ユニオンMSWAD基地の一画─。 深夜1時を回った研究棟は、さすがに人気もなくなり、ぞっとするほど静まり返っている。 歩を進める度にティエリアの革靴はしんとした床を踏みしめて、コツコツと硬い靴音を響かせるのだった。 仕事を片付けて、向かう先は対ガンダム調査隊改めオーバーフラッグス主任技術顧問、ビリー・カタギリの居室だ。 コンコンと扉をノックすると、間髪要れずに「入りなさい」と声がかかった。 ティエリアの靴音が近づくのを、今か今かと心待ちにしていたに違いない。 部屋に入ると、満面の笑みでビリーが手を広げ、「座りなさい」とベッドを示したのだった。 ティエリアが敵軍の真っ只中であるこの基地へと派遣された経緯はこうである。 2週間前にガンダム3機の急襲により甚大な損害を被った当基地は、所属軍人を総動員してもなお、未だ完全な修復には程遠い状態だった。 何よりレイフ・エイフマン教授初め、失った人材の穴は、余りにも大きすぎた。 そこで、教授に代わり、事実上オーバーフラッグス研究員のトップの座に就いたビリー・カタギリが、 かつての同窓であるスメラギに応援を願い出たのだった。 スメラギに心を寄せるビリーが、想定外の事態のショックを共に癒したいが為の援助要請の側面が大きい事は、 スメラギ自身はっきりと分かってはいた。 そしてビリーの要請に応えて基地へ赴くと言う事が、テロリストである今の彼女にとってどれほど危険かという事も、はっきりしていた。 普通なら、迷わず断る所だろう。 しかしユニオンが対ガンダム用に新MSを開発しているという情報に加え、エイフマン教授がどこまでCBの情報を掴んでいたのかという疑念、 そしてトレミーとは意思形態を異とするトリニティの存在が、スメラギの心を揺さぶっていた。 軍本部から新研究員が派遣されるまで、2週間でいいから手伝ってくれと懇願してくるビリーに 考えさせてくれと応じ、思い悩んでいた時に、ティエリアが代理を願い出たのだった。 当然、スメラギは渋った。 しかしティエリアはトリニティの事も含めて、どうしても自分の目で現実を見ておきたかった。 ユニオン内部へと潜入する事が出来れば、ヴェーダにも報告されていない基地襲撃の原因が、分かるかもしれないからだ。 ティエリア派遣の名目は、新人研修─スメラギの現在勤務する会社へ、 来春の就職が内定している若い青年の社会勉強を兼ねた修行、という形だった。 スメラギ自身はどうしても外せない重要な仕事があり、代わりに優秀な新人を派遣すると言う事にしておけば、 向こうから依頼してきた手前、ビリーは気を落としはしても、断る事はないだろう。 色々と功罪を熟慮した結果、スメラギはGOサインを出したのだった。 スメラギの返事を聞いたビリーはあからさまに落胆したが、やはり予想通りに断りはしなかった。 こうやって正面から基地への潜入に成功したティエリアだったが、事態はそう簡単なものではなかった。 トリニティの攻撃の煽りで、基地の危険レベルはレッドシグナルのままで、いくらビリーの臨時助手の立場にあっても、 機密事項を入手する事は思いの外、困難な状態だった。 軍内部にスパイがいるという噂がまことしやかに飛び交い、同胞間で腹の探り合いが日常的に行われていた。 PCの方はログインの度に過剰なほどの身分確認が必要で、誰がどの情報を閲覧したのかが即座に軍本部へと報告された。 基地内の緊張は最高潮で、こんな時に現れたティエリアはその若さも手伝ってか、特に不審な目で見られる事になった。 「彼は僕の責任で採用した。年齢は関係ないよ。この年でもう博士号を取得しているんだからね。  2週間だけだけど、色々と手伝ってもらうつもりだ」 恋は盲目とはこの事だ、とティエリアは改めて人間の愚かさを思う。 確かにティエリアの学力は大学院修了レベルにまであるが、ビリーはスメラギが適当に作った履歴書を頭から信じ込み、 疑いの目を向ける軍人達から何度もティエリアを庇ったのだった。 とにかく、ビリーの保護のおかげで、ティエリアは最初の1週間をつつがなく終えた。 元々マイスターとしてあらゆる訓練を施されているティエリアは、 他の人間が文句を付けようがない位に良く働き、信頼を得ていった。 ただ違っていたのはティエリアとビリー達基地の人間、それぞれの目的だった。 ユニオン基地の面々は、ただひたすらにCBへの復讐を誓って、日々の仕事に打ち込んでいた。 一方のティエリアは、決して自分の正体を気取られないように努力し、一心に働きながらも、 マイスターとしての目的を失ってはいなかった。 しかしながら、一週間潜入捜査して、収穫はほとんどなし。 掴んだ情報といえばオーバーフラッグスの構成と、フラッグがどうやらカスタム化されているようだ、という事位だ。 トリニティ攻撃の理由さえも定かではなく、どうやら漠然と見当が付いているらしいビリーに探りを入れてみても、 彼は決して口を割ろうとはしなかった。 口では信頼しているよ、と言ってはいるものの、ビリーはスメラギのようには、ティエリアの事を信用しきってはいないようだった。 残された時間は一週間しかない。 トレミーのマイスターとしての貴重な2週間を犠牲にしてまで潜入したというのに、このままでは帰れない。 焦るティエリアが最後の手段として取った行動は、太古の昔から人間が何度も繰り返してきた原始的な作戦だった。 ─ハニートラップである。 スメラギとヴェーダから得たビリー像は、一途で恋に不器用、女遊びなど皆無の真面目な研究者の姿だった。 何しろ30になっても一人の恋人も作った事がないのだそうだ。 それどころではなく、研究に打ち込み、目覚しい成果を上げる事でスメラギの気を引けるとでも思っているのか、 遊び相手さえほとんどと言っていい位、いなかったそうだ。 これではいくら人並みはずれた美女であっても、この堅物の心を動かすのは並大抵のものではないだろう。 しかし、ティエリアには自信があった。 ビリーが浮世離れした科学者である故に、ティエリアの両性具有である身体に興味を持つはずだと、確信していたのだ。 だからこそ、スメラギに志願もしたのだ。 そして、試して見た結果、あまりにあっけなくビリーはティエリアの思い通りの行動を取ったのだった。 誘いの言葉は単純だった。 「僕は普通の人間と違っているみたいなんです。  クジョウさんに相談したら、いい人がいるから診てもらいなさい、って…。  もし、この身体のせいで内定が取り消されたら…」 ドクター・カタギリ、と彼を呼び、不安そうな上目遣いをしてみせると、人のいいビリーはおろおろとティエリアを気遣い、 「大丈夫だよ、僕が診てあげるから…ね?」と言って、診察台ならぬ自らのベッドを指し示したのだった…。 その夜初めて、ティエリアの裸を見たビリーは小躍りしそうなほどに喜び、興奮してあちこちを観察し始めた。 初日は観察するだけだったが、次の日には触診が始まった。 当然、昼間にはレントゲンに血液検査、CTといった検査を済ませてある。 その結果、ティエリアの身体は、二つの性を有する以外には特に異状は認められない事が判明した。 医師ではないが、オールラウンダーを目指す彼は、医療の知識も存分に蓄えていたのだ。 あくまで職業倫理に忠実なビリーは、軍に個人情報が残る事を懸念するティエリアに、 全ての検査画像とデータを返却する事を約束した。 もちろん、科学者らしく守秘義務を一生守る事も、である。 なるほど、いくら志願したとは言え、あのスメラギが危険極まりないこの基地に 自分を単独で潜入させた意味がよく分かると、ティエリアは思った。 この男は、馬鹿が付くほど真面目なのだ。 上手くやれば、かなりの情報を引き出す事も可能かもしれない。 そして、ティエリアはビリーに体を差し出したのだった。 最初は何の感情も込めず、淡々とした動きでしかなかったビリーの手付きが、時間が過ぎるごとに粘っこいものへと変わっていった。 ティエリアはあえて、淫らになろうと努力した。 ビリーの手が体を這いまわるたびに、淫欲を誘うようにあからさまに身をよじり、途切れ途切れにか細く喘ぐ。 いくら不器用でも、ビリーもやはり男だった。 両性具有であっても、女を思わせる美貌を持つ、ティエリアの上気した表情にごくりと生唾を飲み込む。 乳首を触った経験もないのだろう。 ビリーは知識では知ってはいても、初めてのその感触に子供のように夢中になった。 ゼリーで湿らせた医療用手袋で、しつこいほどにそこを擦る。 快感とも痛みともつかぬ感覚だったが、ティエリアは甘い声で応えてやった。 ビリーの鼻息が荒くなる。 やがて、ティエリアのペニスが徐々に勃起し、軽く開いた足の間で、濡れた膣口がぱっくりと口を開けた。 もうビリーの目付きは研究者のそれではない。 彼が初めて目の当たりにする女性器はあまりに卑猥で美しく、本能的にビリーを誘うのだった。 ビリーの指がそこへとゆっくり伸びていく。その様はほとんど無心の境地のようだった。 「あ…っ」 軽く指先が当たった瞬間、思わずティエリアの体が震えた。 両性具有でありながら、ティエリアの体もまた、本能的に男を求めているのだった。 やがて、決して痛みを与えまいというかのように、ゆっくりと指が入ってきた。 初めての異物感でティエリアにも力が入る。 一方のビリーは、初めて知る女性器の熱さに驚いていた。そして指を締め付ける、この肉感。 手袋をはめている事を後悔せずにいられない。 目の前にティエリアの勃起がそそり立っているのに、決して男性的なイメージは湧かない。 それどころか、狭いそこに自分の指が徐々に入っていくその光景は、 スメラギの存在さえ忘れさせてしまうほど、ビリーの心を捉えつつあった。 分かっているから、ティエリアも女のように振舞う。 実際膣内で指が動き始めると、疼くような快感が体を支配していった。 「ん…っ、は…ぁ…んっ…、あ…っ…ん…」 「そう…、気持ちいいの…」 「あ…ぁ…、は…い…」 ビリーが舌なめずりしながら、低い声で聞いてくる。 軽く口を開けたまま、我慢できないという様子を醸し出して2,3度頷くと、ビリーの目がどんどん男のそれへと変わっていった。 内部の肉付きをただ確かめる目的のようだった、指の緩やかな動きが徐々に強まり、より奥まで入っていった。 ティエリアは何度も口をパクパクと開き、身を震わせてシーツを掴んだ。 その姿がどれだけ男をそそるのか、誰に教えられるでもなく、ティエリアは知っていたのだった。 初めて欲情した「女」の裸を目の当たりにし、しかもそういう目的で愛撫を繰り返すビリーの下半身は徐々に昂ぶり、 やがて傍目にも分かるほど、ズボンを持ち上げた。 このチャンスを逃してはならない…。 ティエリアがそろそろと手を伸ばし、そこにかすかに触れた瞬間、稲妻に打たれたかのようにビリーは大きく体を震わせ、 夢の世界から一瞬で現実に戻ったかのように表情を強張らせて指を抜き去り、じりじりと後ずさりした。 ティエリアの伸ばしたままの指が、むなしく空を切る。 ビリーは苦悶の表情でティエリアを見つめ、しばしの沈黙の後、「すまない」と言って踵を返して部屋を出て行ってしまった。 気まずい空気のままで終えた3日目の夜、ビリーはそれでもティエリアを部屋へ呼んだ。 胸を撫で下ろし、今夜こそビリーを落として見せると意気込んで部屋へ入ったティエリアに、ビリーは一人の男を紹介したのだった。 オーバーフラッグス、エースパイロットのグラハム・エーカー上級大尉である。 簡単な自己紹介の後、ティエリアを正面から不躾に見たグラハムの視線は、明らかに珍獣を見る目付きだった。 しかしその中にも、かすかな欲情が漂っているのをティエリアは本能的に察知した。 想定外の出来事に戸惑いながらも、ティエリアはビリーの心情を想像してみた。 おそらくビリーは、ティエリアに欲情した事を恥じたのだろう。 そして、性愛の対象となってしまったティエリアを怖れ、ティエリアと二人になる事を怖れた。 それでも、ビリーはまだ、ティエリアの体への研究者としての欲望を捨て去る事が出来なかった。 結論として、ビリーは同僚を越えた友人であるグラハムを帯同し、観察に専念する事にしたのだ。 「君、今夜は彼も一緒だ。構わないよね?」 「え…、ええ…」 ティエリアは曖昧に頷きながらも、忙しく思考を巡らせていた。 自分の任務は情報収集なのだ。グラハムの闖入でそれが達成出来るのか? いや、出来る出来ないではなく、やるしかないのだ。 「カタギリ。どう見ても少年のようにしか見えないが…」 「そうかな?僕にはむしろ、少女のようにしか見えないけどね。不思議な子だろう。  君も気に入ると思ったんだ」 「私は少女などには興味はないよ」 「ああ、そうだったね。まあ、少年だというのなら、確かに彼は少年だよ」 ははっとビリーが笑って返す。 昨日は濡れた女性器に夢中になっていた癖に、良く言えたものだとティエリアは思った。 「カタギリ。しかし、何故こんな怪しい少年を、こんな時期に当基地へ呼んだ?」 「またその話かい?言っただろう、昔馴染みの紹介だって。問題ないよ。本当に良くやってくれている」 「だが…」 正規ルートの雇用ではないのだから、グラハムがティエリアを不審がるのも当然と言えば当然の事だ。 ましてや体を差し出すとなれば、ますます怪しいのだろう。 「僕が上司に頼んだんです。是非ここで研修をしたいと。  それに、もうご存知のようですから隠しませんが、体の事が不安で…」 年相応の幼さを醸し出すように心がけて、ティエリアは視線を落とし、寂しげに呟いて見せた。 一瞬、グラハムが獲物を狩る様な目で自分を見たのが、ティエリアにははっきりと分かった。 「ドクター・カタギリ…。僕は…、僕の体は…やはりおかしいのですか…?」 涙をうっすらと浮かべて、ビリーを見る。 昨日、あんな風にあたふたと逃げ帰ったビリーだ。 罪悪感と羞恥心に苛まれてでもいるのか、ビリーはティエリアから視線を外して、困ったように部屋のあちこちに目をやった。 「いや、僕は特にどうも思わないよ。検査でも君の体は両性具有な点を除けば、何の異状も認められないし…」 そう言って、ビリーは加勢を頼むようにグラハムに言った。 「グラハム。彼…は問題ないのかどうか、君にも判断を仰ぎたい。そう思ってね…」 「なるほど。少年。こちらへきなさい」 「……」 怪しい行動を取ればそれ相応の対応をすれば済む事だ、とでも思っていたには違いないだろうが、 グラハムはたったこれだけのやりとりで、早くも好奇心と性欲に負けてしまったらしい。 ティエリアはとりあえず第一関門突破に一安心して、グラハムの指示通り、彼の下へと向かったのだった。 グラハムとティエリアの背丈はそう変わるものではない。 その美しい顔を細部まで見つめてみても、やはりグラハムにはティエリアは少年に見えた。 男色家を公言して憚らない彼である。 そういう目でティエリアを見てみると、今までお目にかかった事がないほどのその容貌に、抗えないほどの欲が満ちてきた。 服の上から目だけで骨格をなぞり、その美顔に劣らない、美しい体のラインを想像する。 股間の膨らみは明らかに少年のそれで、その形、匂い、味を想像するだけでグラハムの息は抑えきれずに乱れていった。 至近距離で欲情した目で見つめられ、ティエリアは所在なさげに瞳を揺らし、そっと自分の肘を握った。 そうする事で、グラハムがますます興奮する事は良く分かっていた。 「少年…。私が怖いか…?」 「はい…、……いいえ…」 か細い声で、肯定とも否定ともつかぬ返事をすると、グラハムは目論見通り欲情を滾らせて、ティエリアにぐいっと近寄ってきた。 肩を掴んでティエリアを引き寄せ、耳たぶに唇を寄せる。 「……ぁ…っ」 熱い息が耳にかかって、思わず小さく叫んでしまったが、それでもティエリアは冷静だった。 わざとふるふると体を小さく震わせ、怯えている風に装った。 「少年…、心配するな…。私に全て任せておけばいい」 二人にしか聞えないほどの低く小さい声でグラハムが呟き、ぎゅっとティエリアを抱き締めた。 グラハムの口付けを首筋に受けながら、ティエリアはトラップの成功を予感したのだった。 グラハムの肩越しにビリーの姿が目に入る。 ビリーは今はもう科学者らしい理性的な顔で、グラハムがティエリアの体に絡む様子をただ眺めている。 「あ……っ!」 ぼんやりとビリーを眺めていたら、急に下半身に快感が走り、体がびくんと震えた。 慌てて下を見ると、グラハムの指がティエリアの股間を這いまわっている。 今までそんな風に、そこを弄られた事がなかった。 昨日、ビリーから女性器に受けた粘っこい愛撫とは裏腹の、乱暴な手付きだ。 「エ、エーカー…上級大尉…っ、そ…こは…、…ん…っ」 「少年、君は確かに少年だ。わかるだろう、この感触が…!決して女などではない」 「で、でも…っ、僕は…」 グラハムはティエリアの体をしっかりと抱き寄せて逃がさず、執拗に股間を撫で回した。 荒々しい呼吸と指遣いに、ビリーには感じなかった雄の欲をはっきりと感じる。 科学者と軍人、同じ男でこうも違うものなのか、そう思ったら、これからされる事が急に怖くなった。 助けて、という思いを込めてビリーを見るが、ビリーは他人の性行為の淫猥さに撃ち抜かれたかのように、 ただぼうっと二人を眺めているばかりだった。 「ド、ドクター…」 それはとても小さい呟きでしかなかったが、何とか声が出た。 ビリーがはっと我に返ったかのように首を振り、続いてにっこりと優しく微笑んだ。 決してティエリアを逆撫でしないように静かに歩み寄り、やがてティエリアの背後に回ると、 「大丈夫…。昨日まで上手くやれてたじゃないか…。怖がらないで」と言って、 後ろからティエリアの肩を抱き、そっと首筋に口付けた。 前と後ろ、二人の男が同時に首筋に唇を這わす。 ぞくぞくと、体の芯から戦慄にも似た何かが立ち上ってくるのがわかる。 まさかバレているのか…!? いや、そうであっても今ここで逃げ出すわけには行かない。 疑念一片も与えない程完璧に、この作戦をやり遂げなければならない…! 本能的な怯えを感じながらも、ティエリアは勇気を振り絞り、覚悟を決めた。 しかし当のビリーは、平静にティエリアに接してくる。 「今日の僕はあくまでゲストだ…。いいね?  グラハムは優しい男だから、君は何も心配せずに身を任せればいいからね」 「は…、はい…」 ビリーが後ろから器用にティエリアの衣服のボタンを外していく。 露わになった胸元にビリーの手が滑りこんできたかと思うと、あっという間に乳首を捕えられた。 「ん…っ」 後ろからくいっと優しく、乳首を捻られて思わず体が仰け反った。 続いてビリーの指先が乳首の先端をリズミカルに擦り出す。 声を押し殺そうと唇を噛んで我慢してもなお、熱い息が漏れ出てしまう。 昨日の失態を取り返そうと、ビリーは随分シミュレーションでもしてきたのかもしれない。 ゲストだといっていた割に、ビリーの指遣いは本格的だった。 やたら手馴れた指の動きに反応してか、ティエリアの下半身までもが大きくなり、グラハムの手に質量を伝えた。 グラハムがまるで戦場にいるかのような、ギラギラとした目でティエリアの上気する顔を見つめた。 「少年、夜はまだ今からだ。約束しよう。君に2度と忘れられない思い出をプレゼントする事を…!」 「ああ…、あ…!ああっ…」 下半身を責めるグラハムの手付きが、より激しくなった。 乳首と同時に責められて、ティエリアの男性器は高まる欲望を体現するかのように、どんどん硬くなっていく。 ズボンの上からでもはっきり分かる位に勃起し尽くしたそこ全体を扱くように、グラハムが指を大振りに動かす。 「分かるか、少年。君の体が私を求めているのを…!」 「ああ…ん…っ、エ…カー上…級大…尉…、僕…はも…う…」 グラハムに聞かれるまでもなく、ティエリアの体が性感に晒され、熱く火照っているのは明らかだった。 早くも先走りが溢れ出ているらしく、下着がペニスの先端に張付いて擦られ、グラハムの指が動く度に何ともいえない快感が走る。 それだけではない。 女性器の方から零れ出る体液もまた、下着を湿らせて張り付かせていた。 ティエリアは今この時まで、自分の体がこんなあからさまな反応を見せるとは、考えもしなかった。 何しろろくに自慰の経験もないのだから、日毎強まる悦楽に戸惑うのは仕方のない事かもしれない。 しかし体の方は正直なもので、早く全てを脱ぎ去って、あらゆる所をもっと強く、触ってもらいたくて仕方なくなってしまった。 その時、ティエリアの淫欲を読み取ったかのようなタイミングで、尻の割れ目を通って、後ろからビリーの指が伸びてきた。 乳首を擦り続けたままで、ティエリアの女性器入り口を、ズボンの上からすっすっと刺激するビリー。 愛液がじゅんと滲み出るのが分かった。 「ああ…ん…っ、そこ…、だめ…です…。あ…う…っ」 「ダメじゃないよねぇ?嘘は良くないよ…?」 ビリーはやはり、相当研究してきたのだろう、恥ずかしさの欠片も見せずに、いやらしい言葉でティエリアを責め始めた。 「ここだよねぇ…?君の一番気持ちいい所は…」 耳元で囁きながら、ビリーが2本の指を連ねて、ティエリアの膣口を小刻みに揺らした。 男性器の直截的な快感とはまた違う、体の真芯を衝かれる様な快感。 「は…、あ…ん…、あ…あぁ…、そ、そ…こ…は、…ぁ…あ…っ」 その間も、男性器と乳首に与えられる快感が止む事はない。 「なるほど、たいした少年だな、カタギリ」 「そうだろう…?でも僕の旧友から預かった大事な子なんだからね。  決して乱暴には扱わないでくれよ、グラハム」 「それは、この少年次第だな…!」 「あ…!ああ…っ!!」 グラハムの指遣いが更に激しくなった。 さすがに、グラハムはペニスの扱いを知り尽くしている。 まだズボンと下着の中に収まっているにも関わらず、 グラハムの指はまるで生のそれを愛撫しているかのような正確さで、纏わり付いてくるのだった。 前後から二人の大人の男の上がった息が素肌に当たり、体がどんどん熱くなっていく。 ティエリアは自分が快感を貪る、ただの物体であるかのような錯覚に陥りそうだった。 おもらしかと疑うほどの量の愛液が流れ出るほど、気持ち良くなってしまった。 「うん、わかるよ…。ズボンの上からでも、君のここがしっとりと濡れてるのが…。もう脱ぎたいかい…?」 「ふあ…あっ、ああ…ん…っ…、は…はい…、もう我…慢できま…せん…」 ビリーの問い掛けに、素直に答えた。 本当に体は爆発寸前で、トラップの事などもうどこかへ飛んで行ってしまっていた。 もっとも後で考えると、ここでこの行為に夢中になれたからこそ、この後グラハムにも余計な詮索をされずに済んだのかも知れなかった。 「いいよ…、さあ…、裸になろうね…。君の美しい姿を全部、グラハムにも見てもらおうね…」 ビリーは子供をあやすように言って、後ろから手を伸ばし、ティエリアのシャツを全て剥ぎ取った。 ほんのりと赤く染まった白い肌が、グラハムの眼前に晒された。 その乳首も指の長い責めを受けて充血し、目視で分かるほど硬く膨らんでいる。 グラハムの目が血走る。 「ふう…っ!少年、少年…!!」 「ひあ…っ、ああっ、大…尉…!」 グラハムがいきなり乳首に吸い付き、そこを舌先でくりくりと転がした。 乳首を舐め回されているだけなのに、信じられないほどに全身が気持ちいい。 その下に控える心臓そのものを愛撫されているかのようだった。 「さあ、下も脱ごうね。いい子だね」 ビリーがティエリアのズボンのベルトに指を掛け、カチャカチャ言わしていたかと思うと あっという間にズボンが脱がされ、下着一枚になっていた。 グラハムの手の平に、ティエリアの勃起したそこが何度も押し付けるように当たる。 グラハムはティエリアの体に舌を這わせながら、ずるずると下りて行き、やがて股間の前に座り、そこを仰いだ。 ビリーがティエリアから離れ、今度は少し距離を取って斜め前に立った。 いよいよ観察に専念するつもりらしいが、今のティエリアに恥じ入る気持ちなど起こりもしなかった。 「少年、他人の奉仕で達した事はまだないのだろう…、そうだな?」 グラハムが断固とした口調で訊いてくる。 グラハムとしても、これほどの美少年が既に誰かに汚されているのは我慢ならないのだった。 ティエリアは昨日のビリーとの行為をふと思い出したが、グラハムの言葉に即してみても、決して嘘はない。 こくんと頷くと、グラハムが喜び勇んで下着の盛り上がった所に唇を寄せた。 「は…あっ…!」 下着越しながら、ペニスを口全体に含まれ、舌が押し付けられる。 唾液混じりの熱い舌の感触は、本当に初めての快感だった。 思わず押し付けるようにティエリアの腰が動き出し、快感に混乱してグラハムの髪を必死で掴んだ。 「それでいいんだよ…。好きにしてごらん…」 ビリーの呟きがどこからともなく聞えて来る。 グラハムが舌を見せ付けるように伸ばしてそこを責めながら、下から探るように見上げてくる。 目が合うと、心臓が飛び跳ねて、快感が大きくなった。 「少年、どうだ、私は…?」 聞きながら、グラハムは指の責めをも加え、全体を圧迫するように刺激した。 「あ…あ…、最…高…です…ぅ…、…あ…ぅ…、何か…が、出…てしまい…そうで…す…」 グラハムの舌が動く度に、ぬちゃぬちゃといやらしい音が響く。 本当に、ティエリアに限界が迫っていた。 「そうか」 グラハムは悦に入って満足げに頷き、遂に下着に手を掛けた。 「少年、私は見たい…!君の達する所を…!まさに私の行為で!」 「あっ…!!」 グラハムが一気に下着をずり下ろした。 張り付いていた先端が下着から外れる時にびりっと快感が走り、ティエリアは堪らず身震いした。 もう隠し様もなく、勃起し尽くした男根がグラハムの目の前に現れた。 赤く膨らんだ先端からはひっきりなしに先走りの粘液が滴り、微かに男の匂いを発散している。 それでも、あくまでも白い陰茎に浮き出た血管は、どこまでも青白く美しいのだった。 少年と言う事を差し引いてもなお、美しすぎるティエリアの男性器に、 グラハムだけでなくビリーまでもが改めて感嘆の溜息を漏らした。 「少年…!君はなんと美しいのだ…!」 グラハムが芸術品を扱うかのような繊細さで指を伸ばし、根元から先端まで人指し指をゆっくりと這わした。 「あ…!ああ…っ!」 びくんと勃起がしなり、またしても粘液が迸る。 「少年…!私の指で、達するがいい…!」 グラハムは興奮を抑えきれずに叫び、ティエリアの男性器の竿部分を利き腕である左手でぐいっと握り締めた。 軽い痛みが走ったが、すぐに勢いよく扱かれ出すとあっという間に快感のみが満ちた。 「ああ…っ、ああ…っ、エ、エーカー…っ、ああ…っ!」 がくがくと腰が揺れ、膝が笑い出す。その腰をグラハムが支えてくれた。 扱く速度が一層速くなる。体の奥から熱いものが押し寄せてくるのを感じた。 「少年、分かるぞ、君の血潮が…!熱い塊が湧き出してくるのが…!さあ、全てを吐き出せ…!君の欲を私に見せるのだ…!!」 「ひあ…、ああ…っ、き、来ま…す…!も…ダメ…、あぁぁぁ…っっ!!」 ティエリアはグラハムの手の中に熱い精を放ち、同時に崩れ落ちた。 「う…ふ…ぅぅ…」 だらしなく座り込み、疲労感と満足感の余韻の中にいるティエリアを横目に捉えつつ、 グラハムは己の手を汚す、その白濁をじっくりと眺めた。 CBとの戦闘が続いたせいでここ数ヶ月、セックスに満足な時間を費やせなかった彼にとって、 天上人を思わすほどの美貌の少年とのたった今の行為は、まさに神からのプレゼントのように思えた。 まだ温かい白濁を、ぺろりと舐めてみる。 (ふうう…。この味はまさしく…懐かしい…あの時の…) グラハムは幼い頃に親の目を盗んで初めて味わった、葡萄酒の事を思い出していた。 禁断の、甘美な世界に触れる興奮…。 ティエリアは、グラハムに少年時代のささやかな秘め事を思い出させたのだった。 「グラハム…」 もう、満足したかい?というニュアンスを多分に交えて、ビリーが声を掛けてきたが、 グラハムの猛った下半身はこんなもので治まる筈がなかった。 「カタギリ。私は彼と繋がりたい。異存はないな?」 「あ、ああ…。彼が了承するなら、僕は別に構わないよ…」 「そうか。それで、君はどうなのだ」 「僕かい?僕は…」 ビリーはちらりとティエリアを見た。 ティエリアの、艶かしささえ漂う細い肢体は確かに欲情を誘うものだった。 それでもやはり、クジョウの影が脳裏をちらついて離れない。 軽く溜息を吐き、落ち着いた口調でグラハムに向き直る。 「僕は、そのつもりはないよ」 「フン…。後悔するなよ」 二人の会話をぼんやりと聞きながら、ティエリアはビリーとスメラギの間に横たわる絆と、そして溝を思った。 それは強く、複雑で、決して自分には触れる事の出来ないものなのだろう。 もしかするとスメラギはビリーとの絆を失いたくないが為に、危険を見越してまでも自分を寄越したのかもしれない。 もしくはビリーの気持ちを確かめるために? いやむしろビリーに忘れて欲しいから? 他の場所、例えば人革の誰かの依頼なら、スメラギは志願を受け入れただろうか…? ビリーの良く知った「クジョウくん」は、今や世界中で恐れられるテロリスト集団の戦術予報士なのだから…。 考えれば考えるほど、ティエリアにとってその感情は複雑で理解しがたく、だからこそ物悲しく思われてならない。 何故だか分からないが、ひとりでに涙が滲んでくる。 少なくとも情報収集の目的がどこかへ弾け飛んでしまうほど、理性と感情が混乱してしまったのだった。 「少年。泣くな。そんなに嫌なら、何もしない」 グラハムの声がすぐ近くで聞えて、はっと顔を上げる。 床に座り込んだままで、随分涙を流してしまっていたらしく、涙の味が口中に広がった。 「別に…、いやでは…ありませ…」 グラハムが心配そうな目で、じっと顔を見つめてくる。 ビリーの言った通り、グラハムは優しい男のようだった。 「本当か?」 「はい…」 ビリーとクジョウのような感情を、自分も持ちたいと思った。 それが叶うのなら、目の前にいるグラハムとでも、一向に構わない。 一方で、頭の中のまだ冷静な部分は、そんな事はお前には不可能だ、きちんと自分の為すべきことを為せと命令してくるのだった。 いずれにしても、ティエリアはグラハムの心にもっと深く食い込まねばならなかった。 「来て下さい…。エーカー上級大尉どの…」 グラハムの首に腕を回し、そっとキスをする。グラハムの緑の瞳に、自分の姿が映る。 濡れた瞳を瞬かせるティエリアは、余りに儚げだった。 グラハムが堪えきれずにティエリアを押し倒す。 軍服のベルトを乱暴に外し、ズボンから勃起だけを取り出した。 とても、同じ様に全裸になってじっくりと愛を交わすほどの余裕は、グラハムにはなかったのだ。 「行くぞ…!少年…!」 しかしティエリアの足首を掴み、左右に大きく広げた瞬間、グラハムはその中心に居座る女芯を見てしまった。 「ああ……」 落胆の溜息が漏れる。全身脱力してしまう。猛っていた勃起がどんどん萎えてしまう…。 グラハムは両性具有の事を、すっかり忘れていた。 (この少年は、男だ。女などでは断じてない。その証拠に、きちんと付いているではないか) こんな事位で世紀の美少年との猥いを中断したくなどない。見ないようにすればいいのだ。 グラハムはティエリアの男性器のみを視界に入れるべく努力した。 しかし、その先にある愛液滴る女性器から、どうしても目を背ける事が出来ない。 グラハムは細胞の隅々に至るまで、どう頑張っても同性愛者だった。 男根を求め、濡れてひくつく女性器を見てしまった以上、 何とか気持ちを維持しようと頑張ってみても、萎えた勃起が復活する兆しはなかった。 「ぐ…」 グラハムが低く呻く。 挑めない事は明らかだったが、今ティエリアから離れるのは余りに酷に思われた。 一方のティエリアは萎んでいくグラハムの欲を目の当たりにして、ほとんど呆然自失状態だった。 自分の体が男を萎えさせてしまったのだ。 ビリーどころか、グラハムとて自分なら必ず落とせると思い込んでいた、その矜持が粉々に砕け散ってしまった。 悔しくてまた涙が溢れてくる。感情のコントロールがどうやっても利かない。 「あ、ああ、二人とも、駄目だなあ」 気まずい雰囲気を察して、ビリーが横槍を入れてきた。 「君、気にしちゃいけないよ?グラハムは完全なゲイだからこんなザマなだけで、決して君のせいじゃないからね?」 そうティエリアに優しく言って、続いてグラハムを咎めるように見る。 「グラハム…。彼の体の事は話しておいたのに…」 「む…。す、すまん…。すっかり忘れていた…。我ながら何と言う失態…」 グラハムがすごすごと引き下がろうとするのを、ビリーが引き止めた。 「まだだよ。これでは彼が余りにかわいそうだ」 昨日逃げ帰った事がよほど気になっていたのか、今日のビリーはやたらとティエリアの心情への配慮が目立つ。 「グラハム…、彼を彼のままで見てごらんよ…。ほら、とても綺麗じゃないか…」 「むぅ……」 ビリーが広げられたままのティエリアの脚の間を覗き込み、グラハムにも促した。 本能的な嫌悪感を感じながらも、グラハムもまた、同じようにそこを凝視する。 二人の視線に晒されて、ティエリアのそこがじゅんと熱くなる。 さっきまで泣いていたのに、恥ずかしいような、心地いいような不思議な気分が満ちてくる。 「いい子だねぇ、見られてるのが分かってるんだ…?すごく濡れているよ…。素晴らしいねぇ」 ビリーのねっとりとした口調が、言葉だけでそこを解していく。 同じくして、一度達した男性器の方もまた、硬くそそり立っていくのだった。 「そうだ…、君は二つの性を融合して初めて君なんだ。気に病む事はない…。  誰よりも素晴らしい身体を持っているのだからね…」 ビリーは羨望のまなざしをティエリアに向けた。 科学者であるビリーにとって、ティエリアの体は本当に不可思議で、神秘的な香りに満ちていた。 ビリーの指がゆっくりと伸びてくる。 膣口を両方の指で押し広げると、中の肉が真っ赤な顔を覗かせた。 さすがにティエリアは体の奥を覗かれる恥ずかしさで、目を閉じずにいられなかった。 それなのに、二人の食い入るような視線を感じて、愛液がどんどん溢れ出してしまうのだ。 「ほら、グラハム…、分かるだろう?彼は君に触って欲しがっているんだ…。触ってごらんよ」 「う、うむ…」 じっくり見た事で、幾分嫌悪感も落ちついたグラハムが、そろそろと指を伸ばした。 グラハムが女性器を触るのは、これが初めての体験だった。 「……っ!」 指が膣口に触れた瞬間、ティエリアが声にならない声を上げて腰を震わした。 グラハムはティエリアの歪む顔を見つめながら、男だとか女だとか言う事はあえて考えないように努力した。 「そう、中に進んでごらん…」 ビリーの指示に従って、指を中へとゆっくりと挿入していく。 熱い肉壁はしっとりと濡れて、グラハムの指を柔らかく包んだ。 グラハムがいつも弄っている、男のアナルとはまるで違う感触だ。 ─女性器…。膣…。 考えまいとしてもどうしても感じてしまう悪寒を振り払いながら、 指をどうにか半分程度まで埋め込み、中をほじるように動かしてみる。 「あ…っ…、く…っ…、う…ぅ…っ」 すぐにティエリアが甘い声を上げて、床に爪を立てた。 指が出入りするごとに、ティエリアの膣内で快感が増幅していく。 「そうだね…、気持ちいいねぇ…」 ビリーが代弁者のように言った。 グラハムの指の抜き差しがどんどん速くなって行き、ティエリアの喘ぎもまた、比例して大きく激しくなっていく。 そして膣内の快感が深まると同時に、むくむくと勃ち上がって行く男性器。 「ははっ、見てごらんよ、グラハム」 ビリーが嬉しそうに言って、ティエリアの再び勃起したペニスを提示した。 グラハムはそそり立ったそれを見て、再び滾ってきたらしい。 指の動きが一段と激しくなり、じゅくじゅくと粘っこい音が響き続けた。 「あ…!ああ…っ!ああ…っ!」 その頃には、ティエリアの声は切羽詰ったものへと変わっていた。 体の芯に、射精感とはまた違った波が押し寄せて来るのを感じる。 ビリーがその様子に目を細めて見入った。 「いやいや、すごいねぇ、君は…。でも、もっと凄い快感があると思うんだ。それを、今日はたっぷりあげるからね」 ビリーはティエリアの膣内を往復する、グラハムの指の傍に自分の指をあてがい、溢れ出た愛液を軽く掬った。 軽く掬っただけなのに、ビリーの中指の先には愛液がたっぷりと付着した。 それをしっかりと確認してから、ビリーはティエリアのペニスの先端へと、その指を伸ばした。 「さあ、もっと気持ちよくなろうね。誰も邪魔はしないからね」 「ひ…っ、あ…っ…、ああっ…!!」 ビリーの中指がいきなりティエリアの男性器の一番敏感な場所…、鈴口を擦った。 強烈な刺激は快感を通り越してほとんど痛みのようだったが、すぐにそれは極上の快感へと変化した。 グラハムが羨ましそうにビリーを見る。 まるでその役目は自分のものだ、とでも言いたげな表情だったが、ビリーは涼やかな顔でティエリアの勃起を責め続けた。 「ああっ、ああっ、ああっっ!!」 ビリーの指が先端を擦ると同時に、グラハムが女性器の奥深くまで、指を勢いよく突き入れる。 今までとは段違いの激しい快感で何も考えられず、ティエリアはただ大声で喘ぎ続けた。 やがてグラハムの指が、彼が他の男にいつもやっている、前立腺をほぐすような、掻き出すような動きに変わった。 「ああんっっ!!そ、そこ…っ!」 ティエリアが思わず腰を跳ね上げた。 グラハムの指が当たった所、そこは女性器の一番感度の強い所、Gスポットだった。 「少年、ここか…!?」 「んんっ…!は……っ、ああ…んっ!!あぁぁん…っ!!」 グラハムはもう、指を突き入れているこの場所が、彼が本来嫌悪すべき女性器だという事実を忘れきっていた。 代わりに、ただティエリアに快感を与える事にのみ集中した。 ティエリアは既に返事の出来る状態ではなかったが、その反応で、そこがティエリアの一番の泣き所なのを悟り、 グラハムはそこばかりを集中的に強く擦った。 「すごいねえ、僕も頑張らなくちゃねえ」 「くうぅっっ!!」 ビリーの声がどこか遠くで聞えたかと思うと、ペニスに与えられる快感が急に強まって、ティエリアは悶絶した。 何とか目を開けてみると、何とビリーは先端を右手で擦りながら、左手で勃起全体を扱き上げているのだった。 まさかこんな快感がこの世にあるのだとは信じられないほど、ティエリアは全身で二人の愛撫を受け止めた。 「も…、もう…っ、だ…め…です…ぅ…っ!限…界…ひ…っ、あっ…、あああっっっ!!!」 何かが押し寄せてくると思った次の瞬間、一秒の我慢も利かずにティエリアは大声で叫び、 大きく体を仰け反らせて、精液と愛液を外へと派手に吐き出した。 同時に、絶頂の瞬間を見計らったようにビリーとグラハムの指の動きがぴたりと止まり…、 続いてティエリアの腹に、生温かい何かが噴きかけられた。 空ろな目で腹を見やると、そこには白い液体が大量に撒き散らしてあり、その向こうでバツの悪そうなグラハムの顔が見えた。 「満足したのですか…。僕…、で…」 ほぼ無意識でそう呟くと、グラハムはくしゃりと顔を歪めてティエリアの頬にそっと手を沿わせ、 「私の人生で、これほど興奮した事は未だかつてないよ。少年…」そう言って、髪を優しく撫でてくれたのだった。 そのままビリーの寝室で寝入ってしまった翌朝早く、予想外な事が起きた。 期日まで数日を残して、ティエリアに帰艦命令─表立っては引き上げ命令─が下ったのだ。 クジョウの勤務先の会社の支社が、急な人材不足に陥ったからだというのがその表向きの理由だったが、 実の所はトリニティ関連で新たな動きがあり、どうしてもヴァーチェの出陣が必要となったのだ。 「ごめんね、まだ任期が残っているのに…」 電話口のスメラギは申し訳なさそうに言ったが、それよりもティエリアの方が気が重かった。 「まだたいした情報を得られていません」 「構わないわ。こちらの都合での急な引き上げ命令だもの。早く、帰っていらっしゃい」 スメラギはティエリアの潜入失敗の可能性など、露ほども感じていないかのように言った。 旧友に可愛い弟か妹を預けていただけだもの。そういう口調であった。 今回の潜入は無駄足と言っていいほどの出来で、本来ならもっと後悔が先立つはずなのに、 何故突然の帰艦命令に安心してしまうのか…。 いくら考えてみても、この時のティエリアには、その答えは見出せなかった。 スメラギがビリーに電話でお礼を言っている間に手早く、ティエリアは荷物を纏めた。 「………」 ドア付近にもたれて、無言でティエリアを見ていたグラハムが、静かに踵を返して部屋を出て行った。 その後姿を見送った後、スメラギと話せて嬉しそうなビリーの背中を眺めていると、急にティエリアに寂しさが押し寄せた。 「うん、うん…。いいや、彼は本当によくやってくれたよ。また機会があれば是非来てもらいたいよ。  なんなら正規採用でもいい位だ…。はは、そうだね。じゃあ、また近いうちに会おう」 ビリーが通話を終えてかちゃりと受話器を置く。 しっかりしろ、お前はマイスターだろう、と自分に言い聞かせて、ティエリアは勢いよく立ち上がった。 「で、どうやって帰るんだい?人革連の上海だよね?」 「空港から飛行機に乗れば問題ありません。短い間でしたが、お世話になりました」 「そうか…。寂しくなるねぇ…」 早朝、基地のエントランスで、僅かばかりの荷物の入ったボストンを提げたティエリアに、 ビリーは社交辞令ではなく、実に寂しそうに別れを告げていた。 グラハムはあれから一度も姿を見せていない。 「また、いつでも寄ってくれればいいからね?僕かグラハムの名前を出せば、パスはきちんと通れるように手配しておくからね」 「……」 どこまでも人のいいビリーに、心が痛む。 この痛みが手ぶらで帰らざるを得ない自分への失望だけではない事は、既にはっきりしていた。 「そうだ。これを返しておくよ。君の検査結果の全てだ。  君の身体は医学的な見地から、何ら業務に差し障るものではない。その診断書も書いておいたからね。  まああえて言うなら、どちらの性に立つにしても、君は生殖能力は低いようだ。  でも、そんな事はたいした問題じゃない。子供を持ちたいと思うのなら、色々な技術が確立しているから、安心しなさい」 「…ありがとうございます」 敵の情報ではなく、自分のデータなぞを持って帰らざるを得ない今の状態は失態以外の何者でもなかっただろうが、 ティエリアは今は何も考えたくはなかった。 「…それと、これをクジョウ君に渡してもらいたい。頼めるかな…?」 ビリーは白衣のポケットから小さい箱を二つ、取り出した。 「……?」 訝しげなティエリアに、ビリーは少し恥ずかしそうに頭を掻いて説明した。 「こっちはアクセサリーなんだ。彼女、誕生日が近いから、そのプレゼントにね…。それとこっちは…」 ビリーが声を潜めて、ティエリアの傍に近寄った。 「メモリースティックだ。エイフマン教授のPCに残っていたデータを纏めておいた。  破損が酷かったから、全てではないけどね…。でも、あのテロが教授を狙ったものである事はほぼ間違いない。  このデータに、その鍵が残されているかもしれない。クジョウ君に、そう伝えてくれ」 ああ、この男は一体どこまで愚かなのだろう。何故そんなに人を信じる事が出来るのか。 仮にも軍属の癖に…。 「…分かりました。必ず、届けます」 ビリーの愚かしさを歯がゆく思いながらも、ティエリアはそう答えた。 「ああ、それと、これ」 まだ何かあるのか…? 踵を返しかけたティエリアに、ビリーが今度は逆のポケットから四角い箱を取り出した。 「これは、君へのプレゼントだよ。システム手帳だ。就職祝いにね。  何がいいか良く分からなかったから、こんなものにしてしまったけど、最新のOS搭載の優れものだよ。良かったら使ってくれ」 「……っ」 人の善い笑顔で自分へのプレゼントを差し出すビリーに、スパイである自分の身の上がとてつもなく申し訳なく思えて、 ティエリアは俯いてきつく唇を噛み締めた。 「き、君…?大丈夫、またいつでも来たらいいんだからね?」 あなたは愚かすぎる…! そう言って殴ってでもやりたかったが、そんな事を出来るはずもない。 余計な詮索をされないよう、立つ鳥跡を濁さずの如く、さりげなく去らねばならない。 「…お世話になりました」 「あ…、ああ…。全く、グラハムは何をしてるんだろうねぇ?」 「エーカー上級大尉にもよろしくお伝えください…」 そう呟いて、ビリーから離れ、今度こそ去ろうとしたその時─ 朝の静寂を切り裂いて、MSの飛行音が基地に響き渡った。 驚いてティエリアとビリーが振り向いた先に、見慣れない一機のフラッグが突如現れた。 「な…!!」 (フラッグ…!?新型か…!!?) マイスターの習性で思わず身構えてしまう。 幸いビリーはティエリアの戦闘態勢には気付く事はなかった。 「カスタムフラッグ…。参ったなあ、まだ整備は完全ではないのに…。グラハム…」 ビリーが呟くと同時に、フラッグが二人の目の前に迫り、やがて威風堂々と降り立った。 装甲、武装、そして機動性─。 一目見ただけでも今までのフラッグとは違う、高性能を有しているのが分かる。 メモリースティック入手に加え、これを見られただけでも、今回のスパイ作戦は成功と言っていいかもしれなかった。 立ち上った砂煙に髪を抑えながら、ティエリアがフラッグを見上げると、すぐにキュイインと音がしてコックピットが開いた。 しかし、グラハムが降りてくる様子は全くない。 代わりに、フラッグの左手がティエリアの目前に下ろされた。 「グラハム…」 しょうがないなあ、という感じで首を振るビリーに言い訳するように、グラハムの拡張された声が響いた。 『カタギリ!カスタムフラッグの性能実験だ。構わないな?』 「やれやれ…。彼は、君を送っていくつもりらしいよ。まあ、空港までなら問題ないだろう」 肩を竦めてティエリアを見やり、ビリーはすぐにOKサインを出した。 「し、しかし…」 「気にしないでいいよ。グラハムは言い出すと聞かない男だ。それに、バスを使うより遥かに早く空港に着ける…。  君とは色々あったからね。甘えてくれて、構わない」 ビリーはティエリアに辞退の余地を与えるつもりはないかのように、素早くボストンを掴むと 地面に置かれたフラッグの手の平にそれを置き、続いてティエリアの肩を抱いて強引にその上へと乗せた。 言いなりになっている内に、フラッグの左手が地面を離れ、下で手を振るビリーの姿がどんどん小さくなっていった。 カスタムフラッグのコックピット内は、ヴァーチェのそれより格段に狭く作られていた。 説明を聞くに、ガンダムに対抗するべく作られたこの機体は、最大出力と速度をアップさせる代わりに 機体の装甲を可能なまでに軽くし、余計な回路までをも省いているそうだ。 ティエリアが一見しただけでも、この機体がGNエネルギー以外の部分では既にガンダムに肉薄している事が窺い知れた。 改めて開発者のレイフ・エイフマン、そしてビリー・カタギリの力量が分かるという物だ。 そして、ユニオンのパイロットスーツに身を包み、エースとしての風格漂うこのグラハム・エーカー…。 狭い空間では立つ場所さえ確保できず、ティエリアはグラハムの膝の上に乗っかる形で同乗していた。 眼前ではアメリカの都市群がどこまでも見渡せる。 「では、発進する」 グラハムが少しレバーを引いただけで、ヴァーチェの数倍のGが体にかかって来た。 安全機能を度外視したのは、グラハム自身の意向であるらしい。 この程度の保護機能で、ガンダムとフルパワーで戦ったら、多大な負荷で臓器がやられてしまうだろう。 この機体を少し見ただけでも、グラハム達オーバーフラッグスの覚悟が伝わってくる。 いつかこの男と戦場であいまみえる事になるのか…? ティエリアの心がざわめき立った。 「苦しいだろう、少年。済まないな。  乗り心地は、最悪と言っていいだろう。それでも、君ともう少し話していたかったのだよ、私は。  民間人に機密事項を見せるとは、何と愚かな男だと思うだろうな」 「い、いいえ…。MSに乗れる機会など…、一生に一度あるかないか…ですか…ら…っ」 グラハムの言った通り、ティエリアの呼吸は圧迫感で乱れた。 それほどの速度ではないとは言え、私服のティエリアには一切軽減されないGがかかり続けている。 背中から操縦棹へと伸ばされたグラハムの左腕を掴むと、グラハムの右腕が守るようにティエリアの体に回された。 「少年。時間は無限ではない。だから私は素直な気持ちを話しておこうと思う」 グラハムが少し声を落として真剣な口調になったので、ティエリアも息を潜めて聞き入った。 「カタギリが昨夜私を呼んだのは、彼が想っている女性への言い訳のためだ。  君と交渉したのはあくまで私で、カタギリ自身は何の裏切りもないのだと、そう思いたがっていたのだろう。  もっともそれは詭弁でしかないのだが」 …そんな事は分かっています。そう思ったが、ティエリアは黙って話を聞く事にした。 「だがな、少年。私は違う…!」 急にグラハムの様子が変わり、ティエリアの腹に回された腕に力が込められ、きつく抱き締められた。 「わずか数ヶ月の間に2つの存在に心を奪われるとは思ってもいなかった…!  一つはそう、君だ。君は私に愛を教えてくれた…!そうとも、たった一晩だけでも、だ。  私の心にいつも住み付いて離れない、あのガンダムのように…!」 その単語を聞いた時、ティエリアに身を切られるような痛みが走った。 「僕は僕です…!何かの替わりではありません…!」 思わずそう言った。ガンダムと自分の同一視など、冗談ではない。グラハムの思いは危険すぎる。 「分かっているさ、少年!それでも、私は…!」 「もういいんです。何も考えないで…、何も言わないで下さい」 「しょ、少年…」 ティエリアはグラハムの膝の上でくるりと体を返し、彼と向き合った。 ヘルメットの中のグラハムの瞳が、困惑して揺らめいている。 「喋らないで下さい…。操縦に、集中して…」 そう言って、ティエリアは体を屈めていった。 足や尻に背後のコントロールパネルがごつごつと当たる。 苦しい体勢で何とか体を折り曲げると、昨晩グラハムが自分にしてくれたように、彼の股間へと唇を寄せた。 昨日の行為を思い出しながら、パイスーの上から、それを口に含む。 グラハムが低く呻く。 布越しとは言え、決して歯を立てないように気を付けて、ティエリアはゆっくりと唇を動かした。 髪を掴まれたかと思うと、グラハムの感じるペースを伝えるように、顔をぐいぐいと押し付けられた。 すぐにグラハムのそこが硬く勃ち上がり、その息が急速に乱れていくのが分かった。 そしてティエリアの息もまた、欲情めいた色合いが強くなり、 他人のものを愛しているだけなのにも関わらず、下半身が火照っていくのだった。 「脱いで…、脱いでください…」 グラハムの体のあちこちを乱雑に触り、パイスーのジッパーを探した。 その焦った手付きが、グラハムを一層昂ぶらせる。 「ここだ…!少年!」 グラハムがティエリアの腕をジッパーに導いた。 ティエリアは熱に浮かされたように無心でそれを下ろし、パイスーをどんどん脱がしていった。 アンダーシャツの上から、グラハムの鼓動を確かめるように抱き付き、心臓に耳を押し当てる。 早鐘を打つグラハムの鼓動と共に、ティエリアの鼓動もまた、早まっていく。 グラハムの男根が飛び出すと、狭い空間に逞しい雄の匂いが満ちた。 同じものを持っていながら、ティエリアにはそれほどの雄雄しさは備わっていない。 不完全な自分を改めて思い知ったが、今この場でしたい事は自己憐憫でも自己嫌悪でもない。 日の光に惜しげもなく照らされ、堂々とそそり立つそれに、迷いなく舌を押し付けた。 誰に教えられたわけでもないのに、体が自然に動く。 裏筋に舌を這わすと、グラハムの低い喘ぎと共にびくりと勃起が震えた。 先端を含み、舌で優しく周囲をなぞる。 つたない動きには違いなかっただろうが、それ故の官能的な空気がコックピットに立ち込めた。 「少年…、少年…」 ティエリアの唾液がペニスを伝い落ちていく。 うわ言のように呟きながら、ティエリアの髪を掴むグラハムの腕に、力が入った。 「少年…、私は…、君と…」 グラハムにみなまで言わせる事無く、ティエリアは了承の意味を込めて、自分のズボンと下着を下ろした。 そうする事に、何らためらいを感じなかった。 ティエリアの勃起したそれが露わになった瞬間、グラハムがそれを握り締め、上下に扱き上げてくれた。 間違いなく癖になりそうな、抗えない甘美な感覚がそこに走る。 「は…あ…んっ…、いけ…ません…っ、そ…んな事…っ、今は…あな…たが…っ」 「気にするな…。お返しだ」 グラハムの肩に必死でしがみ付いて愛撫を受けていると、女性器からもじわじわと愛液が滴り、じっとりと太ももを伝って落ちていく。 体が密着しているせいで、グラハムの太ももにまでそれが飛び散った。 グラハムはそれを快く思うまい。 何とか止めようとしても、それは無駄な試みでしかなかった。 「ん…っ、すい…ません、この…体は…、どうしても僕…の意志で…は…」 「構わんと言っている…!少年!私は男しか愛せない。しかし、男なら誰でもいいと言うわけでない…!  ただ一個体として、その人間がそこにいれば、それで良いのだ…!」 グラハムは怒ったように言い、自分の太ももに散るティエリアの愛液を掬い、指先になすりつけた。 「昨夜の君は本当に素晴らしかった…!そして今日の君もだ…!私には、それだけで良いのだ!」 「あ…、ああっっ…!!」 ティエリアの膣に、グラハムの指が勢いよく突き入れられた。 昨日の行為でコツを掴んだのか、指は滑らかに中を突き抜けていく。 同時に男性器の攻めも継続されているのだから、堪らない。 操縦主を失ったフラッグが、惰性でゆっくりと飛行を続けた。 「あぁんっ…、ああっ…、ちょ…まっ…て…、ああっ…、ああっっ!」 「いいや、待たん…!待つものか…!これほどの体を前にして、我慢など出来るわけがない…!」 コックピットが狭すぎるせいで、距離を取って落ち着きたくても、それが出来ない。 勃起し尽くしたティエリアのペニスがグラハムの腹に何度も当たり、否が応にも先端が刺激されてしまう。 ティエリアの火照った体は、あっという間に限界に近づいた。 「ああんっ!大尉ぃ…っ!来ま…す…ぅ!あ…れがぁ…っ!」 「むう…っ、ならば…!!」 ティエリアが絶頂が近い事を告げると、グラハムは膣から指を抜き去った。 間髪入れずに、グラハムが勃起を膣口へと押し付ける。 「え…?そ、そこでいいのですか…?」 昨日女性器を目の当たりにして、萎えてしまったグラハムだ。 てっきり、結合するとしても後ろでだと、ティエリアは思っていた。 「ここで構わん!ここも君の一部だろう…!少年!私はもはや、昨日の私ではないっ…!」 「で、でも…、く…っ、…あ…ああ…っっ!!」 会話の余裕さえ与えてもらえずに、グラハムの勃起が埋め込まれていった。 散々濡らされたにも関わらず、破瓜の痛みが容赦なくティエリアを襲う。 「耐えてくれ、少年…!これは、君のような存在なら、誰もが通る痛みなのだ」 「ひ…、あ…、あな…たは…?」 「私は君のはじめての男になれた事を心の底から感謝している…!」 勝手な言い草だったが、ティエリアは素直に嬉しかった。 自分の存在が他人を滾らせる事が、こんなに幸せなものだとは思いもしなかった。 しかし、グラハムが動き出すとそんな幸福感もどこかへ吹っ飛んでしまった。 擦れる度に、そこがしくしくと痛む。 突き上げられる度に内臓が浮き上がる感じで、息も満足に出来ない。 一方のグラハムは、初めて味わう膣内の感触に酔っていた。 それはそうだ。そこは男を受け入れるために存在している場所なのだから。 「これが女性の体というものか…!思ったより、悪くはない…!」 「んぐ…っ、んん…っ、んん…っ!」 グラハムの突き上げで広がる痛みに耐えながら、ティエリアは悲鳴を上げないように必死で我慢した。 グラハムが満足なら、それでいい。そんな気分になるのは何故なのだろう。 ティエリアの苦悶の表情を見て、さすがに心配そうにグラハムが声を掛ける。 「少年、まだ痛むのか…?カタギリが言っていた。  初めての痛みもすぐに薄れ、やがて恍惚のものへと変化すると…」 「わ…、わかりま…せんっ…、ぼ…くは…、普通の女…性では…ない…から…っ」 「少年…、そんな悲しい事を言うな…」 グラハムに愛おしさと憐れみが同時に押し寄せる。 一旦腰の動きを止め、ティエリアが落ち着くのを待った。 「少年。これならいいはずだ」 そう言ってグラハムは動きを止めたままで、まだいきり立つティエリアの勃起を掴んだ。 「あ…ん…っ!」 ティエリアの痛みが一瞬で快感へと変わり、膣内にさっきまではあり得なかった心地よさが広がった。 そしてグラハムがそれを扱き出すと、おかしいほどに体が反応した。 条件反射のように、自動的に腰が上下に動き出したのだ。 グラハムのピストンと違い、僅かな動きでしかなかったが、今度は擦れる度にえもいわれぬ快感が満ちた。 「ふあ…っ、ああっ…、ああんっ…、ああんっ…!」 「様子が変わったな、少年。気持ちいいのか…?言ってみろ」 「は、ああっ…!は…い…、すご…く…いい…です…、あぁっ…!」 「そうか。それでは…」 グラハムが一息入れて、ぐんっと大きく腰を突き入れた。 「ひあああっっ!!」 電流のような快感が全身を駆け抜けた。 そこからはもう、その行為は痛みとは無縁になった。 グラハムの突き上げが一段と早まっていく。 Gのせいか、ティエリアの締め付けの強さは、処女だからという理由だけではないほどだった。 ティエリアもまた、勃起を扱かれ、内部を擦られる快感に夢中になっていた。 この感度と質量は、指とは比べ物にならない。 「少年!分かるぞ…!君の体が私を欲しているのが…!私を捕らえて離さないのが…!」 「ああんっ!は…いぃっっ…!もっと…欲しいですぅ…!もっと……!!」 「いいとも!さあ、私を受け止めろ!!その体全身で!」 グラハムが強烈に突き上げ、ティエリアは彼のヘルメットにしがみ付いて必死で熱を受け入れた。 最早快感しか感じない浮かされた脳に、結合の水音と肉の擦れる音が響いてくる。 「ああんっ!ああんっ!もっと…、もっとぉ…!!僕は…、帰りたく…っ」 「なら私と共にいればいい…!少年!それが出来るのならばっ…!!」 「……っっ、ごめんな…さ…、ああ…んっ…!ごめ……、ああっ…っ!!」 淫らに声を上げながら、硬いヘルメットを抱き締める。 これをも剥ぎ取ってグラハムの呼吸と熱気を感じたかったが、この距離こそが敵同士である二人を体現している気がしたのだった。 やがて、グラハムの射精が近くなった。 体内の感触でそれを感じ取ったティエリアは、なお力を込めてヘルメットを抱き締めた。 自分の息とグラハムの息で、ヘルメットは白く曇り続けている。 グラハムが勃起を引き抜こうとしたのを、ティエリア自身が押し留めた。 グラハムが戸惑って動きを止め、バイザー越しにティエリアの顔を見た。 「いいんです…。ドクターも言っていました…。僕は生殖能力が弱いと…。だから…」 「しかし…」 「あなたの痕跡が欲しいんです…!」 何故そんな事を言ったのか、そんな事が出来たのかはわからない。 だがティエリアは、グラハムの最後に向けて、自分で大きく腰を動かした。 「く…っ、何も…考え…ないで…。あっ…、ああっっ…!!」 射精直前のそれが容赦なくティエリアの中を抉っていく。 ティエリアもまた、絶頂と呼んでいいほどの悦楽を感じていた。 禁忌を犯すような背徳じみた快感が、肉体だけでなく心まで侵すようだった。 「ああっ…!!上…級…大尉…、来て下…さ…、ああんっ…!」 「いくぞ…!少年!!」 「ふああ…っ、あああんんっっ!!」 グラハムの放たれた精液が収まりきれずに漏れ出し、ティエリアの太ももを伝っていった。 ティエリアからも迸った白濁が、それに合流した。 グラハムの熱に集中する余りまるで気付かなかったが、いつの間にかティエリアも達していたのだった。 空港での別れ際、「また必ず会おう」その一言だけを言って、後ろ髪を引かれながらもグラハムは去っていった。 はっきりとした約束を交わせないのは、いつ命を落とすかもしれない、 軍人である彼自身の立場を憂いての事だとは分かっていたが、ティエリアは虚しくて堪らなかった。 もし日時の約束をしていたなら、自分はそこへ行くのだろうか。 もし、グラハムが一緒に来いと手を差し伸べてきたら。 寂しい気持ちを持て余しながら、その後予定通りに、飛行機ではなく軌道エレベーターに向かった。 物思いに沈みながら宇宙に戻ると、ターミナルにアレルヤが迎えに来ていた。 何日ぶりかに仲間の顔を見た瞬間、自分こそがトラップにかかってしまっていた事に気付いて、ティエリアは立ちすくんだ。 ミイラ取りがミイラにならないように、気を付けていたはずなのに、よりによって敵に心を動かされてしまうとは…。 今回は向こうがより愚かだったに過ぎず、次は命取りになるかもしれない。 まだ体内に残ったグラハムの体液がじわりと漏れ出す。己の浅はかさを心底悔いた。 「何か様子がおかしいね、ティエリア?もしかして、地上で何か不測の事態でもあったの?」 アレルヤは一目見ただけで、ティエリアの違和感に気付いてそう問いかけた。 「…いや。何もない」 「ふうん…。なら、いいけどね…」 アレルヤはティエリアの戦利品を確認し、さすがだね、と感心したが、ティエリアにはそうは思えなかった。 払った代償の割には、その成果は小さすぎる気がしたのだ。 「今回は虎の穴への潜入で、みんな心配してたんだよ?無事に帰って来れて、よしとしなきゃね。  さあ、トレミーに戻ろう。すぐに出撃命令が下るはずだ」 「…ああ」 次に戦場で会ったら、誰であろうと容赦はしない。 僕はCBのガンダムマイスター、ティエリア・アーデなのだから…。 アレルヤののんきな声を聞きながら、一人決意を新たにするティエリアだった。                                                                          (終わり)