プトレマイオスからいくばくか離れた、とある宙域。 トリニティの母艦はラグナからの指令を待ちつつ、航行を続けていた。 初めてプトレマイオスに顔見せに参じてから、急に出撃命令が増えたものの、 とりあえずここ3日ほどは指令は入っておらず、小休止の様相ではあったが、 緊急命令に対応するため、トリニティには母艦に留まる事が義務付けられていた。 ヨハンはいつも通り、真面目にミッションプランの構築に勤しんでいる。 ミハエルとも遊び飽きたネーナは、退屈を持て余していた。 「ん〜…。退屈だなぁ…。ミッションもダルいけどぉ…  やっぱヒマなのよりは、暴れる方がマシだよねぇ…」 ふぁ〜あと大きく欠伸をして、自室のベッドに倒れこんだ。 「寝よっかな…」 ふと横を向いた視線に飛び込んできたのは、備え付けのテレビ。 「そうだ♪もっかいやろっかな♪こういう時のために、あれ撮ったんだもんね…♪」 ごそごそとテーブルの引き出しを探り、お目当てのメモリーカードを引っ張り出した。 セットすると、すぐに例の映像がテレビに映し出された。 映像は、トレミーのヴェーダのデータルームで、ティエリアがネーナにリンクされて意識不明に陥る所から始まっている。 「これこれ♪」 素早く下着を下ろし、ベッド側面の壁に寄りかかり、脚を開く。 画面は、ネーナが床に横たわるティエリアに馬乗りになって、パイスーの前開きジッパーを下ろしていくところだ。 「う〜ん…。でもちょっと飽きたかなあ…。もう7回はやっちゃったもんなぁ…」 さすがに食傷気味で、ネーナは溜息を吐いた。 いくら刺激的な映像とは言え、短期間に何度も見尽くせばさすがに飽きが来るという物だ。 それでも、せっかく気持ちよくなろうと意気込んでスタンバイした自分への手前、 何とか気持ちを奮い立たせて、画面を見つめた。 「もちょっと、早送りかな?」 自慰の準備万端の格好で、リモコンを取って早送りボタンを押す。 「よしっと」 再生ボタンを押して、画面に見入った。 大きく脚を開いたティエリアが、自分で下着を下ろす所だ。 嬉しそうに覗き込むミハエルの脇から、カメラが寄って陰部をアップで映し出した。 「しっかしこの子ほんっとキレーな体してるよねえ…。  胸だってすっごい可愛いし…あたしとは随分違うなあ…  ま、これも造物主サマの趣味なんだろうけど」 ネーナが真剣に画面を覗き込み、改めてティエリアの体をくまなく観察する。 サイズ的には、明らかに自分の方が勝っている。 しかしティエリアのスレンダーな体型と、穢れも知らないかのような女性器が 自分よりも遥かに美しく見えて、ネーナは面白くない。 画面のティエリアの股間に、ミハエルが吸い付いた。 テレビからは愛液をすする粘っこい音と、ティエリアの子猫のような喘ぎが響いてきた。 いつもならここからオナニー本番なのだが、どうも今日は調子が出ない。 退屈を持て余した3日間が、体まで鈍感にしてしまったのか、それとも冷静に観察して改めて気付いた ティエリアの美しさへの嫉妬なのかは定かではないが、 ネーナの陰部は、画面のティエリアが、ミハエルに後ろから突かれて感じはじめてもまだ、 乾ききったままだった。 「この子、あれからどうしたのかな…。あたしのあげたおもちゃ、使ってるかなぁ…。  まさか人間とやっちゃ…ってはないよね?ゴムとか渡してないし…」 想像して、幾分心配になった。 「でも、あたしと同じ存在なんだから、エッチな事、大好きなハズ…。  今ごろ錆び付いちゃって、動かなくなっちゃってたりして…」 一回だけの邂逅だったにも関わらず、ティエリアにリンクした時に、 わずかながらもお互いの内部データを互換した結果、 ネーナとティエリアには、姉妹のような奇妙なつながりが構築されていた。 これも同型ゆえの、シンクロ率の高さによるものなのかもしれない。 しかし当のネーナは、そんな感情が生まれた事にさえ気付かないでいた。 はっと我に返って、苛立ち紛れに首を振る。 「なんであたしがあいつの心配なんか、してやらなきゃいけないわけ?  ただのオカズ要員なんだからね?あいつは…!」 画面のティエリアはヨハンに足を肩担ぎされて、深く突き込まれている所だ。 最後の最後、ネーナがティエリアの全てのロックを解除したせいで、 ティエリアは大声で喘ぎ、いやらしい言葉まで口にしている。 最初に見た時は、この時点までに少なくとも3回はイった。 なのに、今はいくらネーナが指で性器をほぐしてみても、何の反応も見せないままだ。 「……なんで濡れないの?飽きちゃったから…?それとも、まさか…」 やはり機械仕掛けゆえの、共通した恐怖がネーナを襲った。 「壊れ…ちゃった…?まさか…ね…。うん、そんな事ない…!  おかしいのはあそこだけだし、他はちゃんと動くし、痛みだって感じるし…」 手の甲をつねってみる。ぴりっとした痛みが、ちゃんと走った。 ほっと息を吐いて、画面に向き直る。 出し切ったヨハンがティエリアから離れ、脱力したティエリアが足を開いたままで荒い息を吐いている。 精液滴る股間がアップになり、続いて潤んだ瞳で放心したかのように、 ぼんやりと空を見つめるティエリアの顔がアップになった。 「……。こいつのせい、だよね。あたしが急におかしくなったの…。  こんな子のエッチ、何回も見ちゃったせいで、回路がショートしちゃったんだ、きっと。」 ほとんど責任転嫁にしか過ぎない理論だが、他の理由が思い浮かばない。 「もっかい生身で試してみて、元に戻さなきゃね」 ネーナにとって初めての、女同士の行為を想像してようやく、股間に熱いものが溢れた。 ネーナは艦の端末に急ぎ、この前のリンクで突き止めた、トレミーのヴェーダ端末のアクセスポイントを探った。 「んん…っ…!は…ぁ…んっ…!」 その頃、トレミーで待機中のティエリアは自分への公約どおり、無理な禁欲を解禁して、 いつもの指定席、データルームで自慰に夢中になっていた。 ヴェーダと直接リンクする事によって、空想よりも遥かに写実的な、リアルな映像を 脳内に描き出せることに気付いたティエリアは、あれからほぼ毎日、 誰にも邪魔されないこの場所で、ひとり遊びに没頭していた。 先日、バイブとリヒテンダールで自分の仕様を確かめて以来、その二つとも一度たりとも使ってはいない。 あれから毎夜、自身を慰めるのに使う道具は、ひたすら指だけだった。 今日のお相手はイアン・ヴァスティだ。 「イア…ン…!ヴァーチェばっかりじゃなく…て、僕の整…備もして…っ!」 脳内で、薄笑いを浮かべたイアンがティエリアを四つん這いにして、鈍く光る鉛色のスパナを挿入していく。 埋め込んですぐに、イアンが激しい抜き差しを始めた。 「あぁんっ、やだやだっ…!そんなのいやだっ…!やあんっ!  なんでそんなの入れるの…っ!でも…気持ち…いいよ…!もっ…としてぇ…!」 すっかり自慰にも慣れたティエリアは、自分の快感のポイントを的確に掴み、どんどん追い立てていく。 膣内をかき回すのも、クリトリスを擦りあげるのも、ほとんど無駄がないかのような、 効率的な指遣いになっていた。 「ああんっ!入れ…て…!イアンの熱いのが欲し…い…っ!」 スパナがようやく抜かれた。 意地悪な微笑のまま、べっとりと愛液がこびり付いたそれをぺろりと舐め上げて、イアンがスパナを投げ捨てた。 ついに、イアンが勃起を昂ぶらせて、ティエリアににじり寄る。 脳内のティエリアが四つん這いのまま、尻を高く突き出した。 「ううっ、僕…は…、いやらしい子…だ…。くぅ…お願い…、早く…、早く入れて…!」 イアンがティエリアの腰を掴んだ。 いよいよだ─! ティエリアが想像と同調して中を抉ろうと、一度抜いた指を再度膣口に押し当てた。 「来て…っ!!」 ─入れるぞ…! そう思った瞬間、何者かが体に侵入してきた感触で、ティエリアは我に帰った。 この感じは、この前トリニティにリンクされた、あの時と全く同じ感じだ。 <見〜つけたっ♪よかったぁ、サビてなくて安心したぁっ♪> すぐに電気信号が送られてきて、やはり直感は正しかったのだと、ティエリアは悟った。 <や〜っと見つけた♪苦労したよぉ?ティエリア…ちゃん?ひっさしぶり♪  ネーナ・トリニティよ?わかるよね?> ネーナの高揚した感情まで、信号に乗って伝わってくる。 自慰を邪魔された事に加え、もう二度と会いたくもない人間との強制通信は、 ティエリアを苛立たせるものでしかなかった。 <…何の用だ> <なによぉ?怒ってんの?可愛くないなあ…。ん〜。まあいいわ♪  ね、こっち、来ない?あたしが行くのはまずいでしょ?> <…何の為に?> 訊きながらティエリアは、この前のネーナとの別れ際のやり取りを思い出していた。 ─今度は、二人でしようよ─ <この前の〜、つ・づ・き♪> (やはり…) <断る。今忙しい。さっさと俺から去れ> 悔しいが、機能としてはあちらの方が僅かに上だ。 しかしその僅かな性能の差が、こちらからの強制排除を不可能にしていた。 それを知ってか知らずか、相変わらず高圧的にネーナの信号が届く。 <ふふん♪忙しい〜?ふ〜ん、そっかぁ…♪> 言を含んだかのようなネーナの口調に、嫌な予感が走った。 すぐに指の愛液をティッシュで拭き取り、裸のイアンを追い出して、とりあえずGN粒子の基礎理論を頭に浮かべる。 <くくっ。かっわいい♪でも、もう遅いよ?見ちゃったもん。  あの整備のおっさんとの脳内エッチ♪あんた、Mっ気あるんだぁ?  スパナはないでしょ?スパナは…。うふっ♪そ〜んなキレイなお顔してるのにねえ♪> <く…!だ、黙れ…!お、俺は、別に…> <もういいよ。こういうやり取り、この通信状況でやるの疲れるから。  素直になってよ。気持ちいいこと、好きでしょ?ティエリア。二人でしようよ。ね?> <ふざけるな…!お前は兄弟とでも勝手にやればいいだろう!?> あえて高圧的な口調で、ネーナを見下すように言った。 ネーナが気分を害したのが、はっきりと分かった。 <何よ、馬鹿にするつもり?あんただってしたい癖に…。じゃ、体に聞いてあげる…。えいっ!!> <ひゃああんっ!!> ネーナが痛めつけるように送り込んだ電流が体を走り抜け、強い快感を与えていった。 自慰の真っ最中だったティエリアは、その刺激であっけなく腰砕けになってしまった。 <どう?いいでしょ?こっち、来るよね?> <く…ぅ…、い、いや…だ…。僕…は行きたく…な…> <んん?イキたくないって言ったの?今更?ふうん…。素直じゃないなあ…。  じゃ、もっかい…、ええいっ!!> 再びびりびりと電流が流されて、ついにティエリアが陥落した。 <あ…ああんっ!わ、わか…った…!行く、そっちに行くから…もうやめて…> <うん♪待ってる。早く来てね☆こっちの位置はわかるよね?> <……ああ> トリニティの艦の位置情報が、データで送られてきた。 通信を終了した後、ティエリアは約束通り、ヴァーチェに乗り込んでネーナ・トリニティの元へと急いだ。 「ようこそっ♪トリニティのホームへ…、なぁんちゃって♪…あれ?」 大げさな身振りで歓迎の挨拶をするネーナの脇を、ティエリアは無表情のままで通り抜けた。 それでも、今からティエリアとじっくり楽しめるという期待感で、ネーナの機嫌はすこぶる良い。 相変わらず小悪魔然とした態度で、ティエリアの周りを、ひょこひょこと飛び跳ねた。 「ちょっと〜。まだ怒ってるの〜?」 「別に?早く部屋に案内しろ」 「ほら〜、怒ってるじゃない…♪わかった…。悪かったわよ。ごめんね?  ひとりエッチの邪魔しちゃって♪」 ティエリアが真っ赤になって反論した。 「ぼ、僕は別に、そ、そういうつもりでは…」 言葉に詰まるティエリアの心の中を見透かすように、ネーナが息のかかる位置まで一気に距離を詰めて、 正面からティエリアをしっかりと見つめた。 ネーナの視線には、相変わらず奇妙な威圧感が漂っている。 ティエリアの鼓動が一気に速くなった。 「…楽しもうよ。ね?今日は、兄貴たち、呼ばないから…。朝までいっぱいしよ?二人…で♪」 ネーナがティエリアの両手を握ったまま、後ろ向きに歩いて数歩、すぐにネーナの部屋に辿り着いた。 「こ〜こ♪」 可愛らしく微笑んで、ドアのノブに手をかけるネーナ。 天真爛漫なその様子に、何故か不安が募るティエリアが、今更ながらこの艦に来た目的を反芻した。 (今…からこの部屋で…、この少女と…する…のか…。女同士…であんな事を…。  まだ男とも満足にしていないというのに、僕は…、また新たな世界に踏み込んでしまう…。) ネーナががちゃりとノブを回した。ティエリアの緊張が高まる。 (僕はどうなってしまうんだろう…。またあんな風にいやらしくなってしまうのか…?) 考えながら、ネーナの後姿に目をやり、過剰とも言えるほどに肌を露出した、 白服のラインを上から下までじっくり眺める。 きゅっとくびれた腰のライン、背中ごしに横にはみ出して見える、豊かな胸、 そしてふっくらと肉付きの良い、柔らかそうなヒップ…。 どれもが自分には備わっていないものだ。 (触ってみたい…。そして、触って欲しい…。朝…まで…) グリニッジ標準時で、時刻は現在午後11時。朝までたっぷり時間がある。 すっかりエロに順応した脳が、この部屋で行なわれるであろう、淫らな行為をすんなりと想像した。 先日のトリニティ兄妹との行為は、どう言い訳されてもレイプ以外の何者でもなかったのに、 その張本人を目の前にしても、なぜか怒りは湧いてこない。 データ互換による、連帯感─。 いや、それ以前に、この世でわずかしかいない、自分と同型であるネーナへの、 言葉には出来ない依存心ゆえのものなのかも知れなかった。 「さ♪やろっ♪」 ぱっとドアが開いて、ネーナの明るい声が響いた。 強引に腕を引かれ、はっと気付いた時には、ネーナのベッドに仰向けに押し倒されていた。 慌てて周囲を見回す。 ピンク基調の壁紙に、くまのぬいぐるみ。 想像以上にファンシーな、ネーナの私室が目に入る。 ネーナが前回同様、ティエリアの腰を跨いで馬乗りになった。 嫣然と見下ろされて、まだ覚悟を決めかねていたティエリアの表情が、僅かに歪んだ。 ネーナが余裕の表情で声を掛けた。 「ちょ…、大丈夫よぉ?今日はこの前みたいなヒドい事はしないから。  てゆっかぁ…、今日はあたしが気持ちよくなりたいんだよね…」 ネーナが、少し恥ずかしそうに顔を赤らめた。 「どうも、調子出なくてぇ…。この前のメモリーカード、見てたんだけど全然イケないの…。」 ネーナは全く悪びれもせずに率直な事を言うが、ティエリアには何の事だかさっぱり分からない。 気にせず、ネーナが続ける。 「んで、あなたとしちゃおっかなって思いついたわけ♪  絶対、合うと思うんだよね?カ〜ラ〜ダ♪だから〜、」 ネーナが悪戯っぽく笑って、自分の言葉に大人しく耳を傾けている、ティエリアの両手を掴み、 存在感たっぷりの自分の乳房に持っていった。 「え…?」 予想外のネーナの行動に、ティエリアは戸惑いを隠せない。 (やっぱ、かっわいい♪今日はぜ〜ったい二人っきりで楽しむんだから♪) ティエリアの戸惑いの表情で、ネーナの心が高ぶった。 「揉んで♪ティエリア」 ネーナが体を上下に揺らした。 迫力満点の乳房が大きく上下に揺れ動き、ティエリアの手を弾き飛ばしそうな重みを伝えて来る。 「ど、どうやって…?」 手を押し当てたまま、何の動きも開始出来ないティエリア。 「好きにやればいいの。最近、オナってるんでしょ?自分で触るみたいにして」 ティエリアの表情が曇る。 「でも…、僕は…、僕のは…こんなに大きく…ない…」 「はあ?何言ってるの?関係なくない?そんなの…。も〜っ、しょうがないなあ」 ネーナがつんと唇を尖らせて、ティエリアの両手の上に自分の手を重ねた。 「ほら…こうやるの…」 ゆっくりと、ネーナがティエリアの手の平ごしに、下から上へと胸を揉み上げる。 弾力のある肉塊が、指で押し込むごとに形を変え、また押し返して来た。 自分の小さい乳房では一生得られないであろう手触りに、思わず感嘆の溜息が漏れた。 すぐに、ティエリアの両手が自らの意思で動きはじめる。 指をぴんと伸ばしてしっかり掴んでもなお、手の平からはみ出るほどのネーナの乳房を、 ゆっくりと揉み解していく。 「すごい…。脂肪…なのに…」 ネーナの呼吸が乱れ始めた。 「脂…肪…?んっ…、そんなシラけるような事…言わないでよ…」 ツッコミを入れつつも、ネーナは目を閉じたまま、ティエリアの指遣いに身を任せている。 指に力を入れる程に、ネーナの顔がひくひくと歪み、赤い唇がか弱く開いた。 (なるほど…。あいつらもこういう感じを楽しんでいたのか…) 早くも、攻める楽しみに目覚めつつあるティエリア。 ノーブラの乳首が、ぷっくりと勃ちあがるのが手の平に感じられた。 (自分でしているように…か…) 自慰で自分を可愛がる時の事を思い出しながら、白服の上から、乳首を擦ってやった。 「あんっ!」 ネーナが大きく身を震わした。 勢いに乗ったティエリアが、今度は両方の乳首を爪を立てて、丹念に擦りあげた。 「あ…っ!や…っ!ぴりって来るぅ…。やっぱり、さすがに女の子…よね。  分かってる…。気持ちいい…。ん…っ」 ネーナが我慢できずに、ティエリアの爪に乳首を押し当て、体を大きく上下に跳ね上げた。 他人に、快感を与えている。 それが何故か無性に嬉しく、まるで英雄にでもなったかのような気分になってしまう。 完全に勃ちあがって、薄い布を持ち上げている乳首を、服の上からきゅっとつまんだまま、 ネーナの側面の曲線を撫でるように、ティエリアが手の平を下へと下ろしていった。 程よい肉厚が手の平に柔らかく馴染む。 ティエリアのほとんど贅肉もなく、薄い体つきとは大違いだ。 とても、同じ造物主の設計によるものとは思えなかった。 おぼろげな寂しさを押し殺して、片手をネーナの股間に伸ばした。 いつも自分がやっているように、服の上から爪を立てて、クリトリスを掠めるような刺激を与えてやった。 「あん…っ!やだ…っ!うそぉ…」 ネーナがますます顔を紅潮させて、クリトリスに伸びるティエリアの手を思わず握り締めた。 「…気持ちいいか?」 服の上から乳首をきゅきゅっと刺激し、クリトリス上を素早く前後に往復させながら、低い声で聞いてやる。 「う…ん、あんっ…、きもちいい…よぉ。いつもこんな風にしてるの?  上手いね…ティエリア」 ティエリアの上に跨るネーナの腰が一瞬浮き上がり、何かを欲しがるように前後に動き始める。 ティエリアの指が、ネーナと自分の股間との間に挟まった。 「あ…ん…っ」 ネーナの腰の前後に応じて、ティエリアのクリトリスにまで指が当たり、二人で同時にいやらしい声をあげてしまった。 ティエリアの指が本能的に動き始め、二人の敏感な所を一緒に責めはじめる。 「あ…っ!ん…っ…、ん…っ…、ね…、ティエ…リア」 ネーナが腰を前後に擦りつけながら、上から淫らな表情で見下ろしてきた。 「な…なに…?あう…っ、はぁ…ん…っ」 喘ぎながらも何とか答えるティエリア。 愛液が下着に染み入っていくのが、はっきり分かった。 「も…、脱ぎたい…。や…んっ…、脱いじゃうよ?いい…よね」 ティエリアの返答を待たずに、ネーナが服の上を脱ぎ去った。 ぷるんと、剥き出しになった胸が大きく揺れ、乳首がもっと触ってくれとばかりに勃ち上がっている。 「指、動かしててね?ティエリア…、すっごいきもちいい…」 うっとりとした表情でネーナが言い、おもむろに身をかがめてティエリアに覆い被さった。 「ね、舐めて…。ネーナのおっぱい…。もっと、気持ちよくなりたいの」 「んぷっ」 いきなりネーナの乳房が顔面に押し付けられ、既に硬くなった乳首が口の中に強引に押入れられて、 堪らずティエリアが唸った。 「あはっ…ん…!」 ティエリアの歯が、乳首に軽く当たって、ネーナが鋭い快感にのけぞった。 「んん…っ、もっ…と、ティエリア…。舐めてよぉ…」 大きい乳房で遮られて、何も見えない。 ネーナの欲情漂う、可愛い声だけがはっきりと耳に届いた。 すぐに要求に応え、乳首の形を確かめるように、ねっとりと舌を這わせる。 「ああん…!そう、すご…い、いいよぉ…。ね、コリコリしてるでしょ?ティエリア…」 頷くように、再び軽く噛んでやった。 「やんっ!もう…っ、あたし…エッチになっちゃうよぉ…。ティエリア…のせいだからねっ」 ネーナの熱い息が、髪を通して頭皮にかかる。 ネーナが脇から胸を寄せ、ティエリアの顔にぐりぐりと押し付けてきた。 乳房で顔面を覆われて、満足に息も出来ない。 「んふっ…♪こういうの、男の人って喜ぶんだよ?アレを挟んであげるともっと…」 (く、苦しい…!僕は男じゃ…ないし…、僕じゃこういうのは出来ない…。でも…) ティエリアが、乳首をねぶる舌の動きと、ネーナと自分の股間を往復する指の動きを更に早くした。 「あんっっ!」 ネーナが思わず胸の押し付けを停止し、逆に腰の動きを速めていく。 「はあ…っ、あぁん…っ、んん…っ」 二人の息遣いがどんどん乱れていった。 「も、だめ…ぇ…!ねえ、もっとちゃんとしよっ?ね?ティエリア…!」 ネーナががばっと体を起こし、荒い息を吐きながら、自分の下の服を乱暴に脱ぎ捨てた。 垣間見えるネーナの秘部がぐっしょり濡れているのが、はっきり視認できる。 自分のあそこも同じようになってるんだろう…。しかし、やはり不思議な求心力のある場所だ…。 そんな事を思いながら、全裸のネーナをじっくりと眺め回した。 ネーナのパーツは、どれをとっても女性として完璧で、とても同じ女型とは思えない。 「そんなに見ないでよぉ…。恥ずかしいでしょ…?ティエリアも、脱いで…?」 ティエリアとしても、体の方は早く脱いでもっと熱くなりたくて堪らなかったが、 頭の方は貧相な自分の肢体を思い浮かべてしまい、萎える一方だった。 怒ったように、視線をぷいと外したティエリアだったが、それがネーナを困らせるような事はなかった。 いつも通りの独尊ぶりで、全く気にせずにネーナがティエリアのカーディガンのボタンに手を掛けた。 「なんてゆっか…、こういう服好きなの?もっと可愛いのあるのに、もったいないなあ」 ティエリアは抵抗する気持ちも特になく、ボタンが外されていく様をじっと見ていた。 一つずつボタンが外されていく度に、周囲に張り巡らした、自分の感情の壁をも外されて行く感じがした。 やがて、下の黄シャツのボタンまで全て外され、そっと前を開かされた。 ティエリアの白い肌と胸が露わになった瞬間、ネーナがふうと小さい溜息をこぼした。 「…やっぱり、キレイ…。ティエリア、可愛いよ。すごく…」 可愛い?こんな棒のような体が…?不機嫌に、答える。 「嘘を言うな…」 「嘘じゃないよ?ほんと、すっごく可愛い。白い肌も、ちっちゃい胸も、薄い体も…。  うらやましいなぁ…」 ネーナが骨とう品でも愛でるかのような手つきで、そっとティエリアの肌をまさぐった。 触れるか触れないかの距離で、乳房を撫でた後、いきなり乳首を指でくいっと回す。 ティエリアがぴくんとかすかに震えて、両手を握り締めた。 「ん…っ!や…っ、よせ…。僕…はきれい…なんかじゃない…んっ…」 何かに耐えているかのような、煽情的な表情で、ティエリアが小さく喘ぐ。 ネーナがそっと体を倒し、ティエリアの可愛いままのつぼみに舌を伸ばした。 「あ…んっ!」 きゅっと唇でついばむと、ティエリアの陶器のような肌がぱっと紅潮した。 「…ほんと、自分の事何にも分かってないんだね?誰よりも綺麗に造られてるのに…」 「んんっ…!で…も…、僕…は…、女の子の体…じゃない…、や…っ…」 「ちゃんと、女の子だよ?触るたびにこんなにぴくんってなって、ここだってすっごく濡れてる…」 いつの間にかベルトが抜き取られ、ジッパーまで下ろされていた。 ネーナが唇でティエリアの肌に赤い痕をどんどん付けながら、指を下着の中に滑り込ませた。 「あ…!だ…め…!」 ネーナの指が摩擦なく滑る。 ネーナの言葉通り、ティエリアのそこがたっぷりと潤っている事は、疑いようもなかった。 ネーナが丹念に舌を使って、まるで子猫をいたわる母猫のように、ティエリアの肌をゆっくりと舐め上げる。 わざと官能を刺激するような舌技の中に、男の荒々しさとは全く逆の優しささえ混じっていた。 下着の中に入れた指が、ティエリアの敏感な所をゆっくり往復した。 指が膣口をほぐす度に、下腹部の丘に置かれたネーナの手の平が、クリトリスを僅かに刺激していき、 もっと強い快感が欲しくてたまらないような、いやらしい気分になってしまう。 「は…ん…、あ…、で、でも…僕は…、君と随分ちが…う…」 「ティエリアとあたしの違い…、きっと造物主サマの趣味だよ…。あたしはロリ小悪魔系。  ティエリアは、ガラス細工みたいな、クールビューティ…でしょ?ティエリアがきょにゅーだったらおかしいよ…?」 「ん…っ、でも…」 「ちゃ〜んと機能は果たしてるじゃない…。ほらっ」 「ひゃぁっ!」 ネーナが乳首に軽く歯を当てた。それだけで体全体に快感が走った。 「ね?問題ないでしょ…?」 なぜだろう、今日のネーナはとても優しい…。 この前のレイプじみた行為での屈辱感は全く感じず、全ての愛撫にはむしろ慈愛さえ漂っていて、 こんないやらしい行為の最中だというのに、まるで姉妹にでもなったかのような、温かい感情が満ちてくるようだった。 甘い空気に触発されて、ティエリアは思わず涙ぐんでしまった。 それを知ってか知らずか、ネーナが舌をどんどん下へと向かわせていく。 きれいな形のへその穴まで、なぞるように舐め上げた。 ネーナが指を抜き、ズボンに手を掛けた。 ティエリアはされるがままになっている。 ゆっくりズボンと下着を下ろすと、ネーナと同じくぐっしょりと濡れた秘部が現れた。 ネーナがそっとティエリアのふとももを開いて、そこを見つめた。 恥ずかしいが、とても抵抗する気になれない。 ティエリアは視線を外して遠くを見つめたまま、視姦に耐えた。 「すごい濡れてる…。」 ネーナの息がそこに当たって、思わず体が反応してしまう。 また、じゅくっと愛液が滲み出てしまった。 「ほんっとキレイ…。ティエリアのここ…。」   僕の、あそこが…きれい? この前鏡で観察した時の事を思い出した。 やっぱり、ああいう形状で問題なかったのか…。良かった…。 「あぁぁっっ!!」 急に快感が訪れた。ネーナの舌が、一気に割れ目を舐め上げたのだ。 そのままネーナがそこを丁寧に舐め続ける。 他人に舐められる快感は、決して自慰では得られない特別なものだ。 ネーナが膨らんだクリトリスを唇でつまみ、きゅっと音を立てて吸った。 「ひゃう…っ!!」 それだけで軽く達しそうになってしまう。 ネーナが再び膣口を責めはじめた。 じゅくじゅくと音を立てて愛液をすすりながら、ゆっくりとそこを舐め続ける。 「うく…ん…っ、あ…んっ、やだ…っ!やめ…て…っ!」 口での拒絶と裏腹に、ティエリアの腰が秘部をネーナの舌に押し付けるように、揺れ始める。 「やなの?こんなになってるのに…?」 「んはぁぁっ!!」 ネーナが再び、既に勃ち上がったクリトリスを集中的に舐めはじめた。 舌遣いに加え、そこに当たる熱い息が、ティエリアをどんどん淫らにしていく。 愛液が尻の割れ目まで滴っていった。 がくがくと腰が大きく動きはじめるのを、抑えられない。 「ねえ、自分で持ってて?もっとしてあげるから」 ネーナが一旦舌を離し、ティエリアの両腕を膝裏に導いた。 すぐに意図を理解し、ティエリアは自分で膝を裏から抱え、かえるのように大きく足を開く。 羞恥と興奮が入り混じって、顔が真っ赤に火照って仕方ない。 やや上部を向いた腰と、思い切り開いた足の為に、膣穴がぱっくりと開いて、 ネーナの前に中の繊細なピンクを晒す事になってしまった。 「すっごいひくひくしてる…。舐めて欲しいんだ…?」 「く…ぅ…、そんな事…な…い」 「ほんとに…?」 「やぁぁぁっっ!!」 ネーナの舌がずぶりと膣内にめり込んで、ティエリアはもう我慢できなくなってしまった。 「んぁぁっ!きもちい…あはぁ…っ!」 舐めてもらいやすいように、無意識的に腰の位置が動かされた。 ネーナが頭ごと前後に振りながら、強引に膣肉を掻き分けて舌をこじ入れ、中の粘膜を舐めあげる。 「あぁん…っ、かき回さない…で…っ!ぐちゃぐちゃになっちゃう…!」 悦楽を受け続けながら、ふと下を見ると、大股開きの膣にネーナの赤い舌がずぶずぶと入っていく様子がはっきり見えた。 舌が奥まで入る度に、触感と視覚の両方が刺激され、たまらなくいやらしい気分になる。 「あは…っ、も…だめ…」 ティエリアが片方の手を膝から放し、剥き出しのクリトリスに持っていった。 すでにそこはネーナの唾液と自分の愛液で、ねとねとになっている。 いつも通り、指の腹で擦り上げると、全身がとてつもなく気持ち良い。 「ああ、んっ、んっ、気持ちい…い…」 クリトリスを擦る指の動きがますます速くなり、どんどん限界が近づくのが分かった。 「すごい熱くなってるよ…?ティエリアの中…。女の子って、すごいね…?」 ネーナの舌が、ティエリアの女性器のあらゆる部品を舐め尽くす。 ティエリアは夢中でクリトリスに指を押し付け続けた。 「んはあああっっっ!!」 すぐにティエリアが大声をあげて達したが、ネーナの舌はまだそこから離されない。 絶頂により一気に噴出した愛液の後始末をするように、ぴちゃぴちゃと舌を動かし続けるネーナ。 「あっ…、や…っ…も…いいから…っ!ちゃんと、イッたから…っ!もう離し…て」 咎めるようにネーナの髪を掴んだが、すぐに秘所に快感が戻ってきてしまう。 「でも、まだいっぱい出てくるよ…?すごいひくひくしてるし…。  ねえ、あたしのも、舐めて…?あたしも気持ちよくなりたい…」 ネーナがティエリアの上に乗り、体を方向転換させて、上下の69の体勢になった。 下の位置のティエリアのすぐ目前に、たっぷり潤ったネーナの卑猥な秘部が現れた。 (すごい…。穴…が3つある…のか…) 初めて見る自分以外の女性の体。 肛門に膣、そして尿道。 そのどれもが卑猥でありながらとても繊細で、美しく見えた。 ネーナがティエリアのクリトリスを舌で突付いた。 「ああ…んっ!」 ティエリアの、一際大きく漏れ出した吐息が、ネーナのそこにふうっと当たった。 「あんっ!ね、舐めて…。あたしがやってるみたいに…」 ネーナが腰を落として、ティエリアの顔に秘部を押し付ける。 動物的な雌の匂いと、顔に塗り込められるような粘液がどうしようもなくいやらしいが、 快感に夢中のティエリアは、素直に舌をそこに伸ばした。 ぺろりと、ネーナの割れ目を舐めあげる。 「あふ…っ!」 ネーナの嬌声が響いた。 ネーナの腰がぴくんと動き、さっきのティエリアと同じように、舌に押し付けるように腰が上下に揺れ始めた。 逃がさないようにネーナの腰をしっかり掴んで、じっくりと膣からクリトリスまでを舐め続ける。 「あん…、あ…っ、んん…っ、そう、うま…いよ、ティエリア…。ほんと気持ちいい…」 ネーナの気持ちよさげな喘ぎ声が、ますますティエリアに火を点けた。 ネーナも快感を我慢してティエリアのそこを舐めるが、さっきとは違い、明らかにたどたどしい動きだ。 今の時点ではティエリアの方が完全に、ネーナを支配していた。 ネーナにされたのと同じように、その膣内に舌を挿し入れる。 想像以上に強い肉壁の抵抗をはねのけながら、舌の根元まで中に突き入れると、 灼熱とも思えるような熱さが伝わってきた。 ゆっくり舌を出し入れすると、ねっとりと溢れ出した愛液が舌を通して流れ込んでくる。 「んんっ、やぁ…ん、変な気分になっちゃ…う…。気持ちいいよ…、中…。すっごく…」 ネーナの腰が揺れっぱなしだ。 喘ぐネーナの声は、本当に可愛い。 同じ女型なのに、その声聞きたさに、もっと気持ちよくしてあげたくなってしまう。 ティエリアが舌で責め続けながら、指をネーナのクリトリスに伸ばした。 「あはあっ!!!」 クリトリスをくいっと回すように刺激してやると、今までで一番可愛い声をあげて、 ネーナが大きく腰を跳ね上げた。 ネーナの愛液で指をほぐし、素早くクリトリスを擦り上げる。 舌と指との同時攻めで、ネーナはもう腰砕け状態だ。 「あんっ、あぁっ、あぁっ、いい…いいよぉっ!ねぇ、ティエリアぁっ…、  もっ…と、もっとして…!ネーナの事、可愛がってぇ…!!」 ネーナは完全にティエリアへの攻めを忘れて、腰を振りたてていた。 ティエリアの指と舌が、どんどんネーナを昂ぶらせていく。 すぐにネーナの中が痙攣しはじめたのが舌に伝わって、ティエリアはネーナの絶頂が近い事を知った。 クリトリスを押しつぶすように圧迫し、規則正しく擦りあげる。 絶頂間際の女体には、これが一番効くという事は、何度かの自慰で既に知っていた。 「ああっ!も…ダメぇ…っ!イッちゃ…う…!ティエ…、イクよぉっ!!」 びくんと大きくのけぞって、ネーナが体を硬直させた。 中に突き入れた舌に、膣壁の収縮がダイレクトに響く。 どくんどくん…。 ネーナの絶頂の波が広がる様子まで、はっきり分かる様だった。 ティエリアが舌を抜いてすぐ、絶頂の快感に固まっていたネーナが後ろを振り返り、紅潮した顔でにっこりと微笑みかけた。 「すっごく良かった…。うまくなったんだぁ…?ティエリア。  な〜んにも知らなかったのにね…?でも、あたしと同型なんだもん。当然かな?」 ネーナは絶頂の快感など、特に目新しいものでもないかのような、余裕さえ漂わせている。 「ぼ、僕は別に…」 赤くなったティエリアの足をネーナが掴んで大きく開き、くすっと微笑んで、秘部を凝視した。 「やっ…」 一緒に舐め合っていた癖に、急に恥ずかしくなって、ティエリアが思わず手で顔を覆ってしまう。 「一回ずつイッたけどぉ…、まだ全然足りないよね?」 「ぼ…くは、別に…、もう…いい…」 「だ〜めっ♪今日は朝までいっぱいしようねって言ったでしょ?  あたしたち女の子だもん。男と違って何回でもイケるんだもん。もっとしよっ♪ね?」 ネーナがティエリアの体を横向きにして、片足を大きく持ち上げた。 「まだすっごく濡れてる…。もっと気持ちよくなれるよ?ティエリア」 体を反対方向に移動させ、松葉崩しのような格好で、お互いの足を交差させる。 二人の股間が密着して、まるで貝合せの様にぴったりと合わさった。 じゅくっと濡れたそこから、お互いの体温が伝わってきた。 「これ、いっぺんやってみたかったんだよねえ…」 興味津々な様子で、ネーナが早速腰を動かした。 「あはあ…ん…っ!」 濡れた膣口が擦れあい、粘液と粘膜が直接触れ合う感じ。 ─気持ちいい。 二人とも、同じ事を考えていた。 ペニスとの結合とはまた違う密着度を味わいながら、二人して秘所を擦り合い、快感を高めていく。 横向きで交差しているせいでお互いの顔は見えないが、何も言わないでも、息の合った動きを繰り返した。 「んは…っ、んっ、あんっ、擦れ…てる…ぅ、ティエリア、気持ちいい…?」 「あ…う…っ…、黙っ…て…、ぼく…ぼく…は…」 腰を動かす度に、粘膜が直接刺激しあい、どんどん愛液が溢れてくるのが分かった。 しかもお互いの太ももが、クリトリスまで刺激していく。 ぐちゅぐちゅ…。卑猥な音を立てて、ますます素早く秘部を擦り合わせる二人。 「く…!…あ…んっ!あぁうっ、んくうっ!」 快感の高まりに比例して、どんどん声も大きくなっていったが、ティエリアの喘ぎはネーナのそれよりも遥かに勝っていた。 「あぁ…んんっ、も…我慢でき…ない…」 欲を発散させるかのごとくシーツを握りしめたが、体の方は早く達したくて仕方ない状態だった。 「ティエリア、イキそう?イッていいよ?時間いっぱいあるから…!  何回でもイカせてあげる。ほんとよ?」 「あふぅ…、あ…ん、何…回…でも…?」 「うん。約束する。もうしばらくエッチはいいよ〜って位、いっぱいしようよ、ね?」 「あ…ぁ…!いっぱい…した…い…!僕…も…や…んんっ」 ティエリアが目の前にある、ネーナの足を手繰り寄せて、乳首を押し付けた。 「あんっ、ティエリアのが、当たってる…。すごい硬くなってるね…気持ちいい?」 ネーナが更に腰の動きを速めて快感を高めながら、ティエリアの乳首に当たる足をも動かした。 「あはぁぁっ!」 ティエリアの顔が快楽に歪む。 必死でネーナの足にしがみ付きながら、精一杯腰を振り続けた。 「んん…っ!もうダメ…!イク…っ、ああああんんっっ!!」 やがてネーナの足を強く掴んで、ティエリアが絶頂を迎えた。 脱力して横向きのまま、ベッドに沈み込む。 ネーナが体を離して、後ろからティエリアを抱き締めて、そっと髪を撫でてやった。 「どうだった…?」 「うん…。すごく良かった…」 達した事で心まで開放されたようで、ティエリアは素直に答えた。 「そっか…。良かった。でも、まだまだするよ?」 ネーナがティエリアの背骨をなぞるように、舌を這わせた。 「ん…っ!」 さっき果てたばかりなのに、全身が早くも粟立ちはじめるのが分かる。 「心配しないで?あたしたち、こういう風に造られてるんだから。」 ネーナが後ろからティエリアの胸とクリトリスに手を伸ばした。 「んはっ!」 弄られるとすぐに、例の快感が蘇った。 ネーナが自分の乳首を、背中に押し当ててくる。 思わずティエリアが反転してネーナに向き直った。 すぐにネーナを押し倒して、上に乗っかる。 ぐっと体を押し付けるように沈めると、二人の勃ちあがった乳首が触れ合った。 「あ…!」 ネーナがか細い声をあげる。 ネーナの胸の弾力を確かめながら体を揺すると、乳首が擦れあってどんどん感度が高まっていった。 同時にさっきのように腰を押し付け、お互いのクリトリスを擦り合わせた。 「あぁん…、すごいぷっくりしてる…。こんな風になるんだね…あたしたちの…体…」 ネーナが喘ぎながら、潤んだ瞳でティエリアを見上げた。 柔らかい肌に比して、そこだけまるで違うものであるかのような、 硬質なその感触を確かめあうように、擦り合わせる。 ネーナがティエリアの背中に腕を回して体を寄せ合い、お互いの体温を分け合った。 「あふ…いいきもち…。でも…そろそろ中に欲しいなあ…」 「中…?」 「うん…。ティエリア、あたしがあげたおもちゃ、ちゃんと使ってくれた?」 「……一回…だけ…」 「そうなんだ。良かったぁ♪どうだった?」 「…僕が…機械だって事がよく分かった…」 不意にティエリアの表情が寂しげに曇り、体の動きが止まった。 「機械…?気持ちよくなかったって事?」 「違う…。僕の体に、アジャストしすぎだったという事…だ」 この前の自慰で、初めてバイブの快感を知った。 そしてその後人間の男を試してみて、結局自分はああいう事が大好きなのだと、自覚するに至ったのだった。 しかしリヒテンダール・ツエーリとは違い、バイブの方では数分も持たなかった。 それは同じ機械ゆえの適応性なのだろうと、ティエリアはずっと思っていた。 だからこそ、激しい快感を得られるのにも関わらず、あれから一度もバイブを使わなかったのだ。 「ふうん?なんかよく分かんないけど、気持ち良かったって事でしょ?  あたしだって、いっつも気持ちいいよ…?」 「君にはわからない…。僕は…いつも…人間といる…から…」 「だから?人間だって、ああいう事好きなはずよ?あたしたち、人間をベースに設計されてるんだから」 「それでも。僕は…人間には…なれない…」 言いながら、なんでこんな事を言っているのだろうと、自分でも不思議に思った。 そんな考えが自分の頭の中にあったとは、今の今まで全く気付きもしなかった。 しかし口に出した事で、ここ最近漠然と感じていた不安が、まさにこの事なのだという事実に、ティエリアは気付いてしまった。 ネーナが意外そうな顔をして、ティエリアの表情を伺う。 「人間に…なりたいの?あたしたち、一応人間の進化形なんだよ?  空間認識能力とか、危機判断能力とか、演算能力だって人間より遥かに優れてるんだよ?  ごはんだって、甘い物だって食べられるし、あえて難点あるとしたら、人間の過剰な体液混入が許されていないだけ…」 「もういい…!!」 ネーナの言葉を遮り、ティエリアが彼女の上から去って、背中を向けてベッドに腰掛けた。 「そんな事…。分かってる…」 トレミーの人間たちと触れ合う事、そして自分の体を介して人間の感覚と感情というものを 知っていくにつれて、むしろ彼らとの距離が開いて行く気がする。 クルーの笑顔が脳裏に浮かぶ。その中に、自分はいない。 この世にたった一人ぼっちで投げ出されてような、どうしようもない孤独がティエリアを襲った。 「ティエリア…」 さすがのネーナも、その寂しげな背中に掛ける言葉も思いつかない。 しばらくティエリアの気持ちを想像しようと努力したが、もともとネーナにその能力は乏しい。 「……。ごめんね…。あたし、やっぱりよく分からない…。  でも、バイブが気持ち良かったのって、同じ機械だから、ってことじゃないと思うよ…?  あれ、女の人の体にばっちり合うように計算されて作られてるんだもん。  誰だって、あれですぐイッちゃうんだよ…」 ネーナがティエリアの背中におでこをゆっくり付けた。 肌の触れ合う感触が、感傷気味のティエリアにはとても、心地いい。 「ね…、じゃあ、さ。試してみない…?ティエリアもあたしも一緒に気持ちよかったら、安心でしょ?」 「君だって人間じゃないだろう?」 思わず荒っぽい口調で言ってしまった。 今自分が一番言われたくない事を、ズバリ同じ人造人間であるネーナに言ってしまったのだ。 しまった、と思ったが、ネーナは全く気にもせずに続けた。 「まあ、そうね。でも、いいじゃない。しよっ♪」 何がどういいのかさっぱり分からないが、ネーナの天真爛漫さが救いにも感じられる。 「…一緒になんて、無理だろう…」 照れ隠しに、ぼそっと呟いた。 「う〜ん、そう言えば色々試したのに、まだ一回も一緒にイケてないよね…。  でも♪じ・つ・は…!秘密兵器があるのっ♪」 もったいぶった感じで言いながら、ネーナがベッド脇の机の引き出しをごそごそ探った。 「ほらっコレ!見て見てぇ♪作っちゃった♪」 ネーナの手には、優に男のペニス2本分はあろうかと思われる、極長バイブが握られていた。 明らかに、2本のバイブを根元同士でくっ付けただけの代物だ。 「……」 「何その顔ぉ…?ほんとは地上で色々売ってるはずなんだけど、最近忙しくてさぁ…。  仕方ないから自分でくっつけちゃった♪  でも、我ながらすごいんだよ?コレ。ゴム棒にくっ付けたの。  だから、ほらっ!ぐいって色んな方向に曲がるの。すごいでしょ?」 嬉しそうに説明しながら、ネーナがバイブの両端を持って色んな方向に折り曲げて見せた。 ほとんどコの字を描くように、バイブが見事に屈曲した。 「これなら、男の人としてるみたいに出来るよ♪じゃあ、行くよ♪」 「ちょ…、待って…!」 待ちきれない様子で、ネーナがティエリアの体を強引に押し倒した。 「やだっ。待てないもん」 ネーナがティエリアの足を大きく開いて、そこの状態を確かめた。 色々話している内に、ティエリアのそこはすっかり乾ききってしまっていた。 「あん…乾いちゃってる…。ま、いっか…舐めちゃお」 ネーナが迷いなくそこを舐めはじめて、一気に蘇った快感が心の寂しさを吹き飛ばしていった。 「あ…んっ!あ…っ!ぼ…くはま…だ…許諾してない…ぞ…んん…っ!」 「でも、もう濡れてきたよ?ティエリアいっつもムズかしい事考えすぎ…。  体が喜ぶ事したらいいだけなのに…。ああ、でも最近はいっぱいひとりでしてるんだったよね?」 「や…ぁ…う…っ!に、任務に支障…出るから…仕方…なく…あはあっ!!」 ネーナがクリトリスを舐めながら指を挿入してきて、言い訳の言葉は最後まで続かなかった。 「ちゃ〜んとほぐさなきゃ、痛いもんね…んしょ…っと」 的確に動くネーナの指が、膣内を徐々にほぐしていく。 快感が高まるにつれて、ティエリアは何も考えられなくなっていった。 膣内が敏感になり、指よりももっと太いものが欲しくて堪らない。 「んん…っ、もう…いいから…っ。入れ…て…」 つい、恥ずかしさも忘れてバイブをねだってしまった。 「んん〜?もう欲しいの?やっぱりエッチなんだぁ…ティエリア…。  くすっ♪機械とかじゃなくて、ティエリアがエッチなんだよ…」 ネーナが意地悪く笑いながら、指で中をかき回した。 乱暴な動きなのに、ティエリアはより一層感じてしまう。 「あぁんっ!やめ…っ…、動かさない…で…っ!早く…入れて…バイ…ブ…」 バイブという単語の響きが、機械である自分を急速に思い起こさせて、我慢できずに涙が溢れてしまう。 「やだ…、泣かないでよぉ…。分かった、あげるから…。ねっ?ほら、腰上げて」 言われた通りに、ティエリアが挿入しやすい角度にまで腰を浮かせた。 すぐにバイブの先端が押し入れられて、膣壁がぐいっと押し広げられる。 「んくうう…っっ!」 やはり冷たいが、この前自分で入れた時と違い、痛さはほとんどなかった。 「大丈夫、ちゃんと入ってくよ…」 ネーナが声を掛けながら、どんどんバイブを埋め込んでいった。 やがて、片方のバイブ1本分が、全てティエリアの体内に納まった。 「やだ…。すっごいえっち…」 バイブが突き刺さった膣を見ていると、ネーナのそこもまた、疼いて仕方なくなってしまう。 ネーナが2本のバイブのゴム棒部分を折り曲げた。 「ひゃあんっっ!」 ぐいっと膣壁が押し込まれる感触で、ティエリアが大きく叫んだ。 ネーナも自分の膣に挿入しようとしたが、寝たままのティエリアと向かい合った状態では、 なかなか思うように入っていかない。 「なんか…これじゃ入らなさそう…。う〜ん…」 ひとしきり考えて、ネーナがティエリアの腰を折り曲げた。 ほとんどまんぐり返しの形まで、体が強引に折り曲げられた為に、バイブが天井に向かうように突き立っている。 「よしっ。じゃ、あたしも入れるよ…?」 ネーナがバイブを秘所に押し当て、座り込むように埋め込んでいく。 その度にバイブがティエリアの膣奥まで侵入し、子宮口にごんごんと当たった。 「ひぐっ…、痛い…っ」 まだ異物の侵入に適応しきっていない最奥は、鈍い痛みしか与えてはくれなかった。 「もう…少しだから…っ、がまん…して…っ」 ネーナの方は、バイブが内壁を押し広げ、擦られる快感に晒されていた。 同じ物体と行為を共有しながらも、二人の受ける感覚はまるで違っている。 (僕はこんなに痛いのに…彼女は気持ち良さそうだ…。  僕は…画一的な存在じゃ…ない…。そういう事…か) 同じ存在ではあるけれど、自分は決してネーナの代替品ではない。 違う事を考えて、違う感覚を受けているんだから…。 自分が人間と同じように、血と肉、そして感情を持つ、絶対無比の確固とした存在だと初めて思えた。 ネーナの中に、もう片方のバイブが全て埋め込まれた。 ネーナはティエリアの上げ切った腰の上に腰掛けるように体重を預け、バイブの感触を味わっている。 やがて、ネーナがゆっくりと腰を上下に動かし始めた。 ずぶっずぶっと、バイブが二人の中を行き来する。 擦られた内壁は、すぐに快感に目覚めた。 「んん…、んん…、あ…、あん…」 二人はゆっくりと、その快感を味わった。 下から見上げるネーナの顔が、どんどん悦楽に歪んでいく。 ネーナがティエリアを見下ろし、切なげに目を細めた。 ティエリアの表情もまた、素直に悦楽を体現していた。 「スイッチ…入れるよ…?いい?」 しばらく緩い快感を味わって、ネーナがスイッチに指を掛けた。 「うん…」 ティエリアが答えてすぐに、スイッチが入った。 ブウウンと聞き慣れた機械音が響き、両方のバイブが振動し始めた。 「あはああんんっ!!」 すでに熱くなったそれぞれの膣壁を、2本のバイブが小刻みに震わせる。 声も我慢できずに、大声で喘いだ。 「ああんっ!ああんっ!やだ…っ!いつもより、すごい…あんっ!」 ネーナがたまらずバイブのつなぎ目を握り締める。 片方のバイブが震える振動までが伝わってきて、単品のほぼ2倍の刺激が内壁に与えられた。 「ああんっ!ティエリア…!」 それでも、ネーナがまだ余裕を保ってティエリアを見下ろす。 「くはあっ!すご…い…!あぁんっ、やっぱり…気持ちいいよぉっ!」 ティエリアは激しい振動に抗えずに、大きく口を開けて感じるままになっている。 ネーナがぐいっと腰を押し込んだ。 バイブがティエリアの奥まで突き刺さり、子宮口を震わした。 「やぁぁっ!!当たって…るぅ…!あぁんっ!」 今度は、痛みではなく激しい快感が走った。 ティエリアの目から、生理的な涙が零れ落ちる。 今回のバイブにはクリトリス刺激用の付属物は付いておらず、 純粋に膣内への刺激しかなかったが、ティエリアは激しい快感に身を委ねていた。 「あぁんっ、あっ、あぁっ、気持ち…いいんだ、ティエリア…。  あたし…っも…!んんっ、気持ちいいよ…っ!」 ティエリアの悦楽の表情を眺めながら、ネーナが快感に耐えて腰を打ち付け続ける。 バイブが上下に擦れる快感と、左右に内壁を震わす快感。 2つの快感の相乗効果で、あっという間に絶頂が訪れた。 「あああんんっっ!」 ほぼ同時に、大きく背筋を反らせて二人が達した。 ネーナが脱力するのと、ティエリアの腰がベッドに着地するのとはほぼ同時だった。 ネーナがティエリアに覆い被さり、抱き合う形になったが、まだバイブはきっちりと 二人の膣に納まったまま、規則的な振動を続けていた。 「あ…っ…やっ…やっ…また…来たぁ…っ、あんっ」 絶頂を迎えたばかりの秘所に、すぐに快感が戻ってきた。 「もうやだ…、イった…のに…僕は…なんでこん…なに…うぅ…」 混乱して、ティエリアが泣き出してしまう。 ネーナがそっとその涙を拭ってやった。 「あんっ、大丈…夫…、あんっ、あたしたち女の子だもん…。  何度だってイケるって、んっ、言った…でしょ…?」 「んん…っ!で…もっ…体が壊れ…」 「壊れないよ…?あぁん…っ!もう無理ってなったら…あんっ、あたしが止めてあげるから…っ、  いっぱい気持ちよくなろっ?ね?ティエリア」 「あぁんっっ!で…も、もう無理だよぉ…!また…イキそ…」 ティエリアの中は、わずかな刺激ででも達してしまうほど、鋭敏になっていた。 「んあああっっ!!!」 さっき果ててからほとんど時間も経っていないのに、またティエリアに絶頂が訪れた。 大きく背中を反らせるティエリアを、ネーナが強く抱き締める。 「あんっ!あんっ!ティエリア、イッたの、分かるよ…?  伝わってきたもん…。あたしも、あんっ!またイクから…。感じて、ティエリア…!」 ネーナがティエリアを抱き締めたまま、男がするように腰を前後に動かした。 お互いの中を、バイブが抉っていく。 目を閉じてその快感をしっかりと受け止める。 本当に男としているような錯覚に陥るが、ピストンと振動の2重の刺激は、 男のそれよりも遥かに気持ちいい。二人は同じように、最上の悦楽を共有していた。 「あぁんっ!ねえ、イク…、あたしもイクよぉっ!ティエリア、一緒にイこ?」 突如ネーナが金目を輝かせて、ティエリアにリンクした。 「んんんっっっ!!!」 ネーナの、体に走る快感と心の喜びが数値化されてティエリアに流れ込み、一瞬で全身を駆け回った。 ネーナも、同じようにティエリアのデータを受け取っていた。 「あぁぁっ!来たぁっ…!ティエリアの、気持ち…、それに、気持ちいい事…もっ!」 お互いのデータをやり取りして、一心同体になったかのような密着感と、増幅された快感で、 後から後から涙が溢れ出て止まらない。 「も、ダメぇぇぇっっ!」 ネーナが大声を上げて達するのと同時に、ティエリアも絶頂を迎えた。 体の隅々にまで、絶頂の電流がほとばしって、ひくひくと痙攣までしてしまう。 一緒に脱力してもなお、バイブがまだ埋め込まれたまま、二人の体を震わせ続け、 すぐに達したばかりの秘所に快感が戻ってきて、また淫らな声が漏れ始める。 二人でしっかりと抱きあった肌がぴったりくっ付いて、最初から一つの肉体であったかのような錯覚に囚われた。 現出するのは、熱い吐息と喘ぎだけだったが、体と心の奥底で交し合う暗号データで、 詳細な気持ちのやりとりをする。 データがお互いの微細な感情や、快感までを運んできた。 それは確かに、同型である2人にしか分からない、特別な感覚だった。 <まだ…だよ…?まだイケるよね…?ティエリア> <あ…んっ!う…うん…。もっと、イキた…い…!  やっ、んっ、あうっ!気持ちいい…!僕の体…全部気持ちいいよ…っ!!> <うんっ!あたし…も…っ、んくっ、繋がってるよね、あたし達…あんっ!> <分かる…よ…!きみ…の感じが…全部…あぁんっ!> <あんっ!ティエリア…。もっと感じて…あたしの事…!> <ああっっ!また…来た…っ!熱いよぉっ!  もうダメ…助けて…っ…、また…イ…ク…!ネ、ネーナぁっっ> <初めて名前、呼んでくれたね…嬉しい…んくうっ、  あぁん、あたしも…イキそ…だよぉ…!ティエリアぁ、一緒に…!> ネーナの喜びが、ティエリアの体の隅々まで駆け回る。 「あぁぁぁんんっっっ!!!」 強く抱き合って、再び同時に達する二人。 体にまとわりついてくる汗までも、気持ち良かった。 同型ゆえの、完璧なシンクロ率。 最初はちぐはぐだった二人の状態は、完全に一致した。 その後も2人は、快感と信号が体内を乱れ飛ぶ、倒錯した状態で朦朧としながらも、何度も達し続けた。 それからどの位経ったのか分らないほどに時間が過ぎてようやく、二人が体を離した。 体のあらゆる体液が出尽くしたような虚脱感と、まだ何か埋め込まれているような余韻の中で、 二人は荒く息を吐き、ベッドに体を預けていた。 ティエリアが訪れた時、午後11時だった時計の針は、すでに6時を指している。 ようやく息の乱れが落ち着いてもなお、余りに激しく、深すぎた行為の余韻で、ティエリアは何も考えられないままだった。 ただ時計の針が一秒一秒時を刻むのを、ぼんやりと眺め続けた。 確かにお互いに分かり合えたような、穏やかな空気の中、時計の進む音だけが耳障りに響く。 時計が6時45分を回った時、不意にネーナが手を握ってきた。 ネーナの方に向き直り、二人で見つめあったが、何か言葉を交わす気にはしばらくなれなかった。 「…もう帰らないと……」 時計が7時を回ってようやく、ティエリアがネーナと手を離して体を起こした。 「……。行かないで…?」 ネーナは相変わらず率直な感情しか口にしない。それがティエリアには痛かった。 トリニティが組織に不要だと考えていた事など、いつの間にか忘れ去っていた。 「僕は…プトレマイオスで戦うように造られた存在だ…。帰らないと…いけない…」 ネーナが怒気を強めて反論した。 「あたしたちだって戦争根絶の為に戦ってるんだよ…!?やってる事、一緒じゃない…!  あっちは居心地悪いんでしょ?あたし達と戦えばいいじゃない…!」 「…同じ、人工物…だから…?」 ティエリアが憂いを帯びた視線で振り返り、言った言葉は余りにも悲しすぎた。 ぐっとネーナが言葉を飲み込む。 ティエリアが感情を吐露するように、話し始めるのを黙って聞くほかなかった。 「なんで、僕たちをこんな風に造ったんだろう…。造物主は…。  戦いに使うだけなら、人間らしい感情も感覚も…必要ない…のに…!」 言いながら、堪えきれずにティエリアに涙が零れ落ちた。 トレミーの人間達が笑いあっている絵が再び浮かぶが、やはりその輪の中にティエリアは、いない。 「限りなく人間と相似形に造っておきながら…、人間と交わる事だけは許さないって言うのか…!?  食事も睡眠も、排泄だってするというのに…どうしても、人間には…。  僕は…わからない…造物主の真意が…」 「ティエリア…」 ネーナがティエリアをぐっと抱き締めた。 触れ合った肌の暖かさが、ティエリアの心を癒していく。 「あたし、バカだから…上手く言えないけど…。  向こうの人達と、もう何ヶ月も一緒に暮らせてるんでしょ?  そんで、ティエリアは人間との違いに悩んでるんだよね…?  でも、そうやって悩む事自体が、人間…なんだよ。きっと…。  本当に機械だったら、そんな風に思うこと、絶対にないもん。」 「僕…は…人間になれるっていうの…か…?」 「あたし、この時間軸に生きてみて、一つだけ分かった事があるの…。  あたし達、身体と機能は完璧に造られてるけど、他はそうじゃないって事…。  色んな事を知って、インプットしていって、進化していくの…。」 「人間の複雑な感情までインプットしないと…完成形にはなれない…  あらゆる事態に適応できない…そういう事か…」 「あたしには兄貴たちがいるから、そんな事考えもしなかったけど…。  造物主サマはもしかしたら恐れたのかもしれない…。  あたし達が、限りなく人間に近づいてしまう事を…。  戦闘用人工物って事を忘れて、他の人間たちみたいに平和に暮らしたがるかも…って」 「メリットと、デメリット…。だから、僕達に制限を設けた…」 「造物主サマはずるいよね…。こんな痛みまで与えるんだもん…。  でも、あたしは…。それでも、造られて良かったって思ってるよ…?  兄貴たちと一緒に暮らせて、ティエリアにだって会えたんだもん」 ネーナがティエリアを抱き締める腕に、更に力を込めた。 「ティエリア…。人工物だからって、機械であろうとする必要なんてないよ。  こういう風にぎゅっとされるの、気持ちいいでしょ?  男の人にしてもらうと、もっとほわ〜んってなるんだよ…?」 「僕は…男のふりをしてる…。誰も僕を女だなんて…思ってない…。  それどころか…、特別な関心さえ誰も…」 リヒテンがティエリアで楽しみながらも、クリスの事しか考えていなかった事を思い出す。 他の男だって、きっと自分以外の誰かの事を…。 「ばっかねぇ…!?じゃあ別に女の子同士でもいいじゃない…?  ティエリアの事好きだったら、受け入れてくれるはず…」 ネーナがあえて明るい調子で言った。 「でも僕は…、僕はやっぱり根本的に人間じゃない…。人間にそんな事を期待するなど…」 「ティエリア、もっと人間のお勉強が必要みたいね?  人を好きになるって、理屈じゃないんだよ?考える前に、心が動いちゃうの。  おいしそうな物を見て、食べたいって思うみたいに」 「…僕には…分からない……」 ネーナが苦笑して、急にぱっと離れて、机の引き出しを探った。 中から何かを取り出して、ティエリアの手に握らせてやる。 「こ…これ…は…?」 「コンドーム♪男の人につけてもらうの。  ティエリアが男の人の誰かと、恋に落ちちゃった時用♪こういういいものがあるのよ♪  造物主サマの思い通りになんか、絶対なってやらないんだからっ♪」 「お、男に付けてもら…う…?」 「そう♪コレしてもらって、体液混入を防ぐの。  口から入るものは胃で分解されるから問題ないけど、  下から混入されちゃうと、サビちゃうからねっ♪」 「く、口…?」 「うん♪この前、ミハ兄がしたでしょ?ああいう事とかぁ…あとはキスとかも平気よ」 「キ、キス…?」 ネーナが不思議そうにティエリアを見つめ、すぐに思い当たって吹き出した。 「あははっ♪ゴメンゴメン♪散々エッチな事しちゃってるのに、キスだけはしてなかったよね。  じゃあ、しよっか♪」 ネーナがティエリアの頬を優しく両手で挟んで、唇を近づけた。 唇がどんどん近づいてくる。 急にどきどきして、ティエリアが本能的に目を閉じた。 しかし唇が触れ合う瞬間、なぜかネーナが動きを止めた。 「……。やっぱ…やめっ♪キスは、人間の誰かにしてもらった方がいいよ。  初めてのチューは、やっぱり好きな人と…ね?」 「す、好きな…人…?」 「そう。こういう事を、唇でするの」 ネーナがティエリアのほっぺに優しく口付けた。 「場合によっては、エッチよりも気持ちいいの…。だから、好きな人としなきゃダメなの」 ネーナがもう一度、ティエリアのおでこにキスをした。 ─エッチよりも、気持ちいい?本当に? マイスターやクルーとそういう事をしている自分の姿が浮かんで来て、急に恥ずかしくなった。 「お、俺にはヴェーダがいるから…!人間なんて…必要ない…!」 ぶっきらぼうに言い放つティエリアの心を見透かしたように、 ネーナがひとしきりけらけらと笑った後、真面目な顔に戻って講釈を続けた。 「はいはい♪そうね♪でも、あたし達とこういう事しちゃったって事、好きな人に言っちゃダメよ?  それに、最初はいくら気持ちよくても、感じてませんってふり、しなきゃダメよ?」 「え?…なんで?」 「人間って…、フクザツなの。言っていい事と悪い事があるの。  それに…。手に入ったものには、すぐ飽きちゃうの。  だから、いきなり全部は見せないで、小出しにしてくの。分かった?」 「…そんなもの…なのか……」 やっぱり、自分と人間との間には、まだまだ埋められない距離がある…。 「でも、なんでそんな事が分かるんだ?ネーナ…もしかして…君…」 ネーナがはっと顔を上げ、一瞬悲しげに顔を曇らせた。 しかし、すぐにいつも通りの小悪魔顔に戻って、ティエリアの肩をばしんと叩いた。 「…やっだなあ!一般論よ、一般論♪  人によっては思いっきりバラして欲しいって人も居るし…!いきなりすごいエッチしたいって人もいるし…!」 「そ、そうなのか…?」 「そうよぉ♪それに、あたしの方が、人間なんて必要ないから…。  あたしには…ヨハン兄とミハ兄がいるもん。ティエリアに、ヴェーダがいるみたいに…」 ネーナもまた、兄たちに依存しながらも、自分の確固とした居場所を探しているのかもしれない。 ティエリアにはネーナの気持ちが、痛いほど良く分かった。 その後、次の会合の約束を交わす事さえなく、ティエリアはプトレマイオスに戻った。 意識と領域を開放したティエリアは、地球の美しい青や、人間たちの行動、 そしてCBによって奪われた命の痛みや人々の悲しみまでをも、貪欲にインプットして行った。 感情が研ぎ澄まされ、周りの景色がどんどん色鮮やかになっていく。 確実に人間に近づいていく己を日毎感じるティエリアだったが、 最初から与えられたものではなく、自分の意志によって誰かとの絆を見つける前に、 ヴェーダという大きな存在を失う事になるとは、予想だにできなかった。 そして、同じく成長過程にあるネーナにもまた、兄たちを失うという悲劇が用意されている事も、 当然知る由がなかった。                                    <終わり>