ティエリアが機体テストから帰ってくるまで、思ったより随分長く時間がかかった。 深夜3時を過ぎ、俺が待ちくたびれてうとうとしかけた頃、 ようやく彼女はパイスー姿のままで部屋に戻ってきた。 ベッドの上で寝転んだ俺を一瞥してふっと微笑むと、 そのまま部屋に備え付けられた簡易シャワールームに向かう。 部屋の空気が動いた時に、汗の匂いに混じってふわりと先ほど嗅いだ独特の甘い香りが漂ってきて、 我知らず鼓動が早くなった。 が、それも結局一時だけの事だった。 ティエリアがパジャマに着替えてベッドに戻ってくるが、 その顔にはどこか張り詰めたものが浮かんでいる。 俺が体をずらしてティエリアの寝場所を確保してやると、彼女は素直に俺の隣に寝転んだ。 随分長くかかった機体テストのせいなのか、顔を覗き込むと、やはり疲労の色が濃く浮かんでいる。 とてもさっきの続きを、などとは言い出せない雰囲気だった。 「大丈夫か?ティエリア。随分疲れてるみたいだけど。テスト、うまく行かなかったのか?」 心配になって尋ねると、ティエリアは俺の顔をしばらくじっと見つめた後、ふっと表情を緩めた。 そのまま唐突にぎゅっと俺の体にしがみ付いてくる。 ねこみみとしっぽの事もあって、その仕草が本当に猫が飼い主に甘えるようなものに思われた。 「ど、どうした…?」 昨日まで考えられなかった程、急に近づいた距離感に、戸惑いながらもおずおずと訊いた。 ティエリアは無言で押し黙ったまま、これがその答えだとでも言うかのように、 俺の体に回した腕により力を込めてくる。 場の空気が微妙に揺らいでいるのが肌で感じられる。 眠りに就く前独特のまったりとした空気感の中にも、甘い睦言一言言い出せないような、 どこか重苦しいものも確かに混じっていて、俺は無言のまま、 ティエリアが何か新しい事を起こす、そのタイミングを待った。 しばらくすると、ようやくティエリアが重い口を開く。 「……君に言っておかなければならない事が…………」 これだけ近い距離にいても聞こえるか聞こえないかのか細い声だったが、確かにティエリアはそう言った。 だが、その後は押し黙り、いくら待っても続く言葉が返ってこない。 「ティエリア…?」 そっと顔を覗き込んで様子を窺うと、 ティエリアの瞳には、今まで一度も見た事がない程の困惑と苦悶がありありと浮かんでいる。 どうやらティエリアは、ねこみみとしっぽ以上の重大な秘密をまだ隠し持っているらしい。 そして恐らくその事が、今日あんなにも簡単に俺に体と心を許した大元の要因なのだろう。 直感的に、今これ以上踏み込むのは危険な気がした。 ティエリアにとっては、色々な事が一気に起こりすぎた1日だったに違いない。 「いいよ。分かった、ティエリア。今日はもう疲れただろう。続きは今度聞かせてくれ。  いつでも聞くから」 諭すようにティエリアの背中をポンポンと優しく叩きながら言うと、 ティエリアがほっと安心したように体の力を抜いたのが伝わってくる。 「おやすみ……」 それだけをぼそっと呟いて、ティエリアは俺の脇腹に額を押し付けたまま、 子供のように安らかに寝入ってしまった。 ** 翌朝。唐突に王留美から連絡が入った。 次の週末に行われる財界のパーティーに、秘密主義が鉄則のアロウズの軍人達が珍しく参加するらしい。 その一報を聞いた途端、傍目にもはっきり分かるほどにティエリアの表情が強張った。 どうした、ティエリア、と声を掛けようとしたその矢先に、 ティエリアが一歩前へ乗り出し、決意を込めた視線をスメラギさんに向けた。 「そのパーティーに、ぼくを潜入させてください。敵の正体をぼくはこの目で見たい」 まっすぐな視線からは、迷いが全く感じられない。 どれだけ説得を試みても、もはやその決意が揺らぐ事はないのが、 ティエリアの強い瞳と口調でクルーにも痛いほどに伝わった。 しばらくみんなと視線を交し合って考え込んだスメラギさんも、すぐに了承して頷く。 その後、スメラギさんの立てた潜入プランに従い、俺たちはその準備に取り掛かる事になった。 ** アロウズの高官や政財界の大物が一同に介するパーティーは、 華やかな歓談と懇親の場という以上に、世界の情勢を動かす程の重要な意味を持っている。 世界を表から裏から操っている大物の集まる場所に潜入すると言う事は、 まさに敵の本陣への切り込みに他ならない。 綿密に練りこんだプランであっても、どこから破綻をきたすか予測は難しい。 潜入ルートの確保、身分の詐称の事前準備、警備状況の把握、逃走ルートの確保、参加者の洗い出し――。 やる事は山ほどあった。 この潜入プランにティエリアが並々ならぬ決意を抱えている事は、 日毎強まる緊張の度合いで、あえて聞かなくても明白だった。 あの夜に言いかけた事と、何か関係があるのだろうか。 しかし、結局それを聞き質す時間は与えてはもらえなかった。 俺もティエリアも迫る決行日に備えて毎日忙しく準備に走り回り、すれ違いが続いていた。 ようやく準備が完了して最終チェックもクリアした時には、既にパーティー当日の朝になっていた。 地上の秘密基地内に逗留したプトレマイオス内は、朝から慌ただしかった。 最終チェックは済んだと言うのに、皆が艦内をバタバタと走り回り、落ち着く気配もない。 特に忙しく動き回っているのは、女性たちだった。 ティエリアがきらびやかなドレスで盛装してパーティーに臨む事は聞かされてはいたが、 なにぶん少女の体つきが色濃いティエリアから不自然さを消す為に、 彼女たちはあれこれ策を練って、大人の女性の体つくりに奔走しているらしかった。 ティエリアの体付きが大人に程遠い事は、他の誰よりこの俺が知り尽くしている。 今頃ティエリアは組織特製のボディスーツでラインを作り、ウィッグをかぶり、 大人びたメイクを施されているのだろう。 その完成形が実の所楽しみで仕方ないが、同時に心配も強い。 あのねこみみとしっぽの存在を隠し通せればいいが――。 それともティエリアはもう、みんなに秘密を打ち明けるつもりなのだろうか。 だから女性達に体に触れさすのだろうか。 だとすると、俺とティエリアの特別な関係もそれほど深い意味を為さなくなる。 そう思うと、どこか寂しかった。 が、その心配は杞憂に終わった。 ミッションプランのスタートまで、とりあえずの休憩を取っていた俺の部屋に、 ティエリアがいつものボレロの制服姿のままで入って来たからだ。 その手には、ワインレッドの大人びたドレスと長髪のウィッグにメイク用品らしき小物入れ、 そして肌色のボディスーツらしきものがどっさりと抱え込まれていた。 「メイクのやり方は習った。ドレスの装着を手伝ってくれ」 俺が何か言う前に、どこか恥ずかしそうに頬を薄く染めてつんと顎を上げ、 ティエリアが俺の手に強引に荷物の山を押し付けてくる。 え?と見返すばかりの俺。 「まだぼくの秘密を彼女達に知られるわけには行かない。 ぼくに勝手に手を出した君には秘密を守る義務がある。そうだろう」 ティエリアが頭ごなしに強い口調で説明セリフを言い放つが、 その言葉には明らかに照れ隠しの響きも混じっていた。 思わず苦笑してしまう俺をじろりと睨みつけ、ティエリアはわざとらしく壁時計に目をやった。 そのまま時間がない、と言わんばかりに俺の腕をむんずと掴み、部屋を出て強引に廊下を引っ張っていく。 有無を言わさず引っ張り込まれたのは、ティエリアの部屋の簡易シャワー室の脱衣所だった。 小部屋に入るなり、ティエリアは無言のままでいきなり制服を脱ぎ出した。 「お、おいっ、ティエリアッ…!!」 慌てて声を張り上げた俺に目もくれる事無く、王留美の情報を聞いたあの時そのままの 決然とした態度のままで、ティエリアは迷いなく制服をどんどん脱ぎ去っていく。 だが、その顔には確かに恥じらいも浮かんでいた。 どうやら、恥ずかしさを隠すためにあえて堂々と脱ぎ散らかしているらしい。 「ていうか、なんで風呂…?」 俺の単純な疑問に、半裸のティエリアが今やはっきり分かるほどに頬を赤くしながら、 ぼそっと答えた。 「脱毛だ」 予想外の答えに一瞬あっけにとられる。 手元のドレスをちらと見ると、まあ、確かに腕やら背中やら露出は激しそうだが、 そもそもティエリアは――。 「お前、毛なんか生えてないじゃん」 一度だけ拝んだティエリアの裸身をくまなく思い出しながら呟くと、 ティエリアの髪の毛が一瞬ひょこっと動いた気がした。 ねこみみの鋭い聴覚が、俺の言葉を漏らさず聞き取ったらしい。 むっと表情を曇らせながらもやはり頬を染めながら、高圧的に答えてくる。 「スメラギ・李・ノリエガに言われた。脱毛をしていけと。 例え普段見えないようなところでも、着飾った時は見える事があるから、とな。手伝ってもらうぞ」 ティエリアは既に全裸になり、その美しい裸身を翻してさっさと浴室に入って行ってしまう。 俺に断る選択肢は全く与えられていないようだった。 まあスメラギさんの言う事なら正しいんだろうと溜息を付き、 俺は荷物をかごに置いてから、ティエリアの後を追った。 浴室に入ると、ティエリアが既に作業に取り掛かっていた。 壁に掲げられた大きめの姿見に向かい、真剣な表情で胸のあたりにT字型のシェーバーを押し当てている。 ティエリアの腕が動く度に、小振りの乳房が揺れた。 思わず息をのみ、改めて背後からその裸身をまじまじと見つめる。 少女らしい繊細な体のラインを、俺は美しいと思った。 やはりその尻から伸びている、濃紫のしっぽでさえ――。 今見るとしっぽの違和感は驚く程なく、それは完璧にティエリアに馴染んでいた。 改めてじっくりと観察すると、柔らそうな短毛がしっぽの先端までびっしりと覆っている。 前見た時は気付かなかったが、意外に長い。 やんわりと全体的に曲がってもなお、しっぽの先は膝の下にまで達していた。 ティエリアは背後に立つ俺と鏡の中で目が合うと、わざとらしく視線を外し、 持っていたもう一個のシェーバーを後ろ手に手渡してきた。 「背中を剃ってくれ。太ももも、ふくらはぎも。つまり、体の背面全てをくまなく」 そう指示されても、俺の気持ちはどこか釈然としないままだった。 どう見回しても毛など1本も生えていない背中の、一体どこを剃れというのか。 それでも鏡に映るティエリアの真剣な表情に押されて、 俺はティエリアの背中にシェーバーの刃先をそっと押し付けた。 女性用安全刃仕様のシェーバーは、相当強く剃り上げても肌を傷つける怖れはなさそうだったが、 ティエリアの柔肌を1ミリたりとも傷つけるわけには行かない。 出来るだけ丁寧に、優しく、すすすっとシェーバーを肌に這わせて落としていくと、 ティエリアの体がビクっと震えた。 驚いて刃先を肌から離し、鏡の中の表情を窺うと、 ティエリアは何かに耐えるように瞳を伏せて、かすかに唇を震わせている。 その唇が「ミッション、ミッションだ…」と形作るのがはっきりと確認できた。 心なしか息まで乱しているティエリアは、僅かな刺激にも敏感になっているようだ。 「大丈夫か?気持ち悪いなら、自分でやるか?」 「バカな事を言うな…っ!自分で背中を手入れできるわけがないだろう…っ!」 俺の問い掛けにティエリアは声を荒げ、ぶんぶんと乱暴に首を左右に振って拒否した。 鏡の中に映るティエリアの顔は、もはや羞恥を隠し切れていない。 困ったようにしっぽの先端が揺らめいている。 その繊細な動きが、それが指並みの器用さを十分に持ち合わせている事を確信させてやまない。 だが、しっぽ使えばいいじゃん、とはさすがに言えなかった。 「こ、これを塗れ。スムーズに終わる」 動揺を隠せないまま急に思いついたように、ティエリアは壁際のキャビネットに 置かれたボトルを乱暴に手に取ると、俺にずいっと手渡してくる。 ラベルを見ると、シェービングジェルと書いてあった。なるほど、脱毛には必需品だろう。 分かった、と頷き、プルプルとした触感を保つジェルを手の平にとぷとぷと垂らして、 ティエリアの背中に塗りこんで行く。 ジェルが予想以上の冷たさとぬるぬる感を与えたらしく、 ティエリアは先ほど以上に大きく体を震わせた。 俺の手が肌を這うごとに、かわいそうなほどに赤面して唇を噛み締め、 それでも必死に羞恥を押し込んで、胸から腹までシェーバーを動かしている。 あまり長引かせるのはさすがに気が咎めた。ジェルを一面に塗りこんだ俺は、完全に覚悟を決めた。 ティエリアのおかっぱの髪を上げ、綺麗なうなじのラインに目を奪われながらも、 丁寧に産毛を剃ってやる。自分の髭を剃る様な、慣れた手付きを心がけた。 俺の手付きが変わった事でむしろティエリアは安心したのか、 はあっと深い溜息を吐き、自らもようやく作業に集中しだした。 「ティエリア、背中行くよ?動くなよ」 うなじが終わり、一応注意して次は背中に取り掛かる。 肩甲骨の間にシェーバーを押し当て、そのまま丁寧かつ大胆に、一気に腰のくぼみまで剃り下ろした。 「んっ…」 さすがに広範囲の刺激で、ティエリアがかすかに肌を震わせる。 背中一帯に伸びたジェルが刃をするすると滑らせ、刃の広さに水気を剃り取った。 渇いた道筋のように一本の線が作られて素肌が露出し、同時にかすかに赤く染まった。 かみそり負けという程ではない、単に刺激を受けて反応しただけの事だったのだろうが、 何故かそれが艶かしく見えた。 元々視認出来るほどの毛など生えていないティエリアの背中である。 数回上から下まで往復させただけで、背中のシェービング作業は完了した。 ふと鏡を見つめると、ティエリアが右の腕を上げ、真剣な表情でワキの下を剃っている。 やはりどう見ても毛など一本も生えていないワキに、 馬鹿丁寧なほどにシェーバーを押し当てては上下させていた。 (ティ、ティエリア……) 何か見てはいけないものを見てしまったような、一方で酷く卑猥で、じっと見つめていたいような。 初めて見る開けっ広げなティエリアの姿に、思わず心臓が飛び跳ねる。 つるんとした曲線を描く薄そうな皮膚に、ついむしゃぶりつきたくなってしまう。 毛剃りに集中する事でなんとか堪えようとするが、追いかけるように高まってくる欲望に気付かずにいられない。 二人だけの浴室で、シェービングパーティなどしているのだ。 目の前には全裸のティエリア。 いつ襲われても仕方ない状態なのを、ティエリアは分かっているのだろうか。 ティエリアの背中を見やると、ところどころに残ったジェルのテカったぬめりが誘うように輝いている。 熱を集めはじめた股間の疼きから目をそらすように俺はしゃがみこみ、 ティエリアの尻を手の平に包み、ジェルを塗り込んだ。 やりやすいように尻肉を下から持ち上げ、赤子のようなすべやかな肌に刃を当てると、 今更ティエリアの腰がぴくぴくっと痙攣する。 同時にしっぽまでもふるんと揺れるものだからたまらない。 そう言えば、このしっぽの感度を試してみたかった事を不意に思い出した。 だが、今は優先すべき事がある。 しっぽの生え際を刃先でなぞり、最初からつるつるにしか見えない双丘をゆっくりと剃り上げていく。 続いてしっぽの生え際ギリギリにまで刃を這わせ、円周に沿わすようにシェーバーを動かすと、 ティエリアの息があからさまに乱れはじめた。 しゅっ、しゅっと刃が肌を掠める度に、しっぽの根元が逃げるようにくねる。 その軟体動物のような動きが、否応にも性的なものを思い出せた。 ティエリアはもうワキの処理を追え、手持ち無沙汰でシェーバーを握り締めたまま、 居心地悪そうに体をかすかに揺らしていた。 「ここも剃るんだろ?動かないで……」 しっぽの付け根の真下部分を剃るために、俺はしっぽを掴み、ぐいっと上部に持ち上げる。 その瞬間、ティエリアがはうぅっ、と気の抜けた声を漏らし、 耐え切れないかのように真正面に掛けられた姿見に両手を付いて体を支えた。 自然、俺の目の前に尻が卑猥な格好で突き出される。 手の平には、ティエリアの体温そのままのようなしっぽの温かみと、その脈動がはっきりと伝わってくる。 同時に匂い立つあの甘い香り。 眩暈を覚えそうな程に甘くうっとりとした香りに、俺の股間に加速度的に血液が集中し出す。 「し、しっぽは剃らなくてもいいのか…?」 無意識状態で口から出た言葉は、余りに下らなかった。 が、ティエリアは律儀にも首だけを振って、当然のように否定してくる。 かすかに震えながら、触られているのを耐えるような雰囲気は 素肌を剃っていた時でさえそれほどなかったものだ。 それほど、このしっぽの感覚が鋭敏だと言う事か。 もしかすると、ティエリアはしっぽでも濡れるのかも知れない。 思わず生唾を飲み込み、確認するように双丘を割り開くと、 ティエリアの秘裂には予想通りに薄っすらと蜜液が滲んでいた。 この瞬間、俺の理性は弾け飛んだ。 白い太ももからふくらはぎまで乱雑に見回すが、やはり毛など1本も生えていない。 その事を免罪符に、俺はシェーバーを投げ捨てた。 床に落ちたそれがカラン、と硬質な音を出す。 途端にティエリアの髪から、隠されていたねこみみがひょこんと飛び出て――。 それがまるでティエリアの性欲の昂ぶりに併せたかのような本能的な反射に見えて、 どうにも我慢が出来なくなる。 見られているのを感じてか、ティエリアが太ももを閉じかけるのを阻止し、 無理矢理に秘裂を割り開き、潤んだ膣口に指の腹を押し付けてくにくにと弄ってやった。 「っうっ!!」 一声甲高く鳴いて、ティエリアの下半身がびくっと大げさに揺れた。 その瞬間、秘裂がいやらしく蠢いて俺を誘う。 堪らず太ももの裏側にむしゃぶりついて、弾力のある若い肌を舐めしゃぶる。 くちゅくちゅ、ちゅぱちゅぱと唾液を絡ませ、いやらしい音をたっぷりと浴室に響かせながら 太ももを執拗に舐めていると、シェーバーの剃り跡にも負けないくらいに白肌は赤く色付いた。 「んっ、ぁっ、んっ、ちゃんと、剃れ…っ」 「でもティエリア、毛なんかないってば」 「んっ、ひうっ、んっ…!それでも、ちゃんとしろ…っ」 「後でな」 太ももの裏側など、普通にしていたらまず触られる事はない。 だからこそティエリアにとっては恥ずかしく、また感じてしまうのだろう。 どんどん亀裂を擦る指の速度も速めていくと、愛液は留まる事なく溢れ出して俺の指をたっぷりと湿らせた。 はあはあとティエリアの息遣いも荒くなっていく。 いつしかその腰が不安定に揺れ始め、姿見に縋るように付いた両手の下では、鏡面が白く曇っていた。 前に逃げ出そうとする腰をしっかりと抑え込み、太ももから尻の曲線までゆっくりと舐る。 粘着的な舌の感触が火照った素肌に辛いのか、ティエリアの尻にきゅっと力が入ったのが分かった。 「ティエリア、続けるぞ…?いいよな?」 空いた左手の指にたっぷりと愛液を含ませて体の前面へと回し、 緊張を解すようにクリトリスを軽く揺すってやった。 「んぁっ、ああっ…!!」 一際高い嬌声を発して、ティエリアの腰が逃げるようにくねる。 早くも興奮しきっていたクリトリスは、それほど強烈な快感を与えたらしい。 が、逃がすつもりはもちろんない。俺は濡れたとろとろの指を核の頂点に押し付け、 ティエリアの快感の高まりにあわせる様な、緩やかな摩擦を開始した。 「っふぅ、んん…っ、あうっ…」 弱点と思われる最も尖った部分を避け、緩急を織り交ぜてクリの側面を扱くと、 ティエリアは不規則な淫声を上げながらゆっくりと昂ぶっていく。 ティエリアが存分に快感に酔った頃を見計らって、 十分に潤みきった膣口にぬぷりと指先を挿入し、軽く掻き回して責める。 ティエリアは姿見に顔面をすり付けるようにして身悶えた。 「ティエリア、まだ2回目だけど……、痛いか?」 「あん…っ、んくっ、んっ、ば…か…っ、訊く…な…っ」 「やめる?」 「あぁんっ、だから…、訊くな…っ、い、今更…っ、はぁうっ!」 ずんと奥まで指を突き立てて抜き挿すと、 吸い込まんばかりに膣壁が火照って蠢いているのが、指先の感覚で分かった。 相当、感度が昂ぶっているらしい。ティエリアの嬌声を快く聞きながら、 舌をピンと尖らしてしっぽの付け根の地肌をれろれろと舐め回してやる。 「あぁうぅっっ!!」 途端に、ティエリアの腰が我慢できないかのようにのたうった。 しっぽがにゅるんと高く上がったかと思ったら、自分で意志を持つかのように勢いよく、 かつ正確無比に狙いを定めて、尾先で俺の舌をびしっと弾き飛ばす。 痛い。俺の中で、復讐心のようなものが加虐欲に紛れてめらめらと昂ぶった。 クリトリスからも秘裂からも指を離し、自由になった2本の手で、 頼りなく空中を彷徨うしっぽの中腹をしっかりと握り締める。 「ひあっっ…!」 ティエリアが予想外の刺激に驚いて素っ頓狂な声を上げるのが、たまらなく嗜虐心を煽る。 毛の流れに逆らうように指でなぞり上げると、毛束はふわりと浮き上がり、 毛根の白さが表面の紫と美しいコントラストを見せた。 そう言えば、大抵の動物は体の先端を触られるのを嫌う。 最も神経が敏感で、かつ皮膚が薄く、弱い部分でもあるからだ。 自然の法則に従えば、おそらくティエリアも――。 俺は仮説を確かめるように、ティエリアのしっぽの先にまで右手を這わせ、 狭くなっている最先端部を指先で軽く押し潰した。 んくぅっ、と喘ぎつつも息を飲む音が頭上から振ってくる。 やはりここがティエリアの弱点なのは、間違いなさそうだった。 先端に刺激を与えながら、初めての夜にティエリアが俺にした手淫を思い出しつつ、 左手でしっぽの中腹部をもぐいぐいと扱きあげてやる。 「ふあ…っ、んああっっ、あぁぁっっ…!やめ、それ…っ、やめてぇっ…!!」 性感帯を弄った時よりも艶かしい嬌声を上げながら、ティエリアが体をよじる。 か細い声の中にも、淫らな響きが強く混じっていた。 くねくねと生き物のようにくねり続けるしっぽを強引に抑え込んで扱き続けていると、 完全にティエリアを手中にしたかのような優越感が体じゅうに満ちた。 もうタブーは一切関係ない。 無我夢中でしっぽの先端部を咥え込む。 唇できつく締め付けながら毛束を割り、身の突き出た最先端部を舌で舐め転がしてやると、 ティエリアは泣きそうな声をあげて姿見にしがみ付いた。 「も、もういいからぁ…っ、も…、だめぇぇ…っ、お願い…だから…、やめ…っ」 途切れ途切れに震える声でティエリアが懇願してくる。 ふと見ると、いつしかティエリアの膝は折れそうなほどにガクガクと震え、 太ももには愛液の垂れ落ちたらしい、いやらしい濡れ跡がべったりと付いている。 秘裂がひくひくと物欲しげに蠢いているのが、嫌でも目を引いた。 そこに突っ込んだ時に得られる締め付けの快感を正確に予測して、ペニスが期待で打ち震える。 ティエリアの口だけの拒絶とは裏腹に、俺の口の中で快感に夢中になるかのように悦びくねる、 しっぽの軟らかくも強い感触が、俺を無闇に暴走させてしまう。 コリコリとしっぽを噛んで責めると、更なる快楽をねだって誘うかのように ティエリアの尻が左右に揺れた。 ほぼ無意識状態でやってしまったらしいいやらしい行為に、ティエリア自身は全く気付いてはいない。 その証拠に、鏡に映るティエリアの顔は、何の悪意も思惑もないかのように快楽に蕩けたままだった。 俺の舌が毛束を押しのけて地肌をくすぐり、歯が肉を噛む度に、 その顔が今にも涙を零さんばかりに歪む。 鏡に付いた手の平が、もはや耐えられないかのようにぎゅうっと握り締められたのを見た瞬間、 俺の淫欲の方が先に我慢の限界を迎えた。 ようやくしっぽを解放してやると、それは膝下まで力なくだらりと垂れ下がる。 俺がズボンのジッパーを下ろす、ジーッという音が風呂場にエコーしてやけに卑猥に響いた。 勢いよく飛び出したペニスを握り締めて秘裂に近づけると、 熱を感じたそこはそれだけでぱくぱくと口を開けて欲を教えてくる。 かすかに震え続けている腰を掴み、ぐっと引き寄せると、ティエリアの体がびくっと強張った。 「ティエリア、どうする…?」 「あ、あうぅんっ…、い…じわるぅ…っ」 わざと意地悪く訊いてやる。 鏡の中のティエリアの顔が、戸惑いつつも淫らな色を強めたのが手に取るように分かった。 秘裂に勃起を押し付け、愛液を亀頭にゆっくりとなすりつけながら、 俺は再び意地悪い質問を投げ掛ける。 ティエリアというのは、つい虐めてしまいたくなる魅力の持ち主なのだから仕方ない。 「嫌だったら、今すぐやめるよ?」 ぬめぬめと愛液にまみれた亀頭が膣口を這いまわる感触は、 ぞくぞくするような快感をティエリアに与えたらしい。随分肌が熱く火照っていた。 恥ずかしそうに首を振った後、ついに覚悟を決めたかのようにティエリアの唇が動いた。 「ん…う…、い…、挿…れて……」 消え入りそうなか細い声。それでも、いや、だからこそ俺の興奮は最高に昂ぶった。 一気に捻じ込んでしまいたのを何とか抑え、一層興奮を煽るであろう次なる質問を投げ掛ける。 「後ろからでいいの…?ちゃんと言ってくれよ」 「う…、ん……、う、後ろから…でい…いから……。早く…して…ぇっ」 潤んだ瞳をきつく閉じ、もう欲望を抑え切れないかのようにティエリアが絞り出す様に言った。 普段のティエリアなら死んでも言わないであろう、淫らなおねだりの言葉を口に出させている。 だらりと垂れていたしっぽまでが、手招きするかのようにゆっくりと立ち上がっていく。 征服しきった悦びで、心よりペニスの方がどくんと脈打って素直に猛った。 ぐっと亀頭で秘裂をこじ開けて腰を進めて行くと、膣壁がすんなりと勃起を受け入れた。 2,3回ずぷっずぷっと大きく緩やかな抽挿を繰り返して内部の具合を確かめると、 そこはこの前以上にとろとろに潤み切っている。 「あ…、んっ…!あんっ…!」 立後背位の交わりで、結合は嫌でも深まる。 緩やかな抜き差しでも膣奥を突かれ、揺さぶられる圧迫感を感じてか、 ティエリアが抽挿に併せてくぐもった声をあげた。 それは悲鳴ではなく、確かに嬌声だった。鼓膜を甘く震わすような響き。実に堪らない。 ストロークを規則的なものに変えて突き上げ、ティエリアの中をたっぷりと味わうと、 ティエリアの声に快感の響きが増していった。 「あんっあんっああっ!やうぅっ、あぁぁんっ!」 「すごい締まってるよ、ティエリア!?」 「ふああんっ、やだっ、ああっ、はぁぁんっっ!!」 ペニスを突き入れれば膣壁が奥の方まできゅうきゅうと絡みつき、 抜こうとすれば引きずり込むように締め付けてくる。 じゅぷっ、じゅぷっという卑猥な水音が、浴室のエコーで尚更いやらしく響き渡った。 結合部を見下ろせば、愛液にまみれて濡れたペニスが滑らかに秘穴に吸い込まれていく、 ふと視線を上げると、鏡の中のティエリアの顔はこの上なく淫靡に歪んでいた。 上気した頬で、ピストンに併せて口をパクパクと開き、激しい嬌声を迸らせ、 快楽をひと欠片でも漏らしたくないかのように、きつく目を閉じて――。 ガンガン突き上げながら小さめの胸を揉み上げ、乳首を捻ってやると、びくびくっと眉根が痙攣する。 「ああうっ…!やっ、そこ、だめ…っ、だめぇっ…!!」 「あれ?乳首だけじゃ足りない?やらしいね、ティエリア……」 「やぁうっっ!!あぁぁぁんっっ!!!」 片手をつるつるの股間に伸ばし、クリトリスに指を押し当てる。 既に愛液は、クリにまで広がってまとわりついていた。 ぬるぬると指がなめらかに陰核を滑り、ティエリアをますます深い快楽の真ん中に追いやっていく。 小さな塊でしかないのに、淫らなクリトリスは擦り具合によって感じ方を細かく変えた。 ティエリアの一番イイ感じ方を探るように弄りまわし、 ようやくそのタイミングと強さを指先が覚えた頃、 ティエリアの嬌声は遮るものがないかのように激しくなった。 「ティエリア、クリ、気持ちいい?」 「あぁぁっ、ああっあんっ、きもち…いいっっ!!」 バックから背中に覆い被さるように体を寄せ、ティエリアの耳元に低く囁いてやると、 こくこくと小さく頷いて応えてくる。 もはや羞恥を超える快感に浮かされたかのような嬌声と、気持ち良さそうな表情。 もっともっと乱れさせてやりたい。 「ティエリア、目開けて鏡見てみろよ」 ティエリアの人間の耳たぶを舐りながら囁くと、ティエリアが真っ赤な顔で頷いて、 おずおずと瞳を開けた。 「はうぅっ…!!」 鏡の中に映る人影をとらえた瞬間、ティエリアの瞳が切なげに揺れた。 後ろから荒々しく突き込まれて激しく揺さぶられ、胸とクリトリスをいやらしく弄られている少女の痴態。 獣のように交わるそれが自分自身だと理解するのに、僅かな時間を要したのかも知れない。 が、それが間違いなく自分だと思い知った時、ティエリアの顔がみるみる羞恥に歪んでいく。 「ほら、見てみなよ、ティエリア。すごく気持ちよさそうに感じてる」 「んっ、んんっ、んん〜っ!!違うっ…、あんなのぼくじゃないっ…!」 ティエリアがふるふると頼りなく首を振って否定する。 「違わない。そのいやらしい子が、間違いなくティエリアだよ。ほら」 「あんっ、あああっっ!!!ちがうっ、ちがうぅっ…!」 体が浮き上がるほど強烈に突き上げ、クリトリスを更に激しく擦って責めてやったが、 それでもティエリアは頑張って首を左右に振ったまま、否定し続けていた。 可愛くない。いや、むしろ、こう言うところが可愛いくてたまらないのか。 俺自身もペニスの快感に浮かされて、合理的な思考が満足に出来ない。 ただ、ティエリアともっと繋がっていたかった。 ピストンを停止し、繋がったままで膝を折り、 ティエリアの体を後ろから持ち上げるように支えて、ゆっくりと腰を落としていく。 「え……?」 急に快感が止んで、ティエリアが不思議そうな声で呟いた。 が、すぐに体勢が変わっていく不安定さと、勃起がゴリゴリと体内に当たる圧迫感に息をのみ、 腰を掴んだ俺の腕を強く握り締めてくる。 綺麗に切り揃えられた爪が皮膚に食い込む光景が、何故か欲情をそそった。 浴室の床は水気で湿っていて、座り込むとズボンにぐっしょりと染み込んで来たが、 そんな不快感はもうどうでもよかった、 背面座位で繋がったまま、ティエリアの足を大きく広げさせる。 鏡を見やると、この上なく卑猥な姿のティエリアがそこにいた。 ティエリアの体の真ん中に、猛った肉棒が深々と突き刺さって僅かに顔を覗かせている。 少し体を揺すっただけで、勃起が膣壁を擦り上げながら奥にめり込むのが何とも淫猥だった。 ペニスが血液を集めて、一際怒張する。 俺が何も言っていないのに、ティエリアの視線もまた、結合部に吸い寄せられていた。 一瞬脅えた瞳の中に確かに卑猥な影がチラつくのを、俺は見逃さなかった。 「ティエリア、行くよ?鏡、見てて」 「ひうっ…」 ティエリアの腰を掴み、大きく上下に揺さぶる。 肉棒がじゅるりと抜き出され、再びするりと滑り込んで膣内を抉った。 ティエリアは唇を噛み締めながらも、その光景から目を離せないでいる。 もう言い訳が出来ない事を、ティエリア自身が受け止めているかのようだった。 「ほら、入ってくの、分かるだろ?ティエリアのおまんこが、俺のをずっぷり咥え込んでる」 「あうっ、あんっ、つ、繋がっ…てる…っ」 ゆっくりとした肉棒の抜き差しが、一度は途切れた快楽を再び増幅させていく。 ティエリアが目を細めて子供のように呟いたが、続く言葉で俺は耳を疑った。 「でも…っ、ぼく、人間じゃない…のにぃっ…」 俺をこれほど悦ばしておきながら、今更ふざけた事を言う。 切なさよりも怒りを感じて、俺は答えを与えるように、ティエリアの腰の上下を速めていった。 ぬっぷぬっぷといやらしい音まで聞こえてきそうなほど、 勃起がスムーズに埋め込まれて摩擦を繰り返す。 ティエリアの紫の髪が鼻先で揺れ、擦れ合う薄い皮膚が極上の快感を紡ぎ出していく。 立ち昇る甘い匂いは、やはり人間にはない独特の芳香を放っていた。 膣内の感触も、肌の質感も、嬌声も、そしてこの香りも。 何もかもが、病みつきになりそうな魔力を強烈に発している。 「あぁっ、ああっ、すご…っ、入ってる…っ、なか…にっ…!あんっ、ああんっ!」 抽迭が秒ごとに深く、速くなり、伝い落ちる愛液が肉棒を更に潤ませていく。 それに呼応して、ティエリアの喘ぎもどんどん淫らさを帯びた。 鏡の中の自分の存在を今やしっかりと把握したティエリアは、戸惑いながらも乱れていった。 体重を預けて俺にもたれかかり、摩擦の快感を全身で味わい始める。 「気持ちいいか?ティエリア…?」 「んっ、うん…っ、きもちい…っ、すごくっ…」 嬌声交じりに乱れた息を吐きながら、俺の肩口に頭を預け、ティエリアは素直に快感を口にした。 やがて、ティエリアの腰を上下させるだけでは物足りなくなる。 ティエリアの腰を引き落としてずっぷりとペニスを奥まで滑り込ませ、俺自身も腰を振り上げて ペニスを上下に突き入れていくと、膣内の深くまで容赦なくペニスがめり込んだ。 途端にティエリアの嬌声が甘くなり、激しさをも増した。 体重が掛かって自然に体が沈み、小さい抜き差しにも関わらず、亀頭が子宮口をノックし続けていた。 「あんっ!!ああっ!だめぇっっ、奥に当たっ…!あんっああっっ!!」 ほとんど悲鳴のような嬌声をあげながら、ティエリアは激しく頭を振って快感を貪った。 よく思えばまだ2度目のセックスなのに、 ペニスは最初からティエリア専用であるかのように膣壁に馴染んでいる。 体が合うというのはこう言う事なのかな、などとぼんやり考えながら、 それでも手を緩めずに抽挿を繰り返した。 やがてティエリアに絶頂が近づき始めた事が、熱くなった膣壁内部の蠢きで分かる。 俺の方にも、限界が訪れようとしていた。自然にストロークが強く、小刻みになっていく。 快楽にまみれながら、ティエリアの体が痙攣しはじめた。 「あんっ、ああっ、ああっ、イ、く…っ、イっちゃうっ…!やああっ!!」 ティエリアはもう躊躇いもなく自分の限界を訴えて叫び、 俺の腕を掴む指にぎゅうっと力を込めた。 無意識的に俺の手が腰から下腹部に滑り落ち、 快楽に蕩けてぷっくりと膨らんだクリトリスをじゅっと押し潰す。 「あっ、あああっ、あぁぁぁぁっっ!!!」 途端にティエリアの上半身が仰け反り、膣壁が激しく収縮してペニスを締め付けた。 びくんびくんという鼓動が、はっきりと伝わってくる。 数秒ぴんと強張ったティエリアの全身から徐々に力が抜け、俺にぐったりとしなだれかかってくる。 絶頂の余韻の息遣いが、俺の耳元にはあはあと熱く掛かった。 急激に、俺にも強い射精感が押し寄せてくる。 任務前だ。中に出すわけには行かない。 呆けた表情で、鏡越しにぼうっと見返してくるティエリアの体からペニスを抜き去った瞬間、 堰を切ったように白濁がびしゅびしゅうっと鈴口から噴き出た。 荒く上下するティエリアの背中に、大量の精液が打ち付けられてだらりと滴り落ちていく。 「ふあ…っ、ああっ……」 白濁液の熱さに敏感に反応して、ティエリアがびくびくと肩を竦める仕草が、とても可愛く見えた。 ** 気だるい空気の中で、ティエリアの体に残ったシェービングジェルやら体液やらを シャワーで丁寧に洗い流してやり、俺たちは浴室を出た。 脱衣所で、ティエリアが無言のまま、素早くボディスーツを身に付けていく。 薄い人工皮膚で覆われた偽乳は、本物そっくりな見た目と触感を兼ね備えていた。 本物にも負けないほどの薄桃色の可愛らしい乳首まで付いていて、思わず手を伸ばしそうになる。 俺のかすかな欲望を察知したのか、ティエリアがじろりと睨んで牽制してきた。 「手伝え」 ティエリアに言われるままに、下半身にも特殊スーツを装着させると、 薄かったはずの少女の尻は完璧な大人の女の尻に変貌した。 見惚れる間もなく、ティエリアがドレスを着込んでいく。 すぐに尻も胸もしっぽも、ドレスに隠れて見えなくなった。 シースルーの胸元から覗く谷間が、本物以上の迫力で目を釘付けにする。 ティエリア本来の小さい胸も可愛くていいが、この巨乳もまた素晴らしい。 ふと、この谷間にペニスを挟んだらどんな感じなんだろう、などと不埒な考えが浮かんでくる。 俺がぼーっと見慣れないドレス姿に見入っている間に、 ティエリアは脱衣所の鏡を覗き込みながらウィッグをかぶり、手早くメイクに取り掛かっていた。 段々と、鏡の中のティエリアが妖艶な美女に変身していく。 まるでさなぎが蝶に変身するかのようだった。 豊かな胸、しなやかで流線的な、わきからウエストまでのくびれたライン、 肉付きのいいヒップ、そして何より、人目を引く華やかな容貌。 これほどの美女を、普通の男が放っておくはずがない。 だが、これこそが敵から目を反らさせる為の、スメラギさんの狙いなのだろう。 あえて目を引く格好をさせる事で、マイスターという疑いをはなから抱かせない。 一抹の寂しさや嫉妬を感じながらも、俺は黙ってティエリアの艶姿を見続けていた。 と、ふと思い出したかのように、ティエリアが唐突に口を開いた。 「この前の続きを話しておきたい」 この前――? 訝しげな視線を返した俺に、ティエリアはメイクを施す手を休める事なく、淡々と先を続けた。 「初めて君とああなったあの日、ぼくは、同類と会った。 ぼくに同類がいる事を、ぼくはあの日初めて知った」 初めて知った同類――。 つまりティエリアと同じ存在の者がこの世にいて、組織はおろかヴェーダさえ、 ティエリアにその事実を教えていなかったと言う事か。 余りにティエリアが淡々と話すものだから、その言葉の重大さがいまいちピンと来ない。 ティエリアが頬をブラシではたいて粉を散らせながら、とりとめのない口調を装って続ける。 「彼らは恐らく、この世界を裏から操ろうとしている。だからぼくは、今から彼らに会いに行く。 彼らも必ずこのパーティーに現れるはずだ。僕の予感が確信であるかどうか、それを確かめるつもりだ」 ティエリアの言葉を聞きながら、俺はこの前の夜、 整備から帰ってきたティエリアが苦渋の表情を浮かべていた事を思い出していた。 あの時は相当な不安と迷いを抱えていたはずなのに、 今のティエリアの表情に揺らぎは微塵も見えはしない。 一体どうして――? 「ばかめ。君のおかげだ。そして、クルーのみんなのおかげだ。 君たちがいてくれたから、ぼくは迷いを振り払えた。 そして、君のおかげで、この体を好きになれた」 俺の考えを完璧に読んで、鏡のティエリアが柔らかく笑う。その笑顔に嘘はまるで見えなかった。 昔のティエリアではとても考えられない程の優しい言葉と微笑に、腰砕けになりそうだった。 しかし同時に、余りに美しいティエリアの姿が何故か儚く消え入りそうにも見えて、 嫌な予感がぞわぞわと押し寄せてくる。 もしかすると、このままティエリアは帰ってこないんじゃないか。 その同類とやらに懐柔されて――。 考えれば考えるほどに、予感が恐ろしいほどに確信めいてきて、急激に不安が募った。 ティエリアがメイクを終え、鏡の前で背筋を伸ばし、自分の姿を確認している。 そしてひとしきり納得すると、脇にあった椅子を引き寄せて片足を上げ、 ガーターストッキングに脚を通し、するすると太ももへと滑らせて行った。 白い太ももの半分まで黒い薄布が覆い尽くし、少女のはずの脚が妖しいほどに色っぽく見える。 もう片方の脚にも同じようにストッキングを穿き、ティエリアはその端に銃を一丁差し入れた。 嫌な予感が強まる。その銃を引き抜く場面。それは、ティエリアの危機に他ならないのだ。 やはり、どうしても不安が消えない。 「完了だ。刹那と、任務に向かう」 頷いて踵を返したティエリアの背中に、思わず怒鳴るように問い掛けずにいられなかった。 「ティエリア、帰ってくるよな…!?」 約束を強制するかのような口調で言うと、ティエリアは振り返り、再びにっこりと笑った。 「当たり前だ。ここがぼくの家だからな」 初めて見るかのような満ち足りた笑顔を残し、ティエリアは脱衣所を出て行った。 ドライバー姿の刹那と連れ立って格納庫へと向かうティエリアの後姿を、 俺は祈るような目で見つめるしか出来なかった。                                       END