リジェネがティエリアのいる領域に向かうと、 彼女は既に落ち着きを取り戻して静かに空間に浮かんでいた。 一人ぽつねんと佇んでいるティエリアの周囲には、映像が立体的に浮かび上がっている。 複数ある画面の一つに、ティエリアの視線は集中的に注がれていた。 どうやら、現実世界の様子を眺めているらしい。 ティエリアが何に興味を持っているのか興味が湧くのは、 今のリジェネにとってはごく自然な事だ。 息を殺して、そっとティエリアの背後に忍び寄る。 しかしティエリアは随分意識を集中しているらしく、リジェネがかなり傍まで近寄っても まるで気付きもせずに、穏やかな微笑まで湛えて画面を覗き込んでいるのだった。 一体何がそんなにティエリアの興味を引くのかと、 リジェネはティエリアの肩越しに、同じ画面を覗きこんでみた。 そこに映し出されていたのは、 栗色の髪のツインテールの少女とピンクの髪の若い女性が何やら談笑している姿だった。 よく見ると、その脇にはもう一人、妙齢の女性の姿もある。 『みんな、元気そうで良かった……』 ティエリアが一切声を発していないにも関わらず、リジェネの頭に直接その声が響いた気がした。 ヴェーダの一部となって以来、 二人の意識が肉体を持っていた時のように共鳴しあう事はなくなっている。 だが、同じような経緯を経て、再びヴェーダのAIの一つとなった2つの意識体が、 基礎データでも共有しているかのように不思議と同調し合っている事もまた、事実なのだった。 (以心伝心、って奴か。それでも、ティエリアの方が僕よりも上位なんだけど。  ……悔しいな) リジェネ持ち前の野心家の性が疼く。 誰よりも上位に立ちたいと心から願っているのに、 超えられない能力を持つ絶対的な上位者が常に自分の前に立ちはだかるのは、一体何故なのだろうか。 そんな事を思いながらティエリアの裸の背中を見つめていると、 その穏やかな微笑までが小憎らしくて堪らなくなる。 気が付くとティエリアはいつもこうやって昔の仲間をそっと見守り、 その無事と健康に人知れず安堵し、その心を無意識的に癒しているのだ。 (毎日毎日この僕を使役して、世話までさせているくせに……。  君には、そんな優しい逃げ場所がある……) ふと湧き起こった感情が嫉妬だという事に気付く前に、 リジェネは密かな怒りを噛み殺しながら、ティエリアのすぐ後ろに歩み寄った。 細身の体の線をじっくりと観察すると、 ついさっきまで男たちと乱れに乱れていた姿がフラッシュバックした。 ヴェーダ内では、常に一糸纏わぬ姿の意識体。 データの男たちに散々浴びせられた体液の痕跡は、もうその裸体に全く残ってはいない。 それでも、体の節々に汚辱の痕跡がまだ残っている気がして、リジェネはくすっと口元を弛めた。 「……!」 ティエリアがリジェネの存在に気付き、はっと振り向こうとする前に、 リジェネが距離を詰めてティエリアの両肩をぐっと掴んだ。 「マッサージしてあげるって言っただろ?ティエリア」 「な、リ、リジェ…ネ!いつの間に…っ」 ティエリアが反射的に身を竦め、見入っていた画面を即座に掻き消す。 リジェネはフンと息を吐き、嫉妬心を抑えて冷静に口を開いた。 「昔の仲間だね。僕に気を使わないで見てたらいいのに。覗きは君の趣味じゃないか」 そのまま遠慮もなしにティエリアの肩をぐいぐいと乱暴に揉み上げると、 筋肉がほぐれるどころか一層硬くなったのが手の平に伝わってくる。 その感触で無性に優越感が募り、リジェネはようやく平静を取り戻してにやりと笑った。 「そんなに緊張しなくていいよ、ティエリア。いつもしてあげてるじゃないか。  いつもみたいにリラックスしてれば、すごく気持ちよくなれるよ?」 口元が自然にほころぶのを止められない。 すぐに手付きを優しいものに変えて、今度は癒すように凝った肩をゆっくりと揉みほぐす。 続いて背骨を通り、腰まで手の平を這わして強弱を付けつつ揉んでいくと、 ティエリアはびくびくと体を小刻みに震わせながら微かな喘ぎを漏らした。 リジェネのマッサージによって、ティエリアの全身から徐々に力が抜けていく。 いつも通りだ。 「ほらね?いい気分だろう、ティエリア」 ほくそ笑みながら、リジェネはティエリアの耳元に低く囁いた。 ティエリアの紫がかったストレートの黒髪が、肌を揉んでやる度に細かく揺れるのが心地いい。 「…っ、…ん…っ、んっ……」 リジェネの手が這い回る度に、ティエリアは消え入りそうなか細い声を漏らし続けた。 たまに頭を振って、言い訳がましい嫌そうな素振りを全身に漂わせるが、 結局リジェネを突き放すような事はしないのも、いつも通りの事だった。 ヴェーダを掌握した今のティエリアは、リジェネの生殺与奪の権利をも握っている。 まさに完全なる上位者だ。 そのティエリアを支配しているのだという喜びを体の奥底に感じつつ、 「いい子だね。もっと、だろう?分かってるよ」 もっと言葉で虐めてやりたいのを極力我慢して、 リジェネはいつものようにゆっくりとティエリアの全身をマッサージしていく。 疲れた筋肉がほぐされる感触が余程心地いいらしく、ティエリアはいつの間にか リジェネのされるがままになり、ただ湿った息を吐き続けるまでになった。 表情はまるで見えないものの、うっすらと色付いた肌の熱さと漏れる喘ぎで、 ティエリアの表情が淫らに火照っているであろう事は容易に想像が付く。 リジェネがふくらはぎを強めに揉むと、急にティエリアの膝ががくっと折れた。 「ちょ…、大丈夫?」 ティエリアが既に全身骨抜きになっている事は今までの経験上知り尽くしているが、 リジェネはわざと驚いた声を出して、ティエリアの腕を掴んで支えてやった。 「ふ…、うう……」 ティエリアが恨みがましい目で見つめてくる。 その瞳が早くもうっすらと潤んでいるのを見て、リジェネの自尊心は深く満たされた。 もはや込み上げてくる笑みを隠す事も出来ない。 外の世界では全く同じ細胞で出来た瓜二つの体に入っていたはずなのに、 ティエリアの紅い瞳は思わず見惚れてしまう程に澄み切っていて、 嫌でも自分の黒さを思い知る。 しかしそれでさえ快い刺激と受け取って、 リジェネは尊大な程の意地悪い微笑を浮かべて、ティエリアを見下ろした。 「もう立っていられない?もう何度もしてあげてるのに、全然慣れないよね。  仕方ないなぁ。すごく面倒なんだけど、いつものようにベッドを用意してあげるよ」 ティエリアに反論の余地を与えず、 リジェネは意識を集中して、ベッドのあるべき姿とその弾力性を詳細に思い浮かべた。 意識がヴェーダと通じ合う。データ化された数値が複雑に絡み合い、 やがて二人の目の前に、リジェネの想像と寸分違わぬベッドがはっきりと浮かび上がった。 「肉体がないって言うのも随分便利だよねぇ?  自分が知っている事はもちろん、その気になれば知らない事だって何でも具現化出来るんだから。 ヴェーダの情報の蓄積量は素晴らしいよね。  さすがに僕達の親だ。もっとも、僕は君のようによこしまな使い方はしないけどね」 先刻のティエリアの破廉恥な行為を思い切り皮肉ると、 ティエリアがきっと唇を噛んで睨み付けてくる。 軽く鼻先で笑って受け流し、リジェネはティエリアをベッドの上に放り投げた。 「ゃっ……!」 硬めのスプリングが主を受け止めてギシギシと卑猥な音を立てる。 悪者に手篭めにされる寸前のお姫様のように、ティエリアはシーツを両手で掴み、 かすかに震えながらリジェネを悔しそうに睨んだ。 「ふふっ」 その視線で否応なく嗜虐心が刺激され、リジェネはぷっと噴き出した。 完全に悪役になりきったこの時間が楽しくて堪らない。 しかし、次の瞬間には冷静さを取り戻して薄笑いだけを浮かべ、 指先をいやらしく折り曲げてティエリアに見せ付ける。 「……ッ」 ティエリアがぱっと頬を染めて視線を反らした。 必要以上にねちっこいリジェネの指の動きで、 先刻のいかがわしい行為の顛末を詳細に思い出したに違いない。 「どうしたんだい?何か嫌な記憶でもあるの?」 「べ、別に…っ、ちょ、ま、待て…っ」 あえて底意地の悪い質問を投げ掛けながら、リジェネは答えを待つまでもなく、 ゆっくりとティエリアにのしかかって行った。 力が抜けたままのティエリアをシーツの上に押し倒すのは、思いのほか簡単な作業だった。 仰向けのティエリアの腰の上に跨り、 押し返そうとしてくる両腕を即座にベッドに押し付け、指と指を絡め合わせる。 組み合わせた五指で強く手を握り締めると、 ティエリアは「ぁっ」と小さく叫んで体を強張らせた。 既にリジェネの数倍も淫靡な事を知っていながら 純情そうな態度を見せてくるのが、しらじらしくも可愛らしくもある。 くくっと笑ってリジェネが上から視線を落とすと、ティエリアは再び悔しそうに見上げてくるが、 その視線は決して嫌がり尽くしてはいない。 「感情を隠すの、相変わらず下手だね、ティエリア。表情と感情はもっと上手く使い分けないと」 にっこりと微笑みかけた後、リジェネは瞳を細め、 舐めるようにじっくりと、ティエリアの整った顔や小ぶりの胸を観察した。 リジェネと全く同じ、完璧な美しさを保つ体躯。 当然の事ながら、肉体を失い意識体となった今でもそれが変わる事はない。 それでも視点を変えれば、まるで違う人間の体であるかのように見えてくる。 今までリジェネは、ティエリアの体そのものには何の興味もなかった。 自分と全く同じものだと思えばそれも至極当然の事ではあったのだが、 今からあの男たちのようにこの体を可愛がるのだと思った途端に、 リジェネの内に新しい衝動が目覚めはじめる。 すべすべの白い肌に艶やかな唇。 触り心地の良さそうな胸の盛り上がりの先端には、薄いピンクの突起が恥らうように付いている。 男たちの舌が何度もそこをねぶっていた淫猥な光景をつぶさに思い出して、 リジェネの息は知らず知らずに乱れていた。 自分でも瞳がギラついているのがよく分かる。 ティエリアが荒く呼吸する度に大きくその胸が上下し、 心なしか乳首の先端までが揺れているように見えて、 リジェネの心はかつて経験した事のない程に高鳴って行った。 さすがのティエリアも、リジェネの瞳に腹に一物あるかのような 妖しい輝きが浮かんでいるのに敏感に気付いていた。 嫌な予感が走り、慌てて視線を反らす。 「も…、き、今日は、いいから…っ。ぼ、僕は平気だ」 掠れた声でティエリアが拒絶する。 しかしリジェネは、ますます妖しい微笑を返して応えた。赤い瞳が金色に輝いては元に戻る。 「なんで?いつもマッサージしてあげてるじゃないか。断る理由なんてないよね」 「で、でも…」 リジェネがティエリアの掌から指を離す。 有無を言わさぬ早業で、その指がティエリアの乳房に絡みついた。 「…ゃっ…!」 突然の事態に、ティエリアが身を竦めて小さく声を上げる。 その一声で、一気にリジェネの加虐心は燃え上がった。 手の平に収まった膨らみの形を変えながら、ゆっくりと上下左右に揉みしだくと、 ティエリアは恥ずかしそうに頬を染め、きつく瞳を閉じて歯を食いしばっている。 何とか体を動かそうと力を入れているのが、触れ合った肌の動きではっきりと分かった。 「ティエリア、どうして嫌がるんだい?こうして欲しいんだろう?  データの男たちに触られて、すごく悦んでいたじゃないか」 わざと冷静な口調を心がけてリジェネが言うと、 ティエリアの眉が悔しそうにピクピクと引きつった。 「あ、あれはただ…の…、人間…の生態観…察で…っ、はう…っ」 途切れ途切れにティエリアが言い訳がましく呟くその言葉を切って、 リジェネが乳首をきゅっと人指し指と親指で挟んだ。 そのまま指先でくりくりと押し潰すように揉むと、ティエリアの唇が微細に震え始めた。 「ぁ…っ、は…う…っ、やめ、ろ…、こん…なの…頼んで…ない…っ」 歯を食いしばって嫌がる素振りを見せながらも、 乳首をきゅきゅっと摘まれる度に淫猥にティエリアの唇が開く。 ティエリアの感じているであろう刺激の鋭さが手に取るように分かり、 リジェネは薄笑いを浮かべたまま、思う存分優越感に浸った。 「ほら、こうだろう?君の感じる所を、ずっと見ていたからね。よく分かってるさ」 指を口に含んで唾でたっぷりと湿らせ、今度は乳首の屹立を指の腹で円を描くように捏ね回す。 乳首はリジェネの指先で、彼女の思う通りに形を変えながら、押し倒されてはまたつんと勃ち上がった。 硬く尖って敏感になった乳首が、段々とティエリアに快感を湧き起こらせていく。 「は…っ、あ…ぅ…っ、はう…っ、んっ、や…だ…っ」 それでもティエリアは必死に唇を噛み締め、声を押し殺して耐え続けた。 データの時とは違い、たった今リジェネに与えられている刺激は、 まさにティエリアの現実なのだ。 とても男たちとの行為の時のように、快感に夢中になるわけにはいかない。 淫らな声を漏らしてしまう事が、ヴェーダに対する不徳であるかのような気分だった。 だが、そんなティエリアのいじらしい姿を目の当たりにしても、リジェネに罪悪感が沸くはずもない。 むしろ男たちとの行為の時の乱れ方と今の耐えている姿のギャップが、蠱惑的にさえ映る。 いっその事、そのガラス細工のような体ごと粉々に壊してしまいたいような、 暴力的な衝動がリジェネの内を駆け巡った。 「ねえ、もっと声出しなよ。さっきの男たちとしてた時みたいにさ……」 リジェネはきつく乳首を摘み、意地っぱりを咎めるようにコリコリと押し潰して扱いた。 「や…っ!い、痛…っ!」 ティエリアが溜まらず悲鳴を上げる。 苦しげに歪んだティエリアの表情を目を細めて見つめながら圧迫を緩め、 リジェネは唇をもう片方の乳首へと寄せて行った。 視線のすぐ先で、つんと勃ったつぼみのような乳首が誘うようにかすかに震えている。 「なるほど。こうやって男を誘うわけか」 リジェネの感心したような声に、ティエリアが不満そうに唇を噛み締めた。 乳首を弄られている今、 文句を言おうと口を開いた途端に淫らな声が出てしまうのを予感し、とても口を開けない。 リジェネが自分をこんな風に弄ぶなど今まで想像もしていなかったからこそ、 この事態がとても信じられず、腹立たしくも恥ずかしくもある。 それでもリジェネなど不必要だ、消えてしまえと心底思い込めないのが不思議だった。 「そんなに我慢しなくてもいいよ。さっきのデータの時みたいに、僕にも感じて見せてよ。  僕は君の気持ち良さそうな姿を見たいだけなんだからさ」 嘘臭いセリフを声を落として囁き、リジェネは美しい乳房の丘をすーっと舐め上げる。 「んうっ、や、やっ…!」 新雪のような肌に唾液が卑猥に伸びていく。 そのまま乳首の周囲を焦らすようにゆっくりと舌先でなぞった後、リジェネは遂に蕾を唇に含んだ。 「あう…っ!」 その瞬間、ティエリアの体を電流のような鋭い快感が走り抜けた。 びくんと胸が飛び跳ねて上下し、舌ごしに乳首が面白いほどに硬くなっていく。 思い通りの反応にほくそ笑んで、リジェネは食むように唇で乳首を刺激してやった。 硬い淫猥な触感を愉しみながら、舌で先端をつんつんと突付く。 「あ…んっ…、あぁ…っ、あ…っ…ん…っ」 そのまま丹念に舌先で乳首を転がすと、 ティエリアはもはや堪えきれないかのような、泣くような喘ぎを漏らした。 ティエリアの秘所がうっすらと湿ってきているのが、雰囲気で分かる。 もう片方の乳首を責めている右手はそのままに、 リジェネは空いた左手を下半身へと伸ばしていった。 ティエリアの腰を軽く浮かさせ、太ももにも手を掛けたが、 乳首の刺激に集中して耐えているティエリアはまるで抵抗も見せず、されるがままに足を開いた。 乳首に歯を軽く立てて刺激を強め、ティエリアが仰け反った瞬間に、 リジェネは左手を秘所へと素早く差し入れた。 秘裂を軽く撫でると、もうぐっしょりと濡れそぼっているのが分かる。 ふん、と笑った鼻息がティエリアの敏感になった肌に当たり、 それだけでティエリアはびくびくと体をよじった。 秘裂を割って入り口を擦りながら乳首を舐め回し、もう片方を指で扱きながら捏ねる。 ティエリアは声を精一杯に潜めながらも、遂に我慢できずに淫らな嬌声を漏らしはじめた。 「あうっ…、あんっ…、やっ、だ、だめ…っ、ああっ、あぁ…っ!」 快く聞き入りながら、リジェネは更に指と舌を丁寧に使って刺激を与えていく。 僅かな時間にも関わらず、ティエリアの秘所は愛液でしっとりと潤み、 リジェネの指を誘うようにぬめりを強くした。 (フン…。もうこんなに濡れてる…。ティエリア、君は本当にこういう事が大好きなんだね) 乳首を口に含んだまま、勝ち誇った気分で、リジェネはティエリアの顔を見上げた。 嫌々と頭を左右に振りながらも、その顔は快楽に正直に歪んでいる。 汗ばむ頬にかかっては落ちていく乱れた髪の毛が、その表情をより淫らに見せていた。 ちゅうっと音を立てて乳首を吸ってやると、ティエリアの唇がぱっと開いて 中から淫らな声が自動的に飛び出てくる。 「あんっ!ああ…っ、やっ、んっ、う…っ、ふあっ…!」 単純な営みにも関わらず、リジェネもまた、想像以上にこの行為に夢中になっていた。 秘裂を摩擦する指先にも思わず力が篭る。 潤みきった膣口が自ら口を開き、リジェネの指をくわえ込むように柔肉を絡みつかせて来た。 その卑猥な感触に柄にもなく驚き、思わずリジェネは指を引っ込めた。 乳首も唇と指から解放してやり、リジェネは昂ぶる心を落ち着けながら身を起こした。 「んっ…、は…、はう……」 刺激がなくなってようやく、ティエリアがうっすらと瞳を開いてリジェネを見上げる。 抗議するように瞳を潤ませて睨みつけながらも、 どうしても快感に反応してしまう自分の体への戸惑いも混じった、複雑な目付きだった。 「そんな顔しないでよ、ティエリア。まるで僕が酷い事をしているみたいじゃないか」 「う、うるさ…い…っ、なんでこんな事するんだ…っ」 「だって、あんなの毎日見せられてたら、仕方ないじゃないか。分かるだろう?」 「君が勝手に見てただけだろう…っ!?」 必死にプライドを保とうとするかのように睨み付けながらも、 きつくシーツを握り締めたティエリアの指がかすかに震えている。 もはや傍目にもはっきり分かるほどに紅くなった白い肌の先端では、 乳首が快感を体現するかのようにツンと勃ち上がっていた。 リジェネの瞳がそこに集中して、妖しく輝く。 「そんな体になっておいて、よく言うよ」 リジェネに征服欲と愛情とが同時に込み上げて来た。 肉体があった時でさえ、今ほど心が躍る感じはしなかった。 もう嫌だと拒絶されても、最悪存在自体を消される羽目になったとしても、 この行為を中断する事は出来そうにもない。 「もう君の意見は聞かない。指、挿れるよ?」 ティエリアに最高の悪ぶった笑顔を向け、 リジェネは中指をゆっくりとティエリアの膣内へと挿し込んでいった。 歓迎するように膣肉が絡みついてくるが、もう迷いは起きなかった。 「や…っ、やめ…っ!」 指先がぬるりと内部に入った途端、ティエリアが驚いたように腰を震わせ、 リジェネの手首を掴んで制止させようとした。 「ダメ。やめないよ?だって、君が望んでる事じゃないか。こんなに濡らしてるんだから……」 「ち、違…、んっ…!!」 乳首を再び強く吸い上げてティエリアを望み通りに脱力させ、 リジェネは壁が弛緩した隙を狙って、指をずぶずぶと埋め込んでいった。 根元まで埋め込むと、内部の熱さがしっかりと指に伝わってくる。 しなやかでありながらきゅうきゅうと締め付けてくる膣壁の粘着的な感触は、 現実世界であったなら悪寒を感じたかも知れないほどに卑猥だった。 が、元々グロテスクなものは大嫌いだったはずなのに、 今指に感じている感触が妙に心地いい事に、リジェネは驚きを隠せなかった。 「さすがだね、ティエリア。僕に新しい経験をさせてくれるなんて。本当にありがとう」 愛想と本音の入り混じったリジェネの言葉の奥の意味を、 今のティエリアが詳しく探る事など出来るはずもない。 「や…、ん、やだ…っ、抜い…て…っ」 ティエリアが何とか体を動かして指を抜かせようとするが、 未だリジェネは腰の上に跨る形で乗っているものだから、身動きも満足に出来ない。 膣深くまで入りきった指が、ゆっくりとした動きで抜き差しを開始する。 内部の造形を確かめるようにすりすりと膣壁を擦られると、否応なく膣奥が疼き出す。 数回指が往復しただけで、乳首への執拗な愛撫で敏感になっていたティエリアの体は、 今にも達しそうに昂ぶった。 「…は…っ、ん…っ、ああ…っ、ああっ、だめ…、だめ…っ!」 我慢しなければと自分に言い聞かすのに、指が動く度に力が自然に抜け、 声だけが淫らになっていくのをどうしても止められない。 一瞬で反応の変わったティエリアの顔を満足げに見つめながら、 リジェネは指の抜き差しに加え、乳首をも唇でついばんでは転がしはじめる。 「んふ…っ、あぁ…っ、さ、触る…な…っ、あぁんっ…!」 乱れていく体をとても制御し切れず、ティエリアの耳にも自分の切なげな喘ぎが届く。 急激に恥ずかしさが募ったが、それがまた全身を敏感にさせていった。 苦し紛れにリジェネの手首を掴んで、引き離そうと努力するが、 そんなティエリアの抵抗を意にも介さず、 リジェネは指を無遠慮に膣内に何度も出し入れさせて一層激しく擦り立てて行く。 「ティエリア、すごく気持ちよさそうな顔してる。あの男たちと僕の指、どっちがいい?」 「んんっ…、ふぁ…っ、そ、そんな…事…分からな…っ、あああんっ!!」 ぐっと指の腹で敏感な所を押し込まれ、堪らずティエリアの腰が飛び跳ねた。 そのまま限界が訪れ、ティエリアはリジェネの指に弄ばれるまま、絶頂に達した。 潤んだ膣壁がリジェネの指を締め付け、絶頂の快感の深さを詳細に教えた。 「ふあ…、ふああ…っっ」 恥辱と快感がないまぜになって、ティエリアからはポロポロと涙が溢れ出す。 「ふうん。もうイッちゃったんだ。思ったより早かったね」 リジェネの呆れた様な声が、尚更ティエリアの恥辱を煽った。 しかし、ティエリアから絶頂の波が去っていっても、 リジェネは突き入れた指を一向に抜こうとしない。 ティエリアが落ち着くのを待って、リジェネは摩擦で敏感になった膣内でも一際手触りの違う部分、 そこを快感の根源と本能的に見極め、その一点を狙って集中的に擦り始める。 「まだ気持ちよくなれるだろう?この程度で満足するような君じゃないもんね。  ほら、ここだろう?違ってるかい?」 「あ、ああっ…、そ、そこ…っ、あんん…っ!んっ、んああっ…!」 ぬぷぬぷと弱点を突かれながら膣壁を数回擦りあげられると、 達したばかりにも関わらず強い快感が満ちてくる。 あられもなく声を上げながら身悶え、 あからさまな反応を返してしまう我が身が心底落ちぶれたようにティエリアには思えた。 それでも、快感は容赦なく押し寄せてくる。 時折リジェネの舌が乳首を這い、先端を転がしていく。 そのつど、リジェネの柔らかい頬や顎が乳房と触れ合う感触までもが驚く程に気持ちいい。 「あふっ、ああぁ…ああ…っ!」 リジェネの腕を必死に掴み、爪を立てながら歯を食いしばってティエリアは悦楽を受け止めた。 リジェネがこれほどまでに手慣れている訳が、 自分の痴態を観察してきた結果だというのがまた悔しくてたまらない。 「またイキそうなの?イッたばかりなのにね」 「ああっ、んく…っ、イカ…ない…っ、まだ…、絶対…っ、あっあっ…、ああっ、あぁっ!!」 必死に抵抗しながら、ただ絶頂の訪れを少しでも引き伸ばそうと ティエリアは全身を強張らせるので精一杯だった。 しかしそんな抵抗が、裏腹に体を淫らにしていくのは紛れもない事実。 勢いを増して溢れ出る愛液、より密着感を増して締め付けてくる膣壁、 そしてそこを擦る度に過敏なほどに漏れ続ける嬌声。 想像以上の痴態を見せてくるティエリアにリジェネは悦に入り、ひたすらに指を抜き差し乳首を舐める。 じゅぼじゅぼと激しさを増したいやらしい音に、ティエリアの淫らな嬌声が被さった。 「すごいね、ティエリア?あのデータの時よりも感じてるみたい。  まあ、ここが今の僕達のリアルなんだから、仮想空間より刺激が強いのは当たり前か」 「あっあぁっああっ、んんっ、違…っ、だって、だって…っ!」 「だって、何だい?まさか君がこんな風に感じてるの、僕のせいにする気じゃないよね」 「んっ、ああっ、ああっ、あうぅっ!」 ふるふると首を振って、リジェネの言葉を振り払う。 リジェネの手首を掴むだけではもはや足りずに、その柔らかい髪の毛までも掻き毟るように掴み、 ティエリアは途切れる事のない強い快感に溺れていた。 リジェネが残酷に笑う。 データの数々の追体験で、この行為にはまだ先がある事をリジェネは充分知り尽くしていた。 「ティエリア、随分体を開発してるもんね。こんなんじゃ物足りないでしょ?  もっと気持ちよくしてあげるよ」 リジェネは残酷な加虐心を抱えながら、ゆっくりと体を下方へと移動させていった。 指の抜き差しを決して弱めずに、ティエリアの白い肌に舌を這わせながら下へ下へと向かって行くと、 ティエリアは舌の動きに併せてびくびくと震えては、可愛らしい声を上げた。 「ほら、足開いて」 ティエリアの足を大きく左右に開かせ、リジェネがその間に顔を寄せる。 至近距離でティエリアの女性の部分をたっぷりと視姦した。 完全に興奮しきって充血した秘所は淫靡に濡れそぼり、リジェネの指をしっかりと咥え込んでいる。 その濡れた膣内をぬぷぬぷと抜き差す指の卑猥な動きが、 自分のものであってそうではないような錯覚に陥りそうになってしまう。 愛液にまみれて半透明に糸を引きながら、再び膣内へとめり込んでいく 淫猥な指の動作にリジェネは思わず見入った。 「ティエリア、気持ちいい?」 「あ、ああっ!!」 囁くように尋ねながらふうっと強めに息を吹きかけると、反応した膣肉が指をぐいぐいと締め付けてくる。 ティエリアの中心を紛れもなく自分が責めているのだと思うと、どうしようもなく興奮が高まった。 膣の上に付いている小さな芽のような突起がクリトリスである事を、リジェネは既に知っている。 そこを刺激されたティエリアがさぞかし悦ぶだろう事も、もちろん十分に知り尽くしていた。 ティエリアがデータの男たちにそうされてよがり狂っている光景を何度も覗き見てきたのだから、当然の事だ。 「も…、やだ…っ…、んんっ、ああっ…!」 一方のティエリアはこの行為を愉しむどころではなかった。 最も恥ずかしい場所を、よりによって自分の相似形であるリジェネに じっくりと視姦される恥辱に苛まれ、泣き出したい気持ちで一杯だった。 その間も指の抜き差しは止まらず、チュクチュクと水音が響き続けているのだから尚更恥ずかしい。 流れる涙もそのままに、しゃくりあげるように喘ぐ。 「今更恥ずかしがってるの?君のこういう姿を僕はもう散々見てきたんだよ?  ほら、こうされるとすごく気持ちいいんだろう?もう知ってるよ」 リジェネは落ち着いた口調を取り繕ってティエリアを嗜め、 何の迷いもなく、クリトリスへと舌を押し付けた。 「んっ、あ、ああんっっ!!」 舌先で肉芽を転がすように舐められて、ティエリアの腰が瞬間的にベッドから浮き上がる。 ギシギシッとベッドが軋む音が、恥ずかしさと欲情を同時にそそった。 途端に膣内が熱くなり、その快感が一気に強まった事をリジェネが悟る。 ほら、やっぱりね、と鼻先で笑い、リジェネは指で膣内を抜き差しながらクリトリスを執拗に舐め上げていく。 「ああっ、あぁぁっあぁっ!ああっ!!」 ティエリアの声が一層激しくなり、その腰が我慢できないかのように小刻みに震え始めた。 ほら、こうでしょ、と言わんばかりに、リジェネはクリトリスの頂上を突付き、 円を描くように舐めては焦らす。 不規則な刺激が、裏腹に快感を増幅させていった。 「やぁ…っ、やめっ…、も、…やだっ…!んあうっっ…!」 ティエリアの手がリジェネの髪を乱雑に掻き回す。 激しく喘ぎながらも何とか刺激から逃げ出そうと身をよじるその腰を、リジェネは片手で引き寄せた。 指の抜き差しをも弱めて焦らし、充血して尖ったクリトリスを数回舐め上げる。 「やっ、やあ…っ!もう、だめ、だめぇっっ…!も、イキ…そ…っ、ああっ、ああっ!!」 時間を掛けてもっとたっぷりと嬲ってやりたかったが、 ティエリアに絶頂が近い事が、その激しくなった喘ぎと膣内の感触で伝わってくる。 (じゃあ、イカせてあげるよ。ありがたく思いなよ、ティエリア) 心の中で勝利宣言をしながらも、ティエリアに快楽を与えている事実に 自分の方こそが嬉しさを感じている事に気付かずにいられない。 何となく悔しくなってフンと鼻で息を吐き、リジェネはそれでも最後の責めに移った。 ティエリアの片足を立てさせて思い切り股を大きく開かせ、陰唇を割り開く。 敏感に尖った肉芽を視線の先にしっかりと捕らえながら、リジェネは規則的に上下に素早く舐め上げた。 同時に突き刺すように指を立てて膣内を激しく擦り立てると、 ティエリアの背中が浮き上がって弓なりに仰け反った。 「ああ、ああああっっっ!!!」 今までで一番激しく淫らな声をあげ、ティエリアが絶頂を迎える。 クリトリスがリジェネの舌先でピクピクと震え、 膣壁は愛液をどっと溢れさせながら指を締め付けて、激しい収縮を繰り返した。 1度目の絶頂、2度目の絶頂。リジェネにとっては全てが初体験だ。 刻一刻と状態を変え、快楽を強めてはそれを発散させるティエリアの乱れる様を つぶさに味わい、吟味するようにその状態を頭に焼き付けていく。 「すごいね、ティエリア。体がこんな風になるんだ」 覗き見た時に想像していたのとは段違いの現実的な感触。 感心しつつ指を抜くと、愛液がとろりと糸を引く。 「ほら、見て」 リジェネはつい、濡れそぼった指をティエリアの目前へと差し出してしまった。 しまった、これではティエリアはさすがに気分を害するに違いないとリジェネが反省したのと ティエリアが羞恥に表情を歪めたのとは、ほぼ同じタイミングだった。 「ごめんごめん。余計な事言っちゃったね」 リジェネがとりなす様に微笑み、シーツで指に付着した愛液を拭き取る。 続いて褒めるように瞳を細め、 「感心してただけだよ。別に他意はない。分かってるだろう?」 と声音を落として優しく囁く。 リジェネなりの人心掌握術に違いない。 さすがにそれに気付かないほど、ティエリアは愚かではなかった。 それでも満足しきった心と体が、きつい言葉を吐き出すのを躊躇わせている。 割り切れない思いだけを持て余し、ティエリアはまだ余韻の醒めない火照った顔のままでプイと横を向き、 子供のように唇を尖らせた。 「……くだらない事を言うな」 ティエリアの拗ねた表情とぽつりと呟いた言葉が、リジェネを不思議と嬉しくさせた。 ぱっと顔を輝かせて、リジェネはティエリアの真横に体を投げ出した。 スプリングが激しく軋んで、ティエリアの体が数回宙に浮き上がる。 「な…!」 驚くティエリアの体を強引に抱き寄せて自分の方を向かせ、 リジェネはティエリアの顔を至近距離でまじまじと見つめた。 「君って……、可愛いよね。  リボンズといた時にも、君みたいなイノベイドが一人でもいてくれたら面白かったのに」 フッと微笑むリジェネの瞳が愛しさを強めたように見えて、 瞬間的にティエリアの頬がかっと赤くなる。 そっと手を伸ばし、リジェネが柔らかくティエリアの頬を撫でさする。 頬にかかった黒髪までも絡め取り、くるくると指に巻きつけてもてあそびながら、 リジェネは更にぐっと体を密着させた。 ティエリアの首筋に顔を埋め、背中に回した腕に力を込めてぎゅっと抱き締める。 同じ細胞で出来ている故なのか、ぴったりと触れ合った全身の肌ざわりがとても心地よい。 「ん……」 それはティエリアも同じだったらしい。 びくと少し体を強張らせただけで、ティエリアの方も知らず知らずに脱力し、 無意識のうちにリジェネの温かさを味わっていた。 ティエリアの腕が所在なさげに空を揺らめく。 同じようにリジェネを抱き締めたいが、そんな事は許されないと躊躇っているかのようだった。 ティエリアの葛藤を見越して、くすくすとリジェネが笑う。 「な、何がおかしい…!」 「別に」 照れ隠しのように声を荒げたティエリアを一層きつく抱き締め、 返答の代わりに、リジェネはその柔らかそうな首筋に唇を這わした。 触れた瞬間にティエリアの体が強張ったのが、抱き締めた腕を通して伝わってくる。 「はう…っ!き、君は、いつ…もそうやっ…て僕の事…を好き…にして…っ」 ティエリアの恨み節を聞き流し、 リジェネは遊び心の赴くままに、肌を吸ってはぺろぺろと舐めていった。 「うぅっ…、や、やめ…ろ…っ」 ティエリアが肩を竦めて全身を奮わせる。余程敏感になっているらしい。 「いいじゃない。もう一回してあげるよ。どうせ、あの程度じゃ足りないだろ?」 ティエリアの耳元に低く囁き、リジェネはちゅうっと音を立てて首筋を激しく吸い上げた。 唇を離すと、そこには花を散らせたかのような赤い痕がくっきりと残った。 「キスマークって言うんだよね、これ。色が白いからすごく目立つ。  現実世界で君を抱いた男はみんな、大喜びしただろうね」 ティエリアが外の世界では誰とも経験した事がない事を知っていたが、 リジェネはあえてそう言ってやった。ティエリアの困った顔を見るのが楽しくて仕方ない。 「そ…、んな事…した事ない…の、知ってる…くせ…に…っ」 予想通りに、ティエリアが喘ぎまじりの掠れた声で途切れ途切れに否定してくる。 よく言えました、とでも言うかのようにリジェネが再び柔肌にむしゃぶり付き、 その一帯全てを強く吸って自らの痕跡を思う存分付けていく。 「ひゃうっ…!や、やめ……っ、ふあ…んっ…!」 性感帯ではないはずなのに、異常なほどにティエリアの全身は敏感になっていった。 頼りなく彷徨っていた腕が、助けを求めるように遂にリジェネの背中に回された。 かすかに震えながらも、結局リジェネを突き放す事も出来ず、 むしろ自分に押し付けるようにティエリアの腕に力がこもる。 熱い舌が、火照った首筋から鎖骨までを延々と舐め続けた。 リジェネが箇所を変えて舌を這わすたびに、密着感を増した肌にお互いの胸と乳首が当たる。 柔らかい胸の弾力と尖った乳首の感触が余りに対照的で、 その卑猥さにティエリアの息はどんどんと乱れていった。 秘所からじゅるりと熱いものが漏れ出ているのが分かる。 同じような触感に晒されているはずなのに、 一方のリジェネが全く動じもせずに責めを繰り返しているのが恨めしくて堪らなかった。 いい加減首筋を責めるのに飽きたリジェネが、体の隙間に手を入れ、 胸を揉みながらティエリアの耳たぶをパクっと咥える。 きゅっと乳首を抓られ、れろっと小さく耳たぶを舐められただけで、ティエリアの膣壁が痙攣した。 「あうぅっ…!!も、もういい!!」 痺れるような電流が走り、ティエリアは堪らずリジェネを突き飛ばした。 仰向けに弾き飛ばされたリジェネが、後ろ手に手を付いて軽く上半身だけを起こし、 不満げな視線でティエリアを睨みつけてくる。 ティエリアは上がった息を整える事だけに集中しながら、リジェネの視線を外した。 顔が上気し、瞳も潤んでいるのが自分でもはっきりと分かる。 軽く達してしまったのだ。 きっとそれはリジェネにも伝わっているに違いない。 そう思うと、ますます顔が熱くなっていった。 リジェネがティエリアの真っ赤になった表情を窺うように見て、読んだように相好を崩した。 あれ?もうイッちゃったの? その目は明らかにそう言っていた。 「う、うるさい!」 言葉では何も言われていないのにも関わらず、ティエリアが腹立ち紛れに叫ぶ。 「何も言ってないよ?」 リジェネが意地悪く微笑みながら返して来る。 上から見下すような泰然とした雰囲気のリジェネと、怒りと恥ずかしさを噛み殺し、 火照った顔を晒しながら大きく肩で息をするティエリアの姿はやはり対照的だった。 ヴェーダを掌握してリジェネを拾い上げてやったのは自分の方なのに、 何故こうも形勢が逆転しているのか。 改めて思いを馳せると、ヴェーダと融合して以来のリジェネとの日々が鮮明に思い浮かんだ。 一応はヴェーダの掌握権を持つティエリアがリジェネを使役してはいたものの、それはむしろ形だけ。 リジェネの自分勝手なふるまいに手を焼き、 ことある事にいいようにあしらわれ、隙を見てはからかわれていた事実を再認識する。 ティエリアに、今更ながらに鬱憤が募った。 「き、君はヴェーダに相応しくない」 「そうかな?僕ももともとはヴェーダに生み出されたんだから、  相応しいとか相応しくないとか関係ないと思うけど」 ティエリアの説教を意にも介せず、 リジェネが相変わらずの口調でのほほんと答えて来るのが尚更苛立ちを誘う。 どこか高圧的な笑みを浮かべつつ、試すように見つめてくるリジェネを 今こそ屈服させてやりたいという気持ちが、ティエリアに不意に湧き起こった。 いまやリジェネは後ろ手に上体を支え、足を投げ出す格好でベッドの上にゆったりと座っている。 その足の隙間から、ちらちらとリジェネの女の部分が垣間見える。 (そうやって余裕ぶっていられるのも今のうちだ。君の尊大な驕りを今こそ僕が正してやる) 「ティエリア……?」 雰囲気の変わったティエリアに、リジェネが訝しそうに顔つきを変える。 湧き上がってくる正義感を漲らせながら、 ティエリアはここに来てようやく、ヴェーダの掌握者らしい毅然とした表情を取り戻した。 「君が僕を見下しているのはよく分かっているさ。  その根拠の一つを今から打ち砕いて見せる。  あんな風になるのは僕だけじゃないって事を、君は自分の体で知るべきだ」 真面目な言葉を紡ぎながら、裏腹にティエリアの唇は釣り上がっていた。 (笑っているのか?僕は…。今から行う行為が楽しみで仕方ないと……) とても褒められたものではない感情を認めながら、 ずるずるとベッドを這うように進み、リジェネへと近づいていく。 リジェネの顔にほんの僅かに怖れの色が浮かんだのを見て、何故だか血が沸き立つ感じが強まった。 もはやその感情に蓋をする事は出来そうにもない。 データの男たち、そして今日のリジェネ。 今まで受ける側だった征服欲というものに、今は自分自身が囚われている。 そう認識した途端、急激に興奮が強まっていった。 リジェネの軽く開いた足の間に陣取り、 白い太ももをすうっと一撫でしてから、その内側に手を掛ける。 今までティエリア自身が何度もされてきたのと同じように、 有無を言わせぬ力を込めて一気に左右にがばっと押し開く。 露わになったリジェネのそこを、ティエリアはじっくりと見つめた。 まだ誰も受け入れた事のないリジェネの秘所はどこまでも清らかで、まるで湿り気も帯びてはいない。 ふと淫らな事を知り尽くした自分との違いを思ったが、そんな負の感情を振り払い、 ティエリアはリジェネの両膝を立たせ、更に限界まで開かせた。 リジェネがはっと息を呑んだ音が、静かな空間にやけに大きく響く。 「……っ」 淫らな格好で、生まれて初めて他人の目の前に余す事無く秘所を露わにされて、 さすがのリジェネも動揺を隠せないらしく、かすかに太ももが震えている。 ティエリアが一番柔らかそうな所に吸い付き、 じゅっと音を立てて強く吸い上げると、あからさまにリジェネが下半身を奮わせた。 唇を離すと、そこにはティエリアがさっきリジェネに付けられたのと同様の紅い痕がくっきりと刻まれた。 またしてもリジェネが息を呑む音が、ティエリアを思いのほかいい気分にさせた。 わざと意地悪い笑顔を作り、ティエリアは脚の間に屈みこんだままで、リジェネの顔を見上げた。 リジェネの表情が心なしか強張っている。 「どうだ。興奮するだろう」 つとめて冷たい口調で言ってやると、リジェネは悔しそうに瞳を揺らした。 しかし、すぐにその瞳がふっと笑う。 「そうだね。さすがに君の経験が活きている。  つまり、君はこんな風に近くでたっぷり見られるのが好きだって事だよね」 この期に及んでの挑発的なリジェネの言葉に、ティエリアの頭にかっと血が上った。 結局のところ、真実を言い当てられているようでなお腹立たしい。 「だ、黙れ…!そんな余裕を言ってられるのも今のうちだけだ…!」 じっくり責めるつもりだったが、もうそんな気はなくなった。 リジェネの秘所に一気に顔を埋め、ようやく膨らみかけた蕾のような 処女そのもののクリトリスへと舌を押し付ける。 「は……っ」 リジェネの顔がぴくんと紅潮する。 無意識的に逃げ出そうとした腰をしっかりと抑えつけて、 ティエリアはいきなり激しく舌を往復させた。 「はぁ…っ、あ…ぁ…っ」 上からリジェネの湿った声が降って来る。 (どうだ、リジェネ。気持ちいいだろう。性行為で乱れるのは僕だけじゃない。  君だって同じじゃないか) 心の中で勝ち誇りながら、ティエリアはぴちゃぴちゃと獣のような音を響かせ、 クリトリスを激しく責め立てていった。 今まで自分がされて気持ちよかった事を思い出しつつ、舌の動きを細かく変える。 核の側面をなぞり、舌先で先端を突付き、小刻みに上下に舐め上げる。 「ん…、んっ……」 だが、うめくような喘ぎを漏らしながらも、ティエリアほどあからさまな反応をリジェネは見せない。 初めてなのだから仕方ないと解釈し、ティエリアはつーっと膣口の亀裂を人差し指でなぞった。 クリトリスと膣の2箇所責めが相当な快感を生む事は、今までの経験で充分に知り尽くしている。 異物の侵入を拒むかのように処女の入り口はきつく蓋を閉じていたが、 指先に確かにぬるりとした愛液の熱さを感じた。 きっと初めての快感に悦んでいるのだ。 そう思うと、自然にティエリアの動きも淫らなものへと変わっていく。 膣口に滲み出てきた愛液を指に掬い、今度はしっとりと湿らせた指でクリトリスを小刻みに擦りながら、 自由になった顔を上げてリジェネの表情を窺った。 リジェネは浮かされたように頬を染め、軽く口を開けて ティエリアが自らのクリトリスを擦り続けるいやらしい光景をぼんやりと見つめていた。 自然にティエリアの口元はほころんだ。リジェネを征服していると思うと楽しくて堪らない。 「どうだ?君だってもうこんなに濡れている…。気持ちいいんだろう?」 声を落として囁くと、リジェネは深い溜息を吐きながらもくすっと微笑み返した。 随分余裕があるようだ。 「どうかな…?まあ気持ち悪くはないけど、  誰かさんのように病みつきになる程、気持ちいいわけじゃないみたい。  正直、期待はずれでがっかりだよ。君みたいに何も考えられなくなると思ってたのに」 「なんだと…?」 ムッとして、ティエリアが視線を再び秘所に落とす。 改めて観察してみると、膣口に愛液はまだ卑猥に輝いてはいたが、 リジェネの言葉通り、その分泌は鈍くなっているようだった。 その後どれだけクリトリスを細かく摩擦し、亀裂に浅く指を挿し入れて 内部を擦って刺激してやっても、もう新しい蜜液が溢れ出てくる様子はなかった。 (いくら初めてでもそんなはずはない。事実、僕のはじめての時は…、もっと……) 愚直にリジェネを責め立てながら自分の初体験の時の快感を思い出すと、 むしろティエリアの体の奥が疼き出した。 ティエリアは今、四つん這いで尻だけを高く上げた体勢で、リジェネの秘所を摩擦している。 その格好のいやらしさを思った時、急激に自分の秘所に欲望が満ちてくるのを感じて、 堪らずティエリアは唇を噛み締めた。 「く……っ」 苦しげに頭を軽く振って、淫欲を振り払うようにリジェネの膣口へとむしゃぶりつく。 クリトリスも擦り続けたままで亀裂全体を激しく上下に舐め回し、 じゅっと唇をすぼめて愛液を吸い上げた。 「んぅ…っ」 リジェネが低くうめく。 さすがに新しい快感がにわかに湧き起こったが、 ティエリアの舌の動きの激しさの割には、やはり淡い快感でしかなかった。 まるで意地を張るかのように、ティエリアは舌先を膣にずぷりと突き入れた。 だが、ぬるりとした粘液の膜のような感触を舌に感じ、 その卑猥な触感でやはりティエリアの方が疼いてしまう。 たった今リジェネにしてやっている事を、 自分こそがされたくて堪らないのだと体が訴えているようだった。 必死に淫欲を抑えつけながら、ティエリアは頭ごと動かして舌を大きく注挿していった。 しかしぬるぬると舌が粘膜を移動する度に、ティエリア自身の下半身が熱くなり思わず膝が笑い出す。 「く…、んっ…、んっ…」 鼻だけでは息が満足に出来ない。 息苦しさに表情を歪め、それでも何とかリジェネに快楽を与えようと、 ティエリアは一生懸命に指と舌を動かし続けた。 しかし、裏腹にリジェネの方には冷静さだけが強まっていく。 高く上げたティエリアの尻が舌の出し入れの度に淫らに揺れる様を眺めていると、 ティエリアが相当に疼きを持て余している事が、リジェネにも手に取るように伝わってくる。 どれだけ一生懸命に刺激を与えられても、もはや大して感じてやれそうにもない事に、 何となく申し訳なさが募った。 リジェネはティエリアの髪に片手の指を絡ませ、褒めるように撫でた。 「あ〜…、ごめんね、ティエリア。もういいよ。僕、全然気持ちよくないから」 出来るだけ優しく言うつもりが、出た言葉はやはりいつも通り辛辣なものだった。 ティエリアが舌を抜き、不愉快そうにリジェネを見上げて睨み付ける。 心底悔しそうな瞳が不思議なほどに可愛く見えて、 リジェネはふっと微笑んで、よしよしと再び頭を撫でてやった。 「生身の肉体があれば、また違うのかも知れないね。  でも、どうやら僕は君と違ってこういう事、別に好きじゃないみたい。  今は意識しかないんだから、自分がその気にならなくちゃどうにもならないんだと思う。  やっぱり、君が特別、気持ちいい事が好きなだけなんだよ。試してみてはっきり分かった」 フォローするつもりで言った言葉だったが、それはもっとティエリアのプライドを傷つけた。 ティエリアが怒りに瞳を潤ませて激しく抗議してくる。 「勝手に結論付けるな…!僕はそんないやらしい人間じゃない…っ」 「でも、僕よりティエリアの方が濡れてるんだろ?」 冷静に返して、リジェネはティエリアの尻の先に視線を送った。 影になっていて見えないが、そこが激しい熱を持って疼いている事は雰囲気ではっきりと分かる。 くいっと突き出された腰の流れるようなカーブが、リジェネの嫌味な性格に不意に火を点けた。 もう一度ティエリアをいたぶり、その淫らさをしっかり教え込んでやりたい欲望が強まってくる。 「ふふっ」 リジェネの顔に悪魔のような冷笑が浮かぶ。 思わず身の危険を感じ、慌ててティエリアがリジェネから離れようとしたその瞬間、 リジェネは優しく髪を撫でてやっていた手付きを、頭を押さえつける乱暴なものに変えた。 髪をぐっと掴んで顔を上げさせ、リジェネは威圧的に囁いた。 「君は初めての時、ちゃんとイッてたもんね。知ってるよ。  相手はただのデータの無機質な男だったのにね。  まさか同じ遺伝子で出来てるからって、僕も同じように感じるはずだと思ったのかい?  体は同じでも違うAIなんだから、意識まで同じはずがないじゃないか」 リジェネの悪意に満ちたよどみない言葉が、ティエリアの耳に冷たく響く。 ティエリアが首を振って否定しようとするのを、リジェネの手が強引に抑え付けた。 「馬鹿だな、ティエリア。  外の世界で人間と触れ合ったついでに、人間の女みたいに誰かに愛してもらえばよかったのに。  欲求不満状態で肉体を放棄したから、こんな浅ましい行為に耽る羽目になるんだよ」 リジェネの瞳が妖しい金色に輝き始める。 不気味なオーラを感じて急激に不安が募り、ティエリアはぎゅっと瞳を閉じた。 ヴェーダの掌握権を握った上位者だというのに、その上下関係があっけなく引っくり返っている。 「ち、違う…。ぼ、僕は、人間の生活や心の機微を知らなければ、来るべき対話の時に……」 何とか辻褄合わせの言い訳を捻り出すが、全く説得力がない事はティエリア自身が痛いほどに分かっていた。 「言い訳しなくてもいいよ。なんだったら、昔の仲間をデータ化して再現すればいいじゃないか。  あのデータの男たちとなんら変わらない。僕ならそうする。  まあ、君の場合、そういうのはさすがに気が咎めるのかな?  複数プレイが大好きなくせに、変な所で真面目なんだから」 勝手に自己完結して、リジェネは楽しそうに声を上げて笑った。 そしてベッドへ突いたティエリアの肘へと片手を移動させ、ゆっくりと撫でさする。 びくびくと肘が頼りなく震え、ティエリアの喉がカラカラになる。 リジェネが何を考えているのか全く分からない。 「リ、リジェネ…、どういう…つもりだ…っ」 「別に?そろそろご主人様に、ご自分の正体と言うのを教えてあげるだけだよ」 リジェネの金目が欲望を体現するかのように妖しく輝きを増したのと同時に、 ティエリアの体は簡単にひっくり返されてしまった。 ベッドの上に仰向けに転がされ、驚いて目を開けると、 ティエリアの目の前にはまだリジェネの秘所があった。 リジェネの体が反対向きにティエリアの上に乗り、じりじりと下半身へと向かっていく。 途中、ティエリアの乳首の先端を軽く舐めてやると、薄い肌がぴくぴくと痙攣した。 やがて上下のシックスナインの体勢になって、 リジェネは想像通りにぐしょぐしょに濡れそぼったティエリアの秘所を満足げに見つめた。 くぱぁと陰唇を片手で押し開き、卑猥に口を開いた膣襞の奥までじっくりと覗き込むと、 その視線で興奮を強めたかのように、膣内からは後から後から愛液が溢れ出てくる。 「ほらね。もうこんなに濡れている。  僕を責めていたはずなのに自分の方が感じるなんて、いやらしい体だよね、ティエリア?」 「ち、違…っ、ゃ…っ、あぅ…っ!」 抵抗してくるティエリアの亀裂をリジェネが指先でゆっくりと数回なぞると、 ティエリアの疼きは否応なく高まった。 指の往復の度にその滑りがどんどんなめらかになっていく。 「ち、違う…っ、ぼく、僕は…っ」 いやらしい体だと罵られたばかり。 これ以上、こんな恥ずかしい状態を晒したくはない。 何とか疼きを落ち着かせようと意識を集中させて、冷静になるべく頑張ったが、 どうしても意識はリジェネの指先の動作に集中してしまう。 秘裂を擦られる度に、声が淫らな色を強めていくのをどうしても止められない。 頼むからやめてくれと言わんばかりに、ティエリアが顔に跨ったリジェネの太ももを強く掴んだ。 「は…、あぁ…っ、ああ…っ…、リ、リジェネ…、も、もう…っ」 「もう、なんだい?まだ指を挿れてもいない。表面を擦ってるだけだよ?」 しかしリジェネは聞き入れる事もなく、逆に指の往復の速度を速めて秘裂を容赦なく攻め立てる。 「んっ、んああっ…、ああっ…!」 数分擦られただけで、もう我慢できないほどにティエリアには欲求不満が募った。 もっと奥の方まで責めて欲しくて堪らない。 深い快感を知り尽くしている体が、この程度の刺激で満足出来るはずもないのだ。 読んだようにリジェネがくすっと笑う。 中指の先端を膣口に軽く突き入れ、くちゅくちゅと入り口を掻き回して焦らしながら、 リジェネはクリトリスを舌先でツンツンと突付いて弄んだ。 「あ、あぁっ…!!」 遊びのような刺激でも、ティエリアは過剰なほどに反応して腰を跳ね上げた。 リジェネが意地悪く囁く。 「認めるかい?いやらしいのは、ティエリアだけなんだって」 「や…っ、ちが…、違う…っ、君だっ…て…、回数…を重ねれ…ば…っ、はう…っ」 それでも必死に頭を振って、頑固に認めようとしないティエリアを咎めるように、 リジェネは今度は指を2本連ねて、膣口を円を描くように激しく掻き回した。 「ふああんっっ!!んあっ、あんっ…、それ…ぇっ…、だ、だめぇぇっっ…!」 言葉の拒絶とは裏腹に、ティエリアは快感に震えて身悶えし、 その脚が挿入を待ち侘びるかのように無意識的に更に大きく開いていく。 「認めたらちゃんと奥まで入れてあげるよ。  それに…、もうしばらくいいってくらい、中を一杯擦ってあげる」 リジェネの言葉は悪魔の甘言のようにティエリアの脳髄を奮わせた。 快楽を求めて疼く膣肉が、理性の拒絶を押し込んでいく。 「どうする?嫌ならやめてもいいよ?」 指先をくいくいと折り曲げて入り口だけを軽く擦った後、リジェネは指を抜く素振りを見せた。 二重に要求されて、淫欲に浮かされたティエリアに、遂に我慢の限界が訪れた。 縋るようにリジェネの太ももを掴んだままで、搾り出すように言葉を押し出す。 「や…っ、み、認め…るから…っ、もう…、い、入れて…っ」 「どこに?そういう専門用語も、細かく教えられたんだろう?」 意地悪く熱い息を吹きかけながら、リジェネはクリトリスの僅か数ミリ横をペロペロと舐めた。 すぐそこにもっと強い快感が待っているのに、核心に触れてもらえないもどかしさ。 「んくぅ…っ、リジェ…、お願…い…っ、早…く…っ…」 ティエリアは堪らず腰を揺らし誘導しようとしたが、 リジェネはすぐに舌を引っ込めてティエリアを焦らした。 堪らずティエリアの指は震え出し、目尻には涙が滲む。 「だって、言ってくれないと分からないじゃないか。君ってもう体の穴の全部、処女じゃないよね? それとも、僕の指程度じゃ満足出来ないとでも言うのかい?」 そう言いながらもリジェネは膣口の亀裂にだけ狙いを定め、 ぬめりを塗りこむように小刻みにさすって焦らし続ける。 敏感になった粘膜を容赦なく煽られて、ティエリアはもう本当に我慢が効かなくなった。 「あ…、う…、ぁ…あっ…」 はあはあと苦しげな息を吐きながら、遂にティエリアはその箇所を指す隠語を口にした。 ただ、言葉にならない。唇だけが単語を示して形を変える。 それでもそれはリジェネに直感的に通じた。 次の瞬間、ご褒美のような勢いで2本の指が一気に奥まで突き入れられる。 「んんっ、あぁぁっっっ!!」 ずんっと膣壁を擦られた瞬間、待ち侘びた刺激をようやく得られた喜びで ティエリアは瞬間的に達した。 大きく仰け反った体から汗が飛び散る。 だが絶頂の嬌声を聞いても、リジェネは深くまで突き入れた指を抜こうともしない。 ティエリアにはまだまだ乱れる余地があるはずなのだ。 「まだイケるだろ?ティエリア。ほら…」 「んっ、はう…っ、んんっ…!」 指を小さく緩やかに抜き差すと、ティエリアは簡単に反応しては再び快感を強めていった。 絶頂の余韻を残したままの腰が、もっと強く突いてとでも言う様に、 リジェネの指の動きにあわせて淫らにくねり始める。 応える様に、リジェネは指の抽送を一際激しくしていった。 潤みきった膣壁を指の腹で押し込みながら何度も奥まで擦り立ててやると、 ティエリアの嬌声もますます激しいものへと変わっていく。 「ティエリア、気持ちいいかい?」 「ああっ、あぁんっ、あっあっ、い、いいっ…!んっ、も、もっと…っ」 クリトリスを軽く舐めながら聞いてやると、ティエリアは苦しげにこくこくと頷いたばかりか、 更なる快楽を要求してくる。 一度外れた箍が締まる事は、もはやなさそうだった。 「いいよ。ほら」 リジェネは愉しげに笑って、乱暴なほどに指を抜き差しながらクリトリスを唇で挟み、 核の根元ごとじゅっと吸い上げる。 「あああっ!!いいっっ!!」 先刻のデータの時以上に、ティエリアは我を忘れて快楽に溺れていた。 自ら望んで開発してきたその体が、何度達しても足りないかのように貪欲に刺激を求め続けている。 足を限界まで大きく開いて指を最奥まで受け入れ、リジェネの舌に押し付けるように腰が揺れ出す。 クリトリスを前後に素早く舐めあげられると、一気に快感が高まった。 「やっ、だめ、だめぇっ…!イ…ク…ぅ…っっ!!」 びくんと腰が浮き上がり、ティエリアは再び激しい絶頂を得た。 「う、うぅ……」 脱力してぼんやり視線を彷徨わせた先に、リジェネの膣口がうっすらと濡れ輝いて 揺れているのが見えた。 まるで神秘的な何かに誘われているような錯覚に陥って、 ティエリアは震える両手でリジェネの尻肉を掴み、自らの顔へとその腰をいざなった。 秘所が顔面に落ちたのと同時に舌を伸ばし、秘裂からクリトリスまでをゆっくりと舐め上げていく。 「ん…っ、別に僕にしてくれなくてもいいのに。どうせ僕は大して気持ちよくないんだからさ」 リジェネが後ろを振り向いて言ったが、 それでもティエリアはそれが義務であるかのように、丁寧に舌を遣い続けた。 何度も達してだるくなった体では、緩慢な責めしか与えられそうにもない。 「ふうん。まあいいや。よく思えば、相手への奉仕っていうのもちゃんと仕込まれてるんだもんね。  好きにすれば?」 リジェネは面白くもなさそうに吐き捨てて、ティエリアの秘所に再び向き直った。 ティエリアが舌を遣って自分を責めるのに呼応するように、 まだ膣内深くに挿したままの指に、膣壁が熱を強めて絡みついてくる。 明らかに、ティエリアはリジェネを責める事によって自分も興奮を強めているのだ。 「そっか。奉仕は自分のためって事か。じゃあ、僕も…」 リジェネはにやりと笑ってその感触と意味を再認識し、指の抜き差しを再開した。 もう焦らすまでもなく、いきなりクリトリスを前後に規則的に舐めてやる。 「あぁんっ…!あっあっ、ああっ…!」 ティエリアの喘ぎが途端に大きくなり、耐え切れずに舌がリジェネの秘所から外れた。 それでもひとしきり快感を味わった後は、再び舌を押し付け、 喘ぎながらも精一杯に奉仕を繰り返す。 健気なほどのティエリアの姿に、リジェネは更に快楽を与えてやる事で褒美とした。 「偉いね、ティエリア。それでいいんだよ。自分に素直になって、もっと気持ちよくなって……」 リジェネの言葉がうっとりとした余韻を伴って、ティエリアの耳に甘く響いた。 喘ぎながら無心で頷き、ティエリアはリジェネの膣やクリトリスに、懸命な奉仕を与え続けた。 心なしか、リジェネのそこも潤いを増して来ているような気がする。 二人分の淫らな息遣いに、ぴちゃぴちゃという湿った音が重なって響く。 「…んっ、んぁ…っ、あぁ…んっ…、ああ…っ」 自らも舌を動かしていると、より快楽が強まる気がした。 しかし一方では、快楽を抑える行為のようでもある。 2つの相反した感覚を溶け合わせながら、いつ終わるとも知れないリジェネの愛撫に身を任せ、 ティエリアはその後も何度も達し続けた。 *** ベッドの上で、ティエリアはゆっくりと目を開いた。 随分長い事眠ってしまっていたのか、やけに頭が重い。 しかし、甘く痺れるような余韻はまだ、体の節々にまで残っていた。 ふと真横を見ると、リジェネが無表情でティエリアの顔をじっと見つめ続けている。 目が合った瞬間、その瞳が柔らかく細まった。 「すごく良かったよ、ティエリア」 優しく囁き、リジェネがにっこりと微笑む。 ぼうっと見返した次の瞬間には破廉恥な行為の全てを思い出し、 ティエリアは激しく動揺して赤面した。 「ぼ、僕はべ、べ、別に…っ、な、なにもしてないぞ…!?し、したのは君だけだ…っ!」 「そうだね。分かってるよ」 リジェネは面白そうにクスクスと笑い、とりあえずと言った風情で同意しながら、 仰向けで寝そべったティエリアの胸の谷間をそっと撫でた。 「んっ…!」 途端にビクンと体が震え、ティエリアは思わずリジェネの指を振り払った。 「あはは。まだ足りないの?すごいなあ、ティエリアは」 リジェネが心底可笑しそうに声を上げて笑い、 続いて心の中まで探るような目でティエリアの顔を覗き込んでくる。 そうだ、名案を思いついたとばかりに、リジェネの瞳が唐突に輝きを増した。 「ねぇ、なんだったらさぁ、さっきの僕たちの姿を復元して、外の世界に配信してみない?  日頃人間の作ったムービーで愉しんでる恩返しって事でさ。  僕たちみたいな美しい容姿の双子が絡んでるのを見たら、みんな大喜びだと思うなぁ」 からかうように囁きながら、リジェネが再び胸を弄ぼうと手を伸ばしてくるのを、 ティエリアは真っ赤になって撥ね除けた。 「ば、馬鹿か君は…!そんな事、恥ずかしいとか思わないのか…!?」 「別に?どうせ僕の事知ってる人間なんて、外の世界にはほとんどいないもの。  もしうっかり君の仲間が見てしまったとしても、せいぜい、ヴェーダと融合した君が  自分の複製を適当に造って楽しんでるって思うだけだろうね。  君の元気そうな姿を見て、むしろ安心するんじゃないかな?」 「な、何を言っているんだ、君は…!!大体、君はいつもふざけすぎている。  そんな事では来るべき対話の時に、何の役にも立たないぞ…!?」 ティエリアが紅潮した頬を更に赤く染めて真剣に反論してくる。 矢継ぎ早に怒りの言葉を投げつけられたが、このくだらないやり取りのおかげで リジェネは、ティエリアと仲間達の関係に感じていた嫉妬心が少し報われた気持ちになった。 「うん、そうだね」 適当に生返事を返して聞き流し、リジェネはごろりと寝返りを打った。 そのままうつ伏せになって背中を軽く反らせて伸びをし、リジェネはティエリアを横目に見た。 「それより、僕疲れたよ。ティエリア、たまには僕にもマッサージしてよ」 「なんで僕がそんな事をしてやらなければいけない」 ティエリアが怒りと照れが入り混じったような表情で、 完全にリラックスし切り、やる気の欠片も感じられなくなった リジェネを咎めるように睨み付けた。 「別にいいじゃないか。まあ、お望みとあらば僕がしてあげるけど…?」 リジェネがそっと腕を伸ばし、ティエリアの肌をさっと撫でる。 「ぁっ…!」 瞬間的に乳首を手の平が掠め、ティエリアの全身がびくびくっと小刻みに震えた。 強く唇を噛み締めて、ティエリアが悔しそうに拳を握る。 どうも、今日もまたリジェネに完敗の様だった。 「く…。今日だけだぞ」 「うん。それでいいから早くしてよ」 諦めて、ティエリアはベッドに起き上がり、ゆっくりとリジェネのうつ伏せの腰に跨った。 すぐに手を這わせ、いつもリジェネにされているように、肩から背中までの筋肉や筋を丁寧に揉みほぐしていく。 はあっとリジェネが気持ち良さそうな息を吐いた。 「なんかこっちの方が、さっきの君の奉仕なんかよりよっぽど気持ちいいや……」 夢見心地のようにリジェネが小さく呟いたのを、ティエリアは聞き逃さなかった。 「わ、悪かったな」 ムッとしながらも、ティエリアは丁寧なマッサージを繰り返すのを止めない。 やはり生真面目な性格が、こんな所でも発揮されていた。 一方のリジェネは癒しの最中でも、ティエリアをますますからかいたくて堪らなくなる。 同じ遺伝子で作られた瓜二つの体を与えられ、 外部世界では一度は意識を通じ合ったはずなのに、性格の違いはいかんともしがたいものだった。 「そう言えば、あのデータって続編があったんだよ。知ってる?ティエリア」 茶飲み話のように事もなげにリジェネは呟いたが、 それがティエリアの興味を引くであろう事はお見通しだ。 案の定、ティエリアがぴくっと手の平を強張らせたのが背中に伝わってくる。 「あの女の子、前の穴にも後ろの穴にもいやらしい道具を突き入れられてさぁ、  随分悦んでたっけ」 「それがどうした。僕にはもうそんなの必要ない」 「そうだね。もう僕がいるもんね。  ただのデータなんかより、僕とする方が遥かに気持ちいいって今日知ったもんね」 「違う…!僕はもう人間の細部までちゃんと知ったから、  そんな事はもうどうでもいいって言ってるんだ」 ティエリアの口調には決意のようなものが込められていて、 単なる売り言葉に買い言葉の反論だけではないようにリジェネに聞こえた。 もしかして、と訝しく思いながら、リジェネはティエリアの真下でくるりと体を返し、 上に乗ったティエリアの目を探るようにじっと見つめた。 「……もしかして、知識を得る事にもう充分満足したから、完全に眠ろうとか思ってるのかい?」 「その通りだ。もうそろそろ僕たちは眠りに就く時だと思う。  来るべき対話の時まで、AIである僕たちが延々と意識を保ち続けた上、  世界の情勢を監視し続けるのは好ましい事じゃないからな。  それは君だって分かってるだろう?リジェネ」 ティエリアが真面目な顔で頷き、 ヴェーダの空間内に浮かんでは流れ去っていく、データの束が放つ電子的な光に目をやった。 真剣なまなざし。 本当に明日にでも意識を凍結させる気かもしれない。 「そうだね…。君の言うとおりだ……」 とりあえず同調して頷いたが、リジェネはまだ、その意見に賛成する意思はなかった。 ようやく肉体の呪縛から離れ、使命からもひとまず解放されてヴェーダの中で素体に戻り、 ティエリアという遊び道具を本格的に手に入れた所なのだ。 今日程度の行為で、リジェネが心底満足しきれるわけはない。 ティエリアが生真面目にも、今度は体の前面の筋肉をほぐしに手を伸ばしてくる。 細い指がみぞおちに滑るように落ちる艶かしい光景を見つめていると、 やはりまだ眠りに就くわけにはいかないという気持ちが強くなった。 短い時間にも色々思考を積み重ね、リジェネにティエリアの決定を引き伸ばす妙案が浮かんだ。 「だけど、まだ早いと思うな。だって、君はまだ自分の使命を果たしてないじゃないか」 意味深な笑みを浮かべながらも軽いを調子を装って言うと、ティエリアの眉がぴくっと動く。 一体どういう事だと訊かれる前に、リジェネは先を続けた。 「リボンズだよ。彼のバックアップデータ、まだどこかにあるんじゃないのかい?  あのリボンズが存在消失に何の保険もかけてなかったなんてありえないからね」 「しかし、僕は……」 「そんな事、知らない?でも、絶対あるはずだよ。そうだろう?ティエリア」 リジェネの言葉にティエリアの心が揺れ始めた。 そう言われれば、リボンズのデータが全く存在していないとは言い切れない気がする。 ティエリアに生まれた迷いを読み取って、リジェネが誘導するように囁く。 「最期の最期まで、君はリボンズの説得に頑張ってたじゃないか。  時間のある今のうちに、リボンズを懐柔するべきだと思うなぁ。  だって、みんなで分かり合う世界が理想なんだろう?  ああいう野心に凝り固まった種類の者を説得できなければ、  みんなで分かり合う世界の実現なんて絶対不可能だ。  それに、もしリボンズと理解し合う事が出来たなら、  来るべき対話のその時に彼ほど役に立つ存在はないと思うよ」  リジェネの言葉は、ティエリアが外の世界で掴み取った結論の核心を付いていた。 ティエリアの心がぐらりと動く。 あと一押し。背中を押す様に、リジェネが囁いた。 「ねえ、一緒にリボンズの調教をしようよ。  ヴェーダの制限がかかっていて、どの領域にデータがあるか分からないと言うのなら、  こっちから探しに行けばいい。  心を閉ざして敵対している人間と理解し合う、いい訓練になると思うな」 リジェネの提案に、肌に這わせた指を止めて、ティエリアは思案を巡らした。 何事か考えているように、紅い瞳が時折金色に輝くのをリジェネは祈るような気持ちで見つめた。 しばらくして答えを出したティエリアは、リジェネの上に跨っている今の体勢そのまま、 上位者の威厳を漂わせながら堂々と口を開いた。 「その前に、君の調教の方が必要だな。僕に言わせれば、リボンズより君の方が遥かに御しにくい」 予想外の言葉にリジェネは一瞬あっけにとられたが、すぐににっこりと微笑を返す。 「そうだね、ティエリア。一日でも早く君の域に達せられるよう、頑張るよ」 小悪魔のように微笑むリジェネの瞳に卑猥な影がチラついたのを見て、 ティエリアが思わず息を呑んで顔を赤くする。 「そ、そういう意味じゃ…!」 「何でもいいから、背中、もう少しマッサージしてよ。本当、今日は色々頑張って疲れた……」 ティエリアの慌てた言葉を遮って、再びリジェネは体を返し、もう一度うつ伏せになった。 どちらにしても、意識凍結が先送りになったのは確実だ。 勝利の美酒に酔いながら、リジェネは両手を枕にして額に付け、ゆっくりと瞳を閉じた。 「く…っ、何で君はいつもそう自分勝手なんだ…っ」 ティエリアが不満げに喉を鳴らしながらも、優しいマッサージを再開する。 肉体を失ってから今日まで、リジェネにも積み重なっていた疲れが、 ティエリアのマッサージによってゆっくりと癒されていく。 穏やかな時間がゆったりと流れた。 ティエリアの手の平の温かさを背中に感じ、リジェネに強い眠気が急激に押し寄せてくる。 「あー、ティエリア、すごくいい気持ち…。そのまま続けてよ……。  明日また二人で頑張ろう………」 夢うつつでうつらうつらとしながら呟くと、ティエリアがぶつぶつと何やら小言を返してくる。 くすっと笑って聞き流し、リジェネはそのまま安らかな眠りに落ちて行った。