陽気な日の光は、緑の木々をみずみずしく輝かせ、砂浜と波立つ海面を煌めかせた。 戦争など、まるで関係がないかような穏やかな風景。 しかし、少し強すぎるその光は、刹那の肌を焼いた彼の故郷の太陽の光と似ていた。 窓の外を見つめるティエリアの瞳は真っ直ぐだ。いつも彼は確信に満ちていて揺らぐ事がない。 傍らの刹那は、俯いて我知らず自問を繰り返していた。 神はどこにいる? 迷いは捨てたはずだ。自分がどうすべきかの答えは、もう見つけ出している。だが、ふとした拍子に陥ってしまう。 神はどこにいる? 「必要ない」 心の中での問いに返事がしたので驚いて顔を上げた。無意識に呟いてしまったようだ。 「何を信じるのも、それは個人の自由だ。しかし、我々はヴェーダの指示に従うだけだ。ソレスタルビーイングのために」 迷ったり疑ったりした事などないかのような、強固とした真っ直ぐな声。 あの時、微塵の躊躇いもなく引き金を引いた時、刹那は迷いも疑いも知らなかった。 瞼を閉じた彼は幻のように揺らめいていて、時折魚のように跳ねた。 小さく開いた唇は、声の混じった呼吸に合わせて形を変えた。 紫の髪と紅く色づいた肌が月の光を受けて艶々と照っていた。 刹那は、思わず見蕩れた。 唯一引っかけているシャツも乱れ、その裾から伸びる足の先では、脱いだ形そのままの衣類が散乱していた。 刹那が普段の冷徹な彼と今の目の前の姿を結びつける前に、ティエリアの方が立ち尽くす刹那に気付いて、振り向いた。 「刹那・F・セイエイ……」 名前を呼ばれて我を思い出す。 「すまなかった」とだけ告げると踵を返した。 だが立ち去ろうと足を踏み出した時、後ろから手首を強く掴まれた。 刹那は驚いて立ち止まる。ティエリアは掴んだ手首と反対側の肩にも手を掛け、刹那の背中に擦り寄った。 肩越しに見やると、ティエリアは滾った目をして笑っていた。 「逃がさない」 背中が熱い。首筋に湿った息がかかる。 瞬間的に頬が紅潮し、ズボンの中が疼いた。しかし同時に、これは別人なのではないかと考えた。 刹那が再び立ち尽くした隙にティエリアは手首を掴んだ手を思い切り後ろに引き、その手を投げ払った。刹那は足を縺れさせ、床に尻を打ち付けた。 ティエリアは振り返り様に素早くドアを閉めると、痛みに呻く刹那の股間に這い寄った。 何が起こっているのか理解できないままに刹那が見下ろすと、太腿の間でティエリアは射抜くような目線だけを寄こし、狩人の顔で笑った。股間から尻が脈打っていた。 そして躊躇いもなくズボンに手をかけると刹那の張り始めているペニスを引きずり出した。 刹那は眼を逸らすことが出来なかった。ティエリアもまた、刹那の眼を捕らえたまま、手に持ったペニスをゆっくりと咥えこんでいった。 「……ぅあッ!…」 舌を滑らせながら根元まで咥えると、今度は舐め取るように舌を這わせ口腔で擦った。 蠢く舌と口内の感触が背筋を震わせ、貫いた。涙が滲む。 籠もる熱は全身に広がり、指先まで満ちる。頭の中が侵されていく。気付いた時には精を放っていた。 「なんだ、もうか」 ティエリアはからかうように言い、口元に散った精液を指で拭った。 体を起こし、片腕を刹那の首に回しながら、その指を薄く開いた刹那の唇を割って口の中へ差し入れる。 刹那が顔を歪めると、愉快そうに笑いながら刹那に乗り上がり、自身の股間を刹那のペニスに押しつけた。 濡れそぼった柔らかい肉の感触に、刹那は目を見開く。ぬめったそれは、刹那のものでもティエリアの先端から出ているものでもなかった。 「ティエリア、お前…」 刹那が言い終わらないうちに、ティエリアは刹那の手を取ってボタンを全て肌蹴たシャツの下へと導いた。 豊かな膨らみではないものの、そこには確かに男の筋肉ではない、柔らかみがあった。 だが、下を見れば間違いなく隆起したペニスがある。 「そういうことだ」 見上げると、ティエリアは刹那の頭上越しに何処かを見つめていた。 その声は、刹那の良く知る冷ややかな、他人も自分自身をも突き放すような声音と同じだった。 刹那は無言のまま、形を確かめるようにティエリアの胸を撫でた。 尖った乳首が掌で擦れる度に、ティエリアは短い声を漏らした。 そしてティエリアの体の緩やかな曲線を、掌で下へとなぞっていった。 腹の下へ到達すると、刹那は太腿の付け根をなぞり、そそり立つペニスの下へ指を這わせた。 「んっ……は…ぁっ」 熱く柔らかい肉の形を確かめた後、ぐっしょりと湿った中へと差し込んだ。 「あぁ…!」 水音と甘い吐息が同時に零れる。 細かい肉の壁を指先で押すと、ぬめぬめとした液と肉が絡みついた。 ティエリアの腰の僅な揺れを刹那のペニスは生々しく感じ取った。 「刹那…もっと…」 うわ言のような、熱っぽく夢見心地な声がした。 気付くと、ティエリアは目を閉じて眉根を寄せている。先程までの強気な様子は消えていた。 刹那は更に、普段の冷徹で不遜なティエリアをその姿に重ねた。 刹那は自身の内に、暴力的な感情が湧き上がるのを感じた。 突かれたように刹那はティエリアの体内に指を入れたまま、乱暴に押し倒した。 そして反対の腕をティエリアの太腿に回し、大きく足を広げさせると脈打つペニスを口に含んだ。 「ああッ!…あっあっ!せつ…んぅッ……ハァッ!だめ…!」 ティエリアは身を捩って逃れようとするが、きつく締め付けた腕から引き抜く事は叶わなかった。 二本の指で中を掻き回し、残りの指で性器の付け根を弄くった。同時にティエリアに舐められた感触を思い起こしながら、舌を這わせ、強く吸った。 「ぃああ!ッ…いや!ハッ…あっ!だめぇ!……ぁああっ!」 ティエリアの指が刹那の肩に食い込んだ。 跳ねる体をを押さえ付けながら目線を上げると、ティエリアは仰け反って震えていた。紅く染まった肌の先に、色の濃い乳首が引き攣っているのが見えた。 苦痛にも聞こえる引絞った声を上げているが、表情は見えない。ちらちらと、髪の毛の先が刹那の目に映る。 自身のペニスが硬くなっていくのが分かる。刹那の荒い呼吸に喉が鳴った。沸き立つ感情は全身を焼き、苦しさに息が詰まりそうだった。 程なくして、ティエリアは射精した。予想以上の量と勢いに、刹那はむせた。 咳き込みながら両腕を離したが、ティエリアはぐったりとして動かなかった。 投げ出した両膝を抱えてティエリアの体を押し曲げながら刹那は彼に覆い被さる。 ティエリアはぼんやりと目も口も開けたまま、顔の表面では汗に混じって涙と涎が濡れていた。 刹那はティエリアの顔に張り付いた髪を払い、濡れた面を拭ってやる。ティエリアは表情を変えずに刹那を見た。 ティエリアの腰を浮かせたまま、既に溶けたそこへゆっくりと挿入する。 粘る水音と共に、ひくつく内壁が纏わりつく。ティエリアは蕩けるような嬌声を上げた。 刹那が腰を動かし始めると、ティエリアは溺れる人のように、刹那の首にしがみついた。 「あっ!ああ……んッ…ぅあ!…はぁッ…!」 すぐに動きが速くなり、刹那はティエリアを乱暴に揺すぶる。 ティエリアは両腕に力を込めて必死に縋った。刹那の首元をティエリアの顔が汗で滑った。振り乱される髪が煌めいていた。 「んッ…んッ!あぁっ!…ッあ!ああ!…あ!あっ!」 刹那はくず折れそうなティエリアの太腿を引き寄せ、激しく腰を打ち付けた。 動きに合わせてティエリアの声は高くなり、内部が収縮する。張り詰めた乳首を舌でねぶりながら深く突き立てると首が仰け反った。 刹那が彼を貪る度、ティエリアは刹那を締めつけて腰を揺らめかせた。 「……ッ!」 やがて刹那のペニスが痙攣し、ティエリアから引き抜こうとした時、ティエリアは回した腕の片方を腰へと下ろして、刹那を引き寄せた。 直後にティエリアも白濁とした液を放った。 深く息をつきながら、刹那とティエリアは紅潮し濡れた顔で見合った。 二人はとろりとした感覚の中で口付け、しばらく甘い余韻を味わっていた。 初めから準備していたらしいタオルで表皮に付いた液体だけ拭い取ると、ティエリアは刹那に背を向けて服を纏う。 刹那は露出したペニスもそのままに、仄白い光の中に立つその後ろ姿をぼんやりと眺めていた。 「悪かった」 ティエリアはシャツのボタンを留めながら、背中を向けたまま霧散しそうな掠れた声で言った。 返事はせず、刹那はすっと手を伸ばしてティエリアの手を握った。掌でティエリアと刹那の体温が馴染む。 そのままティエリアを引き寄せると、傍らに座らせた。 まだ頬が紅潮していたが、ティエリアは寄る辺のない子供のような表情で刹那を見た。赤い瞳が潤んでいた。 刹那はティエリアの頬に手を添えると、額に口付けた。刹那の吐息が紫の髪を静かに揺らす。 ティエリアは刹那の手を握り返すと、彼の大きくはない肩にもたれた。 そして、安心しきった幼子のような寝息を立て始めた。 おわり