「君は現実を知らなすぎる。自分のいる世界位、自分の目で見たらどうだ…!」 ティエリアにそう頭ごなしに言われて、沙慈の何かが弾けた。 「お前に…、お前たちに僕の何が分かるって言うんだ…!!世界の何を知っているというんだ…!!?」 営倉に収容された、ほとんど捕虜の身分にも関わらず、沙慈は怒りに任せて勢いよく立ち上がると ティエリアの制服の胸倉をぐいっと掴んだ。 ついさっき、刹那に対して銃を向けるほどの怒りをぶちまけたにも関わらず、 沙慈の怒りは収まりを知らないかのように次から次へと湧き上がってくる。 いつも温厚な彼には信じられないほどの形相で、ティエリアに食ってかかった。 この4年、死んだ姉の絹江と音信普通になった恋人のルイスの顔が沙慈の頭から消えた事は一度もない。 成人して社会人になり、仕事のストレスや人生の苦難に悩まされた時はいつでも、 彼女達の顔を思い出しては乗り切ってきたのだ。 本来なら今でも二人の女性は彼の傍に居て、もしかしたら新しい家族も増えていたのかもしれない。 そんなごく当たり前の、普通の人間のありふれた人生を奪っておきながら、何故このテロリスト達はこうも傲慢なのか。 自分たちの信ずる正義のためなら、何をしても構わないと言うのか。 彼らの目指した世界の、その理念は沙慈にも分かる。 戦争も紛争も一切なくなった平和な世界─。 それが実現されたらどんなに素晴らしい事か。 しかしその為に僅かな犠牲くらい我慢しろと言われて、はいそうですかと納得できるわけがない。 ティエリア達の確信犯めいた言い分は、とても沙慈には理解できないのだった。 しかも言うに事欠いてもっと現実を見ろとまで言われたのだ。 沙慈はこの4年間、地に足をつけて働いてきたつもりだった。 その普通の生活の中で、反政府組織の存在も、 それに対抗する連邦軍の独立治安部隊の横暴もきちんと理解しているつもりだった。 「現実だって…!?元々はお前達が戦争を仕掛けて来たからじゃないか…!!」 溜めに溜め込んだ全ての悲しみと憎しみを吐き出すように、声を震わしながら叫んだ。 「お前たちこそ、少しは人の痛みを知れよ!?僕の住む世界だって…!?  ふざけるな!お前たちだけには僕達の世界の事をとやかく言われたくない!!」 口角泡を飛ばすという言葉通り、胸倉を掴んだままで涙まじりにティエリアを責める沙慈の口からは 唾がひっきりなしにティエリアの顔へと飛んでいく。 それでもティエリアは一切抵抗をせず、その目には反抗も怒りも、同情の色さえ浮かんでいない。 ただ沙慈の気が落ち着くのを待つかのように、彼の怒りに歪んだ瞳を真っ直ぐに見つめ続けているのだった。 その態度が余計に沙慈の心を波打たせる。 人形のように完璧に整った顔からは、どうしても非人間的な印象を受けずにはいられない。 「お前…お前なんか…」 もっと叩きのめすほどに責めてやりたいのに、言葉が続かなくなってしまった。 ようやく黙って聞いていたティエリアが口を開いた。 「4年前の戦闘で、世界は正しい方向に導かれるはずだった。その道筋は我々が確実に付けたはずだった。  なのに、地球の人間は未だに自分勝手な欲の縛鎖から逃れられず、同胞同士でくだらない争いを続けている。  こんな世界が正しいものであるはずがない。そうだろう、沙慈・クロスロード」 …まだいけしゃあしゃあとカルトめいた持論を展開するつもりか! 沙慈の怒りに再度火が付いた。 力の限りにティエリアを壁に押し付ける。 紫色のボレロの襟元が歪み、苦しくなった呼吸でさすがにティエリアの顔が歪む。 「誰のせいだよ…!お前たちのせいだろ!?正しい方向に導いただって…!?  冗談じゃない。世界が何も変わっていないのはお前たちのせいじゃないか。  武力で人の心を変えようなんて、最初から無理だって気付けよ…!?」 今度こそ顔と顔が触れ合うほどの至近距離に詰め寄る。ティエリアの息が何度も沙慈の顔に当たった。 その息遣いで、沙慈はにわかにルイスとの甘いキスを思い出した。 あの時照れたように微笑んで、ゆっくりと沙慈の胸に顔を埋めてきた彼女は、 もう今は彼の傍ではない、どこか遠いところに去ってしまった。 それが普通の男女の別れの理由によるものではなく、明らかにガンダムの破壊行動の犠牲のせいで、 ルイスは悩んだ末にそういう選択をしたのだ。 なのにこいつらはまるで傷つきもせず、平気な顔で健康に息をし続けている。 しかも、僕の目の前で、同じ空気を吸って…! 怒りが再点火して、一気に沸騰した。 気が付いた時にはティエリアのボレロを剥ぎ取り、その下のぴったりとした制服までも強引に引きちぎっていた。 薄暗い営倉の中で、まるで夜光虫のようにおぼろげに光るかのような、ティエリアの白い肌が露わになる。 同じ白人系なのにルイスの生き生きとした薄桃色の肌とは大違いの、ティエリアの氷のような肌を見ていると、 唐突にそれを汚したくして仕方なくなった。 「そうだよね…。君は冷血人間なんだから、どうせ何も感じないんだろ…?」 急に低く、落ち着いた声音になった沙慈にも、ティエリアは全く動揺を見せないでいる。 それがまた沙慈には腹立たしい。 刹那・F・セイエイといい、このティエリア・アーデといい、どうしてテロリストというのはこうも 全てを悟りきったかのように淡々としているのか。 「分かってないようだね、ティエリア…さん?…今から僕に…、何をされるのか」 明らかに自分の目に狂気が漂っているであろう事を沙慈は確信していたが、 その目でティエリアを下から睨みつけてもなお、ティエリアは表情を全く変えない。 そのまましばらく無言で見合った後、不意にティエリアの目に宿ったのは憐れみだった。 「…ッ!同情するっていうのかい!?今更…!  好き勝手やって、さっきだって好き勝手言い放っといて、もう遅いんだよォ…!!」 沙慈は怒りに任せてティエリアの唇を一気に奪った。 火花が出そうなほど強く前歯が当たったが、怯まずにティエリアの口腔内へと舌を捩じ込む。 (どうだ…!偉そうなテロリストさんが、情けない無知で無能な一般市民に犯されるんだ!いい気味だ…!!) ティエリアの舌を絡めとり、乱暴に自分の舌を巻き付けながら、そのテロリストらしからぬ細い体を冷たい床へと押し倒す。 ティエリアが僅かに抵抗して、しばらく沙慈の両腕を掴んで引き離そうとしていたが、すぐに諦めて脱力した。 (ふん…!口ほどでもない。でも、絶対に止めてなんかやらないからね) 沙慈は全ての恨みを思い出しながら、あえてティエリアへと自らの唾液を流し込んでいった。 下で苦しげにうめくティエリアの声が心地いい。 怒りと興奮でいつの間にかガチガチに勃ちあがった下半身を、ティエリアの股間へとぐりぐりと押し付けてやる。 やたら尻のラインを強調したかのようなティエリアの制服のズボンを弄り、じっくり太ももを撫で回した後、 尻をぎゅっと握ってやった。 ティエリアがびくんと震えて息を乱すのが、たまらなく沙慈の加虐心を満足させた。 いい気味だね、と思っていると唐突にティエリアの手が沙慈の髪の毛を掴み、引っ張り始めた。 (痛…、痛い…!生意気な…) 「……ッ!!」 沙慈は思わず力一杯ティエリアの唇を噛んでしまった。 さすがにティエリアが声にならない悲鳴を上げた。 「あっ…!ごめ、ごめん!!」 ついいつもの癖で謝り、沙慈はティエリアから唇を離した。 ティエリアがむくりと上半身を起こし、沙慈を見た。 やや潤んだ瞳には、悲しいような、むしろ怒ったような、それでいて怯えたような、複雑な色が浮かんでいる。 その唇の端から血のようなものが一筋流れているのを認めて、沙慈は慌ててティエリアの頬をそっと両手で挟み、 震える指でその血痕らしきものを拭ってやった。 指が触れた時、く…っ、とティエリアが痛みに顔をしかめた。 「ごめん、ごめんね…。僕、つい…。こんなはずじゃなかったのに…」 「いいんだ…。沙慈・クロスロード…。どうしようもない事も世の中には厳然として存在しているのだから…」 「ティエリア…」 含みを持たせたその言葉で、沙慈は彼らもまた、引き返せない痛みを背負ってきている事を窺い知った。 急に沙慈の頭に刹那の顔が浮かんだ。 隣に住んでいながら、沙慈は刹那の正体を何も知らず、疑いすらしなかった。 その歳格好から普通の学生なのだろうと、勝手に思い込んでいた。 刹那がガンダムに乗り込み、激しい戦闘を繰り広げていた時でさえ、自分はぬくぬくと温かい部屋でピザを頬張っていたのだ。 「僕は…何も…知らなかった…。そうなの…?ルイス…、姉さん…」 姉はCBを探る過程で死に、ルイスは恐らく闘病に疲れ果てて自分との連絡を絶ったはずだ。 なのに、まさに被害者家族でありながら、CBについて、そして彼らの目指した世界について あえて何も探ろうとしてこなかった自分に気付く。 この4年、もっと色々出来たはずなのに、時間を無駄にしてしまったという後悔の念がひしひしと押し寄せてきた。 「ごめん、ごめんね…」 姉にも、ルイスにも、そしてたった今無自覚に傷つけてしまったティエリアにも謝らずにはいられない。 すっとティエリアの頬に口付け、その細い体を優しく抱き締めた。 その時ようやく、沙慈はティエリアの体が随分冷え切っている事に気が付いた。 まるでずっと雪の中にでもいたかのように、芯から冷え切っているかのように、ティエリアの肌は冷たかった。 「き、君…。この…体…」 「だから言っただろう。君は何も知らないのだと。僕のような存在がすぐ傍にいる事さえ知らずに、君たちは生きている。  地球の全ての権限は人間にあるのだと、傲慢にも思い込んでいる」 ティエリアがゆっくりと立ち上がり、はだけた制服の上を全て脱いだ。 続いて下半身まで脱いでいくティエリアを、沙慈は放心状態で見ているしかなかった。 やがてティエリアが下着のみになってようやく、その体が普通の人間と随分違っている事に気が付いた。 肌の色と質感こそ人間のもののように見えるが、その他の余計なものは一切その体に付着していないのだ。 乳首やへそはもちろん、下着の凹凸のなさから判断するに、恐らく泌尿器すら有していないだろう事が、沙慈にははっきりと分かった。 さっき自分の猛った股間を押しつけた時にどうして気が付かなかったのかと、疑問に思う。 ふと指に付着した血痕に目をやったが、改めて確認すると、それは明らかに血ではなかった。 指先を刷り合わせてみる。その粘つき具合から、どうやらそれは沙慈が流し込んだ自身の唾液なのだった。 営倉の薄暗さから、血痕のように見えてしまっただけだったのだ。 沙慈は瞬時にティエリアの真の姿を理解した。思わずティエリアから目を反らす。 「そ…、そう…。君は人間じゃないんだね…。もしかして、刹那も…?」 「…いいや。彼はれっきとした人間だ。  彼だけでなく、僕以外のこの艦のクルーは全て、それぞれの理由で家族を失い、  CBのメンバーに選ばれて理念のために戦っている」 ティエリアが静かに答えてきた。 (…そうなんだ。でもそれって…) 沙慈の頭に浮かんだ言葉を、ティエリアが口にした。 「そう、君と同じ立場だよ。奪われた組織は違えど、誰もが痛みを背負って、その上で戦っている」 「違うよ…!僕は、違う…!だって僕の家族を奪ったのは君たちじゃないか…!なのに君は…」 「なら、その相手が全く違う組織だったなら君は我々を憎まなかったのか?」 「そんな事…」 頭が混乱して上手く働かない。 もし他のテロ組織の攻撃にルイスと絹江が巻き込まれ、そして今の状況に陥り、 刹那と同じくCBに選ばれていたら自分はどういう判断を下したのだろう。 テロ組織の壊滅、引いてはその根源となる戦争の根絶の理念に強く惹かれてもおかしくはなかったのではないか…。 「僕、僕は…」 「沙慈・クロスロード…」 混乱して座り込んでしまった沙慈のすぐ傍にティエリアが座り、子供をあやすように静かに語りかけた。 「世界は複雑に絡み合い、簡単に変革を成し遂げようとはしない。  それでも人類の未来のために、誰かがいつかはやらなければいけない。これはそういう戦いなんだ。  君も失ったものがあり、それがどうしようもなく辛いのなら尚更、その根元を見つめてみたらどうだ…?」 「……」 苦渋の表情を浮かべたまま、無言で自分を見返したまま動かない沙慈の姿に、ティエリアは説得の成就をようやく予感できた。 母艦の存在どころか刹那や自分の存在まで知られた以上、彼をこのまま解放するわけには行かないが、 先ほど撃ち殺されそうになっても何の抵抗も見せようとしなかった刹那の態度を考慮すると、 沙慈に危害を加える事も良策とは言えない。 結果、上手く説得して、CB側に彼の心が傾くまで艦内に留め置く事が最善策だと判断せざるを得なかった。 沙慈がティエリアの言葉とその暗い過去の両方を反芻して、なにやら考え込んでいるのが分かる。 しかしそのズボンの下では、まだ治まりきらない熱を持ったペニスが蠢いているのがはっきり確認できた。 「沙慈・クロスロード…。明日の朝まで時間を与える。ゆっくり、考えればいい」 ティエリアはそう言いながら、静かに手を伸ばし沙慈の膝を撫でた。 沙慈がぽかんと口を開けてティエリアを見返してくる。ティエリアは静かに続けた。 「僕も朝までここにいるよ。僕も色々考えたい事があるからな。  もちろん君の思索の邪魔はしない。 ただ、ここにいるだけだ…」 ティエリアの声に艶めいたものが混じる。 沙慈のティエリアを見つめる目が、急に異性を見るかのようにうっとりとしたものに変化した。 その目の色に応じるように、膝から太ももを通って沙慈の股間へとティエリアはゆっくりと手を移動させていった。 ズボンの上をティエリアの指が静かに動くたびに沙慈の太ももが震え、指が股間へと近づくごとにその震えが大きくなった。 そしてティエリアの指が沙慈の股間へ到達した時には、もう完全に彼のペニスは勃起し尽くし、 充分過ぎるほどの熱を蓄えていた。 ズボンの上からそこへと、ティエリアが静かに唇を落とすと、沙慈が低い溜息を漏らしながら髪を掴んできた。 しかしそれはさっきティエリアが沙慈に見せた抵抗とは違い、むしろティエリアを誘うような優しい手付きだった。 「わかった…。君の望むようにしよう、沙慈・クロスロード…」 膨らんだズボンを口に軽く含むと、砂煙の埃っぽさに混じって硝煙の苦みを感じた。 すぐにジッパーを下ろし、下着ごとズボンをずり下ろすと中から沙慈の一物が元気に飛び出してきた。 むわんと咽かえる様な汗臭さに性器の異臭が立ち込めるが、ティエリアは何の戸惑いも見せずに その先端にゆっくりと舌を伸ばした。 「ああ…っ!」 真っ赤な舌が触れた瞬間、沙慈の手に力が篭り一層強くティエリアの髪を掴んでくる。 闇夜の中でも沙慈のそこが充血しきっているのが分かった。 そのままペろぺろと先端を舐めてやると、沙慈は苦しそうに顔をしかめて女のように仰け反って喘ぎはじめた。 明らかに沙慈は他人から与えられる快感に慣れていないようだ。 「…恋人はつくらなかったのか…」 ティエリアが竿を扱きながら聞くと、沙慈は喘ぎながらも何とか答えてきた。 「そんな…事…出来るわけないじゃない…。ルイスは腕を失って…苦しんで…、姉さんは命を失ったんだぞ…」 「……」 ティエリアは何も答える事が出来ず、ただ沙慈に快楽を与えることに没頭した。 大切な誰かを失う痛みは、4年前にティエリアも体験した事なのだ。 沙慈の気持ちはティエリアにも痛いほど分かる。 そして、そう簡単に代わりを見つける事が出来ない事も、よく分かっていた。 刹那が彼を殺さずにここに連れて来た理由が分かる気がした。 沙慈のペニスを再び口に含むと、今度は根元まで飲み込んでいく。 沙慈が驚いてティエリアを見たのが分かったが、気にせずに根元に舌を絡めてやった。 「ひ…っ!!」 とても成人男性とは思えないほどの情けない声を出して、沙慈がびくびくと腰を揺らす。 性的行動で人間が小難しい思考から解放される事は、ティエリアは既に知り尽くしていた。 (沙慈・クロスロード…。もう何も考えるな。  考えて答えが出るような事なら、誰も命を賭けて戦ったりはしない…!) ティエリアは沙慈の腰を両手で掴んでその動きを抑え、激しく口腔内で抽迭をはじめた。 「…っ!ティエ…リア…ッ…!」 沙慈の揺らめく腰を強引に抑えつけ、何度も舌と唇で擦りあげた。 沙慈のガウバーがティエリアの口腔内に不快に広がる。 それが後から後から溢れ出てきたが、ティエリアは顔をしかめながらも頑張って沙慈への奉仕を続けた。 「…も、もう…っ、だめ…だよっ…、ねえ…っ、ティエリ…ア…ッ!」 沙慈の腰はもう、ティエリアが力ごなしに抑えつけても収まりがきかないほどに激しく揺らぎ続けている。 ティエリアの口の中で、限界まで膨れ上がった沙慈の勃起がどくんどくんと脈打つ。 その熱さは、ティエリアの冷たい体温には毒なほどだった。 「ねえ、聞いて…る…っ?本当にもう…、イッちゃう…よ…。もう離し…て…っ」 沙慈が気遣って言って来るが、ティエリアは構わずフェラを続けた。 一度はじめた事を途中で投げ出すなど、ティエリアの性には到底合わない。 「君、こんなの飲んじゃ…、体に悪いでしょ…?そう…っ…だよね…」 ティエリアが止めるつもりはないと悟り、沙慈は必死に我慢しながら言った。 当然ティエリアが知る由もないが、こんな時でも沙慈は昔と変わらず、優しい男なのだった。 勃起のほとんどを口から抜き、赤黒く膨らんだ先端だけを含んだ状態で、 「気にするな。僕は確かに人間ではないが、活動エネルギーは人間と同じく、食物から摂取している」 と、ティエリアが答え、すぐに亀頭に舌を絡め付かせる。 沙慈がもう一度、びくびくと大きく仰け反った。 「…っ…で…っ、でも…っ…、あ…っっ…!!」 沙慈の反論を許さず、再び一気に根元まで咥え込む。 ティエリアのざらつく舌の表面に、浮き上がったペニスの血管が当たる感触がはっきり伝わった。 「も…、だめ…っ、イクよ…、知らないからね…っ、ティエリア…!!」 うああっと悲鳴のような声を出して、沙慈が腰を振り上げた。 ぐっとティエリアの喉の奥まで勃起が侵入してくる。 その再奥で、沙慈が盛大に射精をはじめた。 ドビュッドビュッと精が押し出される度に、ティエリアの体の中に直接精液が吸い込まれていく。 喉を駆け抜けるそれはティエリアに、少なくともしばらくは忘れられそうにもないほどの熱い感触を残していった。 途端に奥から立ち上ってくる苦味に顔をしかめ、大きく鼻で息を継ぎながらも、ティエリアはそれを全て受け入れたのだった。 「本当によかったの…?僕とこんな事をして…」 行為が終わった後、ティエリアは沙慈と二人、冷たい営倉の床に寝転んでまどろんでいた。 さっき約束した通り、見張りの意味も込めて今夜は沙慈の傍を離れるつもりはない。 今ごろ刹那は懐かしい仲間と再会し、あの元気な新メンバーに振り回されている事だろう。 「構わない」 その光景を思い浮かべて苦笑しながら沙慈に答えると、沙慈も思いがけずに微笑み返してきた。 ティエリアの冷たい手を握り、自分のシャツの中へとその手を導く。 「冷たいね、君の手…」 「仕方ない。前も言ったが、自分にはどうにもできない事があるのだから…」 「……」 沙慈は少し悲しげに瞳を伏せたが、すぐに顔を上げてティエリアの目を優しく見つめてきた。 「……。僕のわだかまりはそう簡単には解けないよ。 良く考えなくても、それだけははっきりしてる…」 「そうか…。残念だな…」 「でも、君たちの事が少し解った気がするよ…。  さっき冷血人間って言っちゃった事、許して欲しい…。ごめんね…」 「…ある意味では本当の事だから仕方ない…」 沙慈はくすりと声を出して笑ったが、それは明らかに悲しみの多く混じった笑い声だった。 「君は厳しい人なんだね…。……。もう寝るよ。  今日は色んな事が起こりすぎた…。…お休…み…」 最後の方の彼の呟きは、寝息にかき消されてしまった。 沙慈の安らかな寝顔を見ながら、ティエリアは明日からの新しい戦いに思いを馳せ、そしてゆっくり目を閉じた。                                                 (終わり)