その日の朝目覚めると、ティエリアの枕元にはプレゼントの山があった。 昨日は戦闘で疲れ果ててぐっすりと寝込んでしまったから、 夜中に誰かが忍び込んできた事に不覚にも気付かなかったらしい。 「一体誰がこんなものを…?」 綺麗に包装された大小さまざまの箱は、10個。 どうやら一人ではなく、クルー達全員から贈られたらしい。 寝ぼけた頭のままで、そう言えば、今日が3月14日のホワイトデーだった事を思い出した。 以前、2月14日に日本へと降り立ったティエリアは、 ミッション達成の後の束の間の休息の間に 社会見聞を広げる名目で街へ出掛け、そしてバレンタインデーというものを知った。 小奇麗な菓子店でチョコレートを買い、 日頃の労苦をねぎらう為にマイスターやクルー達にプレゼントしたのだ。 「ありがとう、ティエリア」 皆が予想外のプレゼントを受け取って、想像以上に喜んでくれたのだった。 その時の皆の嬉しそうな顔を枕もとの箱たちに重ね合わせて、 ふっとティエリアの頬が緩む。 「ホワイトデーのお返しか…。実際贈られてみると、なかなか嬉しいものだな…」 まだ中身を確かめてもいないが、皆の心遣いが嬉しくもありがたくも思える。 昔はくだらないと見下していた陳腐な行為に、これほど心浮き立つものか。 自分の内面の確実な変化を意識する。 そしてそれが確かに喜ばしく感じられるのだった。 だが、10個のプレゼントはクルーの頭数に合わない。 指折り面々を思い出しつつ数えてみたが、重複しているのは明らかだった。 誰かが2個ずつプレゼントを用意したに違いない。 不思議ではあったが、まあそんな事もありうるか、と好意的に解釈して、 ティエリアは手近なプレゼントを一つ、取り上げた。 ずっしりと重い。 両手でしっかりと支えながら、シックな色合いのリボンを解き、 包装の合わせ目を丁寧に剥がして行く。 縦に長い長方形の箱の蓋をそっと開けると、中にはシャンパンが入っていた。 高級そうな装飾のラベル。スメラギからに違いない。 続いて開けた箱の中身は、フローラルのコロンだった。 その上に乗っていた薄い紙袋を開けると、 可愛らしいハンカチが色違いで3枚入っている。 「ミレイナか」 この重複したプレゼントをミレイナに重ね合わせる事は、 それほど難しい論理ではなかった。 あどけないミレイナの笑顔を思い出し、ティエリアは思わず苦笑した。 しばらくハンカチを眺めて満足した後、別の箱に手を伸ばした。 これは一体何が入っているんだろう、そして誰からの贈り物なんだろう――。 いつしか心は湧き立ち、プレゼントを開けるのが楽しみで仕方ない。 そんな自分に気付いてはいたが、 それはもはやティエリアにとって、 馴れ合いなどという嫌悪すべき感情ではなくなっていた。 去年イギリスで話題になったベストセラー、プラモデル数種に洋服。 ぬいぐるみに小型掃除機に洋菓子。 贈り主の見当が何となく付くもの、しばらく考えてもどうにも一致しないもの。 プレゼントを露わにしていくごとに、 出した結論が正しかったのか間違っていたのか自信が持てなくなる。 シャンパンの贈り主は本当にスメラギなのか。 あるいはこのセンスのいい洋服を、もしやアレルヤが買ったのか。 思考は混乱したが、これはあの人か、 いやこっちこそがあの人かと考える時間が不思議と楽しい。 最後に残った細い長方形の箱を手に取り、もうこれで最後か、と どこか物悲しい思いを抱きながら、ティエリアはそっとリボンを解いていった。 黒い包装紙に銀色のリボンの組み合わせは、 最初開けたシャンパンのそれよりも更に大人びて見えた。 だからこそこれがメインディッシュと勝手に判断して、 最後の最後まで手をつけずにいたのだ。 余程素晴らしいものが入っているに違いない。 期待で胸が膨らむ。 贈り主の姿を想像する。 見慣れた面々の顔を頭の中でひとしきり一巡させた後、 ティエリアは包装紙を解き、やはり黒い箱の蓋を開けた。 緩衝材にぴっちりと覆われた、中の本体を静かに引き出す。 しかし目の前に現れたそれが一体なんなのか、ティエリアには全く分からなかった。 包装紙に掛けられていたリボンとほとんど同じ、銀色の棒状の道具。 根元に付いたスイッチから、どうやら電化製品である事だけは判断出来た。 訝しく思いながらも、しっかりと包み込んだ緩衝材からそれを抜き取る。 長さは20センチ以上もあろうか。 根元は掴み安いように硬いプラスチックで出来ているものの、 上部の方は伸縮性に優れた素材で出来ているようにも見える。 出来損ないのひょうたんを思い出させるくびれ。 ぼっこりといびつに膨らんだ先端部。 中腹には柔らかそうなトゲトゲしたものがたくさん付いた突起が、 太い枝のようにせり出している。 「一体何なんだ、これは…」 根元部分を握り締め、正面から背面から斜めからと、 あちこちに方向を変えて観察してみるが、 その異様な形状に心当たりが全くない。 ティエリアにもっとまともな人間的知識があったなら、 それが女性器を慰めるディルドー型のバイブレーターである事は 即座に分かったに違いない。 だが、そういった方面の経験はおろか、知識さえも皆無なティエリアが どれだけ考えてみても、それの正体に気付けないのはある意味仕方のない事だった。 間違いなく、数々のプレゼントの中で最も不可思議な物体。 ティエリアの興味は、もはやこのバイブの使い道を探る、その一点に集中してしまった。 艶やかにしっとりと輝く、柔らかそうな先端部を指先で触ってみる。 「柔らかい…。いや、硬い…?」 その言葉通り、先端部は決して肌を傷つけないように柔らかい素材で出来ていながら、 硬度はしっかりと保っていた。 先端の膨らみは360度回転できる構造のようで、指で捻るとあちこちに首を曲げた。 それでもやはり、まるで使用方法がわからない。 ティエリアは頭で推量するのを早々に諦め、箱の中から薄い説明書を引っ張り出した。 『バイブレーター本体が激しい上下ピストンを繰り返し、  亀頭部が360度回転してボルチオを刺激。使えば使うほど膣に吸い付く柔らか設計。  Gスポットを確実に刺激し、付属子機がクリトリスを振動させれば、  どんな女性でも激しい絶頂に――』 まるで商品説明と使用方法がミックスされたような説明文だった。 亀頭部。ボルチオ、Gスポット、クリトリス――。 単語の詳細は分からねど、ティエリアは頷いて、幼子のように素直に説明を受け止めた。 「バイブ…、というからには振動器具のようだな。なるほど。マッサージ器か」 用途が確認できたら、使ってみたいと思うのは世の常。 既に手に握り締めている以上、 他のプレゼントを楽しむ前にこれを試してみようと思ったのはごく自然な事だった。 とりあえず、数段階あるスイッチの一つを入れて、機動を試してみる事にする。 ウィ〜〜ンという電動音と共に、先端の膨らんだ部分がぐりぐりと大振りに回転した。 同時に棒全体が上下にゆっくりと伸び縮みを繰り返す。 「な、何だ、これは…。これで一体どこをマッサージすると言うんだ?」 今まで色々なMSの部品を目にしてきたが、 こんな不思議な振動をするマッサージ器は、さすがに見た事がない。 しかし蛇の湿り気を思わせるこの粘っこい動きをじっと見続けていると、 何故だか体の奥にぐねぐねとした熱いものが芽生えるような不思議な感覚を覚えた。 嫌な予感がする。 これは絶対に普通のマッサージ器ではない。 どうにもそんな危機的な予感が頭から離れない。 それでも仲間から贈られた品物に違いはない。 どう対応していいものか皆目分からず、 ティエリアはローリングする棒を困った顔で見つめ続けた。 「まさか、壊れているのか…?新品なのに…」 保証書を探す前に、もう一段階スイッチを押し込んでみる。 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴッッッ すぐさま振動が強くなって、不気味な程に激しい動きに様変わりした。 音を強めた低い電動のハム音が殊更不安を煽る。 いきなり回転と伸縮が激しくなったせいで、 手の平が痺れる程に強烈な振動が響いてくる。 どうやら、壊れてはいないようだ。 やっとマッサージ器らしい振動を開始してくれたとティエリアはほっとしたのも、 僅かな時間でしかなかった。 手の平の神経が過剰に震わされるごとに、 ティエリアの全身が怖いほどに敏感になって行ったのだ。 最初僅かだったその感覚が、ヴヴヴと棒が唸りを上げながら震え、 激しく伸縮を繰り返す度に、強いものに変わっていく。 その荒々しい振動は手の平にだけ与えられているはずなのに、それが全身を震わせ、 そしていつしか下半身の一部を不愉快に疼かせていた。 「…なんだ、この感じは…っ」 芽生えはじめたのが淫欲のつぼみだという事に、ティエリアはまだ気付かない。 それでも身体は意思とは無関係に、快楽を予感してじゅんじゅんと火照り、 それを受け入れる準備をはじめていた。 「…っ…ふ…ぅっ…」 いつの間にかティエリアの呼吸は不規則になり、 振動に合わせて股間が燃えるように熱くなっていた。 それは、初めての感覚だった。 淫靡な、それでいて情熱的な欲求が湧き上がるように下半身に押し寄せ、 とてもじっとしていられない。 仕方なくベッドの上に正座し直し、 太ももをすり合わせるようにして疼きをやり過ごそうと努力する。 しかし、もじもじと身体をよじればよじるほどに、 その感覚は強くなりティエリアを追い立てていく。 「…っく…っ」 うねるバイブ亀頭部の淫らな動きから目が離せない。 これをこの疼く股間に押し当てて慰めたい――。 体の奥から声なき声が欲望を叫ぶ。 それを欲しがっているのが疼く身体なのか、 かすかに淫欲に目覚めたばかりの脳なのか、 もはや判別出来ないほどにその欲求は強まっていた。 正座して、必死に耐えていたティエリアの足が自然に開きはじめる。 手の中で震えるバイブの卑猥な動きが、今や身体を伝わり、 本当に股間までをも震わせていた。 潤む瞳、強まる期待、そして疼き続ける下半身と脳。 ティエリアの我慢が効かなくなるのに、時間はそれほど必要なかった。 誰に教えられたわけでもない。説明書の文章さえほとんど理解も出来ていない。 それでもティエリアは太いバイブの根元をしっかりと握り締めたまま、 それをゆっくりと股間へと導いていった。 唸る先端が振動しながら股間に近づくごとに、心臓の鼓動が速まっていく。 身体が熱くて堪らない。 何か秘めやかな、禁断の世界に足を踏み入れるような、 不道徳的な罪悪感をも感じながら、 ティエリアはついに、激しく回転するバイブの先端を股間へと押しつけた。 「ふあああああああっっっっ!!!」 途端に身体が2,3度ビクビクと痙攣し、快感とは到底言えないほどの強烈な刺激で、 ティエリアは大きな声を発して悶えた。 クリトリスにびったりと当たったバイブの亀頭部が、 まだ快楽の息吹さえ感じたことのなかった肉の粒を激しく奮わせたのだ。 いたいけな肉芽が残虐なほどの振動で甚振られ、一気に疼きが掻き消されてしまう。 目尻には涙が滲み、鼻腔にも涙の味がかすかに広がった。 「う…、うう…」 堪らずバイブを離してスイッチを切り、ティエリアは肩で大きく息をした。 静まり返った部屋に自分の呼吸の音がやけに大きく響く。 あれほど快感を求めて疼いていた淫欲の塊はとうに去り、頭が冷静さを取り戻す。 ティエリアのクリトリスは、ただじんじんと痛んでいた。 肌が擦り切れたのかと思われるほど、そこが痛んで仕方ない。 こんなつまらない事をしなければ良かった。 やはりマッサージ器は、本来の用途の為に使うべきなのだ。 もし酷く皮が剥けて傷ついているなら、手当てをしなければならない。 反省しながら涙を拭い、ティエリアはズボンのボタンを外して、 そこの状態を探るように、下着の中へと手を入れていった。 「――っ!!」 指が肉芽を捉えた瞬間、突き刺すような痛みが走る。 やはり傷ついているのか。 自らの浅はかさを深く悔いながら、ティエリアは膝立ちになり、 震える指でズボンと下着を下ろした。 下半身が露わになった瞬間、部屋のしんとした冷たい空気が舐るように肉芽に当たり、 ひりひりと痛んで堪らない。 傷薬はベッド脇のデスクに常備してある。 下半身を必要以上に動かさないよう、手だけを伸ばした瞬間、 ティエリアは股間に感じた新しい感触でびくりと動きを止めた。 何か、股から漏れ出している…? 空気が揺らめく度に、濡れた股間がスースーと冷える。 嫌な予感が恐怖へと変わる。 振り払うようにティエリアは、乱暴に指を股の中心部へと押し付けた。 くいっと軽く撫でただけで、そこがしっとりと潤んでいる事がはっきりと分かった。 「ま、まさか、血…?」 真っ赤に迸る鮮血を予想して、全身を焦燥と脅えが襲う。 こんなくだらない事で負傷して、ミッションをこなせなくなるなどとても許されない。 膣口一杯に滲んだ液体を指になすり付け、ティエリアは怯えながらそれを目の前にかざした。 「………」 血ではない。しかし、血のように湿った液体が人差し指全体を覆っていた。 試しに親指とすり合わせてみると、液体はぬめぬめと粘っこく指全体に広がるのだった。 先程バイブのローリングに重ね合わせた、蛇の粘った動きが再び脳裏に蘇る。 その途端、ティエリアの股間に疼きが戻ってきた。 指と指をすり合わせ、そのぬるぬる感を味わうごとに下半身が火照り出す。 指の液体と全く同じものが股間から新しく溢れ出し、そこ一帯を湿らせていく。 膝立ちの太ももがプルプルとかすかに震える。 堪らず太ももを僅かに締め、愛液の滲出を留めようと努力するが、 それが裏腹に疼きを強める結果になった。 「んっ…んっ…」 欲望を堪え、うめきともいえないうめきを時折発しながら、 ティエリアは自分を抑えるべく頑張った。 しかし、必死の努力もむなしく、指はひとりでに股間へと向かっていく。 まるで誰かに強制されているような感覚に捉われたが、 これもやはりティエリア自身の意思なのだ。 再び傷つくのは避けなければいけないはずなのに、 ティエリアは震える指が進んでいくのをどうしても止められなかった。 「はううんっっ!!」 指が再度クリトリスを捉えた瞬間、肉芽を走り抜けたのは痛みなどではなく、快感だった。 一気にティエリアの顔はとろけ、唇がうっとりと僅かに開いて小さな喘ぎを漏らす。 一瞬で危惧は消え、未知の快感を知りたいが為に、指が貪欲に動きはじめる。 ぬかるんだ指でクリトリスを僅かに擦る、 たったそれだけの事で下半身に強烈な快感が漲っていった。 強引な機器の刺激とは裏腹の指の柔らかなマッサージで、 ティエリアのそこは完全に快感に浮かされた。 まだようやく花開いたばかり。 しかもたった今快楽を覚えたばかりの淫核は、 濡れた指で刺激されるとどんどんとその快感を増し、 ぷっくりと神経を尖らせては更に快感を昂ぶらせていく。 「は…っ、ああっ…、あう…んっ…!ああっ、ああ…んっ…!」 自分の中にこんな快感が眠っていたとは知らなかった。 そして何故こんな快感がこの体に与えられているのかさえ分かりはしなかったが、 ティエリアは指を動かす度に強まっていくクリトリスの快感に酔い知れていた。 「ああっ、ここ…っ、なんでこんなに…っ、は…あん…っ、あぁっ…!」 指の動きがどんどん速くなって行く。 早くも行為に慣れた指は、本能が指図するままに細かくするすると動き、 指の腹で肉芽を押し潰して適度な圧迫感を与えながら、素早くそこを擦り上げた。 あれほどひりひりしていた神経が嘘のように鎮静し、 最初から何事もなかったかのように快楽で昂ぶり続ける。 愛液の潤滑が薄れると刺激が弱まる事をすぐに理解したティエリアは、 時折膣口から愛液を掬い上げてはクリトリスを擦り続けた。 「あんっ、ああっ、ふああっ、ああっ、ああっ!!」 起きぬけの狭い部屋に、ティエリアの湿った声が、 処女とは思えぬほどに艶めいて響いた。 クリトリスと指と愛液の擦れ合う音が、ぬちゃぬちゃと卑猥に響き渡る。 膝立ちで腰が揺れ、ベッドが軋む。 その上で快楽に表情を歪めたティエリアの細くしなやかな指が、 淫らな小粒を激しく擦り続けている。 男か女かは知らないが、もしこれをバイブの贈り主が見たならば、 迷いなく組み伏せてその細身の身体を舐め回し、更なる快楽を与えてやったに違いない。 やがてティエリアに人生初めての絶頂が訪れる。 まだ恋も知らず、性の欲望さえ抱いた事のなかった穢れなきその身体を、 電流のような激しい快感が震わした。 「ふあっ、ああああんんんっっっ!!」 恥じらう余裕さえ持てずに絶頂の嬌声を叫びながら、 ティエリアはがくがくと全身を震わせて果てた。 何も知らなかったが故の激しすぎる快感に苛まれ、頭が真っ白になる。 クリトリスから快感が完全に去って痛みに変わるまで、指は変わらず肉芽を擦り続けていた。 不慣れな様子が、ティエリアの純真さを裏付けているようだった。 しばらくしても絶頂の余韻は体から去らず、ティエリアはベッドに倒れ込んで、 いまだ体中を駆け巡って内部から火照らし続けるような、緩やかな快感を味わっていた。 とてつもなく満足していながら、相反して切ない感情も湧き起こってくる。 「今のは…なんだったんだ…」 自分の体に起こった変化に説明が付かない。 知識として知る前に体で覚えてしまった激しい快感が、 その体に刻み込まれてしまったようだった。 ふと、状態を確かめるべく股間へと手を伸ばす。 最初触れた時よりも夥しい量の愛液が、太ももにまで滴って広がっていた。 余りに絶頂の快感のインパクトが強すぎたのか、 ティエリアは不思議なほど罪悪感も戸惑いも感じなくなっていた。 「ん…っ」 ぬるぬるとした愛液の感触に後押しされ、 まるでもう一度さっきの快感を呼び覚まそうとするかのように、 再びするすると指が動き出す。 濡れそぼった膣口を数回擦り上げ、愛液をたっぷりと指に絡め付かせる。 そのぬめった感触だけでパブロフの犬の如くに息はかすかに乱れ、 快感への期待をますます高めた。 指をクリトリスに押し付け、軽く前後に揺すってみるが、 イったばかりで敏感なままのクリトリスの感覚は、快感よりも痛みが勝っていた。 「ぅん…っ」 不満げに喉を鳴らし、ティエリアは体を起こした。 釈然としない欲望の塊が体の奥に眠っている。 初めての絶頂の快感をその身に受け止めておきながら、 若い体は更なる快楽を求めて疼き続けていた。 ベッドまわりをぼんやりと見回した視線の先に、バイブが転がっている。 卑猥な形状、うねりながらピストンを繰り返していた先端部と棒部、 そしてその中腹から張り出したイボイボ付きの突起――。 最初全く分からなかったその使用方法が、今のティエリアにははっきりと分かった。 愛欲の源である膣へと挿入したバイブが、膣内をピストンしながら子宮口を掻き回す。 そしてイボイボ付きの突起が、快感の集中地帯であるかのようないやらしいクリトリスを こね回しながら擦るのだ。 単語ではなく、体の部分部分でティエリアはそれを理解していた。 バイブに備えられた機能を全て使い尽くした時の、 それから得られるであろう激しい快感を予想する。 恐らく、クリトリスの絶頂以上の高みがあるであろう事に、強い興味を抱かずにいられない。 誰がこれを贈ってきたのかは分からない。 スメラギが欲求不満解消の為に買い与えたのか、 それとも他の男たちが、いつかティエリアと行為を楽しむ前提で贈ってきたのか。 定かではなかったが、淫らな事を知ってしまった体は、 もはやその誘惑から目を背けられそうにもなかった。 知ったばかりのクリトリスの快感を味わい尽くし、物足りなくなった時、 自分はこのバイブを使って更なる悦楽を望むに違いない。 そんな確信を感じながら、ティエリアはそっとバイブを拾い上げて握り締めた。 亀頭部の卑猥なくびれに舌を這わして、ゆっくりと舐めあげてみる。 見た目以上に滑らかな表面に、舌がぴったりと張り付いた。 背筋がぞくりとする。 それが悪寒や恐怖などではなく、欲望から来ているのは間違いなかった。 その証拠に再び下半身がぞくぞくと疼き、熱いものが漏れ出していく。 今ならもう一度、さっきの快感を得られるかも知れない。 もう我慢しても無駄な事は知っているが、 出来るだけ我慢する事で快感が強まる事も、ティエリアは充分に学んでいた。 たった1回の行為にも関わらず――。 強まり続ける淫欲を抑え込みながら、バイブに口付けて先端を舐め回し、 それだけでは物足りなくなってゆっくりと口に含んで舌を巻きつける。 「ん…、んん…」 声を出しながらぴちゃぴちゃとねぶっていると、 自分がとてもいやらしい人間になったような気がしたが、それさえ快かった。 これを寄越した人物を、顔だけをのっぺらぼうにして想像してみる。 人影が頭に浮かんだ途端に、股間がじんじんと熱くなった。 つんと勃って自己主張したクリトリスが、 早く触ってくれと言わんばかりに熱を持ち、ティエリアを急かす。 片手に持ったバイブを口に咥えながら、ティエリアの指は下半身に向かい、 愛液を絡めとった。 もう迷いもなくクリトリスに指を這わせ、軽く前後に擦るとわずかに快感が起こった。 そのままゆっくり時間を掛けてじっくりと肉芽を解していく。 「は…、んっ、あう…っ」 ようやく気持ちよくなってきた頃には既に物足りなくなって、 2本の指で挟んでぐいぐいと扱き上げた。 「はあんっっ…!」 途端に鋭い快感が湧き起こり、甘い声が溢れ出した。 口からこぼれそうになったバイブを押し込んで奥まで咥え、 唇で締め付けると、快楽に悶える体が少し治まった気がした。 「ふああんっ、ああっ、ああっ、んんっ、気持ちい…い…っ…!」 それでも嬌声を抑える事は適わず、ティエリアは昂ぶる体の誘惑のままに、 硬くなったクリトリスをじゅゆるじゅると勢いよく擦りあげていく。 ツンと押し返さんばかりに硬くなった肉の芽を、 自分の持ち物であるが故に乱暴に刺激し続けて、 クリトリスの快感はあっという間に絶頂近辺にまで押しやられた。 「ああんっ、んんっ、や…っ、まだ、まだ…っ」 せっかくの快感のうねりを逃したくない。 絶頂に至るまでの経過をもっと愉しみたい。 そんな欲深い感情がティエリアを支配していた。 咥え込んだバイブに無我夢中で舌を絡ませると、 気が削がれたのか僅かにクリトリスの快感が弱まった。 「あん…っ。やだ…、もっ…と、もっと…っ!!」 仰向けに寝転んだ体勢で、足が自然に大きく開いていく。 ぱっくりと解放されたクリトリスは指の密着でより一層感度を強め、快感の喜びに震えた。 2度目の絶頂に向け、太ももがビクビクと奮え、腰が浮き上がっていく。 「んんっ、ああっ、ふあああああんっっっ!!!」 指先が一際ぎゅっと肉芽を押し潰した瞬間、 ティエリアは背中をベッドから大きく浮かせ、弓なりになって絶頂に達した。 一度目に勝るとも劣らない激しい快楽が全身を駈け巡る。 ピンと伸びた足が小刻みに痙攣し、やがてとさっと音を立ててベッドに深く沈んだ。 「んあ…。ふあぁぁ……」 虚ろな瞳で、ティエリアはいつまでも続くかのような絶頂感を受け止めた。 だらしなく開けた唇からバイブが力なく抜け落ち、唾液がたらりと糸を引く。 急激に眠気が押し寄せてきて、ティエリアはゆったりとした快感の続く中で ゆっくりと瞳を閉じた。 遠のいていく意識の隅で、プレゼントの贈り主がにやりと笑ったのを見た気がした。