ。
加持は冬月に近づいてしゃがみ、後ろに回された冬月の手にはめられている手錠を外す。
「それに、アダムのサンプルを碇司令に横流ししたのがバレそうなんでね。・・・自己保身を兼ねておかないとやばいんですよ」
長居は無用とばかり、すぐさま加持は辺りの様子を伺いつつ進み、その後を冬月が付いて行き、そこから2人は無事脱出した。
プシューー・・・。
「ただいまぁ~~・・・って、えっ!?」
寂しさに精彩を欠いた表情でアスカは帰宅し、玄関の扉を開くなり漂ってきた良い匂いに驚愕して目を最大に見開いた。
「シ、シンジっ!?」
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタッ!!
そうかと思ったら、アスカは靴を乱暴に脱ぎ捨て、満面の笑顔で駈け足を葛城邸に響かせながらキッチンへ急ぐ。
「あっ!?アスカ、おかえり。今日の夕飯はホイコローだよ」
案の定、キッチンにはシンジが立っており、何やらフライパンの調理で手が放せないのか、振り返らずにアスカへ声をかけた。
ちなみに、シンジは家に帰ってきたと言う事で私服に着替えており、当然サングラスもかけていない。
「(シンジが居る・・・。シンジがここに居る)はんっ!!無敵のシンジ様に夕飯を作って貰えるなんて身に余る光栄ですわっ!!!」
「ははははは・・・。相変わらず、アスカは元気だね」
「なによっ!!少しくらい活躍したからって良い気にならないでよねっ!!!大体、1ヶ月も入院していたら世話ないわよっ!!!!
馬っ鹿じゃないのっ!!(違ぁぁ~~~うっ!!!こんな事、言いたくないんだってばっ!!!!誰か、あたしを止めてっ!!!!!)」
1ヶ月ぶりに見るシンジの姿に安心した反動からか、アスカは心とは裏腹にいつも調子で毒舌を猛烈に捲し立て始めた。
「あっはっはっはっはっ!!確かに言えてる。入院している間に使徒が来てたら一大事だったよね」
「・・・へっ!?」
するとシンジは高笑いをあげてアスカの嫌味を軽く受け流し、アスカは予想外のシンジのリアクションに茫然と目が点。
「だけど・・・。チッチッチッチッチッ!!
アスカに夕飯を任せる訳にはいかないな。掃除する時にゴミを見て解ったんだけど、最近ずっとコンビニ弁当か、店屋物だったでしょ?」
しかも、シンジはガスコンロの火を止めて振り返ると、爽やかな笑顔で何度も舌打ちしながら人差し指を左右に振った。
「えっ!?あっ!!?う、うん・・・。(・・・こ、こいつ、誰?)」
おかげで、アスカは茫然を通り越して驚きに固まり、目の前のシンジが本物なのかと疑う始末。
「でも、そんな事で大丈夫なの?一応、アスカも女の子なんだから料理までとはいかないでも、掃除と洗濯くらいはしようよ。
リビングなんてゴミの山だったし、洗濯機の下の方にあった下着とかなんて凄い事になっていたよ?一体、いつから溜めていたの?」
「う、うるさいわねっ!!そ、そんなのあんたに関係ないでしょっ!!!」
「いや、関係あるよ・・・。今日、僕はこの家を出て行く。だから、アスカの事が心配なんだ」
「あ、あんたに心配される筋合いは・・・って、えっ!?家を出て行くっ!!?」
しかし、シンジからここ一ヶ月の家事無精を赤裸々に暴露され、アスカは我に帰って照れ隠しに怒鳴るが、返ってきた応えにビックリ仰天。
「うん・・・。もう荷物はさっき運んで貰ったし、今日からジオフロントの居住区画に住もうかと思うんだ」
「何でよっ!?どうしてよっ!!?訳を言いなさいよっ!!!?」
一ヶ月ぶりに家へ帰ってきたと思ったら、いきなりシンジに淡々と引っ越しを告げられ、アスカは勢いを取り戻して再び捲し立てる。
「アスカも解っているんだろ?」
「何が・・・って、キャッ!?・・・な、な、何すんのよっ!!?い、い、い、いきなりっ!!!?」
応えてシンジはアスカの元へ近寄ると、おもむろにアスカを抱き寄せ、驚いたアスカは思わず茫然とするも、慌てて顔を紅く染めて我に帰った。
「僕が居るだけでアスカが傷つく・・・。僕はそんなアスカを見たくないんだ・・・・・・。」
「・・・な、何よ。そ、それ・・・。わ、解るように説明しなさいよ・・・・・・。」
すぐさまアスカは身をよじってシンジから逃れようとするが、腰へ回されたシンジの両手はしっかりと固定されて逃れられない。
「アスカには迷惑な言い方かも知れないけど・・・。僕とアスカは根本が似ている様な気がする」
「そ、そんな事ないわよっ!!」
それどころか、シンジの抱擁と首筋へかかる吐息に心地よさを感じ、いつしかアスカは抵抗を止めた上に自分もシンジの腰へ両手を回した。
「そうかな?・・・方法は違うけど、似ているからお互いを傷つけ合ってしまうんじゃないかな?
僕はアスカに罵られ、自分に非があるんだと思い込み・・・。アスカは僕を罵りながらも、自分の態度を後悔する」
「そ、それは・・・。そ、そうかも知れないけど・・・・・・。だ、だからって、あんたが出て行く事ないじゃないっ!!」
更にはシンジに実は前々から思っていた事を指摘され、アスカは言葉に詰まるも、必死にシンジを引き留めるかの様に回した両手に力を込める。
「だからこそだよ。僕等はお互いに離れて暮らした方が良いんだ・・・。僕はアスカに少し前までの優しいアスカに戻って欲しいから」
「や、優しいっ!?・・・あ、あたしがっ!!?」
だが、シンジの口から出た初めて聞く自分の評価に驚き、アスカが少し抱擁を解いて、シンジと顔を合わせた次の瞬間。
「そう・・・。アスカは優しい女の子だよ」
「んんっ!?」
シンジはニッコリと微笑んだ後、アスカの首へ右手を回すと、いきなり唇をアスカの唇へ重ね、アスカは目を最大に見開いてビックリ仰天。
「んんんんんっ!!」
ジタバタジタバタ・・・。
「んんんんんっ!!」
ジタバタジタバタ・・・。
「んんんんんっ!!」
ジタバタジタバタ・・・。
すぐさまアスカは手をばたつかせて抵抗を試みるが、藻掻けば藻掻くほどにシンジは力強く抱きしめ、遂にはキスを大人のキスへと移行する。
「んんんんんっ!!」
ジタバタジタバタ・・・。
「んんんんんっ!!」
ジタバタジタバタ・・・。
「んんんんんっ!!」
ジタバタジタバタ・・・。
これにはさすがのアスカも今までになく驚き、更に手をばたつかせて必死に抵抗するも、ますますシンジのキスは勢いを増すばかり。
「んんんんんっ!!」
ジタ、バタ、ジタ、バタ。
「んんんん・・・。」
ジタ・・・。バタ・・・。
「んん・・・・・。」
クテッ・・・・・・・・。
そして、しばらくするとアスカの瞳はトロ~ンと潤み始めて抵抗も弱め、終いにアスカは力無く腰砕け状態となってしまう。
「おっと・・・。大丈夫?」
「んはっ・・・。シンジぃ~~・・・・・・。」
すかさずシンジはアスカの腰へ右手を戻して支え、今度はアスカの方からシンジの首へ両手を回し、切なそうなウルウルと潤む瞳で向けてきた。
「今日はうがいをしなくて良いの?」
「・・・い、意地悪」
シンジはアスカの耳元で囁いてクスリと笑い、アスカは耳まで真っ赤に染めて俯き、恥ずかしそうに身をモジモジとくねらす。
「ごめん、ごめん。・・・じゃあ、意地悪ついでにこんな事もしちゃおっかなぁ~~?」
「キャっ!?・・・ダ、ダメ。ダ、ダメだってば・・・。きょ、今日の体育はマラソンだったんだから・・・。きゃんっ!!?」
その後、シンジがどんな意地悪をしたのかは全くの謎だが、奇怪な事にアスカの制服のスカートからは4本の足が伸びていた。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
巨大な換気扇が回る音を背にぼんやりと突っ立っている加持。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ガッシャーーン・・・。
部屋の出入口の扉が開く大きな音が響き、加持は現れた予想通りの来訪者に男臭い笑みを向ける。
「よう、遅かったじゃないか」
そして、来訪者が上着のポケットへ手を入れた事を確認して、加持は瞑想するかの様に目を静かに瞑った。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
再び部屋に換気扇の回る音だけが響き、ゆっくりと時が流れてゆく。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
ブゥゥ~~~ン・・・。
それは1分弱ほど経っても変わらず、加持は己の予想した未来がいつまで経っても来ない事を不思議に思って目を開けた。
「・・・殺さないのか?」
「ええ・・・。そういう指示だから」
出入口の扉前に立つリツコは半分ほど味わった煙草から紫煙を漂わせ、深い溜息と共に肺から煙を吐き出す。
どうやら、先ほどリツコが上着のポケットに手を入れたのは煙草を取り出す為だったらしい。
「そいつはありがたいな・・・。だが、全てを知った今、俺が碇司令に手を貸す理由はないな」
「加持君も意外と迂闊ね。その情報は3日前の物よ」
「・・・どういう意味だ?」
加持は裏切り者の自分を殺さない理由を算段して鼻で笑うが、リツコに鼻で笑い返されて軽い驚きを覚える。
「そんな事はどうでも良いの・・・。これを見て」
ドサッ!!
リツコは加持の質問には応えず、持っていた書類の束を加持に向けて放り投げた。
「・・・何だ、これは?」
だが、加持は書類を取ろうとしゃがんだ隙を狙われると考え、リツコへ視線を向けたまま書類を取ろうとはしない。
「安心して・・・。さっきも言ったけど殺す気はないから」
「・・・解った」
そんな加持の心中を察して、リツコが両手を挙げて見せると、加持はようやく書類を手に取って拾い、1ページ目へ視線を走らせた次の瞬間。
「な、何だ、こりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~っ!!」
「見ての通り、あなたの交友関係記録よ。私も見せて貰ったけど、うちの技術部の娘達にもかなり手を出しているみたいね」
加持が魂の咆哮を部屋一杯に響かせ、リツコは再び煙草をくわえた後、深い溜息と共に肺から煙を吐き出した。
「ど、どうして、こんな物がっ!?」
驚愕に目を最大に見開き、加持は肩をワナワナと震わせ、己のプライベート記録が克明に記載された書類を読んでゆく。
「多分、碇司令があなたの尻尾を掴む為に調べていた時の副産物だと思うけど・・・。これをミサトが見たらどう思うかしらね?」
「な、なにっ!?」
吸い終わった煙草を床に落とし、リツコが足の爪先で煙草の火をもみ消しながら告げた言葉に反応して、加持が書類から勢い良く視線を上げる。
「さあ、どうするの?加持君・・・。司令代理があなたに話があるそうよ」
「し、司令代理っ!?だ、誰なんだ、それはっ!!?い、碇司令じゃないのかっ!!!?」
リツコは初めて見る余裕がない加持の姿にクスリと笑みを漏らし、加持は交渉を求められるまでもなくリツコへ必死に縋り付いた。
「クワワッ!!クワワワワッ!!!」
「ほらほら、そんなに慌てなくても大丈夫だよ。誰も取りはしないんだから」
絶え間なく周囲を警戒しながら餌皿の上の焼き魚にがぶり付くペンペンに、シンジが愉快そうにクスクスと笑みをこぼす。
だが、ペンペンにとっては、この食事が1ヶ月ぶりの鳥らしい食事なのだから、食べる事を必死になってしまうのは無理もない話。
何故ならば、己の食事も満足に作れないアスカとミサトがペンペンの食事を作るはずもなく、ここ1ヶ月の食事はドックフードだったのである。
しかも、犬缶などの半生タイプではなく、近くのスーパーで大安売りしていたお徳用の固形乾燥ドックフードなのだから涙なしには語れない話。
プルルルルルルルルルッ!!
「クワッ!?」
「ぷっ!!・・・大丈夫だって、あれは電話だよ。ペンペン」
不意に電話のベルが葛城邸に鳴り響き、警戒していたペンペンは間抜けにも驚き飛び跳ね、シンジは思わず吹き出しながら電話の元へ歩いて行く。
カチャッ・・・。
「はい、葛城です・・・。ああ、どうでした?・・・そうですか、上手くいきましたか。では、シナリオ通りに・・・。」
電話に出ると待ちに待った吉報がもたらされ、シンジがニヤリと笑いながら受話器を再び置いたその時。
「・・・あれ?」
ふとシンジは電話に点滅している光がある事に気付き、留守番電話を再生するボタンを押した。
『ピーーーーッ!!
葛城・・・。俺だ。多分、この話を聞いている時は君に多大な迷惑をかけた後だろう。
すまない・・・。リっちゃんにもすまないと謝っておいてくれ。
迷惑ついでに・・・。俺の育てていた花がある。俺の代わりに水をやってくれると嬉しい。場所はシンジ君が知っている。
葛城・・・。真実は君と共にある。迷わず進んでくれ・・・。
もし・・・。もう1度、逢える事があったら・・・。8年前に言えなかった言葉を言うよ。じゃ・・・・・・。午後0時2分です』
すると加持が入れたらしきメッセージが流れ、シンジは聞き終わるとニヤリと笑って何やら電話のあるボタンを押した。
「それじゃあ、ペンペン。元気でね」
「クワッ!!」
そして、食事に一生懸命なペンペンに一声をかけ、いよいよシンジは葛城邸を出て行こうと玄関へ向かう。
ガラッ・・・。
「アスカも元気で」
その途中、アスカの部屋の前で立ち止まって襖を開け、アスカにも一声をかけるが、アスカからの返事はない。
それもそのはず、何故だかは全くの謎だが、全裸のアスカはまだ夕飯前の時間だと言うのにすっかりベットでお早いご就寝中。
ガラッ・・・。
「・・・さて、行きますか」
シンジはアスカの部屋に微笑みを残しながら襖を閉めた後、サングラスをかけると微笑みをニヤリ笑いへと変え、葛城邸を後にした。
ゴクッ・・・。
わざと空調が切られているのか、咽せっかえる様な部屋の暑さに、加持は生唾を音を立てて飲み込んで喉の乾きを癒す。
この狭い部屋に入れられて小一時間が経過しようとしているが、未だ外部からのアクションは全くなく、ただただ静かに時間だけが流れてゆく。
そして、椅子に座る加持は机の上で祈る様に手を組み、額を組んだ手の上に乗せて顔を伏せ、ただただ時をひたすら待っていた。
『ちょっとっ!!いい加減にしなさいよっ!!!どうせ、見てるんでしょっ!!!!』
不意に机の対面におかれたTVモニターからミサトの怒鳴り声があがり、加持は体をビクッと震わせて顔を上げる。
「すまん・・・。葛城・・・・・・。」
だが、加持は耳を両手で塞ぎ、TVモニターの中で何かを叫んでいるミサトへ謝った後、視線を伏せてミサトから目を背けた。
「俺は・・・。俺は・・・。俺はどうしたら良いんだ・・・・・・。」
すると必然的に視線は机に置かれた1枚の書類を捉え、加持は頭を左右にブンブンと振って何やら必死に苦しみ耐える。
「どうして、こんな事にっ!!どうして、こんな事にっ!!!どうして、こんな事にっ!!!!」
バサバサバサッ・・・。
その拍子に肘がもう1つの書類の束に当たり、クリップが外れて書類の束が机から床へこぼれ落ちたその時。
ガチャ、バタンッ・・・。
「そろそろ、考えは決まりましたか?加持さん」
TVモニターの向こう側にある部屋で唯一の出入口の扉が開き、サングラスをかけたシンジがニヤリ笑いを浮かべながら現れた。
「シンジ君っ!!これはどういう事だっ!!?」
「・・・どういう事と言いますと?」
加持は勢い良く席を立って怒りもあらわに怒鳴るが、シンジは何食わぬ涼しい顔で聞き返す。
「この書類だっ!!俺にこんな仕事をさせる気なのかっ!!?」
「こんな仕事とは心外ですねぇ~~。僕はただ加持さんに生きていて欲しいんですよ。・・・それとも、もしかして部長職ではご不満ですか?」
「何を言っているっ!!特別監査部と聞こえは良いが、これは要するに憲兵・・・。いや、秘密警察の類だろっ!!!」
ならばと机に置かれた書類を掴み取ってシンジへ突き出し、加持は表情に嫌悪感を混ぜて猛烈な勢いで捲し立てる。
ちなみに、この書類には、シンジが立案した例の能力査定計画が、青葉の手によってまとめられて草案として書かれていた。
但し、昼の話とは違う所が多々あり、この件は署名者が全て立案したと言う形になっており、自ら計画責任者を志願するとの上意書になっている。
これにより、例えシンジが言う特別監査部が設立、実行されても、シンジへの批判は出ず、署名者へ批判が集中するという仕組みになっていた。
つまり、シンジは加持に今現在無記名となっているこの書類の署名欄に名前を書いてくれと頼み込んでいるのである。
「それは加持さんの気のせいなんじゃありません?・・・おやおや、大事な書類をこんなに散らかしてダメじゃないですか?」
しかし、シンジは全く堪えた様子もなくニヤリと笑い、床に散らばっている加持の交友関係が書かれた書類について指摘する余裕ぶり。
ドンッ!!
「これもそうだっ!!君は間違っているっ!!!こんな物で人の心を動かそうなんて、これは立派な脅迫だぞっ!!!!」
その余裕ぶりが癪に触ったのか、加持は怒りに任せて思いっ切り机を拳で叩いた後、その拳の人差し指でシンジをビシッと指さした。
「そう、脅迫ですよ?何を今更・・・。そうに決まっているじゃないですか」
「な゛っ!?」
応えてシンジはサングラスを押し上げると、笑みをクスッと漏らして加持の意見を素直に認め、加持は思わず絶句して茫然と目が点。
「だって、これがネルフの交渉の仕方なんでしょ?僕はただ単にネルフの流儀に従ったまでですよ。
思い起こせば、僕が初めてエヴァに乗った時も・・・。いつか家出した時も・・・。第10使徒の作戦の時も・・・。
この前、ネルフを辞めた時も・・・。そして、加持さんとスイカ畑で話した時も・・・。全部がそうじゃないですか?
拒否の出来る退路を全て塞ぎ、それをあたかも自分が選択したかの様に思い込ませる・・・。これが脅迫じゃなくて何なんです?」
その隙を突くかの様に、シンジは言葉の端々に棘を含ませて嫌味を重ね、加持の良心を棘でザクザクと突き刺してゆく。
「だが、君がエヴァに乗らなければ人類は滅んでいたっ!!仕方がないじゃないかっ!!!」
「なるほど、その為には相手の心はどうでも良いと?・・・全く大した大義名分ですよ。これで僕が死んでいたら英雄碑でも立ったのかな?」
「い、いや・・・。そ、それは・・・。そ、その・・・。だ、だから・・。え、えっと・・・。」
「・・・でも、それを世間一般では脅迫と言いません?」
「う゛っ・・・。」
それでも屈する訳にはいかないと、加持は免罪符をシンジへ叩きつけるが、軽くシンジに免罪符を破られてしまい、墓穴を掘って言葉に詰まる。
「さあ、加持さん。僕はあなたに強要しません。
自分で考え、自分で決めるんです。自分がどうしたら良いかを・・・。ま、後悔をしないようにね」
そこへシンジは皮肉を込めて、あの日、あの時、あの瞬間に加持から言われた言葉をそっくりそのまま返して決断を促す。
「・・・・・・ひ、1つだけ聞きたいんだが、もし俺がこの話を断ったらどうなる?」
「勿論、加持さんが浮気していた証拠をミサトさんへ渡させて貰います。ほら、こんな写真もたくさんあるんですよ?」
一拍の間の後、加持は項垂れながら椅子に力無くドカッと座り直して尋ねると、シンジはポケットから1枚の写真を取り出して机の上に置いた。
「んっ!?・・・・・・げっ!!?い、いつの間にっ!!!?」
加持は疲れた様に写真へ視線を向けるなり、目を最大に見開いてビックリ仰天。
その写真には、加持と技術部の女性職員が写っており、今正にとある宿泊施設へ2人が入ろうとする決定的証拠を捉えた物だったからである。
「どうします?悪くない話だと思うんですが・・・。ここへ来る前、駿河さんも加持さんの補佐役をOKしてくれましたよ」
「な、なにっ!?あ、あの駿河が屈したのかっ!!?」
更に間を置かずシンジから衝撃の事実が伝えられ、加持は見開いたままの視線をシンジへ移して2度ビックリ仰天。
余談だが、2人が言う『駿河』とは、加持と手を組んでネルフの内偵をしていた日本国内務省所属のスパイの事である。
「ええ、あの人もスパイの癖に結婚しているなんて迂闊ですよね。だから、奥さんにはジオフロントの居住区画に住んでもらおうかと思いまして」
ドンッ!!
「ひ、人質かっ!?ひ、卑劣だぞっ!!!シ、シンジ君っ!!!!」
「ええ、何とでも言って下さい。それより、加持さんはどうするんです?この後も予定が詰まっているんで早く返事をして貰いたいんですが」
自慢気にニヤリと笑うシンジの悪辣さに、加持は両拳で机を叩いて怒鳴るが、シンジには全く効果は見られず、それどころか決断を迫ってきた。
「ふっ・・・。良いだろう。葛城にその写真でも何でも渡すが良いさ・・・。
俺は俺の信条を曲げたくはない。それに葛城もこれから死ぬ男が最低な男だった方がすぐ忘れる事が出来るだろう」
もう何を言っても無駄と悟り、加持は椅子に腕を組んで深く腰かけ、これ以上の話は無駄だと言わんばかりに目を静かに瞑る。
「そうですか・・・。では、保安条例第32項・修正第6案の適用により、超法規的措置を取らせて貰いますが構いませんね?」
「・・・ああ、後悔はない」
シンジは残念そうに溜息をつき、部屋を出て行こうと振り返り、加持がシンジの示唆する死刑判決に頷いたその時。
「おおっ!!そうそう、そう言えば・・・。加持さんが入れた留守電、あれは消させて貰いましたよ?」
「な、何ぃぃ~~~っ!?」
ふとシンジは思い出した様に左掌を右拳でポンッと叩き、葛城邸を出る際にした行動を教え、加持は驚いて叫びながら勢い良く席を立ち上がった。
「だって、僕は加持さんに死んで欲しくありませんし・・・。ミサトさんを泣かせたくもありませんからね」
「うぐぐぐぐ・・・。」
シンジは勝ち誇った様にニヤリと笑って振り向き戻り、加持は唇を噛んで敗北を悟り、屈辱に肩をワナワナと震わす。
何故ならば、加持が入れた留守電が消えてしまった今では、ミサトへの誠意が伝わらないどころか、ミサトへ伝わるのは加持の浮気癖だけ。
これでは、只の浮気者で終わってしまい、こんな情けない死に方はさすがの加持も嫌すぎて御免こうむるというもの。
『ねえっ!!大ピンチなんだってばっ!!!お願いよっ!!!!』
「だから、もう1度だけ考え直してみません?ほら、ミサトさんも苦しんでいるんですよ?」
明らかに加持の心が揺れているのが見えて取れ、シンジはミサトを監視するTVモニターのボリュームを上げ、加持の心へ揺さぶりをかけた。
ドンドンドンドンッ!!
「お願いっ!!お願いだから、ここを開けてっ!!!ねえ、誰かっ!!!!」
何やら切羽詰まった表情でしばらく前から出入口の扉を必死に叩いているミサト。
カシャ・・・。
「・・・何だ?」
その甲斐あってか、扉の覗き窓が開き、サングラスが現れた。
「トイレに行きたいのよっ!!だから、ここを出してっ!!!」
「トイレならそこにあるだろ」
カシャ・・・。
だが、ミサトの切なる願いも虚しく、あっさりと数秒で覗き窓が閉まってしまう。
ちなみに、ここは独房の為、サングラスが言う様に簡素なベットや洗面台、トイレなどが一通り備え付けられている。
ドンドンドンドンッ!!
「それがダメだから言っているんじゃないっ!!」
カシャ・・・。
「静かにしろ。うるさいぞ」
すぐさまミサトは再び扉を猛烈に叩いて外へ呼びかけると、再び扉の覗き窓が開き、事務的に応えるサングラスが現れた。
「このトイレ、壊れてるのよっ!!水が流れないし、紙ももう無いのよっ!!!逃げないからトイレへ行かせてっ!!!!お願いっ!!!!!」
「ちょっと待て」
カシャ・・・。
相当切羽詰まっているらしく、ミサトはこの部屋に現状を涙目で切に訴え、サングラスはミサトの訴えに頷いて覗き窓を閉める。
確かにミサトが言う様に備え付けられたトイレは故障している様であり、便座に水が一杯に溜まっていた。
また、その周りには溢れた水を拭いたのか、トイレットペーパーの残骸が散らばっている。
(はぁぁ~~~~・・・。良かった。一時はどうなる事かと思ったけど、これで助かるわ)
ようやくトイレへ行けると安心して、ミサトが安堵の溜息をついたその時。
カシャ・・・。
「これを使え」
カシャ・・・。
覗き窓が開いて、中へポケットテッシュが3つほど入れられたかと思ったら、覗き窓はすぐに閉められた。
「・・・・・・・・・っ!?」
そのポケットテッシュの意味が解らず、ミサトは思わずポケットテッシュを茫然と見つめていたが、その意味が解るや否や驚愕に目を見開く。
ドンドンドンドンドンドンドンドンッ!!
「ちょっと水が流れないって言ってるでしょっ!!おっきい方なのよっ!!!大ピンチなんだってばっ!!!!」
慌ててミサトは今までとは比べ物にならない勢いで扉を必死に叩くが、再び覗き窓が開く様子は全く見られない。
キュルキュルキュルキュルキュル・・・。
「はうっ!?・・・ま、また、来た」
すると不意にミサトのお腹から嫌な音が鳴り響き、ミサトはピタリと動きを止め、脂汗をダラダラと流してその場へ蹲る。
ドォーーンッ!!ドォーーンッ!!!ドォーーンッ!!!!
「おらぁぁ~~~っ!!ここを出せぇぇぇ~~~~っ!!!出せって言ってるでしょぉぉぉぉ~~~~~っ!!!!」
しかし、それは約束の時が近い証拠であり、ミサトは気力を振り絞って立ち上がり、扉へ思いっ切り体当たりをかます。
キュルキュルキュルキュルキュル・・・。
「んがっ!?・・・い、意地でも出さない気ね」
無論、そんな事で鋼鉄製の扉が打ち破られるはずもなく、更には無理な行動がたたってお腹へ負担をかけてしまい、ミサトはお腹を抱えて悶絶。
「・・・わ、解ったわよ。な、なら、望みどおりにしてやろうじゃない・・・・・・。」
しばらくするとミサトは何やら意を決した様に落ちているポケットテッシュを拾い、何故か小さな歩幅で慎重に部屋の隅へ向かって歩き出した。
『この変態野郎っ!!あとで覚えておきなさいよっ!!!』
「さて、どうします?ミサトさんをあの部屋から出せるのは加持さんだけなんですけど・・・。早くしないと間に合いませんよ?」
「解ったっ!!サインするっ!!!シンジ君にも忠誠を誓うからお願いだっ!!!!」
モニターTVから聞こえてくるミサトの罵声に、シンジは困った様に苦笑を浮かべ、加持は言われるまでもなく書類に自分の名前を走り書く。
「良かった・・・。その言葉を待っていたんですよ。はい、朱肉・・・。右手の親指で押して下さいね」
シンジは嬉しそうにニッコリと微笑んで頷き、加持はシンジから渡された朱肉を親指に付けると悪魔の契約書に拇印を押した。
「・・・ほらっ!!これで良いだろうっ!!!」
「はい・・・。では、確かに」
加持から書類を受け取ると、シンジは書類を折って大事そうに胸ポケットへ入れて部屋を出て行く。
「なら、早く葛城をっ!!」
「ええ、解ってますよ。・・・でも、僕が夕食のスープに一服盛って出させた事はミサトさんに内緒ですよ?それじゃあ・・・。」
ガチャ、バタンッ・・・。
そして、気持ち逸る加持の言葉を受けて振り返り、人差し指を立てて口元へ当てるシンジが部屋の扉を閉めた直後。
ウィィーーーン・・・。
「えっ!?」
加持の背後でシャッターが開く様な音が響き、驚いた加持が思わず後ろを振り返る。
ウィィーーーン・・・。
「えっ!?」
時同じくして、壁の向こう側の部屋でも、何故かお尻を丸出しにして蹲っていたミサトも思わず後ろを振り返った。
ガッシャーーン・・・。
「「えっ!?」」
先ほどまでお互いの背後にあった壁は上下に分かれて完全になくなり、2つの部屋は完全な1つの部屋に様変わり。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
加持とミサトは驚きと茫然に見開いた目でお互いを見合い、2人の間にとても奇妙な間が流れてゆく。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
1秒とも、1分とも、1時間とも言える短くて長い沈黙の後、ふと加持が言葉を取り戻して声をかけた次の瞬間。
「・・・・・・か、葛城」
「嫌ぁぁ~~~っ!!加持、見ないでぇぇぇ~~~~っ!!!お願いだから、そんな目で私を見ないでぇぇぇぇ~~~~~っ!!!!」
ミサトもまた言葉を取り戻して凄まじい絶叫を部屋に響かせた。
ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン・・・。
自分からは進んで洗濯を滅多にする事がないアスカが、夜中だと言うのに何やらお洗濯中。
ちなみに、アスカはお風呂上がりの様で、体に赤いバスタオルを巻いただけの姿。
(シーツの代えって何処にしまってあるんだろう・・・。これじゃあ、寝れないじゃない)
その洗濯物はどうやらシーツらしく、アスカは不思議な事に洗濯機を見つめて顔を紅く染めていた。
(ま、いっか・・・。シンジのベットで寝れば・・・って、シ、シンジのベットでなんか余計に寝れる訳ないじゃないっ!!)
更には今夜の寝床を考えただけなのに、アスカは真っ赤っかに染めた顔を両手で覆い、顔を左右に振るヒカリばりのイヤンイヤンをご披露。
(でも、本当に出ていっちゃったんだ・・・。シンジ・・・・・・。)
そうかと思ったら、今度は頭をガックリと垂れて激しく落ち込み始め、全くもって不思議なアスカ。
「はぁぁぁぁぁ~~~~~~・・・。」
シンジが居ない寂しさからか、アスカが思わず溜息をついたその時。
プシューー・・・。
「っ!?・・・って、ミサトか」
玄関の扉が開く音が聞こえ、アスカは嬉しそうに洗面所を飛び出て行くが、廊下の先に見えたミサトに落胆して再び溜息をつきた。
「ただいま・・・。」
「どうしたのよ?・・・何か元気ないわね」
だが、覇気のない帰宅の挨拶を返し、キッチンテーブルの椅子に力無く座ったミサトを不思議に思い、アスカは洗面所に戻らず声をかけてみる。
「ええ・・・。ちょっちね」
「ふぅぅ~~~ん・・・。」
応えてミサトはアスカと目を合わせず苦笑を浮かべ、アスカはらしくないミサトの様子をますます不思議がる。
「お願い・・・。少し1人にさせてくれないかしら?」
「・・・うん。解った・・・・・・。」
しかし、悲しみのオーラを漂わすミサトにお願いされ、アスカは戸惑いながらも断りきれず、脱衣所の着替えを持って部屋へ向かった。
「ふぅぅぅぅぅ~~~~~~・・・。」
1人キッチンに残ったミサトはテーブルの上で祈る様に手を組み、額を組んだ手の上に乗せて顔を伏せて深い溜息をつく。
「・・・・・・。」
ふと顔を上げたミサトは、視線の先の電話に点滅している光がある事に気付き、何気なく留守番電話を再生するボタンを押した。
『ピーーーーッ!!葛城・・・。俺だ』
「っ!?」
それが加持からの留守電だと解った途端、ミサトは留守電を止めようとするが、体が動かず留守電は流れ続けてゆく。
『多分、この話を聞いている時は君に多大な迷惑をかけた後だろう。
すまない・・・。リっちゃんには裏切り者、シンジ君には鬼と伝えてくれ。
迷惑ついでに・・・。1つ、忠告しておくよ。俺達の敵はすぐ側にいる。意味はシンジ君が知っている。
葛城・・・。現実はいつも残酷だ。だが、それを乗り越えてこそ未来がある・・・。
だから・・・。もう1度、チャンスを俺にくれ・・・。ここでさっき言えなかった言葉を言うよ。
俺は気にしていないし、俺は葛城が好きだ。これは今も変わらないし、これからも変わる事はない・・・。じゃ・・・。午後8時46分です』
留守電が流れれば流れるほど、ミサトの肩の震えが酷くなり、終いには腕が頭を支える事が出来なくなって、ミサトはテーブルに突っ伏した。
「うっうっ・・・。うっうっうっ・・・。うっ・・・。うっうっ・・・。うっうっ・・・。うっうっうっ・・・。うっ・・・。うっうっ・・・。」
そして、留守電が終わると遂に堪えきれなくなり、ミサトは涙をボロボロとこぼし、声を上げて大泣きを始める。
「・・・っ!?」
その声に何事かとアスカが部屋から出てきたが、ミサトの後ろ姿に見てはいけない物を感じて、音を立てぬ様にソッと部屋へ戻って行った。
『・・・森シンイチです』
『ウ、ウズラちゃん・・・。』
ここは新しくシンジが住む事になったジオフロント居住区の一室。
『これは運命のイタズラ♪理想的にスリムなお胸ぇぇ~~~♪♪』
『もうっ!!あの犬めっ!!!余計な事をっ!!!』
『さっきの娘が追ってくる』
TVで放送していた映画を何となく見ていたシンジは、ふと立ち上がって歩き出すも、数歩で立ち止まって振り返った。
「・・・なんで、付いてくるの?綾波」
「だって・・・。私はいつも碇君の側に居なくちゃダメなの」
同時に立ち上がり、シンジの後を付かず離れず付いてきたレイは、シンジの質問に頬をポッと紅く染める。
(確かにそう言ったけど・・・。ちょっとニュアンスが違うんだけどなぁ~~)
「迷惑?・・・碇君、迷惑なの?」
シンジはレイの応えに顔を引きつらせてしまい、たちまちレイはちょっぴり涙目になって聞かずにはおれず不安顔で尋ねた。
「いや、そんな事ないけど・・・。僕、トイレに行きたいんだけど」
「ご、ごめんなさい・・・。」
応えてシンジは首を左右に振るも溜息をつき、慌ててレイは恥ずかしそうに俯き、後ろ歩きで元の位置へ小幅でチョコチョコッと戻って座る。
『遅いなぁ~~・・・。ヒバリ達・・・って、まさかっ!?父さんの事を忘れて2人で帰っちゃった・・・なぁ~~んて事ないよな。
いや、そんな馬鹿なっ!?そんな事あるもんかっ!!!ある筈ないじゃないかっ!!!?何を考えているんだっ!!!!!俺はっ!!!!!!』
『お父さぁぁ~~~んっ!!』
『おおっ!!気に入ったのはあったか?』
だが、5秒も待たずして不安になったレイは再び立ち上がり、シンジが向かったトイレへ歩いて行く。
ガチャッ・・・。
「・・・って、そこに居ると落ちつかないから、TVでも見ていてね」
まるでそれを見越したかの様に、レイがトイレの前に立つと同時に扉が開き、シンジが苦笑を浮かべてレイを追い払う。
「ご、ごめんなさい・・・。」
ガチャッ・・・。
慌ててレイは恥ずかしそうに俯き、後ろ歩きで元の位置へ小幅でチョコチョコッと戻って座り、シンジは溜息をつきながら扉を閉めた。
『大変な事になっちゃったから、水着のお金を払っておいてぇぇ~~~っ!!』
『えっ!?』
『はい、これが値段っ!!よろしくねぇぇ~~~っ!!!』
『・・・結局、置いていかれた』
またもや、5秒も待たずして不安になったレイは腰を浮かすが、中腰体勢のまま固まってトイレの方向へ何度も視線をチラチラと向ける。
ジャァァーーー・・・。ガチャッ・・・。
「っ!?」
しばらくすると、待ちに待った水が流れる音がトイレから聞こえ、レイはやっと安心して腰を落とした。
「・・・お待たせ」
シンジはクスクスと笑いながらリビングへ現れ、レイは全ての行動を見透かされた様な感覚を覚え、恥ずかしさに頬をポポッと染める。
「・・・い、碇君」
そして、シンジが胡座をかいて座ると、レイは頬をポポポッと紅く染めてシンジへ座ったままツツツッとにじり寄ってもたれかかった。
「んっ!?どうしたの?」
「あ、あの・・・。そ、その・・・。だ、だから・・・。も、もう1度、絆を・・・・・・。」
その行動を不思議に思ったシンジが尋ねると、レイはシンジを上目づかいで見つめながら、両手の人差し指の指先同士を合わせて弄び始める。
「・・・結びたいの?」
シンジはクスクスと笑いながらレイの耳元で囁き、レイが頬をポポポポッと紅く染めて無言でコクンと頷く。
「フフ・・・。綾波って意外とHなんだね」
「・・・な、何を言うのよ」
その後、シンジとレイの間に何があったのかは全くの謎だが、翌日には2人の絆が複雑なくらい絡み合って解けない程にしっかりと結ばれてた。
- 次回予告 -
1人の少女は、想いの為に自分を偽る。
1人の少女は、想いの為に自分を変えようとする。
1人の少女は、想いの為に自分を犠牲にする。
陰謀渦巻く魔都・第三新東京市に少女達の想いは駈け巡り、
狙われた哀れな子羊は悪魔との契約を結んだ。
そして、それは新たな戦いの始まりであった。
次回 ゲドウ2世 第2話
「巡
りアイ、再び」
さぁ~て、この次も地球の平和を守る為、僕のしもべ達に命令だっ!!
「「「やぁっ!!」」」
注意:この予告と実際のお話と内容が違う場合があります。
後書き
う~~~ん、今回は展開を急ぎすぎたせいか、ちょっとイマイチかも知れない(^^;)
今回の主なネタは、レイ、アスカ、トウジ、加持の関連なんですが・・・。
本来ならそれぞれで1エピソードを作れる内容ですからね。
でもでも、今後の予定を考えると仕方ないというのもあって実に難しいです。
実は今のところの予定だと、このゲドウ2世は10話前後で完結なんですよね。
だから、とてもじゃないがこの4つのネタで4話も引っ張る事が出来ないんです。
しかも、次回には彼女と彼女も登場してくるんですから大忙しです(謎)
(予告はゲドウ2世オリジナルの物です)
感想はこちらAnneまで、、、。
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