プトレマイオスの展望室にて――。 行き過ぎていく数多の星々を、真剣に見るでもなくただぼんやりと眺めながら、 ティエリアはリジェネとの会話を思い出していた。 *** リジェネの口から語られたのは、 イノベイターの存在、3段階の計画、そして、イオリアの意思─―。 今の今までティエリアが全く知らなかった計画の全貌は、彼女の心を深く抉った。 マイスターであるティエリアには、第一段階の計画を正確に遂行させるために、 情報規制がかかっていたのだと、リジェネは言った。 もし5年前に知らされていたのなら、あらかじめ計画されていた事だと素直に受け止めて、 どんな運命でも受け入れたに違いない。 実際、5年前のティエリアは、実行部隊である自分は、 全てを知る必要などないと思っていたのだから。 ただ計画に忠実であることを是とし、他のマイスターにもその事だけを期待していた。 しかし、今はもうあの頃のティエリアではない。 ロックオンの言葉がティエリアの心を揺さぶり、氷を溶かしたあの時から、 自分で道筋を考え、行動してきたつもりだ。 ロックオンを失ってからは、尚更そうするように心がけてきた。 だからこそ、刹那に皇女マリナの救助を進言したし、 アレルヤがソーマ・ピーリスを連れ帰るのを黙認もしたのだ。 アロウズの事だってそうだ。 奴らの理不尽な暴虐の数々を到底許す事はできない。 これでは戦争を根絶した世界などとは決して言えない。 そう強く思ったから、アロウズに宣戦布告したというのに、 リジェネはそのアロウズこそが計画の第2段階、 人類の意思統一を成し遂げる布石なのだと言う。 そしてその第三段階では、宇宙空間に適応したイノベイターこそが 人類を宇宙へと正しく導くのだと言った。 それだけではない。 ティエリア自身もまた、イノベイター、つまり羊飼いの側なのだと、 リジェネは言って来たのだ。 「………」 今までの確信や自信の全てが、音を立てて崩れ去っていく気がする。 プトレマイオスは、第一段階の終了と同時に消滅する予定だったとリジェネは言っていた。 それなら、自分もあの時使い捨てにされる運命だったはず…。 しかし、今でも生き長らえている以上、再び計画に従うべきなのではないのか。 自分達が今やっている事は、無駄に世界を混乱させるだけの事なのか。 そして何より、ティエリアは他の人間とは違う存在なのだ。 計画の為だけに生み出された命である以上、 運命に抗って生きる事など不可能なのではないのか。 例え、アロウズの非道を許す事は出来ないと良心が思っても─。 ガラスに映る自分の顔を見る気にもなれず、ティエリアは手すりに両手をついて 下を向き、唇を噛み締めた。 「なら、自分の進むべき道は……」 運命の糸はティエリアにさえ、何本も枝分かれして伸びている。 イノベイターという存在として、どの道を選び取るのが正解なのかと、 考えを巡らさずにはいられない。 霧の中を歩いているように心細くなり、 4年前、ヴェーダを失った時と同じような不安に襲われた。 ただ、あの時には救いがあった。 ティエリアが正しいと信じていた事がそうではなく、 むしろ必要ないと切り捨てていた部分が、強い力を持つ。 それに気付かせてくれたのは、ロックオン・ストラトスだった。 「こんな時、彼がいてくれたら─…」 今のティエリアを見て、ロックオンは何と言うだろう。 『そうだな。お前は自分の宿命に従って、人類を導けばいいさ。  俺たちには絶対出来ない事なんだからな。適材適所っていうのか?  人にはその人なりの役割ってもんがあるもんさ』 懐かしいロックオンの声をレコーダーのように記憶して忘れないでいられるのは、 ティエリアがイノベイターである事の恩恵の一つなのだろう。 今だって、こうやって彼の声音を完全に再現して響かす事が出来る。 だけど─―。 どう好意的に解釈しても、ロックオンはそんなセリフを言うはずがない。 そう、ロックオンならまた泰然と笑って、ティエリアの苦悩を笑い飛ばすはずだ。 『何を言われても気にすんなよ。お前はお前だろう。本当に成長してないな、お前は』 「だけど…」 『言っただろ?ティエリア。自分の思った通りにがむしゃらに進めばいいんだって、さ』 「でも、それが間違っていたら…!」 その時、苦笑いとともに、ロックオンの昔と変わらぬ声が 急に音量を上げて展望室に響いた。 『本当にどうしようもないやつだな、お前は…。お前は一人か?違うだろ、ティエリア』 すぐ後ろに人の気配を感じて、ティエリアははっと顔を上げた。 目の前のガラスの鏡面に、懐かしいその人の姿がぼんやりと、 しかしはっきりと浮かんでいる。 柔らかそうな茶髪に、モスグリーンのシャツ、釣り人風のジャケットの彼が あの頃のままの姿で確かにそこにいた。 『よう、久しぶりだな。ティエリア』 4年前の姿のままで軽く手を上げたロックオンが、 ガラス越しにティエリアに笑いかけていた。 「ロ…ックオン…?」 ティエリアの迷いを見かねて、あの世から逢いにきてくれたのだろうか。 それとも、脳量子波がイメージを投影して、ティエリアに幻覚を見せているのだろうか。 どちらにしても、今のティエリアにはロックオンの言葉が必要だった。 たとえそれが、自分の潜在意識の具現化に他ならないとしても─。 鏡の中で視線を交わしたが、ティエリアはどうしても振り向くにはなれなかった。 『ティエリア、お前が間違っていたら、他の誰かが諌めてくれるさ。  昔からの仲間も勢ぞろいしてるじゃねえか。  みんなを信じる、助け合うって決めたんだろ…?』 「ロックオン…」 『お前が今一緒にいるのは誰だ?5年前、いやもっと前から  お前が一緒に戦ってきた人間は一体誰だよ?そのリジェネとかいう奴が、  一秒でもお前の傍にいた事はあるのか?』 ロックオンが口調をひきしめて言いながら、 コツコツと靴が床を踏む音まで聞こえてきそうな現実感を伴い、 ゆっくりとティエリアの背後に近づいてくる。 ティエリアのすぐ後ろに立った、ロックオンの呼吸までリアルに感じられるようで、 ティエリアはその場にロックオンが本当にいるかのような錯覚に陥った。 「なら、僕は…。このまま進んでもいいのか…」 『もちろんだよ。自分の思う通りにやってみろって。  少なくとも他のみんなはそうやって戦ってるんだからな。いいか、ティエリア?  良くも悪くも自分だけが特別だなんて、間違っても考えるんじゃないぞ』 「ロックオン…」 ロックオンはやはり、ティエリアの最も欲しかった言葉をくれた。 その言葉で迷いが吹き飛び、ぐらついていた存在理由が再び足場を固めた。 『馬鹿だなあ、お前は。何にもあの頃と変わってないんだから』 ロックオンが苦笑しながら、そっとティエリアを後ろから抱き締めた。 ドクン、とティエリアの鼓動が高鳴る。 「な、なんで……?」 ロックオンの抱擁には、ティエリアの脳内空想の産物とは到底思えないほどの 温かさが満ちていた。 それだけではない。彼の体温や息遣いまでが、はっきりと体に感じられる。 そう、まさにそこに生きている人間として、ちゃんと存在しているかのように――。 「ロ、ロックオン…!?」 驚いて振り返ろうとしたその瞬間、ロックオンがぎゅっと力を入れて ティエリアを抱き締めた。 長年の寂寥を吐き出すようにきつく抱きすくめられて、 ティエリアの全身の血肉が息苦しさを増す。 ガラスにもはっきりと、ティエリアを背中から抱き締めている ロックオンの姿が映っている。 しかし、そんな事はありえない。 ロックオンは4年前に死んだのだから。 だとすると――。 「ライル、なのか…?」 掠れた声で、後ろから抱きすくめてくる男に尋ねると、彼は呆れた様にくすっと笑った。 『違うさ。俺はニール。お前のよく知ってる、あのロックオン・ストラトスだ』 耳元に囁かれた時に、ティエリアの横顔に彼の息がかかった。 ライルにはいつも匂っている煙草の匂いが、その息には全く含まれていなかった。 「ロ、ロックオン…?本…当に…?」 『ああ』 ティエリアは体を緊張と戸惑いでカチカチに強張らせ、可哀想なほどに動揺していた。 ロックオンはティエリアを落ち着かせるべく、精一杯の慈愛の感情を込めて 優しくティエリアを抱き締め、そっとその首筋に顔を埋めた。 敏感な皮膚に息がかかって、ティエリアがびくびくと体を震わす。 「あっ…。これ…は…、ゆ、夢なのか…?」 『そうかもな…。でも、そんな事どうでもいいじゃねえか。  この世で正しい事なんて、何一つないんだからな』 ロックオンに優しく首筋を吸われながら諭すように囁かれると、 本当に何もかもがどうでもいいような気持ちになってしまうのが不思議だった。 「あ…、あ……。ロック…オン……」 ティエリアののけぞる首筋をゆっくりと舐めていくロックオンの舌には、 確かに生きている時と同様の熱さが漂っていた。 いつしかティエリアは余計な事を考えるのをやめ、 ロックオンの愛撫に身を任せるようになっていた。 『ティエリア…。全然変わってないんだな』 「あなたこそ…。まるで変わっていない…」 当たり前だよ、死人なんだから、というロックオンの言葉が脳内に響いたかと思ったが、 ロックオンはその言葉を口にはしていなかった。 たとえ夢でも幻でも、せっかくロックオンが現れてくれたというのに、 ティエリア自身がロックオンの死を常に肯定し続け、 死者をニ度殺すような思いに囚われている。 そんな自分に嫌気がさし、ティエリアは悔しさで涙ぐんだ。 そんなティエリアを知ってか知らずか、ロックオンは制服の上から ティエリアの感触を確かめるように、上半身に手を這わせていく。 ティエリアの髪を優しく撫でた後、ボレロの中に手を入れて、 柔らかい胸にそっと手を当てた。 ドクンドクンと脈打つティエリアの鼓動を感じ、ロックオンは満足げに頷いた。 決して拒否を許さないかのような、優しくゆったりとした手付きで、 両の乳房を服の上から揉み上げていく。 たったそれだけの事でティエリアの全身は熱くなり、 ロックオンの指が胸を愛撫してこまめに動く度に、反応を強くした。 厚手の布地が敏感になりつつある乳首に当たり、その感度をますます強めていった。 やがて布地越しにもはっきり分かるほどにティエリアの乳首は勃起し、 ロックオンの指に硬く当たった。 ロックオンが、指で蕾だけを刺激しながら首筋にも舌を這わせると、 ティエリアはうっとりとした気分になり、もう疑いも迷いもなく、 全てを託すように目を閉じた。 「は…あ…っ、ロッ…クオン…」 息が乱れはじめたティエリアを更に追い立てるように、 ロックオンが爪を立てて彼女の乳首を引っかくように刺激する。 「はう…っ…!」 ロックオンの指遣いを体が覚えていた。ティエリアの乳首は その慣れた刺激に簡単に反応し、全身から力が抜けていく。 震える手で手すりを力一杯握り締めて、何とか自分の体を支えるティエリアの、 紅潮した表情をガラスで確認しながら、ロックオンは乳首を更にひっかき、 そっと耳元に囁きかけた。 『この制服、変わったデザインだな。お前の趣味か?』 「ん…っ、みんな…の団結…が…、あっ…んっ…、必要だ…と思ったか…ら…」 『そっか…。でも、ピンクカーデも可愛かったのにな。あれ、もう着ないのか?』 「あ…っ…、う……っ…、今は…ほと…んど…」 ティエリアの途切れ途切れの返事を聞きながら、 ロックオンは見慣れない制服の前部に付いているジッパーを下ろして行った。 途中、ティエリアが抵抗するように手を掴んできたが、 乳首をきゅきゅっと擦ってやると、彼女の手はあっけなく解かれた。 ジッパーを下ろし切ると、中には色気のない黒いアンダーシャツなぞ着込んでいる。 『わかってねえなあ、相変わらず…』 ロックオンが興ざめして咎めるように言うと、ティエリアが不満げに口答えしてきた。 「ば、ばかな事を言うな…っ…!これも含めて制服なんだ。  全く、あなたはなんでこうも成長しな…、ひゃう…っ!」 がばっと黒シャツを一気に胸の上まで捲り上げられて、ロックオンに乳首を直に摘まれ、 ティエリアの言葉は、途中で切れてしまった。 「あ…っ…、やめ……」 『震えてるのか…?ティエリア』 口答えしてくるのも、敏感な反応もまるで昔と変わらない。 ロックオンは嬉しさを噛み締めながら、手の平全体で露わになった乳房を揉み、 指先で乳首をくりくりと器用に転がした。 長く使われてこなかったティエリアの桃色のつぼみは、 ほとんど処女の時のように敏感に反応した。 懐かしいロックオンの愛撫なのに、直に弄られる乳首が押し倒される時に痛みが走る。 「ん…っ、ロ…ッ…」 『ん?何だ、痛いのか、ティエリア?』 ティエリアが泣き出しそうに顔を歪め、こくこくと頷いた。 ロックオンに喜びが湧き上がってくる。 あっという間に硬くなった乳首、少しいじっただけで痛むほどの敏感さ、 そして潤むティエリアの瞳……。 その全てがこの4年間、ティエリアに特別な誰かがいなかった事を表していた。 ロックオンは込み上げてくる愛情を噛みしめながら、ティエリアの頬にキスをしてやった。 「ん……っ」 ティエリアが真横を向いて切なげに瞳を細め、唇にもキスをねだる。 『いいぜ…?』 ロックオンはティエリアの柔らかい唇に唇を重ね、 それだけでは我慢できずにすぐに舌を挿し入れた。 待ちきれないかのように、乱暴にティエリアの舌が巻き付いてくる。 真横を向いた体勢のティエリアは少し苦しそうだったが、 それでも無我夢中でロックオンを貪りはじめた。 舌の粘膜をぴったりとくっつけて絡ませていると、 二人以外の周りの物事こそが夢か幻のように思えてしまう。 「ん…っ…、ん…っ…」 深いキスを交わすうちに、ティエリアの全身は沸騰するように粟立ち、 下半身がロックオンの熱を求めて疼き出した。 こんなにも心の深くまで居座っているロックオンが愛しくもあり、また憎らしくも感じた。 目を開けて彼の表情を見ようとすると、嗜めるように乳首をぎゅっと摘まれて、 ティエリアの体がびくんと仰け反る。 まだ深いキスを続けたままで、ロックオンの手が下へと伸びていった。 ティエリアの、ズボンのジッパーを下ろす手付きがやけに慌ただしい。 ロックオンもまた、久しぶりの行為に興奮を抑えきれないのだろう。 それを証明するかのようにロックオンのペニスは既に硬くなっていて、 ティエリアの臀部にゴツゴツと当たった。 ロックオンの焦りが、ティエリアの淫欲を刺激してやまず、絡ます舌にも力がこもる。 ようやくジッパーを下ろしきると、ロックオンはいきなり下着の中に手を入れ、 そのままティエリアの淫欲の源、膣口へと指を伸ばす。 まるで恥じらう素振りもなく、異常なほどに溢れ出た愛液が、ロックオンの指を歓迎した。 2本の指に愛液をたっぷり絡ませると、ロックオンは秘核を探り当てて擦り出した。 「ん……っ…!」 ティエリアの舌がびくんと飛び跳ねて快感を伝え、ロックオンの欲情を誘っていく。 最初こそやや乱暴な手付きだったが、やがて落ち着きを取り戻して、 ロックオンはクリトリスを撫でるように優しく擦り上げていった。 「ん…っ、んん…っ…!んっ…!」 クリトリスも乳首同様あっという間に硬くなり、指が往復するごとに、 ティエリアの快感が膨らんでいく。 すぐに息が苦しくなって、快感の強まった体を抑える事が難しくなり、 ティエリアはようやくロックオンと唇を離した。 「あ…っ…!ああっ…!ああっ…!!」 自由になったティエリアの唇は、いきなり激しい悦楽の嬌声を放った。 同時に、ロックオンの指に秘核を押し付けるように、腰が我慢できずに揺らめき出す。 想像以上に艶っぽい自分の声に驚き、ティエリアは片手で口を塞いだが、 それでも漏れ出る嬌声は隠し切れない。 ロックオンの手が後ろから下着の中にすっぽり収まり、規則的に上下する淫らな映像を ガラスの鏡面で見てしまい、ティエリアは恥ずかしくて堪らなくなったが、 ますますクリトリスは快感を増幅させていくのだった。 衣擦れの音に混じって、愛液まみれのクリトリスを擦る粘着的な音が響き続ける。 「ああっ…、あ…っ…!ロックオ…ン…っ!こんな…の…っ、あ…んっ…!」 もし彼が幻影でしかないのだとしたら、 こんなに淫らに感じている自分は、どれほどいやらしい人間なのだろう。 ここに来て僅かに残った理性が、ティエリアに拒絶の意思をもたげさせた。 ここはクルーたちの憩いの場所、展望室なのだ。いつ誰が来てもおかしくはない。 誰かが来る前に、この行為を中断しなければ――。 今更ながらティエリアはロックオンの手をぐっと握り、その動きを止めようと頑張った。 「ロ、ロック…オン…ッ、も、やめ…て…っ。誰…か…、来る…!」 『誰か来ても、気を利かせて見ないフリをしてくれるさ…。  それにこんなになってんのに、こんな所でやめる訳には行かないだろ…?』 「あ…っ、ち、ちが…っ…、ん…っ、もし、あなたが幻でしかないのなら、僕は…」 『俺の存在を感じないって言うのか?』 ロックオンはピクリと眉をしかめると、 叱るようにティエリアのクリトリスを強く擦った。 「ひゃあんっっ!」 強烈な快感が走り、ティエリアは堪らず腰を揺らして嬌声を上げ、 重ねていた手をくたあっと落とした。 ロックオンが更に指の腹を押し付けて、リズミカルにクリトリスを扱き上げていく。 早くも体が限界寸前で悲鳴を上げはじめ、 ティエリアは久しぶりの絶え間ない快感の波に混乱した。 「ああっ、ロック…オ…っ、んん…っ、あぁんっ…!そ…こ…、もう、許し…て…っ…」 『そこ…って、どこだ?ん?ココ…、だよな…?』 分かっているくせに意地悪く囁きながら、ロックオンはクリトリスを押し潰し、 素早く上下に擦った。 「ああああっっっっ!!!!」 凄まじい快感がクリトリスに走り、膣全体をも揺り動かす。 もうだめだ、と思った瞬間、甲高い嬌声の迸りと共に子宮が震え、 後ろのロックオンにもたれかかって全身を硬直させると、 ティエリアは一気に絶頂に達した。 その波が去ると、ティエリアからがくっと力が抜けた。 思わず床に倒れ込みそうになるのを、後ろのロックオンが抱きとめて押し留めた。 荒い息を吐き続けるティエリアを立たせたままで、 ロックオンは自分のいきり勃った肉棒を取り出した。 空気に先端が晒された瞬間、快楽を待ち侘びて勃起が震え、 透明な我慢汁が滴り落ちていく。 もう誰が展望室に入ってこようと、この熱情を止める事など出来はしない。 『ティエリア…。お前が欲しい。いいか…?』 期待に声を震わせながら、より自尊心を満たす為に、あえてティエリアに問い掛ける。 ティエリアはガラス越しに、涙ぐんだ瞳を細め、少しの間の後、こくんと頷いた。 ロックオンは一気に捻じ込んで乱暴に突き上げたい衝動に駆られたが、 何とか耐えてティエリアの足を開かせ、両手を手すりに付かせた。 自然にティエリアの尻が、ロックオンに突き出される格好になる。 何度も見たはずの形のいい尻が、まるではじめての時のように初々しく震えて ロックオンを誘ってくる。 思わず身震いしながら、ロックオンはティエリアのズボンと下着を勢いよく脱がせ、 膣口に勃起を押し付けた。 ちゅくっと熱い愛液が先端を濡らす。 「ん…っ」 ティエリアが勃起の圧力に緊張して、手すりをしっかり掴んだ。 ロックオンはその腰をぐいっと後ろに引き寄せて、膣口の肉を先端で掻き分けた。 亀頭の先だけをずんっと挿入すると、熱い粘膜が早く入って来いというように しっとりと絡みついてくる。 『く……っ…。相変わらず…っ…』 もう焦らして楽しむ余裕は、ロックオンにも残ってはいない。 とても、体と欲を抑える事が出来そうになかった。 『行くぞ…!』 ロックオンは低く叫んでティエリアの震える腰を掴み、 ずぶずぶと膣内へと肉棒を埋め込んでいった。 先走りと愛液が混じり合い、挿入を抑制する摩擦はほとんどなかったが、 それでも後背位のティエリアの秘貝は、ロックオンをぐいぐいと締め付けて離さない。 肉棒がティエリアの中へと埋め込まれていく卑猥な光景に重ねて、 W字の制服の隙間からは、熱に染まった白い素肌が扇情的に覗いている。 『うぐ…っ』 挿し込む刺激だけで達しそうになってしまい、ロックオンはティエリアを後ろから 再び強く抱きしめて呼吸を整え、強すぎる締め付けの心地よさを我慢した。 『ティエリア…、あれから誰とも寝なかったのかよ…?』 4年前以上とも思われるほどのあまりの締め付けの強さに感服したかのように、 ロックオンがティエリアに囁いてくる。 ティエリアが顔色を変えて、ロックオンに噛み付くように答えた。 「な…っ、当たり前だ…!僕は誰とでも寝るような趣味はない!例え……」 そこまで言った所で、急にティエリアの勢いのよかった言葉は窄んだ。 次に言葉を紡いだ時、ティエリアの声はぐっと小さくなり、切なさを増していた。 「例え…、寂しくても……」 その切なすぎる言葉で、ロックオンの感情が爆発した。 「―――っっ!!!」 先端が膣内で更に膨らんだかと思うと、体を満足に支える事も出来ないほどの 強烈な一撃を後ろから見舞われて、ティエリアは声も出せずにその衝撃を受け止めた。 ロックオンは、突き入れの衝撃で大きく前へと移動したティエリアの腰を ぐっと引き寄せて密着度を強めると、そのまま激しく突き込み始めた。 いきなりトップスピードで、ティエリアの体が持ち上がるほどに 下から斜め上目掛けて乱暴に突き入れていく。 「んんっ…!!……っ!んんん……っ!!」 ティエリアは堪らず縋るように手すりを握り締め、 無機質な金属の板に体重を預けて、激しい揺さぶりに耐えた。 ずんずんと突かれる度に、目の前のガラスが顔に当たりそうなほどに距離を詰めてくる。 4年間溜めに溜めた欲望を発散させるかのように、ロックオンがティエリアを責め続ける。 果てたばかりなのに加え、ただガンガン突かれるばかりのその挿迭では、 ティエリアのそこはとても快感を感じるどころではなかった。 脳天にまで響くような乱暴なピストンを受けて涙が零れ出し、悲鳴のような喘ぎまで飛び出した。 「ひああっ、あぁぁっ、ああぁっ!ロックオ…ン…っ、もっ…と、ゆっくり…っ…!」 『無理だ!我慢しろ…っ!昔はこれ位平気だっただろ!?』 余程自分を抑えられないのか、ロックオンは噛み付くように言って更に挿迭を荒げた。 ティエリアの奥の奥まで先端がめり込み、 擦れる肉壁は愛液と先走りの混じった卑猥な音を立て続けた。 ロックオンの、欲の強く混じった荒い吐息を背中に感じながら、 愛しい男に抱かれているのだという幸福を噛み締める余裕さえ持てず、 ティエリアはただペニスの圧迫感と熱さだけを感じながら、ずんずんと揺さぶられ続けた。 手すりを握り締める手にますます力が入り、ガラスがティエリアの息で曇っていく。 ふと目を開けると、背後から自分の腰を掴み、結合部を凝視して乱暴に腰を振る ロックオンの姿と、突かれる度に前後にゆらゆらと揺れる乳房、 そしてその度に淫猥に歪む自分の顔がガラスにはっきり映って見えて、 その視覚刺激で募る恥ずかしさとともに、ようやくティエリアに快感が目覚めはじめた。 ずちゅずちゅっと肉棒が膣を突き挿す度に、痺れるような快感が全身に広がっていく。 「あぁんっ、あんっ、ああっ、ああっ、ああっ!!」 ピストンに併せて喉を開くと、ティエリアからは昔のように甘い嬌声が迸った。 淫欲をそそるその声で、ロックオンの動きがますますいきり立つ。 挿れただけで限界を感じていたペニスを必死に押さえつけて、 ロックオンはティエリアの中を思う存分突き上げた。 まだ繋がって数分しか経っていないのに、随分と行為が長く感じられる。 『いい…ぞ…、ティエリア…っ!』 いよいよ射精感が強まってきた。 ペニスを先端近くまで引き抜いてから一気に奥まで突き入れると、 「あああっっ!!」ティエリアの背中がびくんと仰け反った。 膣壁が絡みつくようにペニスを締め付け、その刺激で熱いものが駆け上がってくる。 『ぐうっ…!ティエリア…っ、イクぞっ!!受け止めろ……!!』 ティエリアの腰を強く引き寄せて完全にペニスを埋め込み、 ロックオンは膣内へと勢いよく精を放った。 尿道を焼き尽くすかのような激しい快感を感じながら、自分の全てを植え付けるように ティエリアの中を未だ軽く擦りつつ、ロックオンは全ての白濁液を出し尽くした。 *** ロックオンがずちゅっと肉棒を引き出すと、ティエリアはその刺激で膣口を震わし、 がくりと膝を負って手すりに腕だけでしがみ付いた。 「うう…、ふうう……」 ガクガクと、その膝小僧が震え続けている。 『ティエリア…』 ロックオンがティエリアの背中におずおずと声を掛け、肩を抱き締めようと手を伸ばした。 『………っ。』 しかし、ティエリアに触れる寸前の所で、その手が指先から透け、消失していく。 ロックオンはその事実を認めたくないかの如くに、 強引に消えていく腕をティエリアの肩へと押し付けたが、 そこにはもう何の感触も得られはしなかった。 ついさっきまでティエリアと深く交わっていたというのに、 二人の距離は再び、永遠とも思えるほどに遠くなってしまったようだった。 『ティエリア……。すまん。もう行かないと……』 別れの時を悟って、ロックオンが寂しさを滲ませながら、ティエリアの背中に呟いた。 その悲しそうな顔を、ティエリアはガラスの中に見ていた。 振り向いてはいけない、振り向いた瞬間に彼は消えてしまう。 それだけは確かな気がしていた。 幽霊なのか、それとも単にティエリアの脳が作り出した願望なのか。 このロックオンの正体は、ティエリアにはまるで分からない。 そしてロックオンに訊いたとしても、その答えに満足する事はないように思えて、 ティエリアは何も言う事ができず、ただ消えていく彼の姿を ガラス越しに見ている事しか出来なかった。 体のほとんどが消失して、最後には頭だけになり、それさえも透け始めた時、 不意にロックオンがにっこりと笑った。 『心配すんなって。お前が困った時には、またいつでも来てやるから』 ティエリアの全てを受け入れてくれるような、懐かしいあの笑顔を浮かべ、 わざとらしい軽口を装いながらも、ロックオンはティエリアに優しく言ってくる。 『いつだって、お前の傍で見守っててやるから。な?ティエリア』 涙が滲んで、ティエリアの目にはもう何もはっきりと映らなかったが、 その優しい言葉だけは彼女の耳に、夢のように残った。 別れに際してもやはり、ロックオンはティエリアの一番欲しかった言葉を与えてくれた。 「ロックオン……。ありがとう……」 誰もいなくなった展望室に、ティエリアの感謝の言葉だけが静かに響いた。 制服を整え、展望室から出て行く頃には、ティエリアの心は決まっていた。 ――自分の信じた道を行く。志を同じくする仲間もいる。ガンダムという武器もある。 『君も僕たちと同じ、イノベイターなんだよ…。一緒に戦おう……』 ブリーフィングルームに向かう道すがら、一瞬リジェネの言葉を思い出したが、 ティエリアの心が揺れる事はもうなかった。