夕闇の迫る南洋の無人島に、青白いGN粒子の帯を引いてヴァーチェが帰還したのは2週間ぶりのことだった。 俺は隣のハンガーで自分の機体の定期点検を終えて、データ収集用のケーブルを携帯端末から引き抜きながら、 ヴァーチェのパイロットが機体を手順どおりにコンテナに格納するのを眺めていた。 間もなくコクピットハッチが開き、中から何かひらひらしたものが降りてきた。 すらりとした細身の少女は、髪が長くなってはいるがティエリアだ。 ハンガーのキャットウォークをこちらへ向かって歩いてくる彼女は、いつもの紫色のパイロットスーツではなく、チャコール グレイの上着に同色の縁取りのついたベージュのスカートという、どこかの学校の制服のようなものを着ていた。 腰まで届くロングヘアのウィッグをつけ、両サイドの髪を後ろでひとつにまとめて桜色のリボンで留めた、良家のお嬢さん らしいヘアスタイルがとても似合っている。 膝丈のスカートの裾を翻しながら歩くこの美少女が、あの大火器大出力を誇るガンダムヴァーチェを駆るパイロットにはとても見えない。 「お疲れさん。首尾は?」 よう、と手を上げると、ちらりとこちらを見返して、堅苦しい返事を返してくるのはいつものことだ。 「ミッションは完全に遂行された。報告書はヴェーダに提出済みだ」 「そうか」 ずいぶんと疲れた顔をしている。 無理もない、宇宙での新装備のテスト中に急遽ねじ込まれたミッションで、休む間も無く地上へ降りてすぐに2週間の ユニオン領の学校で単独潜入工作だったのだ。 「ミス・スメラギからこの後27時間はここで待機になると連絡があった。その後は俺と一緒に宇宙へ上がることになる。 次の作戦プランがもう来てたぞ。しばらくオフはお預けだな?」 冗談めかした言葉にも、疲れているからだけではない、どこか俺の視線を避けているような不自然に硬い表情は崩れなかった。 「了解した。…疲れたので、先に休ませてもらう」 そう言って会話を切り上げ、俺の横をすり抜けようとした手を掴む。 こちらへ歩いてきたときに不自然に左足を庇っているのを、俺は見逃していなかった。 「お前、足をどうした?作戦行動で怪我でもしたのか」 図星だったのか、はっと見開いた赤い眼がようやく俺の顔を正面から捉えた。 「なんでもない。大丈夫だから…」 「また靴擦れ作ったんだろ?いいから来いよ、黴菌が入って破傷風になったらシャレにならないぞ。ここは宇宙と違って 滅菌された環境じゃないんだ」 強引に手を引いてコンテナの居住区画にある、現在俺が寝泊りしている部屋へ連れ込んだ。 ファーストエイドキットの箱を取り出してとりあえず消毒しようと、ベッドに腰掛けさせ、細い足首を握って黒いエナメル靴のベルトを外して脱がせる。 ぽこんと間抜けな音を立てて小さな靴が床に転がった。 白い靴下の、踵の少し上辺りに褐色に変色した染みができていた。 慣れない革靴で靴擦れをおこして、水ぶくれを潰してしまっている。これは痛い。 生まれたときから宇宙で暮らすことの多かったティエリアが、地上を嫌う要因の一つだ。1Gの重力の元での歩行は、 慣れない足にどうしても負担をかける。ましてや普段履かないような靴では余計に辛いだろう。柔らかな皮膚には 予防に絆創膏を貼っておいても追いつかないのだ。 「一般人の絡むミッションだと、どうしたって警戒されにくい刹那やティエリアに振られる確率が高い。…お前たちにばっかり 負担をかけちまって悪いな」 ぽんと頭を撫でてやると、 「べ、別にこれくらい、何と言うことはない。ヴェーダの指示に従っただけだ」 素直じゃない返事が返ってくる。 俺から怪我を隠そうとしたのも、また傷を作ってしまった自分を羞じてのことだろう。彼女は腹立たしげにウィッグとリボンを毟り取り、 腰掛けたベッドの足元へ行儀悪くぽいと放り投げた。 「物にあたるなよ」 くくっと笑いを噛み殺しながら靴下をそっと脱がせ、消毒薬を含ませた脱脂綿で傷を拭う。 「しみるか?」 傷の周囲までが赤く腫れ、熱を持っているようだった。 「いいえ」 炎症を起こしているという程ではないが、一度冷やしたほうがよさそうだ。 「ちょっと待ってろ」 隣のサニタリースペースのタオルディスペンサーから一枚取り出すと冷水で濡らして固く絞り、ベッドに腰掛けたままの ティエリアの足首をもう一度取り上げる。冷やしたタオルで患部をくるんでやると、気持ちいいのか彼女の硬かった表情がようやく緩んだ。 「…すまない。でも、君の膝が濡れてしまう」 「気にするなって。しばらく熱がひくまでこのままにしてろよ」 一旦治療は置いといて、ティエリアの足を膝の上に乗せたまま椅子を半回転させ、作りつけの机に据えられた端末に向かう。 「もうちょっと待っててくれな。報告書上げたら後で一緒に飯食うか?」 という俺の問いに、はい、ともいいえ、ともつかない生返事を返して彼女は壁に背を預け、そのまま目を瞑ってうとうとと眠り込んでしまった。 書きかけだった報告書の残りを仕上げて提出するまで、時間にして15分もなかっただろうが、端末を落として振り返ると ティエリアは年齢相応の幼い寝顔で、すうすうと健やかな寝息を立てていた。 起こしてしまうのもかわいそうで、そのまま熱の引いた傷口に念のため化膿止めを塗り、滅菌ガーゼを当てた上から サージカルテープを貼って保護し、抱き上げてベッドの壁側に寝かせた。 眼鏡を注意深く外すとベッドサイドのナイトテーブルへ置き、制服の胸元のボタンをいくつか外してくつろげ、ローズピンクのリボンタイを緩めてやる。 上着の裾から手を入れて、ブラの背中のホックも外してやると、呼吸が楽になったのか寝息に混じってほぅと溜め息が洩れた。 ふと思いついてスカートの上から太腿の辺りをまさぐると、やはりレッグホルスターが巻かれたままになっている。 彼女愛用のベレッタクーガーと共に外してこれもテーブルの上に置き、足元に折りたたまれた毛布を広げて掛けると、最後に部屋の照明を落とした。 雑用と定時連絡、そして遅めの晩飯を簡単にすませ、シャワーを浴びてさっぱりしたところで寝間着代わりのTシャツに 着替え、無心に眠るティエリアの隣へ潜り込む。 トレミーのコンパートメントとさして変わらない狭いベッドだが、密着していれば二人でも寝られなくはない。 起こさないように細心の注意を払って、彼女を横から抱き寄せるような体勢に落ち着いたところで、肘をついて上から無防備な寝顔を覗き込んだ。 フットライトだけの薄明かりの中、硬質な美貌は柔らかな陰影をまとってなお美しかった。 頬にかかった後れ毛をはらってやり、額から頬にかけてのラインを撫でてさらさらの黒紫の髪に指を埋める。 肩口で切り揃えられたそれは、あいかわらずひんやりとした手触りで、指に絡めようとするそばから零れ落ちてゆく。 掬い取った一房にくちづけ、次いで白い額にも軽くくちづけを落とした。 俺の悪戯にティエリアの寝息が乱れ、人のぬくもりに擦り寄るように、こちらへ寝返りを打って俺の胸に顔を埋めてくる。 「ティエリア?」 返事はない。頬に手をあてると、すり、と顔を傾けて擦り付けてきた。2週間ぶりの体温が肌に馴染み、ティエリアの匂いが鼻腔をくすぐる。 大人として自制するつもりだった筈だが、あんまり可愛かったのでちょっと熱心におやすみのキスをすることにした。 何と言っても2週間もの間、必要が無ければ連絡もよこさない薄情な恋人に、ようやく触れられるのだ。 ゆるく結ばれた唇を何度か吸っては、ぺろりと舐めるのを繰り返す。 「…っふ」 誘うように唇を舌先でつつくとほの紅く色づいた唇が僅かに綻んだ。 隙間から舌を差し入れてさらに開かせると、ちゅくちゅくと甘いティエリアの唾液を啜る。 「んん、んぅ…」 舌を絡ませ、歯の裏や口蓋を舌先でくすぐると、腕の中の身体がぴくんと身じろいで甘い声が洩れ出てくる。 俺の胸元に添えられていた手が、きゅうと丸まってTシャツの生地を握り締めた。 あんまりやりすぎると目を覚ましてしまいそうなので、名残惜しいのを我慢しつつも程々のところで止めようと、身体を離しかけた俺はそこで固まった。 ティエリアの両脚が向かい合った俺の片方の太腿を挟みこむように絡めてきたのだ。だけでなく、ぎこちなく腰を擦り付けるようにしている。 「ティ…、ティエリア…さん?」 動揺のあまり、思わず敬語になってしまった。 彼女が、言葉にはしないけれどキスが好きなのはわかっていたし、セックスの最中に時々キスだけで軽くイってしまうのも知っていた。 ティエリアとこういう関係になっても、彼女の態度は出会った頃と変わらぬそっけなさで、彼女から求めてくることはなく、 互いに任務に忙殺されて逢瀬の機会が限られるせいもあって、身体を重ねた回数はまだ数えるほどしかない。 いずれも酷く恥ずかしがって縮こまる彼女を、宥めてすかして身体を開かせるのに苦労(実は楽しみでもあるが)しているのだ。 それが、無意識とはいえこんなにあからさまに欲情しているのを、彼女が態度で見せたことは無かった。 おかげで心地よい疲労で覆われていた俺の頭からは眠気がすっかり吹き飛んでしまい、半月の禁欲生活に大人の余裕も自制も あっという間に行方不明になった。 俺も若いなぁとか、これって寝込みを襲ってるんだよな、とか、言い訳と突っ込みの言葉がとりとめもなく脳裏に浮かんできたが、 めったに見ることの無いであろう彼女のおねだりする姿に、そんなことはどうでもよくなった。 上から覆いかぶさるように体勢を変え、もう一度深くくちづけて両手で細い腰を抱き寄せる。 啄ばむようなキスをいくつも落としながら手を上に滑らせてゆき、硬い生地の制服の上着をはだけ、緩めていたブラも押し上げる。 着痩せして見えるが意外にボリュームのあるおっぱいが、ぷるんと揺れて眼下にさらけ出され、真っ白でやわらかいそれは俺の掌に収まった。 外気にさらされた淡いピンク色の乳首がつんと立っていて、親指の先で押すようにこねると、見た目に反してまだふにふにと柔らかい。 乳房全体を広げた掌で下からやわやわと揉み上げながら、人差し指が動きに合わせて先端を掠めるようにすると、ぷくりと尖ってきた。 「…ん、んぅ…っ」 感じはじめたらしい鼻にかかった声が、合わせた口の隙間から洩れて、無意識にキスに応える吐息に熱がこもりだす。 苦しげな色が混じったところで唇を解放すると、はぁはぁと荒い息をついて、胸をいじられる快感に耐えるようにもじもじと膝を擦り合わせていた。 「ティエリア?」 呼びかけても目を覚ます気配は無い。 その間も尖りはじめた乳首を刺激し続け、すんなりとした脚のあいだに膝を割り入れて閉じられないようにしておく。 再び掌全体で柔らかくなってきた乳房を少し強めに揉みしだくと、無防備に開いた唇から切なげな息遣いに混じって、 かつて聞いたことのないような甘ったるい喘ぎ声が零れはじめた。 いつもは必死で口元を手で押さえて声を立てないようにしているのに、眠りに囚われているからか彼女の無意識のガードも緩んでいるらしい。 片膝を持ち上げて外側に倒し、脚の間に完全に身体を入れてしまうと、丸い膝から肉付きのいい太腿を撫で上げてベージュの制服のスカートを捲った。 ミス・スメラギの用意する衣装はいつも完璧を目指しているらしい。ご丁寧に細かいフリルのついたペチコートまで着けさせる気合の入れようだ。 そして俺は、いつもの無愛想なCB支給のボクサーショーツではなく、ちゃんとブラと揃いのレースの縁取りがついた清楚な白いパンティを、 ティエリアが身に着けていることに感動してしまった。 いつもこういうのを穿いてくれればいいのに、今のところティエリアは頑なに俺の願いを却下し続けている。 しばらく内腿のすべすべとした肌を掌で確かめて、クロッチ部分に指を滑らせると、そこはもうしっとりと濡れていた。 布越しに可愛いふくらみの間を中指の腹で抉るように擦ると、くぷくぷと粘液に空気の泡が混じる音がする。 「あは…、ぁ…、」 指先に少し力を入れると、布ごとぬるりと沈み込み、指の周りから布を通してじわりと愛液が滲み出してきた。 「…ティエリア?」 もう一度名前を囁いてみるが、相変わらず返事は無く、陶然とした表情でまどろんでいる。 正気に返らせてものすごく恥ずかしがらせたい思いと、このまま忘我の状態でどこまで乱れるのか見てみたい思いの両方に結論が出ないまま、 局部を覆うその小さな布切れを取り去った。 直に指で触れたそこは熱を持ち、さらなる刺激を待ち焦がれるようにうっすらと開きかけて、とろとろと蜜をこぼし続けている。 膝をついて座り、腿の上にティエリアの腰を引き上げ、膝裏に手を入れて両脚を大きく開かせた。 腰から下が真上を向いた状態になり、中心部に向かって濃い緋色の芯を隠している花びらが丸見えになる。 自分も穿いていたハーフパンツを下着ごとずり下ろし、すでに臨戦態勢になっているペニスを取り出して何度か扱くと、潤みきった割れ目に押し当てた。 先端で濡れそぼつ膣口を焦らすようにくすぐり、溢れる蜜を周囲に塗りたくる。 幹の部分を何度も前後させて擦り付けると、包皮に包まれていても敏感なクリトリスに当たったらしく、腰が小さく跳ね上がる。 ティエリアの呼吸がしゃくりあげるような切羽詰ったものになったのを見計らって、つぷりと赤黒く怒張した先っぽを咥えこませた。 そのまま上から突き下ろすように、ティエリアの中に押し入っていく。 「っふぁ…ん」 眠りに囚われた肢体はくったりと力が入らないようで、いつもは緊張のせいかどんなに濡らしてもきついティエリアの膣壁は、 入口で少し抵抗があったものの角度を合わせて突き込めばずぶずぶと簡単に半ばまでが潜り込んだ。 一拍遅れて、中がざわめくようにペニスにまとわりついてくる。 「あ…、ぁあ…?」 さすがに閉じられていた瞼がふるりと震え、二度三度瞬いて俺を見る。とろんとした赤い瞳にはいつもの理知的な光と強さはなく、 定まらない視線が俺の顔、そして大きく広げられた脚の間の、俺を飲み込まされている部分に流れてゆく。 「ごめんな、目が覚めた?」 我ながらいけしゃあしゃあと、起こしてしまったことにだけ謝った。 ティエリアはただ睫毛を震わせて、俺が絡みつく媚肉からゆっくりと引き抜いては、再び熱い泥濘へ突き入れるのをぼんやりと見つめている。 赤く充血しはじめた花びらが、俺の形に合わせて卑猥に拡げられていくのを見下ろしながら、何度かゆるゆると抜き差しを繰り返し、 リズムを取り始めるとティエリアの呼吸がつられて乱れ始める。 「ふぁ…、あぁ、…なに、してる、の…?―――…っ、なに、これ…?、きもちい…」 うぐっ、と変な声が洩れそうになって、俺は歯を食いしばった。 かわいすぎる。 正気の時は、こんな台詞頼んだって言ってくれない。 しかもなんだか言葉遣いまでが幼く舌足らずになっていて、とんでもなく犯罪くさい。 「…気持ちいい?」 「…ぅあ、…あぁ、ぅん、うんっ、きもち、いい…」 中の感覚を追っているのか、うっとりと目を閉じて子供のように素直に頷く。 汗の粒を浮かべた丸い乳房が、俺の動きに合わせて誘うように揺れている。たまらなくおいしそうでエロい光景に俺は、 珊瑚色に熟れて震えている乳首を口に含んだ。 飴のように舐めしゃぶり、舌を絡めて強く吸い上げるとはっきりとした嬌声が頭上から聞こえてくる。 俺を咥え込んだままのティエリアの中もきゅんと反応した。 もう片方も指先でくりくりと捏ね回しながら、歯でこりこりに尖った弾力を試すように甘噛みすると、乳首の快感と膣襞が繋がっているかのように きゅうきゅうと締めつけてくる。物凄く気持ちいいが、気を抜くとあっという間に持っていかれそうだ。 吸い付くように蠢く中の動きに逆らって、膣口から浅く入った腹側にある、ティエリアの弱い場所を狙ってぐいぐいと硬く膨らんだ先端をこすりつける。 「力抜いて…?ほら、ここティエリアのスキなとこだろ?」 「…っ、そこ、やぁ、だめ、…っ」 抽挿のリズムにあわせてあっあっと短い声が上がり、ぶるぶると震えが全身に及んだと思ったら、一際高い声を放ってかくりと崩れ落ちた。 焦らす間もなく達してしまったらしい。 ティエリアの中が凄いことになって、不意打ちをくらった俺も危うく一緒に昇天しそうになった。 体勢がきつくなってきたので一旦引き抜いて、枕を彼女の腰の下にあてがって高く上げさせ、今度は最奥に突き当たるまでゆっくりと飲み込ませた。 「ぁあああっ」 彼女の嬌声が裏返る。 イったばかりの余韻に震える敏感な粘膜の奥深くに沈めたまま、腰を使ってずんずんと小さい突き上げを繰り返す。 「あっ、やっ…やぁ、んうっ、中が、やぁ…ぐりぐりって、しない、でぇ…」 ただ気持ちよさに浸るように緩んでいたティエリアの細い身体が、一突きごとに緊張していく。 蕩けきっていた表情も、形のよい眉が切なげに寄せられて、撃ち込まれる快感に耐えるように震え、やめてと舌足らずに懇願する言葉と裏腹に、 彼女の腰も俺の突き上げに合わせるようにいやらしく動きはじめる。 可愛いのに腰にくる喘ぎ声が、半開きの唇からひっきりなしに零れ続けて、初めて見る媚態、初めて聞くよがり声に俺の方がどうにかなりそうだった。 抱いた身体の熱が上がり全身にしっとりと汗が浮かびはじめた頃、俺も限界が近いことを感じて、ずるりと先端まで引き抜くと一息に深みを貫いた。 「やっ、ああああぁぁ!」 激しく反応したティエリアの腰骨を掴んで押さえつけ、大きなストロークで打ち込んでいく。 「あぁあっ、ああっ、あはっ、だ…め、だめぇ…っ」 自由になる上半身を必死によじって逃げようとするのを許さず、腰に蟠るどろどろの熱塊に突き動かされるままに責め立てた。 「いや、やぁ…もう、て、手ぇ、はなして、はな…っ、ああんっ」、 投げ出されていたティエリアの両手がぶるぶると震えながら、縋る場所を求めてシーツや自分の髪を掴んでは滑ってを繰り返し、 指が食い込むほど強く彼女の腰を掴む、俺の手に辿り着いた。 力の入らない指で懸命に俺の手を剥がそうとするが、俺の首に回してやるとぎゅうっとしがみついてきた。 引き寄せられるまま上体を倒す形になって、ティエリアの中で当たる場所が変わったらしく、苦しそうな嬌声にすすり泣くような声が混じりはじめ、 許容量を越えた快感に耐え切れなくなったのか、ぼろぼろと涙を溢れさせた。 もはや意味を成さない声しか上げられなくなったティエリアは、どうしていいのかわからないらしく、いやいやをするように頭を打ち振り、 ただ俺になんとかしてほしくて必死に縋りついてくる。 あとはぎりぎりまで張り詰めた彼女の緊張の糸を弾いてやるだけだった。 最後に数回、強く奥を捏ねるように突くと、彼女はシーツから完全に浮くほど背を撓らせ、声もなく長い絶頂に身を委ねた。 「…っ、すげ…」 同時に喰い絞めるように収縮した膣襞に促されるまま、俺はティエリアの中に吐精した。 しがみついていた腕が力を失って落ちる。 失神した彼女を抱きしめたまま、俺も眠ってしまいたかった。 が、翌朝この有様を正気に返ったティエリアが見たら、血を見ることになるのは容易に想像がついてしまうので、証拠隠滅を図ることにした。 失神したティエリアの身体から色んな体液でべとべとになってしまった制服を脱がせ、俺の替えのシャツを着せる。 同じく濡れたシーツの後始末を終えて、再びティエリアの横に潜り込んだとき、てっきり眠っていたと思っていた彼女の目が、ぽっかりと開いていた。 「ティエリア、起きたのか」 「さっきの…」 「う…、ごめんな、キツかったか?」 「もっかい」 「ぅえ…ええ?!」 「すごく…きもちよかった」 「…う」 正直な股間に再び熱が集まりかけるが、彼女の抑揚の無い声が、まだ現実に戻りきれていないことを示している。 「だから、もっかい」 「腰抜けてるくせに何言ってんだ」 まだ正気じゃない、というか寝言だこれは。 「して」 「だめ」 「なんで」 「なんでも」 まるで子供が駄々をこねるような台詞。 「もっかい」 「あーまた明日な」 「いや」 「だめだって」 この会話、録音しといて正気のティエリア様に聞かせたらどんな顔をするだろうか。 「するの」 「いいからもう寝ろ。な?」 「いや」 「はいはい、いい子だから」 しばらくぐずぐずと不満を訴えていたが、ぎゅうと抱きしめてやると、やがて充足の吐息を洩らしてぱたりと寝入ってしまった。 本当に、彼女はいろんな意味で心臓に悪い。 ****蛇足**** 翌朝。 今日は待機だからと私服に着替えているときに、ティエリアの眼が覚めた。 おはようと声を掛けると、とりあえず返事はするものの、まだ現状把握ができていないのか、しばらくぼんやりと周りを見渡して、俺が着替えるのを眺めていた。 のろのろと上体を起こしたところで、着た覚えの無い俺のシャツと、何も身に着けていない下半身に気づいた途端、急に目の焦点が合って、 かぁっと頬に血を上らせた。 キっと睨む視線が俺の背中に突き刺さる。 が、本人も夢と現とどちらであったのかわからないらしく、胡乱げな眼差しで俺を睨みながら、昨日の記憶の検証をしているらしい。 「朝飯、何が食いたい?今日は時間があるから、好きなもの作ってやるよ」 全力ですっとぼける気の俺は、努めて普通の素振りを装った。が、その目論見は早々に崩れ去った。 「僕の、服は…?」 とりあえずベッドから降りようとした彼女が、ぺたんとその場にへたり込んだ。 腰が抜けて立てないらしい。 「ティエリア!だいじょ…」 「――なにをした」 地を這うような声とはこのことだろう。 顔を伏せたまま、艶やかな髪が表情を隠したままなのが恐ろしい。 その陰できりきりと音を立てて柳眉が逆立っていることだろう。 「え…、ええーっとぉ…」 返答につまる俺に、言い訳を考える時間は与えてもらえなかった。 「したんだな」 「ちょっとばかり…いたずらを…」 「人の寝込みを襲うとは、万死に値する!」 びっと人差し指を俺に突きつけて宣言した彼女は、更に言い募ろうとしかけてびくっと身体を強張らせた。 「や…」 何かをこらえるようにみるみるうちに頬が紅潮し、俺を睨みつけていた目が潤んで泣きそうな顔になる。 「ティエリア?どうし………あ」 思い当たることといえばひとつしかない。ティエリアの中に出したのの始末をするのを忘れてた…! 俺のが中を伝い落ちてくる感覚を堪えているのか、彼女は涙目のまま震えながら俯いてしまった。 結局立たない腰のために俺に抱き上げられて、一日世話をされるはめになったティエリアは、羞恥と屈辱にその日はひとことも口をきいてくれなかった。 俺はといえば、とりあえず謝り倒してゆるしてもらったものの反省からは程遠く、あの夜の彼女が見せた痴態と口走った淫らな言葉の数々が、 いつも声を殺していたティエリアの本音なのか、それとも寝惚けたあの時だけのことなのか、ということで頭がいっぱいで、 その後のミッションでポカをやらかしそうになった挙句ヴァーチェのGNバズーカに後ろから撃たれかけたという…それはまた別の話となる。